説明

照明器具

【課題】光出力効率の低減を抑えつつ、温度上昇が抑制された光源に良好な温度条件のもと、直視時の眩しさを低減することができる照明器具を提供する。
【解決手段】照明器具10は、反射鏡12が光源11からの光を、光軸BLに対して所望の照射角度θ1以内の角度を有する光に制御して反射する。複数の開口30A、30Bを有して反射鏡12と対向して取付けられる光学部材13は、所望の照射角度θ1よりも大きく、且つ斜めから照明器具10を見たときに光源11が見えてほしくない遮蔽角度θ2よりも小さい範囲内に存在する開口30が、光源11からの直射光を遮蔽する大きさとされる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は照明器具に係り、例えば商業空間の商品演出や、建築空間の空間演出に使用され、天井面、壁面、あるいは床面などに設置されるスポットライトなどの照明器具において、光源と、光源からの光を反射する反射鏡と、反射鏡と対向して取り付けられる光学部材と、を備える照明器具に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、光源と、光源からの光を反射する反射鏡と、反射鏡に対向して取り付けられる光学部材と、を備える照明器具が知られている。このような照明器具にあっては、光源から照射面に向かって照射される光として、光源から直接、照射面に向かって放射状に照射される直射光と、光源から一旦反射鏡で反射されて照射面に向かって略平行状に照射される反射光とに分けられる。反射光は、反射鏡形状によって、所望の広がり角を有する略並行光に制御されて照射面に照射される。一方、直射光は、制御されていない光のため、放射状に照射されて、必要としない空間または部位への光照射につながると共に、照明器具を直視した場合、光源の輝度が不快に感じることが多い。このような問題に対処するため、反射鏡に対向して取り付けられる光学部材によって、反射光の妨げにはならず、直射光のみを効果的に抑制するようにした照明器具が知られている。
【0003】
また、従来の照明器具としては、照明灯の光源前面に装着した透過カバーの中央部に、アルミニウム箔の光反射膜を施着することで、照射面の中央付近に照射される光を一旦反射鏡側に反射させた後、照射面の周辺付近に向けて照射することで、照射面の中央付近と周辺付近との照度を均等にするものもある(例えば特許文献1参照)。
【特許文献1】実開平6―15214号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
直射光のみを効果的に抑制するようにした光学部材としては、光源近傍に配設される略円筒状のグレアカットキャップや、六角形の多数の穴を配置したハニカムルーバなどが知られている。しかしながら、グレアカットキャップは、光源近傍に近接して配置されるため、光源の温度上昇につながる問題がある。また、ハニカムルーバは、多数の穴が密に配置されるため、光の出力効率低減を招く可能性がある。
【0005】
本発明は、前述した課題に鑑みてなされたものであり、その目的は、光出力効率の低減を抑えつつ、温度上昇が抑制された光源に良好な温度条件のもと、直視時の眩しさを低減することができる照明器具を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の上記目的は、下記の構成により達成される。
(1) 光源と、前記光源からの光を反射する反射鏡と、前記反射鏡と対向して取付けられる光学部材と、を備える照明器具であって、
前記反射鏡は、前記光源からの光を、光軸に対して所望の照射角度以内の角度を有する光に制御して反射し、
前記光学部材は複数の開口を有しており、前記光学部材の中心付近に配置され、前記光軸に対して前記照射角度よりも大きく、且つ斜めから前記照明器具を見たときに前記光源が見えてほしくない遮蔽角度よりも小さい範囲内に存在する前記開口は、前記光源からの直射光を遮蔽する大きさとしたことを特徴とする。
【0007】
ここで、光源としては、例えば、白熱電球、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、電球形蛍光灯、または高輝度LEDランプといったものを例示できる。反射鏡としては、例えば、光の反射面が放物面状に形成され、該放物面の焦点に配置された光源からの光を、所望の照射角度を有する略並行光線として反射する放物面鏡が例示できる。また、光学部材としては、例えば、板状部材に六角形の多数の穴が設けられたハニカムルーバなどを例示できる。
【0008】
このように構成された照明器具においては、反射鏡が、光源からの光を光軸に対して所望の照射角度以内の角度を有する光に制御して反射する。また、光学部材は、照射角度よりも大きく、且つ遮蔽角度よりも小さい範囲内に配置される開口が、光源からの直射光を遮蔽する大きさとなっているので、照明器具を斜めから見たとき、光源の直視が防止されて眩しさを効果的に抑制することができ、高いグレアカット性能が得られる。また、光の出力効率を過度に抑制することなく、照射面を高い照度で照明することができる。
【0009】
(2) 上記(1)に記載の構成の加えて、前記光軸に対して前記遮蔽角度よりも大きい範囲内に存在する前記光学部材の前記開口は、前記照射角度よりも大きな角度の光を照射可能な大きさとしたことを特徴とする。
【0010】
このように構成された照明器具においては、光軸に対して遮蔽角度よりも大きい範囲内に配置される開口が、照射角度よりも大きな角度の光を照射可能な大きさとなっているので、反射鏡によって反射される反射光を、開口から効率よく照射することができ、照射面を高い照度で照明することができる。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、反射鏡が、光源からの光を光軸に対して照射角度以内の角度を有する光に制御して反射する。また、光学部材は、照射角度よりも大きく、且つ遮蔽角度よりも小さい範囲内にある開口が、光源からの直射光を遮蔽する大きさとなっているので、照明器具を斜めから見たとき、光源の直視が防止されて眩しさを効果的に抑制することができ、高いグレアカット性能が得られる。また、光の出力効率を過度に抑制することなく、照射面を高い照度で照明することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、本発明に係る実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。図1は本発明に係る照明器具の全体斜視図、図2は図1に示す照明器具の分解斜視図、図3は図1に示す照明器具の正面図、図4は図3におけるIV―IV線での縦断面図である。
【0013】
図1から図4に示すように、本発明の照明器具10は、光源11と、反射鏡12と、光学部材13とを、主に備える。
【0014】
光源11は、白熱電球、ハロゲンランプ、メタルハライドランプ、電球形蛍光灯、または高輝度LEDランプなどであり、電源回路からソケット(いずれも、図示せず)を介して電力の供給を受けて発光し、光を放射状に照射する。本実施形態では、セラミックメタルハライドランプを採用している。
【0015】
反射鏡12は、光源(セラミックメタルハライドランプ)11から放射状に照射される光を反射し、照射面に向かって照射するものであり、ガラス基材や金属基材に金属膜が蒸着されてなるものが例示される。本実施形態の反射鏡12の反射面12aは、断面が放物線となる放物面状に形成されている。
【0016】
光源であるセラミックメタルハライドランプ11は、その中心が、放物面状に形成された反射面12aの焦点位置に位置かると共に、反射鏡12の開口面に対して略平行に配置されている。従って、反射鏡12は、セラミックメタルハライドランプ(光源)11から放射状に照射される光を反射して、光源11の光軸BLと略平行状の反射光、より詳細には、光軸BLに対して所望の照射角度θ1以内の角度を有する光に制御して照射する(図4参照)。照射角度θ1は、反射鏡12の反射面12aの形状によって適宜の角度に設定可能である。
【0017】
反射鏡12は、略円錐台形状に形成された中空のセード14に挿入され、前面側から挿入される反射鏡固定バネ15によって鍔部12bが挟み込まれてセード14に固定される。反射鏡12の前面側には、光学部材13、および前面枠16がセード14に嵌め込まれ、回転させることによってセード14に係止されて装着されている。これにより、光学部材13は、反射鏡12に対向するように取り付けられ、セード14にセラミックメタルハライドランプ(光源)11および反射鏡12と共に支持されている。
【0018】
光学部材13は、アルミニウムの円板に打ち抜き加工を施して正六角形の複数の開口30(30A、30B)を設けたものである。光学部材13は、小型正六角形の複数の開口30以外に、2つの大型正六角形31、32が円板の中心に対して2重に形成されている。内側の大型正六角形31内に形成された小型正六角形の開口30A、即ち、円板の略中央に形成された開口30Aの面積は小さく、大型正六角形31より外側、即ち、円板の周辺部に形成された開口30Bの面積は大きくなっている。
【0019】
このような光学部材13は、円板の中心が光源11の光軸BLと交わるようにセード14に取り付けられる。これにより、光源11の光軸BLと交わる部分の近傍では、周辺部分よりも光学部材13に設けられた開口30の単位面積あたりの開口面積が小さくなっている。
【0020】
図4に示すように、光学部材13の開口30は、光軸BLに対して、所望の照射角度θ1よりも大きく、且つ斜めから照明器具10を見たときに光源(セラミックメタルハライドランプ)11が見えてほしくない遮蔽角度θ2よりも小さい範囲内に存在する開口30の開口面積が、光源11からの直射光を遮蔽する大きさとなっている。また、光軸BLに対して遮蔽角度θ2よりも大きい範囲内に存在する開口30の開口面積は、照射角度θ1よりも大きな角度の光を照射可能な大きさとなっている。照射角度θ1および遮蔽角度θ2は、照明器具10の用途などに基づいて適宜設定される。
【0021】
これにより、照明器具10を遮蔽角度θ2より大きい斜め方向から見たとき、遮蔽角度θ2よりも小さい範囲内に存在する光学部材13の中心付近の開口30からの直接光が遮光されて、照明器具10を見たときの眩しさが防止される。また、所望の角度である照射角度θ1より小さい角度の光は、いずれの開口30によっても遮光されることなく照射されるので、光出力効率の低減が防止されて、照射面を高照度で照明することができる。
【0022】
セード14の側面(図1において右側面)には、リング状の軸受け部19が設けられており、この軸受け部19が、略L字型のアーム17の一端18に嵌合して、セード14を回動自在に支持する。アーム17の一端18内には、ソケット20が固定されており、このソケット20にセラミックメタルハライドランプ(光源)11が装着される。これにより、セード14は、ソケット20を収容するアーム17の一端18を回動軸として、換言すれば、ソケット20に装着されたセラミックメタルハライドランプ(光源)11を中心として、反射鏡12、前面枠16および光学部材13とともに首振り回転可能となっている。セード14の内部には、アーム17内に設けられた図示しない係止部と係合してセード14の回動範囲を制限する係合部が設けられており、これによりセード14の回動範囲が所定の角度内に規制される。
【0023】
アーム17の他端21は、安定器ボックス22の下面に回動自在に装着されており、アーム17を回動させることにより、セード14がアーム17の他端21を中心として水平面内で移動する。安定器ボックス22には、安定器23および配線ダクトに接続されるプラグ部24が収容され、カバー25によって閉鎖されている。
【実施例】
【0024】
次に、本発明に基づいて製作した照明器具(光学部材)と、従来の照明器具(光学部材)とを斜めから見た時、開口からの光源の見え方について比較した。図5は本発明に係る照明器具と、従来の照明器具とを斜めから見たとき、光源の見え方を見る角度ごとに比較して示す斜視図、図6は実施例で用いた本発明に係る光学部材の開口形状を示す正面図である。
なお、ここでは、所望の照射角度θ1を20°に、光源が見えてほしくない遮蔽角度θ2を40°に設定した。
【0025】
所望の照射角度θ1=20°、遮蔽角度θ2=40°に設定された本発明に係る光学部材13は、図6に示すように、外径105mm、厚さ8mmのアルミニウム円板を用い、直径99mmの範囲内に、開口(2種類)である複数の小型正六角形の開口30A、30B、および一対の大型正六角形の開口31、32を形成した。
【0026】
大型正六角形の開口31、32の対辺距離(外側対辺距離)は、それぞれ28.3mmおよび45.6mmである。一方の小型正六角形の開口30Aは、セル長さが6.7mmであり、光軸BLの近傍、即ち、対辺距離28.3mmの大型正六角形の開口31の内側に形成されている。開口30Aの横方向ピッチは7.3mmであり、縦方向ピッチは6.32mmである。
【0027】
また、他方の小型正六角形の開口30Bは、セル長さ8mmであり、大型正六角形の開口31の外側に形成されている。開口30Bの横方向ピッチは8.43mmであり、縦方向ピッチは7.30mmである。なお、各開口30A、30B、31、32を画成する壁の厚さは、1.5mmである。
【0028】
また、本発明に係る光学部材13と比較するための従来の光学部材43は、外径105mm、厚さ8mmのアルミニウム円板を用い、直径99mmの範囲内に、開口としてセル長さ6.7mmの複数の小型正六角形の開口30Aを、横方向ピッチ7.3mm、縦方向ピッチ6.32mmで一様に形成した。なお、開口30Aを画成する壁の厚さは、1.5mmである。
ここで、セル長さとは、正六角形の頂点間距離と定義する。
【0029】
図5(a)に示すように、従来の光学部材43は、一様に配置された開口30Aの厚さが8mm、セル長さが6.7mmであるので、照明器具を光軸BLに対して斜め40°(atan(6.7/8))未満の角度から見たときには、開口30Aから光源(セラミックメタルハライドランプ)11が直視され、眩しさが感じられる。逆に言えば、照明器具を光軸BLに対して斜め40°以上の角度から見たときに、光源11からの光は遮光される。
【0030】
一方、図5(b)に示すように、本発明に係る光学部材13は、光軸BLに対して所望の照射角度20°未満の角度に放射される光(直接光および反射光)は、開口30A、30Bを透過して照射面に効率よく照射される。
【0031】
また、所望の照射角度20°〜遮蔽角度40°の角度範囲に放射される直接光は、光学部材13の中心付近においては、光軸BL近傍(大型正六角形の開口31の内側)に配置されたセル長さ6.7mmの開口30A、および一対の大型正六角形の開口31、32の遮蔽壁によって遮光されて、直視時の眩しさが低減する。また、周辺部(大型正六角形の開口31の外側)には、セル長さ8mmの開口30Bを配置したので、開口率を大きく確保することができ、光出力の低減が抑えられる。
【0032】
なお、本発明の照明器具は、前述した実施形態および実施例に限定されるものでなく、適宜な変形,改良等が可能である。
【0033】
その他、前述した実施形態および実施例において例示した光源、反射鏡、光学部材、照明器具、開口、照射角度、遮蔽角度等の材質,形状,寸法,形態,数,配置個所等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係る照明器具の全体斜視図
【図2】図1に示す照明器具の分解斜視図
【図3】図1に示す照明器具の正面図
【図4】図3におけるIV―IV線での縦断面図
【図5】本発明に係る照明器具と、従来の照明器具を斜めから見たとき、光源の見え方を見る角度ごとに比較して示す斜視図
【図6】実施例で用いた本発明に係る光学部材の開口形状を示す正面図
【符号の説明】
【0035】
10 照明器具
11 セラミックメタルハライドランプ(光源)
12 反射鏡
13 光学部材
30A 開口
30B 開口
BL 光軸
θ1 照射角度
θ2 遮蔽角度

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光源と、前記光源からの光を反射する反射鏡と、前記反射鏡と対向して取付けられる光学部材と、を備える照明器具であって、
前記反射鏡は、前記光源からの光を、光軸に対して所望の照射角度以内の角度を有する光に制御して反射し、
前記光学部材は複数の開口を有しており、前記光学部材の中心付近に配置され、前記光軸に対して前記照射角度よりも大きく、且つ斜めから前記照明器具を見たときに前記光源が見えてほしくない遮蔽角度よりも小さい範囲内に存在する前記開口は、前記光源からの直射光を遮蔽する大きさとしたことを特徴とする照明器具。
【請求項2】
前記光軸に対して前記遮蔽角度よりも大きい範囲内に存在する前記光学部材の前記開口は、前記照射角度よりも大きな角度の光を照射可能な大きさとしたことを特徴とする請求項1に記載の照明器具。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図6】
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【図5】
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【公開番号】特開2009−266546(P2009−266546A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−113721(P2008−113721)
【出願日】平成20年4月24日(2008.4.24)
【出願人】(000005832)パナソニック電工株式会社 (17,916)
【Fターム(参考)】