説明

焼付け補修材

【課題】施工上の簡便さを保ちつつ、施工後の焼付け時間を大幅に短くした非水系の焼付け補修材を提供すること。
【解決手段】熱間でカーボンボンドを形成するバインダーが5〜30重量%、鉄粉が1〜5重量未満%、残部を耐火骨材とする焼付け補修材。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、各種精錬炉や容器などを熱間で補修するための焼付け補修材に関する。
【背景技術】
【0002】
転炉、取鍋等の溶融金属容器の熱間補修方法として、粉末状の補修材を炉内に投入して焼付ける方法は、材料の輸送と保管が容易であることに加え、流し込み補修のような事前の混練工程が不要であり、材料を炉内に投入して炉の残熱により焼付けるという施工の簡便さもあって広く使用されている。粉末状の焼付け補修材は、水系のものと非水系のものに大別され、水系の材料として例えば特許文献1には結晶水を含むリン酸塩やケイ酸塩を使用した焼付け補修材が開示されている。
【0003】
タールやピッチ等を使用する非水系の焼付け補修材では、水系の焼付け補修材と比較して耐用性が良好であることは知られているが、焼付け時間を長く必要とするという欠点がある。そこで特許文献2には、焼付け時間を短縮する方法としてMg粉末の添加が開示されているが、Mg粉末は高価で経済性を低下させるだけでなく、粉塵爆発の危険性を高く有し、製造時の原料の取り扱いに細心の注意が必要となる等の問題が残った。
【0004】
一方、特許文献3には非水系の焼付け補修材の接着性を改善する技術として鉄粉とAl粉末の添加が開示されており、鉄粉は焼付け時において、材料内部で沈降し接着面を吸熱する作用があり、焼付け補修材の接着性を改善させるとされている。しかし実際には、焼付け時に冷却効果により一旦は接着しても、炉の再稼動(再加熱)時に鉄粉が焼付け補修材と炉壁の間(接着面)に溶融鉄の膜として存在するため、接着力が損なわれ、かえって剥離が発生し易く耐用性向上には至っていない。
【特許文献1】特開平2-26874号公報
【特許文献2】特開平11-240771号公報
【特許文献3】特開平11-278948号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
最近の転炉、取鍋等の溶融金属容器はカーボン系耐火物を内張りに使用したものが多く、これらの熱間補修では母材との接着性の点から見て、熱間でカーボンボンドを生成するような非水系の材料が望ましい。しかし、粉末状の非水系の焼付け補修材は、施工は容易である反面、投入後の焼付け時間が長いという欠点があり、補修時間が長くとれない場合は使用できないという課題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、施工上の簡便さを保ちつつ、施工後の焼付け時間を大幅に短くし、かつ経済性と耐用性にも優れた粉末状の非水系の焼付け補修材を提供するものである。
即ち、熱間でカーボンボンドを形成するバインダーが5〜30重量%、鉄粉が1〜5重量未満%、残部を耐火骨材とする焼き付け補修材である。
【0007】
さらに、本発明においては、熱間でカーボンボンドを形成するバインダー1重量%に対して、流動化促進剤を0.1〜1重量%含有し、かつ熱間でカーボンボンドを形成するバインダーと流動化促進剤の合計量が5〜30重量%、鉄粉が1〜5重量未満%、残部を耐火骨材とする場合に、より良好な効果が得られるものである。即ち、流動性を付与することを目的として、鉄粉の沈降を助長せず、その効果を阻害しない範囲で流動化促進剤を添加することが好ましい。
【0008】
補修される溶融金属容器の炉壁は少なくとも700℃以上の熱間であり、本発明による焼付け補修材は、炉内に投入されると粉粒状のバインダーが炉の残熱により溶融し、補修材全体が流動状態となり、被補修箇所の細部まで充填されると同時に耐火材料が密充填され、次いでバインダーの作用で焼付け補修材は硬化した後カーボン結合を形成する。
【0009】
本発明の焼付け材は、鉄粉の添加により材料の熱伝導率が向上しているため、熱間で流動し受熱される際に、材料温度の上昇が早く、バインダーの炭化が促進され硬化時間が大幅に短縮される。鉄粉は流動化の際に、耐火骨材との比重分離で沈降するが、添加量を限定することで、接着面への悪影響を抑制することが可能となった。
【発明の効果】
【0010】
本発明の焼付け補修材は、焼付け時に炉熱を有効に材料に伝達できるため、焼付け時間の短縮を図ることが出来る。また、熱間においても接着力が損なわれないため、剥離が発生し難く耐用に優れる。本発明の焼付け補修材は経済性と優れた補修効果によって、溶融金属容器などの炉の稼働率および寿命の向上に大きく貢献する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
本発明に使用する耐火骨材は特に限定はされず、被補修箇所に使用されている母材に合わせた適当なものが使用できる。例えば、シリカ、ジルコンなどの酸性酸化物、アルミナ、クロミアなどの中性酸化物、マグネシア、カルシア、ドロマイトなどの塩基性酸化物や、炭素材料、炭化ケイ素、窒化ケイ素などの非酸化物、各種れんが屑などの1種または2種以上である。これらの耐火骨材は焼き付け材組織が密充填組織になるように、その粒度を粗粒、中粒、微粒に適宜調整するのが好ましい。
【0012】
本発明に使用する鉄粉には鉄合金も含まれるが、Fe純度は特に限定されるものではなく、経済的な観点から安価な物が好ましい。鉄粉の使用量は焼付け補修材100重量%に対して1〜5重量未満%である。1重量%未満では、本発明の効果(材料の熱伝導率の向上)が十分に得られず、硬化時間が短縮されない。また5重量%以上では、流動化の際に鉄粉が補修面(接着面)に沈降し、焼付け補修後の炉稼動時に接着面に生成する溶融鉄の膜が多くなり、剥離が発生し易くなるために好ましくない。また、本発明に使用する鉄粉の粒径は細かい方が好ましく、粒径が粗くなると流動化の際に鉄粉が沈降し易くなるために好ましくない。市場での入手し易さを考えると、最大粒径は1.5mm以下が好ましい。安価に入手できる範囲で細かいものであれば粒径の下限は特に定めるところではない。尚、酸化防止剤として公知であるアルミニウムや熱伝導率の高い銅等の使用も材料の熱伝導率向上の効果が期待できるが、高価であり経済性を低下させるため好ましくない。
【0013】
次に、熱間でカーボンボンドを形成するバインダーとしては、通常の有機系バインダーとして使用されている粉粒状のピッチやフェノール樹脂が使用できる。これらのカーボンボンドを形成するバインダーの使用量は焼付け補修材100重量%に対し5〜30重量%であり、この量が5重量%未満ではカーボンボンドが十分に形成されず強度および接着性に劣る施工体となり、30重量%を越えると気孔率の大きな施工体となり耐食性が低下する。
【0014】
流動化促進剤は、これらのバインダーの溶融軟化による流動化を促進し、焼付け補修材に広い補修面積および受熱面積を付与するためのものであり、p-アルキルフェノール類、ラクタム類、ビスフェノール、ジフェニル、ジフェニルアミン、パラフィン、ワックス等から1種または2種以上を選んで使用することが出来る。
流動化促進剤を使用する場合、熱間でカーボンボンドを形成するバインダーと流動化促進剤の合計量は5〜30重量%であり、かつ流動化促進剤はカーボンボンドを形成するバインダー1重量%に対して0.1〜1重量%、好ましくは0.1〜0.6重量%である。この量が0.1重量%未満では流動促進効果が得られず、1重量%を越えると、熱間での焼付け補修材の粘性が低下し易く、鉄粉が補修面(接着面)に沈降するために好ましくない。
【実施例】
【0015】
次に、本発明の実施例である本発明品を比較品と共に挙げ、本発明を具体的に説明するが、本発明は、以下の本発明品によって限定されるものではない。
【0016】
表1に、本発明の焼付け補修材に関する実施例および比較例を示す。
【0017】
広がり性評価:表1に示す配合800gを1000℃に保持した炉内のキャスタブル板上に投入し、消火後炉内よりキャスタブル板を取り出し、焼付材が広がった直径の平均値を広がり性として測定した。
【0018】
硬化時間評価:硬化時間は1000℃に保持したマグネシアれんがの上に内径53mm×高さ40mmリング状金枠を載せ、試料200g投入し、全体が硬化するまでの時間を測定した。試料が硬化した後、直ちに剪断接着強度測定機にて接着強度を測定した。
【0019】
見掛気孔率評価:1000℃に保持した炉内にマグネシアれんがによる囲いの中に試料を1kg投入し、硬化後、その硬化体の見掛気孔率も測定した。
【0020】
実機試験ch数評価:実機試験は、MgO-C質れんがで内張りされた300t転炉の熱間補修において600kgの焼き付け補修材を使用し、焼き付け補修材の残存面積が補修直後の20%以下となったチャージ数を耐用性として評価した。
【0021】
本発明の実施例は、硬化時間が早く実機試験においても良好な耐用性を示した。比較例1と比較例2は接着強度が低く硬化体の見掛気孔率が大きかったので実機試験は実施しなかった。比較例3と比較例4は硬化時間が早かったものの実機試験の耐用性は不良であった。
【0022】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱間でカーボンボンドを形成するバインダーが5〜30重量%、鉄粉が1〜5重量未満%、残部を耐火骨材とする焼付け補修材。
【請求項2】
熱間でカーボンボンドを形成するバインダー1重量%に対して、流動化促進剤が0.1〜1重量%であり、かつ熱間でカーボンボンドを形成するバインダーと流動化促進剤の合計量が5〜30重量%、鉄粉が1〜5重量未満%、残部を耐火骨材とする請求項1記載の焼付け補修材。

【公開番号】特開2008−285379(P2008−285379A)
【公開日】平成20年11月27日(2008.11.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−133444(P2007−133444)
【出願日】平成19年5月18日(2007.5.18)
【出願人】(000001971)品川白煉瓦株式会社 (112)
【Fターム(参考)】