説明

照明ユニットおよびそれを用いた画像読取装置、画像形成装置

【課題】製造コストを上げずに、効率よく原稿面を照明し、且つ原稿情報をラインセンサ上に縮小結像して読み取る際の、結像レンズの画角に起因する光量の変化を容易に補正可能にした照明ユニットおよびそれを用いた画像読取装置、画像形成装置を提供する。
【解決手段】少なくとも片側が発光面であるシート状の発光源(有機EL(12))を用い、原稿面を照明する照明ユニットであって、該照明ユニットが走査する方向または原稿が走査される方向と、前記原稿面の法線とがなす面内(A面)において、少なくとも一部に正の曲率を有する光学部材(11)を備え、前記発光源と前記光学部材とを密着させることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明ユニットおよびそれを用いた画像読取装置、画像形成装置に関し、特に、製造コストを上げずに、効率よく原稿面を照明し、且つ原稿情報をラインセンサ上に縮小結像して読み取る際の、結像レンズの画角に起因する光量の変化を容易に補正可能にした照明ユニットおよびそれを用いた画像読取装置、画像形成装置に関する。
【背景技術】
【0002】
デジタル複写機、ファクシミリ等の画像読取装置、画像形成装置では、原稿面近傍を走査しつつ原稿面を照明する「照明ユニット」を使用するのが一般的である。そして、原稿面からの反射光をライン状に素子を配列した撮像素子(光電変換素子)上に結像させ、原稿面の情報を画像情報として読み取る。
【0003】
この照明ユニットの照明手段としては、一般的にキセノンランプ、ハロゲンランプ等の管灯を使用する。キセノンランプ等は、消費電力が大きく、また、発熱が大きいことから画像読取装置や画像形成装置等の装置全体の温度を上昇させてしまう。この温度上昇は、装置に使用されている光学系の共役関係を崩し、装置内の光電変換素子(撮像素子)に対しピントがずれて結像するので、良好な画像が得られなくなる、ということが画像の精緻化を求められる画像読取装置等では問題になってきた。
【0004】
そこで、キセノンランプ等の管灯に替わる、消費電力と発熱の少ない新しい照明光源が必要になってきた。消費電力と発熱の少ない照明光源としてLEDが挙げられるが、LEDは点光源であるために、拡散や集光のための付随する光学系が必要となる。この光学系への対策の従来技術として、例えば、特許文献1では、LEDを一列に並べ、導光体を通して、原稿を照明する照明ユニットが示されている。
【0005】
また、特許文献2では、配列したLEDの前に長尺のレンズ系を配置して、LEDの配列と直交する方向への照明の集光度を高くする照明ユニットが示されている。しかし、特許文献1や2に示された手段では、LEDを用いた光学系の大型化や部品点数の増加をもたらし、更には調整工数の増加、コストアップが問題となる。
このLEDに替わる照明光源として、有機エレクトロルミンネッセンス(Organic electro luminescence、有機EL)用いた照明ユニットが提案されている。
有機ELを用いた照明ユニットとして、特許文献3では、2つの面光源を近接配置して原稿面を照明し、2つの面光源の間に空隙を設けて、その空隙から原稿面情報を読み取る技術が開示されている。
【0006】
また、特許文献4では、面光源の上に反射部材を配置して原稿情報を読み取る位置の照明光量を増やし、照明効率を上げている。また、特許文献5では、面光源の発光面上に微小プリズムを多数形成し、発光方向の志向性を高めて原稿面を照らし、小型化および安定した照明を目指している。
【0007】
【特許文献1】特開2006−025303号公報
【特許文献2】特開2005−278132号公報
【特許文献3】特開2000−115470号公報
【特許文献4】特開2007−13913号公報
【特許文献5】特開平6−217083号公報
【特許文献6】特開2006−60528号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、前記特許文献3の技術では、面光源からの照明光は、発光面の中心部が最も明るくなるが、実際に原稿を読み取る位置は、照明光の弱い発光面の端部になってしまう。そのため、原稿を読み取るために使われる光量は、発光面からの光量の一部になり、照明効率が非常に悪い。
また、一般的に発光面はランバートな配光分布であると仮定でき、原稿面に照射される光量を考えると、原稿面までの距離の二乗に反比例して暗くなっていく。そのため、前記特許文献4では、発光面が原稿読取位置から離れているので、原稿面上の照度は暗くなり易く、反射部材に集光する場合は、反射部材の位置調整により原稿面の照度ムラが発生するなど、調整が難しい。さらには照明系自体が大きくなり、照明ユニットの小型化が難しい。
【0009】
前記特許文献5では、微小なプリズムを多数形成する場合、製造コストが高くなり、また、プリズムを形成することにより、原稿面から照明ユニットが離れてしまうため、原稿面照度が暗くなり、効率よく照明することが難しい。
なお、特許文献6には、原稿を載せるコンタクトガラスに面発光光源を直に配置する照明ユニットが開示されているが、照明ユニットがコンタクトガラスと一体であるために、コンタクトガラスの下を照明ユニットが走査するような画像読取装置(図1を用いて後述する)では用いることが出来ない。
【0010】
本発明は上記の問題を解決すべくなされたものであり、製造コストを上げずに、効率よく原稿面を照明し、且つ原稿情報をラインセンサ上に縮小結像して読み取る際の、結像レンズの画角に起因する光量の変化を容易に補正可能にした照明ユニットおよびそれを用いた画像読取装置、画像形成装置の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
この目的を達成するために請求項1記載の発明は、少なくとも片側が発光面であるシート状の発光源を用い、原稿面を照明する照明ユニットであって、
該照明ユニットが走査する方向または原稿が走査される方向と、前記原稿面の法線とがなす面内(A面)において、少なくとも一部に正の曲率を有する光学部材を備え、前記発光源と前記光学部材とを密着させることを特徴とする。
【0012】
また、請求項2記載の発明は、請求項1記載の照明ユニットにおいて、
前記光学部材は、透明部材であることを特徴とする。
また、請求項3記載の発明は、請求項1〜請求項2記載の照明ユニットにおいて、
前記シート状の発光源は、有機エレクトロルミネッセンスであることを特徴とする。
また、請求項4記載の発明は、請求項3記載の照明ユニットにおいて、
前記A面と直交する方向で、前記発光源の中心付近と周辺付近とでは、前記発光源を構成する陽極層または陰極層の少なくとも一方の電気配線の密度を、前記陽極層または陰極層の面内で異ならせることを特徴とする。
また、請求項5記載の発明は、請求項4記載の照明ユニットにおいて、
前記陰極層または陽極層の少なくとも一方の電気配線の密度を、中心付近より周辺付近を高くすることを特徴とする。
【0013】
また、請求項6記載の発明は、請求項1〜請求項5の何れかに記載の照明ユニットにおいて、
前記A面と直交する方向で、前記発光源の面積は、前記発光源の中心付近より周辺付近の方を大きくすることを特徴とする。
また、請求項7記載の発明は、画像読取装置は、請求項1〜請求項6の何れかに記載の照明ユニットを用いたことを特徴する。
また、請求項8記載の発明は、画像形成装置は、請求項7記載の画像読取装置を用いたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0014】
請求項1記載の発明によれば、少なくとも片側が発光面であるシート状の発光源を用い、原稿面を照明する照明ユニットであって、該照明ユニットが走査する方向または原稿が走査される方向と、前記原稿面の法線とがなす面内(A面)において、少なくとも一部に正の曲率を有する光学部材を備え、前記発光源と前記光学部材とを密着させてなることを特徴とするので、発光源と光学部材を密着させることにより、小型化や入射面の反射による光量の減少やフレア防止をすることができる。また、正の曲率を有することにより、集光作用を持たせ、高効率な照明をすることができる。
【0015】
請求項2記載の発明によれば、請求項2記載の発明は、請求項1記載の照明ユニットにおいて、前記光学部材は、透明部材であることを特徴とするので、反射部材を用いた場合は発光源からの光が反射する面は1面であるのに対し、透明部材を用いた場合は発光源からの光が透過する面は2面(光学部材の入射面と出射面 )であるため、照明光量を均一にしやすい。
請求項3記載の発明によれば、請求項1〜請求項2記載の照明ユニットにおいて、前記シート状の発光源は、有機エレクトロルミネッセンスであることを特徴とするので、有機エレクトロルミネッセンスを用いることで十分な照明光量を得ることができる。
【0016】
請求項4記載の発明によれば、請求項3記載の照明ユニットにおいて、前記A面と直交する方向で、前記発光源の中心付近と周辺付近とでは、前記発光源を構成する陽極層または陰極層の少なくとも一方の電気配線の密度を、前記陽極層または陰極層の面内で異ならせることを特徴とするので、照明ユニットの中心部と周辺部のそれぞれの照明光量を変化させることが可能となる。
【0017】
請求項5記載の発明によれば、請求項4記載の照明ユニットにおいて、前記陰極層または陽極層の少なくとも一方の電気配線の密度を、中心付近より周辺付近を高くすることを特徴とするので、縮小光学系となる結像レンズを用いた場合、ラインセンサ上の結像光量が画角に応じて変化する読取光学系においても、ラインセンサ上の結像光量を画角に応じず均等に保つことが可能となる。
請求項6記載の発明によれば、請求項1〜請求項5の何れかに記載の照明ユニットにおいて、前記A面と直交する方向で、前記発光源の面積は、前記発光源の中心付近より周辺付近の方を大きくすることを特徴とするので、レンズの画角に起因する光量の変化についても容易に補正できる。
【0018】
請求項7記載の発明によれば、画像読取装置は、請求項1〜請求項6の何れかに記載の照明ユニットを用いたことを特徴するので、低消費電力でかつ原稿面照度が高く、小型な画像読取装置を提供できる。
請求項8記載の発明によれば、画像形成装置は、請求項7記載の画像読取装置を用いたことを特徴とするので、小型な画像形成装置を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0019】
以下、本発明の第1〜第8の実施形態を説明するに先立ち、各実施形態を適用する「従来の画像読取装置」と「従来の画像形成装置」を、図面に基いて説明する。
[従来の画像読取装置]
図1は、第1〜第5の実施形態の「照明ユニット」(図3〜図7を用いて後述)を適用する「従来の画像読取装置」の側断面図である。第1〜第5の実施形態の「照明ユニット」は、次に説明する第1走行体3に配置された照明光源(管灯3A)と、反射ミラー(リフレクタ3B)とに、置き換えて使用する。
【0020】
図1に示すように、読み取られるべき画像を有する原稿2は、「原稿台」としてのコンタクトガラス1上に平面的に定置され、コンタクトガラス1の下部に照明手段を配置する。照明手段としては、図面に直交する方向に長い管灯3A(キセノンランプ、ハロゲンランプ等)、およびリフレクタ3Bで構成される照明ユニットを用い、「図面に直交する方向に長いスリット状の原稿部分」を照明させる。
【0021】
原稿2の照明された部分からの反射光(原稿画像による反射光)は、第1走行体3に設けられた第1ミラー3Cにより反射された後、第2走行体4に設けられた第2ミラー4A、第3ミラー4Bにより順次反射され、画像読取レンズ5を透過し、光電変換素子としてのラインセンサ6の撮像面上に原稿画像の縮小像として結像する。第1〜第3ミラー3C、4A、4Bは、「反射光学系」を構成する。
【0022】
第1走行体3、第2走行体4は、不図示の駆動手段により、それぞれ矢印方向(図の右方)へ走行させられる。第1走行体3の走行速度は「V」であり、第2走行体4の走行速度は「V/2」である。この走行により、第1走行体3、第2走行体4は、それぞれ「破線で示す位置」まで変位する。
照明ユニット3A、3Cは、第1走行体3と一体的に移動し、コンタクトガラス1上の原稿2の全体を「照明走査」する。
第1、第2走行体の移動速度比は、「V:V/2」であるので「照明走査される原稿部分から画像読取レンズ5に至る光路長」は不変に保たれる。
【0023】
「撮像部」であるラインセンサ6は、「色分解手段として赤(R)、緑(G)、青(B)のフィルタを持った光電変換素子(6A、6B、6C)を、1チップに3列に配列させた3ラインCCD(3ラインのラインセンサ)」であり、原稿2の照明走査に伴い、原稿画像を画像信号化する。このようにして原稿2の読取りが実行され、原稿2のカラー画像は、赤、緑、青の3原色に色分解して読み取られる。
また、この画像読取装置は、画像をフルカラーで読み取る装置であって、画像読取レンズ5の結像光路中に設けられた「色分解手段(前記3ラインCCDに設けられた赤、緑、青のフィルタ)」を有する。
【0024】
なお、画像読取装置の他の形態として、「コンタクトガラス上の原稿をスリット状に照明する照明手段と、ラインセンサと、原稿の被照明部からラインセンサに至る結像光路を形成する複数のミラーと、上記結像光路上に配置される画像読取レンズと」を相互に一体化した読取ユニットを、駆動手段により原稿に相対的に走行させることにより、原稿を読取走査するようにした形態のものとすることもできる。
また、「色分解」は、上記とは別に、画像読取レンズとラインセンサ(CCD)との間に色分解プリズムやフィルタを選択的に挿入し、R(赤)、G(緑)、B(青)に色分解する方法や、「R、G、Bの光源を順次点灯させ原稿を照明する方法」を用いることができる。
【0025】
[従来の画像形成装置]
図2は、図1を用いて説明済みの「従来の画像読取装置」を適用した「従来の画像形成装置」の側断面図である。
図2に示すように、「従来の画像形成装置」200は、装置上部に位置する画像読取装置100と、その下位に位置する画像形成部200Aとを有する。画像読取装置100は、前記図1にて説明したものと同一であり、同一部材には同一符号を付す。
【0026】
画像読取装置100の3ラインのラインセンサ6から出力される画像信号は、画像形成部200Aの画像処理部210に送られて処理され、「書込み用の信号(イエロー・マゼンタ・シアン・黒の各色を書込むための信号)」に変換される。
画像形成部200Aは、「潜像担持体」として円筒状に形成された光導電性の感光体220を有し、その周囲に、帯電手段としての帯電ローラ221、リボルバ式の現像装置222、転写ベルト223、クリーニング装置224が配設されている。帯電手段としては、帯電ローラ221に代えて、「コロナチャージャ」を用いることもできる。
【0027】
信号処理部210から書込み用の信号を受けて、光走査により感光体220に書込みを行う光走査装置230は、帯電ローラ221と現像装置222との間において感光体220の光走査を行う。
符号241は定着装置、符号242はレジストローラ対、符号243は給紙コロ、符号250はカセット、符号260はトレイ、符号Sは、「記録媒体」としての転写紙を示している。
【0028】
画像形成を行うときは、光導電性の感光体220が時計回りに等速回転され、その表面が帯電ローラ221により均一帯電され、光走査装置230のレーザビームの光書込による露光を受けて静電潜像が形成される。形成された静電潜像は、所謂「ネガ潜像」であって、画像部が露光されている。
「画像の書込み」は、感光体220の回転に従い、イエロー画像、マゼンタ画像、シアン画像、黒画像の順に行われ、形成された静電潜像は、リボルバ式の現像装置222の各現像ユニットY(イエロートナーによる現像を行う)、M(マゼンタトナーによる現像を行う)、C(シアントナーによる現像を行う)、K(黒トナーによる現像を行う)により、順次反転現像されてポジ画像として可視化される。得られた各色トナー画像は、転写ベルト223上に、転写電圧印加ローラ225により順次転写され、上記各色トナー画像が転写ベルト223上で重ね合わせられてカラー画像となる。
【0029】
転写紙Sを収納したカセット250は、画像形成装置本体に脱着可能であり、図のごとく装着された状態において、収納された転写紙Sの最上位の1枚が給紙コロ243により給紙され、給紙された転写紙Sはその先端部をレジストローラ対242に捕えられる。
レジストローラ対242は、転写ベルト223上の「トナーによるカラー画像」が転写位置へ移動するのにタイミングを合わせて転写紙Sを転写部へ送り込む。送り込まれた転写紙Sは、転写部においてカラー画像と重ね合わせられ、転写ローラ226の作用によりカラー画像を静電転写される。転写ローラ226は、転写時に転写紙Sをカラー画像に押圧させる。
【0030】
カラー画像を転写された転写紙Sは、定着装置241へ送られ、定着装置241においてカラー画像を定着され、不図示のガイド手段による搬送路を通り、不図示の排紙ローラ対によりトレイ260上に排出される。各色トナー画像が転写されるたびに、感光体220の表面はクリーニング装置224によりクリーニングされ、残留トナーや紙粉等が除去される。
なお、画像形成部の構成は、周知の単色画像形成用の構成に変えることができる。
【0031】
<第1の実施形態>
図3(A),(B)は、第1の実施形態の「照明ユニット」を示す図であって、(A)は基板側から見上げた外観斜視図、(B)はIII−III線に沿う断面図である。前述のように、この照明ユニットは、前記図1の画像読取装置における第1走行体3に配置された「照明光源(管灯3A)および反射ミラー(リフレクタ3B)」に、置き換えて使用する。なお、以下に説明する「第1〜第5の実施形態」でも、同様に置き換えて使用する。
【0032】
図3(A),(B)に示すように、第1の照明ユニット10は、透明部材からなる光学部材11と有機EL(12)と、基板13とを備えている。
光学部材11は、原稿2を照射する出射面11a側に「正の曲率」を有し、有機EL(12)からの照明が入射する入射面11bと、両方の側面11cは平面に形成されている。
有機EL(12)は、光学部材11の入射面11b側から順に、陽極層(ITO)12a、正孔輸送層12b、発光層12c、電子輸送層12d、陰極層12eが形成され、さらに傷や湿度から各層を保護する基板13が形成されている。正孔輸送層12bと、発光層12c、電子輸送層12dは、いずれも有機材料で形成される。
【0033】
電子輸送層12dに用いられる代表的な材料は、オキサジアゾール誘導体やトリアゾール誘導体等である。発光層に用いられる材料は、一般的に低分子化合物による蒸着薄膜材料と高分子系のポリマー薄膜材料に大別される。
低分子化合物による発光層12cは、さらに芳香族環化合物、複素環化合物、特殊元素含有化合物に大別される。芳香族環化合物としては、青色発光材料の代表的な化合物であるジスチリルベンゼン誘導体などがあり、複素環化合物としては、金属錯体系の8-ヒドロキシキノリンのアルミニウム錯体(Alq錯体)による有機蛍光体などが知られている。また、特殊元素含有化合物としては、Alq錯体の誘導体の一種で、ヒドロキシキノリンの1つがトリフェニルシリカノール(Si化合物)に置換されて配位している混合配位子錯体が青緑色発光層として用いられている。
【0034】
また、1つの発光層から出た光を次の層に設置した蛍光体で色変換することで、白色光を得ることができる。それとは別に、異なる波長の光を発する発光層を複数重ねて白色光を得ることもでき、本実施形態および以下に説明する各実施形態においては、その他種々の方法で得られる白色光源を用いることは可能である。
【0035】
正孔輸送層12bに用いられる代表的な材料は、銅フタロシアニンなどのフタロシアニン系化合物や芳香族アミン系化合物等である。
陽極層12aは、ITOのような透明電極が使用される。陰極から電子の注入が行われるため、電極材料にはマグネシウムなどの仕事関数の小さな金属が使用されている。その場合、接着性を増すために少量の銀と共蒸着される場合が多い。その他の電極としては、共役ポリマーからなる有機電極などがある。また、透明電極を酸により表面処理して形成することもできる。
【0036】
陰極層12eは、陽極層12aと同様に透明電極でも可能であるが、金属電極を用いて、発光層12cで発する光を金属面で反射させたほうが良い。
有機EL(12、発光源、光源素子)から照射された光は、光学部材11内を導光して、出射面11aにて集光され、照射部から原稿面上を照明する。
前述のように光学部材11を基材とし有機EL(12)を形成することにより、部品点数を減少することができる。
なお、別の基板(基板13の代わりに)に予め有機ELを形成しておき、光学部材11に密着させても良い。
【0037】
<第2の実施形態>
図4は、第2の実施形態の「照明ユニット」を示す斜視図である。
図4に示すように、第2の照明ユニット20は、透明部材からなる光学部材21を円柱形に構成し、発光源(有機EL)22を取り付ける光学部材21の長手方向を平面に構成する。なお、前記平面を形成せず、円柱のままでもよい。
円柱形にすることで、加工が容易になり、製造コストを抑えることができる。また、発光源22の部分を平面にすることで、有機ELを形成しやすくすることができる。
【0038】
<第3の実施形態>
図5は、第3の実施形態の「照明ユニット」を示す斜視図である。
図5に示すように、第3の照明ユニット30は、透明部材からなる略蒲鉾状の光学部材31の発光源(有機EL)32の部分を出射面33とは「異なる曲率」にすることにより、照明光量の均一化や照明の高効率化を図ることができる。
【0039】
<第4の実施形態>
図6は、第4の実施形態の「照明ユニット」を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は発光源の発光面の展開図である。
図6(A),(B)に示すように、第4の照明ユニット40は、透明部材からなる光学部材41を曲率半径の異なる第1〜第3の光学部材41a〜41cから構成する。そして、中心部(第2の光学部材41b)と周辺部(第1の光学部材41a、第3の光学部材41c)において、それぞれ面積の異なる第1〜第3の発光源(有機EL)42a〜42cを用いることにより、第4の照明ユニット40の中心部と周辺部の光量を変化させることができる。
【0040】
<第5の実施形態>
図7は、第5の実施形態の「照明ユニット」を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は発光源の発光面の展開図である。
図7(A),(B)に示すように、第5の照明ユニット50は、略円錐柱状の第1,第2の光学部材51a,51bを、短径側を対向させて配置する。そして、第1,第2の発光源52a,52bの発光面を、扇状に形成する。
このようにすれば、照明ユニット50の中心部と周辺部の光量を変化させることができ、例えば、原稿の両端部を十分に照射できる。
【0041】
<第6の実施形態>
図8は、第6の実施形態を示す図であって、有機EL(12)(図3参照)の陽極層12aまたは陰極層12eに形成する「透明電極製の配線のレイアウト」の実施形態である。
図8に示すように、透明基板61に陽極層として,第1,第2の透明電極62a,62bを形成する。この場合、透明基板61の両端部からそれぞれ透明電極62a,62bが、山形になるように形成する。
【0042】
発光層12cで発生する発光量は、陽極層12aや陰極層12eの透明電極の配線近傍が強く、配線から離れるにしたがって発光量が減る。図示のように透明電極を形成すると、照明ユニットの中心部と周辺部の発光面積を変化させることが可能となり、照明ユニットの中心部と周辺部の光量を変化させることができる。
なお、陽極層12aと陰極層12eに形成する透明電極の配線の形状や密度は、陽極層12aと陰極層12eとで同一形状・同一密度にしてもよいし、同一形状・同一密度としなくともよい。
本実施形態では、縮小系の結像レンズによる周辺光量の低下を補正するために、照明ユニットの周辺の光量を上げる場合を提示したが、本実施例とは逆に、中心部の光量を上げるような配線の構成も可能なのは勿論である。
【0043】
<第7の実施形態>
図9は、第7の実施形態を示す図であって、本実施形態は画像読取装置(図1参照)に使用する「第1の読取ユニット」の側断面図である。
図9に示すように、第1の読取ユニット70は、ハウジング71にセルフォックレンズアレイに代表される等倍結像素子72と、電気回路基板73上に配置されたC−MOSやCCD等の光電変換素子で構成されるラインセンサ74と、第1,第2の照明ユニット75a、75bとで構成される。第1,第2の照明ユニット75a、75bには、前記第1〜第5の実施形態で説明した各種の照明ユニット(10,20,30、40、50)を使用する。
【0044】
そして、第1の読取ユニット70全体が、コンタクトガラス1の下面近傍を図の左右方向に走査しながら、第1,第2の照明ユニット75a、75bからの照射光の、原稿2からの反射光をラインセンサ74で光電変換しながら原稿情報を読み取る。
また、駆動手段(図示せず)により、第1の読取ユニット70を原稿2に相対的に走行させることにより原稿2を読取走査することもできる。
【0045】
<第8の実施形態>
図10は、第8の実施形態を示す図であって、本実施形態は画像読取装置(図1参照)に使用する「第2の読取ユニット」の側断面図である。
第2の読取ユニット80は、第1,第2のハウジング81、82に、第1〜第3の反射ミラー83a、83b、83cと、結像レンズ84と、CCD等によるラインセンサ85と、電気回路基板86とを、ラインセンサ85と電気回路基板86の位置調整用および固定用の保持機構87、さらに第1,第2の照明ユニット88a、88bとで構成される。第1,第2の照明ユニット88a、88bには、前記第1〜第5の実施形態で説明した各種の照明ユニット(10,20,30、40、50)を使用する。
【0046】
第2の読取ユニット80は、コンタクトガラス1の下面近傍を図の左右方向に走査しながらコンタクトガラス1上に配置された原稿2を第1,第2の照明ユニット88a、88bで照明し、原稿2からの反射光を、順次第1〜第3の反射ミラー83a、83b、83cで反射して、結像レンズ84で縮小結像してラインセンサ85で光電変換しながら原稿情報を読み取る。
前記第1〜第5の実施形態で説明した各種の照明ユニット(10,20,30、40、50)を第2の読取ユニット80に用いることで、小型で明るく、低消費電力で照明ムラの無い照明が可能となる。さらに、前記照明ユニット(10,20,30、40、50)であれば、原稿2の中心部と周辺部の光量を変化させることができるので、結像レンズ84における中心部と周辺部とで、ラインセンサ85上で結像光量の差が発生してしまうのを適正に補正することが可能となる。
【0047】
なお、図示はしていないが、図1に示した画像読取装置100においても、同様に第1〜第5の実施形態の照明ユニット(10,20,30、40、50)を用いることができる。また、図2に示した画像形成装置200において、第7、第8の実施形態で説明した読取ユニット(画像読取装置)70,80を用いることで、小型で、低消費電力の画像形成装置を得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0048】
【図1】本発明の第1〜第5の実施形態の「照明ユニット」を適用する「従来の画像読取装置」の側断面図である。
【図2】前記「従来の画像読取装置」を適用した「従来の画像形成装置」の側断面図である。
【図3】第1の実施形態の「照明ユニット」を示す図であって、(A)は基板側から見上げた外観斜視図、(B)はIII−III線に沿う断面図である。
【図4】第2の実施形態の「照明ユニット」を示す斜視図である。
【図5】第3の実施形態の「照明ユニット」を示す斜視図である。
【図6】第4の実施形態の「照明ユニット」を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は発光源の発光面の展開図である。
【図7】第5の実施形態の「照明ユニット」を示す図であって、(A)は斜視図、(B)は発光源の発光面の展開図である。
【図8】第6の実施形態を示す図であって、有機ELの陽極層または陰極層に形成する「透明電極の配線のレイアウト」の実施形態である。
【図9】第7の実施形態を示す図であって、本実施形態は画像読取装置に使用する「第1の読取ユニット」の側断面図である。
【図10】第8の実施形態を示す図であって、本実施形態は画像読取装置に使用する「第2の読取ユニット」の側断面図である。
【符号の説明】
【0049】
1…コンタクトガラス
2…原稿
3…第1走行体
4…第2走行体
5…画像読取レンズ
6…ラインセンサ(光電変換素子)
10…第1の照明ユニット
11…光学部材
11a…出射面
11b…入射面
11c…側面
12…有機EL
12a…陽極層
12b…正孔輸送層
12c…発光層
12d…電子輸送層
12e…陰極層
13…基板
20…第2の照明ユニット
30…第3の照明ユニット
40…第4の照明ユニット
50…第5の照明ユニット
61…透明電極
70…第1の読取ユニット
80…第2の読取ユニット
100…従来の画像読取装置
200…従来の画像形成装置
200A…従来の画像形成部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
少なくとも片側が発光面であるシート状の発光源を用い、原稿面を照明する照明ユニットであって、
該照明ユニットが走査する方向または原稿が走査される方向と、前記原稿面の法線とがなす面内(A面)において、少なくとも一部に正の曲率を有する光学部材を備え、前記発光源と前記光学部材とを密着させることを特徴とする照明ユニット。
【請求項2】
前記光学部材は、透明部材であることを特徴とする請求項1記載の照明ユニット。
【請求項3】
前記シート状の発光源は、有機エレクトロルミネッセンスであることを特徴とする請求項1〜請求項2記載の照明ユニット。
【請求項4】
前記A面と直交する方向で、前記発光源の中心付近と周辺付近とでは、前記発光源を構成する陽極層または陰極層の少なくとも一方の電気配線の密度を、前記陽極層または陰極層の面内で異ならせることを特徴とする請求項3記載の照明ユニット。
【請求項5】
前記陰極層または陽極層の少なくとも一方の電気配線の密度を、中心付近より周辺付近を高くすることを特徴とする請求項4記載の照明ユニット。
【請求項6】
前記A面と直交する方向で、前記発光源の面積は、前記発光源の中心付近より周辺付近の方を大きくすることを特徴とする請求項1〜請求項5の何れかに記載の照明ユニット。
【請求項7】
請求項1〜請求項6の何れかに記載の照明ユニットを用いたことを特徴する画像読取装置。
【請求項8】
請求項7記載の画像読取装置を用いたことを特徴とする画像形成装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2009−194738(P2009−194738A)
【公開日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−34996(P2008−34996)
【出願日】平成20年2月15日(2008.2.15)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.セルフォック
【出願人】(000006747)株式会社リコー (37,907)
【Fターム(参考)】