説明

焼いた食品製品のための油ベースのコーティング

本発明は、油、香味料、着色料、乳化剤、及び抗酸化剤を含むコーティング組成物を提供する。コーティング組成物は、揚げた食品製品を模擬する食品製品を調製するために使用され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本特許出願は、2009年7月16日に出願された米国仮特許出願第61/226,089号(参照により組み込まれる)の利益を主張する。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
油又は脂肪中で揚げた食品製品は、アメリカ人の食事の人気のある構成要素であり続けている。揚げた食品は飲食店において一般に見られ、またそれらは食料品店において冷凍で入手可能である。油又は脂肪中で揚げた多くの食品は、揚げる前にバッター又はパン粉(breading)のコーティングがなされる。これらのコーティングは、食品の外側をクリスピー(crispy)にさせ、焼き色を付けるために、その食品を調理した脂肪又は油の一部を吸収する。揚げた食品を消費することの健康への影響に関する関心が、近年高まっている。揚げた食品を調製するために使用されるいくつかの脂肪及び油はトランス脂肪を含有し、それは心疾患のリスクを増大させ得る。また、揚げた食品は、それらをあぶったか又は焼いたものよりも、カロリーが高い傾向がある。現在の肥満のまん延を考えれば、消費者は、より低カロリーで、健康的な、彼らのお気に入りの揚げた食品の代替品を捜し求めている。脂肪又は油中で揚げた食品と類似の味及び食感を有するが、伝統的な揚げた食品製品に付随する健康リスクを低減する食品製品が、当該分野において必要とされている。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0003】
本発明は、油、香味料、着色料、乳化剤、及び抗酸化剤を含むコーティング組成物を提供する。コーティング組成物は、食品を揚げることなく揚げた食品の味及び食感を模擬することができる。該組成物でコートされた食品は、揚げた食品よりも典型的には健康的である(例えば、カロリー及びトランス脂肪が少ない)。従って、コーティング組成物は、消費者が、揚げていない食品において、伝統に従って揚げた食品に付随する味及び食感を楽しむことを可能にし、揚げた食品に付随する欠点もない。
【0004】
本発明は、(i)コーティング組成物を水中で乳化させる工程、(ii)食品製品をコーティング組成物と接触させる工程、及び(iii)食品製品を焼く工程を含む、揚げた食品製品を模擬する焼いた食品製品の調製方法も提供する。
【発明を実施するための形態】
【0005】
発明の詳細な説明
本発明によれば、油を含むコーティング組成物が提供される。コーティング組成物は任意の適切な油を含む。好ましくは、油は、大豆油、コーン油、綿実油、ヒマワリ油、菜種油、サフラワー油、パーム油、オリーブ油、落花生油、又はそれらの組合せである。いかなる特定の理論により制約されることも望まないが、高レベルの飽和脂肪を有する油の使用は、より低レベルの飽和脂肪を有する油よりも長い貯蔵寿命を有すると考えられる。しかしながら、より高レベルの飽和脂肪を有する油は、それらの比較的低い融点に起因して、より高い温度においてより凝固しやすく、それは特に冬季に問題となり得る。従って、組成物における使用のために、より低い融点及びより高レベルの飽和脂肪を有する油(例えば、パーム油、ヤシ油)をより高い融点及びより低レベルの飽和脂肪(例えば、大豆油)を有する油と混合することが好ましい。好ましくは、油又は油の混合物は、冬の保管及び輸送中の凝固を避けるために、少なくとも約5℃の融点を有する。例えば、約1部のパーム油に対して少なくとも約6部の大豆油の混合物が有用である(例えば、約1部のパーム油に対して少なくとも約7部の大豆油、約1部のパーム油に対して少なくとも約8部の大豆油、又は約1部のパーム油に対して少なくとも約9部の大豆油)。或いは、油を含む組成物は、保管中に生じたかもしれないいかなる凝固も除去するために、使用の前に加熱され得る。
【0006】
組成物は、任意の適切な量の油を含む。組成物は、少なくとも約85%(重量)の油(例えば、少なくとも約90%、少なくとも約95%、又は少なくとも約98%の油)を含む。或いは、又は加えて、組成物は、約98%(重量)以下の油(例えば、約95%以下の油)を含む。例えば、組成物は、約85%の油〜約98%の油(例えば、約90%〜約98%の油、約95%〜約98%の油、又は約85%〜約90%の油)を含む。
【0007】
組成物は、香味料を更に含む。香味料は、任意の適切な香味料である。好ましくは、香味料は、レモン、バター、バターミルク、チーズ、ディル、ディープファットフライフレーバー(deep fat fried flavors)、植物油、部分的に水素化された植物油、天然香味料、人工香味料、オレオレジン、精油、大豆タンパク質加水分解物、トウモロコシタンパク質加水分解物、小麦タンパク質加水分解物、植物タンパク質加水分解物、又はそれらの組合せである。組成物は、任意の適切な量の香味料を含む。組成物は、少なくとも約0.01%(重量)の香味料(例えば、少なくとも約0.05%、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、又は少なくとも約5%の香味料)を含む。或いは、又は加えて、組成物は、約10%(重量)以下の香味料(例えば、約8%以下、約5%以下、約3%以下、約1%以下、又は約0.5%以下の香味料)を含む。例えば、組成物は、約0.01%の香味料〜約10%の香味料(例えば、約0.05%〜約5%の香味料、約0.1%〜約5%の香味料、又は約0.5%〜約5%の香味料)を含む。
【0008】
組成物は、着色料を更に含む。着色料は、任意の適切な着色料である。好ましくは、着色料は、レーキ、ベータカロチン、パプリカ、ターメリック、カラメル、アナトー、又はそれらの組合せである。最も好ましくは、着色料又はその組合せは、組成物が食品製品に適用された場合に、揚げ物のものと類似の色をもたらす。組成物は、任意の適切な量の着色料を含む。組成物は、少なくとも約0.01%(重量)の着色料(例えば、少なくとも約0.05%、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、又は少なくとも約5%の着色料)を含む。或いは、又は加えて、組成物は、約20%(重量)以下の着色料(例えば、約15%以下、約10%以下、約8%以下、約5%以下、又は約3%以下の着色料)を含む。例えば、組成物は、約0.01%の着色料〜約20%の着色料(例えば、約0.05%〜約15%の着色料、約0.1%〜約10%の着色料、又は約0.5%〜約5%の着色料)を含む。
【0009】
組成物は、乳化剤を更に含む。乳化剤は、任意の適切な乳化剤である。いかなる特定の理論により制約されることも望まないが、乳化剤又はそれらの組合せの親水性成分と親油性成分とのバランスが、組成物を安定化させる乳化剤の能力に影響すると考えられる。好ましくは、乳化剤は、ポリソルベート60、モノグリセリド、ジグリセリド、脂肪酸のポリグリセロールエステル、脂肪酸のプロピレングリコールモノエステル、乳酸化(lactylated)モノグリセリド、アセチル化モノグリセリド、ポリソルベート80、又はそれらの組合せである。組成物は、任意の適切な量の乳化剤を含む。組成物は、少なくとも約0.01%(重量)の乳化剤(例えば、少なくとも約0.05%、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、少なくとも約1%、又は少なくとも約5%の乳化剤)を含む。或いは、又は加えて、組成物は、約15%(重量)以下の乳化剤(例えば、約10%以下、約8%以下、約5%以下、約3%以下、又は約1%以下の乳化剤)を含む。例えば、組成物は、約0.01%の乳化剤〜約15%の乳化剤(例えば、約0.05%〜約10%の乳化剤、約0.1%〜約8%の乳化剤、又は約0.5%〜約5%の乳化剤)を含む。
【0010】
組成物は、抗酸化剤を更に含む。いかなる特定の理論により制約されることも望まないが、抗酸化剤は、組成物の貯蔵寿命を改善すると考えられる。抗酸化剤は、任意の適切な抗酸化剤である。好ましくは、抗酸化剤は、TBHQ(第三ブチルヒドロキノン(tertiary butylhydroquinone))、トコフェロール類、カロチノイド類、天然の抽出物、BHA(ブチルヒドロキシアニソール(butylated hydroxyanisole))、BHT(ブチルヒドロキシトルエン(butylated hydroxytoluene))、又はそれらの組合せである。組成物は、任意の適切な量の抗酸化剤を含む。組成物は、少なくとも約0.001%(重量)の抗酸化剤(例えば、少なくとも約0.01%、少なくとも約0.05%、少なくとも約0.1%、少なくとも約0.5%、又は少なくとも約1%の抗酸化剤)を含む。或いは、又は加えて、組成物は、約5%(重量)以下の抗酸化剤(例えば、約1%以下、約0.5%以下、又は約0.1%以下の抗酸化剤)を含む。例えば、組成物は、約0.001%の抗酸化剤〜約5%の抗酸化剤(例えば、約0.01%〜約1%の抗酸化剤、約0.05%〜約1%の抗酸化剤、又は約0.1%〜約1%の抗酸化剤)を含む。
【0011】
コーティング組成物は、食品製品での使用の前に水中で乳化され得る。いかなる特定の理論により制約されることも望まないが、完成した食品製品の食感の改善をもたらす、食品製品での使用の前のコーティング組成物の最適な含水量があると考えられる。しかしながら、より高レベルの水中のエマルジョンは、完成した食品製品のより望ましくない風味、食感、及び/又は色をもたらし得る。コーティング組成物が乳化される水の量は、完成した食品製品の品質を最適化するために、それが使用される食品製品、加工方法、及び/又は再構成方法に応じて変えることができる。好ましくは、コーティング組成物は、約70%(重量)の水に対して約30%(重量)のコーティングの比率(例えば、約60%(重量)の水に対して約40%(重量)のコーティングの比率、約50%(重量)の水に対して約50%(重量)のコーティングの比率、約40%(重量)の水に対して約60%(重量)のコーティングの比率、又は約30%(重量)の水に対して約70%(重量)のコーティングの比率)で乳化される。例えば、コーティング組成物は、約10%(重量)の水〜約80%(重量)の水(例えば、約20%(重量)の水〜約60%(重量)の水、約30%(重量)の水〜約50%(重量)の水、又は約35%(重量)の水〜約45%(重量)の水)中で乳化され得る。
【0012】
いかなる特定の理論により制約されることも望まないが、エマルジョン安定性は、系内に存在する水と脂肪との相対的な割合及び乳化剤自体の親水性−親油性バランス(hydrophilic-lipophilic balance)(HLB)に依存する可能性がある。HLBは、乳化剤が親水性又は親油性である程度の尺度である。好ましいHLB値は、コーティング組成物中に存在する油及び水の量に依存する。好ましくは、コーティング組成物は、約1〜約10(例えば、約2〜約9、約3〜約8、約4〜約7、又は約4〜約6)の総HLBを有する乳化剤を含有する。
【0013】
コーティング組成物が食品製品での使用の前に水中で乳化される場合、コーティングを含む油は、典型的には、水中に懸濁された液滴を含む。油滴は、任意の適切な大きさを有する。いかなる特定の理論により制約されることも望まないが、より小さな油滴サイズは、エマルジョンの安定性を増大させると考えられる。特定の油滴サイズの達成は、少なくとも部分的には、使用される乳化剤及びエマルジョンを調製するために使用される乳化プロセス(例えば、使用される装置、せん断速度、混合時間)に依存する。乳化剤は、水中に懸濁された油滴の合体を防ぐことにより、エマルジョン安定性を促進すると考えられる。油滴は、典型的には、少なくとも約0.01ミクロン(例えば、少なくとも約0.05、少なくとも約0.1、少なくとも約0.5、少なくとも約1、又は少なくとも約5ミクロン)の平均サイズを有する。或いは、又は加えて、油滴は、約50ミクロン以下(例えば、約40以下、約30以下、約25以下、約20以下、又は約15以下ミクロン)の平均サイズを有する。例えば、油滴は、約0.01ミクロン〜約40ミクロン(例えば、約0.05〜約30ミクロン、約0.1〜約25ミクロン、又は約0.5〜約25ミクロン)の平均サイズを有する。
【0014】
コーティング組成物は、任意の適切な粘度を有する。組成物は、典型的には、少なくとも約10センチポイズ(例えば、少なくとも約20、少なくとも約30、少なくとも約40、少なくとも約50、又は少なくとも約60センチポイズ)の粘度を有する。或いは、又は加えて、組成物は、約400センチポイズ以下(例えば、約350センチポイズ以下、約300センチポイズ以下、約250センチポイズ以下、約200センチポイズ以下、又は約150センチポイズ以下)の粘度を有する。例えば、組成物は、約30センチポイズ〜約400センチポイズ(例えば、約30〜約300センチポイズ、約30〜約200センチポイズ、約30〜約150センチポイズ、又は約50〜約100センチポイズ)の粘度を有する。組成物の粘度は、Brookfield LVF粘度計を使用して、スピンドルサイズ1及び2、12rpmにて、約15−21℃のサンプル温度で測定された。
【0015】
好ましくは、コーティング組成物は、親水性コロイドを実質的に含まない。親水性コロイドとしては、デンプン、天然ガム、及び化学修飾された天然多糖類が挙げられる。親水性コロイドは、一般に、油に溶解せず、コーティング組成物に添加された場合、組成物から分離して沈殿し、それらを組成物での使用に不適切にする。
【0016】
本発明は、(i)コーティング組成物を水中で乳化させる工程、(ii)食品製品をコーティング組成物と接触させる工程、及び(iii)食品製品を焼く工程を含む、揚げた食品製品を模擬する焼いた食品製品の調製方法も提供する。
【0017】
コーティング組成物は、任意の適切な様式で調製され得る。例えば、油の一部が容器に添加され得、ミキサーが挿入されて作動し、次いで乳化剤が添加され、その後着色料、香味料、抗酸化剤、及び残りの油が添加される。好ましくは、組成物は、油中での乳化剤の分散を促進するために、乳化剤の添加時に加熱される。これは、蒸気ジャケット付き(steam jacked)混合タンクを使用する間接的な蒸気の注入などの、任意の適切な方法を使用して達成され得る。いかなる特定の理論により制約されることも望まないが、間接加熱法は、コーティング組成物の成分との反応をもたらす可能性が低いため、直接加熱法(例えば、直接的な蒸気の注入)よりも好ましいと考えられる。
【0018】
コーティング組成物は、任意の適切な様式で水中で乳化され得る。例えば、水が容器に添加され、ミキサーが挿入されて作動し、次いで組成物が添加される。或いは、水及びコーティング組成物の両方が容器に添加され、次いで混合される。好ましくは、水が最初に添加され、その後組成物が添加される。ワーリングブレンダー、ボウルチョッパー(bowl chopper)(例えば、Stephan垂直カッターミキサー モデルNo. UMM/SK 24 E)、又はロトソルバー(rotosolver)(例えば、ADMIXロトソルバー)などの、任意の適切な混合デバイスが使用され得る。いかなる特定の理論により制約されることも望まないが、食品製品での使用のために十分安定なエマルジョンを作り出すのに十分小さい油滴を生み出すためには、十分なせん断力が必要であると考えられる。
【0019】
コーティング組成物は、任意の適切な様式で食品製品に適用され得る。例えば、食品製品は、コーティング組成物に浸され得る。より好ましくは、コーティング組成物は、食品製品上に噴霧される。回転ディスク型アプリケーター(例えば、Fedcoサイクロンリキッドコーター)などの、任意の適切なデバイスが使用され得る。いかなる特定の理論により制約されることも望まないが、食品製品上へのコーティング組成物の噴霧は、他の方法と比較した場合、食品製品に付着するコーティングの量を低減させ、従って、脂肪及びカロリーレベルを低減させると考えられる。コーティング組成物を噴霧された食品製品は、よりクリスピーで、且つそれ程柔らかかったりよく噛む必要があったりせず(less mushy and chewy)、従って揚げ物により類似しているとも考えられる。
【0020】
食品製品は、任意の適切な食品製品であり得る。例えば、食品製品は、チーズ、鳥肉、牛肉、豚肉、魚、海産食品、野菜、果物、肉類似物(meat analogs)、又はそれらの組合せであり得る。食品製品は、コーティング組成物の適用の前に、未加工であるか、調理されるか、部分的に調理されるか、及び/又は凍結され得る。食品製品は、コーティング組成物に接触する前に、バッター、パン粉、又はそのようなものの組合せでコートされ得る。食品製品及び/又はバッター若しくはパン粉は、着色料、香味料、又は他の添加物などの追加の成分を含有し得る。好ましくは、食品製品はブレッドクラム(bread crumbs)(それは、焼かれた場合に食品製品に、フライ製品をまねる望ましい色及び食感を与える)でコートされる。任意の適切なブレッドクラム調合物(formulation)が使用され得る。例えば、クラッカーミール(crackermeal)ブレッドクラム、アメリカンブレッドクラム、ジャパニーズブレッドクラム、及び/又は押出された(extruded)ブレッドクラムが使用され得、それらは市販されている。ブレッドクラムの選択は、部分的には、食品製品の所望の外観及び食感による。
【0021】
コーティング組成物との接触の後、食品製品は、任意の適切な様式で焼かれ得る。例えば、従来式のオーブン(対流式オーブンを含む)が食品製品を焼くために使用され得る。ベーキング時間及び温度は、食品製品の性質によって変わる。コーティング組成物との接触の後、焼く前に、食品製品は凍結され得る。食品製品は、焼いた後にも凍結され得る。
【実施例】
【0022】
以下の実施例は本発明を更に説明するが、勿論、いかなる意味においてもその範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。
【0023】
実施例1
本実施例は、本発明コーティング組成物の好ましい調合物の調製を説明する。
【0024】
2つの異なるアジテーター(液体をタンクの中央に導く「掃引」型アジテーター及び液体を上下に動かす「液化機」型アジテーター)を備えた蒸気ジャケット付き混合タンク中で、組成物を調製した。両方のアジテーターは、製造プロセス全体を通じて動いていた。液化機アジテーター(約25%の油)を覆うのに十分な油をタンクに添加した。掃引及び液化機アジテーターを、20の速度に設定した。乳化剤を添加し、混合物を65.5℃の温度に加熱し、乳化剤の適切な分散を促進させた。組成物への水の導入を防ぐために、そして組成物のその後の保管及び流通の間に起こり得る微生物腐敗の増大及び起こり得る病原性細菌の増殖を防ぐために、加熱は間接的にした。乳化剤を適切に分散させた時点で、蒸気を止め、環境条件下で混合物の温度を低下させた。冷却を行なっている間に、着色料、香味料及び抗酸化剤を添加し、その後残りの油を添加した。組成物を更に10分間混合した。混合が完了した後、保管のために組成物を容器に注ぎ込んだ。
【0025】
コーティング組成物中の各成分の重量パーセントを下記表1に示す。
【表1】

【0026】
実施例2
本実施例は、コーティング組成物の貯蔵寿命への抗酸化剤の影響を説明する。
【0027】
抗酸化剤を除外したこと以外は上記実施例1に記載したように、組成物を調製した。次いで、組成物を4つの136kgバッチに分け、それらのそれぞれを、逆回転アジテーターを有する表面掃引ケトル(swept surface kettle)に入れた。アジテーターを低速で運転し、0.1wt%TBHQ、0.05wt%ローズマリー抽出物、0.12wt%ローズマリー抽出物、又は0.2wt%ローズマリー抽出物を添加した。次いで、環境温度(およそ21.11℃)で10分間、組成物を混合した。組成物を蓋付きの清潔なバケツに移し、倉庫内に環境温度で保管した。調製日、1ヶ月後、2ヶ月後、及び4ヶ月後に、各組成物を、その感覚的特性への効果について評価し、2−チオバルビツール酸(TBA)及び過酸化物価について分析した。結果を表2に記載する。
【表2】

【0028】
上記表2に記載した結果から明らかなように、両方のタイプの抗酸化剤が、酸敗を効果的に低減することにより、組成物の貯蔵寿命を改善した。
【0029】
実施例3
本実施例は、コーティング組成物において種々の油を使用することの影響を説明する。
【0030】
6つの異なる油(下記表3に示す)をビーカーに入れた。次いで、約1分間手作業で撹拌しながら、実施例1において特定した着色料、香味料、乳化剤及び抗酸化剤を実施例1に示す量で、6つの組成物のそれぞれに添加した。混合物をワーリングブレンダーに移し、組成物を40wt%の水に対して60%の組成物の比率に希釈しながら、ワーリングブレンダーを低速で作動させた。速度を90秒間高速にした。次いで、エマルジョンをビーカーに移し、2時間にわたりエマルジョン安定性について視覚的に観察した。結果を表3に記載する。
【表3】

【0031】
上記表3に記載した結果から明らかなように、組成物3A及び3D−3Fは安定なエマルジョンを形成し、凝固せず、フードプロセッサーが食品製品上にそれらを塗布し得るような十分に安定なエマルジョンを形成した。組成物3B及び3Cは凝固し且つ/又は不安定であり、従ってコーティング組成物として不安定であった。食品製品上にコーティング組成物を塗布するために使用される市販の食品加工装置の固有の設計特性は、コーティング組成物が室温で流動性の液体であることを必要とする。また、凝固した脂肪組成物は、食品製品の一貫性のある均一な被覆をもたらさない。コーティング組成物はまた、食品製品上への塗布を可能にするのに十分長く安定なままでなければならない。コーティング組成物が使用される前又は使用されている間に油相と水相との分離が始まれば、ある食品製品は水でコートされるのに対し、他の製品は組成物でコートされ、一貫性のない味及び食感をもたらすだろう。いかなる特定の理論により制約されることも望まないが、組成物3B及び3C中に存在する飽和脂肪のレベルの増加が、少なくとも部分的には、コーティング組成物の凝固をもたらしたと考えられる。
【0032】
実施例4
本実施例は、コーティング組成物において種々の油及び乳化剤の組み合わせを使用することの影響を説明する。
【0033】
9つの異なる油をビーカーに入れ、続いて下記表4に示す量で乳化剤(複数可)を入れた。約1分間手作業で撹拌しながら0.06wt%パプリカ抽出物、0.8wt%ディープファットフライフレーバー、及び0.097wt%TBHQ。混合物をワーリングブレンダーに移し、40wt%の水に対して60%の組成物の比率に希釈しながら、ワーリングブレンダーを低速で作動させた。次いで、速度を90秒間高速にした。次いで、エマルジョンをビーカーに移し、2時間にわたりエマルジョン安定性について視覚的に観察した。結果を表4に記載する。各組成物のHLBを見積もり、表4に記載する。
【表4−1】

【表4−2】

【0034】
上記表4に記載した結果から明らかなように、組成物4C及び4Fは、安定な、使用可能なエマルジョンを形成したのに対して、全ての他のエマルジョンは、不安定性に起因して使用に適さなかった。組成物4C及び4FのHLBは、約4〜約6の範囲にわたった。いかなる特定の理論により制約されることも望まないが、コーティング組成物の安定なエマルジョンを形成する能力は、系内に存在する水及び脂肪の相対量並びに乳化剤自体のHLBに依存すると考えられる。
【0035】
実施例5
実施例5は、コーティング組成物に種々の親水性コロイドを添加することの影響を説明する。
【0036】
ビーカーに下記表5に示す量で大豆油を添加し、続いて約2〜3分間手作業で撹拌しながら下記表5に示す量のパプリカ抽出物、0.08wt%ターメリック抽出物、0.8wt%ディープファットフライフレーバー、及び下記表5に示す量の親水性コロイドを添加することにより、5つの異なる組成物を調製した。次いで、組成物をビーカーに移し、エマルジョン安定性について視覚的に観察した。結果を表5に記載する。
【表5】

【0037】
上記表5に記載した結果から明らかなように、いずれの親水性コロイドも安定なエマルジョンを形成することができなかった。いかなる特定の理論により制約されることも望まないが、水溶性/反応性親水性コロイドは、結合するものが何もなく、それがすぐに沈降する傾向をもたらすと考えられる。沈降すれば、親水性コロイドを完全に再懸濁させる実際的な方法はない。
【0038】
実施例6
実施例6は、完成した食品製品の品質への、コーティング組成物のエマルジョンにおける水に対するコーティング組成物の比率の影響を説明する。
【0039】
ビーカーに96.9629wt%大豆油を添加し、続いて約1分間手作業で撹拌しながら0.06wt%パプリカ抽出物、0.08wt%ターメリック抽出物、0.8wt%ディープファットフライフレーバー、1.5wt%モノ及びジグリセリド、並びに0.0971wt%TBHQを添加することにより、3つの組成物を調製した。次いで、2つの組成物を、水を添加しながら低速で作動させたワーリングブレンダーを使用して、下記に示す量の水と混合した。次いで、速度を90秒間高速にした。3つの組成物を、100wt%水コントロールと共に、パン粉をまぶした鶏肉上に噴霧し、結果を表6に記載する。エマルジョンを噴霧する前に、鶏肉にケリーG7102プレダストパン粉(Kerry G7102 Predust Breading)をまぶし、ケリーG7091バッター(31.25%水:68.75%G7091に希釈した)を付け、ケリーG5890ジャパニーズブレッドクラムを付けた。全ての鶏肉製品を、食事のための準備でオーブンで調理する前に、一定温度に凍結した。
【表6】

【0040】
上記表6に記載した結果から明らかなように、コーティング組成物に対する水の比率は、完成した食品製品の食感、色及び風味に影響する。組成物の割合が増加し、水の割合が低下するにつれて、食味及び視覚的な色は、揚げた食品製品のものにより類似するようになり、ディープファットフライフレーバー、色及びクリスプさの増加をもたらす。しかしながら、水の割合が低下し続けるにつれて、食品製品の水分レベルも低下し、ジューシーさがより少なく、従ってより魅力的でない触感を有する製品をもたらす。
【0041】
実施例7
実施例7は、コーティング組成物のエマルジョンの調製において使用する混合装置の種類の影響を説明する。
【0042】
96.9629wt%大豆油を容器に添加し、続いて約1分間手作業で撹拌しながら0.06wt%パプリカ抽出物、0.08wt%ターメリック抽出物、0.8wt%ディープファットフライフレーバー、1.5wt%モノ及びジグリセリド、0.5wt%ポリソルベート60並びに0.0971wt%TBHQを添加することにより、5つの組成物を調製した。次いで、組成物を40wt%水に対して60%組成物の比率に希釈しながら、各組成物を下記表7に記載するように混合した。Malvern Instruments Ltd.製のMastersizer 2000を使用して、油滴の大きさを測定し、下記表7に記載する。
【表7】

【0043】
上記表7に記載した結果から明らかなように、組成物7B−7Eは安定なエマルジョンを形成したのに対し、おそらく、組成物中に懸濁されたままであるのに十分小さい油粒子を作り出すための十分なせん断力をライトニング(lightning)ミキサーが生み出さなかったため、組成物7Aは不安定だった。ワーリングブレンダー、Admixロトソルバー及びStephanボウルチョッパーはいずれも、ライトニングミキサーよりも高いせん断力を生み出し、従って、約40ミクロン未満の平均サイズ(これは、乳化剤が油滴を効果的に取り囲み、それらを水相内で懸濁状態に維持するほど十分小さい)を有する油滴をもたらす。
【0044】
実施例8
本実施例は、チキンテンダーへのコーティング組成物の使用を説明する。
【0045】
解凍したチキンテンダーにケリーG7102プレダストパン粉をまぶし、次いで水で希釈したケリーG7091バッター(31.25%水:68.75%G7091)を付けた。次いでチキンにケリーG5890ジャパニーズブレッドクラムを付けた。次いで、Fedcoサイクロンリキッドコーターマシンを使用して、実施例1に記載のコーティング組成物(60%コーティング組成物に対して40%水の比率で水中で乳化した)をチキンに噴霧した。水をボウルに入れ、次いでコーティング組成物を添加し、1分間高速で混合することにより、エマルジョンをStephanボウルチョッパー中で調製した。
【0046】
最終製品中の各成分の重量パーセントを下記表8に示す。
【表8】

【0047】
実施例9
本実施例は、魚へのコーティング組成物の使用を説明する。
【0048】
市販の成形されたポラックの切り身(wedges)に、まず水で希釈したケリーG6046 Adhesoバッター(63%水:37%G6046)をまぶし、続いてケリーG3301プレダストパン粉をまぶした。次いで、水で希釈したケリーG6046 Adhesoバッターの第二のコートを塗布し、続いてケリーG5890ジャパニーズブレッドクラムをまぶした。次いで、実施例1に記載のコーティング組成物(60%コーティング組成物に対して40%水の比率で水中で乳化した)を魚に噴霧した。段落0031の記載と同様に、エマルジョンをStephanミキサー中で調製し、Fedcoサイクロンコーターを用いて塗布した。
【0049】
最終製品中の各成分の重量パーセントを下記表9に示す。
【表9】

【0050】
本明細書中に引用された全ての参考文献(刊行物、特許出願、及び特許を含む)は、各参考文献が参照により組み込まれることが個々に且つ具体的に示され、またその全体が本明細書中で説明されたのと同程度まで、参照により本明細書に組み込まれる。
【0051】
本発明の好ましい実施形態が本明細書中に記載されており、本発明を実施するための、本発明者らが知る最良の形態を含む。それらの好ましい実施形態のバリエーションは、前述の記載を読めば、当業者に明らかになり得る。従って、本発明は、適用法により許容されるような、本明細書に添付された特許請求の範囲に列挙された主題の全ての改変物及び均等物を含む。更に、上記要素の全ての可能なバリエーションでの上記要素の任意の組み合わせが、本明細書中に別途示されない限り、又はさもなくば文脈により明らかに矛盾しない限り、本発明により包含される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも約85重量%の油、約0.05重量%〜約5重量%の香味料、約0.1重量%〜約10重量%の着色料、約0.5重量%〜約5重量%の乳化剤、及び約0.01重量%〜約1重量%の抗酸化剤を含む、食品製品用コーティング組成物。
【請求項2】
油が、大豆油、コーン油、綿実油、ヒマワリ油、菜種油、サフラワー油、パーム油、オリーブ油、落花生油、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項3】
香味料が、ディープファットフライフレーバー、植物油、部分的に水素化された植物油、天然香味料、人工香味料、オレオレジン、精油、大豆タンパク質加水分解物、トウモロコシタンパク質加水分解物、小麦タンパク質加水分解物、植物タンパク質加水分解物、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項4】
着色料が、レーキ、ベータカロチン、パプリカ、ターメリック、カラメル、アナトー、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項5】
乳化剤が、ポリソルベート60、モノグリセリド、ジグリセリド、脂肪酸のポリグリセロールエステル、脂肪酸のプロピレングリコールモノエステル、乳酸化モノグリセリド、アセチル化モノグリセリド、ポリソルベート80、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項6】
少なくとも約90重量%の油を含む、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項7】
約30〜約400センチポイズの粘度を有する、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項8】
食品製品での使用の前に水中で乳化される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項9】
約0.5〜約25ミクロンの大きさを有する油滴を含む、請求項8に記載のコーティング組成物。
【請求項10】
親水性コロイドを実質的に含まない、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項11】
抗酸化剤が、TBHQ、トコフェロール類、カロチノイド類、天然の抽出物、BHA、BHT、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項1に記載のコーティング組成物。
【請求項12】
以下を含む、揚げた食品製品を模擬する焼いた食品製品の調製方法:
(i) 少なくとも約85重量%の油、約0.05重量%〜約5重量%の香味料、約0.1重量%〜約10重量%の着色料、約0.5重量%〜約5重量%の乳化剤、及び約0.01%〜約1%の抗酸化剤を含むコーティング組成物、
(ii) コーティング組成物を水中で乳化させる工程、
(iii)前記食品製品をコーティング組成物と接触させる工程、並びに
(iv) 前記食品製品を焼く工程。
【請求項13】
油が、大豆油、コーン油、綿実油、ヒマワリ油、菜種油、サフラワー油、パーム油、オリーブ油、落花生油、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項14】
香味料が、ディープファットフライフレーバー、植物油、部分的に水素化された植物油、天然香味料、人工香味料、オレオレジン、精油、大豆タンパク質加水分解物、トウモロコシタンパク質加水分解物、小麦タンパク質加水分解物、植物タンパク質加水分解物、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項15】
着色料が、レーキ、ベータカロチン、パプリカ、ターメリック、カラメル、アナトー、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項16】
乳化剤が、ポリソルベート60、モノグリセリド、ジグリセリド、脂肪酸のポリグリセロールエステル、脂肪酸のプロピレングリコールモノエステル、乳酸化モノグリセリド、アセチル化モノグリセリド、ポリソルベート80、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項17】
コーティング組成物が少なくとも約90重量%の油を含む、請求項12に記載の方法。
【請求項18】
コーティング組成物が、約30重量%〜約50重量%の水中で乳化される、請求項12に記載の方法。
【請求項19】
コーティング組成物が食品製品上に噴霧される、請求項12に記載の方法。
【請求項20】
コーティング組成物が約30〜約400センチポイズの粘度を有する、請求項12に記載の方法。
【請求項21】
食品製品が、コーティング組成物を接触させる前にバッター又はパン粉でコートされる、請求項12に記載の方法。
【請求項22】
食品製品が、チーズ、鳥肉、牛肉、豚肉、魚、海産食品、野菜、果物、肉類似物、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。
【請求項23】
コーティング組成物が親水性コロイドを実質的に含まない、請求項12に記載の方法。
【請求項24】
抗酸化剤が、TBHQ、トコフェロール類、カロチノイド類、天然の抽出物、BHA、BHT、及びそれらの組合せからなる群から選択される、請求項12に記載の方法。

【公表番号】特表2012−533300(P2012−533300A)
【公表日】平成24年12月27日(2012.12.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−520667(P2012−520667)
【出願日】平成22年7月7日(2010.7.7)
【国際出願番号】PCT/US2010/041206
【国際公開番号】WO2011/008602
【国際公開日】平成23年1月20日(2011.1.20)
【出願人】(506153859)ケリー グループ サーヴィシーズ インターナショナル、リミテッド (5)
【Fターム(参考)】