説明

焼却灰の処理方法

【課題】 焼却灰を効率良く溶融できると共に、燃料となる塊コークスの使用量を低減させることができる焼却灰の処理方法を提供することを目的とする。
【解決手段】 微粉コークスと焼却灰とを予め混練して含炭ブリケット2を形成する。このとき、含炭ブリケット2中の微粉コークスの含有量を、全体の2重量%に設定する。次に、この含炭ブリケット2を、追加塊コークス5と共に、溶融炉1内へ投入する。そして、微粉コークスを、ベッドコークス層19の上層部近傍Zにて燃焼させて、焼却灰を溶融して溶融スラグSとして出滓させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、溶融炉(コークスベッド式溶融炉)を用いた焼却灰の処理方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
本発明者等は、焼却灰を確実かつ効率良く溶融処理する方法を提案してきた。例えば、その一つとしての従来の焼却灰の処理方法は、予め焼却灰を塊状(ブリケット)としたものを、追加塊コークスと共に溶融炉へ投入し、炉内の下方の燃焼室に敷設されているベッドコークスに熱風を送り込んで燃焼させて、下方から加熱帯、溶融帯、余熱帯を形成し、焼却灰を溶融して形成した溶融スラグを出滓させる方法を提案した(例えば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3405951号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
このコークスベッド式溶融炉に於て燃料となる塊コークスは、品不足・価格の上昇等が生じているので、コークスの使用量の低減化を図る必要があり、しかも、作業効率の一層の改善が要望されている。
【0004】
そこで、本発明は、焼却灰を効率良く溶融できると共に、燃料となる塊コークスの使用量を低減させることができる焼却灰の処理方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記の目的を達成するために、本発明に係る焼却灰の処理方法は、微粉コークスと焼却灰とを予め混練して含炭ブリケットを形成し、次に、該含炭ブリケットを、追加塊コークスと共に、溶融炉内へ投入して、上記焼却灰を溶融して溶融スラグとして出滓させる方法である。
【0006】
また、本発明に係る焼却灰の処理方法は、微粉コークスと焼却灰とを予め混練して含炭ブリケットを形成し、次に、該含炭ブリケットを、追加塊コークスと共に、溶融炉内へ投入して、上記焼却灰を溶融しつつ上記微粉コークスの含有量を増大させながら上記含炭ブリケットを下方のベッドコークス層へ降下移動させて、該ベッドコークス層の上層部近傍にて燃焼させ、かつ、ベッドコークス及び追加塊コークスの燃焼と共に、上記焼却灰を溶融して溶融スラグとして出滓させる方法である。
【0007】
また、上記投入する際の上記含炭ブリケット中の微粉コークスの含有量を、全体の1重量%乃至10重量%に設定した。
【発明の効果】
【0008】
本発明は、次のような著大な効果を奏する。
本発明は、微粉コークスと焼却灰とを予め混練して含炭ブリケットを形成して、追加塊コークスと共に、溶融炉内へ投入して燃焼する方法なので、予熱帯・溶融帯に於ては、含炭ブリケット内の微粉コークスをほとんど燃焼させずに保護でき、ベッドコークス層の上層部近傍にて露出させることができる。そして、露出した微粉コークスが、その上層部近傍に於て、含炭ブリケットに付着した状態で燃焼するので、ベッドコークス及び追加塊コークスの燃焼との相乗効果により、含炭ブリケットへの熱の伝達効率が良く、焼却灰を効率良く溶融することができる。
よって、焼却灰のみから成るブリケットを溶融させる場合に比べて、一度に溶融できる焼却灰の量が多く、かつ、溶融炉内に投入する追加塊コークスの量が大幅に低減してコストの削減を図ることができる。
さらに、焼却灰が溶融スラグになって出滓する温度が上昇するので、炉前作業性を向上させることができる。
【0009】
そして、含炭ブリケット中の微粉コークスの含有量を、全体の1重量%乃至10重量%に設定したので、焼却灰を効率良く溶融することができる。しかも、含炭ブリケットから露出した微粉コークスが、溶融炉内で全て燃焼し、炉外に飛散しないので、安定して操業(燃焼作業)することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、実施の形態を示す図面に基づき、本発明を詳説する。
図1に於て、1はコークスベッド式溶融炉(本発明では「溶融炉」という)であり、この溶融炉1の内部の底部に燃焼用のベッドコークス9…が敷設されてベッドコークス層(コークスベッド)19が形成されている。
図2は本発明に於て用いる燃焼前の含炭ブリケット2を、図3はその含炭ブリケット2の断面拡大図を示し、微粉コークス4…と焼却灰3とを予め混練して塊状として成る。
微粉コークス4は、平均粒径が0.15mm乃至1.0mm のコークスであると定義する。
【0011】
含炭ブリケット2中の微粉コークス4の含有量は、全体の1重量%乃至10重量%に設定される。1重量%未満であると微粉コークス4の燃焼効率が低く、10重量%超過であると、焼却灰3との成型固化が充分になされない虞れがある。さらに微粉コークス4の含有量を3重量%乃至4重量%に、特には、2重量%に設定するのが好ましい。
【0012】
微粉コークス4について具体的に説明する。
石炭(強粘結炭)を炉で乾留することで、塊コークスが製造され、製造された塊コークスは、灼熱状態で炉外に放出され、熱交換機能を持った冷却塔内で冷却される。
そのとき、熱交換された空気が熱交換器で熱利用される途中で、揮散した微細なコークスが分離回収されたものが、微粉コークス4である。この微粉コークス4は、回収される工程で粒度(粒径)が異なり、サイクロンで分離回収された粗微粉コークスと、集塵バッグで回収された細微粉コークスとに分けられる。
含炭ブリケット2の成型固化には、どちらの微粉コークス4でもよいが、粗微粉コークスを使用する方が、火持ちが良好であると共に溶融温度以下での反応性が少なく、また、粒度分布がブリケット(成型固化)に適している点で、好ましい。
【0013】
また、溶融炉1は、含炭ブリケット2及び追加塊コークス5を投入する投入部6を、上部に具備する。かつ、溶融炉1は、内部で燃焼により発生するガスを外部に排出する排ガス路14を、上部に有すると共に、焼却灰3を溶融した溶融スラグSを出滓する出滓路12を、下部に具備する。また、溶融炉1は、下部に、ベッドコークス9…を燃焼させる熱風(CO2 等)を供給する空気供給路17を備え、この空気供給路17は図示省略の熱風供給源に連結される。
【0014】
次に、図1と、図7のフローチャート図に従って、焼却灰の処理方法を説明する。
予め、微粉コークス4と焼却灰3とを、別途の混練機で混練し成型固化して塊状の含炭ブリケット2…を製造して、貯蔵しておく。含炭ブリケット2中の微粉コークス4の含有量を、全体の1重量%乃至10重量%に設定する。この状態の含炭ブリケット2は、外表面に亀裂や気孔がなく(図2,図3参照)、全体的に暗灰色である。
そして、含炭ブリケット2…と追加塊コークス5…を、夫々(図示省略の)材料供給装置から切出し、上部投入部6から溶融炉1内に(交互に、又は、混ぜて同時に、)投入する。そして、溶融炉1内の下方に予め敷設しておいたベッドコークス層19に、空気供給路17から熱風を供給して燃焼させる作業(操業)を行うと、溶融炉1内に於て、下方から順に加熱帯20、溶融帯8、予熱帯7が形成される。このとき、溶融炉1内の材料高さを一定に保ちつつ操業する。
【0015】
予熱帯7に於て、含炭ブリケット2の焼却灰3に含まれるアルカリ金属・アルカリ金属塩のような低融点・低沸点成分が揮発して生成したガスや、追加塊コークス5から発生したCO等が、排ガス路14を通じて排出される。図4は、予熱帯7の下部位置の含炭ブリケット2を示し、全体の形状が崩れずにほぼ保たれた状態である。そして、外表面には、亀裂は発生していないが、複数個の気孔11…がまばらに生成される。これは、一部のコークスが酸素又は炭酸ガスと反応したためである。色は、灰色乃至灰白色に変化している。含炭ブリケット2は、予熱帯7で、約1050乃至1150℃に加熱されている。
また、含炭ブリケット2内の微粉コークス4は、焼却灰3で保護(包囲)されているのでCO2 による還元反応の影響が微小であり、ほぼ完全な形状で保たれていると考えられる。
【0016】
次いで、図5は、溶融帯8における含炭ブリケット2を示し、局所的に溶融して、多数の気孔11…が生成されているが、全体の形状は崩れずにほぼ保たれた状態であると推測される。また、含炭ブリケット2の表層の微粉コークス4の一部は、露出して炉1内に放出されるが、大部分の微粉コークス4は焼却灰3で保護されているのでCO2 による還元反応の影響は微小でありほぼ完全な形状で保たれていると推測される。溶融帯8では、約1200乃至1300℃に加熱されている。
【0017】
次いで、図1と図6に示すように、含炭ブリケット2が、追加塊コークス5…と共に、ベッドコークス層19の上層部近傍Zに下降移動する。
この上層部近傍Zに於ては、微粉コークス4…が、含炭ブリケット2の外表面に露出する。微粉コークス4…は、溶融帯8において既に燃焼温度に達しており、含炭ブリケット2の外表面に露出して付着した状態にて、残存酸素の量に応じた酸化反応を行い発熱する。かつ、同時にベッドコークス9…,追加塊コークス5…も燃焼しているので、含炭ブリケット2への熱の伝達効率がよく、効率良く焼却灰3の溶融が行われる。
そして、溶融した焼却灰3が、ベッドコークス9…の隙間を流れて、溶融炉1の下方の出滓路12の出滓口13から溶融スラグSとして出滓され(図1参照)、図示省略の設備で冷却され固化される。
微粉コークス4が焼却灰3を溶融する効果は、溶融炉1内の上記上層部近傍Zに存在する酸素量によって、決まる。
【0018】
次に、以下に示す条件で、焼却灰のみから成るブリケット(以下、「焼却灰ブリケット」という)を溶融炉1に投入して燃焼させる場合と、同じ溶融炉1で上記含炭ブリケット2を燃焼させる場合(実施例)の試験を行い、その結果を比較検討する。
・先ず、上記焼却灰ブリケットを溶融炉1で燃焼させる操業を行い、その操業の途中で、焼却灰ブリケットから含炭ブリケット2に切換えて、継続的に操業する。
・ブリケットと共に、追加塊コークス5を投入する。
・含炭ブリケット2中の微粉コークス4の含有量を、全体の2重量%に設定する。
・溶融炉1内の下方に敷設するベッドコークス層19の高さHを、850mm とする。
・空気供給路17から溶融炉1内のベッドコークス層19に供給する熱風の温度を、 330℃とすると共に、供給量を65Nm3 /min に設定する。
・燃焼中の溶融炉1内の材料高さを一定に保つ。
【0019】
先ず、従来例として、上記焼却灰ブリケットと追加塊コークス5とを溶融炉1内に投入し、操業させたところ(図示省略)、焼却灰ブリケットを溶融するのに必要な追加塊コークス5の塊コークス比(投入した焼却灰の重量に対する、投入した追加塊コークス5の重量の比)は、21%であった。そして、焼却灰を溶解する能力は 3.5t/hであり、出滓口13から出滓する溶融スラグSの温度は1370℃であった。
【0020】
次に、本発明の実施例として、焼却灰ブリケットから含炭ブリケット2に切換えたところ(図1参照)、焼却灰3を溶融するのに必要な追加塊コークス5の塊コークス比は、18.5%であった。焼却灰3を溶解する能力は 4.0t/hであり、溶融スラグSの出滓温度は1400℃であった。
なお、この場合の塊コークス比は、投入した含炭ブリケット2内の焼却灰3の重量と、含炭ブリケット2内の微粉コークス4と追加塊コークス5の重量の和の、比である。
【0021】
この結果から、含炭ブリケット2を投入した試験(実施例)の方が、塊コークス比が12%減少し、コークスの使用量を大幅に低減できた。また、溶解能力が14%増加しており、熱効率が向上したことが判る。また、出滓温度が2%上昇したので、炉前作業性が向上する。さらに、還元性が強まり、PB等の揮散物質のスラグ含有が減少する可能性もある。 なお、この試験(実施例)のように、含炭ブリケット2中の微粉コークス4の含有量を全体の2重量%に設定すると、微粉コークス4を確実に塊コークスと置換でき、炉1内に放出された微粉コークス4は全て消費されて炉1外に飛散せず、安定した操業となる。
【0022】
以上のように、本発明に係る焼却灰の処理方法は、微粉コークス4と焼却灰3とを予め混練して含炭ブリケット2を形成し、次に、含炭ブリケット2を、追加塊コークス5と共に、溶融炉1内へ投入して、焼却灰3を溶融して溶融スラグSとして出滓させるものなので、予熱帯・溶融帯では、含炭ブリケット2内の微粉コークス4を燃焼させずに保護して、ベッドコークス層19の上層部近傍Zにて露出させられる。そして、露出した微粉コークス4が、ベッドコークス層19の上層部近傍Zに於て、含炭ブリケット2に付着した状態で燃焼するので、ベッドコークス9及び追加塊コークス5の燃焼との相乗効果により、含炭ブリケット2への熱の伝達効率が良く、焼却灰3を効率良く溶融することができる。
よって、焼却灰のみから成るブリケットを溶融させる場合に比べて、一度に溶融できる焼却灰3の量が増加し、かつ、溶融炉1内に投入する追加塊コークス5の量が大幅に低減して、コストの削減を図ることができる。
さらに、焼却灰が溶融スラグになって出滓する温度が上昇するので、炉前作業性を向上させることができる。
【0023】
また、本発明に係る焼却灰の処理方法は、微粉コークス4と焼却灰3とを予め混練して含炭ブリケット2を形成し、次に、含炭ブリケット2を、追加塊コークス5と共に、溶融炉1内へ投入して、焼却灰3を溶融しつつ微粉コークス4の含有量を増大させながら含炭ブリケット2を下方のベッドコークス層19へ降下移動させて、ベッドコークス層19の上層部近傍Zにて燃焼させ、かつ、ベッドコークス9及び追加塊コークス5の燃焼と共に、焼却灰3を溶融して溶融スラグSとして出滓させるものなので、予熱帯・溶融帯に於ては、含炭ブリケット2内の微粉コークス4を燃焼させずに保護でき、ベッドコークス層19の上層部近傍Zに下降するまでその形状に保持できる。そして、露出された微粉コークス4が、この上層部近傍Zに於て、含炭ブリケット2に付着した状態で燃焼するので、ベッドコークス9及び追加塊コークス5の燃焼との相乗効果により、含炭ブリケット2への熱の伝達効率が良く、焼却灰3を効率良く溶融することができる。
よって、焼却灰のみから成るブリケットを溶融させる場合に比べて、一度に溶融できる焼却灰3の量が増加し、かつ、溶融炉1内に投入する追加塊コークス5の量が大幅に低減して、コストの削減を図ることができる。
さらに、焼却灰が溶融スラグになって出滓する温度が上昇するので、炉前作業性を向上させることができる。
【0024】
そして、投入する際の含炭ブリケット2中の微粉コークス4の含有量を、全体の1重量%乃至10重量%に設定したので、焼却灰3を効率良く溶融することができる。しかも、含炭ブリケット2に露出した微粉コークス4が、溶融炉1内で全て燃焼し、炉外に飛散しないので、安定して操業(燃焼作業)することができる。
また、含炭ブリケット2中の微粉コークス4の含有量を10重量%以下に設定すると、焼却灰3に微粉コークス4を混練した場合に、確実に固化するので、含炭ブリケット2を確実に製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0025】
【図1】本発明に係る焼却灰の処理方法の実施の一形態を示す断面正面図である。
【図2】一部破断要部正面図である。
【図3】説明用断面拡大図である。
【図4】要部正面図である。
【図5】要部正面図である。
【図6】説明用要部断面図である。
【図7】フローチャート図である。
【符号の説明】
【0026】
1 溶融炉
2 含炭ブリケット
3 焼却灰
4 微粉コークス
5 塊コークス
9 ベッドコークス
19 ベッドコークス層(コークスベッド)
S スラグ
Z 上層部近傍

【特許請求の範囲】
【請求項1】
微粉コークス(4)と焼却灰(3)とを予め混練して含炭ブリケット(2)を形成し、次に、該含炭ブリケット(2)を、追加塊コークス(5)と共に、溶融炉(1)内へ投入して、上記焼却灰(3)を溶融して溶融スラグ(S)として出滓させることを特徴とする焼却灰の処理方法。
【請求項2】
微粉コークス(4)と焼却灰(3)とを予め混練して含炭ブリケット(2)を形成し、次に、該含炭ブリケット(2)を、追加塊コークス(5)と共に、溶融炉(1)内へ投入して、上記焼却灰(3)を溶融しつつ上記微粉コークス(4)の含有量を増大させながら上記含炭ブリケット(2)を下方のベッドコークス層(19)へ降下移動させて、該ベッドコークス層(19)の上層部近傍(Z)にて燃焼させ、かつ、ベッドコークス(9)及び追加塊コークス(5)の燃焼と共に、上記焼却灰(3)を溶融して溶融スラグ(S)として出滓させることを特徴とする焼却灰の処理方法。
【請求項3】
上記投入する際の上記含炭ブリケット(2)中の微粉コークス(4)の含有量を、全体の1重量%乃至10重量%に設定した請求項1又は2記載の焼却灰の処理方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2006−234209(P2006−234209A)
【公開日】平成18年9月7日(2006.9.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−46506(P2005−46506)
【出願日】平成17年2月23日(2005.2.23)
【出願人】(000002358)新明和工業株式会社 (919)
【出願人】(591181089)株式会社ナニワ炉機研究所 (7)
【Fターム(参考)】