説明

照明装置のバルブソケット構造

【課題】ソケット穴の内部を含めた樹脂部の溶損を最小限に抑えることができると共に、不完全な組立状態を容易に発見すること。
【解決手段】ソケット穴11の内部には、給電端子がソケット穴11に挿入され正規位置に設置された場合に、少なくとも一方の接点バネ32、33に当接して当該接点バネ32、33を押圧変位させることで、一対の接点バネ32、33の間隔をベース部102を挟持し得る間隔に狭めるとともに、バルブが正常点灯時よりも高温状態となった場合に、自身が溶融することにより接点バネ32、33に対する押圧変位を解除し、一対の接点バネ32、33の自由状態への戻りを許容する樹脂製の突起18が設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室内天井部などに搭載される照明装置のバルブソケット構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
図10は特許文献1に記載された従来の車室内天井照明装置の構成を示している。
この車室内天井照明装置は、樹脂製のハウジング210にバルブ(白熱バルブ)100を装着したランプユニット200と、ランプユニット200を取り付けるホルダ220と、ホルダ220の下面側に天井トリム230を挟んだ状態に取り付けられる意匠部240とから構成されている。
【0003】
ランプユニット200のバルブ100は、ハウジング210に形成されたソケット穴(図示略)にバルブ100のベース部(図示略)を差し込むことで装着され、その状態で、ソケット穴の内部に装着された給電端子(図示略)とバルブ100側の端子(図示略)が接触導通して、バルブ100への通電が可能となり、バルブ100を点灯できるようになっている。
【特許文献1】特開2007−203911号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
ところで、上述した従来の照明装置では、バルブ100が異常発熱した場合に、通電が持続することにより、ソケット穴の内部やハウジング210を大きく溶損させてしまうおそれがあった。また、生産段階で給電端子を不完全な状態でハウジング210に組み付けている場合にも、バルブ100への通電が可能となることで、気付かずにそのまま不良品を流出させてしまう恐れがあった。
【0005】
本発明は、上述した事情に鑑みてなされたものであり、その目的は、ソケット穴の内部を含めた樹脂部の溶損を最小限に抑えることができると共に、不完全な組立状態を容易に発見することができて、不良品の流出を防止することのできる照明装置のバルブソケット構造を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前述した目的を達成するために、本発明に係る照明装置のバルブソケット構造は、下記(1)、(2)を特徴としている。
(1) 樹脂製のハウジングに、バルブを装着するためのソケット穴が設けられ、前記ソケット穴の内部に、前記バルブのベース部が前記ソケット穴の内部に挿入された際に前記ベース部の端子に接触導通する給電端子が設けられ、該給電端子が、前記ベース部を挟持する一対の接点バネを有している照明装置のバルブソケット構造において、
前記給電端子の一対の接点バネが、前記ベース部を狭持していない自由状態のときに、前記ベース部の寸法よりも広い間隔を持って対向するように形成され、
前記ソケット穴の内部には、前記給電端子が前記ソケット穴に挿入され正規位置に設置された場合に、少なくとも一方の前記接点バネに当接して当該接点バネを押圧変位させることで、前記一対の接点バネの間隔を前記ベース部を挟持し得る間隔に狭めるとともに、前記バルブが正常点灯時よりも高温状態となった場合に、自身が溶融することにより前記接点バネに対する押圧変位を解除し、前記一対の接点バネの前記自由状態への戻りを許容する樹脂製の突起が設けられている、
こと。
(2) 上記(1)の構成の照明装置のバルブソケット構造において、
前記一対の接点バネが、共通の側板に各基部の側縁が連結されて対向配置された一対の片持バネ片として形成され、各片持バネ片の自由端側に、互いに向かい合う側が凸になった湾曲接点部が設けられており、
前記突起は、前記湾曲接点部の基端部に当接する、
こと。
【0007】
上記(1)の構成のバルブソケット構造によれば、給電端子をソケット穴の内部の正規位置まで挿入している場合は、ソケット穴の内部の樹脂製の突起に接点バネが当接することで、対向する接点バネ間の間隔が、バルブのベース部を挟持できる間隔にまで狭くなっているので、その状態でバルブのベース部を挿入することにより、バルブの端子と給電端子の接点バネとを接触導通させることができる。従って、バルブに正常に通電することが可能となり、バルブを通常点灯させることができる。
また、接点バネを押圧変位させている樹脂製の突起は、バルブの正常点灯時の発熱に対しては溶融することはないが、正常点灯時よりも高い異常な温度になると、自身が溶けることで、接点バネへの押圧を解除する。従って、接点バネが自身の反力で自由状態のときの位置に戻ることで、対向する接点バネ間の間隔が広く開き、バルブの端子と給電端子の接触導通が解消されて、バルブへの通電が解除される。従って、樹脂部の溶損を最小限に止めることができ、安全性を高めることができる。
また、正規位置まで給電端子を組み込んでない不完全組み付け状態のときには、接点バネが樹脂製の突起によって押圧変位させられるまで至らないので、接点バネの間隔が狭くならず、その状態でバルブのベース部を接点バネ間に挿入しても、バルブの端子と給電端子を良好に接触導通させることができない。従って、バルブに通電することができず、バルブ点灯検査時に、バルブが点灯しないことで、不完全組み付け状態を発見することができ、不良品の流出を食い止めることができる。
上記(2)の構成のバルブソケット構造によれば、一対の接点バネの自由端側に設けた湾曲接点部の間にバルブのベース部を挟持するので、良好な弾力性を持って接点バネとバルブ側の端子とを接触導通させることができる。また、湾曲接点部の基端部に当接する位置に樹脂製の突起を配置しているので、突起と接点バネが僅かに当接するだけでも、湾曲接点部の間隔を大きく変化させることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、バルブが異常発熱した場合にも、樹脂部の溶損を最小限に止めることができる。また、不完全組み付けを容易に発見することができ、不良品の流出を食い止めることができる。
【0009】
以上、本発明について簡潔に説明した。更に、以下に説明される発明を実施するための最良の形態を添付の図面を参照して通読することにより、本発明の詳細は更に明確化されるであろう。
【発明を実施するための最良の形態】
【0010】
以下、本発明に係る好適な実施形態を図面に基づいて詳細に説明する。
【0011】
図1は実施形態のバルブソケット構造が適用された照明装置の主要部(ランプユニット)の分解斜視図、図2は同主要部に使用される自由状態の給電端子を有するバスバーの構成を示す斜視図、図3(a)はハウジングのソケット穴に給電端子を組み付けている途中の状態を示す断面図、(b)は(a)のIIIb円部の拡大図、図4は図3(b)より更に奥に給電端子を挿入したときの状態を示す断面図、図5はソケット穴の正規位置への給電端子の組み付けが完了した状態を示す断面図、図6は正規位置に給電端子を組み付けたときのバスバーの状態を取り出して示す斜視図、図7はバルブのベース部をソケット穴に挿入した状態を示す斜視図、図8は正規の組み立て状態を示す断面図、図9はバルブが異常発熱したときの状態を示す断面図である。
【0012】
本実施形態のバルブソケット構造が適用された車室内天井照明装置は、図1に示すような構造のランプユニットを有している。このランプユニットは、樹脂製のハウジング10と、ハウジング10のソケット穴11に装着される白熱バルブ(以下、単に「バルブ」という)100と、ハウジング100に装着される2系統のバスバー30(30A、30B)と、ハウジング100のスイッチ装着部13に装着されたスイッチ14と、を備えている。
【0013】
ソケット穴11は、ハウジング10の一端側に設けられており、そのソケット穴11に実施形態のバルブソケット構造が適用されている。このソケット穴11は、ハウジング10の基準面(図1においては下面)に対して傾斜しており、その基準面に対して、バルブ100が軸線を傾けた姿勢で装着されるようになっている。バルブ100は、円筒形状の電球部101の下側に偏平なベース部102を有するもので、ベース部102に図示略の端子が設けられている。
【0014】
バスバー30(30A、30B)は、図2に示すように、一端側に給電端子31を有し、他端側に電線を接続するための圧接端子38を有している。各バスバー30A、30Bに形成された一対の給電端子31は、ハウジング10のソケット穴11の内部に収容されることで、バルブ100のベース部102が挿入された際にベース部102側の端子と接触導通する部分であり、圧接端子38は、ハウジング10の電線接続部12にセットされる部分である。給電端子31と圧接端子38の間は、連絡板36で繋がっており、連絡板36の一端には、給電端子31の側板35が設けられている。
【0015】
各バスバー30A、30Bの給電端子31は、バルブ100のベース部102を挟持する一対の接点バネ32、33をそれぞれ有している。一対の接点バネ32、33は、共通の側板35に連設された帯板を曲げることによって形成されており、側板35に各基部32b、33bの側縁が連結されて、対向配置された一対の片持バネ片として形成されている。そして、各片持バネ片の自由端側に、互いに向かい合う側が凸になった湾曲接点部32a、33aが設けられ、それら湾曲接点部32a、33aの凸面でバルブ100のベース部102を挟むことができるようになっている。
【0016】
この場合、図2に示すように、給電端子31の一対の接点バネ32、33は、ベース部102を狭持していない自由状態のときにバルブ100のベース部102の厚さ寸法よりも広い間隔H1を持って対向するように形成されている。
【0017】
また、図3に示すように、ソケット穴11の内面の一方の接点バネ33に対応する位置には、樹脂製の突起18が設けられている。特に、この突起18は、接点バネ33の湾曲接点部33aの基端部に当接する位置に配置されている。
【0018】
この突起18は、図3、図4、図5と順を追って示すように、自由状態の給電端子31がソケット穴11に挿入されて、図5に示す正規位置にセットされたときに、一方の接点バネ33と当接して、当該接点バネ33を強制的に押圧変位させることで、一対の接点バネ32、33の間隔を、図6に示すように、ベース部102を挟持し得る狭い間隔H2に狭める機能を果たす。また一方、この突起18は、バルブ100が正常点灯時よりも高温状態となったときに、自身が溶融することにより、接点バネ33に対する強制的な押圧を解除し、一対の接点バネ32、33の間隔がベース部102の厚さ寸法よりも広くなるように、接点バネ33の自由状態への戻りを許容する機能を果たす。そのため、この突起18は、異常発熱時の温度にガラス転移温度が設定された樹脂で作られている。
【0019】
このランプユニットを組み立てる場合は、ハウジング10に2系統のバスバー30A、30Bを組み付け、給電端子31をソケット穴11に挿入し、圧接端子38を電線接続部12に組み付ける。図3および図4に示すように給電端子31をソケット穴11に挿入すると、一方の接点バネ33の湾曲接点部33aの基端部付近が、ソケット穴11の内部で樹脂製の突起18に当たり、更に給電端子31を挿入すると、正規位置に至ることで、接点バネ33が突起18によって強制的に持ち上げられ、一対の接点バネ32、33の間隔が、図6に示すように、バルブ100のベース部102を挟持し得る狭い間隔H2になる。この段階で、正規の組み付けが完了する。
【0020】
次いで、図7および図8に示すように、バルブ100のベース部102をソケット穴に挿入する。すると、バルブ100の電球部101がソケット穴11の周壁に支持されると共に、ベース部102が各給電端子31の一対の接点バネ32、33の湾曲接点部32a、33aの凸面にて挟持され、ベース部102側の端子と給電端子31が接触導通する。
【0021】
このように、給電端子31をソケット穴11の内部の正規位置まで挿入している場合は、図8に示すように、ソケット穴11の内部の樹脂製の突起18に接点バネ33が当接することで、対向する接点バネ32、33間の間隔が、バルブ100のベース部102を挟持できる間隔にまで狭くなっているので、その状態でバルブ100のベース部102を挿入することにより、バルブ100の端子と給電端子31の接点バネ32、33とを接触導通させることができる。従って、バルブ100に正常に通電することが可能となり、バルブ100を通常点灯させることができる。
【0022】
また、接点バネ33を押圧変位させている樹脂製の突起18は、バルブ100の正常点灯時の発熱に対しては溶融することはないが、正常点灯時よりも高い異常な温度になると、図9に示すように、自身が溶けることで、接点バネ33への押圧を解除する。従って、接点バネ33が自身の反力で自由状態のときの位置に戻ることで、対向する接点バネ32、33間の間隔が広く開き、バルブ100の端子と給電端子31の接触導通が解消されて、バルブ100への通電が解除される。従って、樹脂製のハウジング10の溶損を最小限に止めることができ、安全性を高めることができる。
【0023】
また、正規位置まで給電端子31を組み込んでない不完全組み付け状態のときには、接点バネ33が樹脂製の突起18によって押圧変位させられるまで至らないので、接点バネ32、33の間隔が狭くならず、その状態でバルブ100のベース部102を接点バネ32、33間に挿入しても、バルブ100の端子と給電端子31を良好に接触導通させることができない。従って、バルブ100に通電することができず、バルブ100の点灯検査時に、バルブ100が点灯しないことで、不完全組み付け状態を発見することができ、不良品の流出を食い止めることができる。
【0024】
また、本実施形態においては、一対の接点バネ32、33の自由端側に設けた湾曲接点部32a、33aの間にバルブ100のベース部102を挟持するので、良好な弾力性を持って接点バネ32、33とバルブ100側の端子とを接触導通させることができる。また、湾曲接点部32a、33aの基端部に当接する位置に樹脂製の突起18を配置しているので、突起18と接点バネ33が僅かに当接するだけでも、湾曲接点部32a、33aの間隔を大きく変化させることができる。
【0025】
尚、本発明は、上述した実施形態に限定されるものではなく、適宜、変形、改良、等が可能である。その他、上述した実施形態における各構成要素の材質、形状、寸法、数、配置箇所、等は本発明を達成できるものであれば任意であり、限定されない。
【図面の簡単な説明】
【0026】
【図1】本発明の実施形態のバルブソケット構造が適用された照明装置の主要部(ランプユニット)の分解斜視図である。
【図2】同主要部に使用される自由状態の給電端子を有するバスバーの構成を示す斜視図である。
【図3】(a)はハウジングのソケット穴に給電端子を組み付けている途中の状態を示す断面図、(b)は(a)のIIIb円部の拡大図である。
【図4】図3(b)より更に奥に給電端子を挿入したときの状態を示す断面図である。
【図5】ソケット穴の正規位置への給電端子の組み付けが完了した状態を示す断面図である。
【図6】正規位置に給電端子を組み付けたときのバスバーの状態を取り出して示す斜視図である。
【図7】バルブのベース部をソケット穴に挿入した状態を示す斜視図である。
【図8】正規の組み立て状態を示す断面図である。
【図9】バルブが異常発熱したときの状態を示す断面図である。
【図10】従来の車室内天井照明装置の構成を示す分解斜視図である。
【符号の説明】
【0027】
10 ハウジング
11 ソケット穴
18 突起
31 給電端子
32,33 接点バネ
32a,33a 湾曲接点部
32b,33b 基部
100 バルブ
102 ベース部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
樹脂製のハウジングに、バルブを装着するためのソケット穴が設けられ、前記ソケット穴の内部に、前記バルブのベース部が前記ソケット穴の内部に挿入された際に前記ベース部の端子に接触導通する給電端子が設けられ、該給電端子が、前記ベース部を挟持する一対の接点バネを有している照明装置のバルブソケット構造において、
前記給電端子の一対の接点バネが、前記ベース部を狭持していない自由状態のときに、前記ベース部の寸法よりも広い間隔を持って対向するように形成され、
前記ソケット穴の内部には、前記給電端子が前記ソケット穴に挿入され正規位置に設置された場合に、少なくとも一方の前記接点バネに当接して当該接点バネを押圧変位させることで、前記一対の接点バネの間隔を前記ベース部を挟持し得る間隔に狭めるとともに、前記バルブが正常点灯時よりも高温状態となった場合に、自身が溶融することにより前記接点バネに対する押圧変位を解除し、前記一対の接点バネの前記自由状態への戻りを許容する樹脂製の突起が設けられている、
ことを特徴とする照明装置のバルブソケット構造。
【請求項2】
前記一対の接点バネが、共通の側板に各基部の側縁が連結されて対向配置された一対の片持バネ片として形成され、各片持バネ片の自由端側に、互いに向かい合う側が凸になった湾曲接点部が設けられており、
前記突起は、前記湾曲接点部の基端部に当接する、
ことを特徴とする請求項1に記載の照明装置のバルブソケット構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公開番号】特開2010−129314(P2010−129314A)
【公開日】平成22年6月10日(2010.6.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−301478(P2008−301478)
【出願日】平成20年11月26日(2008.11.26)
【出願人】(000006895)矢崎総業株式会社 (7,019)
【Fターム(参考)】