説明

煤中の剥離クレイ複合体及びその製造

本発明は、炭化マトリックス中の柱様の剥離クレイの複合体に関する。クレイの実質的に完全な剥離は、先ずこれを、粘稠な高誘電性の有機マトリックス中に分散させて先駆複合体を形成することによって容易に達成でき、次いで炭化させて、炭化マトリックス中に柱様の剥離クレイの複合体を形成することができる。この複合体は、例えばポリマーの機械的、熱的及びバリヤー性の特性を改善するための充填材として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景技術
補強充填材、例えばカーボンブラック、ガラス繊維、クレイ、炭酸カルシウム、珪酸カルシウム、シリカ、アルミナ及びゼオライトなどは、ポリマーの機械的、熱的及びバリヤー性の特性を改善し、配合コストを低下させるために広く使用されている。補強材はポリマーの硬度及びモジュラス、耐摩耗性及び耐引裂性並びに耐疲労性及び耐老化性を向上させる。更に充填材は、ポリマーのその他の特性、例えば難燃性はもとより、UV、湿気及び熱安定性などを向上させる機能的な属性を付与することが可能である。
【0002】
カーボンブラックはエラストマー中の充填材として独特の有用性が見出されている。例えばカーボンブラックは引張強度及びタイヤの耐引裂性を向上させることが知られている。カーボンブラックはその製造の容易さ及びその有機ポリマーとの混和性の故に望ましい。ほとんどのカーボンブラックは、天然ガス又は石油の不完全燃焼により製造され、黒鉛板を含む球状粒子をもたらす。その粒子は、それ自体で連接して、「構造ブラック」(“structured blacks”)と称される「ネックレイス」様の粒子の集合体を形成し、それは球状充填材よりも大きな表面積及び大きな異方性―それがより大きなエラストマーのモジュラス及び剛性をもたらす―を有する。一方、大表面積のカーボンブラックは、分散し難く;その上、適切な分散がなされても、エラストマーの靭性低下などの逆効果について言及されている(非特許文献1を参照されたい)。
【0003】
高アスペクト比の多重板状クレイ(multilamellar clay)は、典型的にはカーボンブラックの硬度の少なくとも2〜3倍を有しており、補強充填材としても知られている。クレイ類は離層されて(delaminated)、ポリマーマトリックス中に分散されたとき、ポリマーの機械的特性、例えばモジュラス及び降伏強さを向上させることができる。しかしながら、カーボンブラックとは異なり、典型的な親水性のクレイは、典型的に疎水性の有機ポリマーと本質的には混和しない。従って、効果的な離層及び分散には、クレイが相溶化剤、通常はシランカップリング剤もしくは酸カップリング剤又は第四級アンモニウム塩で予備処理されることが求められる。(非特許文献2を参照されたい)。特許文献1及び2に記載されているように、シラン予備処理はクレイの層を膨潤させ、ある程度まで分離して、それによって、積層(又は堆積)(stacking)を減らしてクレイのエラストマー中への分散を促進する。それにも拘わらず、効果的なクレイの剥離につれてエラストマーの機械的特性は改善されるが、この改善は、相溶化によりもたらされる望ましくない可塑化によって相殺される。
【0004】
【非特許文献1】“Carbon Black”、J.B.Donnet,R.P.Bansal及びM.J.Wang編、Marcel Dekker Inc.刊、1993年
【非特許文献2】“Polymer Science”、2001年中の、“Polymer−Clay Nanocomposites”、T.J.Pinnavaia、G.W.Beal、Wiley Series編
【0005】
【特許文献1】米国特許第4,889,885号明細書
【特許文献2】米国特許第4,810,734号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
エラストマー、特にタイヤ産業にとっての理想的な充填材は、機械的特性を改善し、同時にその他の利益、例えば低い回転抵抗(rolling resistance)、より低い耐摩耗性及びより高い耐候性を提供するものである。従来のカーボンブラックは、これらの特性を向上させる低コストの手段を提供するが、それらは非再生性の(non-renewable)原材料を必要とする。従って、製造するのに廉価で、且つ使用が容易である再生可能な資源から有利に誘導できる、特性向上性の充填材材料を見出すことが求められる。
【課題を解決するための手段】
【0007】
従って、本発明は、第一の側面において、炭化マトリックス中で柱様の(pillared)、少なくとも1種の剥離(又は表層剥離)クレイ(exfoliated clay)を含む複合体において、その剥離クレイが、X線回折により、100小板(platelet)以下の数平均小板積層(platelet stacking of not greater than 100 platelets)を示す複合体を提供することによってニーズに応えるものである。
【0008】
第二の側面において、本発明は、a)多重板状(multilamellar)クレイを、炭化性有機材料を含むマトリックス中に分散剥離させて先駆複合体を形成し(ここでマトリックスは分散剥離クレイの崩壊を防止するのに十分な粘度を有する);そしてb)炭化マトリックス中で、剥離クレイ(exfoliated clay)の柱様の分散体(pillared dispersion)を形成するような条件下で先駆複合体を加熱する工程を含んでなる複合体の形成方法に関する。
【発明の効果】
【0009】
本発明は、再生可能なエネルギー資源から誘導できる材料を用いて、ポリマーの機械的特性を改善する安価な方法を提供する。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
本発明の組成物は、剪断力の存在下に、少なくとも1種のクレイを、先ずマトリックス中に分散剥離して、複合先駆体を作ることにより製造できる。クレイは、例えば1種又はそれ以上のバーミキュライト類、マイカ類並びにスメクタイト類、例えばヘクトライト類、サポナイト類及びモンモリロナイト類などとして天然に存在し、また合成物、例えば1種又はそれ以上のハイドロタルサイト類、合成ヘクトライト類及びフルオロヘクトライト類として存在する。購入可能な適当なクレイの例には、“Laponite(登録商標)”含水珪酸マグネシウムクレイ(Rockwood Additives Ltd.Corp.の登録商標)、及び“Cloisite(登録商標)”ナトリウムモンモリロナイトクレイ(Southern Clay Products,Inc.の登録商標)が含まれる。クレイは、例えば有機第四級アンモニウム塩で変性することができ、変性しないこともできるが;無変性のクレイを用いることが好ましい。
【0011】
クレイは、高アスペクト比クレイ、低アスペクト比クレイ又はそれらの組合せであることができる。本明細書で用いる「アスペクト比」なる用語は、単一のクレイ小板のxy平面における最大の寸法:z方向における多重層板の厚さの比率を指す。本明細書で用いる「低アスペクト比クレイ」なる用語は、約10:1〜約50:1の範囲のアスペクト比を有するクレイを指す。本明細書で用いる「高アスペクト比クレイ」なる用語は、約100:1〜約1000:1の範囲のアスペクト比を有するクレイを指す。
【0012】
更に、本明細書で用いる「クレイ」なる用語は、別段の記載がない限り、1種又はそれ以上のタイプのクレイを意味する。例えば、柱様の剥離クレイは、柱様の剥離低アスペクト比クレイの1種もしくはそれ以上と、柱様の、剥離高アスペクト比クレイの1種もしくはそれ以上との組合せであることができ、又は酸でエッチングできる1種もしくはそれ以上のクレイと、酸エッチングに耐性のある1種もしくはそれ以上のクレイとの組合せなどであることができる。
【0013】
マトリックスは、好ましくはゲル化剤、又は炭化性ポリマーである。ゲル化剤は炭化性有機材料又は炭化マトリックス(煤)(soot)を形成することが可能な有機材料であるか、又はこれを含むものであり、好ましくは少なくとも約5、より好ましくは少なくとも約10、最も好ましくは少なくとも20の誘電率を有し、且つ剥離クレイの崩壊を防止するのに十分な粘度を有することを特徴とし;好ましくは、ゲル化剤は、少なくとも100cps、より好ましくは少なくとも1000cps、最も好ましくは少なくとも5000cpsの固有粘度(intrinsic viscosity)を有している。適当なゲル化剤には、低蒸気圧の親水性有機溶媒、例えばポリエーテルポリオールを含むポリオール;ポリアルキレンオキシド、例えばポリエチレンオキシド、ポリプロピレンオキシド、ポリブチレンオキシド、及びそれらの配合物とコポリマー;並びに、液体キャリヤー中に溶解された1種又はそれ以上の固体の溶液、例えば澱粉、ゼラチン、糖類、シクロデキストリン並びに、セルロースエーテル類、例えばメチルセルロース、エチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース及びそれらの組合せを含む、生物学的に再生可能な(biorenewable)材料の水溶液が含まれる。生物学的に再生可能な材料の水溶液が好ましい。
【0014】
有機成分であるゲル化剤中のクレイの濃度は、適用依存であるが、好ましくは、クレイ及びゲル化剤の重量に基づいて、約2重量%以上、より好ましくは約5重量%以上、より好ましくは約10重量%以上で;約50重量%以下、より好ましくは40重量%以下である。
【0015】
本発明方法の第一の工程においては、その他の薬剤(reagent)を使用してもよい。そのような薬剤の例には、有機変性クレイを製造するためのクレイ変性剤、例えばシランカップリング剤又は第四級アンモニウム塩が含まれる。その他の薬剤には、ポリ燐酸ナトリウムなどの難燃剤、及び酸化チタンなどの無機顔料が含まれる。しかしながら本発明の方法は、そのような薬剤及び変性剤の非存在下で実施することができ、また好ましく実施される。
【0016】
上記示唆のとおり、そのアスペクト比が異なる組合せクレイをゲル化剤中に分散することも可能であり、ある場合には望ましい。従って、少なくとも1種の低アスペクト比クレイ、例えばサポナイト類又はヘクトライト類は、少なくとも1種の高アスペクト比クレイ、例えばモンモリロナイト類、フルオロマイカ類、フルオロヘクトライト類又はマガディアイト類と共に、ゲル化剤中に分散することができる。ゲル化剤中で剥離する低アスペクト比クレイは剥離状態のままで留まりやすく、一方、高アスペクト比クレイは、少なくとも部分的には崩壊しやすいが;組合されたときには、低アスペクト比クレイがスペーサーとして作用して、高アスペクト比クレイの崩壊を防ぐので、この組合せは有利である。他方、低アスペクト比(クレイ)は、それ自体では、高アスペクト比クレイと同じようには良好な補強を提供しない。従って、少なくとも1種の低アスペクト比クレイと、少なくとも1種の高アスペクト比クレイとの組合せが、最適な機械的特性を提供する。高アスペクト比クレイ:低アスペクト比クレイの重量対重量の割合は、好ましくは約1:1から、より好ましくは約1:2から、特に好ましくは約1:3から、約1:100まで、より好ましくは約1:50まで、特に好ましくは約1:10までの範囲である。
【0017】
高度に多孔質の炭化複合体は、酸でエッチングできるクレイをマトリックス中に分散し、炭化して複合体を形成し、次いでその複合体を磨砕して、ミクロンサイズ又はミクロン以下のサイズの、柱様の分散体を形成することによって製造することができる。酸でエッチングできるクレイの例には、サポナイト類、ヘクトライト類、フルオロマイカ類及びフルオロヘクトライト類が含まれる。磨砕された分散体は、次いで、クレイ用の溶媒と接触させて、クレイの少なくとも一部分を溶解して抽出し、それによってそのクレイが存在していた所に空隙(孔)を残す。適当な溶媒には、酸、例えばHF、HCl、HBr、HI、H3PO4、HNO3、H2SO4及びそれらの組合せが含まれる。
【0018】
酸エッチングに対する対応を異にする組合せクレイをマトリックス中に分散させることも可能であり、ある場合には望ましい。例えば、上記の酸でエッチングできるクレイのいずれかが、酸エッチングに耐性のあるクレイ、例えばモンモリロナイト類及びマガディアイト類などと共に、マトリックス中に分散されることができる。高度に多孔質の小板で補強された複合体は、酸でエッチングできる少なくとも1種のクレイと、酸エッチングに耐性のある少なくとも1種のクレイとをマトリックス中に分散することにより製造することができ;次いで炭化及び磨砕工程の後、酸でエッチングできるクレイ小板(clay platelet)の少なくとも幾らか、好ましくは実質的にその全てを除去し、一方、その複合体中の酸エッチングに耐性のあるクレイ小板の少なくとも幾らか、好ましくは実質的にその全てをマトリックス中に残すことができる。強化された大表面積の複合体を作るこの方法では、酸でエッチングできるクレイのみがマトリックス中に分散される方法に比較して、孔密度及び補強性を遥かに大きく調節することが可能になる。エッチングされるクレイ及びエッチングされないクレイの両方を用いるとき、エッチングされるクレイ:エッチングされないクレイの重量割合は、好ましくは約10:1〜約1:10の範囲である。
【0019】
クレイは、好ましくはゲル化剤中に高剪断力で、例えば旋回(spinning)、攪拌又は押出などにより分散されるが、旋回及び押出によることが好ましい。剪断速度は、使用する剪断様式のタイプによって変わる。例えば旋回を用いるときは、好ましい旋回速度(カッコ内は剪断速度)は、好ましくは1200rpm(20s-1)以上、より好ましくは2400rpm(40s-1)以上で、好ましくは12000rpm(200s-1)以下、より好ましくは6000rpm(100s-1)以下である。押出を用いるとき、剪断速度は、好ましくは200s-1以上、より好ましくは500s-1以上で、好ましくは1500s-1以下、より好ましくは1000s-1以下である。
【0020】
先駆複合体中のゲル化剤はクレイを「柱様の」、即ちその薬剤が、クレイの小板を分離すること及びその崩壊物が元の多重板状構造になることを防止することの両方を行う。この段階で、先駆複合体中のクレイの数平均血小板積層は、X線回折(XRD)により測定して、積層体(stack)当たり100層以下、好ましくは50層以下、より好ましくは20層以下、特に好ましくは10層以下にまで減らされている。このことは、低アスペクト比クレイについては、殊にそのとおりであり;高アスペクト比クレイは、低アスペクト比クレイよりも剥離することがより難しい傾向にある。
【0021】
第二の工程において、先駆複合体は、剥離クレイが炭化マトリックス中に柱様の分散体を形成し、好ましくは、その先駆複合体の有機成分を完全には黒鉛に転換しないするような条件下で加熱する。先駆複合体は、好ましくは少なくとも200℃まで、より好ましくは少なくとも300℃までの温度で、且つ好ましくは700℃以下まで、より好ましくは600℃以下までの温度に、所望の炭化度合を達成するのに十分な時間、好ましくは約1〜約120分の範囲で加熱する。本明細書で用いる「炭化マトリックス」なる用語は、ゲル化剤の有機部分の重量の喪失(炭化)によりもたらされる残留物(煤)を指す。重量喪失の度合は、ゲル化剤の有機成分の、好ましくは少なくとも約30重量%、より好ましくは少なくとも約40重量%、最も好ましくは少なくとも約50重量%であり;そして好ましくは約90重量%未満、より好ましくは約80重量%未満である。
【0022】
煤(soot)への転換は、噴霧熱分解及び塊状熱分解を含むいずれか適当な方法により達成され、搬送ガス、例えば空気、アルゴン又は窒素などの存在下に有利に実施することができる。熱分解された試料は、今や複合体であるが、好ましくは磨砕されて、炭化マトリックス中におけるミクロン又はミクロン以下のサイズの、剥離クレイが柱様の分散体を形成する。この複合体は、クレイと煤との単なる物理的な混合物ではなく―むしろ、剥離クレイが煤の中に埋設されている、即ち、それは篩掛けによっては炭化マトリックスから分離されえない。炭化マトリックス中の剥離クレイの濃度は、適用依存ではあるが、一般には、クレイ及び炭化マトリックスの重量に基づいて、約5重量%から90重量%まで変化する。意外にも、クレイは煤の中に、補助的な物質、例えば大きな金属多価カチオン(large metal polycations)もしくはポリオキソ金属化合物(polyoxometalates)などなしに、又はクレイを有機的に変性しておくことなしに、剥離状態で埋設されることができる。言い換えれば、その好ましい複合体は、剥離クレイ及び炭化マトリックスから本質的に構成されている。
【0023】
ここで用いるとき、剥離とは、多重層クレイのより少ない積層、好ましくは独立した小板への分離を指す。TEM(透過型電子顕微鏡)により測定されるように、本発明の方法によって高度の分離が容易に達成されうる。数平均小板積層―XRDによるクレイの基礎回折(basal reflection)のピークの極大値の中点での幅から計算されることは、当業者により容易に理解されるが―は、積層物当り100小板以下、好ましくは50小板以下、より好ましくは20小板以下、最も好ましくは10小板以下である。
【0024】
大表面積の炭化マトリックスは、気体−気体、気体−液体又は液体−液体の分離の半透膜として、また耐発火性(ignition resistant)を増進するための添加物として使用されることができる。
【0025】
その分散体、又はクレイの複合体を、単にゲル化剤の炭化のみが起こる温度に加熱することは望ましいことであるかもしれない;換言すれば、ゲル化剤を完全に揮発させて、シリカマトリックス中に分散された剥離クレイを含むセラミックフォームを生成することは可能である。本発明のこの側面において、クレイは、好ましくは煤に転換し、次いでセラミックフォームを形成するために十分な温度に加熱される。好ましくは、その煤は、先ずミクロン又はミクロン以下のサイズの分散体に磨砕され、次いで金型内に置かれて約800℃、より好ましくは約1000℃から、約1500℃までの範囲の温度に加熱される。
【0026】
セラミックフォームを作製する更に別の方法は、水系の細孔剤(poragen)、好ましくはラテックスの中でクレイを剥離し、次いでa)水を除去して、b)その乾燥粉末を金型中で賦形し、そしてc)セラミックフォームを作製するために十分な温度までその材料を焼成することである。適当なラテックスの例にはポリスチレンラテックスがある。
【0027】
本発明の複合体は、種々の材料における、a)モジュラス及び強靭性などの機械的特性;b)湿気、酸素及び酸に対するバリヤー性;c)耐発火性;d)彩色適正及び静電気放散性;e)老化特性;f)耐UV性;を改善するための添加剤として有用である。適当な材料には、熱可塑性(エラストマーを含む)及び熱硬化性などのポリマーが含まれる。その複合体強化材料は、被覆剤、接着剤、発泡体、自動車(タイヤ)及びビル構造体などの様々な用途に使用することができる。
【実施例】
【0028】
以下の実施例は、詳説する目的だけのものであり、本発明の範囲を限定することを意図するものではない。
【0029】
例1−煤中の“Laponite(登録商標)”クレイの複合体
無変性“Laponite(登録商標)”クレイ(2.5g)、水溶性澱粉(10.0g)及び水(35.0g)をカップの中で一緒に配合し、次いで“SpeedMixer DAC 150−FVZ−K”スピナー(spinner)(FlackTek,Inc.より入手可能)中に充填し、3000rpmで15分間旋回してゲルを生成させた。次に、このゲルの試料(26.03g)は、アルミニウム製のパンに移し、窒素中、400℃で20分間加熱して、クレイ−煤複合体(2.86g、煤とクレイの重量に基づいてクレイ66.7重量%)を形成した。図1(a)に図示されるXRD分光分析は、積層物当りの層の数は約2であり、煤中のクレイが、完全に又は完全に近く剥離されていることを示している。図1(b)に図示されているその試料のTEM分析では、クレイの実質的に完全な剥離が確認される。
【0030】
例2−煤中の高充填“Laponite(登録商標)”クレイの複合体
出発原料の割合が、“Laponite(登録商標)”クレイ(7.5g、Continental Clay Co.より入手可能)、水溶性澱粉(12.5g)及び水(30.0g)であったことを除いて、例1に記載された手順に従う。この例におけるゲル(28.60g)は、クレイ−煤複合体(6.18g、煤とクレイの重量に基づいてクレイ69.5重量%)に転換された。図2(a)に図示されるこの複合体のXRD分光分析は、積層物当りの層の数は約4であることを示しており、また図2(b)に図示されているTEMでは、クレイの実質的な剥離が確認される。
【0031】
例3−煤中の“Cloisite(登録商標) Na+”クレイの複合体
クレイが“Cloisite(登録商標) Nac”クレイ(Continental Clay Co.より入手可能)であったことを除いて、例2に記載された手順に従う。この例におけるゲル(23.57g)は、クレイ−煤複合体(4.78g、煤とクレイの重量に基づいてクレイ74.0重量%)に転換された。前記例の場合と同様に、図3(a)に図示されるこの複合体のXRD分光分析は、積層物当りの層の数は約9であることを示しており、また図3(b)に図示されているTEMでは、クレイの実質的な剥離が確認される。
【0032】
例4−2種のタイプのクレイを用いた煤の製造
“Laponite”クレイ(0.5g)、“Cloisite Na+”クレイ(1.0g)及び澱粉(8.5g)を組合せ、減圧下、90℃で24時間乾燥した。その混合物はプラスチックの瓶に充填し、72時間磨り潰し、次いでDI(脱イオン)水(40.0g)と共にカップに移した。その内容物は3000rpmで10分間旋回し、その後ゲルを得た。クレイの一部は、空気中、400℃で45分間炭化した。XRDデータは、“Laponite”クレイの、完全な又は完全に近い剥離と、“Cloisite Na+”クレイに関しての平均積層8層/積層物とを示していた。
【0033】
例5−2種のタイプのクレイを用いた煤の製造
“Laponite”クレイ3.5gを用いたことを除いて、例4からの手順を繰り返した。このケースでは、XRDデータは、“Laponite”クレイの完全な剥離はもとより、“Cloisite Na+”クレイについては平均積層2層/積層物を示した。
【0034】
例6−表面積の増大したクレイ煤の製造
“Cloisite Na+”クレイ(1.0g)、“Laponite(登録商標)”クレイ(3.5g)、玉蜀黍澱粉(19g)及びDI水(40g)を、攪拌用カップの中に入れ、3000rpmで15分間剪断をかけてゲルを生成させた。このゲルは錫製のシート上に広げ、320℃で35分間焼成した。クレイ:煤の比率は約1:1であることが分かった。その試料(the material)は磨砕し、磨り潰して、数平均粒径約5μmの試料を得た。その磨り潰された試料は、同体積の37%HClと混合し、超音波処理しながら60℃に加熱した。試料は懸濁物から遠心分離し、そしてHCl添加、加熱及び超音波処理を更に二度繰り返して、合計三度洗浄した。そのエッチング処理されたクレイ煤材料は遠心分離に掛け、HClをデカンテーションで除き、そしてその試料が酸性でなくなるまで、DI水を添加し遠心分離に掛けた。その試料は90℃で減圧乾燥し、篩掛けにより測定して、平均粒径が100μmより小さくなるまで磨砕した。エッチング処理した試料とエッチング処理していない試料の両方のBET表面積は、粉体工学“Gemini 2360”分析器及び粉体工学“FlowPrep 060”分析器を用いて測定した。約0.5gの試料を、窒素パージしながら“FlowPrep 060”分析器中で、65℃で1.5時間乾燥した。試料を取り出し、“Gemini 2360”分析器中に載置して、そこで表面積を測定した。エッチング処理していない試料についての2回の試験は、平均表面積4.3m2/g(1回目=4.3;2回目=4.2)を示し、一方、エッチング処理した試料についての2回の試験は、平均表面積14.1m2/g(1回目=14.2;2回目=13.9)を示した。
【0035】
例7−クレイフォームの製造
A.2種のタイプのクレイを用いた煤の製造
70:30配合(loading)のクレイ:澱粉は次のように製造した:水(32g)、澱粉(14.4g)、“Cloisite Na+”クレイ(7.8g)、及び“Somasif”フルオロヘクトライト(25.8g、UnicoOP,Tokyo,Japanから入手可能)を、高速ミキサー中で、3000rpmで10分間混ぜ合わせた。混合してからすぐにその試料を錫箔に移し、10tの圧力で加圧してその試料を平らにした。その試料は320℃で1時間焼いて煤を生成させたが、それはその試料の9%を構成することが分かった。その試料は、コーヒー挽きを用いて2分間粉砕した。
【0036】
B.セラミックの製造
HPMC粉末(ヒドロキシプロピルメチルセルロース、0.4g)を沸騰水(10mL、DI)中に溶解し、それに対して、室温(20℃)で、攪拌しながら追加の水(10mL、DI)を加えて均一な溶液を作製した。次いでその溶液を、工程Aで製造したクレイ煤(19.6g)に加え、その配合物は高速ミキサー中で、3000rpmで5分間混合した。その試料は、次にビーカーに移し、減圧炉中に置いて95℃で一晩乾燥した。この乾燥試料は、次いで磨砕し金型を用いて賦形した。その試料は、“Carver”実験室プレス(5000Lb.)を用いて圧縮し成形し、次いで炉で1000℃で焼成して、有機物質を焼却しクレイを焼結させた。その試料についての加熱の概略は:100分で20℃から1000℃に;1000℃で20時間保持;2〜3時間で1000℃から20℃に。その試料の平均孔径は1.06μm;嵩密度は1.64g/mL;見掛密度は2.53g/mL;そして多孔度%は35.1%であることが分かった。
【図面の簡単な説明】
【0037】
【図1a】図1(a)は、本発明のクレイ−煤複合体のX線回折(XRD)スペクトルである。
【図1b】図1(b)は、本発明のクレイ−煤複合体の透過型電子顕微鏡(TEM)写真である。
【図2a】図2(a)は、本発明の別のクレイ−煤複合体のXRDスペクトルである。
【図2b】図2(b)は、本発明の別のクレイ−煤複合体のTEM写真である。
【図3a】図3(a)は、本発明の更に別のクレイ−煤複合体のXRDスペクトルである。
【図3b】図3(b)は、本発明の更に別のクレイ−煤複合体のTEM写真である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
炭化マトリックス中に柱様の、少なくとも1種の剥離クレイを含む複合体において、前記剥離クレイが、X線回折により、100小板以下の数平均小板積層を示す複合体。
【請求項2】
数平均小板積層が10以下である請求項1に記載の複合体。
【請求項3】
クレイが約10:1〜約50:1の範囲のアスペクト比を有する少なくとも1種の低アスペクト比クレイ及び約100:1〜約1000:1の範囲のアスペクト比を有する少なくとも1種の高アスペクト比多重板状クレイを含む請求項1に記載の複合体。
【請求項4】
低アスペクト比クレイが剥離サポナイト類及びヘクトライト類よりなる群から選ばれ;且つ高アスペクト比クレイが剥離モンモリロナイト類、フルオロマイカ類、フルオロヘクトライト類及びマガディアイト類よりなる群から選ばれる請求項3に記載の複合体。
【請求項5】
ポリマー中に分散された請求項1に記載の複合体。
【請求項6】
a)多重板状クレイを、炭化性有機材料を含むマトリックス中に分散剥離させて、先駆複合体を形成し(ここでマトリックスは分散剥離クレイの崩壊を防止するのに十分な粘度を有する);そしてb)炭化マトリックス中で剥離クレイが柱様の分散体を形成するような条件下で、先駆複合体を加熱する工程を含んでなる複合体の形成方法。
【請求項7】
マトリックスが少なくとも5の誘電率を有するゲル化剤である請求項6に記載の方法。
【請求項8】
ゲル化剤が澱粉、シクロデキストリン、ゼラチン、糖類及びセルロースエーテルよりなる群から選ばれる1種又はそれ以上の固体の水溶液である請求項7に記載の方法。
【請求項9】
ゲル化剤が澱粉の水溶液である請求項8に記載の方法。
【請求項10】
マトリックスがポリエーテルポリオール類及びポリアルキレンオキシド類よりなる群から選ばれるポリマーである請求項6に記載の方法。
【請求項11】
工程(b)の後で、前記複合体を磨砕して、炭化マトリックス中に、ミクロン又はミクロン以下のサイズの、剥離クレイを柱様の分散体を形成する工程(c)を更に含む請求項6に記載の方法。
【請求項12】
工程(c)の後で、炭化マトリックスを焼却して多孔質のセラミックフォームを形成するのに十分な温度に、柱様の分散体を加熱する工程を更に含む請求項11に記載の方法。
【請求項13】
工程(b)において、先駆複合体を、少なくとも300℃で且つ600℃以下の温度に加熱する請求項6に記載の方法。
【請求項14】
ゲル化剤の炭化マトリックスの減量が少なくとも約50重量%で且つ約90重量%以下となるような条件下で、先駆複合体を加熱する請求項6に記載の方法。
【請求項15】
工程(c)の後で、クレイ用の溶媒にクレイを溶解し、そして複合体から少なくとも幾らかのクレイを抽出して、多孔質の炭化複合体マトリックスを形成させる工程を更に含む請求項6に記載の方法。
【請求項16】
溶媒が酸性であり、且つクレイが、酸エッチング性の少なくとも1種のクレイ及び耐酸エッチング性の少なくとも1種のクレイを含む請求項15に記載の方法。
【請求項17】
酸エッチング性の少なくとも1種のクレイがサポナイト類、ヘクトライト類、フルオロマイカ類及びフルオロヘクトライト類よりなる群から選ばれ;耐酸エッチング性の少なくとも1種のクレイがモンモリロナイト類及びマガディアイト類よりなる群から選ばれる請求項16に記載の方法。
【請求項18】
ポリマー中に多孔質の炭化マトリックスを分散する工程を含む請求項17に記載の方法。
【請求項19】
クレイが約10:1〜50:1の範囲のアスペクト比を有する少なくとも1種の低アスペクト比クレイ及び約100:1〜1000:1の範囲のアスペクト比を有する少なくとも1種の高アスペクト比多重板状クレイを含む請求項6に記載の方法。
【請求項20】
低アスペクト比多重板状クレイがサポナイト類及びヘクトライト類よりなる群から選ばれ;且つ高アスペクト比の多重板状クレイがモンモリロナイト類、フルオロマイカ類、フルオロヘクトライト類及びマガディアイト類よりなる群から選ばれる請求項19に記載の複合体。

【図1a】
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【図1b】
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【図2a】
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【図2b】
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【図3a】
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【図3b】
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【公表番号】特表2007−508229(P2007−508229A)
【公表日】平成19年4月5日(2007.4.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−534201(P2006−534201)
【出願日】平成16年10月4日(2004.10.4)
【国際出願番号】PCT/US2004/032535
【国際公開番号】WO2005/087854
【国際公開日】平成17年9月22日(2005.9.22)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ インコーポレイティド (1,383)
【Fターム(参考)】