説明

照射構造を有するマイクロ波加熱装置

本発明はプリント材10上に供給された少なくとも1つの印刷剤を加熱する加熱装置1に関する。この加熱装置は、放射マイクロ波をプリント材10に照射する少なくとも1つのマイクロ波アプリケータ5と、放射電磁波によって印刷剤を照射して溶着させる少なくとも1つの照射構造8とを備える。また本発明は、少なくとも1つの印刷剤を加熱する適切な方法に関する。全体として複雑でない構造の加熱装置1および方法が提供される。本発明により、装置を考慮した上で、マイクロ波アプリケータ5の放射マイクロ波で照射構造8やプリント材10、印刷剤を照射し、照射構造8を励起して放射電磁波を放出することでこの目的を達成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はプリント材上に供給された少なくとも1つの印刷剤を加熱する加熱装置に関する。この加熱装置は、放射マイクロ波をプリント材に照射する少なくとも1つのマイクロ波アプリケータと、放射電磁波によって印刷剤を照射して溶着させるための少なくとも1つの照射構造とを備える。更に本発明は、放射マイクロ波による加熱時に、放射マイクロ波による照射と放射源による照射によってプリント材上に設けられた少なくとも1つの印刷剤を加熱する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
実質的にすべての印刷プロセスにおいて、染料やインク、ラッカ、トナーなど固体または液体の印刷剤がプリント材に供給される。印刷プロセスの継続中、プリント材に対して、液体の印刷剤またはその一部が蒸着させられるか、固体の印刷剤またはその一部が溶着されなければならない。
【0003】
この蒸着または溶着は、例えばヒートローラを介する接触式、または非接触式で行うことができる。これに関連して、赤外線放射、紫外線放射、マイクロ波放射、またはこれら3種の放射の組み合わせを用いる構造が知られている。ここで、印刷剤は放射赤外線と放射紫外線のスペクトル吸収によって加熱され、プリント材は基本的に放射マイクロ波によって加熱される。そして、加熱したプリント材を介して基本的には間接的に印刷剤の加熱を行う。これを行うためには、プリント材を十分に加熱する必要がある。数種の異なる放射を組み合わせて使用する場合、例えば加熱したプリント材が溶着または蒸着を可能にする十分な熱エネルギーを印刷剤に放出しないよう、放射マイクロ波強度を効果的に選択することが好適である。紫外線放射など別の1種の放射を組み合わせる場合のみ、印刷剤を適切に加熱することができる。
【0004】
例えば、電子写真印刷プロセスでは印刷剤としてトナーを使用する。まず、帯電したトナー粒子によって電荷潜像が形成される。次に、このトナー像がプリント材に転写される。このプリント材として、例えば紙やボール紙、フィルムなどを使用することができる。安定した印刷イメージを生成するために、トナー粒子をプリント材にしっかりと付着しなければならない。これを行うには溶着装置が必要となる。この溶着装置はトナーを溶融し、これをプリント材に溶着させる。
【0005】
溶着プロセスには接触式と非接触式とがあり、例えば接触式溶着プロセスでは、トナーがプリント材に溶着するようにトナーを加圧および加熱する。これを行うには、例えばプリント材をトナーと共に2つのホットローラの間を通す。
【0006】
更に、他にもさまざまな非接触式溶着プロセスが知られている。この場合、例えば、紫外線放射やマイクロ波放射によってトナーをプリント材に溶着させる。さまざまな溶着プロセスを組み合わせることも知られている。例えば、放射マイクロ波と放射紫外線を同時に照射してトナーをプリント材に溶着することができる。
【0007】
ドイツ特許第10064561号に開示されている装置では、放射ランプ、この場合はスペクトルの紫外線領域における放射を行うガス放電ランプ(以下、UVランプ)をマイクロ波の電界の外側に配置している。これにより、放射マイクロ波はUVランプに作用しないが、放射紫外線はマイクロ波構造に照射されるように、UVランプがマイクロ波構造から分離される。この装置の問題点は、電極の腐食や紫外線放射が有効になるまでに必要なスイッチング回数が原因で、従来のUVランプの有効寿命が制限されることである。更にマイクロ波放射が有効になる領域とUVランプの領域とが分離しており、分離する場合は常に遮蔽が必要になって照射構造の有効性が制限され、プリント材表面に達する放射紫外線が放射源に比べて弱くなることも問題となる。この分離を行うために、ドイツ特許第10064561号では、お互いの領域を分離し、そのメッシュサイズが放射マイクロ波のすべてまたはほとんどを反射する大きさの、スクリーンを設けている。
【0008】
このように、印刷剤やプリント材に放射マイクロ波を照射する領域と照射構造の領域とを分離する装置の煩雑さは相当であり、コストがかかるだけでなく、その煩雑さのために破損を招きやすくもなる。
【発明の開示】
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的は、全体として単純な設計である、上述の種類の加熱装置および方法を提供することである。
【0010】
本発明により、照射構造やプリント材、印刷剤がマイクロ波アプリケータの放射マイクロ波に照射される装置を考慮することでこの目的は達成される。
【0011】
また、印刷剤とプリント材と照射構造に放射マイクロ波が同時に照射されることで照射構造が励起されて放射電磁波が照射される方法が提供される。
【0012】
これを行うために、加熱プロセスで使用した放射マイクロ波を主に用いて照射構造を効果的に励起して、放射電磁波を放出することができる。この放射電磁波は、少なくとも加熱プロセスに役立てることができる。更にこの場合は、放射マイクロ波の照射領域と照射構造領域の分離を維持する部材が不要である。分離しないことで照射構造の放射電磁波が遮蔽されず、構造の効果が高まる。
【0013】
この効果的な実施形態では、放射マイクロ波による照射構造の励起が望ましいように照射構造が設計される。この照射構造では、マイクロ波放射が非常に短い遅延時間で放射電磁波を生成する。この照射構造で放出される放射電磁波は、基本的に1nmから10μmの波長域にあるスペクトルを有する。
【0014】
プリント材上の印刷剤の厚さや濃度、また用いる印刷剤の種類に応じて、強度の異なる放射を照射構造から照射しなければならないことがある。この強度は、照射構造に作用する放射マイクロ波の電界強度と相関がある。このため、照射構造の放射電磁波強度を、プリント材上の印刷剤の濃度とプリント材の特性の関数として変化させると効果的である。このことは、照射構造に作用するマイクロ波放射の電界強度を変えると効果的に達成できる。装置の面では、照射構造に作用してマイクロ波放射の電界強度を設定する少なくとも1つの設定素子が設けられる。この結果、照射構造領域内の電界強度を効果的に調整することができる。更に、本発明により、マイクロ波照射領域に放射されるマイクロ波放射の強度を変更することができる。
【0015】
特に、照射構造とマイクロ波照射領域とを分離パネルで分離することができ、照射構造領域に、マイクロ波照射領域とは独立して放射マイクロ波が供給される。そしてマイクロ波放射源を、マイクロ波照射領域でのマイクロ波放射に使用したのと同じマイクロ波源に配置させることができる。これを行うために、電圧可変の電力分割器でマイクロ波放射を分割することができる。
【0016】
ここに開示する方法により、マイクロ波アプリケータ内で照射構造を移動することも効果的なことがある。そして、照射構造を所要の電界強度が存在する領域に移動することができる。これは、マイクロ波アプリケータ内の不均一場によって達成することができる。
【0017】
一実施形態では、少なくとも1つの設定素子が、照射構造領域内のマイクロ波アプリケータにおける電界強度の適合に使用するマイクロ波調整素子である。
【0018】
このマイクロ波調整素子は、例えば金属、石英ガラス、またはPTFEとすることができる。
【0019】
特に好適な実施形態では、マイクロ波アプリケータの電界領域に延びるピボット回転可能なピンをマイクロ波調整素子とする。ピンを電界領域に回転または移動させて、照射構造領域内で異なる電界強度を容易に得ることができる。例えば、このピンは上述のいずれかの物質で構成することができる。
【0020】
本発明により、これにより照射構造の放射電磁波、または照射構造の放射電磁波と放射マイクロ波に対して少なくとも部分的に透過する分離パネルを設定素子とし、マイクロ波照射領域と照射構造領域とを分離することができる。例えば、この分離パネルをワイヤメッシュや孔のある金属板とすることができる。
【0021】
特に効果的な実施形態では、少なくとも部分的に透過性のある適切なスクリーンを分離パネルとして設ける。例えば、所要の放射マイクロ波が照射構造領域に入射して、照射構造における適切な量の放射がマイクロ波照射領域に入射してその領域内のプリント材上にあるトナーに照射することができるように、このスクリーンのメッシュサイズを十分大きくすることができる。この結果、照射領域に作用する放射マイクロ波を容易に制御できると同時に、照射構造の効果も高まる。このようなスクリーンのメッシュサイズでは、放射マイクロ波の入射が防がれる場合よりも多くの照射構造の放射電磁波を透過させることができる。結果として、照射構造の効果が好適に向上する。
【0022】
照射源の放射に対する要件は変わることがあるため、少なくとも部分的に透過性のある分離パネルにおいて設定素子が調節可能な結合素子であることが好ましい。この結合素子が、放射マイクロ波の少なくとも一部が照射構造領域内に透過されるように、マイクロ波照射領域と照射構造領域とを結合する。照射構造領域内の電界強度は、結合素子を調整することで変更することができる。
【0023】
本発明によれば、結合素子はダイアフラムまたは電気導体とすることができる。透過させるマイクロ波を変更するため、ダイアフラムの開口部の大きさを可変にすることができる。また、マイクロ波照射領域に出入りできるようにピンを滑動可能にすることができ、これによって比較的多いまたは少ないマイクロ波エネルギーが透過される。
【0024】
マイクロ波放射によってプリント材上の印刷剤の加熱を促すことができるため、照射構造によって放出される放射は、基本的にスペクトルの紫外線領域内に収まる。
【0025】
更に、照射構造の放射電磁波によって架橋させることができる印刷剤を用いる。これによりプリント材表面上の印刷剤を架橋することができ、簡単ににじんだり、品質を損なう影響を抑えた、より安定した印刷イメージが効果的に得られる。特に両面印刷において、このような印刷剤の化学変化により、プリント材上で既に架橋された印刷剤が再び融解したり加熱装置内でその品質が損なわれたりしなくなる。
【0026】
創意的な改良では、使用する照射構造をガス放電ランプとする。このようなランプを選択すると、ガスを変更することで、照射構造で放出されるスペクトル領域を容易に変更することができる。例えば、第2のガス放電ランプや第2のガスを用いて、印刷剤の種類に合わせて放射を適合させることができる。そのため本発明は更に、異なるガス組成のガス放電ランプを用いる。
【0027】
効果的な方法では、ガス密度(ガス濃度)の異なるガス放電ランプを用いる。密度に応じて、放射マイクロ波が多少なりとも照射構造に吸収され、ガス励起の結果として、強度が低下または向上した電磁波放射が行われる。このようにして、照射構造による放射の強度を、印刷剤の濃度、厚さ、または種類に適合させることができる。
【0028】
別の実施形態では、電磁波放射を促す電極を用いてガス放電ランプを励起する。励起したガス放電ランプが励起していないガス放電ランプよりも多くの放射マイクロ波を吸収することは既に知られている。このため、照射源の放射強度を高めてプリント材上の印刷剤の濃度、厚さ、または種類に適合させることができる。
【0029】
他の実施形態として、照射構造を無電極のガス放電ランプとして構成する。ここでは、マイクロ波アプリケータのマイクロ波放射を介してガス放電ランプのガス励起が単独で行われる。これにより、従来のガス放電ランプの有効寿命を短くする恐れのある電極の腐食を防ぐことができる。
【0030】
更に電子写真印刷機器における加熱装置の好適な使用では、印刷剤をトナーとすると効果的である。加熱装置は、トナーをプリント材に溶着させる溶着装置として動作することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
創意的な加熱装置の実施形態を図に示す。この加熱装置は、さらに創意的な特徴を有するが、それにより本発明を制限するものではない。
【0032】
図1は、加熱装置としての溶着装置1の略側面図を示す。溶着装置1は、放射マイクロ波をマイクロ波入力ライン4を通してマイクロ波アプリケータ5に誘導するマイクロ波源2を備える。また、マイクロ波アプリケータはマイクロ波照射領域6を有する。ここで示される例では、この領域には、ガス放電ランプ8として構成された照射構造を設ける。
【0033】
プリント材10はマイクロ波アプリケータ5を通過して送られる。この場合、ここには図示されない搬送およびガイド部材に誘導されてプリント材10が送られる。プリント材10は、例えば紙であっても良い。プリント材10は矢印で示される搬送経路11の方向に移動する。プリント材10はマイクロ波アプリケータ5を通過して誘導することができ、ここでプリント材はスリット12,13を通過して誘導される。
【0034】
図2は溶着装置1の略側面図を示す。ここで、溶着装置1は図1の上述の要素のほか、マイクロ波放射を異なる方向からマイクロ波アプリケータ5の異なる領域にそれぞれ誘導する、電力分割器3と、さらなるマイクロ波入力ライン4とを備える。特に、電力分割器3は可変であるか、強度の異なるマイクロ波放射をマイクロ波アプリケータ5の異なる領域にそれぞれ送ることができるかの少なくともいずれかである。
【0035】
マイクロ波アプリケータ5は、マイクロ波照射領域6とガス放電ランプ8の領域7とを有する。マイクロ波照射領域6とガス放電ランプ8の領域7とは、分離パネル9によって互いに分離されている。ここに示す場合では、分離パネル9はスクリーンまたは孔のある金属板から構成され、スクリーンはガス放電ランプ8による放射電磁波の少なくとも一部を透過し、基本的にマイクロ波照射領域6の放射マイクロ波は透過しない。ガス放電ランプ8による放射は、それぞれスペクトル構成の異なる放射とすることができる。しかし、ここに示す場合では、この放射は好適にはスペクトルの紫外線領域における電磁波放射とする。
【0036】
ここで示す場合では、放射マイクロ波はマイクロ波入力ライン4を通して、一方ではマイクロ波照射領域6に、他方ではガス放電ランプ8の領域7に誘導される。ここでは特に、マイクロ波が異なるマイクロ波の電界強度分布を有するように、マイクロ波をマイクロ波照射領域6と領域7に供給することができる。既に説明したように、この場合では更に、プリント材10がスリット12,13を通過してマイクロ波アプリケータ5を通過する。
【0037】
図3は、マイクロ波アプリケータ5のマイクロ波照射領域6における放射マイクロ波の電界強度分布を示す。グラフ15はマイクロ波の電界強度の増減を示す。マイクロ波照射領域6内において電界強度の曲線が縦方向(x方向に対して)の関数であることをわかりやすくするために座標16を付す。更にこの場合、移送経路11の方向にマイクロ波照射領域6を通過するプリント材10が図示されている。
【0038】
図4aおよび図4bは、マイクロ波照射領域6内でガス放電ランプ8を移動するための別の例を示す。この場合、分離パネル9によってガス放電ランプ8をマイクロ波照射領域6から分離し、このランプを領域7内に配置することもできる。図4aは、プリント材10の面に垂直な方向へのガス放電ランプ8の移動を示す。照射構造は元の位置Aから移動23に沿って第2の位置A’に移動する。ここではこの移動を太字矢印で示す。図4bは、プリント材10の面に平行な方向へのガス放電ランプ8の移動24を示す。この場合、ガス放電ランプ8は、矢印で示すように移動24に沿って元の位置Aから第3の位置A”に移動する。図4aおよび図4bに示す移動23,24を組み合わせることもできる。図4aおよび図4bでは、前の図と同じ要素に対しては同じ参照番号を付す。
【0039】
第2の位置A’または第3の位置A”へのガス放電ランプ8の移動23,24により、ガス放電ランプ8は図3とは異なる電磁界強度の位置に移動する。
【0040】
図5aおよび図5bは別の結合素子を示す。図5aは、電気導体17を結合素子として有するマイクロ波アプリケータ5の側面図を示す。ここでも同じ参照番号は同じ要素を意味する。ここでは、電気導体17をマイクロ波照射領域6に出入りするよう移動18に沿って移動することができる。電気導体17は、分離パネル9により、実質的に接触することなく囲われる。例えば導体17が同軸ケーブルとすることで、このように接触することなく囲うことができる。
【0041】
図5bは、マイクロ波アプリケータ5におけるマイクロ波照射領域6とガス放電ランプ8の領域7との間の結合素子であるダイアフラム19を示す。この場合、移動20によってダイアフラム19の大きさを大きくすることができる。このとき、放射マイクロ波が比較的多くまたは少なくマイクロ波照射領域6からガス放電ランプ8の領域7に透過することができる。
【0042】
図6は、マイクロ波調整素子を有するマイクロ波アプリケータ5の側面図である。前の図と同じ要素には同じ参照番号を付す。
【0043】
例えばこの場合のマイクロ波調整素子は、マイクロ波アプリケータのマイクロ波照射領域6を出入りするよう移動22によってピボット回転させることができるピン21である。ここに示す場合では、ガス放電ランプ8がマイクロ波照射領域6内に配置される。しかし、本発明では、分離パネル9によってガス放電ランプ8をマイクロ波照射領域6から分離することもできる。この場合、マイクロ波照射領域6と領域7に、例えばピン21で構成されるマイクロ波調整素子を設けることができる。ただし、異なるマイクロ波調整素子を領域6および7に用いることもできる。ここでも、前の図と同じ要素には同じ参照番号を付す。
【0044】
図1から6に示す加熱装置は溶着装置1であるが、放射マイクロ波によってインクやラッカを乾燥する加熱装置であっても良い。例えば、プリント材10をここには図示しないトナー像が供給された紙とすることができる。この場合、トナー像はマイクロ波アプリケータ5の正面に配置されたプリント材上の層である。マイクロ波アプリケータ5内で、ガス放電ランプ8が発生したマイクロ波放射と紫外線放射により、トナー粒子がプリント材に溶着する。ここで、ガス放電ランプ8は励起を行うためにマイクロ波アプリケータ5の放射マイクロ波を吸収する。
【0045】
図1に示すように、プリント材10に溶着していないトナー像が移送経路11の方向にマイクロ波アプリケータ5を介してプリント材10上に乗せられた状態で移動する。そして、マイクロ波アプリケータ5内でプリント材10とトナー像とがガス放電ランプ8の放射マイクロ波と放射紫外線によって照射される。このために、ガス放電ランプ8のガスがマイクロ波アプリケータ5の放射マイクロ波によって励起されて放射を放出する。ガス放電ランプ8は、マイクロ波アプリケータ5のマイクロ波照射領域6内に配置される。
【0046】
放射マイクロ波と放射紫外線を同時にプリント材に照射することで、トナーがプリント材10に溶着する。ここで、放射紫外線がトナーに直接作用するので効果的である。マイクロ波アプリケータ5に多少なりとも存在する放射マイクロ波は、ガス放電ランプ8の励起に使用される。この場合、マイクロ波照射領域6とガス放電ランプ8の領域7との複雑な分離は必要ない。
【0047】
図2に示すように、領域7にガス放電ランプ8を設け、分離パネル9によってこの領域をマイクロ波照射領域6と分離することもできる。マイクロ波照射領域6と領域7には、マイクロ波入力ライン4を介して放射マイクロ波をそれぞれ供給することができる。ここに図示する分離パネル9は、例えば放射マイクロ波の透過を防止するのに適切なメッシュサイズのスクリーンとすることができる。この場合、マイクロ波アプリケータ5の領域6および7は結合されず放射マイクロ波を通さない。そのため、電力分割器3によって、マイクロ波照射領域6と領域7で異なるマイクロ波強度を発生させることができる。この結果、プリント材10の種類や、プリント材10表面上のトナーまたは別の印刷剤の濃度に合わせて、ガス放電ランプ8によるマイクロ波放射や紫外線放射の強度を好適に設定することができる。これにより、溶着装置1を用いた溶着プロセスの効果を最適にすることができる。
【0048】
図4aおよび図4bは、ガス放電ランプ8をマイクロ波照射領域6内の垂直の移動22または平行の移動23に沿って移動させることができることを示す。図3に示すように、ガス放電ランプ8は、ランプの移動位置A,A’またはA”に応じて、異なる強度のマイクロ波の電界強度で照射される。照射に用いるマイクロ波放射の強度に応じて、ガス放電ランプ8のガスが励起されて異なる強度の放射電磁波を放出する。この場合、マイクロ波照射領域内のガス放電ランプ8の位置A,A’またはA”は、プリント材10へのトナーの溶着効果が最適になるように選択される。生成される放射電磁波の強度は、プリント材10上のトナーの厚さや濃度に適合する。このためにガス放電ランプ8を、望ましい強度のマイクロ波の電界強度が現れる位置A,A’またはA”に移動することができる。
【0049】
図5aおよび図5bは、基本的に前の図と同じ溶着装置1を示す。ここで、マイクロ波アプリケータ5内のプリント材10上における図示されないトナーが、プリント材10に溶着するようにガス放電ランプ8の放射マイクロ波と放射紫外線によって照射される。この図の場合、ガス放電ランプ8は、分離パネル9によってマイクロ波照射領域6と分離された領域7に設けられる。特に、分離パネル9は放射マイクロ波と放射紫外線を部分的に透過するスクリーンとすることができる。この場合のメッシュサイズは、隣接するそれぞれの領域内におけるスクリーンの開口部を放射マイクロ波が通過できるように選択される。ガス放電ランプ8による紫外線放射をプリント材10上の実際のトナーの濃度や厚さに適合させるために、分離パネル9内に設定素子17および19を設ける。設定素子17は、移動18に沿ってマイクロ波照射領域6を出入りするように移動することができる電気導体である。電気導体17がマイクロ波照射領域6に延びる長さに応じて、放射マイクロ波が多少なりともマイクロ波照射領域6からガス放電ランプ8の領域7に通り抜ける。このため、ガス放電ランプ8のガスに作用するマイクロ波放射の電界強度を制御することができる。放射マイクロ波の電界強度に応じて、強度の異なる放射紫外線がガス放電ランプ8から放射され、この放射がプリント材10のトナーに作用する。上述のように、この強度はトナーの濃度や厚さに合わせて調整する。
【0050】
図5bは、移動20によって開口部の大きさを変更できるダイアフラム19を示す。開口部の大きさに応じて、ダイアフラム19は放射マイクロ波を多少なりともガス放電ランプ8の領域7に通す。上述のように、これによってダイアフラム19の開口部を介してガス放電ランプ8の紫外線放射を制御することができる。
【0051】
図6は、ガス放電ランプ8に作用するマイクロ波放射制御用の別の調整部の例を示す。ここでもガス放電ランプ8は、マイクロ波アプリケータ5のマイクロ波照射領域6内に直接配置される。ピボット回転可能なピン21によって、ガス放電ランプ8に作用する放射マイクロ波の強度が左右される。ピン21は、マイクロ波照射領域6内で移動22に沿って回転することができる。移動22に応じて、このピンはマイクロ波照射領域6内のマイクロ波の電界を弱めたり強めたりすることができる。例えば、ピン21は石英ガラス、PTFE、または金属から構成することができる。しかし、ここには図示されていないが、分離パネル9によってマイクロ波照射領域6と分離されたガス放電ランプ8の領域7内にピン21を配置することもできる。これを行うために、分離パネル9を、放射マイクロ波を少なくとも部分的に透過するスクリーンとして構成することができる。スクリーンのメッシュサイズの他、ピン21も領域7内の放射マイクロ波の電界強度に作用することができる。これにより、ガス放電ランプ8の放射紫外線の強度を制御することができる。
【0052】
ここに示すいずれの場合も、ガス放電ランプ8をバイアスすることができる。このバイアスによって付加的に紫外線放射強度を変更することができる。バイアスに応じて、紫外線放射が多少なりとも放出される。また、バイアスによってマイクロ波放射に関してガス放電ランプ8の吸収性を効果的に向上させることができる。したがって、最終的な溶着装置1の効果を高めることができる。
【0053】
ここで説明するすべての場合において、無電極のガス放電ランプ8を使用し、電極の腐食を効果的に防止してガス放電ランプの有効寿命を延長することもできる。
【0054】
ここに図示するいずれの場合でも、トナーまたは別の印刷剤がプリント材10に供給され、このトナーまたは別の印刷剤は放射紫外線の作用によって架橋される。こうしてマイクロ波アプリケータ5内の放射マイクロ波の影響によってトナーがプリント材10表面に溶着され、ガス放電ランプからの放射紫外線の影響によって付加的にトナーがプリント材表面で架橋される。したがってこの化学架橋反応により、非常に安定した印刷イメージがプリント材10表面に形成され、それ以降の印刷プロセスにおいて印刷イメージの品質を損なう恐れが少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】加熱装置の側面図である。
【図2】電力分割器を有する加熱装置の側面図である。
【図3】マイクロ波アプリケータ内におけるマイクロ波の電界強度の増減を示す略図である。
【図4a】可変照射構造を有するマイクロ波アプリケータの略図である。
【図4b】代替の可変照射構造を有するマイクロ波アプリケータの略図である。
【図5a】電気導体を結合素子として有するマイクロ波アプリケータである。
【図5b】ダイアフラムを結合素子として有するマイクロ波アプリケータである。
【図6】ピボット回転可能なピンをマイクロ波調整素子として有するマイクロ波アプリケータである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
プリント材(10)上に供給された少なくとも1つの印刷剤を加熱する加熱装置であって、前記プリント材(10)に放射マイクロ波を照射する少なくとも1つのマイクロ波アプリケータ(5)と、放射電磁波によって前記印刷剤を照射して溶着させる少なくとも1つの照射構造とを含む、加熱装置において、
前記照射構造が、前記プリント材(10)と前記印刷剤とともに、前記マイクロ波アプリケータ(5)の放射マイクロ波によって照射されることを特徴とする加熱装置。
【請求項2】
請求項1に記載の加熱装置において、
前記照射構造を照射する放射マイクロ波の電界強度を設定する少なくとも1つの設定素子を設けることを特徴とする加熱装置。
【請求項3】
請求項2に記載の加熱装置において、
前記設定素子が、前記照射構造の領域内における前記マイクロ波アプリケータの電界強度を調整するマイクロ波調整素子であることを特徴とする加熱装置。
【請求項4】
請求項3に記載の加熱装置において、
前記マイクロ波調整素子が、前記マイクロ波アプリケータの電界領域に延びるピボットピボット回転可能なピン(21)であることを特徴とする加熱装置。
【請求項5】
請求項2に記載の加熱装置において、
前記設定素子が、マイクロ波照射領域(6)と前記照射構造の領域(7)とを分離するための、前記照射構造の放射電磁波、または放射電磁波と放射マイクロ波を少なくとも部分的に透過する、少なくとも1つの分離パネル(9)であることを特徴とする加熱装置。
【請求項6】
請求項5に記載の加熱装置において、
前記分離パネル(9)が、前記照射構造の放射電磁波、または放射マイクロ波と前記照射構造の放射電磁波を少なくとも部分的に透過するスクリーンで構成されることを特徴とする加熱装置。
【請求項7】
請求項2,5および6の少なくともいずれか1項に記載の加熱装置において、
前記設定素子が、少なくとも部分的に透過性のある前記分離パネルの、調節可能な結合素子であり、前記結合素子は、放射マイクロ波の少なくとも一部が前記照射構造の領域に送られるように、前記マイクロ波照射領域と前記照射構造の領域とを結合することを特徴とする加熱装置。
【請求項8】
請求項4に記載の加熱装置において、
前記結合素子がダイアフラム(19)であることを特徴とする加熱装置。
【請求項9】
請求項4に記載の加熱装置において、
前記結合素子が電気導体(17)であることを特徴とする加熱装置。
【請求項10】
請求項1から9の少なくともいずれか1項に記載の加熱装置において、
前記照射構造の放出された放射電磁波のスペクトルが、基本的にスペクトルの紫外線領域における放射であることを特徴とする加熱装置。
【請求項11】
請求項1から10の少なくともいずれか1項に記載の加熱装置において、
前記照射構造の放射電磁波によって架橋することができる印刷剤を用いることを特徴とする加熱装置。
【請求項12】
請求項1から11の少なくともいずれか1項に記載の加熱装置において、
使用する前記照射構造がガス放電ランプ(8)であることを特徴とする加熱装置。
【請求項13】
請求項12に記載の加熱装置において、
前記ガス放電ランプ(8)が無電極であることを特徴とする加熱装置。
【請求項14】
請求項1から13のいずれかに記載の加熱装置において、
前記印刷剤がトナーであることを特徴とする加熱装置。
【請求項15】
加熱時に、放射マイクロ波の照射と、照射構造による放射電磁波の照射とによってプリント材(10)上の少なくとも1つの印刷剤を加熱する方法において、
前記照射構造が励起されて放射電磁波を放出するように、放射マイクロ波が前記プリント材と前記印刷剤とともに、前記照射構造に作用することを特徴とする方法。
【請求項16】
請求項15に記載の方法において、
前記照射構造に作用する放射マイクロ波の電界強度が変化することを特徴とする方法。
【請求項17】
請求項16に記載の方法において、
前記照射構造が前記マイクロ波アプリケータ(5)内で移動することを特徴とする方法。
【請求項18】
請求項16に記載の方法において、
前記照射構造の領域における電界強度を設定する設定素子を用いることを特徴とする方法。
【請求項19】
請求項15に記載の方法において、
前記照射構造による放射電磁波の強度を前記プリント材(10)上の印刷剤の濃度の関数として変化させることを特徴とする方法。
【請求項20】
請求項15に記載の方法において、
前記照射構造としてガス放電ランプ(8)を用いることを特徴とする方法。
【請求項21】
請求項19および20に記載の方法において、
異なるガス組成のガス放電ランプ(8)を用いることを特徴とする方法。
【請求項22】
請求項19および20に記載の方法において、
異なるガス濃度のガス放電ランプを用いることを特徴とする方法。
【請求項23】
請求項19および20に記載の方法において、
放射電磁波の放出を促す電極によって前記ガス放電ランプ(8)を励起することを特徴とする方法。
【請求項24】
請求項15から22の少なくともいずれか1項に記載の方法において、
前記照射構造として無電極のガス放電ランプ(8)を用いることを特徴とする方法。
【請求項25】
請求項15から24の少なくともいずれか1項に記載の方法において、
前記照射構造による放射電磁波によって前記印刷剤が前記プリント材上で架橋されることを特徴とする方法。
【請求項26】
請求項15から25の少なくともいずれか1項に記載の方法において、
前記印刷剤としてトナーを用いることを特徴とする方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4a】
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【図4b】
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【図5a】
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【図5b】
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【図6】
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【公表番号】特表2008−508544(P2008−508544A)
【公表日】平成20年3月21日(2008.3.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−522955(P2007−522955)
【出願日】平成17年7月11日(2005.7.11)
【国際出願番号】PCT/EP2005/007474
【国際公開番号】WO2006/010458
【国際公開日】平成18年2月2日(2006.2.2)
【出願人】(590000846)イーストマン コダック カンパニー (1,594)
【Fターム(参考)】