説明

照明装置およびプロジェクター

【課題】スーパールミネッセントダイオードを用いた光源において、照明光の対称性を高めることができる照明装置を提供する。
【解決手段】本発明に係る照明装置100は、光を発生させて導波させ、かつ当該光の導波方向が当該光の射出面の垂線に対して傾いて形成された傾斜利得領域160を有する発光素子110が配列された光源10と、光源10から射出された光の光軸を変換する光軸変換素子20と、光軸変換素子20から射出された光の配光角を制御する配光制御素子30と、を含み、発光素子110は、スーパールミネッセントダイオードであり、配光制御素子30から射出された光は、発散した状態となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、照明装置およびプロジェクターに関する。
【背景技術】
【0002】
複数の半導体発光素子を配列してなるアレイ光源を用いたプロジェクターの開発が進められている。このような半導体素子としては、半導体レーザー(Laser Diode)、スーパールミネッセントダイオード(Super Luminescent Diode、以下「SLD」ともいう)、LEDLight Emitting Diode、OLED(Organic Light Emitting Diode)等が知られている。
【0003】
中でもSLDは、半導体レーザーと比較して光出力の点ではやや劣るものの、利得領域構造の違いから本質的にスペックルノイズが小さい利点がある。しかし、半導体素子が形成される基板の端面(射出面)に対して利得領域を傾斜させて配置してなる非共振構造に起因して、その射出光は三日月のように対称性が低い角度分布を有する。
【0004】
一般的に、プロジェクターに用いる光変調素子の多くは、入射する照明光に対してその表示特性が入射角依存性を有する。そのため、投写画像の高画質化を図るためには、角度分布の対称性(光の断面形状の対称性ともいえる)が高く、均一な強度分布の照明光を用いることが望ましい。角度分布の非対称性や強度分布の不均一性は、明るさムラやコントラストムラの原因となるためである。
【0005】
例えば特許文献1には、複数の半導体レーザーを2次元アレイ状に配列した発光器を用い、この発光器から出力された光線を平行化して画像表示装置を照明する光学構成が開示されている。一般的な端面発光型の半導体レーザーでは、その利得領域は基板端面に対して垂直に形成されており、その射出光は断面形状が楕円形状となり、角度分布は高い対称性を有する。そのため、発光器からの射出光を比較的容易に平行光線に変換でき、光学スイッチ(光変調素子)を略均一な強度分布の光で照明することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】国際公開第99/49358号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しなしながら、特許文献1の構成において、半導体レーザーに代えてSLDを単純置換して用いた光学系では、上述した様に、半導体レーザーとSLDとにおける利得領域構造の違いから両者における射出光の角度分布は大きく異なるため、所望の照明状態を得ることは困難である。
【0008】
本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、SLDを用いた光源において、照明光の対称性を高めることができる照明装置を提供することにある。また、本発明のいくつかの態様に係る目的の1つは、上記照明装置を有するプロジェクターを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る照明装置は、
光を発生させて導波させ、かつ当該光の導波方向が当該光の射出面の垂線に対して傾いて形成された傾斜利得領域を有する発光素子が配列された光源と、
前記光源から射出された光の光軸を変換する光軸変換素子と、
前記光軸変換素子から射出された光の配光角を制御する配光制御素子と、
を含み、
前記発光素子は、スーパールミネッセントダイオードであり、
前記配光制御素子から射出された光は、発散した状態となる。
【0010】
このような照明装置によれば、配光制御素子によって、光軸変換素子から射出された光の配光角を制御することができる。これにより、傾斜利得領域によって生じる三日月のような弓状の断面形状および対称性の低い角度分布を有する光を、楕円形に近い断面形状および対称性の高い角度分布を有する光に変換することができる。したがって、照明対象を照明する照明光の対称性を高めることができる。
【0011】
さらに、配光制御素子から射出された光は、発散した状態とすることができる。そのため、複数の射出面の各々から射出された光は、少なくとも隣接する射出面から射出された光と、照明対象上で部分的に重なることができる。これにより、例えば、隣接する射出面から射出された光同士であって、互いに部分的にも重なることがない光により照明対象を照明する場合に比べて、照明対象をより均一な強度(照度分布)で照明することができる。
【0012】
本発明に係る照明装置において、
前記配光制御素子から射出された光を拡散する拡散素子を、さらに含むことができる。
【0013】
このような照明装置によれば、複数の射出面の各々から射出された光の強度分布を、(略)均一にすることができ、照度ムラの少ない照明光を得ることができる。
【0014】
本発明に係る照明装置において、
前記拡散素子から射出された光を照明対象に導くライトガイドを、さらに含むことができる。
【0015】
このような照明装置によれば、より多くの光を照明対象に入射させることができる。そのため、照度均一性を大きく低下させることなく、照明効率を向上させることができる。
【0016】
本発明に係る照明装置において、
前記光軸変換素子と前記配光制御素子とは、一体的に形成されていることができる。
【0017】
このような照明装置によれば、光軸変換素子と配光制御素子との界面における光損失を低減させることができる。さらに、コストを削減することができる。
【0018】
本発明に係る照明装置において、
前記発光素子は、複数の前記傾斜利得領域を有し、
複数の前記傾斜利得領域のうち第1傾斜利得領域の光の導波方向は、前記射出面の垂線に対して、一方側に傾いており、
複数の前記傾斜利得領域のうち第2傾斜利得領域の光の導波方向は、前記射出面の垂線に対して、他方側に傾いていることができる。
【0019】
このような照明装置によれば、照明光全体で見た場合の対称性を、より高めることができる。
【0020】
本発明に係る照明装置において、
前記第1傾斜利得領域と前記第2傾斜利得領域とは、同一の前記発光素子に設けられていることができる。
【0021】
このような照明装置によれば、照明光全体で見た場合の対称性を、より高めることができる。
【0022】
本発明に係る照明装置において、
前記第1傾斜利得領域と前記第2傾斜利得領域とは、異なる前記発光素子に設けられていることができる。
【0023】
このような照明装置によれば、照明光全体で見た場合の対称性を、より高めることができる。
【0024】
本発明に係るプロジェクターは、
本発明に係る照明装置と、
前記照明装置から射出された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置によって形成された画像を投写する投写装置と、
を含む。
【0025】
このようなプロジェクターによれば、発明に係る照明装置を有するので、投写画像の高画質化を図ることができる。
【0026】
本発明に係るプロジェクターにおいて、
前記配光制御素子によって制御された光の配光角は、前記投写装置で投写可能な角度であることができる。
【0027】
このようなプロジェクターによれば、発明に係る照明装置を有するので、投写画像の高画質化を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】本実施形態に係る照明装置を模式的に示す図。
【図2】本実施形態に係る照明装置の光源を模式的に示す図。
【図3】本実施形態に係る照明装置の光源から射出された光の角度分布を模式的に示す図。
【図4】本実施形態に係る照明装置の配光制御素子から射出された光の角度分布を模式的に示す図。
【図5】本実施形態に係る照明装置の拡散素子から射出された光の断面形状を模式的に示す図。
【図6】本実施形態に係る照明装置の拡散素子から射出された光の角度分布を模式的に示す図。
【図7】本実施形態に係る照明装置の発光素子を模式的に示す斜視図。
【図8】本実施形態に係る照明装置の発光素子を模式的に示す平面図。
【図9】本実施形態に係る照明装置の発光素子を模式的に示す断面図。
【図10】本実施形態の第1変形例に係る照明装置を模式的に示す図。
【図11】本実施形態の第2変形例に係る照明装置の発光素子を模式的に示す平面図。
【図12】本実施形態の第3変形例に係る照明装置の光源を模式的に示す図。
【図13】本実施形態の第3変形例に係る照明装置の発光素子を模式的に示す平面図。
【図14】本実施形態の第3変形例に係る照明装置の発光素子を模式的に示す平面図。
【図15】本実施形態の第4変形例に係る照明装置の光源を模式的に示す図。
【図16】本実施形態の第4変形例に係る照明装置の配向性制御素子から射出された光の断面形状を模式的に示す図。
【図17】本実施形態の第5変形例に係る照明装置の発光素子を模式的に示す平面図。
【図18】本実施形態の第6変形例に係る照明装置の発光素子を模式的に示す平面図。
【図19】本実施形態の第7変形例に係る照明装置の発光素子を模式的に示す平面図。
【図20】本実施形態に係るプロジェクターを模式的に示す図。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、本発明の好適な実施形態について、図面を参照しながら説明する。
【0030】
1. 照明装置
まず、本実施形態に係る発光装置について、図面を参照しながら説明する。図1は、本実施形態に係る照明装置100を模式的に示す図である。図2は、本実施形態に係る照明装置100の光源10を模式的に示す図であって、光源10を後述する射出面180側から見た図である。なお、図1では、便宜上、光源10を構成する発光素子110を簡略化して図示している。
【0031】
照明装置100は、図1に示すように、光源10と、光軸変換素子20と、配光制御素子30と、を含む。さらに、照明装置100は、拡散素子40を備えることができる。
【0032】
光源10は、光を射出することができる。光源10は、図2に示すように、発光素子110と、支持基板12と、を含むことができる。
【0033】
発光素子110は、複数設けられ、例えばY軸方向に沿って等間隔で配列されている。図示の例では、発光素子110は、6つ設けられているが、その数は、特に限定されない。
【0034】
発光素子110は、図1に示すように、複数の傾斜利得領域160を有する。すなわち、複数の傾斜利得領域160は、同一の基板上に形成されている。これにより、光源10と光軸変換素子20や配光制御素子30等との位置合わせが容易となり、照明対象50を照明する照明光の配光特性の制御が容易となる。複数の傾斜利得領域160は、例えば、互いに平行に配置されている。図1に示す例では、傾斜利得領域160は、6つ設けられているが、その数は特に限定されない。傾斜利得領域160は、1つの発光素子110において、例えば、X軸方向に沿って等間隔で配列されている。傾斜利得領域160は、光を射出する射出面180を有する。射出面180は、図2に示すように、X軸方向に沿って等間隔Dxで配置されている。
【0035】
また、光源10は、図2に示すように、複数の発光素子110がY軸方向に配列されて構成されている。射出面180は、Y軸方向に沿って等間隔Dyで配置されている。例えば図2に示す例では、射出面180は、XY平面に等間隔(Dx=Dy)でマトリックス状に(2次元アレイ状に)配置されている。
【0036】
ここで、図3は、発光素子110から(傾斜利得領域160から)射出される光L1の角度分布を模式的に示す図である。傾斜利得領域160は、図1に示すように、射出面180の垂線に対して傾斜している。そのため、傾斜利得領域160から射出される光L1は、図3に示すように、三日月のような弓状の角度分布を有する。図示の例では、X軸方向の配光角は±10°程度であるのに対して、Y軸方向の配光角は±35°程度であり、X軸方向と比べてY軸方向に角度分布は大きく広がっている。このように発光素子110から射出された光L1の角度分布が三日月のような弓状であることから、光束の断面形状も(発光素子110からやや離れた位置以降においては)同様に三日月のような弓状となる。なお、発光素子110の詳細な構成については、後述する。
【0037】
支持基板12は、図2に示すように、発光素子110を支持している。支持基板12は、発光素子110に対応して複数設けられている。支持基板12の材質としては、特に限定されないが、例えば、銅、アルミニウムが挙げられる。
【0038】
光軸変換素子20には、図1に示すように、光源10から射出された光が入射される。発光素子110から射出された光の光軸は、発光素子110と空気との屈折率差により、傾斜利得領域160の(射出面180の垂線に対する)傾斜角よりも大きく傾斜している。すなわち、発光素子110から射出された光の光軸は、照明光軸P(照明対象50の照明される面の垂線ともいえる)に対して傾斜している。光軸変換素子20は、このように照明光軸Pに対して傾斜した光の光軸を、照明光軸Pと(略)平行にすることができる。つまり、光軸変換素子20から射出された光は、照明光軸Pと(略)平行な光軸を有することができる。
【0039】
光軸変換素子20としては、照明光軸Pに対して所定の角度をなす斜面22を、射出面180と対応するようにアレイ状に備えたプリズムを用いることができる。図示の例では、光軸変換素子20は、6つの射出面180に対応して、6つの斜面22を有している。斜面22は、平坦な面であることができる。斜面22の照明光軸Pに対する傾斜角は、プリズムを形成する材質の屈折率と、光軸変換素子20に入射する光の光軸の(照明光軸Pに対する)傾斜角度と、によって決定される。
【0040】
なお、光軸変換素子20として、ホログラフィック光学素子を用いてもよく、また、プリズムとホログラフィック光学素子とを組み合わせたものを用いてもよい。
【0041】
配光制御素子30には、光軸変換素子20から射出された光が入射される。配光制御素子30は、射出する光の角度分布を所定の値に変換すると共に、角度分布における非対称性を改善して対称な角度分布へ近づけることができる。図4は、配光制御素子30から射出された光L2の角度分布を模式的に示す図(一つの発光素子110からの射出光について示したもの)である。図3および図4からわかるように、例えば、X軸方向の配光角は配光制御素子30の入射前の±10°程度から射出後は±2°程度へ、Y軸方向の配光角は入射前の±35°程度から射出後は±4°程度へと狭角度化されており、同時に角度分布における非対称性も改善されている。この角度分布における非対称性の改善の結果、配光制御素子30から射出される光L2の断面形状も三日月のような弓状から対称性が高い楕円形状に近い形状となる。
【0042】
拡散素子40には、配光制御素子30から射出された光が入射される。拡散素子40は、複数の射出面180の各々から射出された光を拡散させることで、光の断面形状の対称性を一層高め、照明対象50上における照明光全体の光強度分布(照度分布)を(略)均一にすることができる。拡散素子40としては、例えば、拡散板、ホログラフィック光学素子、レンズアレイ、または、これらを組み合わせたものを用いることができる。図示の例では、拡散素子40として、拡散板を用いている。図5は、拡散素子40から射出された光L3の断面形状を模式的に示す図(一つの発光素子110からの射出光について示す)であり、図6は、拡散素子40から射出された光L3の角度分布を模式的に示す図である。図5および図6からわかるように、断面形状は円形に近い楕円形状となっており、角度分布も円形に近い高い対称性を有している。
【0043】
配光制御素子30としては、図1に示すように、集光作用を有するレンズ32を、アレイ状に備えたレンズアレイを用いることができる。図示の例では、レンズ32は、光源10の射出面180に対応して、複数設けられている。レンズ32としては、球面レンズ、対称軸を有する非球面レンズ、X軸方向とY軸方向とで異なる曲率を有するトーリックレンズ、対称軸を持たない自由曲面レンズ、不連続な曲面を備えたフレネルレンズ等を用いることができる。SLDの場合、発光素子から射出される光の放射角は、図1のX軸方向とY軸方向とで大きく異なる場合が多い。したがって、レンズ32として非球面レンズ、トーリックレンズ、自由曲面レンズ等を用いた場合には、配光制御素子30から射出する光の方向をX軸方向とY軸方向とで独立して制御できるため、配光制御素子30から出射される光L2の配光分布を細かく制御でき、よって、断面形状も対称性の高い円形に近づけることができる。ただし、製造コストの点では球面レンズが採用し易い。
【0044】
なお、配光制御素子30として、ホログラフィック光学素子を用いてもよく、また、プリズムとホログラフィック光学素子とを組み合わせたものを用いてもよい。
【0045】
図1に示すように、配光制御素子30および拡散素子40によって、複数の射出面180の各々から射出された光は、少なくとも隣接する射出面180から射出された光と、照明対象50上で部分的に重なるような発散状態をとることができる。これにより、例えば、隣接する射出面180から射出された光同士であって、互いに部分的にも重なることがない光によって照明対象を照明する場合と比べて、照明対象をより均一な強度(照度分布)で照明することができる。照明対象上において部分的にも重なることがない光で照明した場合には、隣り合う光同士の境界などにおいては照明強度が著しく低下することから、不均一な照度分布となることが多い。
【0046】
照明装置100をプロジェクターに用いる場合、拡散素子40から射出された光の配光角(照明光軸Pに対する傾き角、発散角ともいえる)は、照明対象(プロジェクターの場合には光変調装置)が受光可能な角度、あるいは、投写光学系(投写装置)において投写可能な角度となるように設定される。一般的なプロジェクターの場合、光変調装置の最大受光角度や投写可能な最大角度は20°程度であることを考慮すると、拡散素子40から射出された光の配光角(角度分布範囲)は、例えば、0°より大きく、20°以下であるように設定されることが望ましい。
【0047】
図示の例では、複数の射出面180の各々から射出された光は、照明対象50上において、1つ隣りの射出面180から射出された光と重なっているが、2つ隣りの射出面180から射出された光とも重なっていてもよい。ただし、複数の射出面180の各々から射出された光は、完全には重なっていない。したがって、傾斜利得領域160ごとに射出光の光強度を制御することによって、照明対象50上の局所領域を任意の光強度で独立して照明することができる。特に液晶ライトバルブなどの光変調装置を照明する場合には、照明装置による光強度変調と、光変調装置による光強度変調と、を同時に行うことにより、高輝度性と高コントラスト性とを両立でき、表示画像の高画質化を図ることができる。
【0048】
なお、本発明の記載において、例えば、照明対象上において光Aと光Bとが重なるとは、照明対象における光Aの照明領域と光Bの照明領域とが重なっているということを意味しているが、光Aや光Bの照明領域とは、光の中心の強度に対して、10%以上の強度を有する領域を意味している。
【0049】
光軸変換素子20および配光制御素子30は、図1に示す例では、互いに接して形成されているが、互いに離間して形成されていてもよい。また、光軸変換素子20および配光制御素子30は、一体的に形成されていてもよい。例えば、1枚のガラス基板の一方の面に、複数の斜面22を形成して光軸変換素子20とし、他方の面(前記一方の面とは反対側の面)に、複数のレンズ32を形成して配光制御素子30としてもよい。これにより、光軸変換素子20と配光制御素子30との界面における光損失を低減させることができる。さらに、コストを削減することができる。
【0050】
また、拡散素子40は配光制御素子30から離れた位置に配置しているが、配光制御素子30と一体化し、界面における光損失を低減する構成としてもよい。例えば、配光制御素子30がレンズアレイで構成されている場合、レンズアレイの表面に拡散素子を形成して、一体化構成とすることができる。
【0051】
拡散素子40から射出された光は、照明対象50を照明する。照明対象50としては、特に限定されないが、照明装置100をプロジェクターに用いる場合は、液晶ライトバルブ(光変調装置)が挙げられる。
【0052】
次に、発光素子110の詳細な構成について説明する。図7は、本実施形態に係る発光素子110を模式的に示す斜視図である。図8は、本実施形態に係る発光素子110を模式的に示す平面図である。図9は、本実施形態に係る発光素子110を模式的に示す断面図であって、図8のIX−IX線断面図である。なお、図7〜図9では、便宜上、2つの傾斜利得領域160について図示している。
【0053】
以下では、発光素子110がInGaAlP系の赤色光を発光するSLDである場合について説明する。SLDは、半導体レーザーと異なり、端面反射による共振器の形成を抑えることにより、レーザー発振を防止することができる。そのため、スペックルノイズを低減することができる。
【0054】
発光素子110は、図7〜図9に示すように、基板102と、第1クラッド層104と、活性層106と、第2クラッド層108と、コンタクト層109と、第1電極112と、第2電極114と、反射膜130と、を備える。
【0055】
基板102としては、例えば、第1導電型(例えばn型)のGaAs基板などを用いることができる。
【0056】
第1クラッド層104は、基板102上に形成されている。第1クラッド層104としては、例えば、n型のInGaAlP層などを用いることができる。
【0057】
活性層106は、第1クラッド層104上に形成されている。活性層106は、例えば、InGaPウェル層とInGaAlPバリア層とから構成される量子井戸構造を3つ重ねた多重量子井戸(MQW)構造を有する。
【0058】
活性層106の形状は、例えば直方体(立方体である場合を含む)などである。活性層106は、図7および図8に示すように、第1側面105および第2側面107を有することができる。第1側面105および第2側面107は、互いに対向しており、図示の例では平行である。
【0059】
活性層106の一部は、電流経路となることができる傾斜利得領域160を構成している。傾斜利得領域160には、光を生じさせることができ、この光は、傾斜利得領域160内で利得(増幅)を受けることができる。傾斜利得領域160は、光の伝播領域(導波領域)ともいえる。発光素子110の積層方向から見た傾斜利得領域160の平面形状は、例えば、平行四辺形である。
【0060】
傾斜利得領域160に生じる光の波長帯において、例えば、第2側面107の反射率は、第1側面105の反射率よりも高い。例えば、第2側面107を反射膜130によって覆うことにより、高い反射率を得ることができる。反射膜130は、例えば誘電体多層膜ミラーなどである。具体的には、反射膜130としては、第2側面107側からAl層、TiO層の順序で4ペア積層したミラーなどを用いることができる。第2側面107の反射率は、100%、あるいはそれに近いことが望ましい。これに対し、第1側面105の反射率は、0%、あるいはそれに近いことが望ましい。例えば、第1側面105を反射防止膜(図示せず)によって覆うことにより、低い反射率を得ることができる。反射防止膜としては、例えばAl単層などを用いることができる。
【0061】
傾斜利得領域160は、図8に示すように平面視して(Y軸方向から見て)、第1側面105から第2側面107までの延在方向(光の導波方向)が、第1側面105の垂線Qに対して傾いて設けられている。これにより、傾斜利得領域160に生じる光のレーザー発振を抑制または防止することができる。図1および図8に示すように、複数の傾斜利得領域160は、例えば、垂線Qに対して同じ方向に傾いて設けられている。
【0062】
傾斜利得領域160は、図8に示すように、第1側面105に設けられた第1端面180と、第2側面107に設けられた第2端面182と、を有することができる。そのため、傾斜利得領域160に生じる光の波長帯において、第1端面180の反射率は、例えば0%、あるいはそれに近い値であり、第2端面182の反射率は、例えば100%、あるいはそれに近い値である。したがって、第1端面180は、傾斜利得領域160に生じる光を射出させる射出面(図1の射出面180に対応する)であるといえ、第2端面182は、傾斜利得領域160に生じる光を反射させる反射面であるといえる。すなわち、第1側面105は、複数の射出面180(第1端面180)を有することができ、第1側面105の垂線Qは、射出面180の垂線Qであるともいえる。
【0063】
第2クラッド層108は、図7および図9に示すように、活性層106上に形成されている。第2クラッド層108としては、例えば、第2導電型(例えばp型)のAlGaInP層などを用いることができる。
【0064】
例えば、p型の第2クラッド層108、不純物がドーピングされていない活性層106、およびn型の第1クラッド層104により、pinダイオードが構成される。第1クラッド層104および第2クラッド層108の各々は、活性層106よりも禁制帯幅が大きく、屈折率が小さい層である。活性層106は、キャリア(電子および正孔)を注入することで、光を発生させて導波させ、かつ光を増幅する機能を有する。第1クラッド層104および第2クラッド層108は、活性層106を挟んで、注入キャリア(電子および正孔)並びに光を閉じ込める機能を有する。
【0065】
発光素子110は、第1電極112と第2電極114との間に、pinダイオードの順バイアス電圧を印加すると、活性層106の傾斜利得領域160において電子と正孔との再結合が起こる。この再結合により発光が生じる。この生じた光を起点として、連鎖的に誘導放出が起こり、傾斜利得領域160内で光の強度が増幅される。そして、強度が増幅された光は、図7に示すように、傾斜利得領域160の射出面180から光L1として射出される。
【0066】
コンタクト層109は、図7および図9に示すように、第2クラッド層108上に形成されている。コンタクト層109としては、第2電極114とオーミックコンタクトする層を用いることができる。コンタクト層109としては、例えば、p型のGaAs層などを用いることができる。
【0067】
第1電極112は、基板102の下の全面に形成されている。第1電極112は、該第1電極112とオーミックコンタクトする層(図示の例では基板102)と接していることができる。第1電極112は、基板102を介して、第1クラッド層104と電気的に接続されている。第1電極112は、発光素子110を駆動するための一方の電極である。第1電極112としては、例えば、基板102側からCr層、AuGe層、Ni層、Au層の順序で積層したものなどを用いることができる。
【0068】
第2電極114は、コンタクト層109上に形成されている。第2電極114は、コンタクト層109を介して、第2クラッド層108と電気的に接続されている。第2電極114は、発光素子110を駆動するための他方の電極である。第2電極114としては、例えば、コンタクト層109側からCr層、AuZn層、Au層の順序で積層したものなどを用いることができる。第2電極114の下面(第2電極114とコンタクト層109との接触面)は、傾斜利得領域160と同様の平面形状を有することができる。第2電極114とコンタクト層109との接触面の平面形状によって、電極112,114間の電流経路が決定され、その結果、傾斜利得領域160の平面形状が決定されることができる。
【0069】
上述の例では、いわゆる利得導波型の発光素子110について説明したが、発光素子110は、例えばコンタクト層109および第2クラッド層108をパターニングすることにより柱状部を形成し、該柱状部が形成されている領域と、該柱状部が形成されていない領域と、に屈折率差を設けて光を閉じ込める屈折率導波型でもよい。
【0070】
以上、本実施形態に係る発光素子110の一例として、InGaAlP系の場合について説明したが、発光素子110は、発光利得領域が形成可能なあらゆる材料系を用いることができる。半導体材料であれば、例えば、AlGaN系、InGaN系、GaAs系、AlGaAs系、InGaAs系、InGaAsP系、ZnCdSe系などの半導体材料を用いることができる。
【0071】
本実施形態に係る照明装置100によれば、例えば、以下の特徴を有する。
【0072】
照明装置100によれば、光軸変換素子20によって発光素子110からの射出光の光軸を照明光軸Pと略一致させ、また、配光制御素子30および拡散素子40によって、照明光の配光角(角度分布)を所望の値に制御することができる。これにより、傾斜利得領域160によって生じる三日月のような弓状の断面形状および対称性の低い角度分布を有する光を、円形に近い断面形状および対称性の高い角度分布を有する光に変換することができる。したがって、照明装置100は、照明対象50を照明する照明光の対称性を高めることができる。
【0073】
さらに、配光制御素子30および拡散素子40から射出された光は、発散した状態となることができる。そのため、複数の射出面180の各々から射出された光は、少なくとも隣接する射出面180から射出された光と、照明対象50上で部分的に重なることができる。これにより、照明装置100では、例えば、部分的にも重なることがない光によって照明対象を照明する場合に比べて、照明対象をより均一な強度(照度分布)で照明することができる。
【0074】
なお、本実施形態では拡散素子40を備えているが、発光素子110からの射出光の特性(断面形状や角度分布)によっては、拡散素子40を用いること無く配光制御素子30だけで、所望の特性の照明光を得ることができる。
【0075】
2. 照明装置の変形例
2.1. 第1変形例
次に、本実施形態の第1変形例に係る照明装置について、図面を参照しながら説明する。図10は、本実施形態の第1変形例に係る照明装置200を模式的に示す図である。
【0076】
以下、本実施形態の第1変形例に係る照明装置200において、本実施形態に係る照明装置100の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。このことは、後述する本実施形態の第2〜第5変形例に係る照明装置300,400,500,600についても同様である。
【0077】
照明装置200は、図10に示すように、ライトガイド60を含む。ライトガイド60は、拡散素子40から射出された光を、照明対象50に導くことができる。ライトガイド60は、拡散素子40と照明対象50との間に設けられている。ライトガイド60としては、例えば、管状部材の内面にミラー体を形成したもの、棒状の透光性媒体などを用いることができる。ライトガイド60は、拡散素子40から射出された光が入射する部分と、ライトガイド60から照明対象50に対して光を射出する部分と、を除いた部分に反射面61が設けられる。反射面61は、ミラー体によって構成されていてもよく、全反射面によって形成されていてもよい。
【0078】
照明装置100の例で説明したように、照明対象50に入射する光は、図1に示すように、発散した状態であるので、照明対象50に入射しない光が発生し、照明効率が低下する場合がある。しかしながら、照明装置200では、図10に示すように、ライトガイド60が無い場合には照明対象50に入射しない光を、ライトガイド60の反射面61で反射させることで照明対象50に入射させることができ、より多くの光を照明対象50に入射させることができる。そのため、照明装置200では、照度均一性を大きく低下させることなく、照明効率を向上させることができる。
【0079】
なお、ライトガイド60の光射出端部の断面形状および大きさ(XY平面の形状および大きさ)は、照明対象50の断面形状および大きさと概ね同じとすることが望ましいが、これに限定されない。例えば、照明対象50の断面形状に対してライトガイド60の光出射部の断面形状を相似形とし、照明対象50の大きさに対してライトガイド60の光出射部の大きさを一回り大きくした、或いは、一回り小さくした等の寸法形状を採用することができる。すなわち、ライトガイド60の光射出端部の断面形状および大きさは、照明対象50を高い効率で(略)均一に照明するように、照明光の配光角(発散角)を考慮して設定することが望ましい。
【0080】
2.2. 第2変形例
次に、本実施形態の第2変形例に係る照明装置について、図面を参照しながら説明する。図11は、本実施形態の第2変形例に係る照明装置300の発光素子110を模式的に示す平面図である。なお、図11では、便宜上、発光素子110を簡略化して図示している。
【0081】
照明装置100の例では、図1および図8に示すように、発光素子110の複数の傾斜利得領域160は、第1側面105の垂線Qに対して、同じ側に傾斜していた。
【0082】
これに対し、照明装置300の発光素子110では、図11に示すように、複数の傾斜利得領域160のうち第1傾斜利得領域160aは、垂線Qに対して一方側に傾いており、複数の傾斜利得領域160のうち第2傾斜利得領域160bは、垂線Qに対して他方側(前記一方側とは異なる側)に傾いている。第1傾斜利得領域160aと第2傾斜利得領域160bとは、垂線Qに関して、対称となる形状を有することができる。図示の例では、第1傾斜利得領域160aと第2傾斜利得領域160bとは、同じ数配置され、X軸方向に沿って交互に配列されている。
【0083】
照明装置100の例で説明したように、配光制御素子30から射出した光L2は、図4に示すように、角度分布における対称性(光の断面形状の対称性)が高められているものの、光L2の断面形状を完全な楕円形状にできない場合がある。そこで、照明装置300では、図11に示すように、複数の傾斜利得領域160の傾斜方向を変えて、第1傾斜利得領域160aおよび第2傾斜利得領域160bとして配置することにより、照明光全体で見た場合の角度分布における対称性をより高めることができる。
【0084】
2.3. 第3変形例
次に、本実施形態の第3変形例に係る照明装置について、図面を参照しながら説明する。図12は、本実施形態の第3変形例に係る照明装置400の光源10を模式的に示す図であって、図2に対応するものである。図13および図14は、本実施形態の第3変形例に係る照明装置400の発光素子110を模式的に示す平面図である。なお、図13および図14では、便宜上、発光素子110を簡略化して図示している。
【0085】
照明装置400の光源10では、図12に示すように、複数の発光素子110のうちの第1発光素子110aと第2発光素子110bとが、Y軸方向に沿って交互に配列されている。図示の例では、第1発光素子110aと第2発光素子110bとは、同じ数ずつ配置されている。
【0086】
第1発光素子110aでは、図13に示すように、複数の傾斜利得領域160は、第1側面105の垂線Qに対して一方側に傾斜した第1傾斜利得領域160aである。これに対し、第2発光素子110bでは、図14に示すように、複数の傾斜利得領域160は、垂線Qに対して他方側(前記一方側とは異なる側)に傾斜した第2傾斜利得領域160bである。図示の例では、第1発光素子110aに設けられた第1傾斜利得領域160aの数と、第2発光素子110bに設けられた第2傾斜利得領域160bの数とは、同じである。
【0087】
照明装置400では、照明装置300と同様に、照明装置100の例に比べて、照明光全体で見た場合の角度分布における対称性を、より高めることができる。
【0088】
2.4. 第4変形例
次に、本実施形態の第4変形例に係る照明装置について、図面を参照しながら説明する。図15は、本実施形態の第4変形例に係る照明装置500の光源10を模式的に示す図であって、図2に対応するものである。
【0089】
照明装置100の例では、図2に示すように、光源10の射出面180は、XY平面に等間隔でマトリックス状に配置されていた。
【0090】
これに対し、照明装置500の光源10では、図15に示すように、複数の射出面180は、Y軸方向において隣り合う射出面180間の距離Dyが、X軸方向において隣り合う射出面180間の距離Dxより、大きくなるように配置されている。
【0091】
照明装置100の例で説明したように、配光制御素子30から射出した光L2は、図4に示すように、角度分布における対称性が高められているものの、その角度分布はX軸方向とY軸方向とで異なる場合が多い。そのため、射出面180を、XY平面に等間隔で配置すると、X軸方向とY軸方向とで照明光の照度分布が均一とならない場合がある。例えば、図2に示す例では、Y軸方向は発光素子110の積層方向であるため、Y軸方向における発光素子110内での光の閉じ込め幅がX軸方向の光の閉じ込め幅よりも小さくなる。したがって、光L2は、Y軸方向の配光角がX軸方向の配光角よりも大きくなる。照明装置500では、Y軸方向に比べてX軸方向の射出面180の配置を密とすることにより、図16に示すように、複数の光L2をX軸方向およびY軸方向において密接させることができる。もしくは、隣接する光L2同士において一部が重なる場合には、X軸方向およびY軸方向における重なり具合を近づけることができる。これにより、照明装置500では、照明対象上における照明光の照度分布の均一性を高めることができる。
【0092】
なお、図16では、複数の配光制御素子30から射出された光L2の断面形状を模式的に示しており、便宜上、光L2の断面形状を、楕円形として図示している。
【0093】
2.5. 第5変形例
次に、本実施形態の第5変形例に係る照明装置について、図面を参照しながら説明する。図17は、本実施形態の第5変形例に係る照明装置600の発光素子110を模式的に示す平面図であって、図8に対応するものである。
【0094】
照明装置600の発光素子110としては、図17に示すように、第1利得領域161と第2利得領域162とにより構成された利得領域対163を傾斜利得領域160として備えたものを用いることができる。図示はしないが、例えば、利得領域対163は複数設けられ、X軸方向に沿って、配列されている。
【0095】
第1利得領域161は、第1側面105の垂線Qに対して一方側に傾斜して、第1側面105から第2側面107まで設けられている。第2利得領域162は、垂線Qに対して他方側(前記一方側とは異なる側)に傾斜して、第1側面105から第2側面107まで設けられている。図示の例では、第1利得領域161と第2利得領域162とは、垂線Qに関して対称に配置されている。
【0096】
第1利得領域161の第1端面180(射出面180)と、第2利得領域162の第1端面180とは、互いに離間している。一方、第1利得領域161の第2端面182(反射面182)と、第2利得領域162の第2端面182とは、第2側面107において、少なくとも一部が重なっており、図示の例では、完全に重なっている。すなわち、利得領域対163は、発光素子110の積層方向から見てV字型の平面形状を有することができる。
【0097】
例えば、第1利得領域161に生じる光の一部は、第2側面107(第2端面182)において反射して、第2利得領域162の第1端面180から射出されるが、その間に光強度が増幅される。同様に、第2利得領域162に生じる光の一部は、第2側面107において反射して、第1利得領域161の第1端面180から射出されるが、その間に光強度が増幅される。なお、第1利得領域161に生じる光には、直接、第1利得領域161の第1端面180から射出されるものもある。同様に、第2利得領域162に生じる光には、直接、第2利得領域162の第1端面180から射出されるものもある。
【0098】
照明装置600によれば、照明装置300と同様に、照明装置100の例に比べて、照明光全体で見た場合の角度分布における対称性をより高めることができる。
【0099】
2.6. 第6変形例
次に、本実施形態の第6変形例に係る照明装置について、図面を参照しながら説明する。図18は、本実施形態の第6変形例に係る照明装置700の発光素子110を模式的に示す平面図であって、図17に対応するものである。以下、本実施形態の第6変形例に係る照明装置700において、本実施形態の第5変形例に係る照明装置600の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0100】
照明装置700の発光素子110は、図18に示すように、反射部140を有する。反射部140は、平面視において(Y軸方向から見て)活性層106の外周の内側に設けられている。反射部140としては、例えば、所定の間隔で配置された複数の溝142で構成されたDBR(Distributed Bragg Reflector)ミラーを用いることができる。図示はしないが、溝142の底面は、活性層106の下面より下方に位置していることが望ましい。溝142の内部は、空洞(空気)であってもよいし、絶縁部材で埋め込まれていてもよい。図示の例では、溝142は、4つ設けられているが、その数は、特に限定されない。反射部140は、第1利得領域161および第2利得領域162に生じる光を、反射させることができる。
【0101】
第2利得領域162は、第1部分162aと、第2部分162bと、を有する。第1部分162aは、第1側面105から反射部140まで設けられている。第1部分162aは、第1端面180を有することができる。第1部分162aは、例えば、第1利得領域161と平行である。第2部分162bは、反射部140から第2側面107まで設けられている。第2部分162bは、第2端面182を有することできる。第1部分162aと第2部分162bとは、反射部140において重なっている。図示の例では、第1部分162aと第2部分162bとは、第1側面105の垂線Qと直交する仮想直線Rに関して、対称に配置さている。
【0102】
例えば、第1利得領域161に生じる光の一部は、第2側面107および反射部140において反射して、第2利得領域162の(第1部分162aの)第1端面180から射出される。
【0103】
照明装置700では、第1利得領域161の第1端面180から射出される光の光軸と、第2利得領域162の第1端面180から射出される光の光軸と、を(略)平行にすることができる。そのため、照明装置700では、例えば、照明装置600に比べて、光軸変換素子20などの光学系の設計の簡略化を図ることができる。
【0104】
2.7. 第7変形例
次に、本実施形態の第7変形例に係る照明装置について、図面を参照しながら説明する。図19は、本実施形態の第7変形例に係る照明装置800の発光素子110を模式的に示す平面図であって、図18に対応するものである。以下、本実施形態の第7変形例に係る照明装置800において、本実施形態の第6変形例に係る照明装置700の構成部材と同様の機能を有する部材については同一の符号を付し、その詳細な説明を省略する。
【0105】
照明装置800の発光素子110は、図19に示すように、照明装置700の発光素子110のように反射部140を有していないが、第1利得領域161の第1端面180から射出される光の光軸と、第2利得領域162の第1端面180から射出される光の光軸と、を(略)平行にすることができる。
【0106】
照明装置800では、第2利得領域162は、円弧状(または楕円弧状)の平面形状を有する第3部分162cを有する。第3部分162cは、第2利得領域162の第1部分162aと第2部分162bとに挟まれて配置されている。より具体的には、第1部分162aは、第1側面105から直線状に延出して第3部分162cに接続されている。また、第2部分162bは、第2側面107から直線状に延出して第3部分162cに接続されている。
【0107】
例えば、第1利得領域161に生じる光の一部は、第2側面107において反射した後、第3部分162c内を進行する際に、進行方向が曲げられ、第1部分162aの第1端面180から射出される。そのため、上述のように、照明装置800では、第1利得領域161の第1端面180から射出される光の光軸と、第2利得領域162の第1端面180から射出される光の光軸と、を(略)平行にすることができる。
【0108】
3. プロジェクター
次に、本実施形態に係るプロジェクターについて、図面を参照しながら説明する。図20は、本実施形態に係るプロジェクター900を模式的に示す図である。なお、図20では、便宜上、プロジェクター900を構成する筐体を、省略して図示している。
【0109】
プロジェクター900は、赤色光を射出する赤色照明装置と、緑色光を射出する緑色照明装置、青色光を射出する青色照明装置と、を含むことができる。プロジェクター900の各照明装置としては、本発明に係る照明装置を用いることができる。以下では、図20に示すように、プロジェクター900の照明装置として、照明装置100(赤色照明装置100R、緑色照明装置100G、青色照明装置100B)を用いた例について説明する。
【0110】
プロジェクター900は、さらに、透過型の液晶ライトバルブ(光変調装置)950R,950G,950Bと、クロスダイクロイックプリズム(色光合成手段)970と、投写レンズ(投写装置)980と、を含むことができる。
【0111】
各照明装置100R,100G,100Bから射出された光は、各液晶ライトバルブ950R,950G,950Bに入射する。各液晶ライトバルブ950R,950G,950Bは、入射した光をそれぞれ画像情報に応じて変調する。なお、液晶ライトバルブ950R,950G,950Bは、図1に示した照明対象50に対応するものである。
【0112】
各液晶ライトバルブ950R,950G,950Bによって変調された3つの色光は、クロスダイクロイックプリズム970に入射する。クロスダイクロイックプリズム970は、例えば、4つの直角プリズムを貼り合わせて形成され、その内面に赤色光を反射する誘電体多層膜と青色光を反射する誘電体多層膜とが十字状に配置されている。これらの誘電体多層膜によって3つの色光が合成され、カラー画像を表す光が形成される。
【0113】
クロスダイクロイックプリズム970によって合成された光は、投写光学系である投写レンズ980に入射する。投写レンズ980は、液晶ライトバルブ950R,950G,950Bによって形成された像を拡大して、スクリーン(表示面)990に投写する。
【0114】
なお、上述したとおり、照明装置100R,100G,100Bから射出された光の配光角(角度分布)は、投写レンズ980において投写可能な角度となるように設定される。より具体的には、照明装置100R,100G,100Bから射出された光の配光角は、20°程度以下となるように設定される。
【0115】
また、上述の例では、光変調装置として透過型の液晶ライトバルブを用いたが、液晶以外のライトバルブを用いてもよいし、反射型のライトバルブを用いてもよい。このようなライトバルブとしては、例えば、反射型の液晶ライトバルブや、デジタルマイクロミラーデバイス(Digital Micromirror Device)が挙げられる。また、投写光学系の構成は、使用されるライトバルブの種類によって適宜変更される。
【0116】
プロジェクター900によれば、本発明に係る照明装置(例えば照明装置100)を含むことができる。照明装置100によれば、液晶ライドバルブ(光変調装置)を角度分布における対称性が高い照明光で照度ムラ無く均一に照明することができる。そのため、プロジェクター900では、投写画像の高画質化(高輝度化と高コントラスト化)を図ることができる。
【0117】
上述した実施形態および変形例は一例であって、これらに限定されるわけではない。例えば、各実施形態および各変形例を適宜組み合わせることも可能である。
【0118】
上記のように、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明の新規事項および効果から実体的に逸脱しない多くの変形が可能であることは当業者には容易に理解できよう。したがって、このような変形例はすべて本発明の範囲に含まれるものとする。
【符号の説明】
【0119】
10 光源、12 支持基板、20 光軸変換素子、22 斜面、30 配光制御素子、
32 レンズ、40 拡散素子、50 照明対象、60 ライトガイド、61 反射面、
100 照明装置、102 基板、104 第1クラッド層、105 第1側面、
106 活性層、107 第2側面、108 第2クラッド層、109 コンタクト層、
110 発光素子、112 第1電極、114 第2電極、130 反射膜、
140 反射部、142 溝、160 傾斜利得領域、160a 第1傾斜利得領域、
160b 第2傾斜利得領域、161 第1利得領域、162 第2利得領域、
162a 第1部分、162b 第2部分、162c 第3部分、180 第1端面、
182 第2端面、163 利得領域対、200〜800 照明装置、
900 プロジェクター、950 液晶ライトバルブ、
970 クロスダイクロイックプリズム、980 投写レンズ、990 スクリーン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
光を発生させて導波させ、かつ当該光の導波方向が当該光の射出面の垂線に対して傾いて形成された傾斜利得領域を有する発光素子が配列された光源と、
前記光源から射出された光の光軸を変換する光軸変換素子と、
前記光軸変換素子から射出された光の配光角を制御する配光制御素子と、
を含み、
前記発光素子は、スーパールミネッセントダイオードであり、
前記配光制御素子から射出された光は、発散した状態となる、ことを特徴とする照明装置。
【請求項2】
前記配光制御素子から射出された光を拡散する拡散素子を、さらに含む、ことを特徴とする請求項1に記載の照明装置。
【請求項3】
前記拡散素子から射出された光を照明対象に導くライトガイドを、さらに含む、ことを特徴とする請求項2に記載の照明装置。
【請求項4】
前記光軸変換素子と前記配光制御素子とは、一体的に形成されている、ことを特徴とする請求項1ないし3のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項5】
前記発光素子は、複数の前記傾斜利得領域を有し、
複数の前記傾斜利得領域のうち第1傾斜利得領域の光の導波方向は、前記射出面の垂線に対して、一方側に傾いており、
複数の前記傾斜利得領域のうち第2傾斜利得領域の光の導波方向は、前記射出面の垂線に対して、他方側に傾いている、ことを特徴とする請求項1ないし4のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項6】
前記第1傾斜利得領域と前記第2傾斜利得領域とは、同一の前記発光素子に設けられている、ことを特徴とする請求項5に記載の照明装置。
【請求項7】
前記第1傾斜利得領域と前記第2傾斜利得領域とは、異なる前記発光素子に設けられている、ことを特徴とする請求項5に記載の照明装置。
【請求項8】
請求項1ないし7のいずれか1項に記載の照明装置と、
前記照明装置から射出された光を画像情報に応じて変調する光変調装置と、
前記光変調装置によって形成された画像を投写する投写装置と、
を含む、ことを特徴とするプロジェクター。
【請求項9】
前記配光制御素子によって制御された光の配光角は、前記投写装置で投写可能な角度である、ことを特徴とする請求項8に記載のプロジェクター。

【図1】
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【図2】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2012−190544(P2012−190544A)
【公開日】平成24年10月4日(2012.10.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−50397(P2011−50397)
【出願日】平成23年3月8日(2011.3.8)
【出願人】(000002369)セイコーエプソン株式会社 (51,324)
【Fターム(参考)】