説明

照明光通信装置及びそれを用いた照明器具、並びに照明システム

【課題】PWM制御で光源部の調光を行う場合にも途絶えることなく可視光通信を行うことのできる照明光通信装置及びそれを用いた照明器具、並びに照明システムを提供する。
【解決手段】主光源部2と、調光信号に基づいて主光源部2を流れる第1の負荷電流I0をPWM制御して主光源部2を調光する第1の電源部と、主光源部2に直列に接続されるインピーダンス要素6と、インピーダンス要素6と並列に接続されるスイッチング素子Q1と、2値の通信信号を生成し且つ通信信号によりスイッチング素子Q1のオン/オフを制御することで主光源部2の出力する照明光の光強度を変調して通信信号を重畳させる通信部とを備え、インピーダンス要素6は補助光源部60を有し、通信部は、PWM制御のオフ期間T2においてスイッチング素子Q1のオン/オフを制御することで補助光源部60の出力する光の光強度を変調して通信信号を重畳させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明光の強度を変調することで可視光通信を行う照明光通信装置及びそれを用いた照明器具、並びに照明システムに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、照明光を用いて自由空間に各種の情報を伝送する可視光通信機能を搭載した照明器具が提案されており、例えば特許文献1に開示されている。特許文献1に記載の照明器具は、半導体発光素子である発光ダイオードを配設した発光部基板と、発光部基板に接続されて発光ダイオードを点灯制御する点灯回路基板と、発光ダイオードを可視光通信制御する可視光通信制御基板とを具備している。可視光通信制御基板は、点灯回路基板と発光部基板との間に接続可能に分離配置されるので、この従来例では、可視光通信機能を搭載する照明器具と搭載しない照明器具の設計を共通化することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2011−34713号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上記従来例のような可視光通信は、伝送したい情報信号(通信信号)に合わせて照明光の強度を変調することにより行われる。すなわち、送信側の照明光通信装置では、発光ダイオードを光源とする光源部を点滅させることで通信信号を照明光に重畳する。そして、受信側の受信器では、通信信号のパルスが重畳されていない光強度と、通信信号のパルスが重畳された光強度との差分を検出することで、通信信号を受信する。
【0005】
ここで、負荷電流の大きさを変化させることで光源部の調光を行う振幅制御の場合には、負荷電流が途切れることなく連続して流れるので、通信信号も連続して重畳させることが可能である。しかしながら、負荷電流が流れる期間と流れない期間とを交互に繰り返すことで光源部の調光を行うPWM制御の場合には、負荷電流が流れない期間において通信信号を重畳させることができず、可視光通信が途絶える虞があった。
【0006】
本発明は、上記の点に鑑みて為されたもので、PWM制御で光源部の調光を行う場合にも途絶えることなく可視光通信を行うことのできる照明光通信装置及びそれを用いた照明器具、並びに照明システムを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の照明光通信装置は、第1の発光素子から成る主光源部と、調光信号に基づいて前記主光源部を流れる負荷電流をPWM制御して前記主光源部を調光する第1の電源部と、前記主光源部に直列に接続されるインピーダンス要素と、前記インピーダンス要素と並列に接続される第1のスイッチ要素と、2値の通信信号を生成し且つ前記通信信号により前記第1のスイッチ要素のオン/オフを制御することで前記主光源部の出力する照明光の光強度を変調して前記通信信号を重畳させる通信部とを備え、前記インピーダンス要素は、前記第1の発光素子とは異なる第2の発光素子を有する補助光源部を有し、前記補助光源部には、前記PWM制御のオフ期間において前記補助光源部に点灯電力を供給する第2の電源部が接続され、前記通信部は、前記PWM制御のオフ期間において前記第1のスイッチ要素のオン/オフを制御することで前記補助光源部の出力する光の光強度を変調して前記通信信号を重畳させることを特徴とする。
【0008】
この照明光通信装置において、前記補助光源部は、少なくとも1つの前記第2の発光素子を有し、前記第1のスイッチ要素は、少なくとも前記第2の発光素子に並列に接続されることが好ましい。
【0009】
この照明光通信装置において、前記第2の発光素子は、赤外線発光ダイオードから成ることが好ましい。
【0010】
この照明光通信装置において、前記第2の発光素子は、可視光発光ダイオードから成ることが好ましい。
【0011】
この照明光通信装置において、前記可視光発光ダイオードは、単色の発光色を有する発光ダイオード、若しくは互いに異なる単色の発光色を有する複数の発光ダイオードを組み合わせて成ることが好ましい。
【0012】
この照明光通信装置において、前記第1の電源部と前記第2の電源部とは、互いに異なる電源から構成されることが好ましい。
【0013】
この照明光通信装置において、前記補助光源部と前記第2の電源部との間を繋ぐ経路には、前記主光源を流れる負荷電流の前記第2の電源部への逆流を防止する逆流防止回路と、前記第2の電源部の短絡を防止する短絡防止回路とが接続されることが好ましい。
【0014】
この照明光通信装置において、前記補助光源部と前記第2の電源部との間を繋ぐ経路を開閉する第2のスイッチ要素を備え、前記第2のスイッチ要素は、前記第1のスイッチ要素がオンに切り替わると前記経路を開成し、前記第1のスイッチ要素がオフに切り替わると前記経路を閉成することが好ましい。
【0015】
この照明光通信装置において、前記通信部は、前記PWM制御のオフ期間において前記通信信号を反転して前記第1のスイッチ要素に出力する反転回路を備えることが好ましい。
【0016】
本発明の照明器具は、上記何れかの照明光通信装置を保持する器具本体を備えることを特徴とする。
【0017】
本発明の照明システムは、上記何れかの照明光通信装置と、前記照明光通信装置から送信される前記通信信号を受信する受信器とを備えることを特徴とする。
【0018】
この照明システムにおいて、前記受信器は、前記主光源部から送信される前記通信信号を受信する第1の受信部と、前記補助光源部から送信される前記通信信号を受信する第2の受信部とを備えることが好ましい。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、PWM制御で光源部の調光を行う場合にも途絶えることなく可視光通信を行うことができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明に係る照明光通信装置の実施形態1を示す回路概略図である。
【図2】同上の照明光通信装置における動作波形図である。
【図3】(a)〜(d)は同上の照明光通信装置における補助光源部の構成を示す図である。
【図4】同上の照明光通信装置における第2の電源部の他の構成を示す図である。
【図5】同上の照明光通信装置における4値パルス位置変調方式の説明図である。
【図6】本発明に係る照明光通信装置の実施形態2を示す回路概略図である。
【図7】(a)〜(c)は本発明に係る照明器具の実施形態を示す図である。
【図8】(a),(b)は同上の照明器具における主光源部及び補助光源部の配置例を示す図である。
【図9】本発明に係る照明システムの実施形態を示す図で、(a)は概略図で、(b)は受信器の概略図で、(c)は受信器の回路概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
(実施形態1)
以下、本発明に係る照明光通信装置の実施形態1について図面を用いて説明する。本実施形態は、図1に示すように、商用電源AC1を入力とするAC/DCコンバータ1を備える。AC/DCコンバータ1は、商用電源AC1からの交流電圧を整流回路(図示せず)により整流し、その出力を例えばMOSFETから成るスイッチング素子Q0でスイッチングし、平滑コンデンサ(図示せず)で平滑化することにより、直流電圧に変換する。
【0022】
AC/DCコンバータ1の出力端間には、複数個の発光ダイオード(第1の発光素子)LD1から成る主光源部2と電流検出抵抗3とが直列に接続されている。本実施形態では、主光源部2の発光ダイオードLD1として、発光色が白色、色温度が5000Kのものを用いている。勿論、発光ダイオードLD1はこれに限定される必要はなく、照明用途であれば他の発光ダイオードを用いてもよい。
【0023】
電流検出抵抗3の一端には、誤差増幅器A1の反転入力端子が接続されている。このため、誤差増幅器A1の反転入力端子には、電流検出抵抗3の一端の電位が入力される。誤差増幅器A1の非反転入力端子には、基準電圧源E1を介して電流検出抵抗3の他端が接続されている。したがって、誤差増幅器A1は、電流検出抵抗3の電圧降下分と基準電圧源E1の電源電圧との差分を増幅した信号を出力制御部5に出力する。
【0024】
出力制御部5では、誤差増幅器A1から入力されるフィードバック信号に基づいて、スイッチング素子Q0のオン/オフを制御する。これにより、出力制御部5は、主光源部2を流れる第1の負荷電流I0を一定に保つように制御する。また、出力制御部5は、例えばリモコン等の外部の装置(図示せず)から与えられる調光信号に基づいてAC/DCコンバータ1をスイッチング制御することで、第1の負荷電流I0をPWM制御して主光源部2の調光を行う。すなわち、出力制御部5は、図2に示すように、主光源部2に第1の負荷電流I0が流れる期間(オン期間T1)と、主光源部2に第1の負荷電流I0が流れない期間(オフ期間T2)とを交互に繰り返すことで、主光源部2を調光する。本実施形態では、調光信号の周波数を960Hzとしている。
【0025】
なお、誤差増幅器A1の出力端子と反転入力端子との間には、積分要素である抵抗R1及びコンデンサC1から成る位相補償回路4Aが接続されている。位相補償回路4Aは、低周波領域での利得を上げるとともに、高周波領域での利得を抑制しながら、帰還信号の位相を調整している。これら誤差増幅器A1及び位相補償回路4Aにより、定電流フィードバック回路4が構成されている。
【0026】
すなわち、本実施形態では、上記の商用電源AC1、AC/DCコンバータ1、電流検出抵抗3、定電流フィードバック回路4、出力制御部5により、主光源部2を流れる第1の負荷電流I0をPWM制御して主光源部2を調光する第1の電源部を構成している。
【0027】
主光源部2には、インピーダンス要素6及びスイッチング素子Q1(第1のスイッチ要素)の並列回路が直列に接続されている。スイッチング素子Q1は、例えばMOSFETから成り、後述する通信信号生成回路7から出力される通信信号によってオン/オフされる。
【0028】
インピーダンス要素6は、例えば抵抗などのインピーダンス素子(図示せず)と、例えば1乃至複数個の発光ダイオード(第2の発光素子)LD2を有する補助光源部60とを直列に接続して構成される。本実施形態では、補助光源部60の発光ダイオードLD2として、例えば発光ダイオードLD1の発光色とは異なる発光色(例えば、赤色、青色、緑色)を有する可視光発光ダイオードを用いている。勿論、発光ダイオードLD2はこれに限定される必要はなく、互いに異なる発光色を有する可視光発光ダイオードを組み合わせたものであってもよい。また、発光ダイオードLD2は、可視光通信のみを用途とするのであれば、例えば赤外線発光ダイオードを用いてもよい。
【0029】
補助光源部60は、例えば図3(a),(b)に示すように、発光ダイオードLD2に抵抗R0やダイオードD0等のインピーダンス素子を直列に接続して構成される。また、例えば図3(c)に示すように、複数(図示では2つ)の発光ダイオードLD2を直列に接続して補助光源部60を構成してもよい。なお、本実施形態ではインピーダンス要素6にスイッチング素子Q1を並列に接続しているが、図3(d)に示すように、補助光源部60の発光素子LD2にスイッチング素子Q1を並列に接続してもよい。
【0030】
通信信号生成回路7は、主光源部2の光強度を変調させて照明光に重畳する2値の通信信号を生成してスイッチング素子Q1に出力する。本実施形態では、通信信号の周波数は9.6kHzである。なお、通信信号生成回路7は、外部の装置(図示せず)から入力される送信信号に基づいて2値の通信信号を生成する構成であってもよい。本実施形態では、通信信号生成回路7により通信部を構成している。
【0031】
本実施形態では、通信信号に基づいてスイッチング素子Q1のオン/オフを制御することにより、インピーダンス要素6が主光源部2に接続されるか否かを切り替えることができる。これにより、主光源部2を流れる第1の負荷電流I0の大きさ、すなわち主光源部2の光強度を変化させることができる。
【0032】
具体的には、図2に示すように、スイッチング素子Q1がオンの場合には、主光源部2にはインピーダンス要素6を介さずに第1の負荷電流I0が流れるので、その電流値I1は第1の負荷電流I0の平均値よりも大きくなる。また、スイッチング素子Q1がオフの場合には、主光源部2にはインピーダンス要素6を介して第1の負荷電流I0が流れるので、その電流値I2は第1の負荷電流I0の平均値よりも小さくなる。このように、第1の負荷電流I0の大きさを変化させることで主光源部2の光強度に変調を付与し、主光源部2の照明光に通信信号を重畳させることができる。
【0033】
ここで、本実施形態では、インピーダンス要素6及びスイッチング素子Q1と並列に、第1の電源部とは異なる電源である第2の電源部を接続している。第2の電源部は、補助光源部60に点灯電力を供給するものであって、図1に示すように、商用電源AC1と、商用電源AC1からの交流電圧を所定の直流電圧に変換するAC/DCコンバータ8とから構成される。
【0034】
補助光源部60とAC/DCコンバータ8との間を繋ぐ経路には、ダイオードD1,抵抗R2,スイッチング素子Q2(第2のスイッチ要素)が直列に接続されている。ダイオードD1は、主光源部2を流れる第1の負荷電流I1がAC/DCコンバータ8へと逆流するのを防止する逆流防止回路である。また、抵抗R2は、スイッチング素子Q2がオンに切り替わる際に、AC/DCコンバータから短絡電流が流れるのを防ぐことで、AC/DCコンバータ8の短絡を防止する短絡防止回路である。なお、抵抗R2は、スイッチング素子Q2がオンの際に、補助光源部60を流れる第2の負荷電流を制限する。
【0035】
スイッチング素子Q2は、通信信号生成回路7から入力される通信信号に基づいてオン/オフが制御され、スイッチング素子Q1がオフの際にオンに切り替わることで、補助光源部60とAC/DCコンバータ8との間を繋ぐ経路を閉成する。これにより、第2の電源部から補助光源部60に点灯電力が供給され、補助光源部60から光を出力させることができる。
【0036】
また、スイッチング素子Q2は、スイッチング素子Q1がオンの際にオフに切り替わることで、補助光源部60とAC/DCコンバータ8との間を繋ぐ経路を開成する。これにより、スイッチング素子Q1がオンの際に補助光源部60の点灯に寄与しない電流が流れるのを防いで、無駄な電力を消費するのを防止することができる。
【0037】
なお、第2の電源部は、例えば図4に示すように、2次電池80と、AC/DCコンバータ8の出力により2次電池80を充電させる充電回路81とを設けた構成であってもよい。この第2の電源部は、通常時にはAC/DCコンバータ8から補助光源部60に点灯電力を供給し、商用電源AC1の停電時には2次電池80から補助光源部60に点灯電力を供給するように給電路を切り替える切替回路82を設けている。このように、2次電池80を併用して第2の電源部を構成することで、商用電源AC1が停電した場合にも補助光源部60に点灯電力を供給することができる。
【0038】
また、本実施形態では、第1の電源部と第2の電源部とは互いに異なる電源で構成されているが、例えば第1の電源部のAC/DCコンバータ1から補助光源部60に点灯電力を供給するように構成してもよい。すなわち、第1の電源部と第2の電源部とを共用するように構成してもよい。
【0039】
以下、本実施形態における可視光通信の動作について図面を用いて説明する。図2に示すように、PWM制御のオン期間T1では、主光源部2に第1の負荷電流I0が流れる。このため、通信信号に基づいてスイッチング素子Q1がオン/オフ制御されることで第1の負荷電流I0が制御され、主光源部2の照明光の光強度を変調することで、通信信号を重畳させることができる。
【0040】
また、PWM制御のオン期間T1では、補助光源60にも第2の負荷電流が流れる。このため、通信信号に基づいてスイッチング素子Q1がオン/オフ制御されることで第2の負荷電流が制御され、補助光源部60の光の光強度を変調することで、主光源部2の照明光に重畳させる通信信号を反転させた反転通信信号を重畳させることができる。
【0041】
一方、PWM制御のオフ期間T2では、主光源部2に第1の負荷電流I0が流れないために、主光源2の照明光に通信信号を重畳させることができないが、補助光源部60には、第2の電源部からの電力供給を受けて第2の負荷電流が流れる。このため、通信信号に基づいてスイッチング素子Q1がオン/オフ制御されることで第2の負荷電流I2が制御され、補助光源部60の光の光強度を変調することで、反転通信信号を重畳させることができる。
【0042】
なお、本実施形態では、PWM制御のオフ期間T2における第2の負荷電流I2の電流値I3が、前述の電流値I2と略等しくなるように抵抗R2を調整しているが、必ずしも電流値I3を電流値I2と略等しくなるように抵抗R2を調整する必要はない。というのも、一般に通信信号を受信する受信器(図示せず)では、受信した光の光強度が予め設定された閾値を超えるか否かに基づいて2値信号への変換処理を行う。このため、通信信号の2値に対応する各光強度は閾値を挟んで変化するものであればよく、電流値I3の大小の絶対値は閾値を超えるものであれば十分だからである。
【0043】
上述のように、本実施形態では、補助光源部60の光の光強度を変調することで、主光源部2が消灯しているPWM制御のオフ期間T2においても通信信号を重畳させることができる。したがって、本実施形態では、PWM制御で主光源部2の調光を行う場合にも途絶えることなく可視光通信を行うことができる。
【0044】
なお、補助光源部60の発光ダイオードLD2を赤外線発光ダイオードで構成した場合には、次のような利点がある。すなわち、例えば単に主光源部2を消灯している場合や、停電等により意図せずに主光源部2が消灯している場合にも、可視光を照射することなく通信信号を送信することが可能である。
【0045】
ところで、本実施形態では、上述のように通信信号により主光源部2の光強度を変調することで可視光通信を行っているが、その変調方式としては、例えば4値パルス位置変調(4PPM)方式を採用してもよい。4値パルス位置変調は、図5に示すように、先ずシンボル時間として定義される一定時間を4つのスロットに分割し、これらのスロットのうち何れか1つのスロットにパルスが入力されることにより、2ビットのデータを送信するものである。
【0046】
例えば、図5に示すように、1シンボル時間における通信信号(4PPM信号)が「1000」であれば「00」のデータを送信することができ、通信信号が「0100」であれば「01」のデータを送信することができる。同様に、1シンボル時間における通信信号が「0010」であれば「10」のデータを送信することができ、通信信号が「0001」であれば「11」のデータを送信することができる。
【0047】
(実施形態2)
以下、本発明に係る照明光通信装置の実施形態2について図面を用いて説明する。但し、本実施形態の基本的な構成は実施形態1と共通であるので、共通する部位には同一の番号を付して説明を省略する。本実施形態は、図6に示すように、スイッチング素子Q1と通信信号生成回路7との間に反転回路9を設けたことに特徴がある。
【0048】
反転回路9は、外部から与えられる調光信号に基づいて動作し、PWM制御のオフ期間T2において通信信号生成回路7から入力される通信信号を反転してスイッチング素子Q1に出力する。ここで、実施形態1では、既に述べたように補助光源部2の光に重畳される通信信号は、主光源部2の照明光に重畳される通信信号を反転した反転通信信号となっている。このため、各光源部2,60から送信される通信信号を個別に受信できるように受信器を構成する必要があり、受信部を2つ設けなければならない。
【0049】
一方、本実施形態では、PWM制御のオフ期間において、反転回路9により通信信号生成回路7から出力される反転信号を反転させてスイッチング素子Q1に出力している。このため、スイッチング素子Q1は、反転した通信信号によりオン/オフ制御されるため、補助光源部2の光に重畳される反転信号は、反転通信信号を反転したもの、すなわち主光源部2の照明光に重畳される通信信号と同位相となる。
【0050】
上述のように、本実施形態では、反転回路9を用いることで、PWM制御時のオフ期間T2において補助光源部60の光に重畳される通信信号の位相を、主光源部2の照明光に重畳される通信信号灯と同位相に変換している。したがって、各光源部2,60から送信される通信信号を個別に受信できるように受信器を構成する必要がない。
【0051】
以下、本発明に係る照明器具及び照明システムの実施形態について図面を用いて説明する。なお、以下の説明では、図7(b)における上下を上下方向と定めるものとする。先ず、本発明に係る照明器具の実施形態について説明する。本実施形態の照明器具10は、
例えば図7(a)〜(c)に示すように、下面を開口した擂り鉢状の器具本体10Aを備えたダウンライトである。そして、器具本体10Aの内部には、上記何れかの照明光通信装置(図示せず)が保持されている。照明光通信装置が具備する主光源部2及び補助光源部60は、器具本体10A下面の開口を介して外部の空間に臨むように配設されており、外部の空間に向けて光を照射する。
【0052】
ここで、例えば図8(a)に示すように、主光源部2からの照明光を反射する第1の反射板10Bと、補助光源部60からの光を反射する第2の反射板10Cとを器具本体10Aの内部に設けてもよい。この場合、各光源部2,60からの光の照射方向を各反射板10B,10Cによって調整することができる。また、例えば図8(b)に示すように、器具本体10A下面の開口から全周に亘って外向きに突出する鍔部10Dを設け、当該鍔部10Dに補助光源部60の発光素子LD2を設けてもよい。この場合、主光源部2と補助光源部60とを分離して配置することができる。
【0053】
なお、照明器具10は上記のようなダウンライトに限定される必要は無く、他の構成から成る照明器具であってもよい。
【0054】
本実施形態では、上記何れかの実施形態の照明光通信装置を用いているので、PWM制御で主光源部2の調光を行う場合にも途絶えることなく可視光通信を行うことができる。
【0055】
次に、本発明に係る照明システムの実施形態について説明する。本実施形態は、図9(a)に示すように、上記何れかの実施形態の照明光通信装置(図示せず)と、照明光通信装置から送信される通信信号を受信する受信器11とから構成される。なお、本実施形態では、天井に埋設された照明器具10の内部に照明光通信装置が保持されている。
【0056】
受信器11は、例えば図9(b)に示すように携帯端末から成り、照明器具10から照射される照明光を受光するフォトダイオードから成る受光部11Aを備える。また、受信器11は、例えば液晶ディスプレイ等から成る表示部11Bと、操作部(図示せず)と、受光部11Aで受光した照明光の光強度に基づいて通信信号を読み取る信号処理回路11Cとを備える(図9(c)参照)。なお、操作部は、表示部11Bをタッチパネルで構成することにより実現してもよい。また、受信器11は上記の携帯端末に限定される必要はなく、他の構成から成る受信器であってもよい。
【0057】
したがって、図9(a)に示すように、利用者は受信器11を所持することで、照明器具10の照明範囲内において照明器具10からの照明光に重畳した通信信号を受信することができる。これにより、受信器11では、例えば通信信号に含まれる位置情報を検出し、表示部11Bに画像を表示させたり内蔵のスピーカで音声を出力したりすることで、利用者に現在位置を知らせることができる。勿論、本実施形態の用途は利用者に現在位置を知らせる用途のみに限定される必要は無く、他の用途であってもよい。
【0058】
本実施形態では、上記何れかの実施形態の照明光通信装置を用いているので、PWM制御で主光源部2の調光を行う場合にも途絶えることなく可視光通信を行うことができる。
【0059】
なお、上述のように、主光源部2から送信される通信信号と、補助光源部60から送信される通信信号(反転通信信号)とが互いに反転している場合には、各通信信号を個別に受信できるように受光部11Aを2つ設けるべきである。これら受光部11Aは、「第1の受信部」と「第2の受信部」とに相当する。このように受光部11Aを2つ設けて各光源部2,60からの通信信号を個別に受信することで、通信処理回路11Cでは、各通信信号を個別に処理することができる。
【0060】
また、補助光源部60の発光ダイオードLD2の発光色が、主光源部2の発光ダイオードLD1の発光色(白色)とは異なる発光色(例えば、赤色、緑色、青色)である場合にも、上記のように2つの受光部11Aを設けるべきである。この場合、一方の受光部11Aに受光する光の発光色に応じて赤色フィルタや青色フィルタを設けることで、各通信信号を個別に受信することができる。更に、補助光源部60の発光ダイオードLD2が赤外線発光ダイオードである場合にも、上記のように2つの受光部11Aを設けるべきである。この場合、一方の受光部11Aは、赤外光受信器で構成する。
【符号の説明】
【0061】
1 AC/DCコンバータ(第1の電源部)
2 主光源部
3 電流検出抵抗(第1の電源部)
4 定電流フィードバック回路(第1の電源部)
5 出力制御部(第1の電源部)
6 インピーダンス要素
60 補助光源部
7 通信信号生成回路(通信部)
8 AC/DCコンバータ(第2の電源部)
AC1 商用電源(第1の電源部、第2の電源部)
LD1 発光ダイオード(第1の発光素子)
LD2 発光ダイオード(第2の発光素子)
Q1 スイッチング素子(第1のスイッチ要素)
Q2 スイッチング素子(第2のスイッチ要素)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1の発光素子から成る主光源部と、調光信号に基づいて前記主光源部を流れる負荷電流をPWM制御して前記主光源部を調光する第1の電源部と、前記主光源部に直列に接続されるインピーダンス要素と、前記インピーダンス要素と並列に接続される第1のスイッチ要素と、2値の通信信号を生成し且つ前記通信信号により前記第1のスイッチ要素のオン/オフを制御することで前記主光源部の出力する照明光の光強度を変調して前記通信信号を重畳させる通信部とを備え、前記インピーダンス要素は、前記第1の発光素子とは異なる第2の発光素子を有する補助光源部を有し、前記補助光源部には、前記PWM制御のオフ期間において前記補助光源部に点灯電力を供給する第2の電源部が接続され、前記通信部は、前記PWM制御のオフ期間において前記第1のスイッチ要素のオン/オフを制御することで前記補助光源部の出力する光の光強度を変調して前記通信信号を重畳させることを特徴とする照明光通信装置。
【請求項2】
前記補助光源部は、少なくとも1つの前記第2の発光素子を有し、前記第1のスイッチ要素は、少なくとも前記第2の発光素子に並列に接続されることを特徴とする請求項1記載の照明光通信装置。
【請求項3】
前記第2の発光素子は、赤外線発光ダイオードから成ることを特徴とする請求項1又は2記載の照明光通信装置。
【請求項4】
前記第2の発光素子は、可視光発光ダイオードから成ることを特徴とする請求項1又は2記載の照明光通信装置。
【請求項5】
前記可視光発光ダイオードは、単色の発光色を有する発光ダイオード、若しくは互いに異なる単色の発光色を有する複数の発光ダイオードを組み合わせて成ることを特徴とする請求項4記載の照明光通信装置。
【請求項6】
前記第1の電源部と前記第2の電源部とは、互いに異なる電源から構成されることを特徴とする請求項1乃至5の何れか1項に記載の照明光通信装置。
【請求項7】
前記補助光源部と前記第2の電源部との間を繋ぐ経路には、前記主光源を流れる負荷電流の前記第2の電源部への逆流を防止する逆流防止回路と、前記第2の電源部の短絡を防止する短絡防止回路とが接続されることを特徴とする請求項6記載の照明光通信装置。
【請求項8】
前記補助光源部と前記第2の電源部との間を繋ぐ経路を開閉する第2のスイッチ要素を備え、前記第2のスイッチ要素は、前記第1のスイッチ要素がオンに切り替わると前記経路を開成し、前記第1のスイッチ要素がオフに切り替わると前記経路を閉成することを特徴とする請求項6又は7記載の照明光通信装置。
【請求項9】
前記通信部は、前記PWM制御のオフ期間において前記通信信号を反転して前記第1のスイッチ要素に出力する反転回路を備えることを特徴とする請求項8に記載の照明光通信装置。
【請求項10】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の照明光通信装置を保持する器具本体を備えることを特徴とする照明器具。
【請求項11】
請求項1乃至9の何れか1項に記載の照明光通信装置と、前記照明光通信装置から送信される前記通信信号を受信する受信器とを備えることを特徴とする照明システム。
【請求項12】
前記受信器は、前記主光源部から送信される前記通信信号を受信する第1の受信部と、前記補助光源部から送信される前記通信信号を受信する第2の受信部とを備えることを特徴とする請求項11記載の照明システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2013−26692(P2013−26692A)
【公開日】平成25年2月4日(2013.2.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−157175(P2011−157175)
【出願日】平成23年7月15日(2011.7.15)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】