説明

焼菓子製造装置

【課題】二つ折りの編笠状に成形される焼菓子を、複雑で大掛かりな専用の成形装置を用いることなく、焼菓子製造装置における焼成工程に能率良く、かつ正確に製造できるようにする。
【解決手段】焼菓子製造装置1における焼成型循環ライン2の終端側に、薄い円板状に焼成された軟質煎餅生地Cを収納可能な透孔8aが設けられた剥離板8を、焼成型3の下型3aの表面に接した状態で円を描くように移動させ、軟質煎餅生地を下型から剥がす剥離装置5を設けるとともに、この軟質煎餅生地を下端内側面に略三角形状の突起39a,40aが設けられた対のつまみ爪39,40でつまむことにより、下型上で直ちに二つ折りの編笠状に成形するつまみ装置6を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、循環移動する焼型上で加熱焼成された円板状の焼菓子を、この焼型上で直ちに一対の成形用のつまみ爪を用いてつまみあげることにより、二つ折りに折り曲げ、編笠状の製品とする焼菓子製造装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、この種の編笠状に折り曲げられた焼菓子を製造する装置としては、循環移動する焼型の循環転向位置の下方に、所定形状の細工用ローラーを配置し、この加工用ローラーの複数に分割された枠内にそれぞれ、接離方向に移動する一対の爪を配置したものがあった。この装置は、焼型上で一列に加熱焼成された円板状の焼菓子を、その循環端位置において、スクレーパなどを用いて細工用ローラーの周囲に形成された所定の位置に掻き落とし、焼菓子を移動しないように、位置決めしたうえでその両端を爪で挟み込むことにより、まだ熱くて柔らかい状態の焼菓子を二つ折り状に加工するものである。(例えば、特許文献1参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】 特公昭46−33188号公報(第1−2頁、第2図)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上述した従来の焼菓子製造装置では、循環移動する焼型の下方に、焼きたての煎餅などの菓子を二つ折りするため、焼型の循環装置とは別に細工用ローラーと複数対の可動爪とからなる加工装置を設けなくてはならなかった。また、焼型上で一列に焼成された菓子を焼型から剥がして加工用ローラーの特定の箇所に落とし込むためのスクレーパを要すると共に、このスクレーパを焼型や加工用ローラーの動きに同期させて駆動しなくてはならず、構成が複雑になるという問題点があった。
【0005】
本発明は、上記従来の二つ折り菓子の製造装置が有していた問題点の解決を課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の問題点を解決するために、本発明のうち、請求項1記載の発明は、バーナーなどの加熱手段が設けられた箇所に、菓子種を挟み込んだ上下一対の合わせ型からなる複数個の焼成型を循環移動させることにより、菓子を焼成するようにした焼菓子製造装置において、上記焼成型の循環ラインの往路下流側に、焼成された軟質煎餅生地を焼成型の下型上で強制的に移動させることにより、軟質煎餅生地と下型との固着を剥がす剥離装置と、この軟質煎餅生地を下型上でつまんで二つ折りの編笠状に成形するつまみ装置とを設けたことを特徴とする。
【0007】
請求項2記載の発明は、上記請求項1記載の発明の構成中、剥離装置を、焼成された軟質煎餅生地を収納可能な複数の透孔が設けられた剥離板を有し、この剥離板を下型の表面に接して弧を描くように駆動するものと、限定したことを特徴とする。
【0008】
請求項3記載の発明は、上記請求項1記載の発明の構成中、つまみ装置を、下端内端面に略三角形状の突起が設けられた複数対のつまみ爪を有し、向き合った対のつまみ爪を互いにその下端が接離する方向に駆動するものと、限定したことを特徴とする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数列に焼成された直後の軟質煎餅生地を、焼成型の下型上で直ちに略網笠状に成形できるので、焼成装置から排出されたものを加工する従来の加工装置に比し、装置の構成が簡素化されると共に、焼成工程中に装置が組み込まれるので、能率良く、大量に成形作業が行われるという効果がある。
【0010】
また、焼成直後の煎餅生地が柔らかいうちに成形加工が行われるので、製品に割れや変形などの不良が生じ難く、歩留まりが向上するという効果もある。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】本発明に係る焼菓子製造装置の簡略正面図である。
【図2】剥離装置の側面図である。
【図3】剥離装置の平面図である。
【図4】剥離装置の正面図である。
【図5】つまみ装置の正面図である。
【図6】つまみ装置の側面図である。
【図7】つまみ装置の要部拡大正面図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明を図示した最良の実施形態に基づき詳細に説明する。
【0013】
本発明の焼菓子製造装置1は、図1に示すように上下一対の合わせ型からなる複数個の焼成型3を水平方向に周回移動させる焼成型循環ライン2を有している。焼成型3は、図2に示すように水平な平坦面を有する下型3aと、この下型3aに対して開閉可能になった上型3bとからなる。
【0014】
上記焼成型循環ライン2の往路(図1において上側)には、その長手方向に沿って、搬送される焼成型3を加熱するガスバーナー(図示せず)などの加熱手段が設けられている。また、往路の上流側(図1において右側)の端部寄りには、菓子の原材料である液状の菓子種を焼成型3の型開きされた状態の下型3a上に所定の間隔を有して、所定量づつ供給する材料供給装置4が配置されている。
【0015】
往路の下流側(図1において左側)の終端近傍位置には、本発明が要部とする剥離装置5と、つまみ装置6とが隣接して配置されている。
【0016】
剥離装置5は、図2、図3及び図4に示すように、複数の透孔8aが規則正しく縦横に並んで設けられた剥離プレート8と、この剥離プレート8を昇降駆動する昇降装置9と、昇降装置9が取り付けられた揺動フレーム10と、揺動フレーム10が取り付けられた支持台11とからなる。
【0017】
支持台11は、焼成型循環ライン2と平行な方向に配置されたスライド軸12にスライド可能に取り付けられており、剥離装置移動用溝カム23に係合したカムフォロアー24の動きにより、搬送される焼成型3と所定の範囲にわたって同期して移動させられるようになっている。
【0018】
また、揺動フレーム10は、支持台11上で直交する方向に配置されたそれぞれ対のスライド軸15,16とスライド軸17,18に取り付けられており、支持台11に対して前後左右(水平方向)に移動し得るようになっている。なお、この揺動フレーム10は、支持台11側に取り付けられたラック13がギア14を介して偏心した軸25を回転駆動することにより、水平面内で弧を描くように駆動されるようになっている。
【0019】
昇降装置9は、エアーシリンダ19と、エアーシリンダ19のロッド19aに連結された複数のアーム20,21とで構成され、ロッド19aの出没動作により、アーム21の下端に吊り下げ支持され、ボールブッシュ22を介して揺動フレーム10にスライド可能に取り付けられた剥離プレート8を昇降移動させるようになっている。
【0020】
つまみ装置6は、図5に示すようにフレーム26上に対向配置された駆動軸27と従動軸28のスプロケット27a,28a間に掛架されたチェーン29で循環駆動される複数のつまみ爪ユニット35で構成されている。各つまみ爪ユニット35は、図6並びに図7に示すように互いに向き合う方向に対向配置され、焼成型循環ライン2を横切る方向に列状に設けられた複数対のつまみ爪39,40と、このつまみ爪39,40の上端を支持し、向き合った各つまみ爪39,40を、その先端が互いに接離する方向に駆動するリンク機構38とからなり、このリンク機構38は、その左右両側に突出したカムフォロワー36,37が上記フレーム26の両側に設けられた側板30の案内溝30a,30bに係合することにより、つまみ爪ユニット35の移動に伴って駆動されるようになっている。ここにおいて、上記つまみ爪39,40は、それぞれその下端寄りが略く字形に、互いの下端が接近する方向に屈曲され、かつ、この屈曲された箇所に下方が突出した略三角形状の突起39a,40aが、互いに対向するように、それぞれ内方突設されている。
【0021】
なお、上記駆動軸27は、焼成型循環ライン2駆動用のメインスプロケット32との間にチェーン33が掛架された中継軸31を介して駆動されるようになっている。また、上記つまみ装置6は、その片側が焼成型循環ライン2の終端位置から後方(図5において左方)に突出するように設けられ、この突出した個所の下側には、完成した焼菓子を落下排出するためのシュート34が設けられている。
【0022】
本発明の焼菓子製造装置は、上記の構成を有している。
【0023】
次に上記構成を有する本発明の焼菓子製造装置の作用について説明する。
【0024】
まず、焼成型循環ライン2の往路上流側(図1において右側)において、型開きされた焼成型3の下型3a上に、その上側に配置された材料供給装置4のノズル(図示せず)から菓子の原材料である液状の菓子種を、一定の間隔でその複数個所(実施形態のものは8箇所)に所定量づつ供給する。そして、この動作を焼成型3の移動に連動させて繰り返すことにより、下型3a上に複数列状(図示した実施形態ものは3列)の菓子種を配置する。
【0025】
そして、このように表面に規則正しく菓子種が配置された下型3aは、順次、焼成型循環ライン2の下流側(図1において左側)へと搬送され、その際、上型3bが型閉じされることにより、この菓子種を薄い円板状に圧縮し、この状態でバーナーなどの加熱装置が設けられた加熱領域に送り込まれることにより、菓子種は、薄い円板状の軟質煎餅生地Cに焼成される。
【0026】
焼成後、焼成型3の移動に伴って上型3bが型開きされ、軟質煎餅生地Cは、図3に示すように下型3a上に載置された状態で剥離装置5へと送り込まれる。なお、この時、軟質煎餅生地Cは、焼成の際の熱と上型3bからの押圧力により、下型3aの表面に焼き付いているおそれがある。
【0027】
剥離装置5は、軟質煎餅生地Cを載置した下型3aが剥離プレート8の下方にまで移動した際、まず昇降装置のエアーシリンダ19が作動し、このエアーシリンダ19のロッド19aとアーム20,21を介して連結され、このアーム21の下端に吊り下げ支持された剥離プレート8を下降させる。この剥離プレート8には、下型3a上に載置された軟質煎餅生地Cと対応する位置に透孔8aが設けられているので、各軟質煎餅生地Cは、剥離プレート8の透孔8a内にはまり込むこととなる。そして、この状態で剥離装置5は、支持台11が、剥離装置移動用溝カム23に係合したカムフォロアー24の動きにより、搬送される焼成型3に同期して移動するようになっている。よって、剥離プレート3も焼成型3と共に移動するのであるが、その際、この剥離プレート3は、取り付けられた揺動フレーム10が、支持台11の移動に伴って回転駆動される偏心した軸25により、水平面内で弧を描くように駆動される。よって、透孔8a内に位置した軟質煎餅生地Cは、下型3a上で強制的に移動させられることになり、下型3aに焼き付いた状態から剥がされるようになっている。
【0028】
このようにして下型3aと軟質煎餅生地Cとの固着状態を剥がした後、剥離プレート8は、エアーシリンダ19の働きにより下型3a上から引き上げられ、剥離装置移動用溝カム23とカムフォロアー24の働きにより支持台11や揺動フレーム10と共に焼成型循環ライン2の上流側(図1において右側)へと復帰し、後続の下型3aに対して上述した動作を繰り返すことにより、軟質煎餅生地Cを下型3aから順次、剥がすものである。なお、その際、下型3a上の軟質煎餅生地Cは、剥離プレート8に設けられた透孔8aにより、規則正しく等間隔に整列される。
【0029】
次に、このようにして表面に軟質煎餅生地Cが載置された下型3aは、つまみ装置6の下側に送り込まれ、ここでまず、図6に示すつまみ爪ユニット35が、下型3aと対向するように下型3aの移動速度と等しい速度で送り込まれる。この時、下型3a上で横方向(下型3aの移動方向と直交する方向)に並べられた各軟質煎餅生地Cは、つまみ爪ユニット35に設けられた対の各つまみ爪39,40間に位置することとなる。そして、このつまみ爪ユニット35は、移動の際、カムフォロワー36,37が案内溝30a,30bで案内されることにより、リンク機構38が、その下端に取り付けられたつまみ爪39,40の先端を、互いに接近させる方向に移動させるように作用し、このことで、各つまみ爪39,40間に位置した軟質煎餅生地Cを、二つ折りに折り曲げ、中央部分がくびれた編笠形状の製品を形成する。なお、このとき軟質煎餅生地Cは、上述したように剥離装置5により、下型3aとの固着状態が剥がされており、また、つまみ爪39,40下端の対向した内側面には、略三角形状の突起39a,40aが設けられているので、その周縁部分が容易かつ確実に掻き上げられ、歩留まり良く、正確に二つ折り状に折り曲げられるようになっている。
【0030】
このようにして軟質煎餅生地Cを成形した各つまみ爪39,40は、つまみ爪ユニット35の移動に伴いリンク機構38が上記と反対に作動することにより、それぞれの下端が拡開する方向に駆動され、挟んだ軟質煎餅生地Cを解放する。そして、その後、各つまみ爪ユニット35は、駆動軸27と従動軸28間で形成された循環機構により、元の位置へと復帰し、上述した動作を繰り返すようになっている。
【0031】
一方、このようにして成形された焼菓子は、焼成型循環ライン2の終端位置(図1において左端)へと運ばれ、ここで焼成型3が反転することにより、シュート34上に落とされ、このシュート34を介して外部に取り出されるようになっている。
【0032】
以上のようにして本発明の焼菓子製造装置は、焼菓子を焼成型から取り出すことなく、成形を行い、網笠状の焼菓子を製造するものである。
【符号の説明】
【0033】
1 焼菓子製造装置
2 焼成型循環ライン
3 焼成型
3a 下型
3b 上型
4 材料供給装置
5 剥離装置
6 つまみ装置
7 シュート
8 剥離プレート
8a 透孔
9 昇降装置
10 揺動フレーム
11 支持台
12,15,16,17,18 スライド軸
13 ラック
14 ギア
19 エアーシリンダ
19a ロッド
20,21 アーム
22 ボールブッシュ
23 剥離装置移動用溝カム
24 カムフォロワー
25 偏心軸
26 フレーム
27 駆動軸
28 従動軸
27a,28a スプロケット
29 チェーン
30 側板
30a,30b 案内溝
31 中継軸
35 つまみ爪ユニット
36,37 カムフォロワー
38 リンク機構
39,40 つまみ爪
39a,40a 突起

【特許請求の範囲】
【請求項1】
バーナーなどの加熱手段が設けられた箇所に、菓子種を挟み込んだ上下一対の合わせ型からなる複数個の焼成型を循環移動させることにより、菓子を焼成するようにした焼菓子製造装置において、
上記焼成型の循環ラインの往路下流側に、焼成された軟質煎餅生地を焼成型の下型上で強制的に移動させることにより、軟質煎餅生地と下型との固着を剥がす剥離装置と、この軟質煎餅生地を下型上でつまんで二つ折りの編笠状に成形するつまみ装置とが設けられたことを特徴とする焼菓子製造装置。
【請求項2】
上記剥離装置は、焼成された軟質煎餅生地を収納可能な複数の透孔が設けられた剥離板を有し、該剥離板を下型の表面に接して弧を描くように駆動するものであることを特徴とする請求項1記載の焼菓子製造装置。
【請求項3】
上記つまみ装置は、下端内端面に略三角形状の突起が設けられた複数対のつまみ爪を有し、向き合った対のつまみ爪を互いにその下端が接離する方向に駆動するものであることを特徴とする請求項1記載の焼菓子製造装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−268784(P2010−268784A)
【公開日】平成22年12月2日(2010.12.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−141648(P2009−141648)
【出願日】平成21年5月23日(2009.5.23)
【出願人】(592245476)株式会社北村製作所 (1)
【Fターム(参考)】