説明

焼酎タンク用の梯子

【課題】 組み立て構造物、例えば、焼酎を貯蔵する焼酎貯蔵用の液体タンクに簡単に設置することができる梯子を提供する。
【解決手段】 支持部材22を焼酎タンク6の上縁に支持し、踏み台部25を備えた梯子本体部24が構造物の外側に位置するように設置し、ローラ23を介して支持部材22を焼酎タンク6の上縁に沿って移動させることで、梯子本体部24を焼酎タンク6に沿って移動させ、複数の作業員が複数個所で一斉に作業することができるようにし、隣接構造物との隙間が不十分な時には、踏み台部25を梯子本体部24側に折りたたんで通過させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、組み立て構造物、例えば、焼酎を貯蔵する焼酎貯蔵用の液体タンクに設置される梯子に関し、組み立て構造物の組み立て時や、メンテナンス時に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
焼酎は、米、麦、芋、そば等の素材を原料として製造される蒸留酒である。例えば、芋を原料とした焼酎は、一次仕込みとして米麹に水と酵母を加えて熟成させることにより、米のデンプン質を糖化させると共に、酵母によりこの糖分をアルコール発酵させる、所謂、並行複発酵により一次もろみを造る。次に、二次仕込みとして、原料となる破砕した蒸し芋と仕込み水を一次もろみに加え、芋のデンプン質を発酵させて二次もろみを造る。その後、二次もろみを蒸留し、所定期間貯蔵タンク(液体タンク)に貯蔵して成熟させることで焼酎が造られる。
【0003】
焼酎や焼酎廃液を貯蔵する貯蔵タンクは、例えば、湾曲した帯状鋼板をつないで円環状の鋼板筒を基礎枠の上に取り付け、湾曲した帯状鋼板をつなぎながら円環状の鋼板筒を複数段積み上げ、最上部の開口に天井部材を取り付けて組立てられている。帯状鋼板同士の継ぎ目及び円環状の鋼板筒同士の継ぎ目は、鋼板同士を面一に保持する治具を用いて筒の内側が仮溶接され、仮接合された筒の外側の継ぎ目が溶接される。
【0004】
貯蔵タンクの継ぎ目を溶接する場合、内側の仮溶接は下から順に作業を行うため、筒の内側に簡易足場を設置しながら作業を進めている。筒の外側の溶接は、数メートルの筒が構築された状態であるため、足場を筒の周囲に構築し、溶接機器を伴って作業員が足場を移動しながら作業を進めている。
【0005】
このため、貯蔵タンクを組み立てる場合には、筒の周囲に足場を組立てることが不可欠であり、貯蔵タンクを組み立てるための技術とは別の専門の技術を必要としていた。
【0006】
一方、焼酎は、検量タンクで所定量の検量を行い、原酒を原酒タンクに貯蔵し、原酒に対して和水(水を所定の割合で混合)を実施して所定の度数の焼酎として製品タンクに貯蔵している。また、年代の異なる原酒をブレンドして所定の品質の焼酎を得てブレンドタンクに貯蔵し、ブレンドした焼酎に対して和水を行って所定の度数のブレンド焼酎を製品タンクに貯蔵し、ボトリングして製品としている。従って、焼酎を生産するためには、検量タンク、原酒タンク、ブレンドタンク、和水タンク、製品タンク等の多くの種類の焼酎タンクを必要としている。
【0007】
焼酎貯蔵用の貯蔵タンクは、限られた敷地内に多く設置されることになり、貯蔵タンク同士の間隔を充分に確保できない状態となっている。このため、既設の貯蔵タンク隣接部位等の足場の構築には既存の貯蔵タンクとの関係で制約を受けることが多く、足場を使用して筒の外側の溶接を行う際に、労力と時間を費やしているのが現状である。
【0008】
足場を構築することなく筒状のタンクの周囲のメンテナンスを行うため、ウインドガーダを支点として旋回する作業床が従来から提案されている(例えば、特許文献1参照)。特許文献1に記載された技術は、ウインドガーダを支点として旋回駆動する旋回足場と、スライドユニットを介して旋回足場の下側に備えられる吊り足場とを備えている。タンクの周囲のメンテナンスを行う場合、旋回足場を旋回駆動させ、筒面の配管等がある箇所では吊り足場を外側にスライド退避させ、タンクの高さ方向の全域を一度にメンテナンスできるようにしている。
【0009】
しかし、従来の技術は、ウインドガーダを備えた全高が数十メートルの既設の大型タンクに対して適用できる技術であり、貯蔵タンクの組み立ての過程で適用することはできない。また、旋回足場を旋回駆動させる機構や、吊り足場をスライドさせる機構を備えているため、大掛かりな設備となり、貯蔵タンクのメンテナンスに適用することはできない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2001−3561号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、組み立て構造物、例えば、焼酎を貯蔵する焼酎貯蔵用の液体タンクに簡単に設置することができる梯子を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上記目的を達成するための請求項1に係る本発明の梯子は、構造物の上部の基準縁部を転動するローラを備えた支持部材と、前記支持部材に設けられ前記構造物の下側に垂下して延びる梯子本体部と、前記梯子本体部の長手方向の複数個所に備えられ前記梯子本体部側に折りたたみ自在にされる踏み台部とを備えたことを特徴とする。
【0013】
請求項1に係る本発明では、支持部材のローラを基準縁部に支持し、踏み台部を備えた梯子本体部が構造物の外側に位置するように設置する。ローラを介して支持部材を基準縁部に沿って移動させ、踏み台部を備えた梯子本体部を構造物の外側を移動させる。踏み台部に作業員が乗ることで複数の作業員が複数個所で一斉に作業することができる。隣接構造物との隙間が不十分な時には、踏み台部を梯子本体部側に折りたたんで通過させる。従って、組立て構造物、例えば、焼酎を貯蔵する焼酎貯蔵用の液体タンクに簡単に設置することが可能になる。
【0014】
そして、請求項2に係る本発明の梯子は、請求項1に記載の梯子において、前記踏み台部は、前記梯子本体の長手方向に交差する方向に突出する板台が備えられると共に、前記梯子本体に沿って平行に延びる手すり部が前記板台の突出方向外側に備えられ、前記板台が反突出状態にされる際に前記手すり部を前記梯子本体側に平行移動させることで折りたたみ動作をさせるリンクを備えたことを特徴とする。
【0015】
請求項2に係る本発明では、板台を反突出状態にしてリンクを介して手すり部を梯子本体側に平行移動することで、踏み台部を折りたたむことができる。
【0016】
また、請求項3に係る本発明の梯子は、請求項1もしくは請求項2に記載の梯子において、前記構造物は筒状のタンクであり、前記ローラが転動する前記基準縁部は前記タンクの上部の円周縁であり、前記ローラは湾曲凹状の転動面が前記円周縁を転動する滑車部材であることを特徴とする。
【0017】
請求項3に係る本発明では、筒状タンクの上部の円周縁に滑車部材の転動面を乗せ、滑車部材を転動させることにより筒状タンクの周囲に沿って支持部材を移動させる。滑車部材は、湾曲凹状の転動面を備えているので、筒状タンクの板厚(円周縁の幅)の大小や円周縁の形状に拘わらず滑車部材を上部の円周縁に乗せることができる。つまり、筒状タンクを組み立てる経過で上部の円周縁がいかなる形状になっていても、滑車部材を上部の円周縁に乗せて梯子を設置することができる。
【0018】
また、請求項4に係る本発明の梯子は、請求項3に記載の梯子において、前記筒状のタンクは帯状円環部材が積み上げられることで形成され、前記梯子本体は長手方向に分割された複数の分割本体部が互いに接続され、前記帯状円環部材の積み上げ高さに応じて分割本体部の数が設定されて互いに接続されることを特徴とする。
【0019】
請求項4に係る本発明では、帯状円環部材の積み上げ高さに応じて分割本体部の数を設定して接続することで、組み立てる過程で途中の高さの時に必要な作業を実施することができる。
【0020】
また、請求項5に係る本発明の梯子は、請求項4に記載の梯子において、前記支持部材には前記ローラに対応して移動用スプロケットが設けられ、前記移動用スプロケットには回転用の索体が巻回され、前記索体は前記梯子本体に沿って垂下して配され、前記移動用スプロケットの回転軸と前記ローラの回転軸の間に動力伝達機構を介在させたことを特徴とする。
【0021】
請求項5に係る本発明では、梯子本体に沿って垂下して配された索体を踏み台部に乗った作業員が操作することで、移動用スプロケットを回転させて動力伝達機構を介してローラを回転させ、支持部材を移動させることができる。
【0022】
また、請求項6に係る本発明の梯子は、請求項5に記載の梯子において、動力伝達機構は、前記移動用スプロケットの回転軸と前記ローラの回転軸にそれぞれ取り付けられるスプロケットと、前記スプロケットに掛け回されるチェーンとからなることを特徴とする。
【0023】
請求項6に係る本発明では、動力伝達機構をスプロケット及びチェーンで構成したことにより、スプロケットの径の設定により動力の伝達比率を変更することができ、操作性を任意に設定することができる。
【0024】
また、請求項7に係る本発明の梯子は、請求項5もしくは請求項6に記載の梯子において、前記ローラ及び前記移動用スプロケットが支持される支持枠が前記支持部材に備えられ、前記支持枠は、前記ローラ及び前記移動用スプロケットの回転中心軸に直交する軸周りで回動自在に前記支持部材に支持され、前記ローラに対応して湾曲凹状の転動面を有するガイドローラを有し、前記ガイドローラが支持されるガイド支持枠が前記支持部材に備えられ、前記ガイド支持枠は、前記ガイドローラの回転中心軸に直交する軸周りで回動自在に前記支持部材に支持され、前記支持枠及び前記ガイド支持枠を回動させることにより、前記ローラ及び前記ガイドローラの転動面を前記タンクの上部の円周縁の円弧に沿わせることを特徴とする。
【0025】
請求項7に係る本発明では、支持枠の回動位置を調整すると共にガイド支持枠の回動位置を調整することで、ローラ及びガイドローラの転動面をタンクの上部の円周縁の円弧に沿わせることができ、タンクの径に拘わらず梯子を掛けることができる。
【0026】
また、請求項8に係る本発明の梯子は、請求項3から7のいずれか1項に記載の梯子において、前記筒状のタンクは、焼酎が貯蔵される焼酎タンクであることを特徴とする。
【0027】
請求項8に係る本発明では、焼酎タンクの組み立てやメンテナンスに梯子を用いることができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明の梯子は、組み立て構造物、例えば、焼酎を貯蔵する焼酎貯蔵用の液体タンクに簡単に設置することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0029】
【図1】本発明の一実施例に係る梯子を用いて組み立てを実施する焼酎タンクの組み立て状況説明図である。
【図2】組み立てられた焼酎タンクの外観図である。
【図3】治具により上下の帯状鋼板同士を面一に保持した状態の図である。
【図4】梯子を掛けて溶接を実施する状況の説明図である。
【図5】梯子を掛けて溶接を実施する状況の説明図である。
【図6】梯子の正面図である。
【図7】梯子の側面図である。
【図8】梯子の外観図である。
【図9】梯子の要部外観図である。
【図10】踏み台部の部分外観図である。
【図11】支持部材の詳細図である。
【図12】支持部材の詳細図である。
【図13】支持部材の詳細図である。
【図14】上縁に転動する状況の説明図である。
【図15】上縁に転動する状況の説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0030】
本実施例は、構造物として焼酎を貯蔵する貯蔵タンク(焼酎タンク)の組み立てに使用される梯子を例に挙げて説明してある。本発明の梯子を適用する構造物としては、焼酎タンクに限らず、水やジュース等の飲料水を貯蔵する液体タンク、家畜の飼料を貯蔵する飼料タンク、化学品を貯留する化学プラントの液体タンク、その他の燃料タンク等を挙げることができる。また、構造物としては、液体タンクに限らず、発電所やプラント施設の構造物、倉庫や工場の建屋等の構造物を挙げることができる。また、本発明の梯子は、組み立てに使用する以外に、既存の構造物に対する塗装や修復等のメンテナンス、断熱材や外装材の施工時に使用することができる。
【0031】
本実施例の梯子を使用する構造物として、焼酎タンクを例に挙げて説明する。
【0032】
本発明の梯子を説明するに先立って、図1、図2に基づいて焼酎タンクの組み立て状況を説明する。図1には本発明の一実施例に係る梯子を用いて組み立てを実施する焼酎タンクの組み立て状況、図2には組み立てられた焼酎タンクの外観を示してある。
【0033】
図1、図2に示すように、基礎1の上面には底板2が設けられ、底板2の周囲に湾曲した帯状鋼板3をつないで円環状の鋼板筒4としている。湾曲した帯状鋼板3をつなぎながら鋼板筒4を複数段積み上げて円筒体7が組み立てられ、円筒体7の最上部に天井筒5がつなぎ合わされて焼酎タンク6が組み立てられる。帯状鋼板3及び円環状の鋼板筒4同士の継ぎ目は、鋼板同士を面一に保持する治具を用いて筒の内側が仮溶接される。
【0034】
図3に基づいて鋼板同士を面一に保持する治具を説明する。図3には治具により上下の帯状鋼板3同士を面一に保持した状態を示してあり、図3(a)は鋼板を仮想状態に表した外観、図3(b)は断面状態である。
【0035】
図に示すように、治具11は帯状鋼板3の接合縁の間に挟持される本体板12を有し、本体板12には挿入孔13が設けられている。また、本体板12の挿入孔13の一端部の板面の表裏それぞれには係止棒14が垂直に設けられ、挿入孔13が帯状鋼板3の接合縁同士に挟まれた際に係止棒14がそれぞれの帯状鋼板3の面に当接する。帯状鋼板3の板面を挟んで係止棒14の反対側の挿入孔13には楔片15が嵌入され、楔片15が嵌入することで帯状鋼板3同士が面一に保持される。
【0036】
治具11により帯状鋼板3同士が面一に保持された状態で、内側から継ぎ目が仮溶接される。仮溶接された後は、楔片15が挿入孔13から抜かれて係止棒14側に本体板12が帯状鋼板3の接合縁同士の間から抜き外される。鋼板筒4が積み上げられて高所作業になる場合、円環状の鋼板筒4の内側に簡易足場が取り付けられる。
【0037】
鋼板筒4が所定の段数積み上げられる過程での筒体、及び、組み立てられた円筒体7に対して本実施例の梯子21(図4参照)が掛けられ、筒体の外周面、もしくは、円筒体7の外周面の帯状鋼板3同士の継ぎ目、及び、鋼板筒4同士の継ぎ目が溶接される。
【0038】
図4、図5に基づいて梯子を掛けて溶接を実施する状況を説明する。
【0039】
図4には3段の鋼板筒4が積み上げられた状態、図5には円筒体7に梯子21を掛けた状態を示してある。
【0040】
図4に示すように、梯子21の上部には支持部材22が備えられ、支持部材22には基準縁部としての最上段の鋼板筒4の上縁を転動するローラ23が備えられている。支持部材22には梯子本体部24が設けられ、梯子本体部24は積み上げられた鋼板筒4の外周面の下側に吊下して延びている。梯子本体部24の3箇所には踏み台部25が備えられ、各踏み台部25には作業員が乗って溶接作業を行う。
【0041】
踏み台部25には梯子本体部24の長手方向に交差する方向に突出する板台26が備えられ、板台26の外側には梯子本体部24に沿って平行に延びる手すり部27が備えられている。手すり部27はリンク28を介して梯子本体部24に接続され、板台26が反突出状態にされる際にリンク28により手すり部27が梯子本体部24側に平行移動する。これにより、踏み台部25が梯子本体部24側に折りたたみ自在とされる。
【0042】
3段の鋼板筒4が積み上げられた筒体に梯子21の支持部材22を掛け、各踏み台部25に作業員が乗ってローラ23を最上段の鋼板筒4の上縁に沿って転動させる。作業員が乗ったままの梯子21を筒体の周囲に移動させ、筒体の外周面の帯状鋼板3同士の継ぎ目、及び、鋼板筒4同士の継ぎ目が溶接される。
【0043】
既設の焼酎タンク6が備えられている箇所で梯子21を移動させる場合、一旦、作業員が踏み台部25から降り、板台26を反突出状態にしてリンク28により手すり部27を梯子本体部24側に平行移動させ、踏み台部25を折りたたんだ状態にする。これにより、狭い場所に対して梯子21を通過させることができる。
【0044】
図5に示すように、円筒体7の状態で帯状鋼板3同士の継ぎ目、及び、鋼板筒4同士の継ぎ目を一斉に溶接する場合、梯子本体部24(分割本体部)の下側に分割本体部31を接続する。分割本体部31には2箇所に踏み台部25が備えられ、梯子本体部24と分割本体部31を互いに接続することで(分割本体部を互いに接続することで)、上下に5箇所の踏み台部25を備えた梯子21となる。
【0045】
5箇所の踏み台部25に作業員が乗り、ローラ23を最上段の鋼板筒4の上縁に沿って転動させることで、円筒体7の帯状鋼板3同士の継ぎ目、及び、鋼板筒4同士の継ぎ目が一斉に溶接される。既設の焼酎タンク6が備えられている箇所で梯子21を移動させる場合、全ての踏み台部25を折りたたんだ状態にする。
【0046】
図6から図12に基づいて本発明の一実施例に係る梯子21を詳細に説明する。
【0047】
図6には焼酎タンク6に本発明の一実施例に係る梯子21が設置された状態における梯子21の正面状態、図7には梯子21の側面状態、図8(a)には梯子21の外観を表す正面状態、図8(b)には梯子の外観を表す側面状態、図9(a)には梯子21の要部外観状態、図9(b)には踏み台部25が折りたたまれた状態の梯子21の要部外観状態、図10(a)には踏み台部25の部分の外観、図10(b)には折りたたまれた踏み台部25の部分の外観を示してある。また、図11、図12、図13には支持部材の詳細を示してあり、図11(a)は正面視状態、図11(b)は側面視状態、図11(c)は平面視状態、図12、図13は斜視状態である。
【0048】
図6〜図8に示すように、焼酎タンク6の最上部の端部縁には梯子21の支持部材22がローラ23を介して取り付けられ、支持部材22には梯子本体部24(分割本体部31)が焼酎タンク6の下側に垂下して配されている。梯子本体部24(分割本体部31)は一対のフレーム材で構成され、梯子本体部24の長手方向の5箇所の外方(焼酎タンク6の筒面の反対側)には、踏み台部25が設けられている。踏み台部25は、梯子本体部24(分割本体部31)の一対のフレーム材の対向部(内側)に支持されている。
【0049】
また、梯子本体部24(分割本体部31)の一対のフレーム材のそれぞれには、足掛け用の棒材61が設けられ、棒材61は、焼酎タンク6の筒面に直交するように縦方向に延びるフレーム同士に亘って互いに平行に多数設けられている。棒材61は、例えば、300mmピッチで上下方向に多数設けられている。作業員は、足掛け用の棒材61を使用して所定の踏み台部25に対して昇降する。
【0050】
踏み台部25に作業員が乗り、支持部材22のローラ23を介して梯子21を焼酎タンク6の最上部の端部縁に沿って移動させることにより、5人の作業員が焼酎タンク6の帯状鋼板3同士の継ぎ目、及び、鋼板筒4同士の継ぎ目を一斉に溶接することができる。
【0051】
図9に示すように、踏み台部25は、板台26及び手すり部27がリンク28を介して平行移動自在に備えられ、折りたたみ自在となっている。図10に基づいて踏み台部25を詳細に説明する。
【0052】
図10に示すように、板台26は矩形枠33に取り付けられ、矩形枠33の下側の縁辺は梯子本体部24の(分割本体部31)の一対のフレーム材の対向部(内側)に、幅方向に延びる中心軸周りに回動自在に支持されている。矩形枠33は梯子本体部24に対して垂直になる状態に回動位置が規制される。矩形枠33の上側(外側)には手すり部27の基端部(下側)が回動自在に支持され、手すり部27の先端部(上側)はリンク28の先端が回動自在に支持されている。更に、リンク28の基端部が梯子本体部24の一対のフレーム材の対向部(内側)に回動自在に支持されている。
【0053】
これにより、図10(a)に示すように、梯子本体部24の長手方向に交差する方向に矩形枠33(板台26)が起立した状態で、手すり部27が板台26を囲むように踏み台部25が設置される。また、図10(b)に示すように、リンク28を介して手すり部27と共に矩形枠33を上側に回動させることにより、手すり部27が平行移動して踏み台部25が梯子本体部24の一対のフレーム材の対向部の内側に折りたたまれた状態にされる。このため、踏み台部25が梯子本体部24(分割本体部31)から突出しない状態で内側に納められ、梯子を狭い箇所で移動させる際に有利となる。
【0054】
図10に示すように、矩形枠33の周囲には板台26に対して直立する幅木34が設けられ、幅木34により板台26の面部の周縁に矩形状の板材が配された状態になっている。また、手すり部27の側部の途中部には第2リンク35が設けられ、第2リンク35に連続して中間バー36が設けられている。第2リンク35の基端部は、矩形枠33及びリンク28と同様に、梯子本体部24の一対のフレーム材の対向部(内側)に回動自在に支持されている。
【0055】
尚、図10(b)に示すように、踏み台部25が梯子本体部24側に折りたたまれる際に、幅木34を外すことで折りたたみを容易に実施することができる。
【0056】
踏み台部25は、矩形枠33の板台26の上側の空間が手すり部27で囲まれ、板台26の面部の周縁に立板状の縁部が幅木34で形成され、更に、第2リンク35及び中間バー36により手すり部27の空間に支え用のバーが配された状態になっている。このため、作業員が踏み台部25で高所作業を行う場合であっても、幅木34により板台26からの作業具の落下が防止され、また、手すり部27や支え用の中間バー36により作業員自体の落下が防止される。
【0057】
尚、矩形枠33に対して1枚の板台26を設けた例を挙げて説明したが、板台を分割し、分割された板台をスライド自在に矩形枠33に備えることも可能である。板台をスライド自在に備えることで、踏み台部25を折りたたまない状態で手すり部27の内側から作業員が上部の踏み台部25に移動することができる。
【0058】
図11から図13に基づいて支持部材22を説明する。
【0059】
支持部材22は、焼酎タンク6(図6参照)の最上段の上縁に沿って移動する案内部位とされている。支持部材22にはL字型の枠材41が備えられ、枠材41は焼酎タンク6(図6参照)の上縁に被さる状態に形成され、枠材41に梯子本体部24が接続されている。枠材41の内側には焼酎タンク6(図6参照)の最上段の上縁を転動するローラ23及びガイドローラ43が備えられている。
【0060】
ローラ23及びガイドローラ43は、焼酎タンク6(図6参照)の径に応じた円弧に沿うように、上下方向に延びる軸周り(回転中心軸に直交する軸周り)で独立して回動自在になっている(図11(c)参照)。このため、種々の径のタンクに対して適用することができる。
【0061】
即ち、枠材41の内側には支持枠44及びガイド支持枠45が上下方向に延びる軸周りで回動自在に支持されている。支持枠44及びガイド支持枠45の回動位置は任意に調整され、ロックナット44a、45aにより回動位置が固定される。支持枠44にはローラ23が回転自在に支持され、ガイド支持枠45にはガイドローラ43が回転自在に支持されている。支持枠44のローラ23は、踏み台部25に乗った作業員により回転操作され(詳細は後述する)、作業員が乗った状態で梯子21を焼酎タンク6(図6参照)の筒面に沿って移動させることができる。
【0062】
支持枠44にはローラ23に対応して移動用スプロケット46が回転自在に支持され、移動用スプロケット46には回転用の索体としての操作チェーン47が巻回され、操作チェーン47は梯子本体部24に沿って垂下して配されている。移動用スプロケット46とローラ23の間には動力伝達機構が介在し、踏み台部25に乗った作業員が操作チェーン47を操作して移動用スプロケット46を回動させることにより、ローラ23が回動される。
【0063】
動力伝達機構として、移動用スプロケット46の回転軸にはスプロケット46aが設けられ、ローラ23の回転軸にはスプロケット23aが設けられ、スプロケット46a、23aには動力伝達チェーン(チェーン)48が掛け回されている。つまり、移動用スプロケット46が回動すると、スプロケット46a、チェーン48を介してスプロケット23aに回転動力が伝達され、ローラ23が回転する。操作チェーン47を操作してローラ23を回転させることで、作業員が乗った状態で梯子21が焼酎タンク6(図6参照)の筒面に沿って移動する。
【0064】
動力伝達機構をスプロケット46a、23a及びチェーン48で構成したことにより、スプロケット46a、23aの径の設定により動力の伝達比率を変更することができ、操作チェーン47の操作性を任意に設定することができる。
【0065】
焼酎タンク6(図6参照)の最上段の上縁を転動するローラ23は湾曲凹状の転動面51を有し、ガイドローラ43はローラ23に対応して湾曲凹状の転動面52を有している。ローラ23及びガイドローラ43は湾曲凹状の転動面51、52を有しているので、厚さ(幅)が異なる複数の上縁に対して、一つのローラ23及びガイドローラ43を適用することができる。
【0066】
図14、図15に基づいて複数種類の上縁に転動する状況を説明する。図14には焼酎タンク6の最上段の上縁(天井筒5)の概念状況、図15には異なる上縁を転動している状態の概念を示してある。
【0067】
焼酎タンク6の最上段の帯状鋼板3の上縁の外側には円環状のトップアングル55が接合され、トップアングル55に天井板56の縁部が取り付けられている。トップアングル55には円周方向に多数の支持棒57が立設され、支持棒57の上端にはレール環58が取り付けられている。天井部の周囲にレール環58が設けられることにより、天井部で作業する作業員の落下が防止される。
【0068】
梯子21の支持部材22が掛けられる焼酎タンク6の最上段として、帯状鋼板3の上縁、トップアングル55、レール環58が適用される。
【0069】
図15(a)に示した状態は、トップアングル55が接合される前の帯状鋼板3の上縁に梯子21のローラ23(ガイドローラ43)が転動している状態である。ローラ23(ガイドローラ43)の転動面51(52)は、帯状鋼板3の厚さが数mm(例えば、3、4mm)の幅の部分(中心部)に接触している。
【0070】
図15(b)に示した状態は、支持棒57及びレール環58が取り付けられる前のトップアングル55の板部に梯子21のローラ23(ガイドローラ43)が転動している状態である。ローラ23(ガイドローラ43)の転動面51(52)は、帯状鋼板3の厚さが数mmの幅の部分とトップアングル55の板部とを跨ぐ数十mm幅(例えば、80mm程度の幅)の部分(外側部)に接触している。
【0071】
図15(c)に示した状態は、レール環58に梯子21のローラ23(ガイドローラ43)が転動している状態である。ローラ23(ガイドローラ43)の転動面51(52)は、レール環58の十数mmの径の部分(中央部)に接触している。
【0072】
湾曲凹状の転動面51、52を有するローラ23及びガイドローラ43を用いたので、幅の異なる複数の縁部に対してローラ23及びガイドローラ43を転動させることができる。このため、製造中の焼酎タンク6に対して多数の箇所で一つの梯子21を適用することができる。
【0073】
上述した梯子21は、支持部材22のローラ23及びガイドローラ43を帯状鋼板3の上縁やトップアングル55、レール環58で転動自在に支持し、焼酎タンク6の外側に踏み台部25が位置するように梯子本体部24を焼酎タンク6の外側に設置する。踏み台部25に作業員が乗り、操作チェーン47を操作することによりローラ23及びガイドローラ43を焼酎タンク6の上縁に沿って転動し、梯子21が焼酎タンク6の筒面に沿って移動する。
【0074】
これにより、踏み台部25に乗った複数の作業員が複数個所で一斉に作業(溶接作業)をすることができる。ローラ23、ガイドローラ43は湾曲凹状の転動面51、52を有しているので、焼酎タンク6の板厚(円周縁の幅)の大小や円周縁の形状に拘わらずローラ23及びガイドローラ43を上部の円周縁に乗せることができ、焼酎タンク6を組み立てる経過で上部の円周縁がいかなる形状になっていても、ローラ23及びガイドローラ43を上部の円周縁に乗せて梯子21を設置することができる。
【0075】
また、踏み台部25がリンク機構を介して平行移動することにより折りたたみ自在に梯子本体部24に設けられているので、他の焼酎タンクが隣接する狭い箇所であっても、踏み台部25を折りたたむことで梯子21を通過させることができる。このため、隣接する焼酎タンクとの隙間が不十分な場所が存在する焼酎タンク6であっても簡単に梯子21を設置することができる。
【0076】
従って、限られた敷地内に多く設置される焼酎貯蔵用の貯蔵タンクを組み立てる最に、固定の足場を構築することなく作業者の作業場所を梯子21で簡単に確保することができ、足場を構築する労力と時間をなくすことが可能になる。また、狭い場所で適用できることに加え、焼酎タンク6の上部の円周縁にローラ23及びガイドローラ43を乗せることができるので、限られた敷地内に多く設置される既存の焼酎タンク6の塗装等のメンテナンスに対して簡単に適用することができる。
【産業上の利用可能性】
【0077】
本発明は、組み立て構造物、例えば、焼酎を貯蔵する焼酎貯蔵用の液体タンクに設置される梯子の産業分野で利用することができる。
【符号の説明】
【0078】
1 基礎
2 底板
3 帯状鋼板
4 鋼板筒
5 天井筒
6 焼酎タンク
7 円筒体
11 治具
12 本体板
13 挿入孔
14 係止棒
15 楔片
21 梯子
22 支持部材
23 ローラ
24 梯子本体部
25 踏み台部
26 板台
27 手すり部
28 リンク
31 分割本体部
33 矩形枠
34 幅木
35 第2リンク
41 枠材
43 ガイドローラ
44 支持枠
45 ガイド支持枠
46 移動用スプロケット
47 操作チェーン
48 動力伝達チェーン
51、52 転動面
55 トップアングル
56 天井板
57 支持棒
58 レール環
61 棒材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
構造物の上部の基準縁部を転動するローラを備えた支持部材と、
前記支持部材に設けられ前記構造物の下側に垂下して延びる梯子本体部と、
前記梯子本体部の長手方向の複数個所に備えられ前記梯子本体部側に折りたたみ自在にされる踏み台部とを備えた
ことを特徴とする梯子。
【請求項2】
請求項1に記載の梯子において、
前記踏み台部は、前記梯子本体の長手方向に交差する方向に突出する板台が備えられると共に、前記梯子本体に沿って平行に延びる手すり部が前記板台の突出方向外側に備えられ、
前記板台が反突出状態にされる際に前記手すり部を前記梯子本体側に平行移動させることで折りたたみ動作をさせるリンクを備えた
ことを特徴とする梯子。
【請求項3】
請求項1もしくは請求項2に記載の梯子において、
前記構造物は筒状のタンクであり、前記ローラが転動する前記基準縁部は前記タンクの上部の円周縁であり、
前記ローラは湾曲凹状の転動面が前記円周縁を転動する滑車部材である
ことを特徴とする梯子。
【請求項4】
請求項3に記載の梯子において、
前記筒状のタンクは帯状円環部材が積み上げられることで形成され、
前記梯子本体は長手方向に分割された複数の分割本体部が互いに接続され、前記帯状円環部材の積み上げ高さに応じて分割本体部の数が設定されて互いに接続される
ことを特徴とする梯子。
【請求項5】
請求項4に記載の梯子において、
前記支持部材には前記ローラに対応して移動用スプロケットが設けられ、
前記移動用スプロケットには回転用の索体が巻回され、前記索体は前記梯子本体に沿って垂下して配され、
前記移動用スプロケットの回転軸と前記ローラの回転軸の間に動力伝達機構を介在させた
ことを特徴とする梯子。
【請求項6】
請求項5に記載の梯子において、
動力伝達機構は、前記移動用スプロケットの回転軸と前記ローラの回転軸にそれぞれ取り付けられるスプロケットと、前記スプロケットに掛け回されるチェーンとからなる
ことを特徴とする梯子。
【請求項7】
請求項5もしくは請求項6に記載の梯子において、
前記ローラ及び前記移動用スプロケットが支持される支持枠が前記支持部材に備えられ、前記支持枠は、前記ローラ及び前記移動用スプロケットの回転中心軸に直交する軸周りで回動自在に前記支持部材に支持され、
前記ローラに対応して湾曲凹状の転動面を有するガイドローラを有し、前記ガイドローラが支持されるガイド支持枠が前記支持部材に備えられ、前記ガイド支持枠は、前記ガイドローラの回転中心軸に直交する軸周りで回動自在に前記支持部材に支持され、
前記支持枠及び前記ガイド支持枠を回動させることにより、前記ローラ及び前記ガイドローラの転動面を前記タンクの上部の円周縁の円弧に沿わせる
ことを特徴とする梯子。
【請求項8】
請求項3から請求項7のいずれか一項に記載の梯子において、
前記筒状のタンクは、焼酎が貯蔵される焼酎タンクである
ことを特徴とする梯子。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2011−144564(P2011−144564A)
【公開日】平成23年7月28日(2011.7.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−6501(P2010−6501)
【出願日】平成22年1月15日(2010.1.15)
【特許番号】特許第4557271号(P4557271)
【特許公報発行日】平成22年10月6日(2010.10.6)
【出願人】(595106512)明新工業株式会社 (5)
【Fターム(参考)】