説明

焼成装置

【課題】 被焼成物の焼成空間への供給、および焼成空間からの排出を迅速に行うことができる焼成装置を提供する。
【解決手段】 焼成装置は、被焼成物を配置可能な焼成空間6を形成し、上方部分に開閉可能な上方開口部7、および下方部分に開閉可能な下方開口部8を有する焼成炉2と、焼成空間6の上方開口部7と下方開口部8との間に設けられ、被焼成物を支持可能な支持台3とを含み、支持台3は、被焼成物を支持可能な支持状態と、前記支持状態を解除している支持解除状態とにわたって切換可能に構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、被焼成物を予め定める焼成空間にて焼成する焼成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の技術の焼成装置は、たとえば無機化合物の製造、特に酸化触媒の製造においては、原料のアンモニウム塩溶液と硝酸塩溶液とを混合したスラリーを乾燥して、乾燥して得られた粉体を成型した後の被焼成物を焼成する。このような焼成装置は、被焼成物に応じて、温度、時間、および雰囲気などに関する焼成条件が種々提案されている。被焼成物の焼成のときに、放熱を促進させる方法として、たとえば空気を強制的に循環させる通気循環型焼成装置が開示されている(たとえば特許文献1参照)。
【0003】
【特許文献1】特開平10−263419号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前述の従来の技術の焼成装置では、被焼成物を配置する焼成空間が加熱されるので、被焼成物を焼成した焼成物を焼成空間から作業者が取り出す場合、焼成空間が常温になるまで待機しておく必要がある。したがって焼成後の工程に移るまで、時間がかかるという問題がある。また同様の理由で、焼成空間に被焼成物を配置するまでに、時間がかかるという問題がある。
【0005】
また焼成空間では、焼成によって有害なガスが発生する場合があるので、このようなガスを排出しなければ、焼成空間内にて作業者が安全に作業できない。したがって焼成後の工程に移るまで、時間がかかるという問題がある。
【0006】
したがって本発明の目的は、被焼成物の焼成空間への供給、および焼成空間からの排出を迅速に行うことができる焼成装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、被焼成物を焼成する焼成装置であって、
被焼成物を配置可能な焼成空間を形成し、上方部分に開閉可能な上方開口部、および下方部分に開閉可能な下方開口部を有する焼成炉と、
前記焼成空間の上方開口部と下方開口部との間に設けられ、被焼成物を支持可能な支持台とを含み、
前記支持台は、被焼成物を支持可能な支持状態と、前記支持状態を解除している支持解除状態とにわたって切換可能に構成されることを特徴とする焼成装置である。
【0008】
また本発明は、前記焼成空間の気体を循環させる循環手段をさらに含み、
前記支持台は、多孔部材であることを特徴とする。
【0009】
さらに本発明は、前記支持台の上方に設けられ、支持台に支持される被焼成物を、支持台の全域にわたって均す均し手段をさらに含むことを特徴とする。
【0010】
さらに本発明は、被焼成物を予め定める焼成空間にて焼成する焼成方法であって、
被焼成物を焼成空間に供給し、焼成空間に設けられる支持台に載置する載置工程と、
前記支持台に支持される被焼成物を焼成する焼成工程と、
被焼成物を焼成した焼成物を支持する支持状態から、前記支持状態を解除する支持解除状態に支持台を切換えて、焼成物を焼成空間から排出する排出工程とを含むことを特徴とする焼成方法である。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、焼成装置は、焼成炉と支持台とを含む。焼成炉は、被焼成物を配置可能な焼成空間を形成し、上方部分に開閉可能な上方開口部、および下方部分に開閉可能な下方開口部を有する。したがって上方開口部を開状態にして、被焼成物を上方開口部から供給することによって、自然落下によって被焼成物を焼成空間に供給することができる。また同様に、下方開口部を開状態にすることによって、被焼成物を下方開口部から自然落下で排出することができる。支持台は、上方開口部と下方開口部との間に設けられるので、上方開口部から自然落下で供給される被焼成物を支持することができる。また支持台は、被焼成物を支持可能な支持状態と、前記支持状態を解除している支持解除状態とにわたって切換可能に構成される。したがって支持台に上方開口部から供給される被焼成物を支持した支持状態から、支持解除状態に切換ることによって、被焼成物を支持台の下方に自然落下させることができる。これによって下方開口部を介して、焼成空間から被焼成物または焼成後の焼成物を排出することができる。このように重力を利用して、被焼成物を供給および焼成物を排出するので、作業者が焼成空間にて供給作業および排出作業を行うことなく、焼成装置の外方から機械的に供給と排出を行うことができる。これによって供給および排出を迅速に行うことができる。これによって生産性を向上することができる。
【0012】
また本発明によれば、焼成装置は、焼成空間の気体を循環させる循環手段をさらに含むので、焼成空間に気体を循環させることができる。したがっていわゆる通気循環型の焼成装置を実現することができる。また支持台は、多孔部材であるので、支持台によって気体の流れが遮られることを防ぐことができ、焼成空間のおける気体を一様に循環させることができる。
【0013】
さらに本発明によれば、支持台の上方に設けられ、支持台に支持される被焼成物を、支持台の全域にわたって均す均し手段をさらに含む。上方開口部から被焼成物が支持台上に供給されると、被焼成物が支持台上に偏って分布する場合があるが、本発明のような均し機を用いることによって、被焼成物を支持台上に一様に分布させることができる。これによって支持台上の被焼成物を可及的に一様の焼成条件で、焼成することができる。
【0014】
さらに本発明によれば、焼成方法は、載置工程と、焼成工程と、排出工程とを含む。載置工程では、被焼成物を焼成空間に供給し、焼成空間に設けられる支持台に載置する。焼成工程では、支持台に支持される被焼成物を焼成する。排出工程では、被焼成物を焼成した焼成物を支持する支持状態から、前記支持状態を解除する支持解除状態に支持台を切換えて、焼成物を焼成空間から排出する。このように支持台は、支持状態から支持解除状態に切換えられるので、焼成物を支持台の下方に自然落下させることができる。これによって焼成空間から焼成物を排出することができる。このように重力を利用して、被焼成物を排出するので、作業者が焼成空間にて排出作業を行うことなく、焼成空間の外方から機械的に排出を行うことができる。これによって排出を迅速に行うことができる。これによって生産性を向上することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下、図面を参照しながら本発明を実施するための形態について説明する。図1は、本実施の一形態の焼成装置1を簡略化して示す正面図である。図2は、焼成装置1を簡略化して示す平面図である。焼成装置1は、被焼成物、たとえば無機化合物を焼成する。本実施の形態の焼成装置1は、被焼成物の焼成に際し、被焼成物を焼成炉2に供給し、被焼成物にガスを流通させながら焼成する、いわゆる通気循環型の焼成装置1である。焼成装置1は、焼成炉2、支持台3、均し機4、および循環部5を含んで構成される。
【0016】
焼成炉2は、被焼成物および焼成物(以下、被焼成物および焼成物のうちの不特定の一方を示す場合、「対象物」ということがある)を配置可能な焼成空間6を形成する。焼成炉2は、略円筒状であって、鉛直方向一方である下方Z1に向かって、先細りとなる形状に形成される。この略円筒状の内部空間が、焼成空間6となる。焼成炉2は、鉛直方向他方の部分である上方部分に開閉可能な上方開口部7、下方部分に開閉可能な下方開口部8、上方部分に水平方向に開口する第1水平開口部9、および下方部分に水平方向の開口する第2水平開口部10を有する。上方開口部7は、開状態で被焼成物が上方Z2から自然落下で供給される部分であって、たとえば被焼成物を収納可能な貯蔵タンク(図示せず)と管路を介して連結される。また下方開口部8は、開状態で焼成物を自然落下させて下方Z1に排出する部分であって、たとえば焼成物を収納可能な貯蔵タンク(図示せず)と管路を介して連結される。第1水平開口部9は、循環部5から加熱されたガスが供給される部分である。また第2水平開口部10は、焼成空間6のガスを循環部5に排出する部分である。このような焼成空間6は、上方開口部7および下方開口部8を閉状態にすることによって、焼成空間6内のガスが循環部5によって循環するように構成される。焼成炉2の寸法は、少なくとも、供給される被焼成物を収容可能な寸法に設定される。
【0017】
循環部5は、循環手段であって、焼成空間6内のガスが予め定める温度となるように、焼成空間6内のガスを循環させて制御する。循環部5は、加熱部11と送風部12とを含んで構成される。循環部5は、第1水平開口部9および第2水平開口部10を循環管路13によって連結し、その循環管路13内のガスを加熱して、予め定める循環方向に循環させる。送風部12は、循環管路13内に設けられ、循環管路13内のガスを循環方向に押圧して、移動させる。送風部12は、たとえばブロアおよびファンによって実現される。加熱部11は、循環管路13内または循環管路13に近接して設けられ、循環管路13内のガスが予め定める温度となるように加熱する。加熱部11は、たとえば電気ヒータによって実現される。第1水平開口部9は焼成炉2の上方部分に形成され、第2水平開口部10は焼成炉2の下方部分に形成されるので、循環部5によって循環されるガスの流路を焼成空間6内で可及的に長くすることができる。これによって焼成空間6内のガスの温度が一様となるように、ガスを循環させることができる。循環部5によって循環されるガスの種類に特に限定はなく、空気であってもよく、窒素、アルゴンなどの不活性ガスであってもよく、空気と窒素あるいはアルゴンとを混合して用いてもよい。循環部5によるガス流通量に関しても特に制限は無く、被焼成物の支持台3における充填高さ、被焼成物の発熱速度、温度および圧力損失等を考慮して、安全性と経済性の点から決定されるが、0.1Nm/s以上2Nm/s以下であることが好ましい。
【0018】
均し機4は、均し手段であって、支持台3の上方Z2に設けられ、支持台3に支持される対象物を支持台3の全域にわたって均す。均し機4は、均し軸体14、均し部分15および駆動手段(図示せず)を含んで構成される。均し軸体14は、焼成炉2内に鉛直方向に沿って延びる長手状部材であって、その軸線まわりに角変位可能に構成され、かつ鉛直方向にスライド変位可能に構成される。駆動手段は、均し軸体14を回転駆動およびスライド変位させる。均し部分15は、均し軸体14の下方Z1の端部に連結して設けられ、水平方向に沿って延びる棒状部材によって実現される。均し部分15は、均し軸体14が軸線まわりに角変位することによって、支持台3によって対象物が支持される領域の全域にわたって、変位可能に設けられる。均し部分15は、下方Z1に向かって突出する複数の均し歯16が水平方向に間隔をあけて複数、設けられる。隣接する均し歯16の水平方向の間隔は、対象物の寸法よりも大きくなるように設定される。これによって隣接する均し歯16の間に対象物が引っかかって、均し部分15の角変位に伴って変位することを防ぐことができ、対象物を均すことができる。
【0019】
支持台3は、焼成空間6の上方開口部7と下方開口部8との間に設けられ、対象物を支持可能である。支持台3は、対象物を支持可能な支持状態と、支持状態を解除している支持解除状態とにわたって切換可能に構成される。支持台3は、上方開口部7によって自然落下で供給される対象物を、支持状態で支持可能であり、支持解除状態では、下方開口部8へ対象物を自然落下させる。換言すると、支持台3は、支持状態では、上方開口部7から下方開口部8への対象物の変位を阻止するように構成され、支持解除状態では、上方開口部7から下方開口部8への対象物の変位を許容するように構成される。したがって支持台3は、図2に示すように、支持状態では、その支持台3の外縁部と焼成炉2との距離は、対象物の形状よりも小さくなるように設定される。また支持台3は、図1に破線で示すように、支持解除状態では、その支持台3の外縁部と焼成炉2との距離h1,w1は、対象物の形状よりも大きくなるように選択される。
【0020】
図2を参照して、支持台3は、本実施の形態では、水平方向に略平行(用語「略平行」は、平行を含む)な回転軸線L1まわりに角変位可能に構成される。支持台3は、第1支持部分17、第2支持部分18、第1軸体19、および第2軸体20を含む。第1支持部分17および第2支持部分18は、対象物を支持する部分であって、本実施の形態では、図2に示すように、半円板状にそれぞれ形成される。第1軸体19は、円柱状であって、回転軸線L1に沿って延び、回転軸線L1まわりに角変位可能に焼成炉2に設けられる。本実施の形態では、回転軸線L1は、略円筒状の焼成炉2の中心点付近を通過するように設定される。第1軸体19は、焼成炉2から外方に突出して延びるように設けられる。第1軸体19は、その端部に半径方向外方に突出する第1レバー21が設けられる。第2軸体20は、円筒状であって、回転軸線L1に沿って延び、回転軸線L1まわりに角変位可能に焼成炉2に設けられ、第1軸体19と略同軸(用語「略同軸」は同軸を含む)に設けられる。第2軸体20は、焼成炉2から外方に突出して延びるように設けられる。第2軸体20は、その端部に半径方向外方に突出する第2レバー22が設けられる。第1軸体19の外径は、第2軸体20の内径より小さくなるように設定され、好ましくは第1軸体19および第2軸体20が焼成時に加熱され熱膨張した場合であっても、第1軸体19が第2軸体20に対して円滑に角変位可能となるように、第1軸体19の外径と第2軸体20の内径との差が設定される。このような第1軸体19の外径と、第2軸体20の内径との差は、たとえば2mm以上3mm以下に設定される。
【0021】
第1軸体19は、第1支持部分17と連結して設けられる。第1支持部分17および第2支持部分18は、その半円板状の外縁部分であって、弦となる弦部分17a,18aが、第1軸体19の外周部、および第2軸体20の外周部にそれぞれ連結される。したがって第1軸体19が回転軸線L1まわりに角変位することによって、第1支持部分17が回転軸線L1まわりに角変位する。同様に、第2軸体20が回転軸線L1まわりに角変位することによって、第2支持部分18が回転軸線L1まわりに角変位する。第1支持部分17および第2支持部分18は、回転軸線L1まわりの角変位可能な角度αは、0度から90度、本実施の形態では、0度から60度に設定される。第1支持部分17および第2支持部分18が、0度である状態は、支持状態であり、0度から角変位して、対象物が第1支持部分17および第2支持部分18の外縁部と焼成炉2との隙間から落下可能な状態が、支持解除状態である。
【0022】
図1にて破線で示すように、第1支持部分17および第2支持部分18が60度である状態では、第1支持部分17および第2支持部分18の外縁部と、焼成炉2との水平方向の距離w1は、対象物が下方Z1へ通過可能に設定される。このような距離w1は、支持台3に支持される対象物の量と、下方開口部8の開口径などに基づいて設定され、具体的には、支持台3に支持される対象物が支持台3から自然落下することによって、下方開口部8に詰まらずに円滑に下方Z1に案内することができるように設定される。また図1にて破線で示すように、第1支持部分17および第2支持部分18が60度である状態では、第1支持部分17および第2支持部分18の外縁部と、焼成炉2との鉛直方向の距離h1は、対象物が支持台3から下方Z1へ落下して、焼成炉2に衝突した場合に、損傷することなく、好適に分散するような距離に設定される。また図1にて破線で示すように、第1支持部分17および第2支持部分18が60度である状態では、第1支持部分17および第2支持部分18の外縁部は、焼成炉2の鉛直方向に交差する斜面部に臨んで位置している。これによって支持台3の上面に沿って流れ落ちてくる対象物が不所望に拡散することなく、円滑に下方開口部8に案内することができる。
【0023】
支持台3は、本実施の形態では多孔部材である。支持台3は、多孔部材として、厚み方向に貫通する複数の貫通孔を備える。このような貫通孔の形状は、支持台3によって支持される対象物が、貫通孔を通過できないように選択される。換言すると、貫通孔の形状は、対象物の形状より小さくなるように設定される。このような貫通孔は、支持台3の全域にわたって、一様に分布するように形成される。本実施の形態では、支持台3は、網目状の多孔部材によって実現される。
【0024】
次に、支持台3の動作に関して説明する。図3は、焼成装置1を簡略化して示す正面図であって、支持台3の動作を説明するため正面図である。図3(1)では、支持台3が支持状態にあり、図3(2)では、支持台3は支持解除状態にある。図1および図2では、図示を省略しているが、焼成装置1は、支持台3を支持状態と支持解除状態とにわたって切換る切換装置23さらに含む。切換装置23は、支持台3の端部を支持している吊り状態から、支持台3の端部の支持を解除して、支持台3の自重によって下方Z1に角変位している吊り解除状態とにわたって切換可能に構成される。したがって切換装置23が吊り状態にある場合、支持台3は支持状態にあり、切換装置23が吊り解除状態にある場合、支持台3は支持解除状態にある。
【0025】
切換装置23は、駆動部(図示せず)、ワイヤ24、シリンダ25、第1連結部材26および第2連結部材27を含んで構成される。第1連結部材26は、長手状部材であって、一端部が第1支持部分17および第2支持部分18の外縁部に角変位可能に連結され、支持状態では、外縁部から上方Z2に沿って延びるように設けられる。第2連結部材27は、長手状部材であって、一端部が第1連結部材26の他端部に角変位可能に連結され、支持状態および支持解除状態にて、焼成炉2の壁部に沿って延びるように設けられる。第2連結部材27は、他端部がワイヤ24に連結される。
【0026】
シリンダ25は、第2連結部材27を鉛直方向に沿って往復運動可能に支持する。またシリンダ25は、焼成炉2内の焼成空間6と焼成炉2の外方の外方空間とにわたって設けられる。したがって第2連結部材27は、シリンダ25を介して往復運動することによって、焼成空間6と外方空間とにわたって変位可能に構成される。このようなシリンダ25を設けることによって焼成空間6内のガスを外方空間へ開放されることを防ぐことができる。
【0027】
ワイヤ24は、索条体であって、その一端部がシリンダ25に連結され、他端部が駆動部に連結される。駆動部は、予め定める回転軸線まわりに回転自在に設けられる回転駆動部材と、回転駆動部材を回転駆動する駆動源とを含む。回転駆動部材は、ワイヤ24の他端部が巻掛けられる。したがって駆動部が駆動することによって、ワイヤ24の巻取りまたは繰出しが行われる。
【0028】
図3(1)に示す吊り状態から、駆動部を駆動してワイヤ24を繰出すことによって、第2連結部材27がシリンダ25によって下方Z1に変位する。第2連結部材27が下方Z1に変位すると、第2連結部材27に連結される第1連結部材26が、下方Z1に変位する。第1連結部材26が下方Z1に変位すると、第1支持部分17および第2支持部分18が回転軸線L1まわりに角変位する。したがって第1支持部分17および第2支持部分18の外縁部は回転軸線L1を中心とする円弧状の移動軌跡に沿って変位する。これにともなって、第1連結部材26は、第2連結部材27に対して角変位し、図3(2)に示すように、吊り解除状態となり、支持台3が支持解除状態となる。またこれとは逆に、図3(2)に示す吊り解除状態から、駆動部を駆動してワイヤ24を巻取ることによって、図3(1)に示す吊り状態に戻すことができる。
【0029】
また前述したように第1軸体19および第2軸体20には、第1レバー21および第2レバー22が設けられるので、ワイヤ24などの可動部分の変位が円滑に動作しない場合には、作業者が第1レバー21および第2レバー22を回転軸線L1まわりに角変位させることによって、いわば強制的に第1支持部分17および第2支持部分18を角変位させることができる。
【0030】
次に、焼成装置1による焼成方法に関して、フローチャートを用いて説明する。図4は、焼成装置1による焼成方法を示すフローチャートである。図4に示すフローチャートでは、支持台3が支持状態にあり、均し機4が支持台3の近傍に位置している状態にて開始される。ステップa1は、載置工程であって、上方開口部7を開状態にして、被焼成物を上方開口部7から自然落下させて焼成空間6に供給し、ステップa2に移る。したがってステップa1にて、支持台3に被焼成物が載置される。
【0031】
ステップa2は、均し工程であって、均し機4を軸線まわりに角変位させ、かつ角変位させながら上方Z2へ変位させ、ステップa3に移る。均し機4は、ステップa1にて供給される被焼成物が埋もれている状態であるので、角変位させながら上方Z2へ変位させることによって、被焼成物を支持台3の全域に均等に分布するように均すことができる。
【0032】
ステップa3は、焼成工程であって、支持台3に支持される被焼成物を焼成し、ステップa4に移る。ステップa3では、被焼成物に応じた予め定める焼成条件に従って、被焼成物を焼成する。このとき上方開口部7および下方開口部8は閉状態にあり、循環部5は、焼成空間6内のガスが循環するように制御される。これによって支持台3に支持される被焼成物の発熱が除去される。
【0033】
ステップa4は、排出工程であって、被焼成物を焼成した焼成物を支持する支持状態から、支持状態を解除する支持解除状態に支持台3を切換えて、焼成物を焼成空間6から排出し、本フローを終了する。ステップa4では、切換装置23を駆動させて、支持台3の支持状態を支持解除状態に切換ることによって、支持台3に載置されていた焼成物が自然落下して、下方開口部8に案内される。このとき下方開口部8は開状態にあり、これによって焼成物は下方開口部8を介して、下方Z1に案内され、次の工程に移ることができる。
【0034】
次に、本実施の形態の焼成装置1によって焼成される被焼成物に関して説明する。被焼成物は、たとえば無機成形物であり、焼成炉2に供給する無機成型物の成型方法および形状には特に制限は無く、打錠成型または押出し成型などの方法で成型したリング状、ペレット状、球状またはハニカム状など種々の成型物を使用できる。
【0035】
無機成型物を供給したときに無機成型物の支持台3からの充填高さは、特に制限は無く、無機成型物の発熱速度、温度、流通ガス量および圧力損失などを考慮して、安全性と経済性の点から決定されるが、充填高さが小さすぎると設備が大きくなって経済的でなく、大きすぎると圧力損失が大きくなるなどの問題があるため、0.1m以上2m以下が好ましく、0.2m以上1m以下がより好ましい。
【0036】
焼成装置1は、被焼成物として無機化合物の中でも特に酸化触媒の焼成に好適に使用することができ、なかでもアクロレイン、アクリル酸、メタクロレイン、メタクリル酸製造用触媒に、より好適に使用することができる。
【0037】
以上、説明したように本実施の形態の焼成装置1および焼成方法では、上方開口部7を開状態にして、被焼成物を上方開口部7から供給することによって、自然落下によって被焼成物を焼成空間6に供給することができる。また同様に、下方開口部8を開状態にすることによって、対象物を下方開口部8から自然落下で排出することができる。支持台3は、上方開口部7と下方Z1開口部との間に設けられるので、上方開口部7から自然落下で供給される被焼成物を支持することができる。また支持台3は、対象物を支持可能な支持状態と、支持状態を解除している支持解除状態とにわたって切換可能に構成される。したがって支持台3に上方開口部7から供給される被焼成物を支持した支持状態から、支持解除状態に切換ることによって、対象物を支持台3の下方Z1に自然落下させることができる。これによって下方開口部8を介して、焼成空間6から対象物を排出することができる。このように重力を利用して、対象物を供給および対象物を排出するので、作業者が焼成空間6にて供給作業および排出作業を行うことなく、焼成装置1の外方から供給と排出を行うことができる。これによって供給および排出を迅速に行うことができる。これによって生産性を向上することができる。
【0038】
また本実施の形態では、焼成装置1は、焼成空間6の気体を循環させる循環部5をさらに含むので、焼成空間6に気体を循環させることができる。したがっていわゆる通気循環型の焼成装置1を実現することができる。また支持台3は、多孔部材であるので、支持台3によって気体の流れが遮られることを防ぐことができ、焼成空間6のおける気体を一様に循環させることができる。
【0039】
さらに本実施の形態では、支持台3の上方Z2に設けられ、支持台3に支持される被焼成物を、支持台3の全域にわたって均す均し機4をさらに含む。上方開口部7から被焼成物が支持台3上に供給されると、被焼成物が支持台3上に偏って分布する場合があるが、均し機4を用いることによって、被焼成物を支持台3上に一様に分布させることができる。これによって支持台3上の被焼成物を可及的に一様の焼成条件で、焼成することができる。また循環部5を備える焼成装置1では、循環されるガスは被焼成物の除熱をより効率的にするために、可能な限り支持台3に支持される被焼成物を均一な速度で流通させることが好ましいが、本実施の形態では、循環部5と均し機4の両方を備えるので、可及的に均一な速度でガスを流通させることができる。
【0040】
前述の実施の形態では、通気循環型の焼成装置1として本発明が実現されているが、通気循環型の焼成装置1に限ることはなく、循環部5を除く残余の部分によって焼成装置1を構成してもよい。
【0041】
また前述の実施の形態では、均し機4を備える焼成装置1として本発明が実現されているが、均し機4を除く残余の部分によって焼成装置1を構成してもよい。また均し機4は、前述の実施の形態に限ることはなく、支持台3に支持される対象物を均すような構成であればよい。
【0042】
また前述の実施の形態では、支持台3は回転軸線L1まわりに角変位可能に構成されているが、このような構成に限ることはない。支持台3の他の構成に関して説明する。図5は、本発明の実施の他の形態の焼成装置1Aを簡略化して示す正面図である。図6は、焼成装置1Aを簡略化して示す平面図である。本実施の形態の焼成装置1Aは、支持台3Aの構成が前述の実施の形態と異なる。本実施の形態では、前述の実施の形態と同様の部分は説明を省略し、異なる部分だけ説明する。支持台3Aは、第1支持部分17、第2支持部分18、第3軸体28、および第4軸体29を含む。第3軸体28は、円柱状であって、回転軸線L2に沿って延び、回転軸線L2まわりに角変位可能に焼成炉2に設けられる。本実施の形態では、回転軸線L2は、略円筒状の焼成炉2の中心点から水平方向の一方にずれて水平面内に沿って延びるように設定される。第3軸体28は、焼成炉2から外方に突出して延びるように設けられる。第3軸体28は、その端部に半径方向外方に突出する第3レバー30が設けられる。第4軸体29は、円筒状であって、回転軸線L3に沿って延び、回転軸線L3まわりに角変位可能に焼成炉2に設けられる。本実施の形態では、回転軸線L3は、略円筒状の焼成炉2の中心点から水平方向の他方にずれて水平面内に沿って延びるように設定される。さらに回転軸線L3は、回転軸線L2に略平行であり、回転軸線L2と間隔をあけて設定される。第4軸体29は、焼成炉2から外方に突出して延びるように設けられる。第4軸体29は、その端部に半径方向外方に突出する第4レバー22が設けられる。
【0043】
第3軸体28は、第1支持部分17と連結して設けられる。第4軸体29は、第2支持部分18が連結して設けられる。したがって第3軸体28が回転軸線L2まわりに角変位することによって、第1支持部分17が回転軸線L2まわりに角変位する。同様に、第4軸体29が回転軸線L3まわりに角変位することによって、第2支持部分18が回転軸線L3まわりに角変位する。前述の実施の形態と同様に、第1支持部分17および第2支持部分18が、0度である状態は、支持状態であり、0度から角変位して、対象物が第1支持部分17および第2支持部分18の外縁部と焼成炉2との隙間から落下可能な状態が、支持解除状態である。このような構成であっても、前述の実施の形態と同様の作用および効果を達成することができる。
【0044】
また支持台3の他の構成として、たとえば焼成炉2に対して支持台3が角変位するように連結して、支持台3の中央部から分離するように構成してもよい。またたとえば支持台3が水平方向にスライド変位するように構成してもよい。
【0045】
また前述の実施の形態では、切換装置23は、ワイヤ24などを用いて実現されているがこのような構成に限ることはなく、歯車などの機械要素を用いて実現してもよく、電磁ソレノイドなどの駆動手段を用いて実現してもよい。
【0046】
また被焼成物が焼成中にガスが発生する場合、焼成炉2にぬき弁を設け、ガスを開放するように構成してもよい。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本実施の一形態の焼成装置1を簡略化して示す正面図である。
【図2】焼成装置1を簡略化して示す平面図である。
【図3】焼成装置1を簡略化して示す正面図であって、支持台3の動作を説明するため正面図である。
【図4】焼成装置1による焼成方法を示すフローチャートである。
【図5】実施の他の形態の焼成装置1Aを簡略化して示す正面図である。
【図6】焼成装置1Aを簡略化して示す平面図である。
【符号の説明】
【0048】
1 焼成装置
2 焼成炉
3 支持台
4 均し機
5 循環部
6 焼成空間
7 上方開口部
8 下方開口部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
被焼成物を焼成する焼成装置であって、
被焼成物を配置可能な焼成空間を形成し、上方部分に開閉可能な上方開口部、および下方部分に開閉可能な下方開口部を有する焼成炉と、
前記焼成空間の上方開口部と下方開口部との間に設けられ、被焼成物を支持可能な支持台とを含み、
前記支持台は、被焼成物を支持可能な支持状態と、前記支持状態を解除している支持解除状態とにわたって切換可能に構成されることを特徴とする焼成装置。
【請求項2】
前記焼成空間の気体を循環させる循環手段をさらに含み、
前記支持台は、多孔部材であることを特徴とする請求項1に記載の焼成装置。
【請求項3】
前記支持台の上方に設けられ、支持台に支持される被焼成物を、支持台の全域にわたって均す均し手段をさらに含むことを特徴とする請求項1または2記載の焼成装置。
【請求項4】
被焼成物を予め定める焼成空間にて焼成する焼成方法であって、
被焼成物を焼成空間に供給し、焼成空間に設けられる支持台に載置する載置工程と、
前記支持台に支持される被焼成物を焼成する焼成工程と、
被焼成物を焼成した焼成物を支持する支持状態から、前記支持状態を解除する支持解除状態に支持台を切換えて、焼成物を焼成空間から排出する排出工程とを含むことを特徴とする焼成方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2008−241214(P2008−241214A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−86057(P2007−86057)
【出願日】平成19年3月28日(2007.3.28)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】