説明

照明用電源装置

【課題】電源電圧のドロップによる照明のチラツキを防止することができるとともに、回路損失の低減化を図ることのできる照明用電源装置を提供する。
【解決手段】交流電圧を位相制御するトライアック11を有する調光器10と、この調光器10から出力される位相制御された交流電圧でLEDモジュール30の発光ダイオードLEDを点灯させる点灯回路20とを備え、調光器10で発光ダイオードLEDの点灯の明るさが調整可能となっている照明用電源装置であって、点灯回路20の入力電流を検出する入力電流検出手段と、この入力電流検出手段が検出した入力電流が所定電流以下になったとき、トライアック11に電流を流し続けさせる保持電流回路50とを設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、例えばLEDモジュールの発光ダイオードを点灯させる照明用電源装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、インバータ回路を備えた点灯装置が知られている(特許文献1参照)。
【0003】
かかる点灯装置は、交流電圧を位相制御するトライアックと、このトライアックにトリガ信号を出力する調光回路と、トライアックで位相制御された脈流電圧でLEDモジュールの発光ダイオードを点灯させる点灯回路とを備え、この点灯回路は、電源ループで発生する減衰振動などを防止する入力フィルタ回路と、この入力フィルタ回路を通ってきた前記脈流電圧を整流する整流回路と、この整流回路の出力電圧を平滑してLEDモジュールに印加する平滑コンデンサと、この平滑コンデンサからLEDモジュールへの電流供給を遮断するトランジスタとを有している。
【0004】
このLED点灯装置は、調光回路から出力されるトリガ信号によりトライアックが交流電圧を位相制御することによってLEDモジュールの発光ダイオードの点灯の明るさを調整するようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2004−273267号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、このような点灯装置にあっては、電源に並列接続された機器が動作することにより電源電圧のドロップが発生し、入力フィルタ回路にコンデンサがあることにより、電源電圧はそのドロップによってトライアックの出力電圧以下となる。このため、トライアックに流れる電流が一時的に停止してトライアックがオフする。すなわち、トライアックは誤動作することになる。
【0007】
この結果、位相制御波形が乱れ、この乱れがLEDのチラツキとなって現れる。
【0008】
このチラツキを抑制するためには、電源電圧ドロップ発生時に、電源電圧<トライアック出力電圧、とならないようにトライアックに常時電流を流す回路を追加すればよい。
【0009】
しかし、この常時電流を流す回路を追加すると回路損失が問題となり、特にLED照明の場合、その特徴である省電力化が図れなくなるという問題があった。
【0010】
この発明の目的は、電源電圧のドロップによる照明のチラツキを防止することができるとともに、回路損失の低減化を図ることのできる照明用電源装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0011】
請求項1の発明は、交流電圧を位相制御する位相制御素子を有する調光器と、この調光器から出力される位相制御された交流電圧で発光手段を点灯させる点灯回路とを備え、前記調光器で発光手段の点灯の明るさが調整可能となっている照明用電源装置であって、
前記点灯回路の入力電流を検出する入力電流検出手段と、
この入力電流検出手段が検出した入力電流が所定電流以下になったとき、前記位相制御素子に電流を流し続けさせる保持電流手段とを設けたことを特徴とする。
【発明の効果】
【0012】
この発明によれば、電源電圧のドロップによる照明のチラツキを防止することができ、しかも回路損失の低減化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】LED点灯装置の構成を示したブロック図である。
【図2】図1に示すLED点灯装置の回路を示した回路図である。
【図3】(A)は交流電源の電圧を示した説明図であり、(B)はトライアックによって位相制御された電圧を示した波形である。
【図4】点灯回路に入力される電流を示した説明図である。
【図5】(A)はドロップを示した電圧波形の説明図であり、(B)はドロップの拡大図であり、(C)はドロップが生じたときの点灯回路に入力する電流を示した説明図である。
【図6】(A)は点灯回路に入力する電流を示した説明図であり、(B)はドロップが生じたときの点灯回路に入力する電流を示した説明図である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0014】
以下、この発明に係る照明用電源装置の実施の形態である実施例を図面に基づいて説明する。
【実施例】
【0015】
図1は、照明用電源装置の1つであるLED点灯装置100を示す。このLED点灯装置100は、交流電源Eの交流電圧を位相制御する調光器10と、この調光器10で位相制御された交流電圧を基にしてLEDモジュール30の発光ダイオード(発光手段)LEDを点灯する点灯回路20とを備えている。60はLED点灯装置100に並列接続された例えばテレビなどの電機機器である。
【0016】
調光器10は、図2に示すように、トライアック(位相制御素子)11とトライアック11のゲート12にトリガ信号を出力する位相制御回路13などとを有している。位相制御回路13は、例えば交流電圧のゼロクロスを基準にして所定のタイミングで一定の周期毎にトリガ信号を出力するものであり、図示しない調整部材の操作によりそのタイミングを調整することが可能となっている。
【0017】
点灯回路20は、図2に示すように、入力フィルタ回路21と入力平滑回路22とインバータ回路23と出力平滑回路24と保持電流回路(保持電流手段)50とを有している。
【0018】
入力フィルタ回路21は、電源ループ(電源E−調光器10−点灯回路20のループ)で発生する減衰振動を防止するとともに外部への雑音を防止するものであり、コンデンサC1とラインフィルタL1等とを有している。
【0019】
入力平滑回路22は、調光器10で位相制御された交流電圧を全波整流する整流回路22Dと、全波整流された整流電圧を平滑して脈流を含んだ直流電圧に変換するコンデンサC2等とを有している。
【0020】
インバータ回路23は、コンデンサC2で変換された直流電圧を所定の直流電圧に変換する一般的な降圧チョッパ回路であり、制御回路25とトランジスタ(スイッチ素子)Q1とダイオードD1と抵抗R2とインダクタL2などとを有している。
【0021】
トランジスタQ1のベースは制御回路25の出力端子25aに抵抗R3を介して接続され、トランジスタQ1のコレクタはダイオードD1のアノードとインダクタL2の一方の端子に接続されている。ダイオードD1のカソードはコンデンサC2の陽極端子に接続され、トランジスタQ1のエミッタは抵抗R2を介してコンデンサC2の陰極端子に接続されている。また、制御回路25の入力端子25bには抵抗R2の一方の端子が接続され、抵抗R2に生じる電圧が制御回路25の入力端子25bに入力するようになっている。抵抗R2には抵抗(入力電流検出手段)R4が直列接続されている。
【0022】
制御回路25は、出力端子25aから制御信号(パルス信号)を所定の周期毎に出力してトランジスタQ1をオンさせるものである。また、制御回路25は、入力端子25bに入力する電圧に応じて制御信号のパルス幅を調整してLEDモジュール30の発光ダイオードLEDの明るさを一定にするものである。
【0023】
出力平滑回路24は、一方の端子がダイオードD1のカソードに接続され他方の端子がインダクタL2の他方の端子に接続されたコンデンサC3を有している。
【0024】
LEDモジュール30は、複数の発光ダイオードLEDを直列接続したものであり、一端の発光ダイオードLEDのアノードが出力平滑回路24のコンデンサC3の一方の端子に接続され、他端の発光ダイオードLEDのカソードがコンデンサC3の他方の端子とインダクタL2の他方の端子に接続されている。
【0025】
保持電流回路50は、スイッチ素子51と、このスイッチ素子51のオンオフを制御する制御回路(制御部)52と、抵抗R5と、PTC素子53とを有している。そして、抵抗R5とスイッチ素子51とPTC素子53とで導通回路が形成されている。
【0026】
スイッチ素子51のゲートは制御回路52の出力端子に接続されている。スイッチ素子51のソースは整流回路22Dの陰極端子22Dbに接続され、そのドレインが抵抗R5に接続されている。また、抵抗R5にはPTC(自己温度制御型)素子53が直列接続され、このPTC素子53を介して抵抗R5が整流回路22Dの陽極端子22Daに接続されている。このPTC素子53により、スイッチ素子51が常時オンしても抵抗R5の異常発熱を防止することができる。なお、PTC素子53は省略してもよい。
【0027】
制御回路52は、抵抗R4に生じる電圧が予め設定した閾値以下となっているときスイッチ素子51をオンにする。
[動 作]
次に、上記のように構成されるLED点灯装置100の動作について説明する。
【0028】
図1に示す交流電源Eから図3(A)に示す交流電圧が出力され、調光器10の位相制御回路13から所定のタイミングで所定の周期毎にトリガ信号が出力されるとトライアック11が導通し、この導通により例えば図3(B)に示す波形の電圧が調光器10から出力され、点灯回路20に入力電圧として入力する。また、このときに点灯回路20に入力する入力電流は図4に示す電流波形となる。
【0029】
入力電圧は、図2に示す入力フィルタ回路21を通って入力平滑回路22へ入力し、この入力平滑回路22で全波整流されるとともに平滑されて直流電圧に変換される。そして、この直流電圧はインバータ回路23に入力することになる。
【0030】
一方、インバータ回路23の制御回路25は、出力端子25aから制御信号を所定の周期毎に出力する。この制御信号が出力されている間、トランジスタQ1がオンし、図2の矢印Io−Qで示すようにLEDモジュール30の各発光ダイオードLEDに電流が流れ、各発光ダイオードLEDが点灯する。
【0031】
制御回路25からの制御信号の出力が停止されると、トランジスタQ1がオフし、インダクタL2に蓄えられたエネルギーにより、図2の矢印Io−Dで示すループで電流が流れる。この電流は制御回路25から制御信号が出力するまで継続し、各発光ダイオードLEDの点灯が維持されることになる。
【0032】
制御回路25から制御信号が出力される毎に上記動作が繰り返し行われ、LEDモジュール30の各発光ダイオードLEDが点灯し続けることになる。
【0033】
この発光ダイオードLEDの点灯の明るさを変えるには、調光器10の位相制御回路13の調整部材を操作すればよい。この操作により、位相制御回路13から出力されるトリガ信号の出力のタイミングが変わって発光ダイオードLEDの点灯の明るさが変わることになる。
【0034】
ここで、トランジスタQ1がオンし、図2の矢印Io−Qや矢印Io−Dで示すようにLEDモジュール30に電流が流れているとき、抵抗R4に生じる電圧は予め設定した閾値より大きくなっているので、制御回路52はスイッチ素子51をオフにしたままである。すなわち、図6(A)に示すように、点灯回路20に入力される電流は閾値以上となる。
【0035】
LED点灯装置100の動作中に電機機器60がオンされると、このオン時点で図5(A)に示すように交流電源Eの交流電圧にドロップPが発生する。このドロップPが生じた交流電圧は、調光器10によって位相制御されて図5(B)に示すようになるとともに、入力フィルタ回路21を介してそのまま入力平滑回路22によって全波整流される。
【0036】
全波整流された整流電圧はドロップPを含んでいるので、そのドロップPの期間、矢印Io−QやIo−Dで示すようにLEDモジュール30に流れる電流は、そのドロップPにより減少し、抵抗R4に生じる電圧が閾値以下となる。つまり、点灯回路20に入力する電流は図6(B)に示すように閾値以下となる。
【0037】
抵抗R4に生じる電圧が閾値以下となると、制御回路52はスイッチ素子51をオンにする。
【0038】
スイッチ素子51のオンにより、整流回路22Dの陽極端子22Daから出力される整流電流がPTC素子53、抵抗R5、スイッチ素子51を通って整流回路22Dの陰極端子22Dbへ流れる。このため、図5(A),(B)に示すようにドロップPが生じても調光器10のトライアック11は図6(B)の鎖線Dで示すように電流を流し続けることになり、ドロップPによるトライアック11の電流の途切れが防止される。これにより、LEDモジュール30の発光ダイオードLEDのチラツキが改善される。なお、図6(B)に示すピークV1,V2は保持電流回路50のスイッチ素子51に流れる電流を示す。
【0039】
保持電流回路50がない場合、電源電圧がドロップによってトライアック11の出力電圧以下となることにより、トライアック11がオフして調光器10から出力される電流は図5(C)および図6(B)の実線で示すようになり、発光ダイオードLEDの大きなチラツキとなる。なお、半波の期間で再度トライアック11がオンするのは、位相制御回路13がトライアック11のオフをゼロクロスとして誤って検知してしまうためである。
【0040】
しかし、保持電流回路50が設けられていることにより、トライアック11は図6(B)の鎖線Dで示すように電流を流し続けるので、そのチラツキは防止されることになる。
【0041】
また、ドロップPが生じたときだけ、スイッチ素子51がオンして電流を流すので、回路損失の低減化を図ることができる。
【0042】
因みに、整流回路22Dの陽極端子22Daと陰極端子22Dbを抵抗で接続すると、チラツキを防止することができるが、その抵抗に常時電流が流れることによる損失(回路損失)が発生する。チラツキを防止するための回路損失は約35W(LED点灯装置100は約9W)となり、発光ダイオードLEDの特徴である省電力化を図ることができなくなってしまう。なお、この実施例では、スイッチ素子51のオンによる回路損失は約0.3Wである。
【0043】
上記実施例では、複数の発光ダイオードLEDを点灯させるLED点灯装置100について説明したが、1つの発光ダイオードLEDを点灯させるLED点灯装置であってもよく、また、発光ダイオードLEDに限らず例えば放電灯などの点灯装置であってもよい。
【0044】
また、LED点灯装置100に電機機器60が並列接続されているが、この電機機器60の代わりにLEDモジュールであってもよい。
【0045】
この発明は、上記実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【符号の説明】
【0046】
10 調光器
11 トライアック(位相制御素子)
20 点灯回路
30 LEDモジュール
50 保持電流回路(保持電流手段)
LED 発光ダイオード(発光手段)
R5 抵抗(入力電流検出手段)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
交流電圧を位相制御する位相制御素子を有する調光器と、この調光器から出力される位相制御された交流電圧で発光手段を点灯させる点灯回路とを備え、前記調光器で発光手段の点灯の明るさが調整可能となっている照明用電源装置であって、
前記点灯回路の入力電流を検出する入力電流検出手段と、
この入力電流検出手段が検出した入力電流が所定電流以下になったとき、前記位相制御素子に電流を流し続けさせる保持電流手段とを設けたことを特徴とする照明用電源装置。
【請求項2】
前記点灯回路は、位相制御された前記交流電圧を整流する整流回路を有し、
前記保持電流手段は、前記整流回路の出力端子間に接続され且つその出力端子間に電流を流すための導通回路と、この導通回路の導通を制御する制御部とを有し、
前記導通回路は、直列接続された抵抗とスイッチ素子とを有し、
前記制御部は、前記入力電流検出手段が検出した入力電流が所定電流以下になったとき、スイッチ素子をオンにすることを特徴とする請求項1に記載の照明用電源装置。
【請求項3】
前記導通回路は、直列接続されたPTC素子を有することを特徴とする請求項2に記載の照明用電源装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−48998(P2012−48998A)
【公開日】平成24年3月8日(2012.3.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−190298(P2010−190298)
【出願日】平成22年8月27日(2010.8.27)
【出願人】(000180450)四変テック株式会社 (55)
【Fターム(参考)】