説明

焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤ

【課題】 RPFや廃プラ、DIP粕、古紙粕、ペーパースラッジ等の廃棄物燃料を焼却装置の焼却炉内に配されて廃棄物燃料を炉内に均等に投下するためのスクリューコンベヤに、古紙粕等に含まれた包装紐等の長尺ものが絡みつかないようにした焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤを提供する。
【解決手段】 スクリューコンベヤ10のコンベヤ軸10bの軸径dを、スクリュー羽根11a、11bの外径Dの1/2よりも大きくする。スクリューコンベヤ10のスクリュー羽根11a、11bはいずれもコンベヤ軸10bに取り付けられており、その捩り方向を逆方向とすると共に、これらスクリュー羽根11a、11bが接するコンベヤ軸10bの中央部には仕切羽根等のようなスクリュー羽根11a、11bの部分を区分けする部品は設けない。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、ペーパースラッジや古紙粕、廃棄プラスチック等の廃棄物を燃料として焼却する焼却炉やボイラー等の焼却装置へ、これらの廃棄物を搬送する廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤに関する。
【背景技術】
【0002】
製紙工場では、原料の木材チップを蒸解させる蒸解工程や抄紙工程のドライパートにおいて紙を乾燥させるために大量の過熱蒸気が利用されている。すなわち、蒸解工程では木材チップを貯留させた蒸解釜に蒸気を供給して蒸解し、抄紙工程ではドライパートに並設された多数のドライヤシリンダーに紙を巻回させながら走行させ、このドライヤシリンダー内に過熱蒸気を供給してドライヤシリンダーの表面に接触した紙から水分を蒸発させる機構が装備されている。このため、大量の過熱蒸気を発生させるために、高圧ボイラーが設備されており、さらに、抄紙機その他の各種装置の駆動用電力を得るために、この高圧ボイラーで発生した蒸気をタービンに供給して発電している。
【0003】
高圧ボイラーの燃料には主として重油が用いられるが、原料となる木材をチップに加工する際に発生する樹皮や木くず等のバークが用いられ、近年では、ボイラー燃焼炉の改良から、廃棄プラスチック等のRPF(Refuse Paper & Plastic Fuel)が燃料とされている。このRPF燃料は、発熱量が高カロリーであり排気ガス中のCO2が減少されて環境良化にとって好ましい燃料でもある。また、製紙工場では、再生紙を生産する際に発生する古紙粕や脱墨の際に発生するDIP(De-Inked pulp)粕、ペーパースラッジ等、工場内で種々の廃棄物が発生することから、廃プラスチック等と共に、これら工場内廃棄物をボイラー燃料としている。
【0004】
図4は、前記廃棄物燃料のボイラーの焼却炉1への供給系を示すフロー図であり、廃棄物燃料は、その種類毎に、RPF・廃プラスチック貯槽2やDIP粕・古紙粕貯槽3、ペーパースラッジ貯槽4等に区分けされている。これらの各貯槽2、3、4内の下部には各貯槽2、3、4から内容物を払い出すための払い出しスクリューコンベヤ2a、3a、4aが備えられている。これらの貯槽2、3、4から払い出された廃棄物燃料Fは、ベルトコンベヤによる払い受けコンベヤ5の搬送面に落下され、水平方向へ搬送される。さらに、例えば、前記焼却炉1の燃料投入口1aが高所にある場合には、前記払い受けコンベヤ5からベルトコンベヤによる傾斜コンベヤ6に移し替えられて、前記燃料投入口1aまで搬送される。この場合、傾斜コンベヤ6は上下に一対の傾斜コンベヤ6a、6bが搬送面を対向させた状態で配設され、これら傾斜コンベヤ6a、6bの搬送面で廃棄物燃料Fが挟持されながら斜め上方へ燃料投入口1aまで搬送される。
【0005】
また、図3には、前記燃料供給口1aの内部の概略を示してあり、傾斜コンベヤ6で搬送された廃棄物燃料Fは燃料供給口1aの上部に配された一対のベルトコンベヤから供給コンベヤ7a、7bに挟持されて燃料供給口1aの上部中央まで搬送される。この供給コンベヤ7a、7bの末端は、下方に配置されたスクリューコンベヤ8の中央部が位置しており、廃棄物燃料Fはこのスクリューコンベヤ8の中央に落下するようにしてある。スクリューコンベヤ8は、中央を境として図3上の左右でスクリュー羽根8a、8bの捩り方向が互いに逆方向とされており、そのコンベヤ軸8cが共通とされているため、該コンベヤ軸8cが同図上矢票P方向へ回転すると、スクリュー羽根8aと羽根8bはそれぞれ逆方向に搬送する。このため、中央に落下した廃棄物燃料Fは、スクリュー羽根8a、8bのいずれかに振り分けられ、振り分けられた側のスクリュー羽根8a、8bに委ねられてそれぞれの方向に搬送される。なお、スクリューコンベヤ8の中央部には、捩られていない仕切羽根8dが配されて、落下した廃棄物燃料Fの振り分けを行うようにしてある。なお、コンベヤ軸8cとスクリュー羽根8a、8bはケーシング8eに収容されている。
【0006】
前記スクリュー羽根8aの搬送先には供給口9aが、スクリュー羽根8bの搬送先には供給口9bが、それぞれ開口しており、これら供給口9a、9bから焼却炉1内に廃棄物燃料Fが、炉内の一部分に偏ることなく投下される。また、コンベヤ軸8cのこれら供給口9a、9bよりも外側に位置した部分には、前記仕切羽根8d側からこれら供給口9a、9b側へ搬送するスクリュー羽根8a、8bのそれぞれに対して逆方向に捩られた逆スクリュー羽根8f、8gが設けられている。
【0007】
ところで、再生用に利用される古紙には、いわゆる資源ゴミとして市場から回収されたものが用いられているが、回収される古紙はポリプロピレンやポリエチレン製の紐やロープ等の包装紐で結索された状態にあるから、この古紙を再生紙として利用する場合には包装紐が取り除かれ、古紙粕と共に廃棄物燃料Fとして焼却炉1に投入される。この包装紐が粉砕しきれない場合には、長尺の状態で残留することになって、前記スクリューコンベヤ8に供された場合に、その軸8cに絡みつくおそれがある。この絡みつく現象は、図3に示すように、スクリューコンベヤ8の中央部と供給口9a、9bに臨んだ両端部に生じ易い。
【0008】
前述したような長尺ものがスクリューコンベヤに絡みつくことを防止するものとして、スクリューコンベヤの出口に昇降自在な刃物を設けて切断するようにした都市ごみ焼却炉のごみ供給装置(特許文献1参照)や、スクリューコンベヤの軸を基端部側から先端部側に向かって細くなるようにテーパ状とした廃棄物圧縮固形化装置(特許文献2参照)等が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開平1−92113号
【特許文献2】特開2002−159950
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
前述した都市ごみ焼却炉のごみ供給装置では、昇降自在な刃物を備えた構造とされるため、複雑な構造となってしまい、また、この刃物の動作に支障が生じた場合にはごみの供給を行えなくなってしまうおそれがあるから、刃物が常に正常に動作するよう頻繁なメンテナンスを必要とするおそれがある。
【0011】
また、前記廃棄物圧縮固形化装置に用いられるスクリューコンベヤでは、軸をテーパ状に加工する必要があるから、煩雑な加工が要求され、また、コンベヤのケーシングの外径寸法は一定であるため、スクリュー羽根の外径寸法を一定に保つことが必要であり、このため、スクリュー羽根の高さを徐々に大きくする加工が必要となる。すなわち、スクリューコンベヤの成形加工が煩雑となり、製作コストが上昇することになる。
【0012】
この発明は、上述した問題に鑑みて、特別な成形加工を必要とすることがなく、また刃物のような切断装置等を付加する必要がなく、メンテナンスが不要で、しかも、特殊な加工等を必要とせずに、確実に長尺ものが絡みつくことを防止した焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前記目的を達成するための技術的手段として、この発明に係る焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤは、RPFや廃プラスチック、DIP粕、古紙粕、ペーパースラッジ等の廃棄物を焼却炉に投入するために焼却装置の上部に配設される廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤにおいて、コンベヤ軸の外径寸法をスクリュー羽根の外径寸法の1/2以上としたことを特徴としている。
【0014】
スクリューコンベヤの場合の羽根の外径寸法に対する軸径寸法を、一般的な場合に比べて大きくしたものである。軸径が大きくなることにより、長尺ものが軸に巻回されにくくなり、滞留することがなくスクリュー羽根に確実に搬送される。特に、粉砕工程等を介して長尺ものが切断される前工程を有している場合に適しており、長尺ものが十分に切断されない場合であっても後続する工程に影響を与えることがない。
【0015】
また、請求項2の発明に係る焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤは、RPFや廃プラスチック、DIP粕、古紙粕、ペーパースラッジ等の廃棄物を焼却炉に投入するために焼却装置の上部に配設され、中央部に落下させた廃棄物燃料を、異なる方向に振り分けて搬送する焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤにおいて、コンベヤ軸の外径寸法をスクリュー羽根の外径寸法の1/2以上とし、中央部には仕切羽根を有していないことを特徴としている。
【0016】
中央部の仕切羽根により落下した廃棄物燃料が異なる方向に振り分けられるため、長尺ものがこの仕切羽根を跨いでいずれの方向へも搬送されない場合が生じることがある。このため、この仕切羽根を設置せずに、長尺ものがいずれかの方向に確実に搬送されるようにしたものである。
【0017】
また、請求項3の発明に係る焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤは、前記スクリュー羽根の外径寸法が約500mmであり、前記コンベヤ軸の外径寸法が約267mmであることを特徴としている。
【0018】
スクリューコンベヤのスクリュー羽根の外径寸法が500mmとした場合に、コンベヤ軸の径を267mmとしたものである。この場合には、コンベヤ軸に呼び径がA250の配管用炭素鋼鋼管(JISG3452)を用いることにより、軸径をスクリュー羽根の外径寸法の1/2以上とすることができる。
【発明の効果】
【0019】
この発明に係る焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤによれば、長尺ものを燃料するとする場合であっても、スクリューコンベヤのコンベヤ軸に巻回することが極力防止でき、コンベヤ軸に絡みつくことを防止できる。したがって、スクリューコンベヤの円滑な運転を果たすことができ、焼却装置に連続して廃棄物燃料を供給することができる。
【0020】
また、請求項2の発明に係る焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤによれば、落下してスクリューコンベヤに供される際に、長尺ものの廃棄物燃料が確実にいずれかの方向に搬送されることとなるから、長尺ものが滞留してしまうことがない。
【0021】
また、請求項3の発明に係る焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤによれば、コンベヤ軸に市販されていて入手しやすい配管用炭素鋼鋼管を用いることができるから、特殊な加工をコンベヤ軸やスクリュー羽根に施すことがなく、製作コストを安価に抑制でき、容易に実施することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】この発明に係る廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤを備えた焼却装置の一部を示す図である。
【図2】この発明に係る焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤの要部を説明する軸直角面で切断した断面図であり、長尺ものが絡みやすい従来の構造と比較して示してあり、(a)がこの発明に係る廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤを、(b)が従来の廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤを示している。
【図3】従来の焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤを説明する図で、図1に相当するものである。
【図4】この発明に係る廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤを装備する焼却炉を例示するもので、燃料供給系を説明するフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、図示した好ましい実施の形態に基づいてこの発明に係る焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤを具体的に説明する。なお、図3及び図4に示す構造と同一の部位については同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0024】
図2(a)はこの発明に係る廃棄物燃料搬送用のスクリューコンベヤ10の軸直角面で切断した断面図であり、ケーシング10a内にコンベヤ軸10bが回転可能に支持されており、このコンベヤ軸10bにスクリュー羽根11a、11bが螺旋状に巻回して取り付けられている。このスクリュー羽根11a、11b、11c、11dの直径Dとコンベヤ軸10bの直径dとの関係を、
1/2D≦d (式1)
としてある。
【0025】
また、図1に示すように、このスクリューコンベヤ10の前記スクリュー羽根11a、11bは中央部を境にして逆方向に捩られ、しかも、これらのスクリュー羽根11a、11bはコンベヤ軸10bに取り付けられているため、該コンベヤ軸10bが回転すると、これらのスクリュー羽根11a、11bはそれぞれ反対方向に廃棄物燃料Fを搬送する。コンベヤ軸10bは図1において矢票P方向に回転することにより、スクリュー羽根11a、11bが、供給口9a、供給口9bのそれぞれに向けて廃棄物燃料を押し送ることになる。なお、コンベヤ軸10のこれら供給口9a、9bよりも外側に位置した部分には、前述と同様に、逆スクリュー羽根11c、11dがそれぞれ設けられている。また、スクリューコンベヤ10の中央部には、スクリュー羽根11a、11bが存していない無羽根部12が設けられている。
【0026】
以上により構成されたことにより、前記供給コンベヤ7により搬送されて投下された廃棄物燃料Fは、スクリューコンベヤ10の中央部に落下する。この中央部には仕切羽根が存していないため、十分に粉砕されていない包装紐のような長尺ものが、左右のスクリュー羽根11a、11bに跨って落下する場合がある。この場合、中央部に仕切羽根がないため、左右のスクリュー羽根11a、11bのいずれかに委ねられることになり、中央部で滞留してしまうことがない。しかも、コンベヤ軸10bの直径dが、従来のスクリューコンベヤ8と比較して、スクリュー羽根の外径Dに対して大きくしてあるから、長尺ものがコンベヤ軸10bに絡みつくことが極力防止される。したがって、廃棄物燃料Fを円滑に搬送することができ、焼却炉1内に確実に供給することができる。
【0027】
本件出願人は、廃棄物燃料を使用する既存の焼却装置に関して、この発明に基づいて、焼却炉内へ廃棄物燃料を均等投下するスクリューコンベヤについて改良を行った。スクリューコンベヤのスクリュー羽根の外径Dは500mmであり、既存のものであるためこれを変更せずに、コンベヤ軸の軸径を、165mmであったものを267mmに変更した。その結果、従来には頻繁に生じていた長尺もののコンベヤ軸への絡みつきがほとんど生じなくなった。なお、コンベヤ軸としては、入手しやすく、特別な加工を要することがないため市販の配管用炭素鋼鋼管を利用し、その呼び径がA250(JISG3452)を利用したため、外径寸法が267mmとなったが、呼び径A200の配管用炭素鋼鋼管(外径寸法が216mm)であっても長尺ものの絡み付き防止の改善が見られた。この点を踏まえてさらにコンベヤ軸の軸径を大きくして前記A250の配管用炭素鋼鋼管を使用したところ、より良好な結果を得られたものである。このため、スクリュー羽根の外径寸法の1/2以上の外径寸法を備えたコンベヤ軸とすることが好ましい。
【産業上の利用可能性】
【0028】
この発明に係る焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤによれば、例えばコンベヤ軸をテーパ状にするような複雑な構造でなく、コンベヤ軸の軸径を大きくするという簡単な改良により長尺ものがコンベヤ軸に絡みついて滞留することを防止することができるので、新設は勿論、既存の焼却装置であっても、運転の円滑化と安定化に寄与する。
【符号の説明】
【0029】
1 焼却炉
1a 燃料投入口
2 RPF・廃プラスチック貯槽
2a スクリューコンベヤ
3 DIP粕・古紙粕貯槽
7a、7b 供給コンベヤ
10 スクリューコンベヤ
10a ケーシング
10b コンベヤ軸
11a、11b スクリュー羽根
11c、11d 逆スクリュー羽根
12 無羽根部
D スクリュー羽根の直径
d コンベヤ軸の直径
F 廃棄物燃料

【特許請求の範囲】
【請求項1】
RPFや廃プラスチック、DIP粕、古紙粕、ペーパースラッジ等の廃棄物を焼却炉に投入するために焼却装置の上部に配設される廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤにおいて、
コンベヤ軸の外径寸法をスクリュー羽根の外径寸法の1/2以上としたことを特徴とする焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤ。
【請求項2】
RPFや廃プラスチック、DIP粕、古紙粕、ペーパースラッジ等の廃棄物を焼却炉に投入するために焼却装置の上部に配設され、中央部に落下させた廃棄物燃料を、異なる方向に振り分けて搬送する焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤにおいて、
コンベヤ軸の外径寸法をスクリュー羽根の外径寸法の1/2以上とし、
中央部には仕切羽根を有していないことを特徴とする焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤ。
【請求項3】
前記スクリュー羽根の外径寸法が約500mmであり、前記コンベヤ軸の外径寸法が約267mmであることを特徴とする請求項1または請求項2に記載の焼却装置への廃棄物燃料搬送スクリューコンベヤ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2010−230263(P2010−230263A)
【公開日】平成22年10月14日(2010.10.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−79636(P2009−79636)
【出願日】平成21年3月27日(2009.3.27)
【出願人】(000183484)日本製紙株式会社 (981)
【Fターム(参考)】