説明

煙感知器

【課題】ラビリンス内部で反射した迷光や、外部から入射した入射光等、意図しない方向からのノイズ光を受光せず、必要な散乱角の光のみを選択的に取り込むことができ、しかもラビリンス構造が簡素である煙感知器を提供することを目的とする。
【解決手段】検煙部と、上記検煙部に設けられている発光素子と、上記検煙部に設けられている受光素子とを具備する煙感知器において、上記受光素子の受光面の前方に、上記発光素子が発光するピーク発光波長帯のみが透過する光学フィルタを設けた煙感知器である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、煙感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来の散乱光式煙感知器は、検煙室の外周を遮光する複数のラビリンス部材で覆い、その内側に向けて、発光素子および受光素子が設けられ、発光素子の光軸と交わるラビリンス部材の先端と、発光素子から受光素子へ到達する光を遮光する遮光板とによって、受光素子の受光ホルダ開口部によって決定される検煙室内に対する受光素子の受光視野領域をさらに限定する隙間を形成し、平常時に発光素子からの受光素子に向かう迷光を少なくして0点レベルを低くして信頼性向上を図っている(たとえば、特許文献1参照)。
【特許文献1】特許第3389227号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
上記従来例では、ラビリンス部材の先端と遮光板とによって、発光素子からの光の多くが遮られ、安定した受光出力を得るために、発光量を大きくする必要があり、消費電流やラビリンス内の迷光が増加するという問題がある。
【0004】
つまり、上記従来例では、ラビリンス部材等の配置により受光視野を限定するために、ラビリンス内部の反射等による意図しない方向からのノイズ光に対して受光視野領域を狭くし、必要な散乱角の光のみを選択的に取り込むことができないという問題がある。
【0005】
本発明は、ラビリンス内部の反射等による意図しない方向からのノイズ光を受光せずに、必要な散乱角の光のみを選択的に取り込むことができる煙感知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、検煙部と、上記検煙部に設けられている発光素子と、上記検煙部に設けられている受光素子とを有する煙感知器において、上記受光素子の前方に、上記発光素子のピーク発光波長帯のみが透過する光学フィルタを設けたものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、ラビリンス内部のノイズ光(発光素子による迷光と外部からの入射光)が減少し、検出精度を向上させることができ、また、ラビリンス構造を簡易化することができるという効果を奏する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
発明を実施するための最良の形態は、以下の実施例である。
【実施例1】
【0009】
図1は、本発明の実施例1である煙感知器SE1の検煙部を示す断面図である。
【0010】
煙感知器SE1は、ケース10と、発光素子20と、受光素子30と、光学フィルタ40とを有する。また、煙感知器SE1は、図示しないが、受光増幅回路、CPU等が設けられている。
【0011】
外周を開放するケース10の内部に、ラビリンス部材11と、検煙部12とが設けられている。
【0012】
検煙部12には、発光素子20と、受光素子30とが設けられている。
【0013】
発光素子20は、たとえば、ピーク発光波長900nmを有する赤外線を発光するLEDによって構成されている。
【0014】
受光素子30は、赤外線に受光感度を有するPDによって構成され、煙流入時にLEDの発光を受けた煙粒子による散乱光を受光する。また、受光素子30は、発光素子20と所定の光軸角度をなしている。
【0015】
上記受光増幅回路は、受光素子30の出力信号を増幅する。上記CPUは、A/D変換機能と火災判別機能とを有し、上記A/D変換機能は、上記受光増幅回路の信号をデータとしての検出レベルに変換する。上記火災判別機能は、その検出レベルが閾値以上であれば、火災であると判別し、火災信号を出力する。
【0016】
光学フィルタ40は、受光素子30の受光面の前方にある受光素子収納部の開口部に配置されている。光学フィルタ40は、干渉フィルタで構成され、この干渉フィルタは、受光素子30に到達する煙による散乱光の入射等を制限するフィルタである。また、干渉フィルタは、ガラス等の基板に、薄膜材料(シリカ、二酸化チタン等)を多層に重ねたフィルタであり、分光特性を任意に設定でき、たとえば、発光素子20のピーク発光波長帯のみを透過させることができる。
【0017】
この場合、他の波長帯は基板または膜の表面による干渉作用で反射する。
【0018】
次に、実施例1の動作について説明する。
【0019】
図2は、実施例1の動作を説明する図である。
【0020】
図2(1)に示すように、光学フィルタ40の表面と直角に発光素子20のピーク発光波長帯の光が入射すると、その光が光学フィルタ40を透過する。しかし、図2(2)に示すように、光学フィルタ40の表面に斜めに発光素子20のピーク発光波長帯の光が入射すると、その光は、光学フィルタ40の表面で反射し、光学フィルタ40を透過しない。
【0021】
これは、入射角度θにより光学フィルタ40の透過波長帯が短波長側にシフトすることによる。
【0022】
このシフトの大きさは、光学フィルタ40の屈折率によって決まる。この屈折率が低ければ、このシフト量は大きくなる。光学フィルタ40のシフト量は次の算式により計算される。
【0023】
λθ={λ・(n−sinθ)1/2}/n …式(1)
ここで、
θ=入射角
=光学フィルタ40の屈折率
λ=正面方向(θ=0°)の入射角時の光学フィルタ40の中心波長
λθ=ある“ ”度の入射角時の光学フィルタ40の中心波長
したがって、入射角度θが大きくなるように、発光素子12と受光素子30とを配置すれば、発光素子11のピーク発光波長帯の斜め方向からの入射光を光学フィルタ40で遮ることができる。
【0024】
図3は、煙感知器SE1において、発光素子20を構成するLEDの内部迷光Lが、受光素子30に到達しない状態を示す図である。
【0025】
発光素子20を構成するLEDの内部迷光Lは、ラビリンス部材11を反射し、受光素子30に設けられている光学フィルタ40に達するが、その迷光は、光学フィルタ40の表面と直交する角度で入射しないので、光学フィルタ40の表面で反射し、受光素子30には到達しない。したがって、LEDの内部迷光Lによる火災の誤検出、つまり、誤報が生じない。
【0026】
図4は、煙感知器SE1において、外部からの入射光Nが受光素子30に到達しない状態を示す図である。
【0027】
煙感知器SE1の外部から入射光Nが検煙部12に入った場合、ラビリンス部材11で反射した後に、光学フィルタ40に達するが、その入射光に発光素子20のピーク発光波長と同じ帯域があっても、光学フィルタ40の表面と直交する角度で入射しないので、光学フィルタ40の表面で反射し、受光素子30には到達しない。したがって、外部からの入射光Nによる火災の誤検出、つまり、誤報が生じない。
【0028】
図3および図4において、万一、発光素子20のピーク発光波長と同じ帯域の迷光Lと入射光Nが、光学フィルタ40に直交するように入射しても、その時点までに、ラビリンス部材11で複数回反射させて十分に減衰させるように設計しているので、受光素子30は、これらを検出しない。
【0029】
すなわち、上記実施例によれば、発光部からの光を、必要な散乱角の光を選択的に受光させるので、ラビリンス内部のノイズ光(LEDの内部迷光Lと外部からの入射光N)が減少し、検出精度を向上させることができる。また、ラビリンス構造を簡易化することができ、周縁方向から検煙部に対する煙の流入特性(応答性)の方向性をなくすことができる。
【0030】
また、光学フィルタ40は、バンドパスフィルタを用いてもよい。
【0031】
いずれの場合も発光素子20の発光波長帯のみが透過する分光特性を有する光学フィルタ40を用いることによって、発光素子20のピーク発光波長帯を透過する一方で、受光素子30の受光波長感度を狭めることができるので、ノイズ光量を低くすることができ、S/N比が優れた煙感知器SE1を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0032】
【図1】本発明の実施例1である煙感知器SE1を示す断面図である。
【図2】実施例1の動作を説明する図である。
【図3】煙感知器SE1において、発光素子20を構成するLEDの内部迷光が、受光素子30に到達する軌跡を示す図である。
【図4】煙感知器SE1において、外部からの入射光が受光素子30に到達する軌跡を示す図である。
【符号の説明】
【0033】
SE1…煙感知器、
10…ケース、
11…ラビリンス部材、
12…検煙部、
20…発光素子、
30…受光素子、
40…光学フィルタ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
検煙部と;
上記検煙部に設けられている発光素子と;
上記検煙部に設けられている受光素子と;
を有する煙感知器において、
上記受光素子の前方に、上記発光素子のピーク発光波長帯のみが透過する光学フィルタを設けたことを特徴とする煙感知器。
【請求項2】
請求項1において、
上記光学フィルタは、干渉フィルタであることを特徴とする煙感知器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−250852(P2008−250852A)
【公開日】平成20年10月16日(2008.10.16)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−93994(P2007−93994)
【出願日】平成19年3月30日(2007.3.30)
【出願人】(000233826)能美防災株式会社 (918)
【Fターム(参考)】