説明

焼成炉

【課題】本発明は、焼成炉に関し、より詳細には熱電対を用いて内部温度を測定する焼成炉に関する。
【解決手段】本発明は、内部に空間が形成された本体と、前記本体の内部に位置し、前記本体と上下に移動可能に結合する複数の熱電対と、前記本体の内部に位置する複数の発熱体と、前記熱電対から温度データの入力を受けて前記発熱体の温度を制御する制御部と、を含み、内部空間の各部分ごとの温度を測定し制御することにより均一な温度分布を形成することができ、特に、焼成対象物に加えられる熱の温度分布を均一にして高品質の焼成物を得ることができるという長所がある。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、焼成炉に関し、より詳細には熱電対を用いて内部温度を測定する焼成炉に関する。
【背景技術】
【0002】
焼成炉は、主に、セラミック基板などを加熱して焼成する工程に使用されており、熱電対を用いて内部の温度を測定し、この熱電対により測定された温度に基づき焼成炉内部の発熱体の温度を制御する。
【0003】
通常の焼成炉では、1個の熱電対を用いて内部の温度を測定しており、焼成炉が大きかったり精密な温度制御が必要な場合には、2〜3個程度の熱電対を用いて内部の温度を測定している。
【0004】
このような焼成炉は内部位置により温度差が発生するが、2〜3個の熱電対では内部位置による温度を測定することが不可能であり、熱電対が発熱体に近接して設けられるため、内部に位置した焼成物に実際に伝達される熱の温度を測定することは困難な状態である。
【0005】
特に、低温同時焼成セラミック(Low Temperature Co−fired Ceramic;LTCC)基板を焼成する場合、焼成炉内部の温度分布が不均一であると、基板も不均一に加熱されるため、基板に局所的な熱衝撃が発生する。基板に発生する熱衝撃は、クラック及び微小クラックを発生させ積層されたセラミックグリーンシートが剥離されるため不良が発生する。
【0006】
これを解決するために、温度測定サンプルを用いたり、外部からワイヤータイプの熱電対を焼成炉の排気孔や扉の隙間に投入する方法を用いて焼成炉の温度を測定しているが、このような方法を用いても焼成物に実際に伝達される温度を測定することは不可能であり、焼成炉内部の位置ごとの温度を把握することが難しいという問題点がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2001−343290号公報
【特許文献2】特開2008−232684号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、上記問題点を解決するために導き出されたものであって、内部の温度分布を正確に測定して均一な温度勾配を形成し、焼成物の実際温度を測定できる焼成炉を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記目的を達成するための本発明の焼成炉は、内部に空間が形成された本体と、前記本体の内部に位置し、前記本体と上下に移動可能に結合する複数の熱電対と、前記本体の内部に位置する複数の発熱体と、前記熱電対から温度データの入力を受けて前記発熱体の温度を制御する制御部と、を含む。
【0010】
また、前記熱電対は、前記本体とネジ結合して回転により上下に移動することができる。
【0011】
また、前記熱電対と前記本体は、上下方向に形成された複数の凸部及び凹部により固定されることが好ましい。
【0012】
また、前記熱電対に固定された上下方向のラックギアと、前記ラックギアに対応するピニオンギアと、をさらに含み、前記熱電対は、前記ピニオンギアの回転により上下に移動することができる。
【0013】
また、前記本体は、直方体状の箱形であることが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明による焼成炉によると、内部空間の各部分ごとの温度を測定し制御することにより均一な温度分布を形成することができ、特に、焼成対象物に加えられる熱の温度分布を均一にして高品質の焼成物を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明による焼成炉の断面図である。
【図2】図1に図示された焼成炉の上面図である。
【図3】焼成対象物に熱電対が近接した状態を示した断面図である。
【図4】本発明の第1実施形態による図1の部分拡大図である。
【図5】本発明の第2実施形態による図1の部分拡大図である。
【図6】本発明の第3実施形態による図1の部分拡大図である。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、図面を参照して本発明の具体的な実施形態を説明する。しかし、これは例示に過ぎず、本発明はこれに限定されない。
【0017】
本発明を説明するにあたり、本発明に係わる公知技術に関する具体的な説明が本発明の要旨を不明瞭にする可能性があると判断される場合には、その詳細な説明を省略する。そして、後述する用語は本発明における機能を考慮して定義された用語であり、これは使用者、運用者の意図または慣例などによって変わることができる。従って、その定義は本明細書の全体における内容を基に下すべきであろう。
【0018】
本発明の技術的思想は特許請求の範囲によって決まり、以下の実施形態は本発明の技術的思想を本発明が属する技術分野において通常の知識を有する者に効率的に説明するための一つの手段に過ぎない。
【0019】
図1は、本発明による焼成炉の断面図であり、図2は、図1に図示された焼成炉の上面図である。図1及び図2を参照すると、本発明による焼成炉100は、本体110、発熱体120、熱電対130及び制御部150を含む。
【0020】
前記本体110の内部には空間が形成され、この空間に焼成対象物10が収容される。前記焼成対象物10は、焼成セッター140により支持される。
【0021】
また、前記本体110の内側壁面には発熱体120が位置し、この発熱体120から発生した熱が焼成対象物10に伝達される。前記発熱体120は、電気ヒータであることが好ましいが、発明はこれに限定されず、熱を発生させる様々な発熱体120が使用されることができる。
【0022】
前記熱電対130は、本体110内部の温度を測定するために使用される。熱電対130は、−200℃〜1,700℃までの広い温度範囲を0.1%〜1%の誤差範囲で測定することができ、力学的な柔軟性があり使用部分に応じて形態を適切に変えることができるという長所があるため、温度測定の分野において広く使用されている。
【0023】
この熱電対130は、本体110の上面部と結合し、熱電対130が上下に移動できるように結合する。従って、焼成対象物10の高さが高い場合には熱電対130を上昇させ、焼成対象物10の高さが低い場合には熱電対130を下降させることにより、焼成対象物10の高さや形状に関係なく熱電対130を焼成対象物10に近接させることができる。
【0024】
このように本発明は、熱電対130を上下に移動させて焼成対象物10に近接させることができるため、焼成炉100内部の温度でなく焼成対象物10の実際温度を測定することが可能である。
【0025】
なお、前記熱電対130は、複数個であることが好ましい。本発明は、複数個の熱電対130を使用することにより、本体110内部の各位置ごとの温度を測定することができ、これに基づき本体110内部の温度分布を把握することができる。また、複数個の熱電対130を焼成対象物10の各部分に近接させることにより、焼成対象物10の各部分ごとの温度を測定することができる。
【0026】
図3は、焼成対象物10に熱電対130が近接した状態を示した図面である。図示されたように、焼成対象物10の表面が非常に不規則な形状を有している。このような焼成対象物10は、各部分ごとの温度を測定することが不可能であるが、本発明では複数の熱電対130をそれぞれ焼成対象物10の表面に近接させる構成を有することにより各部分ごとの温度を測定することができる。
【0027】
特に、焼成対象物10がキャビティ(cavity)及びテーパー(taper)が形成された基板である場合、基板の形状に応じてそれぞれの熱電対130を別度に移動させることにより、表面に最大限に近接して温度を測定することができる。
【0028】
このように、本発明は、焼成対象物10の形状に関係なく、各部分ごとの温度を正確に測定できるため、実際に焼成対象物10が受ける温度を精密に制御することができ、キャビティ及びテーパーが形成された基板の場合にはキャビティ及びテーパー部分の焼結状態を制御することができる。
【0029】
図2には28個の熱電対130が図示されているが、本発明はこれに限定されず、より精密に温度分布を測定する必要がある場合や焼成炉の大きさが大きくなる場合に28個以上の熱電対130を使用することもできるということは言うまでもない。
【0030】
また、前記制御部150は、前記熱電対130から温度データの入力を受けて発熱体120の温度を制御する。熱電対130から入力を受けた温度と設定された焼成温度とを比較し差がある場合には発熱体120の発熱温度を制御することにより設定された焼成温度を維持する。
【0031】
一方、前記発熱体120は、複数個であることが好ましい。これは複数の発熱体120により焼成炉100内部の各部分ごとの温度を制御するためである。図2を参照すると、例えば、設定された焼成温度が900℃であり左上端の熱電対で測定された温度が895℃であると、左上端に最も近い位置にある発熱体120の温度を上昇させて左上端の温度が900℃になるようにする。
【0032】
また、左下端の熱電対130から測定された温度が905℃である場合には左下端に最も近い所に位置した発熱体の温度を下降させて左下端の温度が900℃に維持できるようにする。
【0033】
このように、本発明による焼成炉100は、内部空間の各部分ごとの温度を測定して制御することにより均一な温度分布を形成することができるという長所があり、特に、焼成対象物10に加えられる熱の温度分布を均一にして高品質の焼成物を得ることができる。
【0034】
以下図4〜図6は、図1のA部分を拡大した部分拡大図であり、図4〜図6を参照して本体110と熱電対130の結合構造について詳細に説明する。
【0035】
先ず、図4は、本発明の第1実施形態による本体110と熱電対130の結合関係を示した図面であって図4を参照すると、前記熱電対130は、本体110とネジ結合する。
【0036】
前記熱電対130の外周面に沿ってねじ山が形成され、本体110にはこれに対応するねじ山が形成され熱電対130を回転させると、回転方向に応じて熱電対130が上昇または下降するようになる。このような結合方式によると、熱電対130の高さを精密に調節することができるため、焼成対象物に熱電対130を最大限に近接させることができる。
【0037】
前記熱電対130は、使用者が直接熱電対を回転させる手動方式を用いて回転させることもできるが、モータなどを用いて自動回転させることも可能である。さらに、本体110内部に焼成対象物10の高さを測定できるセンサーを装着し、熱電対130が自動に移動して焼成対象物10に近接するようにすることも可能である。
【0038】
図5は、本発明の第2実施形態による本体110と熱電対130の結合関係を示した図面であって、図5を参照すると、前記熱電対130と本体110は上下方向に形成された複数の凸部及び凹部により固定される。
【0039】
熱電対130には上下方向で多数の凹部が形成され、本体110の上面部には凹部に対応する凸部が形成され、熱電対130が上下に移動しながら凹部と凸部が対応する位置で固定される。
【0040】
熱電対130を上下方向に移動させる方法が非常に簡単で直観的であるため、このような結合方式は、操作が簡単であるという長所があり、熱電対130の位置を迅速に変更することができるため、焼成の作業時間を短縮することができる。
【0041】
本発明では熱電対130に凹部が形成され、本体110に凸部が形成されていると説明したが、その一方熱電対130に凸部が形成され、本体110に凹部が形成されて結合することも可能である。
【0042】
図6は、本発明の第3実施形態による本体110と熱電対130の結合関係を示した図面であって、図6を参照すると、前記熱電対130には上下方向にラックギア160が固定され、このラックギア160に対応するピニオンギア170が回転することにより、熱電対130を上下方向に移動させる。
【0043】
ラックギア160とピニオンギア170を用いた結合方式を用いると、焼成炉100の本体110に追加の加工を施す必要がないため、加工が難しい素材で本体110を形成することができる。
【0044】
前記ピニオンギア170は、手動で回転させることもでき、モータなどを用いて自動回転させることもできる。従って、前記第1実施形態と同様に本体110内部に焼成対象物10の高さを測定できるセンサーを装着し、熱電対130が自動に移動して焼成対象物10に近接するようにすることも可能である。
【0045】
一方、前記本体110は、直方体状の箱形であることができる。箱形の本体110は、焼成対象物10が正方形の基板である場合に適し、正方形の基板に伝達される熱の分布度をより均一にすることができる。
【0046】
以上、代表的な実施形態を参照して本発明に対して詳細に説明したが、本発明に属する技術分野において通常の知識を有する者であれば、上述の実施形態に対して本発明の範囲を外れない限度内で多様な変形が可能であることを理解するであろう。
【0047】
従って、本発明の権利範囲は上述の実施形態に限定されてはならず、後述する特許請求の範囲だけでなくこの特許請求の範囲と均等なものによって決められるべきである。
【符号の説明】
【0048】
10 焼成対象物
100 焼成炉
110 本体
120 発熱体
130 熱電対
140 焼成セッター
150 制御部
160 ラックギア
170 ピニオンギア

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に空間が形成された本体と、
前記本体の内部に位置し、前記本体と上下に移動可能に結合する複数の熱電対と、
前記本体の内部に位置する複数の発熱体と、
前記熱電対から温度データの入力を受けて前記発熱体の温度を制御する制御部と、を含む焼成炉。
【請求項2】
前記熱電対は、前記本体とネジ結合して回転により上下に移動する請求項1に記載の焼成炉。
【請求項3】
前記熱電対と前記本体は、上下方向に形成された複数の凸部及び凹部により固定される請求項1に記載の焼成炉。
【請求項4】
前記熱電対に固定された上下方向のラックギアと、前記ラックギアに対応するピニオンギアと、をさらに含み、
前記熱電対は、前記ピニオンギアの回転により上下に移動する請求項1に記載の焼成炉。
【請求項5】
前記本体は、直方体状の箱形である請求項1〜4のいずれか一項に記載の焼成炉。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2013−19663(P2013−19663A)
【公開日】平成25年1月31日(2013.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−133582(P2012−133582)
【出願日】平成24年6月13日(2012.6.13)
【出願人】(594023722)サムソン エレクトロ−メカニックス カンパニーリミテッド. (1,585)
【Fターム(参考)】