焦点距離が可変の可撓性レンズ組立体
本発明は、側壁11、第1の透明なカバー13、及び第2の透明なカバー14によって囲まれたキャビティの内部に可撓性レンズ本体10を含むレンズ組立体に関するものであり、両方のカバー13、14がレンズ本体10のそれぞれの表面に接触する。圧電要素12は、作動されるとレンズ本体10を成形し、それによってレンズ組立体の焦点距離を調整する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点距離が調整可能な機能を備えた光学レンズ組立体に関するものである。とりわけ、本発明は、レンズ本体と透明なカバーとを含むレンズ組立体の組み立てにおいて、レンズ本体は、圧縮可能なゲル材料若しくはエラストマー材料、又は同様の材料からできており、レンズ本体は、支持壁によって囲まれ、境界をつくられたキャビティ内に配置されており、透明なカバーは、それぞれレンズ本体の両面に隣接して配置され、それぞれの側の側壁に取り付けられており、透明なカバーのうちの少なくとも一方に配置された圧電アクチュエータが、それぞれ作動されると、一方のカバー又は両方のカバーを湾曲させることによってレンズ本体の形状を変化させ、それによって、レンズ組立体の焦点距離を変化させる、レンズ組立体の組み立てに関するものである。本発明は、添付の独立請求項1及び従属請求項による実施例の変形に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焦点距離が調整可能なレンズ組立体を低コストで大量生産する解決策が、非常に求められている。例えば、現代の携帯電話は、現在、小型デジタル・カメラ・モジュールを装備しており、レンズ及びレンズ組立体の品質及びコストへの要求が高まっている。例えば、携帯電話及びラップトップ・コンピュータでは、ますます小型のカメラが使用され、このカメラは自動焦点機能を備えている。レンズ・システムをその用途に合わせて設計するには、多数の要求を満たす必要があり、例えば、カメラモジュールにレンズを装着する場合、できるだけ少ない操作ステップによって、簡単に操作できる必要がある。レンズ構成が、調整可能なパラメータを含む場合に、これらの課題は一層重大であり、例えば自動焦点レンズでは、焦点距離は、レンズから、撮影される物体までの距離に適合するように調整されなければならない。通常、そのようなレンズは、可動部分を含む複雑な設計となるので、簡単な方法でレンズを組み立てることは困難である。さらに、その設計の課題として、できるだけ薄いレンズ組立体を提供することが非常に求められている。薄く軽量の携帯電話及びカメラは市場において不可欠である。
【0003】
小型の自動焦点レンズ要素を製作するためのいくつかの実現可能な解決策が存在する。例えば、国際公開第2006136613号には、エレクトロ・ウェッティング(electro wetting)の原理に基づいた液体で充填されたレンズ要素が開示されている。別の例が、論文「Design, fabrication and testing of a micro machines integrated tuneable micro lens」(Weisongら、Journal of Micromechanics and Microengineering、2006年5月9日)に開示されており、キャビティに液体を含むレンズ組立体は、レンズの焦点距離の調節を達成するために圧縮又は伸長することができる。
【0004】
従来技術のレンズのこれらの2つの例は共に1つ又は複数の液体を含む。当業者には周知の通り、キャビティに液体を充填し閉じ込めることが、製作中及び使用中の両方において問題となることがある。
【0005】
米国特許第4802746号には、調整可能なレンズ組立体の別の原理が記載されており、複数の弾性部材が光軸方向に重ねられている。レンズ要素の面に力を加え、変形させることによって湾曲をつくり、加えられた力の大きさに応じて焦点が可変であるという特性をもたらしている。
【0006】
特開平2−178602号には、2つの透明な表面1d、2及び弾性封止材料3によって囲まれた透明な流体4を含む焦点距離が調整可能なレンズが開示されている。透明な表面のうちの一方(1d)の湾曲が、透明な表面に配置された透明な圧電フィルム1cに電圧を印加することによって調整される。
【0007】
特開平1−140118号には、2つの透明な表面1、3を含み、その間に流体2があり、流体2は壁10によって囲まれている、焦点距離が調整可能なレンズが開示されている。流体2はゲル又はポリマーとすることができる。透明な表面の一方は透明な圧電ポリマーであり、この表面の湾曲は2つの電極4、5に印加された電圧によって制御される。
【0008】
米国特許出願公開第2002/0048096号には、ミラー1の変形を制御する方法が開示されている。圧電アクチュエータ3は、あるパターンでミラーの裏面に配置され、変形はミラーに取り付けられたセンサから受け取った信号に基づいて制御される。
【0009】
ノルウェー特許出願第20065237号には、透明な支持体上に配置されたゲル又はエラストマーの上にフローティング・ガラス・カバーを含むレンズ組立体が開示されている。フローティング・ガラス・カバーの周囲に配置されたフローティング・ガラス・カバーの上の圧電アクチュエータは、作動されるとフローティング・ガラス・カバーを湾曲させ、それがゲル又はエラストマーの表面を湾曲させる変化をもたらす。しかし、焦点距離の調整範囲は、フローティング・ガラス・カバーが湾曲する範囲に従って限定される。作動力が高すぎると、フローティング・ガラス・カバーの縁部が、フローティング・ガラス・カバーの縁部の直下に配置されたゲル又はエラストマーを切断し、それによってレンズ本体を損傷する。このようにレンズ本体を損傷する可能性があるので焦点距離の調整範囲が限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、ノルウェー特許出願第20065337号に開示されているレンズ組立体の主要な利点を提供し、同時に、調整が行われる場合、レンズ組立体の特性を変化させることなく焦点距離の調整範囲を拡大し、調整が行われる場合、全調整範囲においてレンズ本体をいかなる形態の損傷からも保護し、本発明レンズ組立体と一緒に使用される他の光学部品及び電子部品の製造中、例えば相互接続などを行う場合、損傷又は干渉からレンズ本体を保護するレンズ組立体を提供する必要がある。また、本発明レンズ組立体のこの特性は、ある用途でレンズ組立体を使用する場合にもレンズ組立体を保護する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様では、レンズ組立体は、レンズ本体を形成する透明なゲル又はエラストマーが充填されたキャビティによって構成されており、キャビティの周囲全体に広がる側壁によってキャビティは囲まれており、第1の透明なカバーは側壁の上面側に取り付けられ、一方、第2の透明なカバーは側壁の下面側にそれぞれ取り付けられており、本発明に従って要求が満たされる。レンズ本体の両面のうちの一方又は両方に圧電減衰器を配置することができる。圧電アクチュエータは、作動されると、それが取り付けられているガラス・カバーを湾曲させる。しかし、ガラス・カバーは側壁に取り付けられているので、ガラス・カバーの湾曲によってガラス・カバーの縁部は移動しない。何故なら、ガラス・カバーの縁部が側壁に取り付けられているからである。ガラス・カバーの縁部に隣接するガラス・カバーの部分が湾曲させられ、この部分においてS字形状の湾曲が与えられるため、レンズ本体の湾曲が変化させられ、それによってレンズ組立体の焦点距離が変化させられる。
【0012】
本発明の別の態様では、圧電アクチュエータが透明なカバーのうちの一方にだけ配置されている場合にも、ガラス・カバーの両方ともを湾曲させることができる。レンズ本体の厚さを制限すれば、ゲル又はエラストマーを湾曲させる力は、ゲル又はエラストマーを通して他方の透明なカバーに伝達される。圧電アクチュエータが、それぞれ両方の透明なカバーに設けられる場合、透明なカバーの湾曲を協調させて、レンズ本体の光軸の両側におけるレンズ本体のトータルの成形量を増幅することができ、それによって、焦点距離の変化可能な範囲が拡大する。本発明の実施例の一例では、制御エレクトロニクスがレンズ本体の両側の湾曲の協調的動作を制御し、それによって、一方の透明なカバーの湾曲が他方の透明なカバーに及ぼす影響を是正することが可能となる。この制御により、焦点距離の全調整範囲にわたってレンズ組立体の焦点距離の微調整が行われ、制御可能に調整ができる。さらに、透明なカバーがレンズ本体の各面の全表面を保護するので、透明なカバー自体の縁部によって、又はレンズ本体の表面に対する外部衝撃によって、可撓性レンズ本体が損傷を受けるおそれがない。
【0013】
本発明の実施例の一例では、可撓性レンズ本体は、レンズ本体の周囲全体に広がる側壁によって囲まれ、側壁の上面側においては、実質的に薄い第1の透明なカバーが圧電素子を備え、側壁の下面側においては、実質的により厚い第2の透明なカバーが支持体として配置され、レンズ本体に面する第2の透明なカバーの第2の表面には、実質的に凹面の表面が設けられる。第1の透明なカバーが圧電素子の作動により湾曲している場合、第2の透明なカバーの凹面形状が第1の透明なカバーに影響を与える。湾曲している第1の透明なカバーに対して第2の透明なカバーが与える効果により、第1の透明なカバーに実質的に球状の表面が与えられ、レンズ組立体の光学的性質が改善される。
【0014】
本発明の実施例の一例では、薄膜圧電アクチュエータが2つの透明なカバーのうちの少なくとも一方に配置される。
【0015】
本発明の別の態様では、レンズ本体の両面のうちの一方又は両方の透明なカバーにおいて複数の圧電アクチュエータを配置することにより、収差誤差を制御することが可能になり、さらに新規な特徴をもつ新しいレンズ設計を行うことが可能になる。
【0016】
本発明の別の態様では、容易に利用可能なウエハ・プロセスを使用して大量生産することができる調整可能なレンズ設計が提供される。
【0017】
本発明のさらなる別の態様では、非常に小型で調整可能なレンズが提供される。
【0018】
本発明の別の態様では、光焦点調整の質が改善されたレンズ要素が提供される。
【0019】
本発明の実施例の一例では、2つの透明なカバーのうちの一方はプリズムを含み、プリズムを含む透明なカバーの圧電アクチュエータを作動させることによって、プリズムはレンズ組立体の中への光路及びレンズ組立体から外への光路の方向をそれぞれ変化させることができる。
【0020】
本発明の実施例のさらなる別の例では、熱膨張緩衝開口部がレンズ組立体の側壁に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1a】本発明の実施例の一例を示す図である。
【図1b】平坦な第2の透明なカバーを含む構成と比較するために、レンズ本体に面する第2の透明なカバーを実質的に凹面形状とした効果を示す図である。
【図1c】本発明の実施例の様々な態様を示す図である。
【図2a】本発明の実施例の他の例を示す図である。
【図2b】本発明の実施例の他の例を示す図である。
【図2c】本発明の実施例の他の例を示す図である。
【図2d】本発明の実施例の他の例を示す図である。
【図3】本発明の実施例の一例におけるレンズ本体の幅と高さとの関係を示す図である。
【図4a】本発明の実施例の他の例を示す図である。
【図4b】本発明の実施例の他の例を示す図である。
【図4c】本発明の実施例の他の例を示す図である。
【図5】アクティブ電子制御回路を含む本発明の実施例の一例を示す図である。
【図6】レンズ組立体の側壁に熱膨張緩衝開口部を含む本発明の実施例の一例を示す図である。
【実施例】
【0022】
図1aに示される通り、本発明の実施例の一例は、レンズ本体10を含み、レンズ本体10は、側壁11、第1の透明なカバー13、および第2の透明なカバー14によって囲まれたゲル材料又はエラストマー材料などの可撓性材料でできている。図1aに示された例では、第1のカバー13に配置された圧電素子12を含む。側壁11はレンズ本体10の全体を囲む連続的な側壁である。圧電素子12が作動されると、S字状の湾曲が、第1の透明なカバーのうちの側壁11に隣接する領域に形成される。そのS字状の湾曲の一例が図2dに示される。
【0023】
本発明の実施例の一例では、圧電素子12は、透明な薄膜圧電アクチュエータである。
【0024】
本発明の実施例の別の例では、透明なカバー13及び14は共に圧電素子12を含んでもよい。透明なカバー13及び14が共に作動されると、上述の原理に従ってレンズ本体10の成形が行われ、それによって、焦点距離の調整範囲が拡大される。
【0025】
本発明の一態様では、透明なカバー13及び14は薄いガラス・カバーとしてもよい。しかし、例えば図1aの第1のカバー13に示される通り、透明なカバーのうちの一方だけに圧電素子が配置される場合、圧電素子によって作動された透明なカバーの湾曲は、透明なカバー材料の剛性が原因で、通常、実質的に球状の形状ではない。このことは、通常、薄いガラス・カバーでも生じる。カバーが湾曲したときの実質的に球状の形状からのこの偏差が、本発明のいくつかの実施例では、レンズ本体10のある光学的な効果を達成するのに有益であることがある。しかし、この特徴は制御可能であるべきである。本発明の一態様では、圧電素子が両方の透明なカバー13、14に配置される場合、圧電素子が協調的に作動されれば、透明なカバーの不完全な成形を制御又は是正することが可能になる。異なる圧電素子に、異なる電圧を印加すると、レンズ本体を実質的に任意の所望の形状に形成することができる。
【0026】
しかし、本発明では、レンズ組立体の用途によっては、第2の透明なカバー14がレンズ組立体の支持体の機能を果たしてもよい。この場合、第2の透明なカバー14の移動は、レンズ組立体の他の物体と干渉するために、又はレンズ組立体の用途によって、制限又は除去されなければならないことがある。例えば、CCDチップが、第2の透明なカバー14に隣接して配置されることがあり、それに取り付けられることもある。したがって、第2の透明なカバー14を湾曲させることによって、第1の透明なカバー13の不完全な成形を是正することはできない。これは、第2の透明なカバー14が、移動して是正するための空間、又は調整を行うための空間がないためである。本発明の一態様では、図1bに示される通り、透明なカバー13の実質的に球状の形状からの偏差は、第2の透明なカバー14においてレンズ本体10に面する側に凹面の表面を導入することによって、実質的に低減することができる。レンズ本体10と側壁11との間の接触面、さらに透明なカバー13、14との間の接触面は、レンズ本体10が透明なカバーが湾曲することにより圧迫されると、接触面それ自体が小さい粘着効果を与え、レンズ本体の接触面に近い領域の可撓性レンズ本体の変位移動を抑制する。これらの粘着効果は透明なカバー13の不完全な成形ももたらす。図1bに示される通り、第2の透明なカバー14の凹面形状が、接触面のこの特性を活用して、第1の透明なカバー13の実質的に球状の形状からの偏差を除去する。レンズ本体が、圧電素子の作動によって成形される場合、凹面形状によってレンズ本体10の異なる変位特性が与えられる。
【0027】
図1cは、この状況の異なる態様、及び接触面に関連する問題への可能な解決策を示す。図1cのセクションi)では、圧電素子12を含む第1の透明なカバー13よりも実質的に厚い平坦な第2の透明なカバー14を含む実施例の一例が示されている。また、レンズ組立体の異なる寸法についての典型的な値が、単なる例として示されているが、値を限定するものではない。セクションi)では、圧電素子に電圧は印加されていない。セクションii)では、電圧が印加され、第1の透明なカバー13が湾曲している。セクションii)に示されているような第1の透明なカバーの不完全な球状の湾曲を補正するために、セクションiii)に示されているような実施例が可能である。第1の透明なカバー13はレンズ組立体の光軸においてより厚い中央部分30を備えてもよく、第2の透明なカバーは光軸においてより薄い中央部分32を備えてもよい。また、電圧が第1の透明なカバーの圧電素子に印加されると、第2の透明なカバー14のより薄い部分が第2の透明なカバーを湾曲させることもできる。これはセクションIV)に示されており、第2の透明なカバー14の湾曲は数字32で示されている。第1の透明なカバー13のより厚い中央部分を、セクションIV)において、数字31によって示される通りに形成してもよい。
【0028】
セクションv)の実施例で示される通り、厚さw3は、第2の透明なカバー14の湾曲を(セクションviに示される通り)実質的にゼロとなるようにすることができ、それはレンズ組立体の用途(追加のレンズ、他の光学部品などの積み重ね)によっては利点となることがある。しかし、レンズ本体10に面する第2の透明なカバー14の凹面形状は、第1の透明なカバーの不完全な湾曲を補正するのに実質的に十分である。図1cのセクションvii)では、第1の透明なカバー13の湾曲がどのように実質的に球状の湾曲から外れているかを曲線で表しており、セクションi)に示されるレンズ組立体を、セクションv)の実施例と比較して、電圧がそれぞれ圧電素子に印加された場合を示している。球状形状からの偏差が相対寸法として測定され、相対半径1は完全な球状形状の半径であり、この寸法がセクションVII)の座標のY軸として使用される。レンズ組立体を通る光軸の左及び右(それぞれ負及び正の数)に対して対称的に配置されたポイントは、相対半径が測定されたX軸のポイントである。21で示された曲線は、セクションi)に示された実施例に対応し、曲線20はセクションv)の実施例に対応する。このようにして、焦点距離を可変とする機能を備えた本発明レンズ組立体を製造することが可能であり、本発明レンズ組立体は、サイズが小型であり、調整の全範囲において第1の透明なカバー13を実質的に球状の形状とする。
【0029】
セクションVIII)は、より厚い中央部分34と、第2の透明なカバー14の凹面の表面とを含む本発明の実施例を示す。セクションIX)は、電圧が圧電素子12に印加されたときのVIII)の実施例を示す。セクションX)は、それぞれセクションI)、V)、及びVIII)の実施例に対して測定された球状形状からの異なる偏差を曲線で表している。数字21はセクションI)、数字20はセクションV)、数字22はセクションX)の実施例を表す。
【0030】
図2aは、本発明の別の実施例を示す。この実施例では、第1の透明なカバー13及び第2の透明なカバー14の両方に圧電素子12を含む。さらに、第2の透明なカバー14には、プリズム15が、レンズ本体10の光軸を中心として、圧電素子12の間に配置される。このようにして、例えば図4bに示される通り、反対の極性の電圧が圧電素子12に印加されると、圧電素子12はレンズ組立体を通る光路をシフトさせることができる。図2dは、それぞれ第1の透明なカバー13及び第2のカバー14上の圧電素子に、同じ正極性の電圧を最初に印加する場合の効果を示す。図示の電圧は単に例示の目的のものである。圧電素子に使用することができる電圧範囲にある電圧を任意の組合せで使用することができる。図2bは球状の上面図を示し、一方、図2cは円柱レンズ組立体の実施例を示す。
【0031】
本発明のいくつかの用途では、第1の透明なカバーと第2の透明なカバーとの間に相互作用が全くないことが利点となることがある。図4aは、レンズ本体10の中央に挿入されたガラス板50を含む本発明の実施例の一例を示す。中央のガラス板の両側に、レンズ本体10が軟質ポリマーで製作される。図4bは、図4aのレンズ組立体の上部部分を使用して、どのように焦点距離を調整できるか、一方、下部部分を使用して、プリズムを通る光路の方向をどのように制御することができるかを示す。
【0032】
図3は、レンズ本体10の高さHが幅Wよりも大きい場合、図4aに示された実施例と実質的に同じ特性を有することを示す。図4cは、図3及び図4aの実施例と同じ特性を与える別の例を示す。図4cに示された実施例では、レンズ本体10の中央部分は、レンズ本体10の他の部分よりも硬質のポリマーで製作された部分51を含む。
【0033】
レンズ組立体で使用される材料に応じて、レンズ本体は側壁及び/又は透明なカバーと異なる熱膨脹係数を有することがある。この熱膨張係数の不整合により、レンズ組立体に応力が発生し、レンズの光学パラメータに影響を与えることがある。図6に示された実施例の一例において、例えば、熱緩衝開口部70が側壁に配置されるため、レンズ本体は、加熱されるとサイズを拡大することができる。チャネル71は、熱緩衝開口部70に発生するいかなる形態の圧力も緩和するために設けられる。
【0034】
圧電素子に様々な電圧が印加されると、圧電素子が配置されている領域で、取り付けられた透明なカバーが湾曲する。本発明では、信号レベル(電圧レベル)、信号の期間、信号波形などを使用して、レンズ本体の異なる湾曲パターンを達成することができる。そのように協調的に信号を印加することは、2つの透明なカバーのうちの一方に配置された圧電素子に対して、他方の透明なカバーと無関係に行うことも可能であるし、又は、レンズ組立体の両側へ協調的に印加することもできる。その信号パターンの変形及び使用は、圧電素子に取り付けられたコントローラによって管理することができる。図5は、レンズ組立体の両側の圧電素子と電気的につながっている電子補正/制御ユニット60を含む実施例の一例を示す。印加されるべき異なる信号パターンは、組立体における、又はレンズ組立体が一部を構成する光システムの他の場所における、光学パラメータの測定値(図示せず)に基づいて、特定することができる。そして、それは、光システムのフィードバック信号として、又は、電子補正/制御エレクトロニクスなどのメモリに蓄積されている選択されたパターンの信号として特定することができる。実際に発生させて、圧電素子に印加される電圧は、本発明レンズ組立体の用途と直接関連する。当業者には周知の通り、距離計は、カメラの自動焦点システムの一部として、どういう電圧によりレンズ組立体の焦点距離が合った状態になるかについて、電子補正/制御エレクトロニクスに信号で伝える。
【0035】
本発明レンズ組立体を製造する場合、複数の材料をレンズ本体、側壁、透明なカバーなどに使用することができる。以下の表1は、本発明のレンズ本体を製造するために使用できる材料のいくつかの好適な例を含む。対応する熱膨脹係数及び屈折率も示されている。レンズ組立体の用途に応じて、例えば、その用途の予想される温度範囲に応じて、適切な材料の組合せを表から選択し、本発明の実施例を本発明の原理に従って製造することができる。表1は、材料の例を単に示している。本発明の一態様では、可撓性レンズ本体を形成するキャビティに設置することができれば、いかなる透明材料も使用することができる。
【0036】
【表1】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焦点距離が調整可能な機能を備えた光学レンズ組立体に関するものである。とりわけ、本発明は、レンズ本体と透明なカバーとを含むレンズ組立体の組み立てにおいて、レンズ本体は、圧縮可能なゲル材料若しくはエラストマー材料、又は同様の材料からできており、レンズ本体は、支持壁によって囲まれ、境界をつくられたキャビティ内に配置されており、透明なカバーは、それぞれレンズ本体の両面に隣接して配置され、それぞれの側の側壁に取り付けられており、透明なカバーのうちの少なくとも一方に配置された圧電アクチュエータが、それぞれ作動されると、一方のカバー又は両方のカバーを湾曲させることによってレンズ本体の形状を変化させ、それによって、レンズ組立体の焦点距離を変化させる、レンズ組立体の組み立てに関するものである。本発明は、添付の独立請求項1及び従属請求項による実施例の変形に関するものである。
【背景技術】
【0002】
焦点距離が調整可能なレンズ組立体を低コストで大量生産する解決策が、非常に求められている。例えば、現代の携帯電話は、現在、小型デジタル・カメラ・モジュールを装備しており、レンズ及びレンズ組立体の品質及びコストへの要求が高まっている。例えば、携帯電話及びラップトップ・コンピュータでは、ますます小型のカメラが使用され、このカメラは自動焦点機能を備えている。レンズ・システムをその用途に合わせて設計するには、多数の要求を満たす必要があり、例えば、カメラモジュールにレンズを装着する場合、できるだけ少ない操作ステップによって、簡単に操作できる必要がある。レンズ構成が、調整可能なパラメータを含む場合に、これらの課題は一層重大であり、例えば自動焦点レンズでは、焦点距離は、レンズから、撮影される物体までの距離に適合するように調整されなければならない。通常、そのようなレンズは、可動部分を含む複雑な設計となるので、簡単な方法でレンズを組み立てることは困難である。さらに、その設計の課題として、できるだけ薄いレンズ組立体を提供することが非常に求められている。薄く軽量の携帯電話及びカメラは市場において不可欠である。
【0003】
小型の自動焦点レンズ要素を製作するためのいくつかの実現可能な解決策が存在する。例えば、国際公開第2006136613号には、エレクトロ・ウェッティング(electro wetting)の原理に基づいた液体で充填されたレンズ要素が開示されている。別の例が、論文「Design, fabrication and testing of a micro machines integrated tuneable micro lens」(Weisongら、Journal of Micromechanics and Microengineering、2006年5月9日)に開示されており、キャビティに液体を含むレンズ組立体は、レンズの焦点距離の調節を達成するために圧縮又は伸長することができる。
【0004】
従来技術のレンズのこれらの2つの例は共に1つ又は複数の液体を含む。当業者には周知の通り、キャビティに液体を充填し閉じ込めることが、製作中及び使用中の両方において問題となることがある。
【0005】
米国特許第4802746号には、調整可能なレンズ組立体の別の原理が記載されており、複数の弾性部材が光軸方向に重ねられている。レンズ要素の面に力を加え、変形させることによって湾曲をつくり、加えられた力の大きさに応じて焦点が可変であるという特性をもたらしている。
【0006】
特開平2−178602号には、2つの透明な表面1d、2及び弾性封止材料3によって囲まれた透明な流体4を含む焦点距離が調整可能なレンズが開示されている。透明な表面のうちの一方(1d)の湾曲が、透明な表面に配置された透明な圧電フィルム1cに電圧を印加することによって調整される。
【0007】
特開平1−140118号には、2つの透明な表面1、3を含み、その間に流体2があり、流体2は壁10によって囲まれている、焦点距離が調整可能なレンズが開示されている。流体2はゲル又はポリマーとすることができる。透明な表面の一方は透明な圧電ポリマーであり、この表面の湾曲は2つの電極4、5に印加された電圧によって制御される。
【0008】
米国特許出願公開第2002/0048096号には、ミラー1の変形を制御する方法が開示されている。圧電アクチュエータ3は、あるパターンでミラーの裏面に配置され、変形はミラーに取り付けられたセンサから受け取った信号に基づいて制御される。
【0009】
ノルウェー特許出願第20065237号には、透明な支持体上に配置されたゲル又はエラストマーの上にフローティング・ガラス・カバーを含むレンズ組立体が開示されている。フローティング・ガラス・カバーの周囲に配置されたフローティング・ガラス・カバーの上の圧電アクチュエータは、作動されるとフローティング・ガラス・カバーを湾曲させ、それがゲル又はエラストマーの表面を湾曲させる変化をもたらす。しかし、焦点距離の調整範囲は、フローティング・ガラス・カバーが湾曲する範囲に従って限定される。作動力が高すぎると、フローティング・ガラス・カバーの縁部が、フローティング・ガラス・カバーの縁部の直下に配置されたゲル又はエラストマーを切断し、それによってレンズ本体を損傷する。このようにレンズ本体を損傷する可能性があるので焦点距離の調整範囲が限定される。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
したがって、ノルウェー特許出願第20065337号に開示されているレンズ組立体の主要な利点を提供し、同時に、調整が行われる場合、レンズ組立体の特性を変化させることなく焦点距離の調整範囲を拡大し、調整が行われる場合、全調整範囲においてレンズ本体をいかなる形態の損傷からも保護し、本発明レンズ組立体と一緒に使用される他の光学部品及び電子部品の製造中、例えば相互接続などを行う場合、損傷又は干渉からレンズ本体を保護するレンズ組立体を提供する必要がある。また、本発明レンズ組立体のこの特性は、ある用途でレンズ組立体を使用する場合にもレンズ組立体を保護する。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の一態様では、レンズ組立体は、レンズ本体を形成する透明なゲル又はエラストマーが充填されたキャビティによって構成されており、キャビティの周囲全体に広がる側壁によってキャビティは囲まれており、第1の透明なカバーは側壁の上面側に取り付けられ、一方、第2の透明なカバーは側壁の下面側にそれぞれ取り付けられており、本発明に従って要求が満たされる。レンズ本体の両面のうちの一方又は両方に圧電減衰器を配置することができる。圧電アクチュエータは、作動されると、それが取り付けられているガラス・カバーを湾曲させる。しかし、ガラス・カバーは側壁に取り付けられているので、ガラス・カバーの湾曲によってガラス・カバーの縁部は移動しない。何故なら、ガラス・カバーの縁部が側壁に取り付けられているからである。ガラス・カバーの縁部に隣接するガラス・カバーの部分が湾曲させられ、この部分においてS字形状の湾曲が与えられるため、レンズ本体の湾曲が変化させられ、それによってレンズ組立体の焦点距離が変化させられる。
【0012】
本発明の別の態様では、圧電アクチュエータが透明なカバーのうちの一方にだけ配置されている場合にも、ガラス・カバーの両方ともを湾曲させることができる。レンズ本体の厚さを制限すれば、ゲル又はエラストマーを湾曲させる力は、ゲル又はエラストマーを通して他方の透明なカバーに伝達される。圧電アクチュエータが、それぞれ両方の透明なカバーに設けられる場合、透明なカバーの湾曲を協調させて、レンズ本体の光軸の両側におけるレンズ本体のトータルの成形量を増幅することができ、それによって、焦点距離の変化可能な範囲が拡大する。本発明の実施例の一例では、制御エレクトロニクスがレンズ本体の両側の湾曲の協調的動作を制御し、それによって、一方の透明なカバーの湾曲が他方の透明なカバーに及ぼす影響を是正することが可能となる。この制御により、焦点距離の全調整範囲にわたってレンズ組立体の焦点距離の微調整が行われ、制御可能に調整ができる。さらに、透明なカバーがレンズ本体の各面の全表面を保護するので、透明なカバー自体の縁部によって、又はレンズ本体の表面に対する外部衝撃によって、可撓性レンズ本体が損傷を受けるおそれがない。
【0013】
本発明の実施例の一例では、可撓性レンズ本体は、レンズ本体の周囲全体に広がる側壁によって囲まれ、側壁の上面側においては、実質的に薄い第1の透明なカバーが圧電素子を備え、側壁の下面側においては、実質的により厚い第2の透明なカバーが支持体として配置され、レンズ本体に面する第2の透明なカバーの第2の表面には、実質的に凹面の表面が設けられる。第1の透明なカバーが圧電素子の作動により湾曲している場合、第2の透明なカバーの凹面形状が第1の透明なカバーに影響を与える。湾曲している第1の透明なカバーに対して第2の透明なカバーが与える効果により、第1の透明なカバーに実質的に球状の表面が与えられ、レンズ組立体の光学的性質が改善される。
【0014】
本発明の実施例の一例では、薄膜圧電アクチュエータが2つの透明なカバーのうちの少なくとも一方に配置される。
【0015】
本発明の別の態様では、レンズ本体の両面のうちの一方又は両方の透明なカバーにおいて複数の圧電アクチュエータを配置することにより、収差誤差を制御することが可能になり、さらに新規な特徴をもつ新しいレンズ設計を行うことが可能になる。
【0016】
本発明の別の態様では、容易に利用可能なウエハ・プロセスを使用して大量生産することができる調整可能なレンズ設計が提供される。
【0017】
本発明のさらなる別の態様では、非常に小型で調整可能なレンズが提供される。
【0018】
本発明の別の態様では、光焦点調整の質が改善されたレンズ要素が提供される。
【0019】
本発明の実施例の一例では、2つの透明なカバーのうちの一方はプリズムを含み、プリズムを含む透明なカバーの圧電アクチュエータを作動させることによって、プリズムはレンズ組立体の中への光路及びレンズ組立体から外への光路の方向をそれぞれ変化させることができる。
【0020】
本発明の実施例のさらなる別の例では、熱膨張緩衝開口部がレンズ組立体の側壁に設けられる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1a】本発明の実施例の一例を示す図である。
【図1b】平坦な第2の透明なカバーを含む構成と比較するために、レンズ本体に面する第2の透明なカバーを実質的に凹面形状とした効果を示す図である。
【図1c】本発明の実施例の様々な態様を示す図である。
【図2a】本発明の実施例の他の例を示す図である。
【図2b】本発明の実施例の他の例を示す図である。
【図2c】本発明の実施例の他の例を示す図である。
【図2d】本発明の実施例の他の例を示す図である。
【図3】本発明の実施例の一例におけるレンズ本体の幅と高さとの関係を示す図である。
【図4a】本発明の実施例の他の例を示す図である。
【図4b】本発明の実施例の他の例を示す図である。
【図4c】本発明の実施例の他の例を示す図である。
【図5】アクティブ電子制御回路を含む本発明の実施例の一例を示す図である。
【図6】レンズ組立体の側壁に熱膨張緩衝開口部を含む本発明の実施例の一例を示す図である。
【実施例】
【0022】
図1aに示される通り、本発明の実施例の一例は、レンズ本体10を含み、レンズ本体10は、側壁11、第1の透明なカバー13、および第2の透明なカバー14によって囲まれたゲル材料又はエラストマー材料などの可撓性材料でできている。図1aに示された例では、第1のカバー13に配置された圧電素子12を含む。側壁11はレンズ本体10の全体を囲む連続的な側壁である。圧電素子12が作動されると、S字状の湾曲が、第1の透明なカバーのうちの側壁11に隣接する領域に形成される。そのS字状の湾曲の一例が図2dに示される。
【0023】
本発明の実施例の一例では、圧電素子12は、透明な薄膜圧電アクチュエータである。
【0024】
本発明の実施例の別の例では、透明なカバー13及び14は共に圧電素子12を含んでもよい。透明なカバー13及び14が共に作動されると、上述の原理に従ってレンズ本体10の成形が行われ、それによって、焦点距離の調整範囲が拡大される。
【0025】
本発明の一態様では、透明なカバー13及び14は薄いガラス・カバーとしてもよい。しかし、例えば図1aの第1のカバー13に示される通り、透明なカバーのうちの一方だけに圧電素子が配置される場合、圧電素子によって作動された透明なカバーの湾曲は、透明なカバー材料の剛性が原因で、通常、実質的に球状の形状ではない。このことは、通常、薄いガラス・カバーでも生じる。カバーが湾曲したときの実質的に球状の形状からのこの偏差が、本発明のいくつかの実施例では、レンズ本体10のある光学的な効果を達成するのに有益であることがある。しかし、この特徴は制御可能であるべきである。本発明の一態様では、圧電素子が両方の透明なカバー13、14に配置される場合、圧電素子が協調的に作動されれば、透明なカバーの不完全な成形を制御又は是正することが可能になる。異なる圧電素子に、異なる電圧を印加すると、レンズ本体を実質的に任意の所望の形状に形成することができる。
【0026】
しかし、本発明では、レンズ組立体の用途によっては、第2の透明なカバー14がレンズ組立体の支持体の機能を果たしてもよい。この場合、第2の透明なカバー14の移動は、レンズ組立体の他の物体と干渉するために、又はレンズ組立体の用途によって、制限又は除去されなければならないことがある。例えば、CCDチップが、第2の透明なカバー14に隣接して配置されることがあり、それに取り付けられることもある。したがって、第2の透明なカバー14を湾曲させることによって、第1の透明なカバー13の不完全な成形を是正することはできない。これは、第2の透明なカバー14が、移動して是正するための空間、又は調整を行うための空間がないためである。本発明の一態様では、図1bに示される通り、透明なカバー13の実質的に球状の形状からの偏差は、第2の透明なカバー14においてレンズ本体10に面する側に凹面の表面を導入することによって、実質的に低減することができる。レンズ本体10と側壁11との間の接触面、さらに透明なカバー13、14との間の接触面は、レンズ本体10が透明なカバーが湾曲することにより圧迫されると、接触面それ自体が小さい粘着効果を与え、レンズ本体の接触面に近い領域の可撓性レンズ本体の変位移動を抑制する。これらの粘着効果は透明なカバー13の不完全な成形ももたらす。図1bに示される通り、第2の透明なカバー14の凹面形状が、接触面のこの特性を活用して、第1の透明なカバー13の実質的に球状の形状からの偏差を除去する。レンズ本体が、圧電素子の作動によって成形される場合、凹面形状によってレンズ本体10の異なる変位特性が与えられる。
【0027】
図1cは、この状況の異なる態様、及び接触面に関連する問題への可能な解決策を示す。図1cのセクションi)では、圧電素子12を含む第1の透明なカバー13よりも実質的に厚い平坦な第2の透明なカバー14を含む実施例の一例が示されている。また、レンズ組立体の異なる寸法についての典型的な値が、単なる例として示されているが、値を限定するものではない。セクションi)では、圧電素子に電圧は印加されていない。セクションii)では、電圧が印加され、第1の透明なカバー13が湾曲している。セクションii)に示されているような第1の透明なカバーの不完全な球状の湾曲を補正するために、セクションiii)に示されているような実施例が可能である。第1の透明なカバー13はレンズ組立体の光軸においてより厚い中央部分30を備えてもよく、第2の透明なカバーは光軸においてより薄い中央部分32を備えてもよい。また、電圧が第1の透明なカバーの圧電素子に印加されると、第2の透明なカバー14のより薄い部分が第2の透明なカバーを湾曲させることもできる。これはセクションIV)に示されており、第2の透明なカバー14の湾曲は数字32で示されている。第1の透明なカバー13のより厚い中央部分を、セクションIV)において、数字31によって示される通りに形成してもよい。
【0028】
セクションv)の実施例で示される通り、厚さw3は、第2の透明なカバー14の湾曲を(セクションviに示される通り)実質的にゼロとなるようにすることができ、それはレンズ組立体の用途(追加のレンズ、他の光学部品などの積み重ね)によっては利点となることがある。しかし、レンズ本体10に面する第2の透明なカバー14の凹面形状は、第1の透明なカバーの不完全な湾曲を補正するのに実質的に十分である。図1cのセクションvii)では、第1の透明なカバー13の湾曲がどのように実質的に球状の湾曲から外れているかを曲線で表しており、セクションi)に示されるレンズ組立体を、セクションv)の実施例と比較して、電圧がそれぞれ圧電素子に印加された場合を示している。球状形状からの偏差が相対寸法として測定され、相対半径1は完全な球状形状の半径であり、この寸法がセクションVII)の座標のY軸として使用される。レンズ組立体を通る光軸の左及び右(それぞれ負及び正の数)に対して対称的に配置されたポイントは、相対半径が測定されたX軸のポイントである。21で示された曲線は、セクションi)に示された実施例に対応し、曲線20はセクションv)の実施例に対応する。このようにして、焦点距離を可変とする機能を備えた本発明レンズ組立体を製造することが可能であり、本発明レンズ組立体は、サイズが小型であり、調整の全範囲において第1の透明なカバー13を実質的に球状の形状とする。
【0029】
セクションVIII)は、より厚い中央部分34と、第2の透明なカバー14の凹面の表面とを含む本発明の実施例を示す。セクションIX)は、電圧が圧電素子12に印加されたときのVIII)の実施例を示す。セクションX)は、それぞれセクションI)、V)、及びVIII)の実施例に対して測定された球状形状からの異なる偏差を曲線で表している。数字21はセクションI)、数字20はセクションV)、数字22はセクションX)の実施例を表す。
【0030】
図2aは、本発明の別の実施例を示す。この実施例では、第1の透明なカバー13及び第2の透明なカバー14の両方に圧電素子12を含む。さらに、第2の透明なカバー14には、プリズム15が、レンズ本体10の光軸を中心として、圧電素子12の間に配置される。このようにして、例えば図4bに示される通り、反対の極性の電圧が圧電素子12に印加されると、圧電素子12はレンズ組立体を通る光路をシフトさせることができる。図2dは、それぞれ第1の透明なカバー13及び第2のカバー14上の圧電素子に、同じ正極性の電圧を最初に印加する場合の効果を示す。図示の電圧は単に例示の目的のものである。圧電素子に使用することができる電圧範囲にある電圧を任意の組合せで使用することができる。図2bは球状の上面図を示し、一方、図2cは円柱レンズ組立体の実施例を示す。
【0031】
本発明のいくつかの用途では、第1の透明なカバーと第2の透明なカバーとの間に相互作用が全くないことが利点となることがある。図4aは、レンズ本体10の中央に挿入されたガラス板50を含む本発明の実施例の一例を示す。中央のガラス板の両側に、レンズ本体10が軟質ポリマーで製作される。図4bは、図4aのレンズ組立体の上部部分を使用して、どのように焦点距離を調整できるか、一方、下部部分を使用して、プリズムを通る光路の方向をどのように制御することができるかを示す。
【0032】
図3は、レンズ本体10の高さHが幅Wよりも大きい場合、図4aに示された実施例と実質的に同じ特性を有することを示す。図4cは、図3及び図4aの実施例と同じ特性を与える別の例を示す。図4cに示された実施例では、レンズ本体10の中央部分は、レンズ本体10の他の部分よりも硬質のポリマーで製作された部分51を含む。
【0033】
レンズ組立体で使用される材料に応じて、レンズ本体は側壁及び/又は透明なカバーと異なる熱膨脹係数を有することがある。この熱膨張係数の不整合により、レンズ組立体に応力が発生し、レンズの光学パラメータに影響を与えることがある。図6に示された実施例の一例において、例えば、熱緩衝開口部70が側壁に配置されるため、レンズ本体は、加熱されるとサイズを拡大することができる。チャネル71は、熱緩衝開口部70に発生するいかなる形態の圧力も緩和するために設けられる。
【0034】
圧電素子に様々な電圧が印加されると、圧電素子が配置されている領域で、取り付けられた透明なカバーが湾曲する。本発明では、信号レベル(電圧レベル)、信号の期間、信号波形などを使用して、レンズ本体の異なる湾曲パターンを達成することができる。そのように協調的に信号を印加することは、2つの透明なカバーのうちの一方に配置された圧電素子に対して、他方の透明なカバーと無関係に行うことも可能であるし、又は、レンズ組立体の両側へ協調的に印加することもできる。その信号パターンの変形及び使用は、圧電素子に取り付けられたコントローラによって管理することができる。図5は、レンズ組立体の両側の圧電素子と電気的につながっている電子補正/制御ユニット60を含む実施例の一例を示す。印加されるべき異なる信号パターンは、組立体における、又はレンズ組立体が一部を構成する光システムの他の場所における、光学パラメータの測定値(図示せず)に基づいて、特定することができる。そして、それは、光システムのフィードバック信号として、又は、電子補正/制御エレクトロニクスなどのメモリに蓄積されている選択されたパターンの信号として特定することができる。実際に発生させて、圧電素子に印加される電圧は、本発明レンズ組立体の用途と直接関連する。当業者には周知の通り、距離計は、カメラの自動焦点システムの一部として、どういう電圧によりレンズ組立体の焦点距離が合った状態になるかについて、電子補正/制御エレクトロニクスに信号で伝える。
【0035】
本発明レンズ組立体を製造する場合、複数の材料をレンズ本体、側壁、透明なカバーなどに使用することができる。以下の表1は、本発明のレンズ本体を製造するために使用できる材料のいくつかの好適な例を含む。対応する熱膨脹係数及び屈折率も示されている。レンズ組立体の用途に応じて、例えば、その用途の予想される温度範囲に応じて、適切な材料の組合せを表から選択し、本発明の実施例を本発明の原理に従って製造することができる。表1は、材料の例を単に示している。本発明の一態様では、可撓性レンズ本体を形成するキャビティに設置することができれば、いかなる透明材料も使用することができる。
【0036】
【表1】
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側壁(11)によって囲まれた可撓性レンズ本体(10)を含むレンズ組立体において、
前記レンズ組立体の上面側において、第1の透明なカバー(13)が前記側壁(11)に取り付けられ、前記第1の透明なカバー(13)には、より厚い中央部分(30)が構成されており、
前記レンズ組立体の下面側において、第2の透明なカバー(14)が前記側壁(11)に取り付けられ、前記第2の透明なカバー(14)には、より薄い中央部分(32)が構成されており、
前記透明なカバー(13、14)が、前記レンズ本体(10)のそれぞれの表面に接触しており、2つの前記透明なカバー(13、14)のうちの少なくとも一方に配置された圧電素子(12)が作動されると、前記少なくとも一方の透明なカバー(13、14)の湾曲により、前記レンズ組立体の焦点距離が調整されるように前記レンズ本体(10)が成形される、レンズ組立体。
【請求項2】
前記第2の透明なカバー(14)が、前記第1の透明なカバー(13)よりも実質的に厚く構成され、前記第2の透明なカバー(14)には、前記より薄い中央部分(32)として凹面形状が設けられ、前記凹面形状が前記レンズ本体(10)に面している、請求項1に記載されたレンズ組立体。
【請求項3】
複数の圧電素子(12)が、あるパターンで、前記透明なカバー(13、14)のうちの少なくとも一方に配置され、前記圧電素子が作動されると、前記透明なカバー(13、14)に特定の湾曲を与える、請求項1に記載されたレンズ組立体。
【請求項4】
前記複数の圧電素子(12)が、リング形状のパターンで配置されている、請求項3に記載されたレンズ組立体。
【請求項5】
前記複数の圧電素子(12)が、直線形状のパターンで配置されている、請求項3に記載されたレンズ組立体。
【請求項6】
プリズム(15)が、前記第1又は第2の透明なカバー(13、14)のうちの少なくとも一方の中央部分において、前記圧電素子(12)の間に配置されている、請求項1に記載されたレンズ組立体。
【請求項7】
前記レンズ本体(10)の高さ(H)が、前記レンズ本体(10)の幅(W)よりも大きい、請求項1に記載されたレンズ組立体。
【請求項8】
ガラス板(50)が、前記レンズ本体(10)の中央部分に配置され、前記レンズ本体(10)を2つの別個で独立に機能するレンズ本体の部分に分割する、請求項1に記載されたレンズ組立体。
【請求項9】
前記ガラス板(50)が、前記レンズ本体(10)の他の部分よりも硬質のレンズ本体材料を含む部分(51)によって置き換えられた、請求項8に記載されたレンズ組立体。
【請求項10】
前記圧電素子の作動が、電子コントローラ(60)から供給される電圧によって行われる、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載されたレンズ組立体。
【請求項11】
前記レンズ組立体の両側の前記圧電素子(12)の作動が、前記電子コントローラ(60)によって協調的に制御される、請求項10に記載されたレンズ組立体。
【請求項12】
前記レンズ組立体の両側の前記圧電素子(12)の作動が、前記電子コントローラ(60)によって独立して制御される、請求項10に記載されたレンズ組立体。
【請求項13】
熱緩衝開口部(70)が、前記側壁(11)に配置される、請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載されたレンズ組立体。
【請求項14】
チャネル(71)が、前記熱緩衝開口部(70)に生じるいかなる圧力も緩和するために前記側壁(11)を貫通して配置される、請求項13に記載されたレンズ組立体。
【請求項1】
側壁(11)によって囲まれた可撓性レンズ本体(10)を含むレンズ組立体において、
前記レンズ組立体の上面側において、第1の透明なカバー(13)が前記側壁(11)に取り付けられ、前記第1の透明なカバー(13)には、より厚い中央部分(30)が構成されており、
前記レンズ組立体の下面側において、第2の透明なカバー(14)が前記側壁(11)に取り付けられ、前記第2の透明なカバー(14)には、より薄い中央部分(32)が構成されており、
前記透明なカバー(13、14)が、前記レンズ本体(10)のそれぞれの表面に接触しており、2つの前記透明なカバー(13、14)のうちの少なくとも一方に配置された圧電素子(12)が作動されると、前記少なくとも一方の透明なカバー(13、14)の湾曲により、前記レンズ組立体の焦点距離が調整されるように前記レンズ本体(10)が成形される、レンズ組立体。
【請求項2】
前記第2の透明なカバー(14)が、前記第1の透明なカバー(13)よりも実質的に厚く構成され、前記第2の透明なカバー(14)には、前記より薄い中央部分(32)として凹面形状が設けられ、前記凹面形状が前記レンズ本体(10)に面している、請求項1に記載されたレンズ組立体。
【請求項3】
複数の圧電素子(12)が、あるパターンで、前記透明なカバー(13、14)のうちの少なくとも一方に配置され、前記圧電素子が作動されると、前記透明なカバー(13、14)に特定の湾曲を与える、請求項1に記載されたレンズ組立体。
【請求項4】
前記複数の圧電素子(12)が、リング形状のパターンで配置されている、請求項3に記載されたレンズ組立体。
【請求項5】
前記複数の圧電素子(12)が、直線形状のパターンで配置されている、請求項3に記載されたレンズ組立体。
【請求項6】
プリズム(15)が、前記第1又は第2の透明なカバー(13、14)のうちの少なくとも一方の中央部分において、前記圧電素子(12)の間に配置されている、請求項1に記載されたレンズ組立体。
【請求項7】
前記レンズ本体(10)の高さ(H)が、前記レンズ本体(10)の幅(W)よりも大きい、請求項1に記載されたレンズ組立体。
【請求項8】
ガラス板(50)が、前記レンズ本体(10)の中央部分に配置され、前記レンズ本体(10)を2つの別個で独立に機能するレンズ本体の部分に分割する、請求項1に記載されたレンズ組立体。
【請求項9】
前記ガラス板(50)が、前記レンズ本体(10)の他の部分よりも硬質のレンズ本体材料を含む部分(51)によって置き換えられた、請求項8に記載されたレンズ組立体。
【請求項10】
前記圧電素子の作動が、電子コントローラ(60)から供給される電圧によって行われる、請求項1から請求項9までのいずれか一項に記載されたレンズ組立体。
【請求項11】
前記レンズ組立体の両側の前記圧電素子(12)の作動が、前記電子コントローラ(60)によって協調的に制御される、請求項10に記載されたレンズ組立体。
【請求項12】
前記レンズ組立体の両側の前記圧電素子(12)の作動が、前記電子コントローラ(60)によって独立して制御される、請求項10に記載されたレンズ組立体。
【請求項13】
熱緩衝開口部(70)が、前記側壁(11)に配置される、請求項1から請求項12までのいずれか一項に記載されたレンズ組立体。
【請求項14】
チャネル(71)が、前記熱緩衝開口部(70)に生じるいかなる圧力も緩和するために前記側壁(11)を貫通して配置される、請求項13に記載されたレンズ組立体。
【図1a】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図4c】
【図1b】
【図1c】
【図2a】
【図2b】
【図2c】
【図2d】
【図3】
【図4a】
【図4b】
【図5】
【図6】
【図4c】
【公表番号】特表2010−518444(P2010−518444A)
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−549025(P2009−549025)
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【国際出願番号】PCT/NO2008/000056
【国際公開番号】WO2008/100154
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(509103646)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成22年5月27日(2010.5.27)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年2月12日(2008.2.12)
【国際出願番号】PCT/NO2008/000056
【国際公開番号】WO2008/100154
【国際公開日】平成20年8月21日(2008.8.21)
【出願人】(509103646)
【Fターム(参考)】
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