照明装置及び前照灯
【課題】照明光の色温度を変化させる。
【解決手段】ヘッドランプ10は、レーザ光を出射する半導体レーザ61と、レーザ光を受けて第1の蛍光を発する第1発光部2aと、レーザ光を受けて第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2発光部2bと、第1発光部2aにおけるレーザ光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部2bに照射されるレーザ光の照射範囲を変化させる支持部材11及び支持部材駆動部12と、を備える。
【解決手段】ヘッドランプ10は、レーザ光を出射する半導体レーザ61と、レーザ光を受けて第1の蛍光を発する第1発光部2aと、レーザ光を受けて第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2発光部2bと、第1発光部2aにおけるレーザ光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部2bに照射されるレーザ光の照射範囲を変化させる支持部材11及び支持部材駆動部12と、を備える。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度光源として機能する照明装置および当該照明装置を備えた前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、励起光源として発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)や半導体レーザ(LD;Laser Diode)等の半導体発光素子を用い、これらの励起光源から生じた励起光を、蛍光体を含む発光部に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いる照明装置の研究が盛んになってきている。
【0003】
このような発光装置に関する技術の例として特許文献1および2に開示された灯具がある。これらの灯具では、高輝度光源を実現するために、励起光源として半導体レーザを用いている。半導体レーザから発振されるレーザ光は、コヒーレントな光であるため、指向性が強く、当該レーザ光を励起光として無駄なく集光し、利用することができる。このような半導体レーザを励起光源として用いた発光装置(LD発光装置と称する)を車両用ヘッドランプに好適に適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−150041号公報(2005年6月9日公開)
【特許文献2】特開2003−295319号公報(2003年10月15日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2では、励起光源として半導体レーザを用いた灯具が開示されているが、これらの灯具から出射される照明光の色温度を変化させることについては一切開示されていない。特許文献1及び2においては、その色温度を変化させることの必要性については認識されていなかったためである。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、照明光の色温度を変化させることが可能な照明装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る照明装置は、上記の課題を解決するために、励起光を出射する励起光源と、上記励起光を受けて第1の蛍光を発する第1発光部と、上記励起光を受けて上記第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2発光部と、上記第1発光部における励起光の照射範囲を一定にした上で、上記第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる照射範囲変化機構と、を備えることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、励起光源から出射された励起光を受けて、第1発光部が第1の蛍光を発し、第2発光部が、第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する。
【0009】
照射範囲変化機構は、これら第1発光部及び第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる。例えば、照射範囲変化機構は、第1発光部における励起光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる。例えば、照射範囲変化機構は、励起光が第1発光部の全体に照射されており、第2発光部には照射されていない状態から、その照射範囲を大きくすることにより、その照射範囲に第2発光部を含める。これにより、第1の蛍光に加え第2の蛍光を出射できるので、照明光に対する第2の蛍光の割合を増加させることができる。
【0010】
このように、照射範囲変化機構は、照明光に含まれる第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができる。それゆえ、その割合の変化により、照明光の色温度を変化させることができる。
【0011】
また、本発明に係る照明装置は、上記の課題を解決するために、励起光を出射する励起光源と、上記励起光を受けて第1の蛍光を発する第1発光部と、上記励起光を受けて上記第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2発光部と、上記第1発光部及び上記第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる照射範囲変化機構と、を備えることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、励起光源から出射された励起光を受けて、第1発光部が第1の蛍光を発し、第2発光部が、第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する。
【0013】
照射範囲変化機構は、これら第1発光部及び第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる。例えば、照射範囲変化機構は、照射範囲の面積を一定にした状態で当該照射範囲の中心を第1発光部から第2発光部へ向けて移動させることにより、第1発光部における照射範囲を小さくし、第2発光部における照射領域を大きくする。第1発光部及び第2発光部はそれぞれ異なるピーク波長を有する蛍光を発するので、その照射範囲の変化により、照明光に対する第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができる。
【0014】
このように、照射範囲変化機構は、照明光に含まれる第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができる。それゆえ、その割合の変化により、照明光の色温度を変化させることができる。
【0015】
また、本発明に係る照明装置では、上記第1発光部と上記第2発光部とは、接触して配置されていることが好ましい。
【0016】
第1発光部と第2発光部とが非接触に配置されている場合、第1発光部及び第2発光部のそれぞれにレーザ光が照射されない限り、その非接触となっている領域(非接触領域)に励起光が照射される可能性がある。当該非接触領域に照射される励起光は、蛍光に変換されないので、励起光の利用効率を低下させる要因となり得る。
【0017】
上記構成によれば、第1発光部と第2発光部とが接触して配置されているので、非接触領域に励起光が照射され蛍光に変換されないという事態を防ぐことができる。すなわち、当該構成によれば、励起光を蛍光の変換に無駄なく利用できる。
【0018】
また、第1発光部と第2発光部とが非接触に配置されている場合に比べ、照射範囲変化機構が上記照射範囲を効率よく変化させることができる。
【0019】
また、本発明に係る照明装置では、上記第2発光部は、上記第1発光部の周囲に配置されていることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、特に、照射範囲変化機構が、第1発光部における励起光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる構成の場合に、効率よく第2発光部における照射範囲を変化させることができる。
【0021】
また、本発明に係る照明装置では、上記第1発光部と上記第2発光部とは、一体形成されていることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、それぞれの発光部を別々に製造して照明装置に備える場合に比べ、製造工程及び製造コストを削減できる。
【0023】
また、本発明に係る照明装置では、上記照射範囲変化機構は、上記励起光源と、上記第1発光部及び上記第2発光部との相対的な位置を変化させることにより、上記照射範囲を変化させることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、上記の相対的な位置を変化させることにより、励起光源と、第1発光部及び/又は第2発光部との距離を変化させた場合には、励起光源から出射された励起光の光路幅は、一般に出射点からの距離に応じて大きくなるため、その変化により、第2発光部における照射範囲を変化させることができる。
【0025】
また、上記の相対的な位置を変化させることにより、第1発光部及び第2発光部における上記照射範囲の位置を変更できるので、第1発光部及び第2発光部それぞれにおける照射範囲を変化させることができる。
【0026】
また、本発明に係る照明装置では、上記励起光源から出射された励起光を屈曲して、上記第1発光部及び上記第2発光部の少なくとも一方に出射する光学部材をさらに備え、上記照射範囲変化機構は、上記光学部材を移動させることにより、上記照射範囲を変化させることが好ましい。
【0027】
光学部材は、励起光源から出射された励起光を屈曲して第1発光部及び/又は第2発光部に出射するので、例えばその励起光を第1発光部及び/又は第2発光部に集光するなど、光学部材透過後の励起光の光路幅を、光学部材入射前の励起光の光路幅とは異なり、かつ、光学部材からの距離に応じて変化させるように出射できる。つまり、励起光源から出射された励起光は、光学部材を透過することにより、光学部材を基点としてその光路幅が新たに変化していくこととなる。
【0028】
このため、照射範囲変化機構が、特に、第1発光部における励起光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる構成の場合には、光学部材を移動させることにより、光学部材と第1発光部及び/又は第2発光部との距離を変更できる。この変更により、光学部材が存在しない場合の励起光源と第1発光部及び/又は第2発光部との距離を変更するのと同様の効果が得られる。
【0029】
つまり、この場合、上記照射範囲が光学部材と第1発光部及び/又は第2発光部との距離に応じて変化させることになるので、光学変化機構が光学部材を移動させ、その距離を変更することにより、上記照射範囲を変化させることができる。
【0030】
また、本発明に係る照明装置では、上記励起光源は、青色領域の発振波長を有する光を上記励起光として出射し、上記第1発光部は、黄色領域にピーク波長を有する蛍光を、上記第1の蛍光として発する第1蛍光体を含むことが好ましい。
【0031】
また、本発明に係る照明装置では、上記第1蛍光体は、イットリウム・アルミニウム・ガーネットであることが好ましい。
【0032】
励起光として青色領域の発振波長を有する光を用い、かつ、黄色領域にピーク波長を有する蛍光を発する第1蛍光体(特にYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット))を用いた場合には、第1発光部から出射される照明光の色温度を高くできる。それゆえ、色温度の高い照明光の出射を実現できる。
【0033】
また、本発明に係る照明装置では、上記励起光源は、青色領域の発振波長を有する光を上記励起光として出射し、上記第1発光部は、緑色領域にピーク波長を有する蛍光を、上記第1の蛍光として発する第1蛍光体を含むことが好ましい。
【0034】
上記構成によれば、励起光として青色領域の発振波長を有する光を用い、かつ、緑色領域にピーク波長を有する蛍光を発する第1蛍光体を用いた場合には、第1発光部から出射される照明光の色温度を高くできる。それゆえ、色温度の高い照明光の出射を実現できる。
【0035】
また、本発明に係る照明装置では、上記第1蛍光体は、β−SiAlON:Eu蛍光体であることが好ましい。
【0036】
上記構成によれば、発光効率の高いβ−SiAlON:Eu蛍光体を第1蛍光体として用いているので、第1発光部の発光効率を高めることができる。それゆえ、照明光への変換効率が高い照明装置を実現できる。
【0037】
また、本発明に係る照明装置では、上記第2発光部は、赤色領域にピーク波長を有する蛍光を、上記第2の蛍光として発する第2蛍光体を含むことが好ましい。
【0038】
また、本発明に係る照明装置では、上記第2蛍光体は、CASN:Eu蛍光体又はSCASN:Eu蛍光体であることが好ましい。
【0039】
第2蛍光体を、すなわち赤色で発光する赤色発光蛍光体(特に、CASN:Eu蛍光体又はSCASN:Eu蛍光体)を用いた場合には、第2の蛍光として、第1蛍光体よりも低い色温度の蛍光を出射できる。このため、照射範囲変化機構が照射範囲を変化させることにより、例えば照明光が第1の蛍光のみからなる場合に比べ、その照明光の色温度を低くできる。
【0040】
また、本発明に係る照明装置では、ユーザ操作を受け付ける入力手段を備え、上記照射範囲変化機構は、上記入力手段が受け付けたユーザ操作に従って動作することが好ましい。
【0041】
照射範囲変化機構が入力手段が受け付けたユーザ操作に従って動作するので、ユーザの嗜好にあわせた色温度の変化を実現できる。
【0042】
また、本発明に係る前照灯は、上記に記載の照明装置を備えることが好ましい。
【0043】
上記構成によれば、前照灯は、上記照明装置を備えているので、当該照明装置と同様、照射範囲変化機構が、照明光に含まれる第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができる。それゆえ、その割合の変化により、照明光の色温度を変化させることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係る照明装置は、以上のように、励起光を出射する励起光源と、上記励起光を受けて第1の蛍光を発する第1発光部と、上記励起光を受けて上記第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2発光部と、上記第1発光部における励起光の照射範囲を一定にした上で、上記第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる照射範囲変化機構と、を備える構成である。
【0045】
また、本発明に係る照明装置は、以上のように、励起光を出射する励起光源と、上記励起光を受けて第1の蛍光を発する第1発光部と、上記励起光を受けて上記第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2発光部と、上記第1発光部及び上記第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる照射範囲変化機構と、を備える構成である。
【0046】
それゆえ、本発明の照明装置は、照明光の色温度を変化させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの概要構成を示す片側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの発光部における各発光部の配置例を示す図であり、(a)は発光部全体が直方体形状である場合の配置例、(b)は第1発光部及び第2発光部が非接触である場合の配置例、(c)は発光部全体が円柱形状である場合の配置例、(d)は発光部全体が円柱形状であり、かつ発光部が3重構造である場合の配置例を示す。
【図4】本発明の一実施形態に係る発光部の変形例を示す図であり、(a)は透光性基板1に接着された発光部の一例を示す断面図であり、(b)は(a)に示す発光部の一例を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るヘッドランプにおける発光部と導光部材との位置関係と、そのときのレーザ光照射領域の大きさを示す図であり、(a)はレーザ光が第1発光部の受光面全体に照射されたときのレーザ光照射領域の大きさが最も小さい場合を示し、(b)は(a)の場合よりも、発光部と導光部材との位置が離れ、かつレーザ光照射領域が大きい場合を示し、(c)は(b)の場合よりも、発光部と導光部材との位置が離れ、かつレーザ光照射領域が大きい場合を示す。
【図6】車両用前照灯に要求される白色の色度範囲を示すグラフである。
【図7】半導体レーザの基本構造を示す図であり、(a)は半導体レーザの回路図を模式的に示したものであり、(b)は半導体レーザの基本構造を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの変形例を示す図である。
【図9】本発明の別の実施形態に係るヘッドランプの概要構成を示す片側断面図である。
【図10】本発明の別の実施形態に係るヘッドランプの発光部における各発光部の配置例を示す図であり、(a)は第1発光部及び第2発光部が同じ形状で、かつ接触して配置されている場合の配置例、(b)は(a)の変形例であり、第1発光部及び第2発光部の形状が異なる場合の配置例、(c)は(a)の変形例であり、第1発光部及び第2発光部が非接触である場合の配置例を示す。
【図11】本発明の別の実施形態に係るヘッドランプの発光部におけるレーザ光照射領域の大きさの変化を示す図であり、(a)は第1発光部にだけレーザ光が照射されている場合を示し、(b)は第1発光部及び第2発光部の両方にレーザ光が照射されている場合を示す。
【図12】本発明の一実施形態に係るレーザダウンライトが備える発光ユニットおよび従来のLEDダウンライトの外観を示す概略図である。
【図13】上記レーザダウンライトが設置された天井の断面図である。
【図14】上記レーザダウンライトの断面図である。
【図15】上記レーザダウンライトが備える光ファイバーの出射端部と発光部との位置関係の一例を示す図である。
【図16】上記LEDダウンライトが設置された天井の断面図である。
【図17】上記レーザダウンライトおよび上記LEDダウンライトのスペックを比較するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1〜図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。ここでは、本発明の照明装置の一例として、自動車用のヘッドランプ(前照灯)10を例に挙げて説明する。ただし、本発明の照明装置は、自動車以外の車両・移動物体(例えば、人間・船舶・航空機・潜水艇・ロケットなど)のヘッドランプとして実現されてもよいし、その他の照明装置として実現されてもよい。その他の照明装置として、例えば、サーチライト、プロジェクター、家庭用照明器具を挙げることができる。
【0049】
ヘッドランプ10は、走行用前照灯(ハイビーム)の配光特性基準を満たしていてもよいし、すれ違い用前照灯(ロービーム)の配光特性基準を満たしていてもよい。
【0050】
<ヘッドランプ10の構成>
まず、図1に基づき、本発明の一実施形態であるヘッドランプ10について説明する。図1は、ヘッドランプ10の概要構成を示す片側断面図である。図1に示すように、ヘッドランプ10は、透光性基板1、発光部2、反射鏡4、固定部材5、励起光源ユニット(励起光源)6、ネジ7、レンズ8、導光部材9、支持部材11および支持部材駆動部12を備える。励起光源ユニット6、導光部材9および発光部2によって発光装置の基本構造が形成されている。また、支持部材11および支持部材駆動部12によって照射範囲変化機構の基本構造が形成されている。
【0051】
なお、本実施の形態では、発光部2が複数の発光部(例えば第1発光部2a及び第2発光部2b)を備えているが、特に個々の発光部ごとに説明する必要がない場合には「発光部2」と称して一括して説明する場合もある。
【0052】
(透光性基板1)
透光性基板1は、平板状の部材であり、少なくとも440nm〜480nmの発振波長のレーザ光(励起光)に対して透光性を有している。透光性基板1は、平板上でなく、湾曲した部分を有していてもよいが、透光性基板1と発光部2とを接着する場合、少なくとも発光部2が接着される部分は、接着の安定性の観点から平面(板状)であることが好ましい。
【0053】
また、透光性基板1は、縦10mm×横10mm×厚み0.5mmのAl2O3(サファイア)基板である。なお、図1に示す透光性基板1の外径は、発光部2の外径よりも大きいが、発光部2の外径と同程度であっても良い。
【0054】
透光性基板1のレーザ光が入射する側の表面に対向する表面には、発光部2が配置され、発光部2と熱的に(すなわち、熱エネルギーの授受が可能なように)接続されている。なお、本実施の形態では、透光性基板1と発光部2とは、接着剤を用いて接合(接着)されているものとして説明するが、透光性基板1と発光部2との接合方法は、接着に限られず、例えば、融着などであっても良い。接着剤としては、いわゆる有機系の接着剤や、ガラスペースト接着剤が好適であるが、これに限られない。
【0055】
透光性基板1は、以上のような構成、形状、および、発光部2との接続形態を有することにより、発光部2を基板表面に固定(保持)しつつ、発光部2から発生する熱を外部に放熱するので、発光部2の冷却効率を向上させることができる。
【0056】
また、透光性基板1の材質は、上述したサファイア(Al2O3)の他、マグネシア(MgO)、窒化ガリウム(GaN)、スピネル(MgAl2O4)が好ましい。これらの材料は、熱伝導率(例えば20W/mK以上)及び透光性が優れているためである。この点を考慮しないのであれば、これらの材質に限らず、例えばガラス(石英)などであっても良い。
【0057】
また、図1に示す透光性基板1の厚さは、発光部2での発熱を効果的に放熱することを考慮すれば、30μm以上、1.0mm以下が好ましく、より好ましくは、0.2mm以上、1.0mm以下であることがより好ましい。なお、透光性基板1の厚さが1.0mmを超えると、発光部2に照射されたレーザ光が透光性基板1において吸収される割合が大きくなる一方で、放熱効果はさほど向上せず、また部材のコストも上昇してしまう。
【0058】
(発光部2)
発光部2は、半導体レーザ61から出射されたレーザ光を受けて蛍光を発するものであり、第1発光部2a及び第2発光部2bを備えている。本実施の形態では、第1発光部2aの外周に接触するように第2発光部2bが設けられている。換言すれば、第1発光部2a及び第2発光部2bは二重構造となっている。また、第1発光部2aは、その中心を導光部材9から出射されるレーザ光の光軸が通るように、透光性基板1上に配置されている。なお、第1発光部2a及び第2発光部2bの配置例については後述する。
【0059】
第1発光部2aは、導光部材9を介して、半導体レーザ61から出射されたレーザ光を受けて第1の蛍光を発する第1蛍光体を含んでいる。本実施の形態では、第1蛍光体として、青色領域のレーザ光を受けて黄色領域にピーク波長を有する蛍光を発する黄色蛍光発光体としてIntematix社製のYAG:Ce蛍光体(NYAG4454)を用いているが、蛍光体の種類はこれに限定されない。YAG:Ce蛍光体は、Ceで賦活したイットリウム(Y)−アルミニウム(Al)−ガーネット(Garnet)蛍光体である。このIntematix社製の蛍光体は、発光効率が90%、発光ピーク波長(以下、単に「ピーク波長」という)は558nm(黄色)、色度点はx=0.444、y=0.536であり、430nmから490nmの励起光で良好に励起される。なお、YAG:Ce蛍光体は、一般に550nm付近(550nmよりも若干長波長側)に発光ピークが存在するブロードな発光スペクトルをもつ。
【0060】
また、第2発光部2bは、レーザ光を受けて第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2蛍光体を含んでいる。本実施の形態では、第2蛍光体として、青色領域のレーザ光を受けて赤色領域にピーク波長を有する蛍光を発する赤色発光蛍光体としてEu2+がドープされたCaAlSiN3:Eu蛍光体(CASN:Eu蛍光体)を用いている。第2蛍光体に用いられる蛍光体の種類はこれに限定されず、例えばEu2+がドープされたSrCaAlSiN3:Eu蛍光体(SCASN:Eu蛍光体)が第2蛍光体として用いてもよい。
【0061】
第1発光部2aはYAG:Ce蛍光体を、第2発光部2bはCASN:Eu蛍光体を、封止材としての低融点の無機ガラス(屈折率n=1.760)の内部にそれぞれ分散させて製造される。第1発光部2aにおけるYAG:Ce蛍光体と低融点の無機ガラス(低融点ガラス)との配合比は、例えば30:100程度である。これに限らず、第1発光部2aでレーザ光を拡散させてそのレーザ光の色成分(例えば青色成分)を利用することを考慮すれば、上記の配合比は10:100程度が好ましい。また、第2発光部2bにおけるCASN:Eu蛍光体と低融点ガラスとの配合比は、例えば20:100程度であるが、これに限らずともよい。また、発光部2は、蛍光体を押し固めたものであってもよい。
【0062】
封止材は、上記の無機ガラスに限定されず、いわゆる有機無機ハイブリッドガラスや、シリコン樹脂等の樹脂材料であってもよい。ただし、耐熱性を考慮すれば、封止材はガラスからなることが好ましい。
【0063】
また、第1発光部2aの第1蛍光体は、黄色発光蛍光体の代わりに、青色領域のレーザ光を受けて緑色領域にピーク波長を有する蛍光を発する緑色蛍光発光体としてEu2+がドープされたβ−SiAlON:Eu蛍光体であってもよい。
【0064】
また、上記では、第1発光部2a及び第2発光部2bのそれぞれが1種類の蛍光体を含んで構成されているが、これに限らず、2種類以上の蛍光体を含んでもよい。例えば、第1発光部2aがYAG:Ce蛍光体及びβ−SiAlON:Eu蛍光体を含み、第2発光部2bがCASN:Eu蛍光体及びβ−SiAlON:Eu蛍光体を含んでもよい。また、第1発光部2a及び第2発光部2bに含まれる蛍光体の少なくとも一部が異なる構成であってもよく、例えば第1発光部2aにはYAG:Ce蛍光体及びCASN:Eu蛍光体が含まれ、第2発光部2bにはCASN:Eu蛍光体が含まれる構成であってもよい。特に、第1発光部2aが補色の関係を満たす2種類の蛍光体を含む場合には、第1発光部2aは、レーザ光を拡散させることなく、第1発光部2aへのレーザ光の照射だけで白色光を生成できる。
【0065】
なお、透光性基板1と発光部2との間の界面の反射率Rをできる限り低下させ、レーザ光の発光部2での利用効率を高めることを考慮すれば、透光性基板1と発光部2との屈折率差Δnは、0.35以下であることが好ましい。この場合、反射率Rを1%以下にすることができる。また、屈折率差Δnを0.35以下とする場合、透光性基板1の屈折率を1.65以上、発光部2の屈折率を2.0以下とすることが好ましい。
【0066】
また、一般に、照明光として用いられる白色光または擬似白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または、補色の関係を満たす2つの色の混色などで実現できる。この等色または補色の原理に基づき、例えば、ヘッドランプ10では、後述する半導体レーザ61から出射される青色のレーザ光とYAG:Ce蛍光体(黄色発光蛍光体)との組み合わせ、あるいは当該青色のレーザ光とβ−SiAlON:Eu蛍光体(緑色発光蛍光体)との組み合わせ(補色の関係を満たす2つの色の混色)で擬似白色を実現している。
【0067】
ここで、黄色発光蛍光体とは、560nm以上590nm以下の波長範囲にピーク波長を有する蛍光を発生する蛍光体である。緑色発光蛍光体とは、510nm以上560nm以下の波長範囲にピーク波長を有する蛍光を発生する蛍光体である。赤色発光蛍光体とは、600nm以上680nm以下の波長範囲にピーク波長を有する蛍光を発生する蛍光体である。
【0068】
黄色発光蛍光体の具体例としては、YAG:Ce蛍光体や、Eu2+がドープされたCaα−SiAlON:Eu蛍光体などが挙げられる。Caα−SiAlON:Eu蛍光体は、近紫外から青色の励起光によりピーク波長が約580nmの強い発光を示す。
【0069】
緑色発光蛍光体の具体例としては、各種の窒化物系または酸窒化物系の蛍光体が挙げられる。特に、酸窒化物系の蛍光体は耐熱性に優れ、高い発光効率で安定した材料であるので、耐熱性に優れ、高い発光効率で安定した第1発光部2aを実現できる。
【0070】
例えば、緑色に発光する酸窒化物系蛍光体として、β−SiAlON:Eu蛍光体、Ce3+がドープされたCaα−SiAlON:Ce蛍光体などが挙げられる。β−SiAlON:Eu蛍光体は、近紫外から青色(350nm以上460nm以下)の励起光によりピーク波長が約540nmの強い発光を示す。この蛍光体の発光スペクトル半値幅は約55nmである。また、Caα−SiAlON:Ce蛍光体は、近紫外から青色の励起光によりピーク波長が約510nmの強い発光を示す。
【0071】
上記のα−SiAlONおよびβ−SiAlON(サイアロン)は、いわゆるサイアロン蛍光体(酸窒化物系蛍光体)と通称されるものである。サイアロンとは、窒化ケイ素のシリコン原子の一部がアルミニウム原子に、窒素原子の一部が酸素原子に置換された物質である。サイアロン蛍光体は、窒化ケイ素(Si3N4)にアルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)および希土類元素などを固溶させて作ることができる。このサイアロン蛍光体にカルシウム(Ca)とユーロピウム(Eu)とを固溶させると、YAG:Ce蛍光体よりも長波長の黄色から橙色の範囲で発光する特性の良い蛍光体が得られる。
【0072】
赤色発光蛍光体の具体例としては、各種の窒化物系の蛍光体が挙げられる。例えば、窒化物系の蛍光体としては、CASN:Eu蛍光体、SCASN:Eu蛍光体などが挙げられる。CASN:Eu蛍光体は、励起波長が350nm〜450nmのとき、赤色の蛍光を発し、そのピーク波長は649nmであり、その発光効率は73%である。また、SCASN:Eu蛍光体は、励起波長が350nm〜450nmのとき、赤色の蛍光を発し、そのピーク波長は630nmであり、その発光効率は70%である。これらの窒化物系の蛍光体は、上述した黄色発光蛍光体や緑色発光蛍光体などの酸窒化物蛍光体と組み合わせることにより、演色性を高めることができる。また、赤色に発光する窒化物系蛍光体の例としては、(Mg、Ca、Sr、Ba)AlSiN3:Eu等のEu賦活窒化物蛍光体や(Mg、Ca、Sr、Ba)AlSiN3:Ce等のCe賦活窒化物蛍光体などが挙げられる。
【0073】
換言すれば、発光部2は、黄色発光蛍光体あるいは緑色発光蛍光体を含む第1発光部2aとともに、630nm以上、650nm以下の波長範囲にピーク波長を有する蛍光を発する赤色発光蛍光体を含む第2発光部2bを備えている。これにより、第1発光部2a及び第2発光部2bの両方に青色のレーザ光が照射された場合に、発光部2全体としての演色性を高めることができる。
【0074】
また、上記第1蛍光体及び第2蛍光体の別の好適な例としては、III−V族化合物半導体のナノメータサイズの粒子を用いた半導体ナノ粒子蛍光体を用いることもできる。同一の化合物半導体(例えばインジュウムリン:InP)を用いても、その粒子径を変更させることにより、量子サイズ効果によって発光色を変化させることができることが半導体ナノ粒子蛍光体の特徴の一つである。例えばInPでは、粒子サイズが3〜4nm程度のときに赤色に発光する。ここで、粒子サイズは透過型電子顕微鏡(TEM)にて評価した。
【0075】
また、この蛍光体は半導体ベースであるので蛍光寿命が短く、励起光のパワーを素早く蛍光として放射できるのでハイパワーの励起光に対して耐性が強いという特徴もある。これは、上記半導体ナノ粒子蛍光体の発光寿命が10ナノ秒程度と、希土類を発光中心とする通常の蛍光体材料に比べて5桁も小さいためである。発光寿命が短いため、励起光の吸収と蛍光の発光を素早く繰り返すことができる。
【0076】
その結果、強い励起光に対して高効率を保つことができ、蛍光体からの発熱が低減される。よって、光変換部材が熱により劣化(変色や変形)するのをより抑制することができる。これにより、光の出力が高い発光素子を光源として用いる場合に、発光装置の寿命が短くなるのをより抑制することができる。
【0077】
(反射鏡4)
反射鏡4は、発光部2から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成するものである。すなわち、反射鏡4は、発光部2からの光を反射することにより、ヘッドランプ10の前方へ進む光線束を形成する。この反射鏡4は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された曲面形状(カップ形状)の部材である。
【0078】
また、反射鏡4は、半球面ミラーに限定されず、楕円面ミラーやパラボラミラーまたはそれらの部分曲面を有するミラーあってもよい。すなわち、反射鏡4は、回転軸を中心として図形(楕円、円、放物線)を回転させることによって形成される曲面の少なくとも一部をその反射面に含んでいるものであればよい。
【0079】
また、発光部2から出射される蛍光の照明光としての利用効率を高めることを考慮すれば、反射鏡4の焦点位置に発光部2が設けられていることが好ましい。本実施の形態では、製造時には第1発光部2aから出射される第1の蛍光を照明光として利用するものとしてレーザ光照射の設定が行われている。このため、反射鏡4の焦点位置に第1発光部2aが配置されることが好ましい。
【0080】
(固定部材5)
固定部材5は、導光部材9が挿通される挿通口が形成された板状の部材であり、導光部材9の出射端部の中心と発光部2の受光面(透光性基板1と接触している面)の中心とがほぼ一致するように、ネジ7によって反射鏡4に固定している。図1に示す発光部2では、導光部材9の出射端部の中心と第1発光部2aの受光面の中心とがほぼ一致するように固定されている。また、固定部材5には、その挿通口を囲むように励起光源ユニット6が接合されている。固定部材5の材質は特に問わないが、鉄、銅などの金属を例示することができる。
【0081】
また、固定部材5には、支持部材11を収納できる収納部51が形成されている。この収納部51の存在により、支持部材駆動部12の駆動に従った支持部材11のレーザ光の光軸方向への移動が可能となる。そして、この移動により、発光部2におけるレーザ光の照射範囲(レーザ光照射領域30(図5参照)の大きさ)を変化させることができる。発光部2の移動とレーザ光照射領域30との関係の詳細については、図5を用いて後述する。
【0082】
(励起光源ユニット6)
励起光源ユニット6は、例えば3つの半導体レーザ(励起光源)61を収納した筐体である。半導体レーザ61の固定方法および配線方法については、従来の固定方法および配線方法を利用すれば良いので、ここでは説明を省略する。
【0083】
半導体レーザ61は、励起光を出射する励起光源として機能する発光素子である。本実施の形態では、励起光源として半導体レーザが利用される場合について説明するが、例えばLEDであってもよい。半導体レーザである場合には、高出力かつコヒーレント性の高いレーザ光を発光部2に照射できるので発光部2を小さくでき、高輝度なヘッドランプ10を実現できる。図1には、半導体レーザ61が3個図示されているが、半導体レーザ61を複数設ける必要は必ずしもなく、1つのみ設けてもよい。しかし、高出力の励起光を得るためには、複数の半導体レーザ61を用いる方が容易である。
【0084】
半導体レーザ61は、例えば、1チップに1つの発光点を有するものであり、450nm(青色)のレーザ光を発振し、出力1.6W、動作電圧4.7V、電流1.2Aのものであり、直径9mmの金属パッケージ(ステム)に封入されているものである。したがって、励起光源ユニット6全体としての出力は、4.8W程度である。
【0085】
ただし、金属パッケージは直径9mmのものに限定されず、例えば、直径3.8mmや直径5.6mm、あるいはそれ以外であってもよく、熱抵抗がより小さいパッケージを選択することが好ましい。また、半導体レーザ61は、1チップに複数の発光点を有するものであってもよい。また、半導体レーザ61の発振波長は、450nmに限られず、440nm以上480nm以下の青色領域の波長であれば良い。
【0086】
このように、半導体レーザ61が、青色領域の発振波長を有するレーザ光を出射する。また、第1発光部2aは、少なくとも、第1蛍光体として黄色領域にピーク波長を有する蛍光を発するYAG:Ce蛍光体、あるいは緑色領域にピーク波長を有する蛍光を発するβ−SiAlON:Eu蛍光体を含む。これらの構成により、第1発光部2aから出射される照明光の色温度を高くできる。また、β−SiAlON:Eu蛍光体は発光効率が高いので、当該蛍光体を第1蛍光体として用いた場合には、第1発光部2aの発光効率を高めることができる。
【0087】
(レンズ8)
次に、レンズ8は、反射鏡4の開口部に設けられており、ヘッドランプ10を密封している。発光部2から出射された蛍光または散乱光、もしくは、反射鏡4によって反射された蛍光または散乱光は、レンズ8を通ってヘッドランプ10の前方へ出射される。
【0088】
レンズ8は、凸レンズであっても、凹レンズであってもよい。また、レンズ8は、必ずしもレンズ機能を有する必要はなく、発光部2から出射された蛍光または散乱光、もしくは、反射鏡4で反射した蛍光または散乱光を透過する透光性を少なくとも有していれば良い。
【0089】
(導光部材9)
導光部材9は、半導体レーザ61が発振したレーザ光を発光部2へと導くものであり、半導体レーザ61から出射されたレーザ光を入射する入射端部(半導体レーザ61側)と、入射端部から入射したレーザ光を出射する出射端部(発光部2側)を有している。
【0090】
また、導光部材9は、入射端部に入射したレーザ光を反射する光反射側面で囲まれた囲繞構造を有しており、導光部材9の出射端部の断面積は、入射端部の断面積よりも小さくなっている。
【0091】
具体的には、導光部材9は、全体が四角錐台形状の筒形をなしており、出射端部の断面(開口)は、1mm×3mmの矩形であり、入射端部の断面(開口)は、15mm×15mmの矩形である。導光部材9の形状は四角錐台形状に限られず、四角錐台形状以外の多角錐台形状、円錐台形状、楕円錐台形状など様々な形状を採用することができる。また、入射端部から出射端部までの長さは、25mmである。
【0092】
この囲繞構造により、導光部材9は、入射端部に入射したレーザ光を、入射端部の断面積よりも小さい断面積を有する出射端部に集光した上で発光部2に出射できる。このため、複数の半導体レーザ61を用いて高出力化を図ったとしても、発光部2を小さく設計することができる。すなわち、高出力・高輝度なヘッドランプ10を実現できる。
【0093】
また、導光部材9は、BK(ボロシリケート・クラウン)7、石英ガラス、アクリル樹脂その他の透明素材で構成される。
【0094】
なお、導光部材9の代わりに光ファイバーや光学レンズ等を用いて、レーザ光を発光部2に集光してもよい。
【0095】
(支持部材11)
支持部材11は、発光部2が接着された透光性基板1を支持するものであり、支持部材駆動部12の駆動に連動して透光性基板1をレーザ光の光軸方向に移動可能なものである。支持部材11が移動することにより、発光部2の位置を変化させることができる。その結果、導光部材9から出射されたレーザ光の光路幅が導光部材9からの距離に比例して大きくなる(あるいは小さくなる)場合に、レーザ光照射領域30(図5参照)の大きさを変化させることができる。
【0096】
また、支持部材11は、支持部材駆動部12のギアと接触するように設けられており、その接触する表面にはギアと噛み合うように溝が設けられている。これにより、支持部材11は、支持部材駆動部12の駆動に従った移動が可能となる。なお、ギアに連動して動作するのであれば、支持部材11の表面がどのような形状になっていてもよく、また特に加工されていなくてもよい。
【0097】
支持部材11の材質は特に問わないが、支持部材11がその移動により反射鏡4の内部に挿入されることを考慮すれば、透光性基板1と同様、透光性を有する材質であることが好ましい。また、支持部材11の形状は、平板状であっても棒状であってもよい。さらに、支持部材11が透光性基板1と一体に形成されていてもよい。
【0098】
なお、本実施の形態では、レーザ光の光軸方向に支持部材11が移動するものとして説明するが、レーザ光照射領域30の大きさを自在に変化させることが可能であれば、必ずしも光軸方向に移動する必要はない。
【0099】
(支持部材駆動部12)
支持部材駆動部12は、支持部材11をレーザ光の光軸方向へ移動させるためのものであり、例えばステッピングモータ及びギアからなり、支持部材11毎に設けられている。ギアは、その表面が支持部材11に接触するように、また、その回転軸が支持部材11の移動方向と垂直な方向となるように設けられている。ギアは、支持部材11に対して1つであっても、複数の組み合わせからなっていてもよい。また、ステッピングモータは、その回転をギアに伝播できるように設けられていればよい。
【0100】
支持部材駆動部12では、可動制御部141(図2参照)から可動指示を受けると、ステッピングモータが駆動し、ギアが回転する。ギアと支持部材11とが接触して設けられているため、ギアの回転力が支持部材11に伝播され、支持部材11をレーザ光の光軸方向に移動させる。
【0101】
本実施の形態では、製造時には、第1発光部2aの受光面全体にレーザ光が照射されるように設計されている。このため、製造時の状態のまま使用すれば、ヘッドランプ10は、第1発光部2aから出射された第1の蛍光を照明光として出射する。そして、支持部材駆動部12が支持部材11を介して発光部2を移動させることにより、第2発光部2bにもレーザ光が照射され、照明光の一部に第2の蛍光を含めることができる。
【0102】
つまり、支持部材駆動部12は、導光部材9と、第1発光部2a及び第2発光部2bとの相対的な位置(すなわち半導体レーザ61とこれら発光部の相対的な位置)を変化させることにより、第1発光部2aにおけるレーザ光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部2bに照射されるレーザ光の照射範囲を変化させている。この相対的な位置を変化させることにより、半導体レーザ61から出射されたレーザ光の光路幅は、一般に出射点からの距離に応じて大きくなる。このため、その変化により、第2発光部2bにおけるレーザの照射範囲(レーザ光照射領域30に含まれる第2発光部2bの割合)を変化させることができる。
【0103】
<ヘッドランプ10の更なる構成>
次に、ヘッドランプ10の更なる構成について、図2を用いて説明する。図2は、ヘッドランプ10の概略構成の一例を示すブロック図である。ヘッドランプ10は、図1に示す構成部材の他、入力部13(入力手段)、制御部14および記憶部15を備えている。支持部材駆動部12及び半導体レーザ61については上述したので、その説明を省略する。なお、本実施の形態では、これらの部材がヘッドランプ10の構成部材であるものとして説明するが、これに限らず、例えばヘッドランプ10が取り付けられる車両等が備える入力部、制御部及び記憶部により実現されてもよい。
【0104】
(入力部13)
入力部13は、例えば支持部材駆動部12の駆動指示、半導体レーザ61の出力変更指示などのユーザ操作を受け付けるものであり、タッチパッドなどにより実現される。
【0105】
例えば、入力部13がユーザ操作として駆動指示を受け付けた場合、可動制御部141は、その受け付けたユーザ操作に従って支持部材駆動部12を動作させる。この場合、ユーザは、照明光の光度を自身の目で確認しながら、入力部13を介して上記の駆動指示を与えることができるので、ユーザ操作の都度、支持部材11を駆動させることができる。それゆえ、ユーザ嗜好にあわせて照明光の色温度を変化させることができる。
【0106】
(制御部14)
制御部14は、主として、可動制御部141及び出力制御部142を備える。制御部14は、例えば制御プログラムを実行することにより、ヘッドランプ10を構成する部材を制御するものである。制御部14は、記憶部15に格納されているプログラムを、例えばRAM(Random Access Memory)等で構成される一次記憶部(不図示)に読み出して実行することにより、支持部材駆動部12の駆動制御、半導体レーザ61の出力制御等の各種処理を行う。
【0107】
可動制御部141は、入力部13から受信した駆動指示に従って、支持部材駆動部12の駆動制御を行うものであり、例えば、駆動指示を受け付けるたびに支持部材駆動部12のステッピングモータに所定の駆動電圧を印加する。
【0108】
出力制御部142は、半導体レーザ61の出力制御を行うものであり、例えば製造時に設定された駆動電圧を半導体レーザ61に印加する。
【0109】
(記憶部15)
記憶部15は、制御部14が実行する(1)各部の制御プログラム、(2)OSプログラム、(3)アプリケーションプログラム、および、(4)これらプログラムを実行するときに読み出す各種データを記録するものである。制御部14は、例えばROM(Read Only Memory)フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置によって構成されるものである。なお、上述した一次記憶部は、RAMなどの揮発性の記憶装置によって構成されているが、本実施形態では、記憶部15が一次記憶部の機能も備えているものとして説明する場合もある。記憶部15は、例えば支持部材駆動部12または半導体レーザ61への駆動電圧値等を格納している。
【0110】
<発光部2における各発光部の配置例>
次に、第1発光部2a及び第2発光部2bの配置例について図3を用いて説明する。図3は、ヘッドランプ10における第1発光部2a及び第2発光部2bの配置例を示すものである。(a)は発光部2全体が直方体形状である場合の配置例、(b)は第1発光部2a及び第2発光部2bが非接触である場合の配置例、(c)は発光部2全体が円柱形状である場合の配置例、(d)は発光部2全体が円柱形状であり、かつ発光部2が3重構造である場合の配置例を示す。
【0111】
図3では、第2発光部2bが第1発光部2aの周囲に配置された発光部2の構成を示している。本実施の形態では、支持部材駆動部12が導光部材9と発光部2との距離を変化させることにより、第1発光部2aとともに第2発光部2bにレーザ光を照射して色温度を変化させる。このため、図3の配置の場合、例えば図10(a)に示すような配置の場合よりも、効率よくレーザ光照射領域30(当該領域に含まれる第2発光部2bの割合)を変化させることができる。
【0112】
図3(a)では、図1に示す発光部2における配置例を示しており、第1発光部2aの外周に接触するように第2発光部2bが設けられている。この場合の第1発光部2aは、縦1.5mm×横4mm×厚み0.5mmの直方体であり、第2発光部2bは、第1発光部2aの大きさ分だけ空洞部分を有する、縦4.5mm×横7mm×厚み0.5mmの直方体である。なお、第1発光部2a及び第2発光部2bの大きさはこれに限られたものではない。例えば、第1発光部2aの受光面の大きさは、発光部2が導光部材9との距離が最も近くなるときにレーザ光照射領域30(図5参照)を全て含むような大きさであればよい。また、発光部2全体の受光面の大きさは、発光部2が導光部材9から最も離れたときにレーザ光照射領域30を全て含むような大きさであればよい。さらに、第1発光部2a及び第2発光部2bの厚みも上記に限られるものではなく、例えば蛍光への変換効率、あるいは放熱効率が高くなるような厚みであることが好ましい。
【0113】
また、発光部2の受光面が長方形である場合を例示しているが、これに限らず、正方形であってもよい。但し、半導体レーザ61から出射されたレーザ光が形成する照射領域は楕円形状であること、また、車両用前照灯の配光特性基準を満たすことを考慮すれば、発光部2の受光面が矩形である場合には、水平方向に長軸を有する長方形であることが好ましい。
【0114】
図3(a)では、例えば、上記形状の2つの低融点ガラスを製造し、一方の内部にYAG:Ce蛍光体、他方の内部にCASN:Eu蛍光体をそれぞれ分散させて第1発光部2a及び第2発光部2bを製造する。その後、第1発光部2aの透光性基板1に対する位置決めをした後、第1発光部2aを透光性基板1に接着する。第2発光部2bについても同様に透光性基板1に接着する。
【0115】
ここで、図3(b)のように、第1発光部2a及び第2発光部2bが非接触に配置されている場合を示す。本実施の形態では、複数の半導体レーザ61から出射されたレーザ光は、導光部材9で集光され、発光部2に照射されるように設計されている。このため、支持部材駆動部12が導光部材9と発光部2との距離を変化させ、第1発光部2aとともに第2発光部2bにもレーザ光を照射させた場合に、その非接触となっている領域(非接触領域A)にレーザ光が照射されてしまうので、その分、レーザ光の利用効率が低下してしまう。
【0116】
図3(a)では、第1発光部2aと第2発光部2bとが接触して配置されているので、非接触領域Aにおいてレーザ光が照射され蛍光に変換されないという事態を防ぐことができ、レーザ光を蛍光の変換に無駄なく利用できる。この点を考慮しなければ、あるいは、ヘッドランプ10が非接触領域Aから出射されるレーザ光を第1の蛍光とともに照明光として利用する構成となっている場合には、図3(b)に示すように、第1発光部2a及び第2発光部2bが非接触に配置されていてもよい。なお、図3(b)では、ヘッドランプ10は、発光部2が導光部材9に最も近い位置にあるときに、レーザ光照射領域30が第1発光部2a及び非接触領域Aを全て含むように設計されている。
【0117】
図3(c)は図3(a)の変形例である。第1発光部2aは、直径2.0mm、高さ0.5mmの円柱であり、第2発光部2bは、第1発光部2aの大きさ分だけ空洞部分を有する、直径3.0mm、高さ0.5mmの円柱である。第1発光部2a及び第2発光部2bの大きさ及び形状は、図3(a)で示した事情を考慮して決定されることが好ましく、例えば上記の配光特性基準などを考慮すれば楕円形状であることが好ましい。
【0118】
また、発光部2は2重構造に限らず、例えば図3(d)に示すように3重構造となっていてもよい。図3(d)では、発光部2は、第1発光部2a及び第2発光部2bの大きさ分だけ空洞部分を有する、直径4.0mm、高さ0.5mmの円柱形状の第3発光部2cを備えている。例えば、第1発光部2aがYAG:Ce蛍光体を含み、第2発光部2bがSCASN:Eu蛍光体を含み、第3発光部2cがCASN:Eu蛍光体を含んでいる。この場合、発光部2が2つの発光部からなる場合に比べ、より細かく色温度を変化させることができる。なお、発光部2は4つ以上の発光部からなっていてもよい。
【0119】
ここで、本実施の形態では、ヘッドランプ10は、製造時には第1発光部2a(本体部)にレーザ光が照射されるように設計されており、その後支持部材駆動部12が発光部2を移動させることで、第2発光部2b(周辺部)を含めてレーザ光が照射されるように設計されている。また、第1発光部2aには他の発光部(例えば第2発光部2b、第3発光部2c、…)よりも短いピーク波長を有する蛍光体が用いられる。この配置の場合、ヘッドランプ10は、製造時のままの状態で使用された場合に最も色温度が高い照明光を出射し、その後発光部2を導光部材9から遠ざけるように移動させることで色温度が低い照明光を出射する。
【0120】
ここで、色温度が低い照明光を出射した(第2の蛍光を出射した)場合には、第1の蛍光だけを照明光として利用している場合に比べ、レーザ光照射領域30(発光部2の受光面における発光点サイズ)が拡大する。また、発光部2から出射された照明光は、反射鏡4やレンズ8等の光学系により、車両の前方においてその照射領域が拡大される。一般に、照明光の照度を低くして車両の前方を広く照射した方が視認性・安全性が高い。例えば、濃霧時に照度が高いハイビームを点灯させた場合には視認性が低下する。本実施の形態では、色温度が低い照明光ほど車両の前方を広く照射できるので、悪天候時(雨天時、霧発生時など)における照射に適したヘッドランプを提供できる。
【0121】
なお、上記の視認性・安全性を考慮しなければ、発光部2に用いる蛍光体のうち最もピーク波長が長い蛍光体を第1蛍光体として利用し、製造時のままの状態で使用した場合に最も低い色温度の照明光を出射するように発光部2が構成されていてもよい。
【0122】
また、上記では、各発光部が別々に製造され、透光性基板1に設けられるものとして説明したが、これに限らず、一体に形成されてもよい。一体形成した場合には、各発光部を別々に製造してヘッドランプ10に備える場合に比べ、製造工程及び製造コストを削減できる。
【0123】
各発光部が一体形成される場合には、発光部2は例えば次のように製造される。まず、異なる2つの融点を有する封止材(例えば低融点ガラス)を用意し、蛍光体が分散された高融点の方の封止材を用いて(第1発光部2aの大きさ分だけ空洞部分を有する)第2発光部2bを形成する。その後、この第2発光部2bを外枠として別の蛍光体が分散された低融点の封止材からなる第1発光部2aを形成する。これにより、一体形成の発光部2が得られる。その後、発光部2の透光性基板1に対する位置決めをした後、発光部2を透光性基板1に接着する。
【0124】
図4は、一体形成された発光部2の一例を示す図であり、(a)は透光性基板1に接着された発光部2の一例を示す断面図であり、(b)は(a)に示す発光部2の一例を示す斜視図である。同図に示すように、第1発光部2aは、レーザ光が照射される受光面201aの大きさが、蛍光を出射する出射面202aよりも大きい、所謂すり鉢形状となっている。すなわち、受光面201aの各頂点と出射面201bの各頂点とを結ぶ直線が形成する4つの面(第1発光部2a及び第2発光部2bの接触面(壁面))が受光面201aに対して斜面を形成している。それゆえ、第1発光部2aの受光面201a側が透光性基板1に接着したときに、例えば第1発光部2aが直方体(受光面201aの大きさが出射面202aの大きさとが略同一)である場合に比べ、第1発光部2aが透光性基板1から外れて落ちないようにすることができる。
【0125】
なお、図4に示す発光部2の形状は、第1発光部2aと第2発光部2bとが一体形成された場合に限らず、上述した第1発光部2aと第2発光部2bとが別々に製造される場合にも実現できる。
【0126】
<発光部2の移動制御>
(レーザ光照射領域30の変化について)
次に、レーザ光照射領域30の大きさが変化する様子について、図5を用いて説明する。ここでは、その様子をわかりやすくするために、レーザ光照射領域30の形状が楕円形状で、発光部2の形状が直方体であるものとして説明する。
【0127】
図5は、発光部2と導光部材9との位置関係と、そのときのレーザ光照射領域30の大きさを示す図である。同図の(a)はレーザ光が第1発光部2aの受光面全体に照射されたときのレーザ光照射領域30の大きさが最も小さい場合を示す。また、同図の(b)は(a)の場合よりも、発光部2と導光部材9との位置が離れ、かつレーザ光照射領域30が大きい場合を示し、(c)は(b)の場合よりも、発光部2と導光部材9との位置が離れ、かつレーザ光照射領域30が大きい場合を示す。
【0128】
まず、図5(a)に示すように、発光部2と導光部材9との距離がdAであるとき、レーザ光は、第1発光部2aの受光面全体に照射され、第2発光部2bにはほとんど照射されていない。このため、製造時のレーザ光照射の設定に従った色温度が高い照明光の出射が実現されている。なお、第1発光部2aの受光面全体にレーザ光が照射されていればよく、例えば第1発光部2aがレーザ光照射領域30と同形状の楕円形状であれば、第1発光部2aのみにレーザ光が照射されることとなる。
【0129】
次に、図5(b)では、発光部2と導光部材9との距離がdB(>dA)となったときを示している。この場合、可動制御部141が支持部材駆動部12を駆動することにより、支持部材駆動部12は、支持部材11を介して、発光部2と導光部材9との距離がdBとなるまで発光部2を移動させている。
【0130】
一般に、透光性基板1と導光部材9との間に凸レンズ等の集光部材が存在しない、あるいは導光部材9の出射端部がレーザ光を集光できる形状となっていない場合には、導光部材9から出射されたレーザ光の光路幅は、導光部材9からの距離に比例して大きくなる。すなわち、発光部2が導光部材9から離れるほどレーザ光照射領域30が大きくなる。この場合のレーザ光の形状は、先太りの円錐形状(正確には楕円錐形状)となっている。なお、レーザ光の形状は真円の円錐形状であってもよく、当該円錐形状を実現する目的であれば、透光性基板1と導光部材9との間に集光部材を設けてもよい。
【0131】
つまり、上記の移動により、図5(b)では、支持部材駆動部12が発光部2と導光部材9との距離をdAからdBまで変化させたことにより、レーザ光照射領域30に含まれる第2発光部2bの割合が、図5(a)の場合よりも大きくなっている。その割合が大きくなった分だけ第1の蛍光に加え第2の蛍光を出射できるので、照明光に対する第2の蛍光の割合を増加させることができる。
【0132】
本実施の形態では、第2蛍光体は第1蛍光体よりもピーク波長が長いので、第2発光部2bが出射する第2の蛍光は第1の蛍光よりも色温度が低い。このため、照明光に含まれる第2の蛍光の割合を増加させることにより、図5(a)の場合よりも照明光の色温度を低くできる。
【0133】
図5(c)では、発光部2と導光部材9との距離がdC(>dB)となったときを示しており、レーザ光照射領域30に含まれる第2発光部2bの割合が図5(b)の場合よりも大きくなっている。それゆえ、さらに照明光の色温度を低くできる。
【0134】
一方、例えば図5(c)の発光部2の位置から図5(a)の発光部2の位置に移動させる(距離dCから距離dAに変更)ことにより、照明光に含まれる第2の蛍光の割合を小さくできるので、照明光の色温度を高めることができる。
【0135】
このように、支持部材駆動部12は、支持部材11を介して、発光部2におけるレーザ光照射領域30の大きさを変化させている。換言すれば、支持部材駆動部12は、第1発光部2aにおけるレーザ光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部2bに照射されるレーザ光の照射範囲を変化させることにより、照明光に対する第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができる。このため、発光部2から出射される照明光のスペクトルを変化させることができるので、照明光の色温度のみならず、照明光の色度、照明光に含まれるスペクトルを変更することができる。
【0136】
なお、上記では、支持部材駆動部12が発光部2を移動させる構成であったが、これに限らず、例えば導光部材9を移動させてレーザ光照射領域30の大きさを変化させる構成であってもよい。
【0137】
また、上記では、導光部材9から出射されたレーザ光の光路幅が、導光部材9からの距離に比例して大きくなる場合について説明したが、当該光路幅が当該距離に比例して小さくなる場合であっても、発光部2または導光部材9を移動させることにより、レーザ光照射領域30の大きさを変化させることができる。但し、この場合、図5(a)におけるレーザ光の照射状態が、発光部2が導光部材9から最も離れたとき(d=dC)に実現され、図5(c)におけるレーザ光の照射状態が、発光部2が導光部材9から最も近いとき(d=dA)に実現される。
【0138】
なお、本実施の形態では、発光部2と導光部材9との距離がdAからdCに変化する場合、その変化(発光部2の移動)は連続的に行われるものとして説明したが、例えばその距離がdA及びdCのときだけ発光部2の位置決めが可能である構成であってもよい。すなわち、発光部2の移動が連続的でなく、段階的に行われてもよい。この場合、支持部材駆動部12は、レーザ光照射領域30に第1発光部2aのみが含まれる、あるいは、当該領域に第1発光部2a及び第2発光部2bが含まれるといった状態を段階的に切り替える。なお、発光部2が3つ以上の発光部を含む場合にも、同様の切り替えを行うことにより色温度変化を実現できる。
【0139】
(色温度の変化について)
次に、半導体レーザ61から出射されるレーザ光及び発光部2に含まれる蛍光体と、そのときの照明光の色温度との関係について、図6を用いて説明する。図6は、車両用前照灯に要求される白色の色度範囲を示すグラフ(色度図)である。同図に示すように車両用前照灯に要求される白色の色度範囲が法律により規定されている。当該色度範囲は、6つの点35を頂点とする多角形の内部である。また、曲線33は、色温度(K:ケルビン)を示すものである。
【0140】
図示のように、半導体レーザ61の発振波長が440nm(色度点41:青色領域)、蛍光体のピーク波長が570nm(色度点42:黄色領域)の場合、直線40に示すように、約4500Kから8500Kの照明光の色温度を実現できる。一方、半導体レーザ61の発振波長が440nm(色度点41:青色領域)、蛍光体のピーク波長が649nm(色度点43:赤色領域)の場合には、直線44に示すように、黄色発光蛍光体を用いた場合よりも照明光の色温度が非常に低くなることがわかる。
【0141】
したがって、図6に示す色度図からもわかるように、第1発光部2aの受光面全体にレーザ光が照射された状態から、第2発光部2bの受光面にもレーザ光が照射される状態とすることにより、照明光の色温度を赤色方向に移動させる、すなわち色温度が低下する方向に移動させることができる。
【0142】
<半導体レーザ61の構造>
次に、半導体レーザ61の基本構造について説明する。図7(a)は、半導体レーザ61の回路図を模式的に示したものであり、図7(b)は、半導体レーザ61の基本構造を示す斜視図である。同図に示すように、半導体レーザ61は、カソード電極19、基板18、クラッド層113、活性層111、クラッド層112、アノード電極17がこの順に積層された構成である。
【0143】
基板18は、半導体基板であり、本願のように蛍光体を励起する為の青色〜紫外の励起光を得る為にはGaN、サファイア、SiCを用いることが好ましい。一般的には、半導体レーザ用の基板の他の例として、Si、GeおよびSiC等のIV属半導体、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体、ZnO、Al2O3、SiO2、TiO2、CrO2およびCeO2等の酸化物絶縁体、並びに、SiNなどの窒化物絶縁体のいずれかの材料が用いられる。
【0144】
アノード電極17は、クラッド層112を介して活性層111に電流を注入するためのものである。
【0145】
カソード電極19は、基板18の下部から、クラッド層113を介して活性層111に電流を注入するためのものである。なお、電流の注入は、アノード電極17・カソード電極19に順方向バイアスをかけて行う。
【0146】
活性層111は、クラッド層113及びクラッド層112で挟まれた構造になっている。
【0147】
また、活性層111およびクラッド層の材料としては、青色〜紫外の励起光を得る為にはAlInGaNから成る混晶半導体が用いられる。一般に半導体レーザの活性層・クラッド層としては、Al、Ga、In、As、P、N、Sbを主たる組成とする混晶半導体が用いられ、そのような構成としても良い。また、Zn、Mg、S、Se、TeおよびZnO等のII−VI属化合物半導体によって構成されていてもよい。
【0148】
また、活性層111は、注入された電流により発光が生じる領域であり、クラッド層112及びクラッド層113との屈折率差により、発光した光が活性層111内に閉じ込められる。
【0149】
さらに、活性層111には、誘導放出によって増幅される光を閉じ込めるために互いに対向して設けられる表側へき開面114・裏側へき開面115が形成されており、この表側へき開面114・裏側へき開面115が鏡の役割を果す。
【0150】
ただし、完全に光を反射する鏡とは異なり、誘導放出によって増幅される光の一部は、活性層111の表側へき開面114・裏側へき開面115(本実施の形態では、便宜上表側へき開面114とする)から出射され、励起光L0となる。なお、活性層111は、多層量子井戸構造を形成していてもよい。
【0151】
なお、表側へき開面114と対向する裏側へき開面115には、レーザ発振のための反射膜(図示せず)が形成されており、表側へき開面114と裏側へき開面115との反射率に差を設けることで、低反射率端面である、例えば、表側へき開面114より励起光L0の大部分を発光点103から照射されるようにすることができる。
【0152】
クラッド層113・クラッド層112は、n型およびp型それぞれのGaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSb、及びAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、並びに、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体のいずれの半導体によって構成されていてもよく、順方向バイアスをアノード電極17及びカソード電極19に印加することで活性層111に電流を注入できるようになっている。
【0153】
クラッド層113・クラッド層112および活性層111などの各半導体層との膜形成については、MOCVD(有機金属化学気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学気相成長)法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。各金属層の膜形成については、真空蒸着法やメッキ法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。
【0154】
(発光部2の発光原理)
次に、半導体レーザ61から発振されたレーザ光による蛍光体の発光原理について説明する。
【0155】
まず、半導体レーザ61から発振されたレーザ光が発光部2に含まれる蛍光体に照射されることにより、蛍光体内に存在する電子が低エネルギー状態から高エネルギー状態(励起状態)に励起される。
【0156】
その後、この励起状態は不安定であるため、蛍光体内の電子のエネルギー状態は、一定時間後にもとの低エネルギー状態(基底準位のエネルギー状態または励起準位と基底準位との間の準安定準位のエネルギー状態)に遷移する。
【0157】
このように、高エネルギー状態に励起された電子が、低エネルギー状態に遷移することによって蛍光体が発光する。
【0158】
白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または補色の関係を満たす2つの色の混色で構成でき、この原理・関係に基づき、半導体レーザから発振されたレーザ光の色と蛍光体が発する光の色とを、上述のように組み合わせることにより白色光を発生させることができる。
【0159】
<ヘッドランプ10の変形例1>
図8は、ヘッドランプ10の変形例を示す図である。このヘッドランプ10は、透光性基板1と導光部材9との間に、半導体レーザ61から出射されたレーザ光を屈曲して、第1発光部2a及び第2発光部2bの少なくとも一方に出射する凸レンズ16(光学部材)を備えており、凸レンズ16の外周の一部に支持部材11が設けられている。すなわち、このヘッドランプ10では、支持部材駆動部12が、発光部2の代わりに凸レンズ16を移動させることにより、照明光の色温度変化を実現している。
【0160】
具体的には、凸レンズ16を備えることにより、図8に示すように、凸レンズ16透過後のレーザ光の光路幅を、凸レンズ16入射前のレーザ光の光路幅とは異なり、かつ、凸レンズ16からの距離に応じて変化するように出射できる。つまり、レーザ光は、凸レンズ16を透過することにより、凸レンズ16を基点としてその光路幅が新たに変化していくこととなる。このため、凸レンズ16を移動させることにより、凸レンズ16と第1発光部2a及び/又は第2発光部2bとの距離を変更できる。第2発光部2bにおけるレーザ光の照射範囲が、凸レンズ16と発光部2との距離に応じて変化するので、支持部材駆動部12がその距離を変更することにより、結果として照明光の色温度を変化させることができる。
【0161】
導光部材9から出射されるレーザ光の光路に対して焦点距離が十分に長いレンズの場合、図8のようにレーザ光の光路幅を変更できる。このため、凸レンズ16としては、焦点距離が十分に長い両凸レンズ、平凸レンズなどが使用できる。その他、導光部材9から出射されるレーザ光が、平行光で、かつ細いレーザ光である場合には、凸レンズ16の代わりとして、両凹レンズ、平凹レンズなどの凹レンズも使用可能である。つまり、凸レンズ16は、入射するレーザ光の出射角度を変更可能なレンズであればよく、その機能を有していれば非球面レンズであってもよい。
【0162】
なお、凸レンズ16には、レーザ光の反射を防止する光学膜(反射膜)がコーティングされていることが好ましい。また、上述の機能を有するレンズであれば、凸レンズ16の形状および材質は特に限定されないが、440〜480nmの透過率が高いことが好ましい。
【0163】
<ヘッドランプ10の効果>
ヘッドランプ10は、第1発光部2aにおけるレーザ光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部2bに照射されるレーザ光の照射範囲を変化させる支持部材11及び支持部材駆動部12を備えている。このため、照明光に含まれる第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができるので、その割合の変化により、照明光の色温度を変化させることができる。
【0164】
特に、本発明の照明装置は、夜間の自動車運転を行う際、周囲の様々な状況(天候・時間帯・道路の照明状況等)を鑑みて、その状況により適合した色温度の照明光を照射できるので、夜間走行の安全性をより向上させることができる。また、そのようなニーズにも対応できる照明装置といえる。
【0165】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について図9〜図11に基づいて説明すれば、以下のとおりである。図9は、ヘッドランプ20(照明装置、前照灯)の概要構成を示す図である。なお、実施の形態1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0166】
本実施の形態のヘッドランプ20は、透光性基板駆動部12aにより、透光性基板1aがレーザ光の光軸方向に対して垂直な方向に移動することが可能な構成となっている。図9では、支持部材11を備えずに当該垂直な方向への移動を実現しているが、これに限らず、支持部材11を介してその移動を実現する構成であってもよい。
【0167】
(透光性基板1a)
透光性基板1aの機能及び材質は、実施の形態1の透光性基板1と同様であるが、その大きさは、例えば縦10mm×横15mm×厚み0.5mmとなっており、横の長さ(移動方向への長さ)が、反射鏡4の導光部材9側の開口部の大きさよりも大きくなっている。また、透光性基板1aには、透光性基板駆動部12aのギアと噛み合うように、透光性基板1aのレーザ光入射側(導光部材9側)の表面には溝が設けられている。
【0168】
但し、透光性基板1aがレーザ光を透過させる機能を有していることを考慮すれば、当該溝は発光部2が接着された表面に対向する表面には設けられていないことが好ましい。また、また、ギアに連動して動作するのであれば、透光性基板1aの表面がどのような形状になっていてもよく、また特に加工されていなくてもよい。
【0169】
(透光性基板駆動部12a)
透光性基板駆動部12aは、例えばステッピングモータ及びギアからなり、透光性基板1aをレーザ光の光軸方向に対して垂直な方向に移動させることにより、発光部2をその方向に移動させるものである。つまり、本実施の形態では、透光性基板駆動部12aによって照射範囲変化機構の基本構造が形成されている。
【0170】
ギアは、その表面が透光性基板1aに接触するように、また、その回転軸が透光性基板1aの移動方向と垂直な方向となるように設けられている。ギアは、1つであっても、複数の組み合わせからなっていてもよい。また、ステッピングモータは、その回転をギアに伝播できるように設けられていればよい。
【0171】
また、透光性基板駆動部12aは、実施の形態1と同様、可動制御部141(図2参照)からの可動指示により、透光性基板1aを移動させる。
【0172】
なお、レーザ光照射領域30に含まれる第1発光部2a及び第2発光部2bの割合を変化させることが可能であれば、透光性基板駆動部12aが透光性基板1a(すなわち発光部2)を移動させる構成に限られず、導光部材9や励起光源ユニット6等を移動させる構成であってもよい。
【0173】
(発光部2における各発光部の配置例)
次に、第1発光部2a及び第2発光部2bの配置例について図10を用いて説明する。図10は、ヘッドランプ20における第1発光部2a及び第2発光部2bの配置例を示すものである。(a)は第1発光部2a及び第2発光部2bが同じ形状で、かつ接触して配置されている場合の配置例、(b)は(a)の変形例であり、第1発光部2a及び第2発光部2bの形状が異なる場合の配置例、(c)は(a)の変形例であり、第1発光部2a及び第2発光部2bが非接触である場合の配置例を示す。
【0174】
図10(a)では、第1発光部2a及び第2発光部2bの大きさは、ともに縦4.5mm×横3.5mm×厚み0.5mmとなっており、両発光部は接触して設けられている。この大きさは一例であり、実施の形態1と同様、レーザ光の照射、蛍光への変換効率、放熱効率などを考慮した大きさであればよい。
【0175】
第1発光部2a及び第2発光部2bが接触して設けられている場合、実施の形態1と同様、例えば図10(c)に示すような両発光部が非接触に設けられている場合に生じる、非接触領域Aにレーザ光が照射され蛍光に変換されないという事態を防ぐことができる。それゆえ、レーザ光を蛍光の変換に無駄なく利用できる。
【0176】
また、図10(b)は、図10(a)の変形例であり、第1発光部2a及び第2発光部2bの大きさが異なる場合を示している。図10では、例えば、第1発光部2aの大きさが縦4.5mm×横3mm×厚み0.5mm、第2発光部2bの大きさが縦4.5mm×横4mm×厚み0.5mmとなっている。図10(a)と同様、その大きさはこれに限られない。
【0177】
ヘッドランプ20では、レーザ光照射領域30(図11(a)参照)が第1発光部2aの受光面に含まれる大きさとなるように、発光部2などの位置決めがされている。このため、図10(b)の場合には、図11(a)のように第1発光部2aにレーザ光を照射した場合(製造時に設定されたレーザ光照射)であっても、わずかに第2発光部2bから第2の蛍光を出射させることができる。このため、ヘッドランプ20が製造時の状態のまま使用されても、色温度及び演色性が比較的高い照明光を出射できる。
【0178】
なお、図示しないが、例えば3つ以上の発光部を並べて配置することによって、図3(d)と同様、より細かく色温度を変化させることも可能である。
【0179】
(レーザ光照射領域30の変化について)
次に、レーザ光照射領域30の大きさが変化する様子について、図11を用いて説明する。図11は、発光部2におけるレーザ光照射領域30の大きさの変化を示す図であり、(a)は第1発光部2aにだけレーザ光が照射されている場合を示し、(b)は第1発光部2a及び第2発光部2bの両方にレーザ光が照射されている場合を示す。
【0180】
図11(a)の場合、実施の形態1と同様、第1発光部2aから出射される第1の蛍光の方が、第2発光部2bから出射される第2の蛍光よりも色温度が高い。このため、第1発光部2aにだけレーザ光が照射されている場合には、製造時のレーザ光照射の設定に従った色温度が高い照明光の出射が実現されている。
【0181】
図11(b)では、透光性基板駆動部12aが透光性基板1aを、図11(a)の状態からレーザ光の光軸方向と垂直な方向に移動させることにより、レーザ光照射領域30の大きさを一定にした状態で当該領域の中心を第1発光部2aから第2発光部2bへ向けて移動させている。この移動により、図11(a)の場合に比べ、第1発光部2aに含まれるレーザ光照射領域30の割合が小さくなり、第2発光部2bに含まれるレーザ光照射領域30の割合が大きくなる。その結果、発光部2から出射される照明光に対する第1の蛍光及び第2の蛍光の割合が大きくなる。上述のように、第1の蛍光よりも第2の蛍光の色温度が低いので、第2の蛍光の割合が大きくなることで、色温度を低下させることができる。
【0182】
また、図11(b)の場合よりも更に第2の蛍光の割合が大きくなれば、さらに照射光の色温度を低下させることができる。一方、図11(b)の状態から図11(a)の状態となるように透光性基板1aを移動させた場合には、照射光の色温度を高めることができる。
【0183】
(ヘッドランプ20の効果)
ヘッドランプ20は、第1発光部2a及び第2発光部2bに照射されるレーザ光の照射範囲を変化させる透光性基板駆動部12aを備えている。このため、照明光に含まれる第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができるので、その割合の変化により、照明光の色温度を変化させることができる。
【0184】
また、その割合を変化させる一例として、透光性基板駆動部12aは、透光性基板1aを介して発光部2を移動させることにより、導光部材9と、第1発光部2a及び第2発光部2bとの相対的な位置(すなわち半導体レーザ61とこれら発光部との相対的な位置)を変化させている。この場合、第1発光部2a及び第2発光部2bにおけるレーザ光照射領域30の位置を変更できるので、第1発光部2a及び第2発光部2bそれぞれにおける当該領域の大きさを変化させることができる。その結果、上記の割合を変化させることができる。
【0185】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施形態について図12〜図17に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施の形態1及び2と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0186】
ここでは、本発明の照明装置の一例としてのレーザダウンライト200について説明する。レーザダウンライト200は、家屋、乗物などの構造物の天井に設置される照明装置であり、半導体レーザ61から出射したレーザ光を発光部2に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いるものである。
【0187】
なお、レーザダウンライト200と同様の構成を有する照明装置を、構造物の側壁または床に設置してもよく、上記照明装置の設置場所は特に限定されない。
【0188】
図12は、発光ユニット210および従来のLEDダウンライト300の外観を示す概略図である。図13は、レーザダウンライト200が設置された天井の断面図である。図14は、レーザダウンライト200の断面図である。
【0189】
レーザダウンライト200(発光ユニット210)は、図13及び図14に示すように、天板400に光ファイバー215を通す小さな穴402だけを開け、発光ユニット210の薄型・軽量という特長を活かして、強力な粘着テープ等を使って天板400に貼り付けられている。この場合、レーザダウンライト200の設置に係る制約が小さくなり、また工事費用が大幅に削減できるというメリットがある。なお、発光部2が移動可能な構成であれば、発光ユニット210が天板400に埋設されていてもよい。
【0190】
レーザダウンライト200は、照明光を出射する発光ユニット210と、光ファイバー215を介して発光ユニット210へレーザ光を供給する励起光源ユニット6aとを含んでいる。励起光源ユニット6aは、天井には設置されておらず、ユーザが容易に触れることができる位置(例えば、家屋の側壁)に設置されている。このように励起光源ユニット6aの位置を自由に決定できるのは、励起光源ユニット6aと発光ユニット210とが光ファイバー215によって接続されているからである。この光ファイバー215は、天板400と断熱材401との間の隙間に配置されている。
【0191】
(発光ユニット210の構成)
発光ユニット210は、図14に示すように、透光性基板1、第1発光部2aおよび第2発光部2bからなる発光部2、支持部材11、支持部材駆動部12、筐体211、透光板213、光ファイバー215及びフェルール217を備えている。
【0192】
筐体211には、凹部212が形成されている。凹部212の表面には、金属薄膜が形成されており、凹部212は反射鏡として機能する。また、この凹部212の底面付近で、例えば図5(a)〜(c)に示すように、発光部2の位置を変化させて、レーザ光照射領域30の大きさを変化させることが可能な位置に、発光部2を備えた透光性基板1が配置されている。実施の形態1で述べたように、発光部2の位置の変化は、支持部材駆動部12が、支持部材11を介して、発光部2を備えた透光性基板1をレーザ光の光軸方向に移動させることにより実現する。この移動の実現のために、筐体211には、支持部材11を収納できる収納部218が形成されている。
【0193】
また、筐体211には光ファイバー215を通す小さな穴219が開けられており、この穴219を通って光ファイバー215が発光部2近傍まで延びている。これにより、半導体レーザ61が出射したレーザ光は、光ファイバー215を介して、発光部2に照射される。また、光ファイバー215の出射端部215aは、フェルール217によって保持されている。なお、光ファイバー215及びフェルール217については後述する。
【0194】
透光板213は、凹部212の開口部をふさぐように配置された透明または半透明の板である。この透光板213は、レンズ8と同様の機能を有するものであり、発光部2の蛍光は、透光板213を透して照明光として出射される。透光板213は、筐体211に対して取外し可能であってもよく、省略されてもよい。
【0195】
図12では、発光ユニット210は、円形の外縁を有しているが、発光ユニット210の形状(より厳密には、筐体211の形状)は特に限定されない。
【0196】
なお、ダウンライトでは、ヘッドランプの場合とは異なり、理想的な点光源は要求されず、発光点が1つというレベルで十分である。それゆえ、発光部2の形状、大きさおよび配置に関する制約は、ヘッドランプの場合よりも少ない。
【0197】
(励起光源ユニット6aの構成)
励起光源ユニット6aは、半導体レーザ61、光ファイバー215および非球面レンズ216を備えている。
【0198】
光ファイバー215の一方の端部である入射端部215bは、励起光源ユニット6aに接続されており、半導体レーザ61から発振されたレーザ光は、非球面レンズ216を介して光ファイバー215の入射端部215bに入射される。
【0199】
非球面レンズ216は、半導体レーザ61から発振されたレーザ光(励起光)を、光ファイバー215の一方の端部である入射端部215bに入射させるためのレンズである。例えば、非球面レンズ216として、アルプス電気製のFLKN1 405を用いることができる。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズ216の形状および材質は特に限定されないが、450nm近傍の透過率が高く、かつ耐熱性のよい材料であることが好ましい。
【0200】
図14では、励起光源ユニット6aの内部に、半導体レーザ61および非球面レンズ216がそれぞれ3つずつ備えられ、それぞれの非球面レンズ216から延びる光ファイバーの束が1つの発光ユニット210に導かれている。すなわち、図14では、3つの半導体レーザ61と3つの非球面レンズ216とからなる1セットの光源が、1つの発光ユニット210用の光源として機能している。発光ユニット210が複数存在する場合には、発光ユニット210からそれぞれ延びる光ファイバーの束を1つの励起光源ユニット6aに導いてもよい。この場合、1つの励起光源ユニット6aに上記の1セットの光源が複数収納されることになり、励起光源ユニット6aは集中電源ボックスとして機能する。
【0201】
(光ファイバー215及びフェルール217)
光ファイバー215は、半導体レーザ61が発振したレーザ光を発光部2へと導く導光部材であり、複数の光ファイバーの束である。この光ファイバー215は、半導体レーザ61から出射されたレーザ光を受け取る入射端部215bと、これらの入射端部から入射したレーザ光を出射する出射端部215aとを有する光ファイバーを含んでいる。
【0202】
図15は、出射端部215aと発光部2との距離が最も近くなったときの出射端部215aと発光部2との位置関係を示す図であり、第1発光部2aの受光面201aと、第2発光部2bの受光面201bとを示している。この出射端部215aと発光部2との距離が最も近いときに、複数の出射端部215aから出射されたレーザ光が少なくとも受光面201a全域を含んで照射されるように、各出射端部215aの間隔、当該距離、受光面201aの大きさなどが設定される。
【0203】
光ファイバー215は、中芯のコアを、当該コアよりも屈折率の低いクラッドで覆った2層構造をしている。コアは、レーザ光の吸収損失がほとんどない石英ガラス(酸化ケイ素)を主成分とするものであり、クラッドは、コアよりも屈折率の低い石英ガラスまたは合成樹脂材料を主成分とするものである。例えば、光ファイバー215は、コアの径が200μm、クラッドの径が240μm、開口数NAが0.22の石英製のものであるが、光ファイバー215の構造、太さおよび材質は上述のものに限定されず、光ファイバー215の長軸方向に対して垂直な断面は矩形であってもよい。
【0204】
また、図14に示すように、フェルール217は、光ファイバー215の複数の出射端部215aを発光部2に対して所定のパターンで保持する。このフェルール217は、出射端部215aを挿入するための孔が所定のパターンで形成されているものでもよいし、上部と下部とに分離できるものであり、上部および下部の接合面にそれぞれ形成された溝によって出射端部215aを挟み込むものでもよい。
【0205】
このフェルール217は、筐体211から延出する棒状または筒状の部材などによって発光ユニット210に対して固定されていればよい。フェルール217の材質は、特に限定されず、例えばステンレススチールである。
【0206】
(レーザダウンライト200と従来のLEDダウンライト300との比較)
従来のLEDダウンライト300は、図12に示すように、複数の透光板301を備えており、各透光板301からそれぞれ照明光が出射される。すなわち、LEDダウンライト300において発光点は複数存在している。LEDダウンライト300において発光点が複数存在しているのは、個々の発光点から出射される光の光束が比較的小さいため、複数の発光点を設けなければ照明光として十分な光束の光が得られないためである。
【0207】
これに対して、レーザダウンライト200は、高光束の照明装置であるため、発光点は1つでもよい。それゆえ、照明光による陰影がきれいに出るという効果が得られる。また、実施の形態1で述べたように第2発光部2bの蛍光体に高演色蛍光体を用いるなど、発光部2全体として数種類の酸窒化物蛍光体を用いることにより、照明光の演色性を高めることができる。
【0208】
図16は、LEDダウンライト300が設置された天井の断面図である。同図に示すように、LEDダウンライト300では、LEDチップ、電源および冷却ユニットを収納した筐体302が天板400に埋設されている。筐体302は比較的大きなものであり、筐体302が配置されている部分の断熱材401には、筐体302の形状に沿った凹部が形成される。筐体302から電源ライン303が延びており、この電源ライン303はコンセント(不図示)につながっている。
【0209】
このような構成では、次のような問題が生じる。まず、天板400と断熱材401との間に発熱源である光源(LEDチップ)および電源が存在しているため、LEDダウンライト300を使用することにより天井の温度が上がり、部屋の冷房効率が低下するという問題が生じる。
【0210】
また、LEDダウンライト300では、光源ごとに電源および冷却ユニットが必要であり、トータルのコストが増大するという問題が生じる。
【0211】
また、筐体302は比較的大きなものであるため、天板400と断熱材401との間の隙間にLEDダウンライト300を配置することが困難な場合が多いという問題が生じる。
【0212】
これに対して、レーザダウンライト200では、発光ユニット210には、大きな発熱源は含まれていないため、部屋の冷房効率を低下させることはない。その結果、部屋の冷房コストの増大を避けることができる。
【0213】
また、発光ユニット210ごとに電源および冷却ユニットを設ける必要がないため、レーザダウンライト200を小型および薄型にすることができる。その結果、レーザダウンライト200を設置するためのスペースの制約が小さくなり、既存の住宅への設置が容易になる。
【0214】
また、レーザダウンライト200は、小型および薄型であるため、上述したように、発光ユニット210を天板400の表面に設置することができ、天板裏側のスペースもほとんど必要ないためにLEDダウンライト300よりも設置に係る制約を小さくすることができるとともに工事費用を大幅に削減できる。
【0215】
図17は、レーザダウンライト200およびLEDダウンライト300のスペックを比較するための図である。同図に示すように、レーザダウンライト200は、その一例では、LEDダウンライト300に比べて体積は94%減少し、質量は86%減少する。
【0216】
また、励起光源ユニット6aをユーザの手が容易に届く所(高さ)に設置できるため、半導体レーザ61が故障した場合でも、手軽に半導体レーザ61を交換できる。また、複数の発光ユニット210から延びる光ファイバー215を1つの励起光源ユニット6aに導くことにより、複数の半導体レーザ61を一括管理できる。そのため、複数の半導体レーザ61を交換する場合でも、その交換が容易にできる。
【0217】
なお、LEDダウンライト300において、高演色蛍光体を用いたタイプの場合、消費電力10Wで約500lmの光束が出射できるが、同じ明るさの光をレーザダウンライト200で実現するためには、3.3Wの光出力が必要である。この光出力は、LD効率が35%であれば、消費電力10Wに相当し、LEDダウンライト300の消費電力も10Wであるため、消費電力では、両者の間に顕著な差は見られない。それゆえ、レーザダウンライト200では、LEDダウンライト300と同じ消費電力で、上述の種々のメリットが得られることになる。
【0218】
以上のように、レーザダウンライト200は、レーザ光を出射する半導体レーザ61を少なくとも1つ備える励起光源ユニット6aと、第1発光部2a、第2発光部2bおよび反射鏡としての凹部212を備える少なくとも1つの発光ユニット210とを備える。そして、支持部材駆動部12が支持部材11を介して発光部2の位置を変化させることにより、第1発光部2aにおけるレーザ光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部2bに照射されるレーザ光の照射範囲を変化させる。これにより、実施の形態1と同様、第2発光部2bから出射される第2の蛍光の、照明光に対する割合が変化するので、照明光の色温度を変化させることが可能なレーザダウンライト200を実現できる。
【0219】
また、上記では、レーザダウンライト200に、例えば図3(a)〜(d)に示す発光部2(実施の形態1の発光部2)を用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、図10(a)〜(c)に示す発光部2(実施の形態2の発光部2)を用いることも可能である。
【0220】
この場合、例えば、レーザダウンライト200は、実施の形態2で述べたように、支持部材11を備えず、透光性基板1aを直接移動させることが可能な透光性基板駆動部12aを備える。透光性基板駆動部12aは、出射端部5aの出射面と平行に、かつ第1発光部2a及び第2発光部2bが並んでいる方向に、透光性基板1aを移動させる。換言すれば、透光性基板駆動部12aは、レーザ光照射領域30の大きさを変化させずに、第1発光部2a及び第2発光部2bに照射されるレーザ光の照射範囲を変化させる。これにより、照明光に含まれる第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができるので、その割合の変化により、照明光の色温度を変化させることができる。
【0221】
〔本発明の別の表現〕
本発明は、以下のようにも表現できる。
【0222】
すなわち、本発明に係る照明装置(レーザ光照明光源)は、蛍光体発光部が本体部と周辺部の少なくとも二重構造(三重以上でも可能)となっており、本体部と周辺部とで含まれる蛍光体の少なくとも一部が異なり、励起光源から出射される励起光の照射エリアを本体部だけと、本体部及び周辺部とに切り替える機構を有する構成である。これにより、蛍光体発光部から出射される照明光の色温度や色度、照明光に含まれるスペクトルを変更できる。
【0223】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0224】
照明光を対象物に照射したときの当該対象物を見やすさは、照明光の色温度によって個々人において異なるものである。本発明の照明装置は、照射範囲変化機構を備えることにより、色温度を変化させることができるので、例えば、その見やすさを測定可能な測定器(テスター)を作製して照明装置の販売店に設置することにより、個々人の嗜好にあった色温度を個々人に選択させることができる。すなわち、各ユーザは、ユーザ嗜好にあった色温度の照明光を出射する照明装置を購入できる。本発明の照明装置が車両用前照灯として実現されている場合、上記の測定器を自動車ディーラーに設置しておくことにより、個々人が自動車を購入する際に上記の選択を行うことができる。
【0225】
また、記憶部15に、本発明の照明装置(あるいは照明装置を備える物(車両など))の所有者あるいは当該照明装置をよく利用するユーザを特定する情報と、その所有者あるいはユーザが選択した色温度を示す情報とを対応付けて記憶しておいてもよい。この場合、例えば、入力部13が所有者あるいはユーザを特定する情報を取得し、可動制御部141が、その情報に対応する色温度を示す情報を記憶部15から読み出し、支持部材駆動部12を駆動し、支持部材11を移動させる。これにより、所有者あるいはユーザの嗜好にあった色温度を記憶しておくことを条件に、本発明の照明装置は、その嗜好にあった色温度に自動的に切り替えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明は、照明光の色温度を変化させることができ、特に車両用等のヘッドランプなどに好適である。
【符号の説明】
【0227】
2 発光部(第1発光部、第2発光部)
2a 第1発光部
2b 第2発光部
6 励起光源ユニット(励起光源)
10 ヘッドランプ(照明装置、前照灯)
11 支持部材(照射範囲変化機構)
12 支持部材駆動部(照射範囲変化機構)
12a 透光性基板駆動部(照射範囲変化機構)
13 入力部(入力手段)
16 凸レンズ(光学部材)
30 レーザ光照射領域(照射範囲)
61 半導体レーザ(励起光源)
【技術分野】
【0001】
本発明は、高輝度光源として機能する照明装置および当該照明装置を備えた前照灯に関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、励起光源として発光ダイオード(LED;Light Emitting Diode)や半導体レーザ(LD;Laser Diode)等の半導体発光素子を用い、これらの励起光源から生じた励起光を、蛍光体を含む発光部に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いる照明装置の研究が盛んになってきている。
【0003】
このような発光装置に関する技術の例として特許文献1および2に開示された灯具がある。これらの灯具では、高輝度光源を実現するために、励起光源として半導体レーザを用いている。半導体レーザから発振されるレーザ光は、コヒーレントな光であるため、指向性が強く、当該レーザ光を励起光として無駄なく集光し、利用することができる。このような半導体レーザを励起光源として用いた発光装置(LD発光装置と称する)を車両用ヘッドランプに好適に適用することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−150041号公報(2005年6月9日公開)
【特許文献2】特開2003−295319号公報(2003年10月15日公開)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、特許文献1及び2では、励起光源として半導体レーザを用いた灯具が開示されているが、これらの灯具から出射される照明光の色温度を変化させることについては一切開示されていない。特許文献1及び2においては、その色温度を変化させることの必要性については認識されていなかったためである。
【0006】
本発明は、上記問題点に鑑みてなされたものであり、その目的は、照明光の色温度を変化させることが可能な照明装置などを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明に係る照明装置は、上記の課題を解決するために、励起光を出射する励起光源と、上記励起光を受けて第1の蛍光を発する第1発光部と、上記励起光を受けて上記第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2発光部と、上記第1発光部における励起光の照射範囲を一定にした上で、上記第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる照射範囲変化機構と、を備えることを特徴としている。
【0008】
上記構成によれば、励起光源から出射された励起光を受けて、第1発光部が第1の蛍光を発し、第2発光部が、第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する。
【0009】
照射範囲変化機構は、これら第1発光部及び第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる。例えば、照射範囲変化機構は、第1発光部における励起光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる。例えば、照射範囲変化機構は、励起光が第1発光部の全体に照射されており、第2発光部には照射されていない状態から、その照射範囲を大きくすることにより、その照射範囲に第2発光部を含める。これにより、第1の蛍光に加え第2の蛍光を出射できるので、照明光に対する第2の蛍光の割合を増加させることができる。
【0010】
このように、照射範囲変化機構は、照明光に含まれる第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができる。それゆえ、その割合の変化により、照明光の色温度を変化させることができる。
【0011】
また、本発明に係る照明装置は、上記の課題を解決するために、励起光を出射する励起光源と、上記励起光を受けて第1の蛍光を発する第1発光部と、上記励起光を受けて上記第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2発光部と、上記第1発光部及び上記第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる照射範囲変化機構と、を備えることを特徴としている。
【0012】
上記構成によれば、励起光源から出射された励起光を受けて、第1発光部が第1の蛍光を発し、第2発光部が、第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する。
【0013】
照射範囲変化機構は、これら第1発光部及び第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる。例えば、照射範囲変化機構は、照射範囲の面積を一定にした状態で当該照射範囲の中心を第1発光部から第2発光部へ向けて移動させることにより、第1発光部における照射範囲を小さくし、第2発光部における照射領域を大きくする。第1発光部及び第2発光部はそれぞれ異なるピーク波長を有する蛍光を発するので、その照射範囲の変化により、照明光に対する第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができる。
【0014】
このように、照射範囲変化機構は、照明光に含まれる第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができる。それゆえ、その割合の変化により、照明光の色温度を変化させることができる。
【0015】
また、本発明に係る照明装置では、上記第1発光部と上記第2発光部とは、接触して配置されていることが好ましい。
【0016】
第1発光部と第2発光部とが非接触に配置されている場合、第1発光部及び第2発光部のそれぞれにレーザ光が照射されない限り、その非接触となっている領域(非接触領域)に励起光が照射される可能性がある。当該非接触領域に照射される励起光は、蛍光に変換されないので、励起光の利用効率を低下させる要因となり得る。
【0017】
上記構成によれば、第1発光部と第2発光部とが接触して配置されているので、非接触領域に励起光が照射され蛍光に変換されないという事態を防ぐことができる。すなわち、当該構成によれば、励起光を蛍光の変換に無駄なく利用できる。
【0018】
また、第1発光部と第2発光部とが非接触に配置されている場合に比べ、照射範囲変化機構が上記照射範囲を効率よく変化させることができる。
【0019】
また、本発明に係る照明装置では、上記第2発光部は、上記第1発光部の周囲に配置されていることが好ましい。
【0020】
上記構成によれば、特に、照射範囲変化機構が、第1発光部における励起光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる構成の場合に、効率よく第2発光部における照射範囲を変化させることができる。
【0021】
また、本発明に係る照明装置では、上記第1発光部と上記第2発光部とは、一体形成されていることが好ましい。
【0022】
上記構成によれば、それぞれの発光部を別々に製造して照明装置に備える場合に比べ、製造工程及び製造コストを削減できる。
【0023】
また、本発明に係る照明装置では、上記照射範囲変化機構は、上記励起光源と、上記第1発光部及び上記第2発光部との相対的な位置を変化させることにより、上記照射範囲を変化させることが好ましい。
【0024】
上記構成によれば、上記の相対的な位置を変化させることにより、励起光源と、第1発光部及び/又は第2発光部との距離を変化させた場合には、励起光源から出射された励起光の光路幅は、一般に出射点からの距離に応じて大きくなるため、その変化により、第2発光部における照射範囲を変化させることができる。
【0025】
また、上記の相対的な位置を変化させることにより、第1発光部及び第2発光部における上記照射範囲の位置を変更できるので、第1発光部及び第2発光部それぞれにおける照射範囲を変化させることができる。
【0026】
また、本発明に係る照明装置では、上記励起光源から出射された励起光を屈曲して、上記第1発光部及び上記第2発光部の少なくとも一方に出射する光学部材をさらに備え、上記照射範囲変化機構は、上記光学部材を移動させることにより、上記照射範囲を変化させることが好ましい。
【0027】
光学部材は、励起光源から出射された励起光を屈曲して第1発光部及び/又は第2発光部に出射するので、例えばその励起光を第1発光部及び/又は第2発光部に集光するなど、光学部材透過後の励起光の光路幅を、光学部材入射前の励起光の光路幅とは異なり、かつ、光学部材からの距離に応じて変化させるように出射できる。つまり、励起光源から出射された励起光は、光学部材を透過することにより、光学部材を基点としてその光路幅が新たに変化していくこととなる。
【0028】
このため、照射範囲変化機構が、特に、第1発光部における励起光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる構成の場合には、光学部材を移動させることにより、光学部材と第1発光部及び/又は第2発光部との距離を変更できる。この変更により、光学部材が存在しない場合の励起光源と第1発光部及び/又は第2発光部との距離を変更するのと同様の効果が得られる。
【0029】
つまり、この場合、上記照射範囲が光学部材と第1発光部及び/又は第2発光部との距離に応じて変化させることになるので、光学変化機構が光学部材を移動させ、その距離を変更することにより、上記照射範囲を変化させることができる。
【0030】
また、本発明に係る照明装置では、上記励起光源は、青色領域の発振波長を有する光を上記励起光として出射し、上記第1発光部は、黄色領域にピーク波長を有する蛍光を、上記第1の蛍光として発する第1蛍光体を含むことが好ましい。
【0031】
また、本発明に係る照明装置では、上記第1蛍光体は、イットリウム・アルミニウム・ガーネットであることが好ましい。
【0032】
励起光として青色領域の発振波長を有する光を用い、かつ、黄色領域にピーク波長を有する蛍光を発する第1蛍光体(特にYAG(イットリウム・アルミニウム・ガーネット))を用いた場合には、第1発光部から出射される照明光の色温度を高くできる。それゆえ、色温度の高い照明光の出射を実現できる。
【0033】
また、本発明に係る照明装置では、上記励起光源は、青色領域の発振波長を有する光を上記励起光として出射し、上記第1発光部は、緑色領域にピーク波長を有する蛍光を、上記第1の蛍光として発する第1蛍光体を含むことが好ましい。
【0034】
上記構成によれば、励起光として青色領域の発振波長を有する光を用い、かつ、緑色領域にピーク波長を有する蛍光を発する第1蛍光体を用いた場合には、第1発光部から出射される照明光の色温度を高くできる。それゆえ、色温度の高い照明光の出射を実現できる。
【0035】
また、本発明に係る照明装置では、上記第1蛍光体は、β−SiAlON:Eu蛍光体であることが好ましい。
【0036】
上記構成によれば、発光効率の高いβ−SiAlON:Eu蛍光体を第1蛍光体として用いているので、第1発光部の発光効率を高めることができる。それゆえ、照明光への変換効率が高い照明装置を実現できる。
【0037】
また、本発明に係る照明装置では、上記第2発光部は、赤色領域にピーク波長を有する蛍光を、上記第2の蛍光として発する第2蛍光体を含むことが好ましい。
【0038】
また、本発明に係る照明装置では、上記第2蛍光体は、CASN:Eu蛍光体又はSCASN:Eu蛍光体であることが好ましい。
【0039】
第2蛍光体を、すなわち赤色で発光する赤色発光蛍光体(特に、CASN:Eu蛍光体又はSCASN:Eu蛍光体)を用いた場合には、第2の蛍光として、第1蛍光体よりも低い色温度の蛍光を出射できる。このため、照射範囲変化機構が照射範囲を変化させることにより、例えば照明光が第1の蛍光のみからなる場合に比べ、その照明光の色温度を低くできる。
【0040】
また、本発明に係る照明装置では、ユーザ操作を受け付ける入力手段を備え、上記照射範囲変化機構は、上記入力手段が受け付けたユーザ操作に従って動作することが好ましい。
【0041】
照射範囲変化機構が入力手段が受け付けたユーザ操作に従って動作するので、ユーザの嗜好にあわせた色温度の変化を実現できる。
【0042】
また、本発明に係る前照灯は、上記に記載の照明装置を備えることが好ましい。
【0043】
上記構成によれば、前照灯は、上記照明装置を備えているので、当該照明装置と同様、照射範囲変化機構が、照明光に含まれる第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができる。それゆえ、その割合の変化により、照明光の色温度を変化させることができる。
【発明の効果】
【0044】
本発明に係る照明装置は、以上のように、励起光を出射する励起光源と、上記励起光を受けて第1の蛍光を発する第1発光部と、上記励起光を受けて上記第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2発光部と、上記第1発光部における励起光の照射範囲を一定にした上で、上記第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる照射範囲変化機構と、を備える構成である。
【0045】
また、本発明に係る照明装置は、以上のように、励起光を出射する励起光源と、上記励起光を受けて第1の蛍光を発する第1発光部と、上記励起光を受けて上記第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2発光部と、上記第1発光部及び上記第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる照射範囲変化機構と、を備える構成である。
【0046】
それゆえ、本発明の照明装置は、照明光の色温度を変化させることができるという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの概要構成を示す片側断面図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの概略構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの発光部における各発光部の配置例を示す図であり、(a)は発光部全体が直方体形状である場合の配置例、(b)は第1発光部及び第2発光部が非接触である場合の配置例、(c)は発光部全体が円柱形状である場合の配置例、(d)は発光部全体が円柱形状であり、かつ発光部が3重構造である場合の配置例を示す。
【図4】本発明の一実施形態に係る発光部の変形例を示す図であり、(a)は透光性基板1に接着された発光部の一例を示す断面図であり、(b)は(a)に示す発光部の一例を示す斜視図である。
【図5】本発明の一実施形態に係るヘッドランプにおける発光部と導光部材との位置関係と、そのときのレーザ光照射領域の大きさを示す図であり、(a)はレーザ光が第1発光部の受光面全体に照射されたときのレーザ光照射領域の大きさが最も小さい場合を示し、(b)は(a)の場合よりも、発光部と導光部材との位置が離れ、かつレーザ光照射領域が大きい場合を示し、(c)は(b)の場合よりも、発光部と導光部材との位置が離れ、かつレーザ光照射領域が大きい場合を示す。
【図6】車両用前照灯に要求される白色の色度範囲を示すグラフである。
【図7】半導体レーザの基本構造を示す図であり、(a)は半導体レーザの回路図を模式的に示したものであり、(b)は半導体レーザの基本構造を示す斜視図である。
【図8】本発明の一実施形態に係るヘッドランプの変形例を示す図である。
【図9】本発明の別の実施形態に係るヘッドランプの概要構成を示す片側断面図である。
【図10】本発明の別の実施形態に係るヘッドランプの発光部における各発光部の配置例を示す図であり、(a)は第1発光部及び第2発光部が同じ形状で、かつ接触して配置されている場合の配置例、(b)は(a)の変形例であり、第1発光部及び第2発光部の形状が異なる場合の配置例、(c)は(a)の変形例であり、第1発光部及び第2発光部が非接触である場合の配置例を示す。
【図11】本発明の別の実施形態に係るヘッドランプの発光部におけるレーザ光照射領域の大きさの変化を示す図であり、(a)は第1発光部にだけレーザ光が照射されている場合を示し、(b)は第1発光部及び第2発光部の両方にレーザ光が照射されている場合を示す。
【図12】本発明の一実施形態に係るレーザダウンライトが備える発光ユニットおよび従来のLEDダウンライトの外観を示す概略図である。
【図13】上記レーザダウンライトが設置された天井の断面図である。
【図14】上記レーザダウンライトの断面図である。
【図15】上記レーザダウンライトが備える光ファイバーの出射端部と発光部との位置関係の一例を示す図である。
【図16】上記LEDダウンライトが設置された天井の断面図である。
【図17】上記レーザダウンライトおよび上記LEDダウンライトのスペックを比較するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0048】
〔実施の形態1〕
本発明の実施の一形態について図1〜図8に基づいて説明すれば、以下のとおりである。ここでは、本発明の照明装置の一例として、自動車用のヘッドランプ(前照灯)10を例に挙げて説明する。ただし、本発明の照明装置は、自動車以外の車両・移動物体(例えば、人間・船舶・航空機・潜水艇・ロケットなど)のヘッドランプとして実現されてもよいし、その他の照明装置として実現されてもよい。その他の照明装置として、例えば、サーチライト、プロジェクター、家庭用照明器具を挙げることができる。
【0049】
ヘッドランプ10は、走行用前照灯(ハイビーム)の配光特性基準を満たしていてもよいし、すれ違い用前照灯(ロービーム)の配光特性基準を満たしていてもよい。
【0050】
<ヘッドランプ10の構成>
まず、図1に基づき、本発明の一実施形態であるヘッドランプ10について説明する。図1は、ヘッドランプ10の概要構成を示す片側断面図である。図1に示すように、ヘッドランプ10は、透光性基板1、発光部2、反射鏡4、固定部材5、励起光源ユニット(励起光源)6、ネジ7、レンズ8、導光部材9、支持部材11および支持部材駆動部12を備える。励起光源ユニット6、導光部材9および発光部2によって発光装置の基本構造が形成されている。また、支持部材11および支持部材駆動部12によって照射範囲変化機構の基本構造が形成されている。
【0051】
なお、本実施の形態では、発光部2が複数の発光部(例えば第1発光部2a及び第2発光部2b)を備えているが、特に個々の発光部ごとに説明する必要がない場合には「発光部2」と称して一括して説明する場合もある。
【0052】
(透光性基板1)
透光性基板1は、平板状の部材であり、少なくとも440nm〜480nmの発振波長のレーザ光(励起光)に対して透光性を有している。透光性基板1は、平板上でなく、湾曲した部分を有していてもよいが、透光性基板1と発光部2とを接着する場合、少なくとも発光部2が接着される部分は、接着の安定性の観点から平面(板状)であることが好ましい。
【0053】
また、透光性基板1は、縦10mm×横10mm×厚み0.5mmのAl2O3(サファイア)基板である。なお、図1に示す透光性基板1の外径は、発光部2の外径よりも大きいが、発光部2の外径と同程度であっても良い。
【0054】
透光性基板1のレーザ光が入射する側の表面に対向する表面には、発光部2が配置され、発光部2と熱的に(すなわち、熱エネルギーの授受が可能なように)接続されている。なお、本実施の形態では、透光性基板1と発光部2とは、接着剤を用いて接合(接着)されているものとして説明するが、透光性基板1と発光部2との接合方法は、接着に限られず、例えば、融着などであっても良い。接着剤としては、いわゆる有機系の接着剤や、ガラスペースト接着剤が好適であるが、これに限られない。
【0055】
透光性基板1は、以上のような構成、形状、および、発光部2との接続形態を有することにより、発光部2を基板表面に固定(保持)しつつ、発光部2から発生する熱を外部に放熱するので、発光部2の冷却効率を向上させることができる。
【0056】
また、透光性基板1の材質は、上述したサファイア(Al2O3)の他、マグネシア(MgO)、窒化ガリウム(GaN)、スピネル(MgAl2O4)が好ましい。これらの材料は、熱伝導率(例えば20W/mK以上)及び透光性が優れているためである。この点を考慮しないのであれば、これらの材質に限らず、例えばガラス(石英)などであっても良い。
【0057】
また、図1に示す透光性基板1の厚さは、発光部2での発熱を効果的に放熱することを考慮すれば、30μm以上、1.0mm以下が好ましく、より好ましくは、0.2mm以上、1.0mm以下であることがより好ましい。なお、透光性基板1の厚さが1.0mmを超えると、発光部2に照射されたレーザ光が透光性基板1において吸収される割合が大きくなる一方で、放熱効果はさほど向上せず、また部材のコストも上昇してしまう。
【0058】
(発光部2)
発光部2は、半導体レーザ61から出射されたレーザ光を受けて蛍光を発するものであり、第1発光部2a及び第2発光部2bを備えている。本実施の形態では、第1発光部2aの外周に接触するように第2発光部2bが設けられている。換言すれば、第1発光部2a及び第2発光部2bは二重構造となっている。また、第1発光部2aは、その中心を導光部材9から出射されるレーザ光の光軸が通るように、透光性基板1上に配置されている。なお、第1発光部2a及び第2発光部2bの配置例については後述する。
【0059】
第1発光部2aは、導光部材9を介して、半導体レーザ61から出射されたレーザ光を受けて第1の蛍光を発する第1蛍光体を含んでいる。本実施の形態では、第1蛍光体として、青色領域のレーザ光を受けて黄色領域にピーク波長を有する蛍光を発する黄色蛍光発光体としてIntematix社製のYAG:Ce蛍光体(NYAG4454)を用いているが、蛍光体の種類はこれに限定されない。YAG:Ce蛍光体は、Ceで賦活したイットリウム(Y)−アルミニウム(Al)−ガーネット(Garnet)蛍光体である。このIntematix社製の蛍光体は、発光効率が90%、発光ピーク波長(以下、単に「ピーク波長」という)は558nm(黄色)、色度点はx=0.444、y=0.536であり、430nmから490nmの励起光で良好に励起される。なお、YAG:Ce蛍光体は、一般に550nm付近(550nmよりも若干長波長側)に発光ピークが存在するブロードな発光スペクトルをもつ。
【0060】
また、第2発光部2bは、レーザ光を受けて第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2蛍光体を含んでいる。本実施の形態では、第2蛍光体として、青色領域のレーザ光を受けて赤色領域にピーク波長を有する蛍光を発する赤色発光蛍光体としてEu2+がドープされたCaAlSiN3:Eu蛍光体(CASN:Eu蛍光体)を用いている。第2蛍光体に用いられる蛍光体の種類はこれに限定されず、例えばEu2+がドープされたSrCaAlSiN3:Eu蛍光体(SCASN:Eu蛍光体)が第2蛍光体として用いてもよい。
【0061】
第1発光部2aはYAG:Ce蛍光体を、第2発光部2bはCASN:Eu蛍光体を、封止材としての低融点の無機ガラス(屈折率n=1.760)の内部にそれぞれ分散させて製造される。第1発光部2aにおけるYAG:Ce蛍光体と低融点の無機ガラス(低融点ガラス)との配合比は、例えば30:100程度である。これに限らず、第1発光部2aでレーザ光を拡散させてそのレーザ光の色成分(例えば青色成分)を利用することを考慮すれば、上記の配合比は10:100程度が好ましい。また、第2発光部2bにおけるCASN:Eu蛍光体と低融点ガラスとの配合比は、例えば20:100程度であるが、これに限らずともよい。また、発光部2は、蛍光体を押し固めたものであってもよい。
【0062】
封止材は、上記の無機ガラスに限定されず、いわゆる有機無機ハイブリッドガラスや、シリコン樹脂等の樹脂材料であってもよい。ただし、耐熱性を考慮すれば、封止材はガラスからなることが好ましい。
【0063】
また、第1発光部2aの第1蛍光体は、黄色発光蛍光体の代わりに、青色領域のレーザ光を受けて緑色領域にピーク波長を有する蛍光を発する緑色蛍光発光体としてEu2+がドープされたβ−SiAlON:Eu蛍光体であってもよい。
【0064】
また、上記では、第1発光部2a及び第2発光部2bのそれぞれが1種類の蛍光体を含んで構成されているが、これに限らず、2種類以上の蛍光体を含んでもよい。例えば、第1発光部2aがYAG:Ce蛍光体及びβ−SiAlON:Eu蛍光体を含み、第2発光部2bがCASN:Eu蛍光体及びβ−SiAlON:Eu蛍光体を含んでもよい。また、第1発光部2a及び第2発光部2bに含まれる蛍光体の少なくとも一部が異なる構成であってもよく、例えば第1発光部2aにはYAG:Ce蛍光体及びCASN:Eu蛍光体が含まれ、第2発光部2bにはCASN:Eu蛍光体が含まれる構成であってもよい。特に、第1発光部2aが補色の関係を満たす2種類の蛍光体を含む場合には、第1発光部2aは、レーザ光を拡散させることなく、第1発光部2aへのレーザ光の照射だけで白色光を生成できる。
【0065】
なお、透光性基板1と発光部2との間の界面の反射率Rをできる限り低下させ、レーザ光の発光部2での利用効率を高めることを考慮すれば、透光性基板1と発光部2との屈折率差Δnは、0.35以下であることが好ましい。この場合、反射率Rを1%以下にすることができる。また、屈折率差Δnを0.35以下とする場合、透光性基板1の屈折率を1.65以上、発光部2の屈折率を2.0以下とすることが好ましい。
【0066】
また、一般に、照明光として用いられる白色光または擬似白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または、補色の関係を満たす2つの色の混色などで実現できる。この等色または補色の原理に基づき、例えば、ヘッドランプ10では、後述する半導体レーザ61から出射される青色のレーザ光とYAG:Ce蛍光体(黄色発光蛍光体)との組み合わせ、あるいは当該青色のレーザ光とβ−SiAlON:Eu蛍光体(緑色発光蛍光体)との組み合わせ(補色の関係を満たす2つの色の混色)で擬似白色を実現している。
【0067】
ここで、黄色発光蛍光体とは、560nm以上590nm以下の波長範囲にピーク波長を有する蛍光を発生する蛍光体である。緑色発光蛍光体とは、510nm以上560nm以下の波長範囲にピーク波長を有する蛍光を発生する蛍光体である。赤色発光蛍光体とは、600nm以上680nm以下の波長範囲にピーク波長を有する蛍光を発生する蛍光体である。
【0068】
黄色発光蛍光体の具体例としては、YAG:Ce蛍光体や、Eu2+がドープされたCaα−SiAlON:Eu蛍光体などが挙げられる。Caα−SiAlON:Eu蛍光体は、近紫外から青色の励起光によりピーク波長が約580nmの強い発光を示す。
【0069】
緑色発光蛍光体の具体例としては、各種の窒化物系または酸窒化物系の蛍光体が挙げられる。特に、酸窒化物系の蛍光体は耐熱性に優れ、高い発光効率で安定した材料であるので、耐熱性に優れ、高い発光効率で安定した第1発光部2aを実現できる。
【0070】
例えば、緑色に発光する酸窒化物系蛍光体として、β−SiAlON:Eu蛍光体、Ce3+がドープされたCaα−SiAlON:Ce蛍光体などが挙げられる。β−SiAlON:Eu蛍光体は、近紫外から青色(350nm以上460nm以下)の励起光によりピーク波長が約540nmの強い発光を示す。この蛍光体の発光スペクトル半値幅は約55nmである。また、Caα−SiAlON:Ce蛍光体は、近紫外から青色の励起光によりピーク波長が約510nmの強い発光を示す。
【0071】
上記のα−SiAlONおよびβ−SiAlON(サイアロン)は、いわゆるサイアロン蛍光体(酸窒化物系蛍光体)と通称されるものである。サイアロンとは、窒化ケイ素のシリコン原子の一部がアルミニウム原子に、窒素原子の一部が酸素原子に置換された物質である。サイアロン蛍光体は、窒化ケイ素(Si3N4)にアルミナ(Al2O3)、シリカ(SiO2)および希土類元素などを固溶させて作ることができる。このサイアロン蛍光体にカルシウム(Ca)とユーロピウム(Eu)とを固溶させると、YAG:Ce蛍光体よりも長波長の黄色から橙色の範囲で発光する特性の良い蛍光体が得られる。
【0072】
赤色発光蛍光体の具体例としては、各種の窒化物系の蛍光体が挙げられる。例えば、窒化物系の蛍光体としては、CASN:Eu蛍光体、SCASN:Eu蛍光体などが挙げられる。CASN:Eu蛍光体は、励起波長が350nm〜450nmのとき、赤色の蛍光を発し、そのピーク波長は649nmであり、その発光効率は73%である。また、SCASN:Eu蛍光体は、励起波長が350nm〜450nmのとき、赤色の蛍光を発し、そのピーク波長は630nmであり、その発光効率は70%である。これらの窒化物系の蛍光体は、上述した黄色発光蛍光体や緑色発光蛍光体などの酸窒化物蛍光体と組み合わせることにより、演色性を高めることができる。また、赤色に発光する窒化物系蛍光体の例としては、(Mg、Ca、Sr、Ba)AlSiN3:Eu等のEu賦活窒化物蛍光体や(Mg、Ca、Sr、Ba)AlSiN3:Ce等のCe賦活窒化物蛍光体などが挙げられる。
【0073】
換言すれば、発光部2は、黄色発光蛍光体あるいは緑色発光蛍光体を含む第1発光部2aとともに、630nm以上、650nm以下の波長範囲にピーク波長を有する蛍光を発する赤色発光蛍光体を含む第2発光部2bを備えている。これにより、第1発光部2a及び第2発光部2bの両方に青色のレーザ光が照射された場合に、発光部2全体としての演色性を高めることができる。
【0074】
また、上記第1蛍光体及び第2蛍光体の別の好適な例としては、III−V族化合物半導体のナノメータサイズの粒子を用いた半導体ナノ粒子蛍光体を用いることもできる。同一の化合物半導体(例えばインジュウムリン:InP)を用いても、その粒子径を変更させることにより、量子サイズ効果によって発光色を変化させることができることが半導体ナノ粒子蛍光体の特徴の一つである。例えばInPでは、粒子サイズが3〜4nm程度のときに赤色に発光する。ここで、粒子サイズは透過型電子顕微鏡(TEM)にて評価した。
【0075】
また、この蛍光体は半導体ベースであるので蛍光寿命が短く、励起光のパワーを素早く蛍光として放射できるのでハイパワーの励起光に対して耐性が強いという特徴もある。これは、上記半導体ナノ粒子蛍光体の発光寿命が10ナノ秒程度と、希土類を発光中心とする通常の蛍光体材料に比べて5桁も小さいためである。発光寿命が短いため、励起光の吸収と蛍光の発光を素早く繰り返すことができる。
【0076】
その結果、強い励起光に対して高効率を保つことができ、蛍光体からの発熱が低減される。よって、光変換部材が熱により劣化(変色や変形)するのをより抑制することができる。これにより、光の出力が高い発光素子を光源として用いる場合に、発光装置の寿命が短くなるのをより抑制することができる。
【0077】
(反射鏡4)
反射鏡4は、発光部2から出射した光を反射することにより、所定の立体角内を進む光線束を形成するものである。すなわち、反射鏡4は、発光部2からの光を反射することにより、ヘッドランプ10の前方へ進む光線束を形成する。この反射鏡4は、例えば、金属薄膜がその表面に形成された曲面形状(カップ形状)の部材である。
【0078】
また、反射鏡4は、半球面ミラーに限定されず、楕円面ミラーやパラボラミラーまたはそれらの部分曲面を有するミラーあってもよい。すなわち、反射鏡4は、回転軸を中心として図形(楕円、円、放物線)を回転させることによって形成される曲面の少なくとも一部をその反射面に含んでいるものであればよい。
【0079】
また、発光部2から出射される蛍光の照明光としての利用効率を高めることを考慮すれば、反射鏡4の焦点位置に発光部2が設けられていることが好ましい。本実施の形態では、製造時には第1発光部2aから出射される第1の蛍光を照明光として利用するものとしてレーザ光照射の設定が行われている。このため、反射鏡4の焦点位置に第1発光部2aが配置されることが好ましい。
【0080】
(固定部材5)
固定部材5は、導光部材9が挿通される挿通口が形成された板状の部材であり、導光部材9の出射端部の中心と発光部2の受光面(透光性基板1と接触している面)の中心とがほぼ一致するように、ネジ7によって反射鏡4に固定している。図1に示す発光部2では、導光部材9の出射端部の中心と第1発光部2aの受光面の中心とがほぼ一致するように固定されている。また、固定部材5には、その挿通口を囲むように励起光源ユニット6が接合されている。固定部材5の材質は特に問わないが、鉄、銅などの金属を例示することができる。
【0081】
また、固定部材5には、支持部材11を収納できる収納部51が形成されている。この収納部51の存在により、支持部材駆動部12の駆動に従った支持部材11のレーザ光の光軸方向への移動が可能となる。そして、この移動により、発光部2におけるレーザ光の照射範囲(レーザ光照射領域30(図5参照)の大きさ)を変化させることができる。発光部2の移動とレーザ光照射領域30との関係の詳細については、図5を用いて後述する。
【0082】
(励起光源ユニット6)
励起光源ユニット6は、例えば3つの半導体レーザ(励起光源)61を収納した筐体である。半導体レーザ61の固定方法および配線方法については、従来の固定方法および配線方法を利用すれば良いので、ここでは説明を省略する。
【0083】
半導体レーザ61は、励起光を出射する励起光源として機能する発光素子である。本実施の形態では、励起光源として半導体レーザが利用される場合について説明するが、例えばLEDであってもよい。半導体レーザである場合には、高出力かつコヒーレント性の高いレーザ光を発光部2に照射できるので発光部2を小さくでき、高輝度なヘッドランプ10を実現できる。図1には、半導体レーザ61が3個図示されているが、半導体レーザ61を複数設ける必要は必ずしもなく、1つのみ設けてもよい。しかし、高出力の励起光を得るためには、複数の半導体レーザ61を用いる方が容易である。
【0084】
半導体レーザ61は、例えば、1チップに1つの発光点を有するものであり、450nm(青色)のレーザ光を発振し、出力1.6W、動作電圧4.7V、電流1.2Aのものであり、直径9mmの金属パッケージ(ステム)に封入されているものである。したがって、励起光源ユニット6全体としての出力は、4.8W程度である。
【0085】
ただし、金属パッケージは直径9mmのものに限定されず、例えば、直径3.8mmや直径5.6mm、あるいはそれ以外であってもよく、熱抵抗がより小さいパッケージを選択することが好ましい。また、半導体レーザ61は、1チップに複数の発光点を有するものであってもよい。また、半導体レーザ61の発振波長は、450nmに限られず、440nm以上480nm以下の青色領域の波長であれば良い。
【0086】
このように、半導体レーザ61が、青色領域の発振波長を有するレーザ光を出射する。また、第1発光部2aは、少なくとも、第1蛍光体として黄色領域にピーク波長を有する蛍光を発するYAG:Ce蛍光体、あるいは緑色領域にピーク波長を有する蛍光を発するβ−SiAlON:Eu蛍光体を含む。これらの構成により、第1発光部2aから出射される照明光の色温度を高くできる。また、β−SiAlON:Eu蛍光体は発光効率が高いので、当該蛍光体を第1蛍光体として用いた場合には、第1発光部2aの発光効率を高めることができる。
【0087】
(レンズ8)
次に、レンズ8は、反射鏡4の開口部に設けられており、ヘッドランプ10を密封している。発光部2から出射された蛍光または散乱光、もしくは、反射鏡4によって反射された蛍光または散乱光は、レンズ8を通ってヘッドランプ10の前方へ出射される。
【0088】
レンズ8は、凸レンズであっても、凹レンズであってもよい。また、レンズ8は、必ずしもレンズ機能を有する必要はなく、発光部2から出射された蛍光または散乱光、もしくは、反射鏡4で反射した蛍光または散乱光を透過する透光性を少なくとも有していれば良い。
【0089】
(導光部材9)
導光部材9は、半導体レーザ61が発振したレーザ光を発光部2へと導くものであり、半導体レーザ61から出射されたレーザ光を入射する入射端部(半導体レーザ61側)と、入射端部から入射したレーザ光を出射する出射端部(発光部2側)を有している。
【0090】
また、導光部材9は、入射端部に入射したレーザ光を反射する光反射側面で囲まれた囲繞構造を有しており、導光部材9の出射端部の断面積は、入射端部の断面積よりも小さくなっている。
【0091】
具体的には、導光部材9は、全体が四角錐台形状の筒形をなしており、出射端部の断面(開口)は、1mm×3mmの矩形であり、入射端部の断面(開口)は、15mm×15mmの矩形である。導光部材9の形状は四角錐台形状に限られず、四角錐台形状以外の多角錐台形状、円錐台形状、楕円錐台形状など様々な形状を採用することができる。また、入射端部から出射端部までの長さは、25mmである。
【0092】
この囲繞構造により、導光部材9は、入射端部に入射したレーザ光を、入射端部の断面積よりも小さい断面積を有する出射端部に集光した上で発光部2に出射できる。このため、複数の半導体レーザ61を用いて高出力化を図ったとしても、発光部2を小さく設計することができる。すなわち、高出力・高輝度なヘッドランプ10を実現できる。
【0093】
また、導光部材9は、BK(ボロシリケート・クラウン)7、石英ガラス、アクリル樹脂その他の透明素材で構成される。
【0094】
なお、導光部材9の代わりに光ファイバーや光学レンズ等を用いて、レーザ光を発光部2に集光してもよい。
【0095】
(支持部材11)
支持部材11は、発光部2が接着された透光性基板1を支持するものであり、支持部材駆動部12の駆動に連動して透光性基板1をレーザ光の光軸方向に移動可能なものである。支持部材11が移動することにより、発光部2の位置を変化させることができる。その結果、導光部材9から出射されたレーザ光の光路幅が導光部材9からの距離に比例して大きくなる(あるいは小さくなる)場合に、レーザ光照射領域30(図5参照)の大きさを変化させることができる。
【0096】
また、支持部材11は、支持部材駆動部12のギアと接触するように設けられており、その接触する表面にはギアと噛み合うように溝が設けられている。これにより、支持部材11は、支持部材駆動部12の駆動に従った移動が可能となる。なお、ギアに連動して動作するのであれば、支持部材11の表面がどのような形状になっていてもよく、また特に加工されていなくてもよい。
【0097】
支持部材11の材質は特に問わないが、支持部材11がその移動により反射鏡4の内部に挿入されることを考慮すれば、透光性基板1と同様、透光性を有する材質であることが好ましい。また、支持部材11の形状は、平板状であっても棒状であってもよい。さらに、支持部材11が透光性基板1と一体に形成されていてもよい。
【0098】
なお、本実施の形態では、レーザ光の光軸方向に支持部材11が移動するものとして説明するが、レーザ光照射領域30の大きさを自在に変化させることが可能であれば、必ずしも光軸方向に移動する必要はない。
【0099】
(支持部材駆動部12)
支持部材駆動部12は、支持部材11をレーザ光の光軸方向へ移動させるためのものであり、例えばステッピングモータ及びギアからなり、支持部材11毎に設けられている。ギアは、その表面が支持部材11に接触するように、また、その回転軸が支持部材11の移動方向と垂直な方向となるように設けられている。ギアは、支持部材11に対して1つであっても、複数の組み合わせからなっていてもよい。また、ステッピングモータは、その回転をギアに伝播できるように設けられていればよい。
【0100】
支持部材駆動部12では、可動制御部141(図2参照)から可動指示を受けると、ステッピングモータが駆動し、ギアが回転する。ギアと支持部材11とが接触して設けられているため、ギアの回転力が支持部材11に伝播され、支持部材11をレーザ光の光軸方向に移動させる。
【0101】
本実施の形態では、製造時には、第1発光部2aの受光面全体にレーザ光が照射されるように設計されている。このため、製造時の状態のまま使用すれば、ヘッドランプ10は、第1発光部2aから出射された第1の蛍光を照明光として出射する。そして、支持部材駆動部12が支持部材11を介して発光部2を移動させることにより、第2発光部2bにもレーザ光が照射され、照明光の一部に第2の蛍光を含めることができる。
【0102】
つまり、支持部材駆動部12は、導光部材9と、第1発光部2a及び第2発光部2bとの相対的な位置(すなわち半導体レーザ61とこれら発光部の相対的な位置)を変化させることにより、第1発光部2aにおけるレーザ光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部2bに照射されるレーザ光の照射範囲を変化させている。この相対的な位置を変化させることにより、半導体レーザ61から出射されたレーザ光の光路幅は、一般に出射点からの距離に応じて大きくなる。このため、その変化により、第2発光部2bにおけるレーザの照射範囲(レーザ光照射領域30に含まれる第2発光部2bの割合)を変化させることができる。
【0103】
<ヘッドランプ10の更なる構成>
次に、ヘッドランプ10の更なる構成について、図2を用いて説明する。図2は、ヘッドランプ10の概略構成の一例を示すブロック図である。ヘッドランプ10は、図1に示す構成部材の他、入力部13(入力手段)、制御部14および記憶部15を備えている。支持部材駆動部12及び半導体レーザ61については上述したので、その説明を省略する。なお、本実施の形態では、これらの部材がヘッドランプ10の構成部材であるものとして説明するが、これに限らず、例えばヘッドランプ10が取り付けられる車両等が備える入力部、制御部及び記憶部により実現されてもよい。
【0104】
(入力部13)
入力部13は、例えば支持部材駆動部12の駆動指示、半導体レーザ61の出力変更指示などのユーザ操作を受け付けるものであり、タッチパッドなどにより実現される。
【0105】
例えば、入力部13がユーザ操作として駆動指示を受け付けた場合、可動制御部141は、その受け付けたユーザ操作に従って支持部材駆動部12を動作させる。この場合、ユーザは、照明光の光度を自身の目で確認しながら、入力部13を介して上記の駆動指示を与えることができるので、ユーザ操作の都度、支持部材11を駆動させることができる。それゆえ、ユーザ嗜好にあわせて照明光の色温度を変化させることができる。
【0106】
(制御部14)
制御部14は、主として、可動制御部141及び出力制御部142を備える。制御部14は、例えば制御プログラムを実行することにより、ヘッドランプ10を構成する部材を制御するものである。制御部14は、記憶部15に格納されているプログラムを、例えばRAM(Random Access Memory)等で構成される一次記憶部(不図示)に読み出して実行することにより、支持部材駆動部12の駆動制御、半導体レーザ61の出力制御等の各種処理を行う。
【0107】
可動制御部141は、入力部13から受信した駆動指示に従って、支持部材駆動部12の駆動制御を行うものであり、例えば、駆動指示を受け付けるたびに支持部材駆動部12のステッピングモータに所定の駆動電圧を印加する。
【0108】
出力制御部142は、半導体レーザ61の出力制御を行うものであり、例えば製造時に設定された駆動電圧を半導体レーザ61に印加する。
【0109】
(記憶部15)
記憶部15は、制御部14が実行する(1)各部の制御プログラム、(2)OSプログラム、(3)アプリケーションプログラム、および、(4)これらプログラムを実行するときに読み出す各種データを記録するものである。制御部14は、例えばROM(Read Only Memory)フラッシュメモリなどの不揮発性の記憶装置によって構成されるものである。なお、上述した一次記憶部は、RAMなどの揮発性の記憶装置によって構成されているが、本実施形態では、記憶部15が一次記憶部の機能も備えているものとして説明する場合もある。記憶部15は、例えば支持部材駆動部12または半導体レーザ61への駆動電圧値等を格納している。
【0110】
<発光部2における各発光部の配置例>
次に、第1発光部2a及び第2発光部2bの配置例について図3を用いて説明する。図3は、ヘッドランプ10における第1発光部2a及び第2発光部2bの配置例を示すものである。(a)は発光部2全体が直方体形状である場合の配置例、(b)は第1発光部2a及び第2発光部2bが非接触である場合の配置例、(c)は発光部2全体が円柱形状である場合の配置例、(d)は発光部2全体が円柱形状であり、かつ発光部2が3重構造である場合の配置例を示す。
【0111】
図3では、第2発光部2bが第1発光部2aの周囲に配置された発光部2の構成を示している。本実施の形態では、支持部材駆動部12が導光部材9と発光部2との距離を変化させることにより、第1発光部2aとともに第2発光部2bにレーザ光を照射して色温度を変化させる。このため、図3の配置の場合、例えば図10(a)に示すような配置の場合よりも、効率よくレーザ光照射領域30(当該領域に含まれる第2発光部2bの割合)を変化させることができる。
【0112】
図3(a)では、図1に示す発光部2における配置例を示しており、第1発光部2aの外周に接触するように第2発光部2bが設けられている。この場合の第1発光部2aは、縦1.5mm×横4mm×厚み0.5mmの直方体であり、第2発光部2bは、第1発光部2aの大きさ分だけ空洞部分を有する、縦4.5mm×横7mm×厚み0.5mmの直方体である。なお、第1発光部2a及び第2発光部2bの大きさはこれに限られたものではない。例えば、第1発光部2aの受光面の大きさは、発光部2が導光部材9との距離が最も近くなるときにレーザ光照射領域30(図5参照)を全て含むような大きさであればよい。また、発光部2全体の受光面の大きさは、発光部2が導光部材9から最も離れたときにレーザ光照射領域30を全て含むような大きさであればよい。さらに、第1発光部2a及び第2発光部2bの厚みも上記に限られるものではなく、例えば蛍光への変換効率、あるいは放熱効率が高くなるような厚みであることが好ましい。
【0113】
また、発光部2の受光面が長方形である場合を例示しているが、これに限らず、正方形であってもよい。但し、半導体レーザ61から出射されたレーザ光が形成する照射領域は楕円形状であること、また、車両用前照灯の配光特性基準を満たすことを考慮すれば、発光部2の受光面が矩形である場合には、水平方向に長軸を有する長方形であることが好ましい。
【0114】
図3(a)では、例えば、上記形状の2つの低融点ガラスを製造し、一方の内部にYAG:Ce蛍光体、他方の内部にCASN:Eu蛍光体をそれぞれ分散させて第1発光部2a及び第2発光部2bを製造する。その後、第1発光部2aの透光性基板1に対する位置決めをした後、第1発光部2aを透光性基板1に接着する。第2発光部2bについても同様に透光性基板1に接着する。
【0115】
ここで、図3(b)のように、第1発光部2a及び第2発光部2bが非接触に配置されている場合を示す。本実施の形態では、複数の半導体レーザ61から出射されたレーザ光は、導光部材9で集光され、発光部2に照射されるように設計されている。このため、支持部材駆動部12が導光部材9と発光部2との距離を変化させ、第1発光部2aとともに第2発光部2bにもレーザ光を照射させた場合に、その非接触となっている領域(非接触領域A)にレーザ光が照射されてしまうので、その分、レーザ光の利用効率が低下してしまう。
【0116】
図3(a)では、第1発光部2aと第2発光部2bとが接触して配置されているので、非接触領域Aにおいてレーザ光が照射され蛍光に変換されないという事態を防ぐことができ、レーザ光を蛍光の変換に無駄なく利用できる。この点を考慮しなければ、あるいは、ヘッドランプ10が非接触領域Aから出射されるレーザ光を第1の蛍光とともに照明光として利用する構成となっている場合には、図3(b)に示すように、第1発光部2a及び第2発光部2bが非接触に配置されていてもよい。なお、図3(b)では、ヘッドランプ10は、発光部2が導光部材9に最も近い位置にあるときに、レーザ光照射領域30が第1発光部2a及び非接触領域Aを全て含むように設計されている。
【0117】
図3(c)は図3(a)の変形例である。第1発光部2aは、直径2.0mm、高さ0.5mmの円柱であり、第2発光部2bは、第1発光部2aの大きさ分だけ空洞部分を有する、直径3.0mm、高さ0.5mmの円柱である。第1発光部2a及び第2発光部2bの大きさ及び形状は、図3(a)で示した事情を考慮して決定されることが好ましく、例えば上記の配光特性基準などを考慮すれば楕円形状であることが好ましい。
【0118】
また、発光部2は2重構造に限らず、例えば図3(d)に示すように3重構造となっていてもよい。図3(d)では、発光部2は、第1発光部2a及び第2発光部2bの大きさ分だけ空洞部分を有する、直径4.0mm、高さ0.5mmの円柱形状の第3発光部2cを備えている。例えば、第1発光部2aがYAG:Ce蛍光体を含み、第2発光部2bがSCASN:Eu蛍光体を含み、第3発光部2cがCASN:Eu蛍光体を含んでいる。この場合、発光部2が2つの発光部からなる場合に比べ、より細かく色温度を変化させることができる。なお、発光部2は4つ以上の発光部からなっていてもよい。
【0119】
ここで、本実施の形態では、ヘッドランプ10は、製造時には第1発光部2a(本体部)にレーザ光が照射されるように設計されており、その後支持部材駆動部12が発光部2を移動させることで、第2発光部2b(周辺部)を含めてレーザ光が照射されるように設計されている。また、第1発光部2aには他の発光部(例えば第2発光部2b、第3発光部2c、…)よりも短いピーク波長を有する蛍光体が用いられる。この配置の場合、ヘッドランプ10は、製造時のままの状態で使用された場合に最も色温度が高い照明光を出射し、その後発光部2を導光部材9から遠ざけるように移動させることで色温度が低い照明光を出射する。
【0120】
ここで、色温度が低い照明光を出射した(第2の蛍光を出射した)場合には、第1の蛍光だけを照明光として利用している場合に比べ、レーザ光照射領域30(発光部2の受光面における発光点サイズ)が拡大する。また、発光部2から出射された照明光は、反射鏡4やレンズ8等の光学系により、車両の前方においてその照射領域が拡大される。一般に、照明光の照度を低くして車両の前方を広く照射した方が視認性・安全性が高い。例えば、濃霧時に照度が高いハイビームを点灯させた場合には視認性が低下する。本実施の形態では、色温度が低い照明光ほど車両の前方を広く照射できるので、悪天候時(雨天時、霧発生時など)における照射に適したヘッドランプを提供できる。
【0121】
なお、上記の視認性・安全性を考慮しなければ、発光部2に用いる蛍光体のうち最もピーク波長が長い蛍光体を第1蛍光体として利用し、製造時のままの状態で使用した場合に最も低い色温度の照明光を出射するように発光部2が構成されていてもよい。
【0122】
また、上記では、各発光部が別々に製造され、透光性基板1に設けられるものとして説明したが、これに限らず、一体に形成されてもよい。一体形成した場合には、各発光部を別々に製造してヘッドランプ10に備える場合に比べ、製造工程及び製造コストを削減できる。
【0123】
各発光部が一体形成される場合には、発光部2は例えば次のように製造される。まず、異なる2つの融点を有する封止材(例えば低融点ガラス)を用意し、蛍光体が分散された高融点の方の封止材を用いて(第1発光部2aの大きさ分だけ空洞部分を有する)第2発光部2bを形成する。その後、この第2発光部2bを外枠として別の蛍光体が分散された低融点の封止材からなる第1発光部2aを形成する。これにより、一体形成の発光部2が得られる。その後、発光部2の透光性基板1に対する位置決めをした後、発光部2を透光性基板1に接着する。
【0124】
図4は、一体形成された発光部2の一例を示す図であり、(a)は透光性基板1に接着された発光部2の一例を示す断面図であり、(b)は(a)に示す発光部2の一例を示す斜視図である。同図に示すように、第1発光部2aは、レーザ光が照射される受光面201aの大きさが、蛍光を出射する出射面202aよりも大きい、所謂すり鉢形状となっている。すなわち、受光面201aの各頂点と出射面201bの各頂点とを結ぶ直線が形成する4つの面(第1発光部2a及び第2発光部2bの接触面(壁面))が受光面201aに対して斜面を形成している。それゆえ、第1発光部2aの受光面201a側が透光性基板1に接着したときに、例えば第1発光部2aが直方体(受光面201aの大きさが出射面202aの大きさとが略同一)である場合に比べ、第1発光部2aが透光性基板1から外れて落ちないようにすることができる。
【0125】
なお、図4に示す発光部2の形状は、第1発光部2aと第2発光部2bとが一体形成された場合に限らず、上述した第1発光部2aと第2発光部2bとが別々に製造される場合にも実現できる。
【0126】
<発光部2の移動制御>
(レーザ光照射領域30の変化について)
次に、レーザ光照射領域30の大きさが変化する様子について、図5を用いて説明する。ここでは、その様子をわかりやすくするために、レーザ光照射領域30の形状が楕円形状で、発光部2の形状が直方体であるものとして説明する。
【0127】
図5は、発光部2と導光部材9との位置関係と、そのときのレーザ光照射領域30の大きさを示す図である。同図の(a)はレーザ光が第1発光部2aの受光面全体に照射されたときのレーザ光照射領域30の大きさが最も小さい場合を示す。また、同図の(b)は(a)の場合よりも、発光部2と導光部材9との位置が離れ、かつレーザ光照射領域30が大きい場合を示し、(c)は(b)の場合よりも、発光部2と導光部材9との位置が離れ、かつレーザ光照射領域30が大きい場合を示す。
【0128】
まず、図5(a)に示すように、発光部2と導光部材9との距離がdAであるとき、レーザ光は、第1発光部2aの受光面全体に照射され、第2発光部2bにはほとんど照射されていない。このため、製造時のレーザ光照射の設定に従った色温度が高い照明光の出射が実現されている。なお、第1発光部2aの受光面全体にレーザ光が照射されていればよく、例えば第1発光部2aがレーザ光照射領域30と同形状の楕円形状であれば、第1発光部2aのみにレーザ光が照射されることとなる。
【0129】
次に、図5(b)では、発光部2と導光部材9との距離がdB(>dA)となったときを示している。この場合、可動制御部141が支持部材駆動部12を駆動することにより、支持部材駆動部12は、支持部材11を介して、発光部2と導光部材9との距離がdBとなるまで発光部2を移動させている。
【0130】
一般に、透光性基板1と導光部材9との間に凸レンズ等の集光部材が存在しない、あるいは導光部材9の出射端部がレーザ光を集光できる形状となっていない場合には、導光部材9から出射されたレーザ光の光路幅は、導光部材9からの距離に比例して大きくなる。すなわち、発光部2が導光部材9から離れるほどレーザ光照射領域30が大きくなる。この場合のレーザ光の形状は、先太りの円錐形状(正確には楕円錐形状)となっている。なお、レーザ光の形状は真円の円錐形状であってもよく、当該円錐形状を実現する目的であれば、透光性基板1と導光部材9との間に集光部材を設けてもよい。
【0131】
つまり、上記の移動により、図5(b)では、支持部材駆動部12が発光部2と導光部材9との距離をdAからdBまで変化させたことにより、レーザ光照射領域30に含まれる第2発光部2bの割合が、図5(a)の場合よりも大きくなっている。その割合が大きくなった分だけ第1の蛍光に加え第2の蛍光を出射できるので、照明光に対する第2の蛍光の割合を増加させることができる。
【0132】
本実施の形態では、第2蛍光体は第1蛍光体よりもピーク波長が長いので、第2発光部2bが出射する第2の蛍光は第1の蛍光よりも色温度が低い。このため、照明光に含まれる第2の蛍光の割合を増加させることにより、図5(a)の場合よりも照明光の色温度を低くできる。
【0133】
図5(c)では、発光部2と導光部材9との距離がdC(>dB)となったときを示しており、レーザ光照射領域30に含まれる第2発光部2bの割合が図5(b)の場合よりも大きくなっている。それゆえ、さらに照明光の色温度を低くできる。
【0134】
一方、例えば図5(c)の発光部2の位置から図5(a)の発光部2の位置に移動させる(距離dCから距離dAに変更)ことにより、照明光に含まれる第2の蛍光の割合を小さくできるので、照明光の色温度を高めることができる。
【0135】
このように、支持部材駆動部12は、支持部材11を介して、発光部2におけるレーザ光照射領域30の大きさを変化させている。換言すれば、支持部材駆動部12は、第1発光部2aにおけるレーザ光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部2bに照射されるレーザ光の照射範囲を変化させることにより、照明光に対する第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができる。このため、発光部2から出射される照明光のスペクトルを変化させることができるので、照明光の色温度のみならず、照明光の色度、照明光に含まれるスペクトルを変更することができる。
【0136】
なお、上記では、支持部材駆動部12が発光部2を移動させる構成であったが、これに限らず、例えば導光部材9を移動させてレーザ光照射領域30の大きさを変化させる構成であってもよい。
【0137】
また、上記では、導光部材9から出射されたレーザ光の光路幅が、導光部材9からの距離に比例して大きくなる場合について説明したが、当該光路幅が当該距離に比例して小さくなる場合であっても、発光部2または導光部材9を移動させることにより、レーザ光照射領域30の大きさを変化させることができる。但し、この場合、図5(a)におけるレーザ光の照射状態が、発光部2が導光部材9から最も離れたとき(d=dC)に実現され、図5(c)におけるレーザ光の照射状態が、発光部2が導光部材9から最も近いとき(d=dA)に実現される。
【0138】
なお、本実施の形態では、発光部2と導光部材9との距離がdAからdCに変化する場合、その変化(発光部2の移動)は連続的に行われるものとして説明したが、例えばその距離がdA及びdCのときだけ発光部2の位置決めが可能である構成であってもよい。すなわち、発光部2の移動が連続的でなく、段階的に行われてもよい。この場合、支持部材駆動部12は、レーザ光照射領域30に第1発光部2aのみが含まれる、あるいは、当該領域に第1発光部2a及び第2発光部2bが含まれるといった状態を段階的に切り替える。なお、発光部2が3つ以上の発光部を含む場合にも、同様の切り替えを行うことにより色温度変化を実現できる。
【0139】
(色温度の変化について)
次に、半導体レーザ61から出射されるレーザ光及び発光部2に含まれる蛍光体と、そのときの照明光の色温度との関係について、図6を用いて説明する。図6は、車両用前照灯に要求される白色の色度範囲を示すグラフ(色度図)である。同図に示すように車両用前照灯に要求される白色の色度範囲が法律により規定されている。当該色度範囲は、6つの点35を頂点とする多角形の内部である。また、曲線33は、色温度(K:ケルビン)を示すものである。
【0140】
図示のように、半導体レーザ61の発振波長が440nm(色度点41:青色領域)、蛍光体のピーク波長が570nm(色度点42:黄色領域)の場合、直線40に示すように、約4500Kから8500Kの照明光の色温度を実現できる。一方、半導体レーザ61の発振波長が440nm(色度点41:青色領域)、蛍光体のピーク波長が649nm(色度点43:赤色領域)の場合には、直線44に示すように、黄色発光蛍光体を用いた場合よりも照明光の色温度が非常に低くなることがわかる。
【0141】
したがって、図6に示す色度図からもわかるように、第1発光部2aの受光面全体にレーザ光が照射された状態から、第2発光部2bの受光面にもレーザ光が照射される状態とすることにより、照明光の色温度を赤色方向に移動させる、すなわち色温度が低下する方向に移動させることができる。
【0142】
<半導体レーザ61の構造>
次に、半導体レーザ61の基本構造について説明する。図7(a)は、半導体レーザ61の回路図を模式的に示したものであり、図7(b)は、半導体レーザ61の基本構造を示す斜視図である。同図に示すように、半導体レーザ61は、カソード電極19、基板18、クラッド層113、活性層111、クラッド層112、アノード電極17がこの順に積層された構成である。
【0143】
基板18は、半導体基板であり、本願のように蛍光体を励起する為の青色〜紫外の励起光を得る為にはGaN、サファイア、SiCを用いることが好ましい。一般的には、半導体レーザ用の基板の他の例として、Si、GeおよびSiC等のIV属半導体、GaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSbおよびAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体、ZnO、Al2O3、SiO2、TiO2、CrO2およびCeO2等の酸化物絶縁体、並びに、SiNなどの窒化物絶縁体のいずれかの材料が用いられる。
【0144】
アノード電極17は、クラッド層112を介して活性層111に電流を注入するためのものである。
【0145】
カソード電極19は、基板18の下部から、クラッド層113を介して活性層111に電流を注入するためのものである。なお、電流の注入は、アノード電極17・カソード電極19に順方向バイアスをかけて行う。
【0146】
活性層111は、クラッド層113及びクラッド層112で挟まれた構造になっている。
【0147】
また、活性層111およびクラッド層の材料としては、青色〜紫外の励起光を得る為にはAlInGaNから成る混晶半導体が用いられる。一般に半導体レーザの活性層・クラッド層としては、Al、Ga、In、As、P、N、Sbを主たる組成とする混晶半導体が用いられ、そのような構成としても良い。また、Zn、Mg、S、Se、TeおよびZnO等のII−VI属化合物半導体によって構成されていてもよい。
【0148】
また、活性層111は、注入された電流により発光が生じる領域であり、クラッド層112及びクラッド層113との屈折率差により、発光した光が活性層111内に閉じ込められる。
【0149】
さらに、活性層111には、誘導放出によって増幅される光を閉じ込めるために互いに対向して設けられる表側へき開面114・裏側へき開面115が形成されており、この表側へき開面114・裏側へき開面115が鏡の役割を果す。
【0150】
ただし、完全に光を反射する鏡とは異なり、誘導放出によって増幅される光の一部は、活性層111の表側へき開面114・裏側へき開面115(本実施の形態では、便宜上表側へき開面114とする)から出射され、励起光L0となる。なお、活性層111は、多層量子井戸構造を形成していてもよい。
【0151】
なお、表側へき開面114と対向する裏側へき開面115には、レーザ発振のための反射膜(図示せず)が形成されており、表側へき開面114と裏側へき開面115との反射率に差を設けることで、低反射率端面である、例えば、表側へき開面114より励起光L0の大部分を発光点103から照射されるようにすることができる。
【0152】
クラッド層113・クラッド層112は、n型およびp型それぞれのGaAs、GaP、InP、AlAs、GaN、InN、InSb、GaSb、及びAlNに代表されるIII−V属化合物半導体、並びに、ZnTe、ZeSe、ZnSおよびZnO等のII−VI属化合物半導体のいずれの半導体によって構成されていてもよく、順方向バイアスをアノード電極17及びカソード電極19に印加することで活性層111に電流を注入できるようになっている。
【0153】
クラッド層113・クラッド層112および活性層111などの各半導体層との膜形成については、MOCVD(有機金属化学気相成長)法やMBE(分子線エピタキシー)法、CVD(化学気相成長)法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。各金属層の膜形成については、真空蒸着法やメッキ法、レーザアブレーション法、スパッタ法などの一般的な成膜手法を用いて構成できる。
【0154】
(発光部2の発光原理)
次に、半導体レーザ61から発振されたレーザ光による蛍光体の発光原理について説明する。
【0155】
まず、半導体レーザ61から発振されたレーザ光が発光部2に含まれる蛍光体に照射されることにより、蛍光体内に存在する電子が低エネルギー状態から高エネルギー状態(励起状態)に励起される。
【0156】
その後、この励起状態は不安定であるため、蛍光体内の電子のエネルギー状態は、一定時間後にもとの低エネルギー状態(基底準位のエネルギー状態または励起準位と基底準位との間の準安定準位のエネルギー状態)に遷移する。
【0157】
このように、高エネルギー状態に励起された電子が、低エネルギー状態に遷移することによって蛍光体が発光する。
【0158】
白色光は、等色の原理を満たす3つの色の混色、または補色の関係を満たす2つの色の混色で構成でき、この原理・関係に基づき、半導体レーザから発振されたレーザ光の色と蛍光体が発する光の色とを、上述のように組み合わせることにより白色光を発生させることができる。
【0159】
<ヘッドランプ10の変形例1>
図8は、ヘッドランプ10の変形例を示す図である。このヘッドランプ10は、透光性基板1と導光部材9との間に、半導体レーザ61から出射されたレーザ光を屈曲して、第1発光部2a及び第2発光部2bの少なくとも一方に出射する凸レンズ16(光学部材)を備えており、凸レンズ16の外周の一部に支持部材11が設けられている。すなわち、このヘッドランプ10では、支持部材駆動部12が、発光部2の代わりに凸レンズ16を移動させることにより、照明光の色温度変化を実現している。
【0160】
具体的には、凸レンズ16を備えることにより、図8に示すように、凸レンズ16透過後のレーザ光の光路幅を、凸レンズ16入射前のレーザ光の光路幅とは異なり、かつ、凸レンズ16からの距離に応じて変化するように出射できる。つまり、レーザ光は、凸レンズ16を透過することにより、凸レンズ16を基点としてその光路幅が新たに変化していくこととなる。このため、凸レンズ16を移動させることにより、凸レンズ16と第1発光部2a及び/又は第2発光部2bとの距離を変更できる。第2発光部2bにおけるレーザ光の照射範囲が、凸レンズ16と発光部2との距離に応じて変化するので、支持部材駆動部12がその距離を変更することにより、結果として照明光の色温度を変化させることができる。
【0161】
導光部材9から出射されるレーザ光の光路に対して焦点距離が十分に長いレンズの場合、図8のようにレーザ光の光路幅を変更できる。このため、凸レンズ16としては、焦点距離が十分に長い両凸レンズ、平凸レンズなどが使用できる。その他、導光部材9から出射されるレーザ光が、平行光で、かつ細いレーザ光である場合には、凸レンズ16の代わりとして、両凹レンズ、平凹レンズなどの凹レンズも使用可能である。つまり、凸レンズ16は、入射するレーザ光の出射角度を変更可能なレンズであればよく、その機能を有していれば非球面レンズであってもよい。
【0162】
なお、凸レンズ16には、レーザ光の反射を防止する光学膜(反射膜)がコーティングされていることが好ましい。また、上述の機能を有するレンズであれば、凸レンズ16の形状および材質は特に限定されないが、440〜480nmの透過率が高いことが好ましい。
【0163】
<ヘッドランプ10の効果>
ヘッドランプ10は、第1発光部2aにおけるレーザ光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部2bに照射されるレーザ光の照射範囲を変化させる支持部材11及び支持部材駆動部12を備えている。このため、照明光に含まれる第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができるので、その割合の変化により、照明光の色温度を変化させることができる。
【0164】
特に、本発明の照明装置は、夜間の自動車運転を行う際、周囲の様々な状況(天候・時間帯・道路の照明状況等)を鑑みて、その状況により適合した色温度の照明光を照射できるので、夜間走行の安全性をより向上させることができる。また、そのようなニーズにも対応できる照明装置といえる。
【0165】
〔実施の形態2〕
本発明の他の実施形態について図9〜図11に基づいて説明すれば、以下のとおりである。図9は、ヘッドランプ20(照明装置、前照灯)の概要構成を示す図である。なお、実施の形態1と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0166】
本実施の形態のヘッドランプ20は、透光性基板駆動部12aにより、透光性基板1aがレーザ光の光軸方向に対して垂直な方向に移動することが可能な構成となっている。図9では、支持部材11を備えずに当該垂直な方向への移動を実現しているが、これに限らず、支持部材11を介してその移動を実現する構成であってもよい。
【0167】
(透光性基板1a)
透光性基板1aの機能及び材質は、実施の形態1の透光性基板1と同様であるが、その大きさは、例えば縦10mm×横15mm×厚み0.5mmとなっており、横の長さ(移動方向への長さ)が、反射鏡4の導光部材9側の開口部の大きさよりも大きくなっている。また、透光性基板1aには、透光性基板駆動部12aのギアと噛み合うように、透光性基板1aのレーザ光入射側(導光部材9側)の表面には溝が設けられている。
【0168】
但し、透光性基板1aがレーザ光を透過させる機能を有していることを考慮すれば、当該溝は発光部2が接着された表面に対向する表面には設けられていないことが好ましい。また、また、ギアに連動して動作するのであれば、透光性基板1aの表面がどのような形状になっていてもよく、また特に加工されていなくてもよい。
【0169】
(透光性基板駆動部12a)
透光性基板駆動部12aは、例えばステッピングモータ及びギアからなり、透光性基板1aをレーザ光の光軸方向に対して垂直な方向に移動させることにより、発光部2をその方向に移動させるものである。つまり、本実施の形態では、透光性基板駆動部12aによって照射範囲変化機構の基本構造が形成されている。
【0170】
ギアは、その表面が透光性基板1aに接触するように、また、その回転軸が透光性基板1aの移動方向と垂直な方向となるように設けられている。ギアは、1つであっても、複数の組み合わせからなっていてもよい。また、ステッピングモータは、その回転をギアに伝播できるように設けられていればよい。
【0171】
また、透光性基板駆動部12aは、実施の形態1と同様、可動制御部141(図2参照)からの可動指示により、透光性基板1aを移動させる。
【0172】
なお、レーザ光照射領域30に含まれる第1発光部2a及び第2発光部2bの割合を変化させることが可能であれば、透光性基板駆動部12aが透光性基板1a(すなわち発光部2)を移動させる構成に限られず、導光部材9や励起光源ユニット6等を移動させる構成であってもよい。
【0173】
(発光部2における各発光部の配置例)
次に、第1発光部2a及び第2発光部2bの配置例について図10を用いて説明する。図10は、ヘッドランプ20における第1発光部2a及び第2発光部2bの配置例を示すものである。(a)は第1発光部2a及び第2発光部2bが同じ形状で、かつ接触して配置されている場合の配置例、(b)は(a)の変形例であり、第1発光部2a及び第2発光部2bの形状が異なる場合の配置例、(c)は(a)の変形例であり、第1発光部2a及び第2発光部2bが非接触である場合の配置例を示す。
【0174】
図10(a)では、第1発光部2a及び第2発光部2bの大きさは、ともに縦4.5mm×横3.5mm×厚み0.5mmとなっており、両発光部は接触して設けられている。この大きさは一例であり、実施の形態1と同様、レーザ光の照射、蛍光への変換効率、放熱効率などを考慮した大きさであればよい。
【0175】
第1発光部2a及び第2発光部2bが接触して設けられている場合、実施の形態1と同様、例えば図10(c)に示すような両発光部が非接触に設けられている場合に生じる、非接触領域Aにレーザ光が照射され蛍光に変換されないという事態を防ぐことができる。それゆえ、レーザ光を蛍光の変換に無駄なく利用できる。
【0176】
また、図10(b)は、図10(a)の変形例であり、第1発光部2a及び第2発光部2bの大きさが異なる場合を示している。図10では、例えば、第1発光部2aの大きさが縦4.5mm×横3mm×厚み0.5mm、第2発光部2bの大きさが縦4.5mm×横4mm×厚み0.5mmとなっている。図10(a)と同様、その大きさはこれに限られない。
【0177】
ヘッドランプ20では、レーザ光照射領域30(図11(a)参照)が第1発光部2aの受光面に含まれる大きさとなるように、発光部2などの位置決めがされている。このため、図10(b)の場合には、図11(a)のように第1発光部2aにレーザ光を照射した場合(製造時に設定されたレーザ光照射)であっても、わずかに第2発光部2bから第2の蛍光を出射させることができる。このため、ヘッドランプ20が製造時の状態のまま使用されても、色温度及び演色性が比較的高い照明光を出射できる。
【0178】
なお、図示しないが、例えば3つ以上の発光部を並べて配置することによって、図3(d)と同様、より細かく色温度を変化させることも可能である。
【0179】
(レーザ光照射領域30の変化について)
次に、レーザ光照射領域30の大きさが変化する様子について、図11を用いて説明する。図11は、発光部2におけるレーザ光照射領域30の大きさの変化を示す図であり、(a)は第1発光部2aにだけレーザ光が照射されている場合を示し、(b)は第1発光部2a及び第2発光部2bの両方にレーザ光が照射されている場合を示す。
【0180】
図11(a)の場合、実施の形態1と同様、第1発光部2aから出射される第1の蛍光の方が、第2発光部2bから出射される第2の蛍光よりも色温度が高い。このため、第1発光部2aにだけレーザ光が照射されている場合には、製造時のレーザ光照射の設定に従った色温度が高い照明光の出射が実現されている。
【0181】
図11(b)では、透光性基板駆動部12aが透光性基板1aを、図11(a)の状態からレーザ光の光軸方向と垂直な方向に移動させることにより、レーザ光照射領域30の大きさを一定にした状態で当該領域の中心を第1発光部2aから第2発光部2bへ向けて移動させている。この移動により、図11(a)の場合に比べ、第1発光部2aに含まれるレーザ光照射領域30の割合が小さくなり、第2発光部2bに含まれるレーザ光照射領域30の割合が大きくなる。その結果、発光部2から出射される照明光に対する第1の蛍光及び第2の蛍光の割合が大きくなる。上述のように、第1の蛍光よりも第2の蛍光の色温度が低いので、第2の蛍光の割合が大きくなることで、色温度を低下させることができる。
【0182】
また、図11(b)の場合よりも更に第2の蛍光の割合が大きくなれば、さらに照射光の色温度を低下させることができる。一方、図11(b)の状態から図11(a)の状態となるように透光性基板1aを移動させた場合には、照射光の色温度を高めることができる。
【0183】
(ヘッドランプ20の効果)
ヘッドランプ20は、第1発光部2a及び第2発光部2bに照射されるレーザ光の照射範囲を変化させる透光性基板駆動部12aを備えている。このため、照明光に含まれる第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができるので、その割合の変化により、照明光の色温度を変化させることができる。
【0184】
また、その割合を変化させる一例として、透光性基板駆動部12aは、透光性基板1aを介して発光部2を移動させることにより、導光部材9と、第1発光部2a及び第2発光部2bとの相対的な位置(すなわち半導体レーザ61とこれら発光部との相対的な位置)を変化させている。この場合、第1発光部2a及び第2発光部2bにおけるレーザ光照射領域30の位置を変更できるので、第1発光部2a及び第2発光部2bそれぞれにおける当該領域の大きさを変化させることができる。その結果、上記の割合を変化させることができる。
【0185】
〔実施の形態3〕
本発明の他の実施形態について図12〜図17に基づいて説明すれば、以下のとおりである。なお、実施の形態1及び2と同様の部材に関しては、同じ符号を付し、その説明を省略する。
【0186】
ここでは、本発明の照明装置の一例としてのレーザダウンライト200について説明する。レーザダウンライト200は、家屋、乗物などの構造物の天井に設置される照明装置であり、半導体レーザ61から出射したレーザ光を発光部2に照射することによって発生する蛍光を照明光として用いるものである。
【0187】
なお、レーザダウンライト200と同様の構成を有する照明装置を、構造物の側壁または床に設置してもよく、上記照明装置の設置場所は特に限定されない。
【0188】
図12は、発光ユニット210および従来のLEDダウンライト300の外観を示す概略図である。図13は、レーザダウンライト200が設置された天井の断面図である。図14は、レーザダウンライト200の断面図である。
【0189】
レーザダウンライト200(発光ユニット210)は、図13及び図14に示すように、天板400に光ファイバー215を通す小さな穴402だけを開け、発光ユニット210の薄型・軽量という特長を活かして、強力な粘着テープ等を使って天板400に貼り付けられている。この場合、レーザダウンライト200の設置に係る制約が小さくなり、また工事費用が大幅に削減できるというメリットがある。なお、発光部2が移動可能な構成であれば、発光ユニット210が天板400に埋設されていてもよい。
【0190】
レーザダウンライト200は、照明光を出射する発光ユニット210と、光ファイバー215を介して発光ユニット210へレーザ光を供給する励起光源ユニット6aとを含んでいる。励起光源ユニット6aは、天井には設置されておらず、ユーザが容易に触れることができる位置(例えば、家屋の側壁)に設置されている。このように励起光源ユニット6aの位置を自由に決定できるのは、励起光源ユニット6aと発光ユニット210とが光ファイバー215によって接続されているからである。この光ファイバー215は、天板400と断熱材401との間の隙間に配置されている。
【0191】
(発光ユニット210の構成)
発光ユニット210は、図14に示すように、透光性基板1、第1発光部2aおよび第2発光部2bからなる発光部2、支持部材11、支持部材駆動部12、筐体211、透光板213、光ファイバー215及びフェルール217を備えている。
【0192】
筐体211には、凹部212が形成されている。凹部212の表面には、金属薄膜が形成されており、凹部212は反射鏡として機能する。また、この凹部212の底面付近で、例えば図5(a)〜(c)に示すように、発光部2の位置を変化させて、レーザ光照射領域30の大きさを変化させることが可能な位置に、発光部2を備えた透光性基板1が配置されている。実施の形態1で述べたように、発光部2の位置の変化は、支持部材駆動部12が、支持部材11を介して、発光部2を備えた透光性基板1をレーザ光の光軸方向に移動させることにより実現する。この移動の実現のために、筐体211には、支持部材11を収納できる収納部218が形成されている。
【0193】
また、筐体211には光ファイバー215を通す小さな穴219が開けられており、この穴219を通って光ファイバー215が発光部2近傍まで延びている。これにより、半導体レーザ61が出射したレーザ光は、光ファイバー215を介して、発光部2に照射される。また、光ファイバー215の出射端部215aは、フェルール217によって保持されている。なお、光ファイバー215及びフェルール217については後述する。
【0194】
透光板213は、凹部212の開口部をふさぐように配置された透明または半透明の板である。この透光板213は、レンズ8と同様の機能を有するものであり、発光部2の蛍光は、透光板213を透して照明光として出射される。透光板213は、筐体211に対して取外し可能であってもよく、省略されてもよい。
【0195】
図12では、発光ユニット210は、円形の外縁を有しているが、発光ユニット210の形状(より厳密には、筐体211の形状)は特に限定されない。
【0196】
なお、ダウンライトでは、ヘッドランプの場合とは異なり、理想的な点光源は要求されず、発光点が1つというレベルで十分である。それゆえ、発光部2の形状、大きさおよび配置に関する制約は、ヘッドランプの場合よりも少ない。
【0197】
(励起光源ユニット6aの構成)
励起光源ユニット6aは、半導体レーザ61、光ファイバー215および非球面レンズ216を備えている。
【0198】
光ファイバー215の一方の端部である入射端部215bは、励起光源ユニット6aに接続されており、半導体レーザ61から発振されたレーザ光は、非球面レンズ216を介して光ファイバー215の入射端部215bに入射される。
【0199】
非球面レンズ216は、半導体レーザ61から発振されたレーザ光(励起光)を、光ファイバー215の一方の端部である入射端部215bに入射させるためのレンズである。例えば、非球面レンズ216として、アルプス電気製のFLKN1 405を用いることができる。上述の機能を有するレンズであれば、非球面レンズ216の形状および材質は特に限定されないが、450nm近傍の透過率が高く、かつ耐熱性のよい材料であることが好ましい。
【0200】
図14では、励起光源ユニット6aの内部に、半導体レーザ61および非球面レンズ216がそれぞれ3つずつ備えられ、それぞれの非球面レンズ216から延びる光ファイバーの束が1つの発光ユニット210に導かれている。すなわち、図14では、3つの半導体レーザ61と3つの非球面レンズ216とからなる1セットの光源が、1つの発光ユニット210用の光源として機能している。発光ユニット210が複数存在する場合には、発光ユニット210からそれぞれ延びる光ファイバーの束を1つの励起光源ユニット6aに導いてもよい。この場合、1つの励起光源ユニット6aに上記の1セットの光源が複数収納されることになり、励起光源ユニット6aは集中電源ボックスとして機能する。
【0201】
(光ファイバー215及びフェルール217)
光ファイバー215は、半導体レーザ61が発振したレーザ光を発光部2へと導く導光部材であり、複数の光ファイバーの束である。この光ファイバー215は、半導体レーザ61から出射されたレーザ光を受け取る入射端部215bと、これらの入射端部から入射したレーザ光を出射する出射端部215aとを有する光ファイバーを含んでいる。
【0202】
図15は、出射端部215aと発光部2との距離が最も近くなったときの出射端部215aと発光部2との位置関係を示す図であり、第1発光部2aの受光面201aと、第2発光部2bの受光面201bとを示している。この出射端部215aと発光部2との距離が最も近いときに、複数の出射端部215aから出射されたレーザ光が少なくとも受光面201a全域を含んで照射されるように、各出射端部215aの間隔、当該距離、受光面201aの大きさなどが設定される。
【0203】
光ファイバー215は、中芯のコアを、当該コアよりも屈折率の低いクラッドで覆った2層構造をしている。コアは、レーザ光の吸収損失がほとんどない石英ガラス(酸化ケイ素)を主成分とするものであり、クラッドは、コアよりも屈折率の低い石英ガラスまたは合成樹脂材料を主成分とするものである。例えば、光ファイバー215は、コアの径が200μm、クラッドの径が240μm、開口数NAが0.22の石英製のものであるが、光ファイバー215の構造、太さおよび材質は上述のものに限定されず、光ファイバー215の長軸方向に対して垂直な断面は矩形であってもよい。
【0204】
また、図14に示すように、フェルール217は、光ファイバー215の複数の出射端部215aを発光部2に対して所定のパターンで保持する。このフェルール217は、出射端部215aを挿入するための孔が所定のパターンで形成されているものでもよいし、上部と下部とに分離できるものであり、上部および下部の接合面にそれぞれ形成された溝によって出射端部215aを挟み込むものでもよい。
【0205】
このフェルール217は、筐体211から延出する棒状または筒状の部材などによって発光ユニット210に対して固定されていればよい。フェルール217の材質は、特に限定されず、例えばステンレススチールである。
【0206】
(レーザダウンライト200と従来のLEDダウンライト300との比較)
従来のLEDダウンライト300は、図12に示すように、複数の透光板301を備えており、各透光板301からそれぞれ照明光が出射される。すなわち、LEDダウンライト300において発光点は複数存在している。LEDダウンライト300において発光点が複数存在しているのは、個々の発光点から出射される光の光束が比較的小さいため、複数の発光点を設けなければ照明光として十分な光束の光が得られないためである。
【0207】
これに対して、レーザダウンライト200は、高光束の照明装置であるため、発光点は1つでもよい。それゆえ、照明光による陰影がきれいに出るという効果が得られる。また、実施の形態1で述べたように第2発光部2bの蛍光体に高演色蛍光体を用いるなど、発光部2全体として数種類の酸窒化物蛍光体を用いることにより、照明光の演色性を高めることができる。
【0208】
図16は、LEDダウンライト300が設置された天井の断面図である。同図に示すように、LEDダウンライト300では、LEDチップ、電源および冷却ユニットを収納した筐体302が天板400に埋設されている。筐体302は比較的大きなものであり、筐体302が配置されている部分の断熱材401には、筐体302の形状に沿った凹部が形成される。筐体302から電源ライン303が延びており、この電源ライン303はコンセント(不図示)につながっている。
【0209】
このような構成では、次のような問題が生じる。まず、天板400と断熱材401との間に発熱源である光源(LEDチップ)および電源が存在しているため、LEDダウンライト300を使用することにより天井の温度が上がり、部屋の冷房効率が低下するという問題が生じる。
【0210】
また、LEDダウンライト300では、光源ごとに電源および冷却ユニットが必要であり、トータルのコストが増大するという問題が生じる。
【0211】
また、筐体302は比較的大きなものであるため、天板400と断熱材401との間の隙間にLEDダウンライト300を配置することが困難な場合が多いという問題が生じる。
【0212】
これに対して、レーザダウンライト200では、発光ユニット210には、大きな発熱源は含まれていないため、部屋の冷房効率を低下させることはない。その結果、部屋の冷房コストの増大を避けることができる。
【0213】
また、発光ユニット210ごとに電源および冷却ユニットを設ける必要がないため、レーザダウンライト200を小型および薄型にすることができる。その結果、レーザダウンライト200を設置するためのスペースの制約が小さくなり、既存の住宅への設置が容易になる。
【0214】
また、レーザダウンライト200は、小型および薄型であるため、上述したように、発光ユニット210を天板400の表面に設置することができ、天板裏側のスペースもほとんど必要ないためにLEDダウンライト300よりも設置に係る制約を小さくすることができるとともに工事費用を大幅に削減できる。
【0215】
図17は、レーザダウンライト200およびLEDダウンライト300のスペックを比較するための図である。同図に示すように、レーザダウンライト200は、その一例では、LEDダウンライト300に比べて体積は94%減少し、質量は86%減少する。
【0216】
また、励起光源ユニット6aをユーザの手が容易に届く所(高さ)に設置できるため、半導体レーザ61が故障した場合でも、手軽に半導体レーザ61を交換できる。また、複数の発光ユニット210から延びる光ファイバー215を1つの励起光源ユニット6aに導くことにより、複数の半導体レーザ61を一括管理できる。そのため、複数の半導体レーザ61を交換する場合でも、その交換が容易にできる。
【0217】
なお、LEDダウンライト300において、高演色蛍光体を用いたタイプの場合、消費電力10Wで約500lmの光束が出射できるが、同じ明るさの光をレーザダウンライト200で実現するためには、3.3Wの光出力が必要である。この光出力は、LD効率が35%であれば、消費電力10Wに相当し、LEDダウンライト300の消費電力も10Wであるため、消費電力では、両者の間に顕著な差は見られない。それゆえ、レーザダウンライト200では、LEDダウンライト300と同じ消費電力で、上述の種々のメリットが得られることになる。
【0218】
以上のように、レーザダウンライト200は、レーザ光を出射する半導体レーザ61を少なくとも1つ備える励起光源ユニット6aと、第1発光部2a、第2発光部2bおよび反射鏡としての凹部212を備える少なくとも1つの発光ユニット210とを備える。そして、支持部材駆動部12が支持部材11を介して発光部2の位置を変化させることにより、第1発光部2aにおけるレーザ光の照射範囲を一定にした上で、第2発光部2bに照射されるレーザ光の照射範囲を変化させる。これにより、実施の形態1と同様、第2発光部2bから出射される第2の蛍光の、照明光に対する割合が変化するので、照明光の色温度を変化させることが可能なレーザダウンライト200を実現できる。
【0219】
また、上記では、レーザダウンライト200に、例えば図3(a)〜(d)に示す発光部2(実施の形態1の発光部2)を用いた場合を例に挙げて説明したが、これに限らず、図10(a)〜(c)に示す発光部2(実施の形態2の発光部2)を用いることも可能である。
【0220】
この場合、例えば、レーザダウンライト200は、実施の形態2で述べたように、支持部材11を備えず、透光性基板1aを直接移動させることが可能な透光性基板駆動部12aを備える。透光性基板駆動部12aは、出射端部5aの出射面と平行に、かつ第1発光部2a及び第2発光部2bが並んでいる方向に、透光性基板1aを移動させる。換言すれば、透光性基板駆動部12aは、レーザ光照射領域30の大きさを変化させずに、第1発光部2a及び第2発光部2bに照射されるレーザ光の照射範囲を変化させる。これにより、照明光に含まれる第1の蛍光及び第2の蛍光の割合を変化させることができるので、その割合の変化により、照明光の色温度を変化させることができる。
【0221】
〔本発明の別の表現〕
本発明は、以下のようにも表現できる。
【0222】
すなわち、本発明に係る照明装置(レーザ光照明光源)は、蛍光体発光部が本体部と周辺部の少なくとも二重構造(三重以上でも可能)となっており、本体部と周辺部とで含まれる蛍光体の少なくとも一部が異なり、励起光源から出射される励起光の照射エリアを本体部だけと、本体部及び周辺部とに切り替える機構を有する構成である。これにより、蛍光体発光部から出射される照明光の色温度や色度、照明光に含まれるスペクトルを変更できる。
【0223】
本発明は上述した実施形態に限定されるものではなく、請求項に示した範囲で種々の変更が可能である。すなわち、請求項に示した範囲で適宜変更した技術的手段を組み合わせて得られる実施形態についても本発明の技術的範囲に含まれる。
【0224】
照明光を対象物に照射したときの当該対象物を見やすさは、照明光の色温度によって個々人において異なるものである。本発明の照明装置は、照射範囲変化機構を備えることにより、色温度を変化させることができるので、例えば、その見やすさを測定可能な測定器(テスター)を作製して照明装置の販売店に設置することにより、個々人の嗜好にあった色温度を個々人に選択させることができる。すなわち、各ユーザは、ユーザ嗜好にあった色温度の照明光を出射する照明装置を購入できる。本発明の照明装置が車両用前照灯として実現されている場合、上記の測定器を自動車ディーラーに設置しておくことにより、個々人が自動車を購入する際に上記の選択を行うことができる。
【0225】
また、記憶部15に、本発明の照明装置(あるいは照明装置を備える物(車両など))の所有者あるいは当該照明装置をよく利用するユーザを特定する情報と、その所有者あるいはユーザが選択した色温度を示す情報とを対応付けて記憶しておいてもよい。この場合、例えば、入力部13が所有者あるいはユーザを特定する情報を取得し、可動制御部141が、その情報に対応する色温度を示す情報を記憶部15から読み出し、支持部材駆動部12を駆動し、支持部材11を移動させる。これにより、所有者あるいはユーザの嗜好にあった色温度を記憶しておくことを条件に、本発明の照明装置は、その嗜好にあった色温度に自動的に切り替えることができる。
【産業上の利用可能性】
【0226】
本発明は、照明光の色温度を変化させることができ、特に車両用等のヘッドランプなどに好適である。
【符号の説明】
【0227】
2 発光部(第1発光部、第2発光部)
2a 第1発光部
2b 第2発光部
6 励起光源ユニット(励起光源)
10 ヘッドランプ(照明装置、前照灯)
11 支持部材(照射範囲変化機構)
12 支持部材駆動部(照射範囲変化機構)
12a 透光性基板駆動部(照射範囲変化機構)
13 入力部(入力手段)
16 凸レンズ(光学部材)
30 レーザ光照射領域(照射範囲)
61 半導体レーザ(励起光源)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
励起光を出射する励起光源と、
上記励起光を受けて第1の蛍光を発する第1発光部と、
上記励起光を受けて上記第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2発光部と、
上記第1発光部における励起光の照射範囲を一定にした上で、上記第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる照射範囲変化機構と、を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
励起光を出射する励起光源と、
上記励起光を受けて第1の蛍光を発する第1発光部と、
上記励起光を受けて上記第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2発光部と、
上記第1発光部及び上記第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる照射範囲変化機構と、を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
上記第1発光部と上記第2発光部とは、接触して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
上記第2発光部は、上記第1発光部の周囲に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
上記第1発光部と上記第2発光部とは、一体形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の照明装置。
【請求項6】
上記照射範囲変化機構は、上記励起光源と、上記第1発光部及び上記第2発光部との相対的な位置を変化させることにより、上記照射範囲を変化させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
上記励起光源から出射された励起光を屈曲して、上記第1発光部及び上記第2発光部の少なくとも一方に出射する光学部材をさらに備え、
上記照射範囲変化機構は、上記光学部材を移動させることにより、上記照射範囲を変化させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
上記励起光源は、青色領域の発振波長を有する光を上記励起光として出射し、
上記第1発光部は、黄色領域にピーク波長を有する蛍光を、上記第1の蛍光として発する第1蛍光体を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項9】
上記第1蛍光体は、イットリウム・アルミニウム・ガーネットであることを特徴とする請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
上記励起光源は、青色領域の発振波長を有する光を上記励起光として出射し、
上記第1発光部は、緑色領域にピーク波長を有する蛍光を、上記第1の蛍光として発する第1蛍光体を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項11】
上記第1蛍光体は、β−SiAlON:Eu蛍光体であることを特徴とする請求項10に記載の照明装置。
【請求項12】
上記第2発光部は、赤色領域にピーク波長を有する蛍光を、上記第2の蛍光として発する第2蛍光体を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項13】
上記第2蛍光体は、CASN:Eu蛍光体又はSCASN:Eu蛍光体であることを特徴とする請求項12に記載の照明装置。
【請求項14】
ユーザ操作を受け付ける入力手段を備え、
上記照射範囲変化機構は、上記入力手段が受け付けたユーザ操作に従って動作することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の照明装置を備えることを特徴とする前照灯。
【請求項1】
励起光を出射する励起光源と、
上記励起光を受けて第1の蛍光を発する第1発光部と、
上記励起光を受けて上記第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2発光部と、
上記第1発光部における励起光の照射範囲を一定にした上で、上記第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる照射範囲変化機構と、を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項2】
励起光を出射する励起光源と、
上記励起光を受けて第1の蛍光を発する第1発光部と、
上記励起光を受けて上記第1の蛍光とは異なるピーク波長を有する第2の蛍光を発する第2発光部と、
上記第1発光部及び上記第2発光部に照射される励起光の照射範囲を変化させる照射範囲変化機構と、を備えることを特徴とする照明装置。
【請求項3】
上記第1発光部と上記第2発光部とは、接触して配置されていることを特徴とする請求項1または2に記載の照明装置。
【請求項4】
上記第2発光部は、上記第1発光部の周囲に配置されていることを特徴とする請求項3に記載の照明装置。
【請求項5】
上記第1発光部と上記第2発光部とは、一体形成されていることを特徴とする請求項3または4に記載の照明装置。
【請求項6】
上記照射範囲変化機構は、上記励起光源と、上記第1発光部及び上記第2発光部との相対的な位置を変化させることにより、上記照射範囲を変化させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項7】
上記励起光源から出射された励起光を屈曲して、上記第1発光部及び上記第2発光部の少なくとも一方に出射する光学部材をさらに備え、
上記照射範囲変化機構は、上記光学部材を移動させることにより、上記照射範囲を変化させることを特徴とする請求項1〜5のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項8】
上記励起光源は、青色領域の発振波長を有する光を上記励起光として出射し、
上記第1発光部は、黄色領域にピーク波長を有する蛍光を、上記第1の蛍光として発する第1蛍光体を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項9】
上記第1蛍光体は、イットリウム・アルミニウム・ガーネットであることを特徴とする請求項8に記載の照明装置。
【請求項10】
上記励起光源は、青色領域の発振波長を有する光を上記励起光として出射し、
上記第1発光部は、緑色領域にピーク波長を有する蛍光を、上記第1の蛍光として発する第1蛍光体を含むことを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項11】
上記第1蛍光体は、β−SiAlON:Eu蛍光体であることを特徴とする請求項10に記載の照明装置。
【請求項12】
上記第2発光部は、赤色領域にピーク波長を有する蛍光を、上記第2の蛍光として発する第2蛍光体を含むことを特徴とする請求項1〜11のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項13】
上記第2蛍光体は、CASN:Eu蛍光体又はSCASN:Eu蛍光体であることを特徴とする請求項12に記載の照明装置。
【請求項14】
ユーザ操作を受け付ける入力手段を備え、
上記照射範囲変化機構は、上記入力手段が受け付けたユーザ操作に従って動作することを特徴とする請求項1〜13のいずれか1項に記載の照明装置。
【請求項15】
請求項1〜14のいずれか1項に記載の照明装置を備えることを特徴とする前照灯。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【公開番号】特開2012−221634(P2012−221634A)
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−84046(P2011−84046)
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年11月12日(2012.11.12)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年4月5日(2011.4.5)
【出願人】(000005049)シャープ株式会社 (33,933)
【Fターム(参考)】
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