説明

焼却設備並びに焼却設備運転方法

【課題】被焼却物である鋸屑の急激な燃焼で焼却炉の内圧が上昇しても、鋸屑を供給するシールホッパ内や鋸屑を送る経路に燃焼ガスや火炎が逆流して火災を生じたり、粉塵爆発を起こさない焼却設備並びに焼却設備運転方法の開発を技術課題とした。
【解決手段】鋸屑を貯留するシールホッパ内のマテリアルシールが保てない時、又は、焼却炉の圧力が大気圧より高い時に、鋸屑が通過するシュートに具えられた遮断ダンパで前記シュートを遮断する焼却設備であり、前記鋸屑の水分が10%以上、20%以下の範囲の水分に調整されて焼却される焼却設備であり、鋸屑を焼却炉に供給するスクリュ式供給装置の内面下端位置が、攪拌翼底面より垂直距離で50mm以内の高さにある焼却設備であり、これらにより前記課題が解決される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、炉床上の被焼却物を攪拌して被焼却物の燃焼を行う焼却炉において、鋸屑等の微細なバイオマスを被焼却物として焼却する際に、前記被焼却物の投入経路への逆火や投入経路内での粉塵爆発、あるいは焼却炉内での粉塵爆発を起こさない運転を実現できる焼却設備並びに焼却設備運転方法に係るものである。
【背景技術】
【0002】
空気を吹き出しながら水平回転する攪拌装置を炉床に有する円形攪拌焼却炉は、し尿汚泥やし渣、下水汚泥等を焼却するために広く利用されている。この焼却炉の燃焼で発生した熱は、し尿処理場であればし尿汚泥の乾燥用の熱源として使われるが、近年し渣の発生量の減少もあり、し尿汚泥を乾燥するには熱量が不足するので、重油などの燃料をバーナで燃焼して不足の熱量を補っている。重油の使用量は年間を通じると莫大な量になるため、ランニングコストを大きく上昇させる一因である。
一方、木工所などでは鋸屑が多量に発生するため、鋸屑を堆肥化するなどして有効利用を図っているが、堆肥化するには時間を要するために広く普及するには至っておらず、鋸屑は廃棄物として廃棄されることが多い。
そこで、重油などをバーナで燃焼して熱量不足を補う代わりに、これらの鋸屑を焼却炉で燃焼することによって熱量不足を補うことが本発明者により試みられた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開昭60−23715
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
通常の焼却炉内は、燃焼ガスが焼却炉外に漏れるのを防ぐために大気圧よりも負圧状態を保ちながら運転を行う。しかしながら、鋸屑は急激に燃焼し易いために焼却炉の内圧の上昇が頻発し、焼却炉に鋸屑を供給する供給装置内や、その供給装置に鋸屑を送るシュート内及びホッパ内に燃焼ガスや火炎が逆流(逆火)し、供給装置内、シュート内あるいはホッパ内に火災を引き起こす問題を生じた。
また、鋸屑の粉立ちが激しい場合には粉塵爆発を引き起こす恐れもあった。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこのような背景を鑑み成されたものである。
すなわち請求項1記載の発明は、攪拌翼を具えた焼却炉と、被焼却物を収納するシールホッパと、前記焼却炉に前記被焼却物を供給するスクリュ式供給装置と、前記シールホッパと前記スクリュ式供給装置をつなぐシュートとから成る焼却設備において、前記シールホッパにレベル計および/または重量計を具え、前記焼却炉に圧力センサーを具え、前記シュートに前記被焼却物又は気体の移動を遮断する遮断ダンパを具えたことを特徴とする。
【0006】
また請求項2記載の発明は、請求項1記載の焼却設備において、前記スクリュ式供給装置の内面下端位置が、前記焼却炉の攪拌翼底面より垂直距離で50mm以内の高さに位置することを特徴とする。
【0007】
また請求項3記載の発明は、請求項1又は2記載の焼却設備の運転方法において、前記レベル計が前記シールホッパにおける前記被焼却物の滞留を検知できなくなった時、および/または、前記重量計による計測値が所定の値より小さくなった時、前記遮断ダンパを遮断することを特徴とする。
【0008】
また請求項4記載の発明は、請求項1、2又は3記載の焼却設備の運転方法において、前記圧力センサーの計測する圧力が大気圧より高い時に、前記遮断ダンパを遮断することを特徴とする。
【0009】
また請求項5記載の発明は、請求項1、2、3又は4記載の焼却設備の運転方法において、前記被焼却物がバイオマスであることを特徴とする。
【0010】
また請求項6記載の発明は、請求項1、2、3、4又は5記載の焼却設備の運転方法において、前記被焼却物の水分が10%以上から20%以下の範囲であることを特徴とする。
そしてこれら各請求項記載の発明の構成を手段として前記課題の解決が図られる。
【発明の効果】
【0011】
まず請求項1記載の発明によれば、被焼却物である鋸屑を貯留するシールホッパ内が、マテリアルシールを保つには不十分な鋸屑の滞留量に減じた時、あるいは、焼却炉内で鋸屑が急激に燃焼して焼却炉内圧が大気圧よりも高くなった時に、シールホッパとスクリュ式供給装置の間のシュートに具えられた遮断ダンパでシュート内の鋸屑や気体の移動を遮断することにより、燃焼ガスや火炎がスクリュ式供給装置やシールホッパに逆流するのを止め、スクリュ式供給装置内やホッパ内での火災や粉塵爆発を防ぐことができる。
【0012】
また請求項2記載の発明によれば、スクリュ式供給装置から送り出される鋸屑が、焼却炉内の炎や燃焼ガス流に巻き上げられ難くなり、攪拌装置により炉床に掻き広げられながら穏やかに燃焼するので、焼却炉内圧の急激な変動が抑制され、燃焼ガスや火炎のスクリュ式供給装置やシールホッパへの逆流が抑制できる。
また、スクリュ式供給装置から送り出される鋸屑の一部は、被焼却物層に押し込められるため、空気との接触が抑制されることにより、より穏やかに燃焼することができる。
【0013】
また請求項3記載の発明によれば、被焼却物である鋸屑を貯留するシールホッパ内がマテリアルシールを保つには不十分な鋸屑の滞留量に減じた時に、シールホッパとスクリュ式供給装置の間のシュートに具えられた遮断ダンパでシュートを遮断することにより、燃焼ガスや火炎がスクリュ式供給装置やシールホッパに逆流するのを止め、スクリュ式供給装置内やシールホッパ内での火災や粉塵爆発を防ぐことができる。
【0014】
また請求項4記載の発明によれば、焼却炉内で鋸屑が急激に燃焼して焼却炉内圧が大気圧よりも高くなった時に、シールホッパとスクリュ式供給装置の間のシュートに具えられた遮断ダンパでシュートを遮断することにより、燃焼ガスや火炎がスクリュ式供給装置やシールホッパに逆流するのを止め、スクリュ式供給装置内やホッパ内での火災や粉塵爆発を防ぐことができる。
【0015】
また請求項5記載の発明によれば、有効利用の困難なバイオマスを焼却炉で燃焼させることにより生じる熱量を汚泥の乾燥等に利用できるので、重油などの燃料使用量を削減することができる。
【0016】
また請求項6記載の発明によれば、水分が10%以上であれば、スクリュ式供給装置内あるいはシュート内への逆火がより起こりにくく、また、焼却炉内における粉塵爆発もより起こりにくい。一方、水分が20%以下であれば、焼却炉から排出される被焼却物に未燃状態のものが混じらず、被焼却物の燃焼時の発熱量を有効に利用して効率良く焼却運転を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本発明の焼却設備を示すブロック図である。
【図2】本発明の焼却炉の切欠き断面を図示している。
【発明を実施するための形態】
【0018】
本発明の焼却設備並びに焼却設備運転方法の最良の形態は以下の実施例に示すとおりであるが、本実施例に対して本発明の技術的思想の範囲内において技術的改変を加えることも可能である。
【実施例】
【0019】
以下に、本発明である焼却設備Sの構成要素について説明する。
図1は本発明の一実施例である焼却設備Sのブロック図である。
焼却炉1は耐火物で構成され、水平断面が円形状であり、焼却炉1の上部は排気部14であり、排気部14には排気口14aが具えられている。
焼却により発生する燃焼ガスは、排気口14aを経て焼却炉1外の図示していない汚泥乾燥設備等に送られる。前記汚泥乾燥設備等には排気ファンが通常具えられ、前記燃焼ガスは前記排気ファンで吸引されるため、焼却炉1内は大気圧より負圧状態になる。
また、焼却炉1の上部には圧力センサーである圧力計15が具えられ、焼却炉1内と大気圧との差圧が計測される。この計測値は、操作盤B内の図示していないプログラマブルコントローラ(以下はPLCと呼ぶ)に入力され、焼却炉1内の圧力が大気圧より負圧状態になるように、PLCからの出力信号に基づき前記排気ファンの吸引力が制御される。
【0020】
焼却炉1の炉床11には、図2に示すように攪拌装置2が具えられ、攪拌装置2は攪拌軸21b、攪拌アーム21c、攪拌翼21d、及び、駆動装置22から成る。
攪拌翼21dには、燃焼のための空気を焼却物層Yに供給する給気孔21aが具えられている。そして、攪拌軸21b及び攪拌翼21dは中空の構造であり、図示していない空気供給源から送られる空気がこの中空部分を通過して、給気孔21aから噴出する。また、攪拌翼21dは攪拌軸21bを中心に、駆動装置22により焼却物層Yを掻き広げるように回転される。
【0021】
焼却炉1の側壁12には鋸屑Wを投入する供給口12aが具えられ、また、側壁12にはし渣(あるいは乾燥汚泥)を投入する供給口12bが具えられ、また、側壁12には重油等を燃焼させる助燃バーナ13が具えられている。
側壁12の近くに投入された鋸屑W及びし渣(あるいは乾燥汚泥)は、攪拌翼21dに掻き広げられるなどして助燃バーナ13で着火、あるいは燃焼させられる。鋸屑W及びし渣(あるいは乾燥汚泥)の水分が低下し、温度が上昇すると、これらは自燃を始める。これら鋸屑W及びし渣(あるいは乾燥汚泥)は、燃焼しながら攪拌翼21dにより炉床11の中心部方向に掻き広げられ、やがて炉床11の中心部付近に至るまでに燃え尽きて灰になる。
【0022】
炉床11の中心部付近には焼却灰排出孔11aが具えられ、燃焼して灰になったものは焼却灰排出孔11aを通過して下方に移動し、焼却炉1の外に排出される。
尚、炉床11には予め砂が敷き詰められており、そこに鋸屑W及びし渣(あるいは乾燥汚泥)が投入されることになる。そのため、焼却灰排出孔11aからは、灰と共に砂もまた排出される。
【0023】
焼却灰排出孔11aには灰(及び砂)を移送する図示していないコンベヤが具えられている。焼却灰排出孔11a中は灰(及び砂)が常に充満された状態で維持され、また、焼却物層Yの所定の高さが維持されるように、却灰排出孔11aから灰(及び砂)の抜き出しが前記コンベヤにより行われる。
焼却物層Yの高さは、炉床表面11bから概ね100mmに維持され、攪拌翼21dの攪拌翼底面21eから20〜60mmの範囲は、この焼却物層Yの中に埋もれている。
尚、炉床11の前記砂は、運転と共に徐々に減少するので、適宜補給される。
【0024】
供給口12aには鋸屑Wを供給するスクリュ式供給装置31aが挿入されるように具えられている。スクリュ式供給装置31aには投入口33が具えられ、投入口33にはシュート41がボルト等で締結される。
ここで、スクリュ式供給装置31aは、パイプ状の筒体34の中にスクリュ35が具えられた構成であり、この筒体34の内面下端位置Lは、攪拌翼21dの攪拌翼底面21eより上にあり、垂直距離で50mm以内に位置している。
焼却運転中は、スクリュ式供給装置31aは駆動装置32により常時回転している。
【0025】
また、スクリュ式供給装置31aは、装置の配置上で許される限りにおいて短い長さのものとし、1台であることが好ましい。これは、遮断ダンパの下流から焼却炉までの経路の空間容積を必要最低限のものとし、万一火炎の逆流を生じても焼損する範囲を最低限に抑えるためである。
【0026】
シュート41には遮断ダンパ42が具えられている。
遮断ダンパ42はダンパ板42aが具えられ、ダンパ板42aはエアシリンダ42bのロッドの伸縮動作によりリンク機構42cを介して回転可能に具えられている。
ダンパ板42aが回転すると、内筒開口42dにダンパ板42aが接触し、ダンパ板42aで内筒開口42dが閉止され、シュート41内の鋸屑Wや気体の移動が遮断される。通常の焼却運転状態では内筒開口42dは開放されており、鋸屑Wは内筒開口42dを自由に通過する。内筒開口42dが閉止されている間は、後述するシールホッパ51からの鋸屑Wの排出は行われていない。
エアシリンダ42bのロッドの伸縮動作は、コンプレッサエアを動力源とし、コンプレッサエアの供給の有無で行われる。コンプレッサエアの供給の有無は、電磁弁43の開閉により行われ、電磁弁43の開閉はPLCにより制御される。
【0027】
シュート41の上部にはシールホッパ51が具えられている。
シールホッパ51は、下部にスクリュコンベヤ52を具え、スクリュコンベヤ52の端部に具えられた駆動装置52aにより鋸屑Wの排出や排出停止が行われる。
鋸屑を排出するスクリュコンベヤ52の排出口52bには、薄布状の耐熱性素材で筒状に成形された柔らかなフレキシブルシュート53が具えられ、フレキシブルシュート53の下端はシュート41の上部と繋がっている。
【0028】
また、スクリュコンベヤ52の上部にはホッパ部54が具えられている。ホッパ部54の外面にはブラケット54aが具えられ、ブラケット54aの下面には重量計として、一例としてロードセル55が具えられている。ロードセル55は、ロードセル55の下部に架台等を設けて支えられる。
また、ホッパ部54の上面には鋸屑Wが投入される投入口54bが具えられ、この投入口54bの上部には、薄布状のシリコンゴムで筒状に成形された柔らかなフレキシブルシュート56が具えられている。
【0029】
ここで、排出口52には柔らかなフレキシブルシュート53が具えられ、投入口54bにはフレキシブルシュート56が具えられているため、ロードセル55によりシールホッパ51及びシールホッパ51内に滞留する鋸屑Wの重量は運転上十分な精度で計測される。また、シールホッパ51の重量には駆動装置52aの重量も含まれるが、駆動装置52aへの図示していない電源ケーブルは屈曲性を具えているため、ロードセル55の重量計測に与える影響はほとんど生じない。
【0030】
シールホッパ51には、パドルコンベヤ61から図示しない搬送装置により鋸屑Wが送られてくる。
【0031】
ここで、本実施例では、ロードセル55により鋸屑Wの入っていないシールホッパ51の重量を計測し、また、鋸屑Wの入った状態での重量を計測し、これらの重量の差からシールホッパ51内の鋸屑Wの滞留量がPLCにより判定される。
シールホッパ51内の鋸屑Wの滞留量が、マテリアルシールを保つのに不十分であると判定されると、駆動装置52aは停止され、ダンパ板42aで内筒開口42dが閉止される。マテリアルシールが保てる滞留量であると判定されると、内筒開口42dが開放され、駆動装置52aが駆動されて排出口52bから鋸屑Wが排出される。
また、シールホッパ51内の鋸屑Wの滞留量が十分多いと判定されると、シールホッパ51への鋸屑Wの供給を止めるように、パドルコンベヤ61を含めたシールホッパ51の上流側の図示していない設備が停止される。
【0032】
尚、シールホッパ51内の鋸屑Wの滞留量を判定する手段として、レベル計を用いることもできる。例えば、ホッパ部54に静電容量式レベル計を設置する場合、シールホッパ51によりマテリアルシールが保てなくなる限界の滞留量が検出できる位置に静電容量式レベル計を具えることで、マテリアルシールを保つのに十分か不十分かを電容量式レベル計からの信号に基づきPLCにより判定することができる。
尚、マテリアルシールが保たれる状態とは、シールホッパ51内に、ある一定量の鋸屑W滞留することにより、排出口52bと投入口54bとの間で気体が鋸屑Wにより移動できない遮断された状態である。
【0033】
パドルコンベヤ61は、一方の端部の上部に鋸屑Wが投入される投入口61bを具え、他方の端部の下方に排出口61aを具えている。
パドルコンベヤ61の投入口61bと排出口61aの中間の上面61cには、水分計62が具えられ、水分計62と排出口61aとの間には、加水ノズル63が上面61cに具えられている。水分計62は、一例として赤外線吸収式水分計を用いてもよい。
水分計62により鋸屑Wの水分が計測され、鋸屑Wの水分が10%より低い場合、パドルコンベヤ61で移送されつつ混合攪拌されている鋸屑Wに、加水ノズル63から水が吹き掛けられ、鋸屑Wの水分が高められる。
尚、鋸屑Wの水分とは、鋸屑Wに含まれる水分重量を、水分を含んだ鋸屑Wの重量で除して百分率で表した値である。
【0034】
ここで、鋸屑Wは、PLCにより制御される適宜な装置を用いて連続的に一定量がパドルコンベヤ61に投入されている。
一方、鋸屑Wの管理目標とする水分値がPLCに入力されている。
水分計62により鋸屑Wの水分が計測され、その計測値がPLCに入力されれば、PLC内で前記管理目標とする水分値と比較され、鋸屑Wを管理目標とする水分にするための加水量がPLC内で演算される。その演算値に基づいて加水ポンプ64がPLCで駆動され、演算された加水量が加水ノズル63から鋸屑Wに加えられる。
【0035】
焼却炉1の供給口12bにはスクリュ式供給装置31bが具えられ、一方、し渣(あるいは乾燥汚泥)は前記スクリュ式供給装置31bから焼却炉1内に投入される。スクリュ式供給装置31bには、図示していないし渣(あるいは乾燥汚泥)を貯留するホッパからし渣(あるいは乾燥汚泥)が投入される。し渣(あるいは乾燥汚泥)は水分が通常高く、また、し渣(あるいは乾燥汚泥)を貯留する前記ホッパは適宜な手段によりマテリアルシールが保たれているため、焼却炉1からの燃焼ガス(気体)の逆流や逆火は生じない。
【0036】
本発明の焼却設備Sは、一例として以上のように構成されるものであり、以下その作動態様について説明する。
まず、運転前に炉床表面11bに砂が敷き詰められ、次に、前記排気ファンが起動されて焼却炉1内が負圧状態になり、次に、攪拌翼21dに空気が供給されながら駆動装置22により攪拌翼21dが回転される。続いて、供給口12a、12bから鋸屑W及びし渣(あるいは乾燥汚泥)が焼却炉1内に投入され、助燃バーナ13で重油等を燃焼し、これらが着火されて燃焼が始まる。よって、焼却物層Yには、前記砂と、鋸屑Wやし渣(あるいは乾燥汚泥)の未燃物、燃焼中のもの、あるいは灰になったものが存在している。
自燃が始まり、燃焼ガスの温度が十分上昇したことが焼却炉1の排気部14の図示していない温度計により確認されると、助燃バーナ13は休止する。鋸屑W及びし渣(あるいは乾燥汚泥)は供給され続けるので、自燃が継続する焼却運転の定常状態になる。
生じる燃焼ガスは、排気口14aを経て汚泥乾燥設備等の熱源として利用される。
【0037】
ここで、鋸屑Wの水分が調整されず、水分が10%よりも低い乾いた状態で投入され続けると、鋸屑Wが焼却炉1内に投入された直後から激しく燃焼したり、鋸屑Wの微粉が燃焼ガスで巻き上げられ、被焼却物表面Y1の上方で粉塵爆発を起こし易い状態となる。また、スクリュ式供給装置31aからシールホッパ51の経路中には鋸屑Wの微粉が飛散するため、この経路が非常に逆火し易い状態となる。
鋸屑Wの水分が10%より低い場合は、加水ノズル63により鋸屑Wが水分調整されて焼却炉1に投入し、これにより鋸屑Wは粉立ちしにくくなるため、逆火や粉塵爆発をより確実に防ぐことができる。
【0038】
また一方で、スクリュ式供給装置31aの内面下端位置Lは、攪拌翼21dの攪拌翼底面21eより上にあり、垂直距離で50mm以内に位置しているため、投入される鋸屑Wは被焼却物表面Y1の炎や燃焼ガス流により巻き上げられにくい。これにより、被焼却物表面Y1の上方で生じ易い粉塵爆発をより確実に防ぐことができる。
また、内面下端位置Lと被焼却物表面Y1と垂直距離が近接しているため、スクリュ35の押し出す作用により鋸屑Wが焼却物層Yに部分的に押し込められ、押し込められた鋸屑Wは空気との接触が抑制されるため、穏やかに燃焼される効果がある。
【0039】
しかしながら、パドルコンベヤ61では、時として均一な加水が成されないために、焼却炉1内投入された直後に急な燃焼を起こす可能性がある。また、時として存在するダマ状の鋸屑Wが、攪拌翼21dにより一気に崩れて急な燃焼を起こす可能性がある。
前記排気ファンは、焼却炉1内が負圧状態を維持するように制御されているが、急な燃焼時にはこの制御が追いつかず、焼却炉1内の内圧が急激に上昇する。この急な内圧の上昇によりスクリュ式供給装置31aを経由してシールホッパ51側に燃焼ガス(気体)が逆流しようとするが、内圧の上昇を圧力計15が計測しているので、その計測値に基づきPLCの制御により瞬時にダンパ板42aで内筒開口42dを閉止する。これにより、シールホッパ51と焼却炉1との経路が遮断され、燃焼ガス(気体)や逆火がシールホッパ51まで到達するのを防ぐことができる。
【0040】
また一方で、シールホッパ51内は鋸屑Wの滞留によりマテリアルシールが維持されていれば、燃焼ガス(気体)の逆流をより確実に防ぐことができる。
焼却炉1内の内圧が下がったことが圧力計15で計測されると、内筒開口42dは開放され、通常の運転状態に戻る。
【0041】
一方、鋸屑Wの水分が20%よりも高い湿った状態で投入され続けると燃焼ガスの温度が低下し易くなるため、休止している助燃バーナ13が再着火され、重油等の燃焼で汚泥乾燥設備等への供給熱量不足を補う運転が行われ、また、完全に燃焼した灰にならず、焼却灰排出孔11aから未燃状態で排出されることがある。
このように、水分が20%よりも高い状態で投入され続けると、鋸屑Wの本来有している燃焼時の発熱量が有効に使われ難いので、鋸屑Wの水分は20%以下が好ましい。
【0042】
このような水分の高い状態にある鋸屑Wがパドルコンベヤ61に投入される可能性のある場合は、パドルコンベヤ61の排出口61aに図示していない分岐ダンパを設け、鋸屑Wの水分が水分計62の計測により20%よりも高いことが判明した場合、前記分岐ダンパにより、鋸屑Wがシールホッパ51に送られないように、図示していない別の経路に送るようにすればよい。この別の経路に送られた鋸屑Wは、適宜な手段により乾燥し、パドルコンベヤ61に再度投入すればよい。
あるいは、鋸屑Wの水分を本焼却設備Sに供する前に測定し、水分が20%よりも高い場合は、予め乾燥してから用いてもよい。
【0043】
以上のように本発明によれば、シールホッパ51のマテリアルシールを保てない場合、あるいは、焼却炉1の内圧が大気圧より上昇した場合、遮断ダンパ42aによりシールホッパ51と焼却炉1との経路が遮断され、シールホッパ51内の鋸屑Wへの燃焼ガス(気体)の逆流、それに伴うシールホッパ51内での火災や粉塵爆発を防ぐことができ、安全な運転が行える。
また、鋸屑Wの水分を調整管理することで、焼却炉1への供給経路への火炎の逆流や粉塵爆発等をより確実に防ぎ、あるいは鋸屑Wの燃焼時の発熱熱を有効に利用した効率的な焼却運転が行える。
また、焼却炉1への鋸屑Wの供給位置を適切な位置とすることで、焼却炉1への供給経路への燃焼ガスや火炎の逆流、あるいは粉塵爆発をより確実に防ぎ、穏やかな焼却運転が行える。
【産業上の利用可能性】
【0044】
本発明は、既存のし渣(あるいは乾燥汚泥)を行っている焼却炉に、本発明の主旨に基づく装置、計器、及び経路を追加増設改造して鋸屑Wを燃焼させる場合にも適用できる。
また、し尿汚泥に係るし渣や乾燥汚泥だけでなく、下水汚泥の乾燥物、あるいは工場排水汚泥等の乾燥物の焼却炉であってもかまわない。
また、鋸屑に限らず、急激な燃焼を生じ易いバイオマスとして、例えば食品の粉末化された廃棄物、食品の細かく破砕された廃棄物、あるいは細かく破砕された剪定枝等を被焼却物としてもかまわない。
【符号の説明】
【0045】
1 焼却炉
11 炉床
11a 焼却灰排出孔
11b 炉床表面
12 側壁
12a 供給口
12b 供給口
13 助燃バーナ
14 排気部
14a 排気口
15 圧力計
2 攪拌装置
21a 給気孔
21b 攪拌軸
21c 攪拌アーム
21d 攪拌翼
21e 攪拌翼底面
22 駆動装置
31a スクリュ式供給装置
31b スクリュ式供給装置
32 駆動装置
33 投入口
34 筒体
35 スクリュ
41 シュート
42 遮断ダンパ
42a ダンパ板
42b エアシリンダ
42c リンク機構
42d 内筒開口
43 電磁弁
51 シールホッパ
52 スクリュコンベヤ
52a 駆動装置
52b 排出口
53 フレキシブルシュート
54 ホッパ部
54a ブラケット
54b 投入口
55 ロードセル
56 フレキシブルシュート
61 パドルコンベヤ
61a 排出口
61b 投入口
61c 上面
62 水分計
63 加水ノズル
64 加水ポンプ
W 鋸屑
S 焼却設備
Y 焼却物層
Y1 焼却物層表面
L 内面下端位置
B 操作盤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
攪拌翼を具えた焼却炉と、被焼却物を収納するシールホッパと、前記焼却炉に前記被焼却物を供給するスクリュ式供給装置と、前記シールホッパと前記スクリュ式供給装置をつなぐシュートとから成る焼却設備において、
前記シールホッパにレベル計および/または重量計を具え、前記焼却炉に圧力センサーを具え、前記シュートに前記被焼却物又は気体の移動を遮断する遮断ダンパを具えたことを特徴とする焼却設備。
【請求項2】
請求項1記載の焼却設備において、前記スクリュ式供給装置の内面下端位置が、前記焼却炉の攪拌翼底面より垂直距離で50mm以内の高さに位置することを特徴とする焼却設備。
【請求項3】
請求項1又は2記載の焼却設備の運転方法において、前記レベル計が前記シールホッパにおける前記被焼却物の滞留を検知できなくなった時、および/または、前記重量計による計測値が所定の値より小さくなった時、前記遮断ダンパを遮断することを特徴とする焼却設備の運転方法。
【請求項4】
請求項1、2又は3記載の焼却設備の運転方法において、前記圧力センサーの計測する圧力が大気圧より高い時に、前記遮断ダンパを遮断することを特徴とする焼却設備の運転方法。
【請求項5】
請求項1、2、3又は4記載の焼却設備の運転方法において、前記被焼却物がバイオマスであることを特徴とする焼却設備の運転方法。
【請求項6】
請求項1、2、3、4又は5記載の焼却設備の運転方法において、前記被焼却物の水分が10%以上から20%以下の範囲であることを特徴とする焼却設備の運転方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2011−80703(P2011−80703A)
【公開日】平成23年4月21日(2011.4.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−233952(P2009−233952)
【出願日】平成21年10月8日(2009.10.8)
【出願人】(000149310)株式会社大川原製作所 (64)
【Fターム(参考)】