説明

照光式スイッチ構造

【課題】操作し易く、押しボタンの表示発光部が均一に光ることができる照光式スイッチ構造を提供する。
【解決手段】スイッチ収納部45内に設けられるLED60と、LED60の光が透過する表示発光部43を備えて往復動可能に配設される押しボタン41と、拡散材を含む樹脂材料により有底筒状に形成され、スイッチ収納部45内に往復動可能に配置されるスライダ51と、一端部がスライダ51の円筒状開口51a内に収納されると共に、他端部がスイッチ収納部45側のLED60に固定され、スライダ51を押しボタン41の押圧方向と反対方向へ付勢する圧縮コイルばね53と、押しボタン41の往復動に応じてスイッチ回路を開閉するため、スライダ51に取り付けられたスイッチ端子と、を備え、スライダ51は、底部側端51bが押しボタン41の裏面側から表示発光部43に当接させられると共に、開口側端がLED60に対向配置される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照光式スイッチ構造に関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、家電や車載用機器などの各種電子機器では、暗い場所でも押しボタンスイッチの位置が分かるように、キートップを発光素子で照明させる照光式スイッチ構造が多用されている(例えば、特許文献1参照)。
この種の照光式スイッチ構造は、図8に示すように、スイッチングのために往復動可能に設けられた被駆動部123を有し基板110に固定されたスイッチユニット120と、発光部(LED130)と、押し釦140(押しボタン)とを備える。押し釦140は、外端部に設けられて基板110との間に発光部130155を収容する空所155を形成し、発光部130の光を透過させる透光部122(表示発光部)と、押し釦140の一方の側部211aから延びて基板110の嵌合孔111に挿通され基板110に係止する係止爪160と、係止爪160の先端部との間に基板110を挟持する挟持突起170と、押し釦140の他方の側部211aに設けられスイッチユニット120の被駆動部123と結合した結合部180とを備えている。
【0003】
上記照光式スイッチ構造によれば、係止爪と挟持突起とが基板を挟持して支点部を形成するので、薄肉の揺動ヒンジを設ける必要がなく、繰り返し操作を受けても材料の疲労等による損傷を受け難い。従って、繰り返し操作に対する優れた耐久性が得られる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2010−218810号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、上述如き照光式スイッチ構造の場合は、発光部を押し釦の中央に配設しているため、スイッチユニットの被駆動部は押し釦の中央からずれた(変位した)位置になる。その為、斜めに押し釦が押された際には、押し釦を押せない可能性がある。
また、LEDからの光を押し釦に直接当てているため、照射軸付近に光量が集中するLEDの特性により、押し釦の透光部にムラが出易いという問題がある。
【0006】
本発明は上記状況に鑑みてなされたもので、その目的は、操作し易く、押しボタンの表示発光部が均一に光ることができる照光式スイッチ構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る上記目的は、下記構成により達成される。
(1)ハウジングのスイッチ収納部内に設けられる発光部と、前記発光部の光が透過する表示発光部を備えて往復動可能に配設される押しボタンと、拡散材を含む樹脂材料により有底筒状に形成され、前記スイッチ収納部内に往復動可能に配置される導光部材と、一端部が前記導光部材の筒状開口内に収納されると共に、他端部が前記スイッチ収納部側に固定され、前記導光部材を前記押しボタンの押圧方向と反対方向へ付勢する圧縮コイルばねと、前記押しボタンの往復動に応じてスイッチ回路を開閉するため、前記導光部材に取り付けられたスイッチ端子と、を備え、前記導光部材は、底部側端が前記押しボタンの裏面側から前記表示発光部に当接させられると共に、開口側端が前記発光部に対向配置されることを特徴とする照光式スイッチ構造。
【0008】
上記(1)の構成の照光式スイッチ構造によれば、発光部の光は、対向配置された開口側端から導光部材に入射される。該導光部材は拡散材を含む樹脂材料により形成されているので、入射された光は散乱した光となって底部側端から出射される。そこで、表示発光部には散乱した光が入射し、表示発光部を均一に発光させることができる。
また、往復動する導光部材に取り付けられたスイッチ端子により、押しボタンの往復動に応じたスイッチ回路の開閉を行うので、従来のように押し釦の中央からずれた位置にスイッチユニットの被駆動部を設ける必要がなく、押しボタンはスムースに往復動することができる。
【0009】
(2)上記(1)の構成の照光式スイッチ構造であって、前記発光部が半導体発光素子であることを特徴とする照光式スイッチ構造。
上記(2)の構成の照光式スイッチ構造によれば、発光部としてLED等の出射軸付近に光量が集中する半導体発光素子を用いることにより、対向配置された導光部材の開口側端に光を効率よく入射することができる。そこで、発光部が出射する光の利用効率が高まり、その分発光部を小型化することもできる。
【0010】
(3)上記(2)の構成の照光式スイッチ構造であって、前記圧縮コイルばねの一端部が、前記発光部に支持固定されることを特徴とする照光式スイッチ構造。
上記(3)の構成の照光式スイッチ構造によれば、スイッチ収納部内に固定された発光部としての半導体発光素子を介して圧縮コイルばねの他端部を支持固定することにより、バネ支持部材を省略して部品点数を削減できる。即ち、半導体発光素子は、比較的強度が高い封止樹脂により覆われているので、圧縮コイルばねの他端部を直接支持することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明に係る照光式スイッチ構造によれば、操作し易く、押しボタンの表示発光部が均一に光ることができる照光式スイッチ構造を提供できる。
【0012】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための形態(以下、「実施形態」という。)を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明の一実施形態に係る照光式スイッチ構造を備えたルームランプユニットの室内側斜視図である。
【図2】図1に示したルームランプユニットの室外側斜視図である。
【図3】図2に示したルームランプユニットの平面図である。
【図4】図3におけるA−A断面矢視図である。
【図5】図4に示したスイッチ部材の分解斜視図である。
【図6】図1に示した押しボタンの全体斜視図である。
【図7】本発明の一実施形態に係る照光式スイッチ構造の変形例を示す要部拡大断面図である。
【図8】従来の照光式スイッチ構造示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、添付図面に基づいて本発明の一実施形態に係る照光式スイッチ構造を備えたルームランプユニットを詳細に説明する。
図1及び図2に示したように、本実施形態に係るルームランプユニット1は、図示しないルーフトリムの室内側に配置される意匠部2と、ルーフトリムの室外側に配置され、ランプ取付穴を通して意匠部2に結合することによってルーフトリムを挟持した状態で組み付けられる機能部3とを備える。なお、本明細書では、車体取付時の方向に従って上下方向を規定する。
【0015】
意匠部2は、図1に示すように、ベースハウジング21と、このベースハウジング21の下面側に装着された透明又は半透明のカバーレンズ22と、を備えている。ベースハウジング21は、車両の室内側に露呈する矩形状の枠板部23と、枠板部23の上面周縁に沿って形成され且つ上方へ立ち上がる突出部24とを備える。
【0016】
枠板部23の一部には、ボタン収納部25が形成されている(図4参照)。このボタン収納部25は、枠板部23に対して上下方向に往復動可能な押しボタン41を収納しており、後述する機能部3のスライダ収納部35と供にスイッチ収納部45を構成している。このスイッチ収納部45にはスイッチ部材44が収納されており、押しボタン41によってこのスイッチ部材44が往復動させられる。
【0017】
ベースハウジング21の突出部24は、図2に示すように、枠板部23の上面側をほぼ取り囲むように突出する壁部である。この突出部24の一対の対向する両側壁(本実施形態では枠板部23の長手方向と直交する方向の両側壁)には、側方に向けて二対の係止爪26が形成されている。これら係止爪26は、後述するハウジング31の両側に設けた係止板38を係止する。
【0018】
機能部3は、図2及び図3に示すように、合成樹脂で一体成形されたハウジング31を備えている。ハウジング31は、光源42を収納する光源収納部33と、一対のスライダ収納部35と、金属板製(導電材料製)のバスバー4とを備えている。
ハウジング31の両側には、係止板38がそれぞれ二対設けられている。係止板38は、略コ字形状の板であり、上記意匠部2の係止爪26と対応する位置に配置されている。意匠部2と機能部3とを組み付けた際には、これら係止板38が係止爪26に係止される。
【0019】
図4に示すように、意匠部2のボタン収納部25と機能部3のスライダ収納部35とによって構成されたスイッチ収納部45には、本実施形態に係る照光式スイッチ構造を構成するLED(発光部)60と、LED60の光が通過する表示発光部43を備えた押しボタン41と、スイッチ部材44が収納されている。
【0020】
LED60は、砲弾状の封止樹脂により覆われた半導体発光素子であり、出射軸付近に光量が集中した光を発する。LED60は、ハウジング31に配設されたバスバー4に固定されており、出射軸が後述するスライダ51の円筒状開口51aの中心軸と一致するように配置される。
【0021】
押しボタン41は、図6に示すように、透明なポリカーボネイト樹脂により一体成形されており、矩形上の被操作面41aと、該被操作面41aの三辺から垂設された三つのガイド壁41bとから成る。そして、被操作面41aの表面に塗装を施した後、レーザーにより所望のシンボルマーク状に塗装を焼きはがすことで、表示発光部43を形成している。
押しボタン41の長手方向両端のガイド壁41bには、上下に延びる長孔47が形成されており、ボタン収納部25の対応部に突設された係止突起27が係合することで、押しボタン41がボタン収納部25から脱落するのを防止すると供に、押しボタン41の往復動ストロークを規定している(図4参照)。
【0022】
スイッチ部材44は、図5に示すように、有底筒状(本実施形態では、略四角柱状の外形に円筒形の孔を有する)に形成され、スライダ収納部35内に往復動可能に配置されるスライダ(導光部材)51と、一端部(図中、下端部)がスライダ51の円筒状開口(筒状開口)51a内に収納されると共に、他端部(図中、上端部)がスイッチ収納部44側に固定され、スライダ51を押しボタン41の押圧方向と反対方向(図中、下方)へ付勢する圧縮コイルばね53と、押しボタン41の往復動に応じてスイッチ回路を開閉するため、スライダ51に取り付けられたスイッチ端子55と、を備えて構成されている。
【0023】
スライダ51は、拡散材を含むポリカーボネイト樹脂等の樹脂材料により成形されており、円筒状開口51aの開口側端から入射した光を散乱した光として底部側端51bから出射する導光部材である。スライダ51の中間胴部には、スイッチ端子55を取付けるための一対の掛止部51cが形成されている。
そして、スライダ51は、底部側端51bが押しボタン41の被操作面41aの裏面側から表示発光部43に当接させられると共に、開口側端51aがLED60に対向配置される。
【0024】
圧縮コイルばね53は、スライダ51の円筒状開口51aの内径と略同等の外径を有すると共に、円筒状開口51aの深さよりも長い全長を有する。
そして、本実施形態においては、図4に示したように、圧縮コイルばね53の他端部が、スイッチ収納部44側のバスバー4に固定されたLED60に支持固定されている。
【0025】
スイッチ端子55は、図5に示したように、U字状に形成された一対の挟持片55aと、一対の接触端子片55bを備えている。一対の挟持片55aは、先端に突設した係止突起をスライダ51の掛止部51cに掛止することで、スライダ51に取付けられる。一対の接触端子片55bは、スライダ収納部35に隣接配置された制御基板10の基板側端子12に断続することで、押しボタン41の往復動に応じたスイッチ回路の開閉を行うことができる。
【0026】
次に、本実施形態に係るルームランプ1の組立手順について説明する。
先ず、機能部3のベースハウジング21に設けたボタン収納部25に、押しボタン41を下側から挿入し、ガイド壁41bの長孔47をボタン収納部25の係止突起27に係合させて収納する。
次に、スライダ51にスイッチ端子55を取付けると共に、円筒状開口51a内に圧縮コイルばね53を装着して組み立てたスイッチ部材44を、スライダ収納部35内に配置する。
【0027】
そして、バスバー4に固定されたLED60が圧縮コイルばね53の他端部に当接するようにして、スイッチ収納部44に該バスバー4を固定することで、圧縮コイルばね53が圧縮状態に支持固定される。同時に、LED60はスライダ51の開口側端51aに対向配置される。
車両取付け時、意匠部2と機能部3とが組み付けられた際には、スライダ51の底部側端51bが、押しボタン41の被操作面41aの裏面側から表示発光部43に当接した状態となる。
【0028】
従って、上記実施形態に係るルームランプユニット1によれば、押しボタン41を押圧操作してLED60を点灯させると、LED60の光は、対向配置された開口側端51aからスライダ51に入射される。スライダ51は拡散材を含む樹脂材料により形成されているので、入射された光は散乱した光となって底部側端51bから出射される。そこで、押しボタン41の表示発光部43には散乱した光が入射し、表示発光部43を均一に発光させることができる。
なお、スライダ51の円筒状開口51a内に装着された圧縮コイルばね53は、中心部が空洞となっているので、LED60の出射軸に沿った光は圧縮コイルばね53により遮られることはなく、スライダ51に入射することができる。
【0029】
また、往復動するスライダ51に取り付けられたスイッチ端子55により、押しボタン41の往復動に応じたスイッチ回路の開閉を行うので、従来のように押し釦の中央からずれた位置にスイッチユニットの被駆動部を設ける必要がなく、押しボタン41はスムースに往復動することができる。
更に、発光部として出射軸付近に光量が集中するLED60を用いたことにより、対向配置されたスライダ51の開口側端51aに光を効率よく入射することができる。そこで、LED60が出射する光の利用効率が高まり、その分LED60を小型化することもできる。勿論、本発明の照光式スイッチ構造における発光部は、LED等の半導体発光素子に限定されるものではなく、光源バルブ等の他の発光部を用いることもできる。
【0030】
また、スイッチ収納部45内に固定されたLED60を介して圧縮コイルばね53の他端部を支持固定することにより、バネ支持部材を省略して部品点数を削減できる。即ち、LED60は、比較的強度が高い封止樹脂により覆われているので、圧縮コイルばね53の他端部を直接支持することができる。
但し、本発明の照光式スイッチ構造はこれに限定されるものではなく、図7の変形例に示したように、圧縮コイルばね53の他端部をバネ支持部材である蓋65を用いて支持固定することもできる。
従って、本発明に係る照光式スイッチ構造を備えたルームランプユニット1によれば、操作がし易くなり、押しボタンの表示発光部を均一に光らせることができる。
【0031】
なお、本発明の照光式スイッチ構造は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【符号の説明】
【0032】
1 ルームランプユニット
2 意匠部
3 機能部
21 ベースハウジング
25 ボタン収納部
31 ハウジング
35 スライダ収納部
41 押しボタン
43 表示発光分
44 スイッチ部材
45 スイッチ収納部
51 スライダ(導光部材)
51a 円筒状開口(筒状開口)
51b 底部側端
53 圧縮コイルばね
55 スイッチ端子
60 LED(発光部)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングのスイッチ収納部内に設けられる発光部と、
前記発光部の光が透過する表示発光部を備えて往復動可能に配設される押しボタンと、
拡散材を含む樹脂材料により有底筒状に形成され、前記スイッチ収納部内に往復動可能に配置される導光部材と、
一端部が前記導光部材の筒状開口内に収納されると共に、他端部が前記スイッチ収納部側に固定され、前記導光部材を前記押しボタンの押圧方向と反対方向へ付勢する圧縮コイルばねと、
前記押しボタンの往復動に応じてスイッチ回路を開閉するため、前記導光部材に取り付けられたスイッチ端子と、
を備え、
前記導光部材は、底部側端が前記押しボタンの裏面側から前記表示発光部に当接させられると共に、開口側端が前記発光部に対向配置されることを特徴とする照光式スイッチ構造。
【請求項2】
請求項1に記載の照光式スイッチ構造であって、
前記発光部が半導体発光素子であることを特徴とする照光式スイッチ構造。
【請求項3】
請求項2に記載の照光式スイッチ構造であって、
前記圧縮コイルばねの一端部が、前記発光部に支持固定されることを特徴とする照光式スイッチ構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2013−89490(P2013−89490A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−229827(P2011−229827)
【出願日】平成23年10月19日(2011.10.19)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】