説明

焼結鉱の製造方法

【課題】低温領域でのNOxの発生を経済的に抑制可能な焼結鉱の製造方法を提供する。
【解決手段】炭材表面に消石灰を、炭材に対する質量%で2質量%以上30質量%以下の割合で被覆した表面被覆炭材を用いる焼結鉱の製造方法であって、表面被覆炭材の製品水分量が12.0質量%以上15.5質量%以下となるように、炭材及び消石灰に水分を添加して造粒し、表面被覆炭材を製造するので、低温領域でのNOxの発生を経済的に抑制できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、NOxの発生を抑制可能な焼結鉱の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
焼結鉱の製造においては、燃料として使用する炭材の燃焼により、排ガス中に窒素酸化物(NOx)が発生する。このNOxの低減は、大気汚染の改善において重要な課題である。
NOxを低減する手段としては、例えば、特許文献1に、CaO含有量が5〜50質量%であるCaO−FexO系複合酸化物を主成分とする触媒によるNOxの除去技術が開示されている。
しかし、上記したCaO−FexO系複合酸化物は、石灰系原料と鉄鉱石を溶融成形して製造されるため、通常の焼結で副原料として使用される石灰系原料に比べて高価だった。
【0003】
そこで、上記のような高価な酸化物を用いることなく、通常の焼結副原料として用いられる石灰系原料を使用し、この石灰系原料とコークスを混合し造粒してコークスの表面を石灰系原料で覆い、炭材燃焼時のNOxを低減させることが検討されている。
ここで、石灰系原料とコークスを造粒する方法としては、例えば、特許文献2に記載の技術が開示されている。具体的には、粒径0.3mm以下の含有量が50質量%以上のコークスに、生石灰と消石灰の1種又は2種(以下、単に石灰という)を配合し、その後、造粒し養生する方法である。なお、配合する石灰の平均粒度は0.5〜3mmである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−15174号公報
【特許文献2】特開2006−290925号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献2に記載の技術は、コークスの粒径が石灰の粒径よりも小さいことから、これを造粒すると、石灰の周囲にコークスが付着することになる。このため、コークスが低温領域で燃焼してしまい、NOxが多量に発生してNOxの低減が図れない。
【0006】
本発明はかかる事情に鑑みてなされたもので、低温領域でのNOxの発生を経済的に抑制可能な焼結鉱の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するためになされた本発明の要旨は、以下の通りである。
(1)炭材表面に消石灰を、該炭材に対する質量%で2質量%以上30質量%以下の割合で被覆した表面被覆炭材を用いる焼結鉱の製造方法であって、
前記表面被覆炭材の製品水分量が12.0質量%以上15.5質量%以下となるように、前記炭材及び前記消石灰に水分を添加して造粒し、前記表面被覆炭材を製造することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【0008】
(2)前記消石灰の被覆層厚が5μm以上500μm以下であることを特徴とする(1)記載の焼結鉱の製造方法。
【0009】
(3)前記炭材の粒度は、粒径0.25mm未満の累積質量が20質量%以下であり、粒径0.25mm以上3mm以下の累積質量が40質量%以上であることを特徴とする(1)又は(2)記載の焼結鉱の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明に係る焼結鉱の製造方法は、炭材の表面に消石灰を、炭材に対する質量%で2〜30質量%の割合で被覆した表面被覆炭材を用いるので、消石灰を使用でき経済的である。
この表面被覆炭材を、その製品水分量が12.0〜15.5質量%となるように、炭材及び消石灰に水分を添加し造粒して製造するので、消石灰の被覆層厚が適正厚みとなった表面被覆炭材の歩留を向上できる。
従って、低温領域でのNOxの発生を経済的に抑制可能である。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】NOx転換率と燃焼温度との関係を示すグラフである。
【図2】製品水分量と消石灰の被覆層厚が適正厚みとなった表面被覆炭材の歩留との関係を示すグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0012】
続いて、添付した図面を参照しつつ、本発明を具体化した実施の形態につき説明し、本発明の理解に供する。
まず、本発明の焼結鉱の製造方法に想到した経緯について説明する。
炭材が燃焼する際に生成(発生)するNOxは、炭材中の窒素が酸化したものであり、図1に示されるように、1150℃以下(O:21%、Ar:79%)の低温で多量に生成することが確認されている。この図1の縦軸のNOx転換率は、式(1)により算出したものである。
{NOx転換率(mol%)}
=100×{NOx発生量(mol)}/{燃料窒素入量(mol)} ・・・(1)
従って、NOx生成を抑制するためには、炭材を極力、高温燃焼させることが重要である。
【0013】
また、炭材中の微粉は、燃焼速度が速く低温で燃焼が完了するため、NOxを増大させると考えられる。即ち、炭材から、粒径が0.25mm未満の微粉を除去できれば、NOx発生量を低減できると考えられる。
しかし、炭材から、例え0.25mm未満の微粉を除去したとしても、NOx発生を抑制するためには、炭材の低温燃焼を避け、高温燃焼させる必要がある。
ここで、炭材を高温燃焼させるには、炭材表面を高温領域で溶融する被覆層で覆い、低温領域で周囲の大気中の酸素を遮断できればよい。これにより、NOx発生を抑制することができる。
【0014】
前記した特許文献1には、CaO含有量が5〜50質量%のCaO−FexO系複合酸化物を表面に被覆した炭材を用いて、CaO−FexO系複合酸化物の触媒作用により、炭材の燃焼時に生成するNOxを還元又は分解し除去することが開示されている。このCaO含有量を50質量%以下に制限したCaO−FexO系複合酸化物は融点が低く、1200℃以上の高温域で溶融するため、これを炭材の表面に被覆することで、ある程度のNOx低減効果は期待される。
しかしながら、CaO−FexO系複合酸化物は、石灰系原料と鉄鉱石を溶融成形して製造されるため、通常の焼結で副原料として使用される石灰系原料に比べて高価である。
【0015】
そこで、本発明者らは、上記した高価な酸化物を用いることなく、通常の焼結副原料として用いられる消石灰を炭材表面の被覆物(被覆層ともいう)として用いることにより、炭材燃焼時のNOx低減を可能とした。
図2に示すように、本発明の一実施の形態に係る焼結鉱の製造方法は、炭材の表面に消石灰を、炭材に対する質量%で2質量%以上30質量%以下(以下、単に2〜30質量%ともいう)の割合で被覆した表面被覆炭材を用いる焼結鉱の製造方法であり、表面被覆炭材の製品水分量が12.0質量%以上15.5質量%以下(以下、単に12.0〜15.5質量%ともいう)となるように、炭材及び消石灰に水分を添加して造粒し、表面被覆炭材を製造する方法である。以下、詳しく説明する。
【0016】
まず、表面被覆炭材の製造に用いられる原料を除いた焼結鉱の配合原料を、ドラムミキサーやその他の混合機を用いて混合し、更に造粒機により造粒する。ここで、配合原料とは、焼結機に装入される原料のうち、床敷鉱を除いたものをいう。
また、表面被覆炭材は、粒径0.25mm未満の微粉炭材を20質量%以下にした粗粒炭材を用いることが好ましく、これを核粒子とし、これに消石灰を混合し、水分を添加して造粒することで製造する。ここで、粗粒炭材と消石灰を混合し造粒するには、例えば、ドラムミキサーやパンペレタイザー等の転動造粒機、その他の混合造粒機等を使用できる。
【0017】
これにより、粗粒炭材を核粒子として、消石灰が被覆された表面被覆炭材が形成される。
そして、前記した造粒途中又は造粒後の配合原料に、上記した表面被覆炭材を添加し混合する。これは、配合原料を混合し造粒する前に、表面被覆炭材を添加することで、配合原料の混合時や造粒時に、炭材表面の被覆層が崩壊し剥離してしまうことを避けるためである。
【0018】
ここで、炭材には、例えば、コークス(粉コークス)、無煙炭、その他の焼結鉱製造に用いられる燃料を使用できる。
また、消石灰は、一般に、粒径0.15mm以下を70質量%以上(100質量%でもよい)含むものであり、その大部分(例えば、70質量%以上、好ましくは80質量%以上)が炭材よりも細かいものである。なお、消石灰には、水酸化カルシウムのみならず、例えば、石灰乳(消石灰の懸濁液)等も使用できる。この消石灰は、バインダーとなって、炭材表面に密着した被覆物を形成するため、例えば、配合原料との混合時や、焼結機への原料装入までの搬送過程において、炭材表面の被覆物の脱離を抑制できる。
【0019】
また、炭材表面の消石灰は、炭材に対する質量%で2質量%以上30質量%以下の割合で被覆する必要がある。
消石灰の炭材に対する質量%が2質量%未満の場合は、炭材表面全体を包囲する十分な被覆層の形成が難しくなり、炭材表面の一部が露出したり、また被覆層厚が薄くなり過ぎて、低温域での大気中の酸素の遮断によるNOx低減効果が得られなくなる。一方、炭材表面の消石灰量が30質量%を超える場合、被覆層厚が厚くなり過ぎ、燃焼性が悪くなって焼結の生産性が損なわれる。
このため、炭材表面の消石灰を、炭材に対する質量%で2〜30質量%としたが、下限を5質量%とすることが望ましく、また上限を15質量%とすることが望ましい。
【0020】
前記したように、焼結工程のNOx発生量を低減するため、炭材に、粒径0.25mm未満の微粉炭材の累積質量を20質量%以下にした粗粒炭材を使用したが、更には11.0質量%以下が望ましい。一方、粒径0.25mm未満の炭材の下限値は、上記した理由から特に規定していないが、篩網による篩分け限界を考慮すれば5質量%である。
更に、粒径0.25mm以上3mm以下の炭材の累積質量は、40質量%以上であることが望ましく、70質量%以上であることが特に望ましい。粒径が3mmを超える炭材は、NOxの低減効果が3mmの炭材とほとんど同じであるが、燃焼速度が遅く、焼結の生産性が損なわれる。一方、粒径0.25mm以上3mm以下の炭材の累積質量の上限値は、上記した理由から特に規定していないが、100質量%であることが好ましい。
【0021】
上記した表面被覆炭材の製造にあっては、表面被覆炭材の製品水分量が12.0質量%以上15.5質量%以下となるように、炭材及び消石灰に水分を添加して造粒する。
ここで、製品水分量とは、最終的な製品(焼結機へ装入される前の造粒物である表面被覆炭材)の水分量であり、消石灰及び炭材の含有水分量と混合及び造粒時の添加水分量との合計量で現される。なお、製品水分量は、乾燥状態の表面被覆炭材(消石灰及び炭材)100に対する割合(質量%:外掛け)である。
【0022】
図2に示すように、表面被覆炭材の製品水分量を12.0質量%以上15.5質量%以下とした場合に、消石灰の被覆層厚が適正厚み、即ち5μm以上500μm以下(以下、単に5〜500μmともいう)となった表面被覆炭材の歩留を向上できた(60質量%以上)。
なお、表面被覆炭材は、消石灰とコークス(炭材)を、レディゲミキサー(混練機)に供給して混練した後、この混練物をパンペレタイザーに供給すると共に水分を添加して造粒し、コークス表面に消石灰を付着させて製造した。このレディゲミキサーは、内容積が8mであり、混練時の回転羽根の回転数を100rpm(回/分)とし、混練時間を3分とした。また、パンペレタイザーは、直径が5mであり、回転数を8rpmとし、傾斜角度を57度とした。
【0023】
そして、歩留の測定は、以下の方法で行った。
まず、JIS K2151のコークス類−試験方法に準じて、試料をサンプリングした。次に、このサンプリングした粒径別の試料を樹脂に埋込みカッティングし、顕微鏡にて、カッティングした面におけるコークス表面の付着消石灰の厚みを50箇所測定した。そして、この50箇所の測定値の平均値を計算して歩留りを求めた。
【0024】
ここで、表面被覆炭材の製品水分量が12.0質量%未満の場合、製品水分量が少な過ぎて炭材表面に消石灰が付着し難くなり、部分的に付着しない箇所が発生したり、また被覆層厚が薄くなり、消石灰の被覆層厚が5〜500μmとなった表面被覆炭材の歩留が低く(60質量%未満)なる。このため、炭材表面の消石灰によるNOx抑制効果が減少する。
一方、水分量が15.5質量%を超える場合、水分量が多過ぎて消石灰がだんご状(塊状)になり、被覆層厚の非常に厚い部分(500μm超)や非常に薄い部分(5μm未満)が発生する。また、更に水分が多くなると、消石灰が炭材表面から過剰水分と共に流れ落ち易くなる。このため、消石灰の被覆層厚が5〜500μmとなった表面被覆炭材の歩留が低く(60質量%未満)なり、炭材表面の消石灰によるNOx抑制効果が小さくなる。
【0025】
以上のことから、表面被覆炭材の製品水分量を12.0〜15.5質量%とし、炭材表面の消石灰の被覆層厚を5〜500μmとした表面被覆炭材の歩留を向上させる(60質量%以上)。なお、更に、NOx抑制効果を高めるには、製品水分量の下限値を13.5質量%とし、また製品水分量の上限値を15.0質量%として、消石灰の被覆層厚が5〜500μmとなる表面被覆炭材の歩留を高める(85質量%以上)ことが好ましい。また、消石灰の被覆層厚の上限は、上記した理由から500μmとしたが、250μmを超えるとNOx抑制効果の上昇傾向が緩やかになるため、炭材に対する消石灰量を調整して(減少させて)、250μmとすることが好ましい。
以上の方法で製造した表面被覆炭材を、焼結機(図示しない)に装入して焼結鉱を製造する。
【0026】
焼結で生成するNOxは、前記したように、炭材の1150℃以下の低温燃焼で急激に生成される。従って、NOx生成を抑制するためには、炭材の低温燃焼を抑制し、極力高温燃焼させることが必要である。
上記した表面被覆炭材は、炭材の燃焼初期である低温領域で、炭材表面が被覆層で覆われているため、被覆層内の炭材の燃焼を抑えてNOxの発生を抑制する。
一方、1200℃以上の高温領域に到達すると、被覆層中の消石灰は、周囲の鉱石と反応し、カルシウムフェライトとなって溶融し、溶け落ちる。これにより、炭材表面は、消石灰が消失して裸の状態になるが、裸の状態であっても、表面被覆炭材は1200℃以上の高温領域で燃焼されるため、NOx発生は少なく、しかも活発な燃焼によって生産性を損うこともない。
従って、本発明の焼結鉱の製造方法を使用することで、低温領域でのNOxの発生を経済的に抑制できる。
【実施例】
【0027】
次に、本発明の作用効果を確認するために行った実施例について説明する。
準備した焼結鉱の配合原料は、鉱石、副原料(石灰石、生石灰、及びMgO源)、返鉱、及び粉コークスである。なお、鉱石は83.2質量%、石灰石は12.8質量%、生石灰は1質量%、MgO源は3質量%であり、この合計量(100)に対して、返鉱を20質量%、粉コークスを4.2質量%、それぞれ添加する構成にしている(外掛け)。
ここで、表面被覆炭材を製造にするに際し、上記した配合原料の粉コークス4.2質量%のうちの4質量%分を使用し、新たな消石灰を準備した。なお、消石灰を新たに添加するため、この消石灰のCa成分相当量分だけ、上記した石灰石量を減らした(0.6質量%)。
【0028】
まず、表面被覆炭材の製造条件を、以下に示す。
表面被覆炭材は、上記した消石灰と粉コークス(炭材)を、レディゲミキサー(混練機)に供給して混練した後、この混練物をパンペレタイザーに供給すると共に水分を添加して造粒し、粉コークス表面に消石灰を付着させて製造した。なお、レディゲミキサーは、内容積が8mであり、混練時の回転羽根の回転数を100rpm(回/分)とし、混練時間を3分とした。また、パンペレタイザーは、直径が5mであり、回転数を8rpmとし、傾斜角度を57度とした。
ここで、使用した2種類の粉コークスの粒度分布を表1、表2に、消石灰の粒度分布を表3に、それぞれ示す。
【0029】
【表1】

【0030】
【表2】

【0031】
【表3】

【0032】
また、上記した表面被覆炭材を除いた焼結鉱の配合原料は、ドラムミキサーを用いて混合し、更に造粒機により4分間造粒した。なお、造粒時の添加水分は、上記した配合原料量の6.3質量%である。
そして、この造粒後の配合原料に、上記した表面被覆炭材を添加し混合して、鍋試験の試料に使用した。なお、鍋試験においては、上記した混合原料の層厚を500mm、下方からの吸引風量を1.2Nm/分、焼結温度を1300℃とした。
この鍋試験に際し、NOxの測定は、(株)島津製作所の常圧式化学発光方式の測定器を用いて行った。
【0033】
上記した試験条件と試験結果を、表4に示す。なお、表4中の粉コークスの粒度に記載のNo.1は表1の粉コークスに、No.2は表2の粉コークスに、それぞれ該当し、表4中の消石灰の粒度に記載のNo.3は表3の消石灰に該当する。また、表4中の消石灰の配合割合に記載した括弧「( )」内の数値は、粉コークス100に対する割合(質量%)を表している。そして、表4中の水分の欄に記載した持込み水分量、添加水分量、及び製品水分量は、それぞれ乾燥状態の表面被覆炭材(消石灰及び炭材)100に対する割合(質量%:外掛け)で示している((製品水分量)=(持込み水分量)+(添加水分量))。
【0034】
【表4】

【0035】
表4に示す実施例1〜実施例5は、被覆させる消石灰量を、粉コークスに対し2〜30質量%の範囲内とし、かつ表面被覆炭材の製品水分量を12.0〜15.5質量%の範囲内とした結果である。これにより、消石灰の被覆層厚が5〜500μmとなる表面被覆炭材の歩留りを60質量%以上にすることができ、その結果、発生するNOx量を5濃度%以上低下させることができた。
ここで、実施例1〜実施例3のように、表面被覆炭材の製品水分量を、より好ましい13.5〜15.0質量%の範囲内とすることで、消石灰の被覆層厚が5〜500μmとなる表面被覆炭材の歩留りを90質量%以上にすることができ、発生するNOx量を10濃度%低下させることができた。
【0036】
一方、比較例1、2は、表面被覆炭材の製品水分量を、12.0〜15.5質量%の範囲外(比較例1:11.0質量%、比較例2:16.0質量%)とした結果であるが、水分量が不足し又は過剰となり、被覆層が適正厚みとなる表面被覆炭材の歩留が低く、炭材表面の消石灰によるNOx抑制効果がほとんど得られなかった。
また、比較例3は、被覆させる消石灰量を、粉コークスに対し2〜30質量%の範囲外である2質量%未満(1.5質量%)とした結果であるが、消石灰量が少な過ぎて粉コークス表面全体を包囲する十分な被覆層の形成が難しくなった。その結果、粉コークス表面の一部が露出し、低温域での大気中の酸素の遮断によるNOx低減効果が得られなかった。
更に、比較例4は、被覆させる消石灰量を、粉コークスに対し2〜30質量%の範囲外である30質量%超(35.0質量%)とした結果であるが、消石灰量が多過ぎて被覆層厚が厚くなり過ぎ、燃焼性が悪くなって焼結の生産性が損なわれた。
【0037】
なお、実施例2は、消石灰量を粉コークスに対し2.5質量%まで低減させた結果であるが、表面被覆炭材の歩留りと発生するNOx量を、消石灰量を粉コークスに対し15.0質量%とした実施例3と、同程度にすることができた。これは、実施例2が、表1に記載の粒度を備える粉コークスNo.1、即ち粒径0.25mm未満の累積質量が20質量%以下であり、粒径0.25mm以上3mm以下の累積質量が40質量%以上の粉コークスを使用し、実施例3と比較して、微粉コークスの混入量を低減したことによる。
以上のことから、本発明の焼結鉱の製造方法を使用することで、低温領域でのNOxの発生を経済的に抑制できることを確認できた。
【0038】
以上、本発明を、実施の形態を参照して説明してきたが、本発明は何ら上記した実施の形態に記載の構成に限定されるものではなく、特許請求の範囲に記載されている事項の範囲内で考えられるその他の実施の形態や変形例も含むものである。例えば、前記したそれぞれの実施の形態や変形例の一部又は全部を組合せて本発明の焼結鉱の製造方法を構成する場合も本発明の権利範囲に含まれる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭材表面に消石灰を、該炭材に対する質量%で2質量%以上30質量%以下の割合で被覆した表面被覆炭材を用いる焼結鉱の製造方法であって、
前記表面被覆炭材の製品水分量が12.0質量%以上15.5質量%以下となるように、前記炭材及び前記消石灰に水分を添加して造粒し、前記表面被覆炭材を製造することを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項2】
請求項1記載の焼結鉱の製造方法において、前記消石灰の被覆層厚が5μm以上500μm以下であることを特徴とする焼結鉱の製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2記載の焼結鉱の製造方法において、前記炭材の粒度は、粒径0.25mm未満の累積質量が20質量%以下であり、粒径0.25mm以上3mm以下の累積質量が40質量%以上であることを特徴とする焼結鉱の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【公開番号】特開2012−172206(P2012−172206A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−36207(P2011−36207)
【出願日】平成23年2月22日(2011.2.22)
【出願人】(000006655)新日本製鐵株式会社 (6,474)
【Fターム(参考)】