煙感知器
【課題】薄型の外観形状としても応答性の良い煙感知器を提供する。
【解決手段】側周面からの煙の流入を許容すると共に、正面視において非円形状のケース部1と、ケース部1に収容され、ケース1に流入した煙を感知可能な光電式のセンサ部3と、正面視においてケース部1の外形よりも小さい円形状であると共に設置面Wに固定可能であり、ケース部を取り付け可能な取付下地部4と、を備え、取付下地部4にケース部1を取り付けたとき、側面視において、取付下地部4のうち少なくとも一部がケース部1から突出するよう構成する。
【解決手段】側周面からの煙の流入を許容すると共に、正面視において非円形状のケース部1と、ケース部1に収容され、ケース1に流入した煙を感知可能な光電式のセンサ部3と、正面視においてケース部1の外形よりも小さい円形状であると共に設置面Wに固定可能であり、ケース部を取り付け可能な取付下地部4と、を備え、取付下地部4にケース部1を取り付けたとき、側面視において、取付下地部4のうち少なくとも一部がケース部1から突出するよう構成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時の煙の発生を感知する光電式の煙感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、壁面や天井面に設置されて、火災時の煙の発生を感知する光電式の煙感知器があった。近年、住環境デザインの変化に応じて、煙感知器の外観デザインの改良にも力が注がれている。
【0003】
例えば、特許文献1に示すごとく、正面視において円形状であって、側周面からの煙を流入を許容して、薄型で正面側に凹凸がない構成とした煙感知器があった。特許文献1に記載の煙感知器は、すっきりとした印象を与え、火災感知の機能は果たしながらも、設置空間の意匠に馴染み易い。
【0004】
また、特許文献2に示すごとく、角部分に丸みを付けてはいるが、正面視において非円形状(四角形状)の煙感知器があった。特許文献2に記載の煙感知器であると、特に、壁面等の鉛直面に設置する場合に、円形状であるものと比べて、設置空間の意匠に馴染み易い場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−211325号公報
【特許文献2】特開2010−20470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、設置面の表面の素材には多少なりと凹凸があり、設置面近傍では気流速度に摩擦損失が生じる。また、設置面近傍の煙は、煙感知器の側周面にぶつかって気流方向が変更され、設置面から離れていて気流速度が落ちていない煙と混ざり合う。この結果、煙に気流の乱れが生じる。特許文献1に記載の煙感知器は薄型としてあるために、煙の流入口が従来のものと比べて設置面に近く、煙感知器が気流速度の速い部分と気流速度の遅い部分とに跨ってしまう。このため、上述した気流の乱れの影響により、煙感知器内部に適正に煙が流入しにくくなって、煙に対する応答が遅くなる虞がある。
【0007】
特許文献2に記載の発明であると、煙が流入する開口が設置面から離れているために、上述の気流の乱れの影響を受けにくいが、仮にセンサ部をケース部内に引退させて薄型のフラット形状にしようとすると、四角形状であるために側面が気流に対して直交する。このため、円形状の場合よりも気流の乱れが生じ易く、薄型とするには問題がある。
【0008】
上記実情を鑑み、本発明は、薄型の外観形状としても応答性の良い煙感知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る煙感知器の第一特徴構成は、側周面からの煙の流入を許容すると共に、正面視において非円形状のケース部と、前記ケース部に収容され、流入した煙を感知可能なセンサ部と、正面視において前記ケース部の外形よりも小さい円形状であると共に設置面に固定可能であり、前記ケース部を取り付け可能な取付下地部と、を備え、前記取付下地部に前記ケース部を取り付けたとき、側面視において、前記取付下地部のうち少なくとも一部が前記ケース部から突出するよう構成した点にある。
【0010】
本構成によると、ケース部より見付面積が小さく、かつ、円形状の取付下地部のうち少なくとも一部がケース部から設置面の側に突出する。したがって、ケース部を非円形状としても、摩擦損失によって流速が落ちた煙は取付下地部の円形状に沿って気流方向下流側へ案内されると共に、多少の煙が取付下地部の側面にぶつかっても、気流の乱れが生じにくい。よって、薄型としても、煙に対する応答性が損なわれない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は、煙感知器の正面方向からの斜視図である。(b)は、煙感知器の背面方向からの斜視図である。
【図2】は、煙感知器の背面視の断面図である。
【図3】は、煙感知器の背面方向からの分解斜視図である。
【図4】は、リアケースを外した状態の煙感知器の背面方向からの斜視図である。
【図5】は、図2におけるV−V方向の端面図である。
【図6】は、図2におけるVI−VI方向の断面図である。
【図7】は、図2におけるVII−VII方向の断面図である。
【図8】は、壁面に固定したベースとケースとの関係を示す斜視図である。
【図9】は、ベースにケースを取り付けたときの背面図である。
【図10】は、壁面に設置した煙感知器に対する煙の流れを示す上面図である。
【図11】は、図10の煙の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る煙感知器の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
〔全体構成について〕
図1及び図2に示すごとく、煙感知器は、側周面からの煙の流入を許容すると共に、正面視において正方形状、即ち、非円形状のケース部(以下、「ケース1」と称する)と、ケース部に収容され、流入した煙を感知可能な光電式のセンサ部(以下、「センサ3」と称する)と、正面視においてケース部の四角形状よりも小さい円形状であって、壁面に固定可能であり、ケース部を取り付け可能な取付下地部(以下、「ベース4」と称する)と、を備えている。
【0014】
ケース1の内部に流入した煙をセンサ3が感知し、煙の濃度が予め設定してある閾値を越えた場合に、スピーカ5から警報音を発する。警報音を停止するには、ケース1の表面に配設された警報停止ボタン6を押せば、警報音を停止することができる。警報器が高所に設置され、警報停止ボタン6に手が届かないような場合は、ケース1から下方に垂らすことが可能な警報停止引きヒモ7を引いても警報音は停止する。
【0015】
以下、煙感知器を壁面に設置することを前提として、壁面とは反対側を表面側または前側とし、壁面側を背面側または後側とする。したがって、本発明に係る「正面視」とは表面側から煙感知器を観ることを示す。上下方向については、図1及び図2の紙面上方向が煙感知器の「上」であり、同下方向が「下」であるとして説明を行う。図3においては紙面左方向が煙感知器の「上」であり、図4においては紙面右下方向が「上」であり、図5においては紙面上方向が「上」であり、図6及び図7においては紙面手前方向が「上」であり、図9においては紙面上方向が「上」であり、図10においては紙面手前が「上」である。
【0016】
〔ケースの概要〕
ケース1は、図3及び図5に示すごとく、背面側となる基部(以下、「リアケース1a」)と、表面側となるカバー部(以下、「フロントケース1c」と称する)と、リアケース1aとフロントケース1cとで囲まれるケース1の内部空間を前後方向に仕切る仕切部(以下、「中間ケース1b」と称する)と、を備えている。フロントケース1cとリアケース1aと中間ケース1bとは、樹脂製であって、射出成形によって製作してある。ケース1には、センサ3、基板2、スピーカ5、警報停止ボタン6等が収容される。
【0017】
フロントケース1cの表面は、図5に示すごとく、外周部分が背面側に僅かに傾斜しているのみで、全体としては略フラットである。フロントケース1cの外周端は、背面側に立ち上げてある。中間ケース1bの外周端は表面側に立ち上げてある。さらに、リアケース1aの外周端も表面側に立ち上げてあり、その立ち上がり部分がケース1の側周面を構成する。リアケース1aの立ち上がり部分には、格子状の煙流入口11が形成してあり、ケース1の内部への煙の流入が許容される。リアケース1aの外周端は背面側にも僅かに立ち上げてあり、ケース1をベース4に取り付けたときに、ベース4の一部がこの立ち上がり部分に収まるようにしてある。フロントケース1c、リアケース1a、中間ケース1bの順に正面視形状が小さくなり、フロントケース1cの立ち上がり部分と、中間ケース1bの立ち上がり部分との隙間に、リアケース1aの立ち上がり部分が差し込まれている。
【0018】
〔センサの概要〕
センサ3は、図2に示すごとく、円筒形状であって、側周面に備えられて煙を導入可能な複数の煙導入口3cと、外部からの光を遮断するように間隙を介して並置された複数のラビリンス状の壁部と、センサ3の内部に光を照射する発光部3aと、センサ3の内部に流入した煙による散乱された発光部3aからの光を感知する受光部3bと、を備えている。このセンサ3は既に公知であるので、煙感知のメカニズムについてはここでは説明しない。なお、煙導入口3cの外周側には防虫網3dが設けてある。
【0019】
〔基板の概要〕
基板2には、図3に示すごとく、センサ3と電源コネクタ2cが配設されると共に、スピーカ5が接続されている。基板2は、不図示の電気回路がプリントされ、不図示の電子部品が配設され、煙の感知や警報音の発令等を制御する。基板2のうちセンサ3を配設した面と同じ面に、煙調整部2aが備えられている。煙調整部2aを介して、外部から基板2側に信号やデータを送ったり、基板2側から外部に信号やデータを読み出したりすることでき、製品製造過程における実煙を用いた煙流入性能の調整に使用する。
【0020】
また、基板2のうちセンサ3を配設した面と同じ面には、自動試験機能を司る自動試験部2bが備えられている。自動試験機能とは、「火災報知設備に係る機能が適正に維持されていることを、自動的に確認することができる装置による火災報知設備に係る試験機能」である(中継器に係る技術上の規格を定める省令2条12号)。自動試験部2bには、製品を分解せずに容易に外部から接触できなければならないことが、日本消防検定協会により規定されている。製品状態で、自動試験部2bに外部から金属片を接触させて試験用端子をショートさせることにより、故障と同じ状態を発生させ、適切に故障を認識するかを確認する。
【0021】
〔ケースの組立について〕
煙感知器の組立概要、及び、各部材の相対位置関係について説明する。先ず、図3及び図5に示すごとく、フロントケース1cに形成した警報停止ボタン6用の開口に背面側から警報停止ボタン6を落とし込み、左右方向を軸芯として揺動可能にフロントケース1cに支持する。警報停止ボタン6は、背面方向に立設形成されたヒモ掛け部6aを備えており、警報停止引きヒモ7を掛けることも外すことも可能である。警報停止ボタン6は、自身が押されるか、警報停止引きヒモ7が引かれるかすることによって背面側に揺動し、基板の表面側に配設された不図示の警報音停止用のスイッチを押すことが可能である。
【0022】
次に、基板2を、図3及び図5に示すごとく、センサ3が配設されている面を背面側に向けた状態で、スピーカ5と共にフロントケース1cの所定の位置に嵌め込む。続いて、基板2に覆い被せるように、中間ケース1bをフロントケース1cに嵌め込む。フロントケース1cの内面のうち対角をなす任意の入隅二箇所の内側面には内側に突出した突起(図番なし)が形成されている。中間ケース1bの外側面にも、ケース1cの突起に対応させて外側に突出した突起(図番なし)が形成されている。中間ケース1bの立ち上がり部分の先端面がフロントケース1cの背面に接触するまで、中間ケース1bを無理に押し込むと、両突起が互いを乗り越えて係合する。これにより、中間ケース1bはフロントケース1cに対して固定され、フロントケース1cと一体となる。中間ケース1bには、図3に示すごとく、センサ3と略同径の開口が形成されており、中間ケース1bがセンサ3と干渉することはない。中間ケース1bの配設後は、図4に示すごとく、センサ3が中間ケース1bよりも背面側に突出した状態となるが、センサ3と中間ケース1bの開口との間に隙間はない。フロントケース1cと中間ケース1bとの間の空間が、本発明に係る「基板配設空間SA」となる。即ち、基板2及びスピーカ5は基板配設空間SAに配設されている。
【0023】
次に、中間ケース1bとセンサ3とに覆い被せるように、図5に示すごとく、フロントケース1cの立ち上がり部分と中間ケース1bの立ち上がり部分との間に、リアケース1aの立ち上がり部分を嵌め込む。リアケース1aと中間ケース1bとの間の空間が、本発明に係る「煙誘導空間SB」である。即ち、センサ3は、中間ケース1bによって基板配設空間SAと分断された煙誘導空間SBに配設されている。煙流入口11は煙誘導空間SBに大きく開放されており、煙は円滑に煙誘導空間SBに流入可能である。
【0024】
図3に示すごとく、フロントケース1c、中間ケース1b、及び、リアケース1aには、正面視で同位置に「固定具」としてのビスを挿通するためのボス部1dが立設形成されている。フロントケース1cに中間ケース1bを嵌め込むと、中間ケース1bのボス部1dがフロントケース1cのボス部1dに覆い被さる。さらにリアケース1aを嵌め込むと、リアケース1aのボス部1dの先端部と中間ケース1bのボス部1dの先端部とが突き合わされる。このようにして、フロントケース1cのボス部1d、中間ケース1bのボス部1d、及び、リアケース1aのボス部1dが一体となって、フロントケース1cからリアケース1aに亘るボス部1dを構成される。リアケース1aの背面側からボス部1dにビスを締め込むと、リアケース1aがフロントケース1cに固定されると共に、中間ケース1bもケース1内に完全に固定され、ケース1が組み上がる。
【0025】
以上により、図1に示すごとく、正面視において正方形状であり、かつ、側面視において四角形状であるケース1が完成する。上述したように、基板2をフロントケース1cに配設し、センサ3をリアケース1aの側に寄せて設けることにより、煙感知器の前後方向の厚さを薄くし、薄型の煙感知器とすることができる。
【0026】
〔ケースの内部構造・煙誘導リブについて〕
ケース1の内部構造について説明する。図2に示すごとく、ケース1の内部には、煙流入口11から流入した煙をセンサ3の煙導入口3cまで誘導する「煙誘導部」としての煙誘導リブ12,31を形成してある。ケース1の内部に360°どの方向から煙が流入してもセンサ3が煙を感知が可能なように、煙導入口3cはセンサ3の側周面に略均等に設けてある。しかし、ケース1の内部空間にはセンサ3以外に、ボス部1d、後述する電池収容部15や外部出力機構収容部14等も存在し、煙の流通が円滑に行われない虞がある。煙誘導リブ12,31は、煙が360°どの方向からセンサ3内部に流入しても、煙がボス部1d等を回避しつつも煙導入口3cまで円滑に到達できるよう誘導するものである。煙誘導リブ12,31は、前後方向に中間ケース1bとリアケース1aとに亘るよう設けてある。煙誘導リブ12,31は、煙誘導空間SBを、煙が流通する空間と電池収容部15等とに仕切る役割も成している。
【0027】
煙誘導リブ12,31は、図5に示すごとく、中間ケース1bの背面側に背面側に向けて立設形成したもの31と、リアケース1aの正面側に正面側に向けて立設形成したもの12とがある。このように、煙誘導リブ12,31を中間ケース1bとリアケース1aとに分散させることにより、射出成形が複雑になるのを防止している。煙誘導リブ12,31が形成されていない側の部材において、煙誘導リブ12,31の先端部が当接する箇所を、その先端部の形状に合せて凹入してある。即ち、インロー構造としてある。煙誘導リブ12,31がこの凹部32,13に嵌り込むことにより、単に煙誘導リブ12,31を突き付けた場合と比べて隙間が生じ難いと共に、片持ち構造である煙誘導リブ12,31の自由端(先端部)が保持され、煙誘導リブ12,31が位置決めされて安定する。
【0028】
本実施形態のように、壁面に煙感知器を設置した場合、煙流入口11が上方を向くため、上方から埃等の異物がケース1内に侵入する虞がある。この異物が、煙導入口3cからラビリンス構造の壁部の間をすり抜けてセンサ3内部に侵入すると、発光部3aの光がその異物によって散乱され、誤報が発令される虞がある。ただし、異物が大きい場合は防虫網3dに引っ掛かってセンサ3の内部に侵入することはない。
【0029】
そこで、図2に示すごとく、煙導入口3cのうち上方に向けて開口する煙導入口3cの上方に、ボス部1dや煙誘導リブや外部出力機構収容部14を適切に配置してある。仮に、上方からケース1内に埃等が侵入しても、これらの部材の上面に堆積する確率が高く、煙導入口3cには到達しにくい。特に、最も上側に位置する煙導入口3cに関しては、上方に対する開口率が高いため、埃等の侵入の危険性が高い。そこで、最も上側に位置する隣合う煙導入口3cの上方に位置する煙誘導リブについては、隣合う煙導入口3cの間においてセンサ3の側周面に沿う水平部12aと、水平部12aから斜め上方に延出する傾斜部12bと、を備えている。この結果、ケース部内に流入した煙を煙導入口3cに円滑に誘導しながらも、煙誘導リブの水平投影面積が大きくなり、センサ部内への埃等の侵入を防止する確実性が高まる。
【0030】
リアケース1aには、図8に示すごとく、外部に煙感知情報を出力する外部出力機構を収容する外部出力機構収容部14と、煙感知器の駆動電源としての電池を収容する電池収容部15と、が形成されている。外部出力機構収容部14と電池収容部15とは、リアケース1aを正面側に凹入した有底の凹部である。図2に示すごとく、外部出力機構収容部14の側壁の一部と電池収容部15の側壁の一部とは、本発明に係る「煙誘導部」としても機能している。外部出力機構収容部14の先端部は、図6に示すごとく、中間ケース1bに当接しており、上述したインロー構造としてある。電池収容部15は、電池を収容するため、前後方向に深さを必要とし、中間ケース1bとリアケース1aとの前後方向の高さでは収まりきらない。よって、図2に示すごとく、中間ケース1bに電池収容部15の外形に合せた開口を設け、その開口に電池収容部15が嵌り込む構造としてある。
【0031】
上述したように、中間ケース1bをフロントケース1cに嵌め込めば、センサ3は位置決めされる。よって、この状態で煙流入性能の調整が可能である。そこで、図4に示すごとく、中間ケース1bのうち煙調整部2aに対向する箇所に「開口部」としての煙調整孔33を形成してある。これにより、製品製造途中において煙調整が可能である。煙調整孔33は、基板配設空間SAと煙誘導空間SBとを連通するものであるが、煙調整孔33が煙誘導リブに囲まれる隔離領域SPに対して開口するよう構成してある。本実施形態においては、図2及び図6に示すごとく、煙誘導部を兼ねる外部出力機構収容部14の底部分が煙調整孔33を閉塞するよう構成してある。これにより、煙流入性能の調整を行った後、リアケース1aを組み上げるだけで、煙調整孔33は閉塞される。この結果、煙流入口11から煙誘導空間SBに水滴や虫等の異物が侵入したとしても、煙調整孔33に到達できず、基板2に接触することはない。よって、基板2の故障を防止できる。
【0032】
同様に、異物の接触を嫌う電源コネクタ2cに関しても、図2に示すごとく、外部出力機構収容部14とは異なる隔離領域SPに配置し、異物の接触を防止してある。よって、基板2の故障を防止できる。
【0033】
上述したように、自動試験部2bについては、製品を分解せずに容易に外部から接触できなければならない。よって、中間ケース1bのうち自動試験部2bに対向する箇所に自動試験孔34を形成し、さらにその前後方向の延長線上のリアケース1aにも自動試験孔17を形成してある。これにより、製品組立後の自動試験機能の確認が可能である。自動試験孔34は、基板配設空間SAと煙誘導空間SBとを連通するものであるが、図7に示すごとく、中間ケース1bの自動試験孔34の外周を基板2に当接するように立ち上げ、煙誘導空間SBに露出する基板2の範囲を最小限に抑えている。
【0034】
〔ベースについて〕
ベース4は、図8に示すごとく、ケース1に先行して壁面に固定するものである。ベース4は樹脂製であり、射出成形により製作してある。図9に示すごとく、ベース4は円形状であり、リアケース1aの正方形状に内接する大きさである。即ち、ベース4に対してケース1を最大限小さくすることにより、コンパクトなケース1にしているとも言えるし、また、ケース1に対してベース4を最大限大きくすることにより、ケース1を安定して支持できる構成であるとも言える。ベース4の外周部の四箇所には径外方向に突出す突起部41を形成してある。突起部41には、図8に示すごとく、固定具、例えば、石膏ボードピンPを挿通可能な孔が形成してあり、四箇所の突起部41を介して石膏ボードの壁面にベース4を取り付けることができる。なお、ベース4には、ビス穴44も形成してあり、ビス等によっても取り付けることも可能である。
【0035】
〔ベースへのケースの取り付けについて〕
ケース1をベース4に取り付ける要領について説明する。図8に示すごとく、リアケース1aの中心部に背面側に突出する被案内部16を一体形成し、ベース4の中心部に背面側に凹入する案内部42を一体形成してある。被案内部16は、正面視円形状であり、外周部の二箇所を径外方向に突起させてある。案内部42は被案内部16の形状に沿う形状に形成してあり、案内部42を嵌り込める形状としてある。ケース1をベース4に取り付ける際は、ベース4の円形部分がケース1の背後に隠れてしまうが、突起部41のみが視認できるようになっており、複数の突起部41からベースの中心が判断できる。さらに、被案内部16が案内部42に嵌り込む構成であるため、ケース1とベース4との芯合わせが容易である。被案内部16が案内部42に嵌り込めば、両者は位置決めされる。その後は、案内部42の案内に従ってケース1を回転させると、リアケース1aの背面側外周部分に設けた係合フック18が、ベース4の正面側外周部分に設けた係合フック43に係合し、ケース1をベース4に取り付けることができる。ケース1をベース4に取り付けると、図5に示すごとく、側面視において、ベース4のうち一部がリアケース1aから背面側、即ち壁面の側に突出する。
【0036】
このようにして、煙感知器を壁面に設置する。なお、ケース1が正面視で正方形状であるため、ケース1の外周四辺が、設置空間の天井面及び床面に対して平行または垂直となる。よって、円形状とする場合と比べて設置空間に馴染み易い。
【0037】
〔煙感知器への煙の流入について〕
煙感知器への煙の流入について説明する。説明の便宜上、煙の流れが水平方向である場合について説明する。上述したように、ケース1をベース4に取り付けると、側面視においてベース4の一部がリアケース1aから突出する。即ち、図10に示すごとく、煙感知器を壁面Wに設置したときには、ケース1が壁面Wから少し浮いた状態となる。このため、壁面Wによる摩擦損失によって気流速度が落ちた壁面沿いの煙は、リアケース1aと壁面Wとの隙間のスペースに流れ込み、気流速度が落ちていない壁面Wから離れた煙はそのまま煙流入口11に流入する。また、ベース4が円形状であるため、壁面沿いの煙はベース4の側面に沿って気流方向下流側へ円滑に案内される。ベース4の側面に多少の煙がぶつかって気流の乱れが生じるが、ベース4が正面視においてケース1よりも小さく、ベース4の側面と煙流入口11とが離れているため、煙流入口11から流入する煙に対する影響は少ない。よって、上述したように薄型の煙感知器とすることにより、煙流入口11が従来よりも壁面に近くなっても、煙感知器の応答性が損なわれることはない。
【0038】
〔別実施形態〕
(1)上述の実施形態においては、ケース部1の形状を正方形状としたが、この形状に限定されるものではなく、非円形状であれば良い。ケース部1は、例えば、三角形状等の他の多角形状や、楕円形状などの非線形形状であっても良い。なお、正方形状を含む多角形状である場合、正面視の角を面取りしてあっても良い。
(2)上述の実施形態においては、基板2は、フロントケース1cと中間ケース1bとの間に配設したが、これに限られず、リアケース1aと中間ケース1bとの間に配設してあっても良い。この場合は、リアケース1aの側から組み上げる構成とする。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、壁面に設置する煙感知器に限らず、天井面に設置する煙感知器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 ケース(ケース部)
3 センサ(センサ部)
4 ベース(取付下地部)
W 壁面(設置面)
【技術分野】
【0001】
本発明は、火災時の煙の発生を感知する光電式の煙感知器に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、壁面や天井面に設置されて、火災時の煙の発生を感知する光電式の煙感知器があった。近年、住環境デザインの変化に応じて、煙感知器の外観デザインの改良にも力が注がれている。
【0003】
例えば、特許文献1に示すごとく、正面視において円形状であって、側周面からの煙を流入を許容して、薄型で正面側に凹凸がない構成とした煙感知器があった。特許文献1に記載の煙感知器は、すっきりとした印象を与え、火災感知の機能は果たしながらも、設置空間の意匠に馴染み易い。
【0004】
また、特許文献2に示すごとく、角部分に丸みを付けてはいるが、正面視において非円形状(四角形状)の煙感知器があった。特許文献2に記載の煙感知器であると、特に、壁面等の鉛直面に設置する場合に、円形状であるものと比べて、設置空間の意匠に馴染み易い場合が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2009−211325号公報
【特許文献2】特開2010−20470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
一般的に、設置面の表面の素材には多少なりと凹凸があり、設置面近傍では気流速度に摩擦損失が生じる。また、設置面近傍の煙は、煙感知器の側周面にぶつかって気流方向が変更され、設置面から離れていて気流速度が落ちていない煙と混ざり合う。この結果、煙に気流の乱れが生じる。特許文献1に記載の煙感知器は薄型としてあるために、煙の流入口が従来のものと比べて設置面に近く、煙感知器が気流速度の速い部分と気流速度の遅い部分とに跨ってしまう。このため、上述した気流の乱れの影響により、煙感知器内部に適正に煙が流入しにくくなって、煙に対する応答が遅くなる虞がある。
【0007】
特許文献2に記載の発明であると、煙が流入する開口が設置面から離れているために、上述の気流の乱れの影響を受けにくいが、仮にセンサ部をケース部内に引退させて薄型のフラット形状にしようとすると、四角形状であるために側面が気流に対して直交する。このため、円形状の場合よりも気流の乱れが生じ易く、薄型とするには問題がある。
【0008】
上記実情を鑑み、本発明は、薄型の外観形状としても応答性の良い煙感知器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る煙感知器の第一特徴構成は、側周面からの煙の流入を許容すると共に、正面視において非円形状のケース部と、前記ケース部に収容され、流入した煙を感知可能なセンサ部と、正面視において前記ケース部の外形よりも小さい円形状であると共に設置面に固定可能であり、前記ケース部を取り付け可能な取付下地部と、を備え、前記取付下地部に前記ケース部を取り付けたとき、側面視において、前記取付下地部のうち少なくとも一部が前記ケース部から突出するよう構成した点にある。
【0010】
本構成によると、ケース部より見付面積が小さく、かつ、円形状の取付下地部のうち少なくとも一部がケース部から設置面の側に突出する。したがって、ケース部を非円形状としても、摩擦損失によって流速が落ちた煙は取付下地部の円形状に沿って気流方向下流側へ案内されると共に、多少の煙が取付下地部の側面にぶつかっても、気流の乱れが生じにくい。よって、薄型としても、煙に対する応答性が損なわれない。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【図1】(a)は、煙感知器の正面方向からの斜視図である。(b)は、煙感知器の背面方向からの斜視図である。
【図2】は、煙感知器の背面視の断面図である。
【図3】は、煙感知器の背面方向からの分解斜視図である。
【図4】は、リアケースを外した状態の煙感知器の背面方向からの斜視図である。
【図5】は、図2におけるV−V方向の端面図である。
【図6】は、図2におけるVI−VI方向の断面図である。
【図7】は、図2におけるVII−VII方向の断面図である。
【図8】は、壁面に固定したベースとケースとの関係を示す斜視図である。
【図9】は、ベースにケースを取り付けたときの背面図である。
【図10】は、壁面に設置した煙感知器に対する煙の流れを示す上面図である。
【図11】は、図10の煙の流れを示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下に、本発明に係る煙感知器の実施形態を図面に基づいて説明する。
【0013】
〔全体構成について〕
図1及び図2に示すごとく、煙感知器は、側周面からの煙の流入を許容すると共に、正面視において正方形状、即ち、非円形状のケース部(以下、「ケース1」と称する)と、ケース部に収容され、流入した煙を感知可能な光電式のセンサ部(以下、「センサ3」と称する)と、正面視においてケース部の四角形状よりも小さい円形状であって、壁面に固定可能であり、ケース部を取り付け可能な取付下地部(以下、「ベース4」と称する)と、を備えている。
【0014】
ケース1の内部に流入した煙をセンサ3が感知し、煙の濃度が予め設定してある閾値を越えた場合に、スピーカ5から警報音を発する。警報音を停止するには、ケース1の表面に配設された警報停止ボタン6を押せば、警報音を停止することができる。警報器が高所に設置され、警報停止ボタン6に手が届かないような場合は、ケース1から下方に垂らすことが可能な警報停止引きヒモ7を引いても警報音は停止する。
【0015】
以下、煙感知器を壁面に設置することを前提として、壁面とは反対側を表面側または前側とし、壁面側を背面側または後側とする。したがって、本発明に係る「正面視」とは表面側から煙感知器を観ることを示す。上下方向については、図1及び図2の紙面上方向が煙感知器の「上」であり、同下方向が「下」であるとして説明を行う。図3においては紙面左方向が煙感知器の「上」であり、図4においては紙面右下方向が「上」であり、図5においては紙面上方向が「上」であり、図6及び図7においては紙面手前方向が「上」であり、図9においては紙面上方向が「上」であり、図10においては紙面手前が「上」である。
【0016】
〔ケースの概要〕
ケース1は、図3及び図5に示すごとく、背面側となる基部(以下、「リアケース1a」)と、表面側となるカバー部(以下、「フロントケース1c」と称する)と、リアケース1aとフロントケース1cとで囲まれるケース1の内部空間を前後方向に仕切る仕切部(以下、「中間ケース1b」と称する)と、を備えている。フロントケース1cとリアケース1aと中間ケース1bとは、樹脂製であって、射出成形によって製作してある。ケース1には、センサ3、基板2、スピーカ5、警報停止ボタン6等が収容される。
【0017】
フロントケース1cの表面は、図5に示すごとく、外周部分が背面側に僅かに傾斜しているのみで、全体としては略フラットである。フロントケース1cの外周端は、背面側に立ち上げてある。中間ケース1bの外周端は表面側に立ち上げてある。さらに、リアケース1aの外周端も表面側に立ち上げてあり、その立ち上がり部分がケース1の側周面を構成する。リアケース1aの立ち上がり部分には、格子状の煙流入口11が形成してあり、ケース1の内部への煙の流入が許容される。リアケース1aの外周端は背面側にも僅かに立ち上げてあり、ケース1をベース4に取り付けたときに、ベース4の一部がこの立ち上がり部分に収まるようにしてある。フロントケース1c、リアケース1a、中間ケース1bの順に正面視形状が小さくなり、フロントケース1cの立ち上がり部分と、中間ケース1bの立ち上がり部分との隙間に、リアケース1aの立ち上がり部分が差し込まれている。
【0018】
〔センサの概要〕
センサ3は、図2に示すごとく、円筒形状であって、側周面に備えられて煙を導入可能な複数の煙導入口3cと、外部からの光を遮断するように間隙を介して並置された複数のラビリンス状の壁部と、センサ3の内部に光を照射する発光部3aと、センサ3の内部に流入した煙による散乱された発光部3aからの光を感知する受光部3bと、を備えている。このセンサ3は既に公知であるので、煙感知のメカニズムについてはここでは説明しない。なお、煙導入口3cの外周側には防虫網3dが設けてある。
【0019】
〔基板の概要〕
基板2には、図3に示すごとく、センサ3と電源コネクタ2cが配設されると共に、スピーカ5が接続されている。基板2は、不図示の電気回路がプリントされ、不図示の電子部品が配設され、煙の感知や警報音の発令等を制御する。基板2のうちセンサ3を配設した面と同じ面に、煙調整部2aが備えられている。煙調整部2aを介して、外部から基板2側に信号やデータを送ったり、基板2側から外部に信号やデータを読み出したりすることでき、製品製造過程における実煙を用いた煙流入性能の調整に使用する。
【0020】
また、基板2のうちセンサ3を配設した面と同じ面には、自動試験機能を司る自動試験部2bが備えられている。自動試験機能とは、「火災報知設備に係る機能が適正に維持されていることを、自動的に確認することができる装置による火災報知設備に係る試験機能」である(中継器に係る技術上の規格を定める省令2条12号)。自動試験部2bには、製品を分解せずに容易に外部から接触できなければならないことが、日本消防検定協会により規定されている。製品状態で、自動試験部2bに外部から金属片を接触させて試験用端子をショートさせることにより、故障と同じ状態を発生させ、適切に故障を認識するかを確認する。
【0021】
〔ケースの組立について〕
煙感知器の組立概要、及び、各部材の相対位置関係について説明する。先ず、図3及び図5に示すごとく、フロントケース1cに形成した警報停止ボタン6用の開口に背面側から警報停止ボタン6を落とし込み、左右方向を軸芯として揺動可能にフロントケース1cに支持する。警報停止ボタン6は、背面方向に立設形成されたヒモ掛け部6aを備えており、警報停止引きヒモ7を掛けることも外すことも可能である。警報停止ボタン6は、自身が押されるか、警報停止引きヒモ7が引かれるかすることによって背面側に揺動し、基板の表面側に配設された不図示の警報音停止用のスイッチを押すことが可能である。
【0022】
次に、基板2を、図3及び図5に示すごとく、センサ3が配設されている面を背面側に向けた状態で、スピーカ5と共にフロントケース1cの所定の位置に嵌め込む。続いて、基板2に覆い被せるように、中間ケース1bをフロントケース1cに嵌め込む。フロントケース1cの内面のうち対角をなす任意の入隅二箇所の内側面には内側に突出した突起(図番なし)が形成されている。中間ケース1bの外側面にも、ケース1cの突起に対応させて外側に突出した突起(図番なし)が形成されている。中間ケース1bの立ち上がり部分の先端面がフロントケース1cの背面に接触するまで、中間ケース1bを無理に押し込むと、両突起が互いを乗り越えて係合する。これにより、中間ケース1bはフロントケース1cに対して固定され、フロントケース1cと一体となる。中間ケース1bには、図3に示すごとく、センサ3と略同径の開口が形成されており、中間ケース1bがセンサ3と干渉することはない。中間ケース1bの配設後は、図4に示すごとく、センサ3が中間ケース1bよりも背面側に突出した状態となるが、センサ3と中間ケース1bの開口との間に隙間はない。フロントケース1cと中間ケース1bとの間の空間が、本発明に係る「基板配設空間SA」となる。即ち、基板2及びスピーカ5は基板配設空間SAに配設されている。
【0023】
次に、中間ケース1bとセンサ3とに覆い被せるように、図5に示すごとく、フロントケース1cの立ち上がり部分と中間ケース1bの立ち上がり部分との間に、リアケース1aの立ち上がり部分を嵌め込む。リアケース1aと中間ケース1bとの間の空間が、本発明に係る「煙誘導空間SB」である。即ち、センサ3は、中間ケース1bによって基板配設空間SAと分断された煙誘導空間SBに配設されている。煙流入口11は煙誘導空間SBに大きく開放されており、煙は円滑に煙誘導空間SBに流入可能である。
【0024】
図3に示すごとく、フロントケース1c、中間ケース1b、及び、リアケース1aには、正面視で同位置に「固定具」としてのビスを挿通するためのボス部1dが立設形成されている。フロントケース1cに中間ケース1bを嵌め込むと、中間ケース1bのボス部1dがフロントケース1cのボス部1dに覆い被さる。さらにリアケース1aを嵌め込むと、リアケース1aのボス部1dの先端部と中間ケース1bのボス部1dの先端部とが突き合わされる。このようにして、フロントケース1cのボス部1d、中間ケース1bのボス部1d、及び、リアケース1aのボス部1dが一体となって、フロントケース1cからリアケース1aに亘るボス部1dを構成される。リアケース1aの背面側からボス部1dにビスを締め込むと、リアケース1aがフロントケース1cに固定されると共に、中間ケース1bもケース1内に完全に固定され、ケース1が組み上がる。
【0025】
以上により、図1に示すごとく、正面視において正方形状であり、かつ、側面視において四角形状であるケース1が完成する。上述したように、基板2をフロントケース1cに配設し、センサ3をリアケース1aの側に寄せて設けることにより、煙感知器の前後方向の厚さを薄くし、薄型の煙感知器とすることができる。
【0026】
〔ケースの内部構造・煙誘導リブについて〕
ケース1の内部構造について説明する。図2に示すごとく、ケース1の内部には、煙流入口11から流入した煙をセンサ3の煙導入口3cまで誘導する「煙誘導部」としての煙誘導リブ12,31を形成してある。ケース1の内部に360°どの方向から煙が流入してもセンサ3が煙を感知が可能なように、煙導入口3cはセンサ3の側周面に略均等に設けてある。しかし、ケース1の内部空間にはセンサ3以外に、ボス部1d、後述する電池収容部15や外部出力機構収容部14等も存在し、煙の流通が円滑に行われない虞がある。煙誘導リブ12,31は、煙が360°どの方向からセンサ3内部に流入しても、煙がボス部1d等を回避しつつも煙導入口3cまで円滑に到達できるよう誘導するものである。煙誘導リブ12,31は、前後方向に中間ケース1bとリアケース1aとに亘るよう設けてある。煙誘導リブ12,31は、煙誘導空間SBを、煙が流通する空間と電池収容部15等とに仕切る役割も成している。
【0027】
煙誘導リブ12,31は、図5に示すごとく、中間ケース1bの背面側に背面側に向けて立設形成したもの31と、リアケース1aの正面側に正面側に向けて立設形成したもの12とがある。このように、煙誘導リブ12,31を中間ケース1bとリアケース1aとに分散させることにより、射出成形が複雑になるのを防止している。煙誘導リブ12,31が形成されていない側の部材において、煙誘導リブ12,31の先端部が当接する箇所を、その先端部の形状に合せて凹入してある。即ち、インロー構造としてある。煙誘導リブ12,31がこの凹部32,13に嵌り込むことにより、単に煙誘導リブ12,31を突き付けた場合と比べて隙間が生じ難いと共に、片持ち構造である煙誘導リブ12,31の自由端(先端部)が保持され、煙誘導リブ12,31が位置決めされて安定する。
【0028】
本実施形態のように、壁面に煙感知器を設置した場合、煙流入口11が上方を向くため、上方から埃等の異物がケース1内に侵入する虞がある。この異物が、煙導入口3cからラビリンス構造の壁部の間をすり抜けてセンサ3内部に侵入すると、発光部3aの光がその異物によって散乱され、誤報が発令される虞がある。ただし、異物が大きい場合は防虫網3dに引っ掛かってセンサ3の内部に侵入することはない。
【0029】
そこで、図2に示すごとく、煙導入口3cのうち上方に向けて開口する煙導入口3cの上方に、ボス部1dや煙誘導リブや外部出力機構収容部14を適切に配置してある。仮に、上方からケース1内に埃等が侵入しても、これらの部材の上面に堆積する確率が高く、煙導入口3cには到達しにくい。特に、最も上側に位置する煙導入口3cに関しては、上方に対する開口率が高いため、埃等の侵入の危険性が高い。そこで、最も上側に位置する隣合う煙導入口3cの上方に位置する煙誘導リブについては、隣合う煙導入口3cの間においてセンサ3の側周面に沿う水平部12aと、水平部12aから斜め上方に延出する傾斜部12bと、を備えている。この結果、ケース部内に流入した煙を煙導入口3cに円滑に誘導しながらも、煙誘導リブの水平投影面積が大きくなり、センサ部内への埃等の侵入を防止する確実性が高まる。
【0030】
リアケース1aには、図8に示すごとく、外部に煙感知情報を出力する外部出力機構を収容する外部出力機構収容部14と、煙感知器の駆動電源としての電池を収容する電池収容部15と、が形成されている。外部出力機構収容部14と電池収容部15とは、リアケース1aを正面側に凹入した有底の凹部である。図2に示すごとく、外部出力機構収容部14の側壁の一部と電池収容部15の側壁の一部とは、本発明に係る「煙誘導部」としても機能している。外部出力機構収容部14の先端部は、図6に示すごとく、中間ケース1bに当接しており、上述したインロー構造としてある。電池収容部15は、電池を収容するため、前後方向に深さを必要とし、中間ケース1bとリアケース1aとの前後方向の高さでは収まりきらない。よって、図2に示すごとく、中間ケース1bに電池収容部15の外形に合せた開口を設け、その開口に電池収容部15が嵌り込む構造としてある。
【0031】
上述したように、中間ケース1bをフロントケース1cに嵌め込めば、センサ3は位置決めされる。よって、この状態で煙流入性能の調整が可能である。そこで、図4に示すごとく、中間ケース1bのうち煙調整部2aに対向する箇所に「開口部」としての煙調整孔33を形成してある。これにより、製品製造途中において煙調整が可能である。煙調整孔33は、基板配設空間SAと煙誘導空間SBとを連通するものであるが、煙調整孔33が煙誘導リブに囲まれる隔離領域SPに対して開口するよう構成してある。本実施形態においては、図2及び図6に示すごとく、煙誘導部を兼ねる外部出力機構収容部14の底部分が煙調整孔33を閉塞するよう構成してある。これにより、煙流入性能の調整を行った後、リアケース1aを組み上げるだけで、煙調整孔33は閉塞される。この結果、煙流入口11から煙誘導空間SBに水滴や虫等の異物が侵入したとしても、煙調整孔33に到達できず、基板2に接触することはない。よって、基板2の故障を防止できる。
【0032】
同様に、異物の接触を嫌う電源コネクタ2cに関しても、図2に示すごとく、外部出力機構収容部14とは異なる隔離領域SPに配置し、異物の接触を防止してある。よって、基板2の故障を防止できる。
【0033】
上述したように、自動試験部2bについては、製品を分解せずに容易に外部から接触できなければならない。よって、中間ケース1bのうち自動試験部2bに対向する箇所に自動試験孔34を形成し、さらにその前後方向の延長線上のリアケース1aにも自動試験孔17を形成してある。これにより、製品組立後の自動試験機能の確認が可能である。自動試験孔34は、基板配設空間SAと煙誘導空間SBとを連通するものであるが、図7に示すごとく、中間ケース1bの自動試験孔34の外周を基板2に当接するように立ち上げ、煙誘導空間SBに露出する基板2の範囲を最小限に抑えている。
【0034】
〔ベースについて〕
ベース4は、図8に示すごとく、ケース1に先行して壁面に固定するものである。ベース4は樹脂製であり、射出成形により製作してある。図9に示すごとく、ベース4は円形状であり、リアケース1aの正方形状に内接する大きさである。即ち、ベース4に対してケース1を最大限小さくすることにより、コンパクトなケース1にしているとも言えるし、また、ケース1に対してベース4を最大限大きくすることにより、ケース1を安定して支持できる構成であるとも言える。ベース4の外周部の四箇所には径外方向に突出す突起部41を形成してある。突起部41には、図8に示すごとく、固定具、例えば、石膏ボードピンPを挿通可能な孔が形成してあり、四箇所の突起部41を介して石膏ボードの壁面にベース4を取り付けることができる。なお、ベース4には、ビス穴44も形成してあり、ビス等によっても取り付けることも可能である。
【0035】
〔ベースへのケースの取り付けについて〕
ケース1をベース4に取り付ける要領について説明する。図8に示すごとく、リアケース1aの中心部に背面側に突出する被案内部16を一体形成し、ベース4の中心部に背面側に凹入する案内部42を一体形成してある。被案内部16は、正面視円形状であり、外周部の二箇所を径外方向に突起させてある。案内部42は被案内部16の形状に沿う形状に形成してあり、案内部42を嵌り込める形状としてある。ケース1をベース4に取り付ける際は、ベース4の円形部分がケース1の背後に隠れてしまうが、突起部41のみが視認できるようになっており、複数の突起部41からベースの中心が判断できる。さらに、被案内部16が案内部42に嵌り込む構成であるため、ケース1とベース4との芯合わせが容易である。被案内部16が案内部42に嵌り込めば、両者は位置決めされる。その後は、案内部42の案内に従ってケース1を回転させると、リアケース1aの背面側外周部分に設けた係合フック18が、ベース4の正面側外周部分に設けた係合フック43に係合し、ケース1をベース4に取り付けることができる。ケース1をベース4に取り付けると、図5に示すごとく、側面視において、ベース4のうち一部がリアケース1aから背面側、即ち壁面の側に突出する。
【0036】
このようにして、煙感知器を壁面に設置する。なお、ケース1が正面視で正方形状であるため、ケース1の外周四辺が、設置空間の天井面及び床面に対して平行または垂直となる。よって、円形状とする場合と比べて設置空間に馴染み易い。
【0037】
〔煙感知器への煙の流入について〕
煙感知器への煙の流入について説明する。説明の便宜上、煙の流れが水平方向である場合について説明する。上述したように、ケース1をベース4に取り付けると、側面視においてベース4の一部がリアケース1aから突出する。即ち、図10に示すごとく、煙感知器を壁面Wに設置したときには、ケース1が壁面Wから少し浮いた状態となる。このため、壁面Wによる摩擦損失によって気流速度が落ちた壁面沿いの煙は、リアケース1aと壁面Wとの隙間のスペースに流れ込み、気流速度が落ちていない壁面Wから離れた煙はそのまま煙流入口11に流入する。また、ベース4が円形状であるため、壁面沿いの煙はベース4の側面に沿って気流方向下流側へ円滑に案内される。ベース4の側面に多少の煙がぶつかって気流の乱れが生じるが、ベース4が正面視においてケース1よりも小さく、ベース4の側面と煙流入口11とが離れているため、煙流入口11から流入する煙に対する影響は少ない。よって、上述したように薄型の煙感知器とすることにより、煙流入口11が従来よりも壁面に近くなっても、煙感知器の応答性が損なわれることはない。
【0038】
〔別実施形態〕
(1)上述の実施形態においては、ケース部1の形状を正方形状としたが、この形状に限定されるものではなく、非円形状であれば良い。ケース部1は、例えば、三角形状等の他の多角形状や、楕円形状などの非線形形状であっても良い。なお、正方形状を含む多角形状である場合、正面視の角を面取りしてあっても良い。
(2)上述の実施形態においては、基板2は、フロントケース1cと中間ケース1bとの間に配設したが、これに限られず、リアケース1aと中間ケース1bとの間に配設してあっても良い。この場合は、リアケース1aの側から組み上げる構成とする。
【産業上の利用可能性】
【0039】
本発明は、壁面に設置する煙感知器に限らず、天井面に設置する煙感知器にも適用可能である。
【符号の説明】
【0040】
1 ケース(ケース部)
3 センサ(センサ部)
4 ベース(取付下地部)
W 壁面(設置面)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
側周面からの煙の流入を許容すると共に、正面視において非円形状のケース部と、
前記ケース部に収容され、流入した煙を感知可能なセンサ部と、
正面視において前記ケース部の外形よりも小さい円形状であると共に設置面に固定可能であり、前記ケース部を取り付け可能な取付下地部と、を備え、
前記取付下地部に前記ケース部を取り付けたとき、側面視において、前記取付下地部のうち少なくとも一部が前記ケース部から突出するよう構成してある煙感知器。
【請求項1】
側周面からの煙の流入を許容すると共に、正面視において非円形状のケース部と、
前記ケース部に収容され、流入した煙を感知可能なセンサ部と、
正面視において前記ケース部の外形よりも小さい円形状であると共に設置面に固定可能であり、前記ケース部を取り付け可能な取付下地部と、を備え、
前記取付下地部に前記ケース部を取り付けたとき、側面視において、前記取付下地部のうち少なくとも一部が前記ケース部から突出するよう構成してある煙感知器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−186642(P2011−186642A)
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−49580(P2010−49580)
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000190301)新コスモス電機株式会社 (112)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月22日(2011.9.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年3月5日(2010.3.5)
【出願人】(000190301)新コスモス電機株式会社 (112)
【Fターム(参考)】
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