説明

焼き台

【課題】貝類を焼いたときの汁の飛散を防止することができ、寒い時期に簡素な牡蠣小屋で使用した場合でも十分に暖を採ることが可能であり、汎用の鋼材で簡単かつローコストで生産することができる焼き台を提供する。
【解決手段】少なくとも炭火で食材を焼くことが可能な焼き台1であって、炭を保持するための底壁11、及び焼網61又は鉄板を支持するための一対の側壁12、12を有し、焼網61又は鉄板が食材の焼き場となる焼き台本体10と、この焼き台本体10の上方に位置し、前記焼き場に交差する正面21、及び焼き場を覆う上面22を有する、断面が略T字形又は略逆L字形の遮蔽板20と、を備えた構成としてある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、肉、魚介類、野菜などの食材を炭火や薪火などで焼くための焼き台に関し、特に、焼いている最中に汁が飛散する貝類に好適な焼き台に関する。
【背景技術】
【0002】
日本の各地には、海岸沿いで取れたての魚介類を提供する店舗がある。このような店舗の中でも牡蠣小屋は、焼き牡蠣の提供を名物としている。一般的な牡蠣小屋は、柱と屋根を主とする簡素な建物、プレハブ、ビニールハウスの形態を採る。このような牡蠣小屋では、牡蠣、栄螺、帆立、烏賊、蟹などの魚介類を販売しており、顧客が購入した魚介類は、小屋内に設置された焼き台で焼いて食べることができる。
【0003】
牡蠣小屋に設置されている従来の焼き台は、主として、金属板を折り曲げ加工した箱状の焼き台本体からなる。焼き台本体の側壁には通気孔が設けてあり、箱状の開口には焼網が覆い被せてある。このような焼き台本体の中で炭や薪を燃やし、焼網の上に牡蠣などの魚介類を載せて焼く。従来の焼き台では、焼網を取り囲むようにテーブル板が設けてあり、牡蠣小屋を訪れた顧客は、焼き台を取り囲んで座り、購入した魚介類を焼いて食べる。
【先行技術文献】
【非特許文献】
【0004】
【非特許文献1】アキラ、「糸島半島牡蠣小屋ガイド『これが牡蠣小屋だ!』」、2008年、[online]、[平成23年8月16日検索日]、インターネット<http://itosima-kaki.askanditsgiven.biz/a02.html>
【非特許文献2】T・齋藤、「Daily Portal Z 土曜ワイド工場『カキ小屋に行って来た』」、[online]、2005年2月12日、@nifty、[平成23年8月16日検索日]、インターネット<http://portal.nifty.com/special05/02/12/index.htm>
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところが、上述した従来の焼き台で牡蠣や帆立などの貝類を焼くと、加熱された貝の身が弾けて、顧客に熱い汁が飛散するという問題があった。このような問題に対処するため、従来の焼き台では、貝の開き口を人のいない方に向けて焼くことで対処していた。しかし、焼き台の四方を複数人の顧客で囲んだ場合には、貝の開き口を人のいない方に向けることはできない。また、貝類の汁や臭いが衣服に付かないように、ビニールのカッパを貸し出す牡蠣小屋もあるが、カッパを着ながらの飲食は煩わしい。
【0006】
また、日本で最もポピュラーな真牡蠣の季節は冬であり、一般的な牡蠣小屋は、11〜3月末までの寒い時期に営業を行う。このような期間限定の店舗である牡蠣小屋は、断熱性の低い簡素な建物である場合が多く、単に焼き台の炭火を囲っているだけでは、顧客が十分に暖を取れないという問題もあった。
【0007】
さらに、従来の焼き台は、単に金属板を折り曲げ加工した箱状であったため、屋外やこれに近い簡素な牡蠣小屋で使用することができても、安全性の面から街中のレストランや居酒屋などの通常の店舗で使用することができないという問題があった。安全性の面以外でも、上述した貝類の熱い汁が飛散する問題があり、従来の焼き台では、顧客の衣服や店舗内を汚してしまう。
【0008】
ここで、焼き台の本質的機能は、肉、魚介類、野菜などの食材を焼くという単純なものであり、コストをかけて上記問題を解決することができたとしても、高価な焼き台は一般に普及せず、これでは我が国の産業の発達に貢献することはできない。
【0009】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、貝類を焼いたときの汁の飛散を防止することができ、寒い時期に簡素な牡蠣小屋で使用した場合でも十分に暖を採ることが可能であり、汎用の鋼材で簡単かつローコストで生産することができる焼き台の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するため、本発明の焼き台は、少なくとも炭火で食材を焼くことが可能な焼き台であって、炭を保持するための底壁、及び焼網又は鉄板を支持するための一対の側壁を有し、前記焼網又は鉄板が前記食材の焼き場となる焼き台本体と、前記焼き台本体の上方に位置し、前記焼き場に交差する正面、及び前記焼き場を覆う上面を有する、断面が略T字形又は略逆L字形の遮蔽板と、を備えた構成としてある。
【0011】
上記構成によれば、焼き場に交差する正面、及び焼き場を覆う上面を有する、断面が略T字形又は略逆L字形の遮蔽板を備えた構成となっているので、本焼き台で貝類を焼く場合に、貝の開き口を遮蔽板の正面に向ければ、貝類から飛散した汁を正面及び上面で受けることができる。これにより、本焼き台の周囲に貝類の汁が飛散することを防止できる。
【0012】
ここで、断面が略T字形の遮蔽板は、焼き場の中央に配置することで、該焼き場を2つのエリアに分割する。これにより、例えば、本焼き台を挟んで顧客どうしが対面し、遮蔽板を境にして両側の焼き場をそれぞれ利用することができる。一方、断面が略逆L字形の遮蔽板は、焼き台本体の一側壁に配置することで、焼き場側を覆う。これにより、例えば、焼き物を提供する店舗の店員が、遮蔽板を境にして焼き場側で食材を焼き、遮蔽板を境にして焼き場と反対側で、顧客が焼き物の提供を受けるようにすることができる。
【0013】
また、本焼き台における遮蔽板の断面形状は、厳密なT字形、逆L字形に限定されるものではない。遮蔽板は、飛散した貝類の汁を正面及び上面で受けることができるものであればよく、例えば、正面と上面とが直交するもの以外にも、これら正面と上面とが曲面で弧状に連続するものであってもよい。また、遮蔽板の断面形状は、T字形に類似する略Y字形、逆L字形に類似する略く字形であってもよい。
【0014】
さらに、焼き台本体及び遮蔽板の材料は、使用目的に応じた強度及び耐熱性を有するものであれば、特に限定されるものではなく、例えば、後述する鋼材などの金属製、コンクリート製とすることが可能である。また、例えば、遮蔽板又は焼き台本体を、遠赤外線を放出する石板で構成すれば、食材を美味しく焼くことができるとともに、本焼き台の暖房効果も向上する。
【0015】
好ましくは、前記焼き台本体をH形鋼、I形鋼又は溝形鋼とするとともに、前記遮蔽板をT形鋼又はL形鋼とし、前記H形鋼又はI形鋼又は溝形鋼の長手方向に沿って、前記T形鋼又はL形鋼を配設し、前記焼き場の少なくとも一部を垂直方向及び水平方向に覆った構成にするとよい。
【0016】
上記構成によれば、本発明の焼き台を、汎用の鋼材で簡単かつローコストで生産することが可能となる。また、遮蔽板を平面からなる鋼材としたことにより、該遮蔽板の焼き場を覆う上面が炭火によって加熱され、該遮蔽板を、食材を焼いたり、焼き上がった食材を保温したりするための鉄板として利用することができる。
【0017】
すなわち、本焼き台の構成要素である焼き台本体は、少なくとも炭火で食材を焼くことが可能であり、炭を保持するための底壁、及び焼網又は鉄板を支持するための一対の側壁を有する構成となっている。これに対し、汎用のH形鋼、I形鋼又は溝形鋼は、いずれも前記底壁となるウェブと、前記側壁となる一対のフランジとを有し、炭火で食材を焼くのに十分な耐久性を有している。したがって、汎用のH形鋼、I形鋼又は溝形鋼を所望する長さに切断し、そのまま焼き台本体として利用することができる。
【0018】
また、本焼き台の構成要素である遮蔽板は、焼き場に交差する正面、及び焼き場を覆う上面を有する、断面が略T字形又は略逆L字形の構成となっている。これに対し、前記T形鋼又はL形鋼は、いずれも前記正面となるウェブと、前記上面となるフランジとを有し、断面が略T字形又は略逆L字形となっている。したがって、汎用のL形鋼を所望する長さに切断し、そのまま遮蔽板として利用することができる。
【0019】
ここで、遮蔽板を構成するT形鋼及びL形鋼は、互いに直交するウェブ及びフランジを一つずつ有するものであればよく、T形鋼は「CT形鋼」、L形鋼は「山形鋼」と呼ばれる鋼材と同義である。したがって、「CT形鋼」及び「山形鋼」に含まれる各種鋼材も、ここでいうT形鋼及びL形鋼に全て含まれる。
【0020】
好ましくは、前記焼き台本体の底壁に、前記側壁に沿って延びる一対の突出部を設け、これら突出部が炭を載置するための金網を支持する構成にするとよい。
【0021】
上記構成によれば、焼き台本体の底壁に一対の突出部を設け、これら突出部に支持された金網に炭を載置することとしたので、焼き台本体の底壁に炭が直接接しなくなる。これにより、焼き台本体の底壁の焦げ付きを防止することができ、焼き台本体の清掃及びメンテナンスが容易となる。
【0022】
好ましくは、前記焼き台本体の底壁に開口部を設けるとともに、前記開口部の直下に金属製の燃えさし回収箱を配設した構成にするとよい。
【0023】
上記構成からなる本焼き台では、上述した金網に載置した炭が燃えて小さくなると、金網の目を通って、底壁の開口部から金属製の燃えさし回収箱に落下する。箱内に炭の燃えさしが集まると、金属製の燃えさし回収箱が加熱され、火鉢のように輻射熱を発する。この輻射熱によって、本焼き台を囲む顧客の足下を温めることができる。したがって、本焼き台によれば、寒い時期に簡素な牡蠣小屋で使用した場合でも十分に暖を採ることが可能である。
【0024】
好ましくは、前記焼き台本体に、前記遮蔽板と平行なテーブル板を配設した構成にするとよい。
【0025】
上記構成によれば、テーブル板に着いた顧客又は店員は、焼き場を挟んで遮蔽板と対向することになり、貝の開き口を遮蔽板の正面に向けて焼き場に載せれば、貝類を焼いている最中に汁の飛散を受けることがない。したがって、本焼き台を使用すれば、顧客又は店員は、貝類からの熱い汁の飛散を心配することなく、安心して食材を焼くことができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の焼き台によれば、貝類を焼いたときの汁の飛散を防止することができ、寒い時期に簡素な牡蠣小屋で使用した場合でも十分に暖を採ることが可能であり、汎用の鋼材で簡単かつローコストで生産することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の第1実施形態に係る焼き台を示す斜視図である。
【図2】上記焼き台の分解斜視図である。
【図3】同図(a)及び(b)は図1のA−A線断面図であり、上記焼き台の使用状態を示すものである。
【図4】本発明の第2実施形態に係る焼き台を示す斜視図である。
【図5】同図(a)及び(b)は図4のB−B線断面図であり、上記焼き台の使用状態を示すものである。
【発明を実施するための形態】
【0028】
<第1実施形態>
以下、本発明の第1実施形態に係る焼き台について、図1〜3を参照しつつ説明する。本実施形態の焼き台は、焼き台本体にH形鋼、遮蔽部にT形鋼を用いた構成としてある。
【0029】
図1及び図2において、本実施形態の焼き台1は、主として、焼き台本体10、遮蔽板20、大小アングル31及び32、突出部40、テーブル板50、燃えさし回収箱70、基台80で構成してある。
【0030】
<<焼き台本体>>
本実施形態の焼き台本体10は、汎用のH形鋼を任意の長さに切断し、このH形鋼をウェブが底壁11、一対のフランジが側壁12、12となるように横倒しにした構成となっている。H形鋼の金属材料は、特に限定されないが、安価で溶接性に優れたSS(Steel Structure)材を用いるとよい。このような焼き台本体10は、コンクリートブロックである基台80、80の上に載置してある。
【0031】
焼き台本体10の寸法としては、例えば、図1及び図2に示す状態で、フランジの高さ=300mm、ウェブの幅=300m、長さ=1000mmにする。この寸法とした場合は、焼き台本体10の長手方向に沿って大人2人がゆとりをもって並んで座り、焼き台本体10を挟んで合計4名が対面して食材を焼くことができる。
【0032】
焼き台本体10の底壁11の両側には、長手方向に延びる一対の突出部40、40が敷設してある。各突出部40には、縦横寸法の小さいL形鋼(山形鋼)を用いている。例えば、焼き台本体10の長さを1000mmとした場合、各突出部40の長さは900mm程度とする。
【0033】
各突出部40の上には、底壁11の面積に対応する金網62を乗せ、この金網62の上に炭202を載置する(図3を参照)。また、焼き台本体10の底壁11の中央には、長方形の開口部11aが設けてある。この開口部11aの直下には、燃えさし回収箱70が着脱自在に取り付けてある。この燃えさし回収箱70は、例えば、スチール又はステンレススチールなどの金属板からなり、その開口周辺に取付用のフランジ部71が連成してある。図3(b)に示すように、燃えさし回収箱70は、焼き台本体10の各側壁12の下端側にそれぞれ設けた保持部11b、11bによって保持され、2つの基台80、80の間に吊り下げられる。
【0034】
図1及び図2に戻り、焼き台本体10の各側壁12の上端面には、食材の焼き場となる3枚の焼網61、61、61が載置される。焼網は、焼き台本体10の大きさに対応する1枚としてもよいが、本実施形態では、一般的な大きさの焼き網61を3枚用いることとした。このような構成とすることにより、本焼き台1に市販の焼網をそのまま用いることができるとともに、汚れた焼網61だけを簡単迅速に交換することができる。
【0035】
また、焼き台本体10の各側壁12の両端面には、一対の大アングル31、31が溶接してある。各大アングル31は、それぞれ断面L字形のSS材からなり、L字の一面が水平になるように固定してある。各大アングル31の水平面には、後述する遮蔽板20が載置されるとともに、図中点線で示す四方のテーブル板50が固定される。テーブル板50としては、例えば、比較的安価な杉、欅、檜、栃、楢、たもなどの木材を用いるとよい。
【0036】
なお、本実施形態では、焼き台本体10としてH形鋼を用いているが、これに限定されるものではなく、例えば、コンクリート製のU字溝を用いてもよい。例えば、焼き台本体として、溝の幅及び深さがそれぞれ180〜300mmのU字溝を用いた場合は、薪焼きに適した本発明の焼き台を構成することができる。180〜300mmの溝の深さが、焼き場と薪火の高さを最適にし、本発明の焼き台で薪焼きを楽しむことが可能となる。
【0037】
<<遮蔽板>>
本実施形態の遮蔽板20は、汎用のT形鋼(CT形鋼)を任意の長さに切断し、ウェブの両端にそれぞれ小アングル32、32を溶接した構成となっている。各小アングル32は、遮蔽板20を焼き台本体10の上に設置するための脚である。図1に示すように、各各小アングル32を、焼き台本体10の各大アングル31に載置することで、T形鋼のウェブが焼き場(各焼網61)と交差する正面21、フランジが焼き場を覆う上面22となるように支持される。
【0038】
遮蔽板20の寸法としては、例えば、フランジとウェブが200mm×200mmのH形鋼をカットしてT形鋼とし、図1及び図2に示す状態で、フランジ(上面22)の幅=200mm、ウェブ(正面21)の高さ=100mm、長さ=1000mmにする。この寸法であれば、牡蠣を焼いたときの熱い汁の飛散を防止することができるとともに、フランジを十分な広さの鉄板として利用することができる。また、ウェブの高さが100mm程度ならば、焼き台本体10を挟んで対面する顧客の視界を遮ることもない。
【0039】
さらに、図3に示すように、遮蔽板20のウェブの下端面と、焼き台本体10の各フランジ(側壁12)の上端面との間には、各焼網61を挿通するための間隙が形成してある。例えば、25mm程度の間隙を形成すれば、各焼網61を容易に挿通することが可能である。
【0040】
ここで、本実施形態では、遮蔽板20の各小アングル32を溶接せずに、焼き台本体10の各大アングル31上に載置するだけの構成としている。例えば、焼き台本体10及び遮蔽板20を上記の寸法とした場合、焼き台本体10の重量が約100kg、遮蔽板20の重量が約30kg程度になる。両者を溶接せずに分離可能とすることで、焼き台本体10の搬送が容易になり、少人数で簡単に搬送することが可能となる。
【0041】
<<焼き台の使用方法>>
次に、上記構成からなる本実施形態の焼き台1の使用方法について、図3(a)及び(b)を参照しつつ説明する。
【0042】
<<<焼き台の準備>>>
まず、図3(a)において、焼き台本体10の金網62上に炭202を載置するとともに、底壁11の開口部11bの直下に燃えさし回収箱70をセットする。燃えさし回収箱70を、H形鋼の一端側における底壁11と、一の基台80との間の空間に通すと、一の基台80を通過したところで、燃えさし回収箱70が下方に移動する(図中の二点鎖線を参照)。これにより、燃えさし回収箱70のフランジ部71が、焼き台本体10の各側壁12に設けた保持部11b、11bに保持される。
【0043】
そして、金網62上の炭202に着火した後、焼き台本体10の側壁12、12に各焼網61を配置することで、本焼き台1の準備は完了する。以後、各焼網61の上に牡蠣201などの食材を載せて焼くことができる。
【0044】
<<<貝類の焼き方>>>
次いで、本焼き台1を用いた貝類の焼き方について、牡蠣201を例示して説明する。牡蠣201を焼く場合は、図3(a)に示すように、牡蠣201の開き口を遮蔽板20の正面21に向けて焼網61上に載せる。このとき、牡蠣201の開き口側が遮蔽板20の上面22に十分に覆われるよう、牡蠣201を上面22の下方で、なるべく奥の方に配置する。
【0045】
その後、図3(b)に示すように、牡蠣201が炭火で焼かれて加熱されると、牡蠣201の身が弾けて熱い汁が飛散するが、この汁は、遮蔽板20の正面21及び上面22で受け止められ、本焼き台1の周囲で飲食する顧客に飛散することはない。ここで、遮蔽板20の焼き場を覆う上面22が炭火によって加熱されるので、この水平な上面22の上で、焼き上がった牡蠣201を保温したり、肉や野菜などの他の食材を焼いたりすることができる。
【0046】
<<<足下の暖房効果>>>
また、図3(b)に示すように、金網62上の炭202が燃えると、小さくなった炭の燃えさし202aが金網62の網目から落下し、焼き台本体10の底壁11の開口部11bを通って、燃えさし回収箱70に集まる。箱内に炭の燃えさしが集まると、金属製の燃えさし回収箱70が加熱され、火鉢のように輻射熱を発する。この輻射熱によって、本焼き台1を囲む顧客の足下を温めることができる。したがって、本焼き台1によれば、寒い時期に簡素な牡蠣小屋で使用した場合でも十分に暖を採ることが可能である。
【0047】
<<<後片付け>>>
顧客の飲食が終わったら、各焼網61及び金網62を回収し、焼き台本体10内に残った炭202や灰を全て開口部11bに落とし、燃えさし回収箱70に集める。燃えさし回収箱70に集めた炭202や灰が十分に冷めたら、燃えさし回収箱70を焼き台本体10から取り外す。残った炭202は回収し、次回の燃料として再利用する。灰は土に混ぜて肥料に利用する。
【0048】
<<作用効果>>
以上説明したように、本発明の焼き台1によれば、焼き場に交差する正面21、及び焼き場を覆う上面22を有する、断面が略T字形の遮蔽板20を備えた構成となっているので、本焼き台1で牡蠣201を焼く場合に、その開き口を遮蔽板20の正面21に向ければ、牡蠣201から飛散した熱い汁を正面21及び上面22で受けることができる。これにより、本焼き台1の周囲に牡蠣201の汁が飛散することを防止できる。
【0049】
焼き台1を、汎用のH形鋼及びT形鋼で簡単かつローコストで生産することが可能となる。また、遮蔽板20を平面からなる鋼材としたことにより、該遮蔽板20の焼き場を覆う上面22が炭火によって加熱され、該遮蔽板20を、食材を焼いたり、焼き上がった食材を保温したりするための鉄板として利用することができる。
【0050】
焼き台本体10の底壁11に一対の突出部40、40を設け、これら突出部40、40に支持された金網62に炭を載置することとしたので、焼き台本体10の底壁11に炭202が直接接しなくなる。これにより、焼き台本体10の底壁11の焦げ付きを防止することができ、焼き台本体10の清掃及びメンテナンスが容易となる。
【0051】
また、金網62に載置した炭202が燃えて小さくなると、金網62の目を通って、底壁11の開口部11aから金属製の燃えさし回収箱70に落下する。箱内に炭の燃えさし202aが集まると、金属製の燃えさし回収箱70が加熱され、火鉢のように輻射熱を発する。この輻射熱によって、本焼き台1を囲む顧客の足下を温めることができる。したがって、本焼き台1によれば、寒い時期に簡素な牡蠣小屋で使用した場合でも十分に暖を採ることが可能である。
【0052】
焼き台本体10に、遮蔽板20と平行なテーブル板50を配設したことにより、テーブル板50に着いた顧客は、焼き場を挟んで遮蔽板20と対向することになる。この結果、牡蠣201の開き口を遮蔽板20の正面21に向けて焼き場に載せれば、牡蠣201を焼いている最中に、顧客が熱い汁の飛散を受けることがない。したがって、本焼き台1を使用すれば、顧客は、熱い汁の飛散を心配することなく、安心して牡蠣201を焼いて食べることができる。
【0053】
<第2実施形態>
次に、本発明の第2実施形態に係る焼き台について、図4及び図5を参照しつつ説明する。なお、これら図面において、上述した第1実施形態と同様の部分については、同一の符号を付して詳細な説明は省略する。
【0054】
上述した第1実施形態の焼き台1は、断面略T字形の遮蔽板20を挟んで、顧客どうしが対面して焼き物をする構成とした。これに対し、図4に示す本実施形態の焼き台2は、断面略逆L字形の遮蔽板100を境にして、焼き場側で店舗の店員が食材を焼き、焼き場と反対側で顧客が焼き物の提供を受ける構成(カウンター仕様)としてある。
【0055】
図4において、本実施形態に係る焼き台2は、主として、焼き台本体90、遮蔽板100、大小アングル31及び32、テーブル板50で構成してある。
【0056】
<<焼き台本体>>
本実施形態における焼き台本体90は、ウェブと一対のフランジとからなる汎用の溝形鋼を用いている。断面略U字形の溝形鋼を上向きに配置することにより、ウェブが焼き台本体90の底壁91となり、一対のフランジが側壁92、92となる。第1実施形態と同様に、各側壁92の上端面には、食材の焼き場となる3枚の焼網61、61、61が載置される。
【0057】
第1実施形態と同様に、焼き台本体90の各側壁91の両端面には、一対の大アングル31、31が溶接してある。各大アングル31の水平面には、後述する遮蔽板100が載置されるとともに、図中点線で示す2枚のテーブル板50、50が固定される。上述したように、本実施形態の焼き台2は、顧客と店員とが対面するカウンター仕様となっており、図中左側のテーブル板50は顧客が飲食に利用し、図中右側のテーブル板50は店員が調理等に利用する。
【0058】
なお、本実施形態の焼き台2は、カウンター仕様となっているので、第1実施形態のような燃えさし回収箱70は備えていない。このため、焼き台本体90の底壁91には、図2に示すような開口部11a、突起部40、40はない。
【0059】
<<遮蔽板>>
本実施形態における遮蔽板100は、汎用のL形鋼(一般に「山形鋼」又は「アングル」とも呼ばれる)を用いている。このL形鋼を第1実施形態と同様の小アングル32、32に逆L字形となるように溶接し、垂直方向の壁が正面101、水平方向の壁が上面102となるようにしている。
【0060】
ここで、第1実施形態では、焼き場の中央に遮蔽板20を配置したが(図3(a)を参照)、本実施形態では、焼き場の一側に近接して遮蔽板100を配置してある。詳述すると、図5(a)に示すように、遮蔽板100は、焼き台本体90の図中左側(顧客側)の側壁92に近接して設けてある。また、遮蔽板100は、その上面102の先端側が図中右側(店員側)を向くように配置してある。これにより、焼き場は全て店員側に開放され、顧客側から遮蔽される。
【0061】
<<作用効果>>
図5(a)において、図中左側には顧客が位置し、図中右側には店員が位置し、店員から顧客へ焼き物の提供が行われる。平均的な身長の店員が立った状態で調理しやすいように、本焼き台2は、例えば、800〜900mm程度の高さを有する基台80の上に載置するとよい。また、本実施形態では、コンクリート製の基台80を例示したが、例えば、焼き台本体90に脚部となる形鋼材を溶接して、焼き台2全体を適度な高さに配置してもよい。
【0062】
図5(b)に示すように、図中右側に位置する店員は、本焼き台2で牡蠣201を焼く場合に、その開き口を遮蔽板100の正面101に向ければ、牡蠣201から飛散した熱い汁を正面101及び上面102で受けることができる。これにより、遮蔽板100を挟んで対面する顧客及び店員の双方に牡蠣201の汁が飛散することを防止できる。
【0063】
また、遮蔽板100の焼き場を覆う上面102が炭火によって加熱されるので、店員は、焼き上がった牡蠣201を遮蔽板100の上面102に載せて提供すれば、顧客が食べる直前まで熱い牡蠣201を保温することができる。
【0064】
なお、本実施形態では、焼き台本体90の図中左右にテーブル板50、50を設けた構成としたが、これに限定されるものではなく、例えば、店員側のテーブル板50を省略してもよい。また、店員側を除く三方を3枚のテーブル板50、50、50で囲う構成としてもよい。
【符号の説明】
【0065】
1 焼き台
10 焼き台本体(H形鋼)
11 底壁(ウェブ)
11a 開口部
11b 保持部
12 側壁(フランジ)
20 遮蔽板(T形鋼)
21 正面(ウェブ)
22 上面(フランジ)
31 大アングル
32 小アングル
40 突出部(L形鋼)
50 テーブル板
61 焼網
62 金網
70 燃えさし回収箱
71 フランジ部
80 基台(コンクリートブロック)
2 焼き台
90 焼き台本体(溝形鋼)
91 底壁(ウェブ)
92 側壁(フランジ)
100 遮蔽板(L形鋼)
101 正面
102 上面
201 牡蠣(食材)
202 炭
202a 炭の燃えさし

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも炭火で食材を焼くことが可能な焼き台であって、
炭を保持するための底壁、及び焼網又は鉄板を支持するための一対の側壁を有し、前記焼網又は鉄板が前記食材の焼き場となる焼き台本体と、
前記焼き台本体の上方に位置し、前記焼き場に交差する正面、及び前記焼き場を覆う上面を有する、断面が略T字形又は略逆L字形の遮蔽板と、
を備えたことを特徴とする焼き台。
【請求項2】
前記焼き台本体をH形鋼、I形鋼又は溝形鋼とするとともに、前記遮蔽板をT形鋼又はL形鋼とし、前記H形鋼、I形鋼又は溝形鋼の長手方向に沿って、前記T形鋼又はL形鋼を配設し、前記焼き場の少なくとも一部を垂直方向及び水平方向に覆った請求項1記載の焼き台。
【請求項3】
前記焼き台本体の底壁に、前記側壁に沿って延びる一対の突出部を設け、これら突出部が炭を載置するための金網を支持する請求項1又は2記載の焼き台。
【請求項4】
前記焼き台本体の底壁に開口部を設けるとともに、前記開口部の直下に金属製の燃えさし回収箱を配設した請求項3記載の焼き台。
【請求項5】
前記焼き台本体に、前記遮蔽板と平行なテーブル板を配設した請求項1〜4のいずれか1項に記載の焼き台。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2013−72570(P2013−72570A)
【公開日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−210304(P2011−210304)
【出願日】平成23年9月27日(2011.9.27)
【出願人】(511233599)岩永工業株式会社 (1)
【Fターム(参考)】