説明

照明装置

【課題】有機EL素子と発光ダイオード(LED)を光源に備えた照明装置を提供する。
【解決手段】照明装置は有機EL素子を有する複数の有機EL発光装置と、複数のLEDとを備える。LEDは点状光源として、有機EL発光装置は面状光源として設けられている。青色発光のLEDと黄色発光の有機EL素子を用いることで白色照明光を得ることができる。LEDの光が2つの有機EL発光装置の間を通過するように、LEDは有機EL発光装置の背面または前面に設けられている。これにより、有機EL素子を通過させずにLEDから光を取り出すことができる。また、有機EL素子を2枚の基板とシール材で封止して、水分や酸素による劣化を防いでいる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本明細書では、光源に発光ダイオード(LED)、および有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)が用いられた照明装置について説明する。
【背景技術】
【0002】
LED照明と呼ばれる照明装置は、半導体素子の一種である発光ダイオード(LED)を光源に使用した照明器具である。LED照明は省電力、長寿命な照明装置として、蛍光灯に替わる照明装置として注目されている。
【0003】
また、有機材料を用いた発光素子として有機エレクトロルミネッセンス素子(有機EL素子)が知られている。有機EL素子も発光ダイオードの一種であり、OLED、有機LEDと表記されることもある。有機EL素子を利用した代表的な装置としては、画素に有機EL素子が用いられた有機EL表示装置がある。有機EL表示装置が表示部に使用されているデジタルカメラ、および携帯電話などが商品化されている。
【0004】
また、異なる波長で発光するLEDと有機EL素子を組み合わせて白色光を得ることが提案されている。例えば、特許文献1には、無機LEDと有機EL素子を組み合わせた照明装置が開示され、特許文献2−5には無機LEDと有機EL素子を組み合わせた表示装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特表2008−512837号公報
【特許文献2】特開平7−199824号公報
【特許文献3】特開平9−148628号公報
【特許文献4】特開平11−8067号公報
【特許文献5】特開2001−143865号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本明細書では、有機EL素子およびLEDを備えた照明装置の寿命を延ばすことを課題の1つとする。また、同照明装置において、LEDから放射される光の損失を低減し、同照明装置の発光効率、輝度を向上することを課題の1つとする。なお、本発明は、少なくとも1つの課題を解決することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一実施の形態は、有機EL素子を含む複数の発光装置と複数の発光ダイオードとを有する照明装置であって、発光装置は、第1の基板、第2の基板、シール材および有機EL素子を有し、有機EL素子は、第1の基板、第2の基板およびシール材により封止され、複数の発光ダイオードは、複数の発光装置と重ならないように複数の発光装置の背面または前面に設けられている照明装置である。
【0008】
上記実施の形態に係る照明装置において、発光ダイオードは発光波長のピークが400nm以上500nm以下であり、有機EL素子の発光色は発光ダイオードの発光色の補色とすることができる。
【発明の効果】
【0009】
本明細書に開示する発明により、有機EL素子および発光ダイオード(LED)を備えた照明装置の使用寿命を延ばすことが可能である。また、LEDから放射される光の損失を低減できるため、照明装置の発光効率、輝度を向上することが可能になる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】照明装置の一実施の形態を示す概略的な平面図。
【図2】切断線A1−A2に沿った図1の断面図。
【図3】照明装置の一実施の形態を示す断面図。
【図4】照明装置の一実施の形態を示す断面図。
【図5】照明装置の一実施の形態を示す断面図。
【図6】有機EL発光装置の一実施の形態を示す断面図。
【図7】A−C:有機EL素子の一実施の形態を示す断面図。
【図8】照明装置の応用例を説明する図。
【図9】A−D:照明装置の応用例を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図面を用いて、本明細書で開示する発明の実施の形態を説明する。ただし、開示される発明は、明細書での記載に限定されず、本発明の趣旨およびその範囲から逸脱することなくその形態および詳細を様々に変更できることは当業者であれば容易に理解される。したがって、開示される発明は、以下に示す実施の形態の記載内容に限定して解釈されるものではない。
【0012】
(実施の形態1)
図1−図6、および図7A−図7Cを用いて、本実施の形態を説明する。
【0013】
図1は、本実施の形態の照明装置の構成の一例を示す平面図であり、図2は、同照明装置の断面図であり、図1の切断線A1−A2に沿った模式的な断面図である。図1に示すように、照明装置10は、光源として、有機EL素子101を有する複数の有機EL発光装置100、および複数のLED200を含む。照明装置10では、有機EL発光装置100の光とLED200の光とが混合された光が照明光として利用される。よって、有機EL発光装置100およびLED200の光の色(光の波長)を適宜設定することで、照明装置10を白色など様々な色で発光させることができる。
【0014】
LED200の発光領域は半導体チップに形成されるため、照明装置10において、LED200は点光源として機能する。他方、有機EL素子101の発光領域は、LED200に対して平面とみなせる程度に大面積化が可能であり、照明装置10においては、有機EL発光装置100は面光源として機能する。
【0015】
しかし、有機EL素子101の電極の電圧降下、および歩留まりの低下などの問題により、有機EL素子101の発光領域の大きさは制約を受ける。そこで、図1に示すように、照明装置10に複数の有機EL発光装置100を設けることで、照明装置10の照明領域を拡げている。平面(または、曲面)にタイルを敷き詰めるように、有機EL発光装置100は平面(または曲面)に設けられる。有機EL発光装置100の光とLED200の光を照明光として利用するため、有機EL発光装置100に隣接し、かつ照明光の放射方向で有機EL発光装置100と重ならないように、LED200が設けられている。図1に、照明装置10(有機EL発光装置100およびLED200)の平面レイアウトの一例を示す。図1では、平面形状が四角形の9つの有機EL発光装置100が間隔をあけて3×3の行列状に配列されている。
【0016】
なお、図1では、有機EL素子101の発光領域(後述する図2の発光層113)の平面形状(発光領域)を四角形としたが、平面形状は四角形に限定されず、任意の形状にすることができる。例えば、発光層113の平面形状は、四角形、三角形、六角形のような多角形、円形、楕円形であってもよい。
【0017】
図2は、照明装置10の断面構造の一例を示す図であり、線A1−A2に沿って切断した図1の断面図である。
【0018】
図2に示すように、有機EL発光装置100は、有機EL素子101、基板131、基板132、シール材135および乾燥剤140を有する。有機EL素子101は基板131上に形成され、電極111、電極112および発光層113を有する。有機EL素子101は、電極111と電極112の間に少なくとも発光性の有機化合物を含む発光層113を有する。発光層113の他に、例えば、正孔注入層、正孔輸送層、電子輸送層および電子注入層などから選ばれた層を有機EL素子101に設けることができる。
【0019】
有機EL素子101の電極111および電極112は、一方が陽極であり、他方が陰極である。さらに、発光層113で発した光150(以下、『OLED光150』と呼ぶ。)を有機EL発光装置100から取り出すため、電極111および電極112は、少なくとも一方がOLED光150を透過する透光性電極である。
【0020】
基板132は有機EL素子101の封止用の基板であり、基板131に対向する状態でシール材135により基板131に固定されている。基板131、132、およびシール材135により密閉された空間に有機EL素子101が設置される。また、乾燥剤140が基板132に固定されており、有機EL素子101と共に基板131、132、およびシール材135により封止されている。このように有機EL素子101を封止することで、有機EL素子101の水分や酸素による劣化を抑えることができる。
【0021】
密閉空間を作るため、シール材135には水分や酸素が透過しにくい材料を選択する。例えば、シール材135にはエポキシ系樹脂が好ましい。また、基板131、基板132およびシール材135により密閉された空間には、乾燥した不活性ガス(例えば、窒素ガス、アルゴンガスなど)または樹脂でなる充填材を充填する。なお、充填材を用いる場合は、乾燥剤140を設けなくてもよい。
【0022】
乾燥剤140には、例えば、アルカリ土類金属の酸化物(例えば、酸化カルシウム、酸化バリウムなど)のような化学吸着によって水分を吸収する物質、または、ゼオライトやシリカゲルなどの物理吸着によって水分を吸着する物質を用いることができる。乾燥剤140を設けることで、有機EL素子101の水分による劣化を抑制することができる。結果として、照明装置10の寿命を延ばすことにつながる。乾燥剤140は、OLED光150を遮らないように設ける。図2のようにOLED光150が基板131を通過する構造では、基板132に乾燥剤140を取り付ければよいため、乾燥剤140の位置あわせが不要であり、図2のように有機EL素子101に対向して設けることができる。
【0023】
LED200で発した光250(以下、『LED光250』と呼ぶ。)が2つの有機EL発光装置100の間を通過するように、LED200が基板231に取り付けられている。有機EL素子101を通過させずにLED光250を取り出すことで、LED光250の損失が抑えられる。したがって、照明装置10の発光効率、および輝度を向上させることができる。なお、照明装置10の発光効率とは、単位電力当たりの光出力(単位lm/W)のことをいう。
【0024】
また、有機EL素子101から離してLED200を設けることができるため、LED200の発熱による有機EL素子101の劣化を抑制することができる。図2に示すように、基板132側(有機EL発光装置100の背面)にLED200を実装した基板231を設ける場合、LED200の温度上昇を抑えるための放熱板を設けることが容易である。なお、図2において基板132側とは、有機EL発光装置100の背面であり、OLED光150を取り出す側と反対側をいう。
【0025】
基板231を有機EL発光装置100の前面(OLED光150の取り出し側)に設けることができる。そのような構成の照明装置の一例を図3に示す。図3は照明装置11の構成例を示す断面図である。照明装置11の平面レイアウトは照明装置10と同様である。なお、照明装置11では、OLED光150が基板231を通過するため、照明装置10の方がOLED光150の損失が少ない。
【0026】
基板132を通過させて、OLED光150を照明光として取り出す構造にすることができる。そのような構成の照明装置を図4および図5に示す。
【0027】
図4は照明装置の他の構成例を示す断面図である。図4に示すように照明装置12では、OLED光150が基板132を通過する。そのため、図4の有機EL素子101では、電極112が透光性電極であり、陽極として設けられており、電極111が反射電極であり、陰極として設けられている。また、乾燥剤140は、OLED光150を遮らないように、有機EL素子101の側面とシール材135の間に設けられている。また、基板131、基板132およびシール材135による密閉空間を不活性ガスの代わりに充填材(固体)で満たす場合は、乾燥剤140を設けなくてもよい。また、照明装置10、11においても、図4のように乾燥剤140を配置することができる。
【0028】
図5は照明装置の他の構成例を示す断面図である。図5に示すように、照明装置13は照明装置12の基板231を基板132側(有機EL発光装置100の前面)に配置した照明装置に対応する。なお、照明装置12および照明装置13の平面レイアウトは照明装置10と同様である。
【0029】
照明装置12、13も照明装置10と同様に、有機EL素子101が外気から遮断された空間に封止された構造であって、LED光250が有機EL素子101を通過しない構造であるため、有機EL素子101の劣化の抑制と、LED光250の損失の低減双方を実現することが可能である。なお、照明装置13ではOLED光150が基板231を通過するため、照明装置12の方がOLED光150の損失が少ない。
【0030】
LED200を有機EL素子101と離して設けることができるため、LED200の発熱による有機EL素子101の劣化を抑制することができる。照明装置12は、基板231が基板131側にあるため、照明装置13よりもLED200用の放熱板を設けることが容易である。
【0031】
以上のような効果により、照明装置12、13の発光効率および輝度の向上、ならびに寿命の延長が可能になる。
【0032】
照明装置10−13において、基板131および基板132にはガラス基板、石英基板、プラスチック基板などを用いることができる。プラスチック基板材料としては、FRP(Fiberglass−Reinforced Plastics)、PVF(ポリビニルフロライド)、ポリエステルまたはアクリルなどがある。また、基板131、132として、有機樹脂フィルム、および金属フィルムなどの可撓性基板を用いることもできる。有機樹脂フィルムの樹脂としては、例えば、アラミド樹脂、ポリエチレンナフタレート(PEN)樹脂、ポリエーテルサルフォン(PES)樹脂、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂、ポリイミド(PI)樹脂などがある。OLED光150が通過する基板は、OLED光150を透過する基板が選択される。また、照明装置10、11では、基板132は有機EL素子101を密閉できるものであればよく、ステンレス、アルミニウムなどの金属材料でなる基板、封止缶などを用いることもできる。
【0033】
照明装置10−13の照明光は、OLED光150とLED光250を混合した光である。例えば、白色の照明光を得るには、エネルギー変換効率の点から、LED200として青色(発光波長のピークが400nm以上500nm以下)で発光するLEDを用いることが好ましい。青色発光のLEDとしては、窒化ガリウム化合物半導体が発光領域に用いられたLEDがある。他方、有機EL素子101には、青色の補色となる黄色〜橙色(波長560nm以上580nm以下)で発光する素子を用いる。波長560nm以上580nm以下波長域において広い幅の発光スペクトルを持ち、高輝度、長寿命、および高いエネルギー変換効率の有機EL素子101が実現している、また、波長560nm以上580nm以下の波長は視感度の高い波長である。したがって、青色発光のLED200と黄色発光の有機EL素子101の組み合わせにより、高輝度、高い発光効率の白色照明装置の実現が容易になる。
【0034】
OLED光150の色(波長)は発光層113に用いられる発光材料で決定される。黄色の発光材料として、例えば、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))がある。また、橙色の発光材料として、例えば、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)(acac))がある。これらの発光材料は、燐光性の化合物である。
【0035】
また、照明装置10−13が備える全ての有機EL素子101の発光色を同じにする必要はなく、1つの照明装置10−13において、異なる発光色の有機EL素子101を設けることができる。また、このことはLED200も同様である。異なる発光色の有機EL素子101および/またはLED200を設けることで、照明装置10−13の照明光を所望の色にすることができる。
【0036】
また、有機EL発光装置100は、基板131上に複数の有機EL素子101を備えていてもよい。このような構成例を図6に示す。図6に示すように、基板131、基板132およびシール材135密閉された空間に複数の有機EL素子101が設けられている。この場合、各有機EL素子101の発光色は同じでも、異なっていてもよい。
【0037】
本実施の形態は、他の実施の形態に記載した構成と適宜組み合わせて実施することが可能である。
【0038】
(実施の形態2)
本実施の形態では、照明装置に用いられる有機EL素子について説明する。
【0039】
図7Aは有機EL素子の積層構造の一例を示す図である。有機EL素子501は、少なくとも電極511、電極512、および発光層513を有する。電極511および電極512は一方が陽極であり、他方が陰極である。ここでは、電極511を陽極とし、電極512を陰極として、有機EL素子501の積層構造を説明する。発光層513から放射されるOLED光550は、電極511から取り出される。
【0040】
有機EL素子501は、電極511と電極512の間に、正孔注入層521、正孔輸送層522、発光層513、電子輸送層524、および電子注入層525を有する。電極511、512、および各層(513、521、522、524、525)は、単層構造でも積層構造でもよい、また公知の作製方法(スパッタリング法、蒸着法(真空蒸着法を含む)、インクジェット法、塗布法など)で形成することができる。ここでは、電極511と電極512の間に形成される層をOLED層540と呼ぶことにする。
【0041】
電極511は、OLED光550を透過する導電膜で形成される。導電膜の材料としては、酸化インジウム、酸化インジウム−酸化スズ(『ITO』ともいう。)、酸化インジウム−酸化亜鉛、酸化亜鉛、ガリウムを添加した酸化亜鉛、およびグラフェンなどがある。また、金、白金、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、パラジウム、およびチタンなどの金属材料、これらの金属材料の窒化物(例えば、窒化チタン)などで導電膜を形成することができる。この場合、OLED光550が透過できる程度に導電膜を薄くする。
【0042】
電極512は、OLED光550を反射する導電膜で形成される。導電膜の材料として、例えばアルミニウム、金、白金、銀、ニッケル、タングステン、クロム、モリブデン、鉄、コバルト、銅、およびパラジウムなどの金属、ならびにこれらの合金を用いることができる。合金としては、例えば、アルミニウム−チタン合金、アルミニウム−ニッケル合金、アルミニウム−ネオジム合金などのアルミニウム合金、銀と銅の合金がある。アルミニウム合金膜を用いる場合は、金属膜(例えば、チタン膜)、または金属酸化物膜(例えば、酸化チタン膜)をアルミニウム合金と積層するとよい。このような積層構造にすることでアルミニウム合金膜の酸化を抑制することができる。
【0043】
発光層513は、発光性の有機化合物を含む層である。発光性の有機化合物としては、例えば、蛍光を発光する蛍光性化合物、および燐光を発光する燐光性化合物を用いることができる。有機EL素子501に発光層513を2層以上形成してもよい。この場合、各発光層513の発光色を異ならせることで、所望の色のOLED光550を得ることができる。
【0044】
発光層513に用いることができる蛍光性化合物として、緑色の発光材料、黄色の発光材料又は赤色の発光材料が挙げられる。緑色の発光材料には、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCABPhA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPAPA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)−2−アントリル]−N,N’,N’−トリフェニル−1,4−フェニレンジアミン(略称:2DPABPhA)、N−[9,10−ビス(1,1’−ビフェニル−2−イル)]−N−[4−(9H−カルバゾール−9−イル)フェニル]−N−フェニルアントラセン−2−アミン(略称:2YGABPhA)、N,N,9−トリフェニルアントラセン−9−アミン(略称:DPhAPhA)などがある。黄色の発光材料には、ルブレン、5,12−ビス(1,1’−ビフェニル−4−イル)−6,11−ジフェニルテトラセン(略称:BPT)などがある。赤色の発光材料には、N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)テトラセン−5,11−ジアミン(略称:p−mPhTD)、7,14−ジフェニル−N,N,N’,N’−テトラキス(4−メチルフェニル)アセナフト[1,2−a]フルオランテン−3,10−ジアミン(略称:p−mPhAFD)などがある。
【0045】
発光層513に用いることができる燐光性化合物として、緑色の発光材料、黄色の発光材料、橙色の発光材料又は赤色の発光材料が挙げられる。緑色の発光材料には、トリス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(ppy))、ビス(2−フェニルピリジナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(ppy)(acac))、ビス(1,2−ジフェニル−1H−ベンゾイミダゾラト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pbi)(acac))、ビス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bzq)(acac))、トリス(ベンゾ[h]キノリナト)イリジウム(III)(略称:Ir(bzq))などがある。
【0046】
黄色の発光材料には、ビス(2,4−ジフェニル−1,3−オキサゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(dpo)(acac))、ビス[2−(4’−パーフルオロフェニルフェニル)ピリジナト]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(p−PF−ph)(acac))、ビス(2−フェニルベンゾチアゾラト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(bt)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)−5−メチルピラジナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdppr−Me)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス{2−(4−メトキシフェニル)−3,5−ジメチルピラジナト}イリジウム(III)(略称:Ir(dmmoppr)(acac))などがある。
【0047】
橙色の発光材料には、トリス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)(略称:Ir(pq))、ビス(2−フェニルキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(pq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(3,5−ジメチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−Me)(acac))、および、(アセチルアセトナト)ビス(5−イソプロピル−3−メチル−2−フェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(mppr−iPr)(acac))などがある。
【0048】
赤色の発光材料には、ビス[2−(2’−ベンゾ[4,5−α]チエニル)ピリジナト−N,C3’]イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(btp)(acac))、ビス(1−フェニルイソキノリナト−N,C2’)イリジウム(III)アセチルアセトナート(略称:Ir(piq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス[2,3−ビス(4−フルオロフェニル)キノキサリナト]イリジウム(III)(略称:Ir(Fdpq)(acac))、(アセチルアセトナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(acac))、ジピバロイルメタナト)ビス(2,3,5−トリフェニルピラジナト)イリジウム(III)(略称:Ir(tppr)(dpm))、および、(2,3,7,8,12,13,17,18−オクタエチル−21H,23H−ポルフィリン白金(II)(略称:PtOEP)などの有機金属錯体がある。また、トリス(アセチルアセトナト)(モノフェナントロリン)テルビウム(III)(略称:Tb(acac)(Phen))、トリス(1,3−ジフェニル−1,3−プロパンジオナト)(モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(DBM)(Phen))、および、トリス[1−(2−テノイル)−3,3,3−トリフルオロアセトナト](モノフェナントロリン)ユーロピウム(III)(略称:Eu(TTA)(Phen))などの希土類金属錯体は、希土類金属イオンからの発光(異なる多重度間の電子遷移)であるため、燐光性化合物として用いることができる。
【0049】
上述した発光材料(ゲスト材料)が他の物質(ホスト材料)に分散された膜で発光層513を形成することができる。ホスト材料としては、発光材料よりも最低空軌道準位(LUMO準位)が高く、最高被占有軌道準位(HOMO準位)が低い物質を用いることが好ましい。例えば、ホスト材料として、複素環化合物、縮合芳香族化合物、芳香族アミン化合物を用いることができる。発光材料をホスト材料に分散させた膜で発光層513を形成することで、発光層513の結晶化の抑制、およびゲスト材料による濃度消光の抑制が可能になる。また、発光材料として複数種のホスト材料を用いることができる。
【0050】
ホスト材料としての複素環化合物には、例えば、Alq、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(III)(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(II)(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(III)(略称:BAlq)、ビス(8−キノリノラト)亜鉛(II)(略称:Znq)、ビス[2−(2−ベンゾオキサゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnPBO)、および、ビス[2−(2−ベンゾチアゾリル)フェノラト]亜鉛(II)(略称:ZnBTZ)などの金属錯体、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、2,2’,2’’−(1,3,5−ベンゼントリイル)トリス(1−フェニル−1H−ベンゾイミダゾール)(略称:TPBI)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、および、バソキュプロイン(略称:BCP)がある。
【0051】
ホスト材料としての縮合芳香族化合物には、例えば、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、3,6−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:DPCzPA)、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、9,9’−ビアントリル(略称:BANT)、9,9’−(スチルベン−3,3’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS)、9,9’−(スチルベン−4,4’−ジイル)ジフェナントレン(略称:DPNS2)、3,3’,3’’−(ベンゼン−1,3,5−トリイル)トリピレン(略称:TPB3)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、および、6,12−ジメトキシ−5,11−ジフェニルクリセンがある。
【0052】
ホスト材料としての芳香族アミン化合物には、例えば、N,N−ジフェニル−9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:CzA1PA)、4−(10−フェニル−9−アントリル)トリフェニルアミン(略称:DPhPA)、N,9−ジフェニル−N−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPA)、N,9−ジフェニル−N−{4−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]フェニル}−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:PCAPBA)、N−(9,10−ジフェニル−2−アントリル)−N,9−ジフェニル−9H−カルバゾール−3−アミン(略称:2PCAPA)、NPB(またはα−NPD)、TPD、DFLDPBi、およびBSPBがある。
【0053】
発光層513の発光材料として高分子化合物を用いることができる。例えば、緑色の発光材料として、ポリ(p−フェニレンビニレン)(略称:PPV)、ポリ[(9,9−ジヘキシルフルオレン−2,7−ジイル)−alt−co−(ベンゾ[2,1,3]チアジアゾール−4,7−ジイル)](略称:PFBT)、ポリ[(9,9−ジオクチル−2,7−ジビニレンフルオレニレン)−alt−co−(2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,4−フェニレン)]がある。橙色〜赤色の発光材料として、ポリ[2−メトキシ−5−(2’−エチルヘキソキシ)−1,4−フェニレンビニレン](略称:MEH−PPV)、ポリ(3−ブチルチオフェン−2,5−ジイル)(略称:R4−PAT)、ポリ{[9,9−ジヘキシル−2,7−ビス(1−シアノビニレン)フルオレニレン]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}、ポリ{[2−メトキシ−5−(2−エチルヘキシロキシ)−1,および4−ビス(1−シアノビニレンフェニレン)]−alt−co−[2,5−ビス(N,N’−ジフェニルアミノ)−1,4−フェニレン]}(略称:CN−PPV−DPD)がある。
【0054】
正孔注入層521は、正孔注入性の高い物質(以下、『正孔注入材料』と呼ぶ。)を含む層である。正孔注入材料には、金属酸化物、フタロシアニン系の化合物、芳香族アミン化合物、および高分子化合物(例えば、オリゴマー、デンドリマー、ポリマー)などを用いることができる。
【0055】
正孔注入材料としての金属酸化物には、モリブデン酸化物、チタン酸化物、バナジウム酸化物、レニウム酸化物、ルテニウム酸化物、クロム酸化物、ジルコニウム酸化物、ハフニウム酸化物、タンタル酸化物、銀酸化物、タングステン酸化物、およびマンガン酸化物などがある。
【0056】
正孔注入材料としてのフタロシアニン系化合物には、例えば、フタロシアニン(略称:HPc)、および銅(II)フタロシアニン(略称:CuPc)がある。
【0057】
正孔注入材料としての芳香族アミン化合物には、例えば、4,4’,4’’−トリス(N,N−ジフェニルアミノ)トリフェニルアミン(略称:TDATA)、4,4’,4’’−トリス[N−(3−メチルフェニル)−N−フェニルアミノ]トリフェニルアミン(略称:MTDATA)、4,4’−ビス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DPAB)、4,4’−ビス(N−{4−[N’−(3−メチルフェニル)−N’−フェニルアミノ]フェニル}−N−フェニルアミノ)ビフェニル(略称:DNTPD)、1,3,5−トリス[N−(4−ジフェニルアミノフェニル)−N−フェニルアミノ]ベンゼン(略称:DPA3B)、3−[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA1)、3,6−ビス[N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)−N−フェニルアミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCA2)、および3−[N−(1−ナフチル)−N−(9−フェニルカルバゾール−3−イル)アミノ]−9−フェニルカルバゾール(略称:PCzPCN1)がある。
【0058】
正孔注入材料としての高分子化合物には、例えば、ポリ(N−ビニルカルバゾール)(略称:PVK)、ポリ(4−ビニルトリフェニルアミン)(略称:PVTPA)、ポリ[N−(4−{N’−[4−(4−ジフェニルアミノ)フェニル]フェニル−N’−フェニルアミノ}フェニル)メタクリルアミド](略称:PTPDMA)、ポリ[N,N’−ビス(4−ブチルフェニル)−N,N’−ビス(フェニル)ベンジジン](略称:Poly−TPD)がある。また、これらの高分子化合物に、ポリ(3,4−エチレンジオキシチオフェン)/ポリ(スチレンスルホン酸)(PEDOT/PSS)、ポリアニリン/ポリ(スチレンスルホン酸)(PAni/PSS)などの酸を添加してもよい。
【0059】
正孔注入層521には、正孔輸送性の高い物質(以下、『正孔輸送材料』と呼ぶ。)にアクセプター性物質を含有させた複合材料でなる膜を用いることができる。正孔輸送材料として、芳香族アミン化合物、カルバゾール誘導体、芳香族炭化水素、高分子化合物(オリゴマー、デンドリマー、ポリマーなど)など、種々の有機化合物を用いることができる。このような複合材料でなる正孔注入層521は、正孔輸送材料とアクセプター性物質とを共蒸着することにより形成することができる。正孔輸送材料は電子よりも正孔の輸送性の高い物質であればよく、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有することが好ましい。以下に、10−6cm/Vs以上の正孔移動度を有する正孔輸送材料を記載する。
【0060】
正孔輸送材料としての芳香族アミン化合物には、例えば、TDATA、MTDATA、DPAB、DNTPD、DPA3B、PCzPCA1、PCzPCA2、PCzPCN1、NPB(α−NPD)、N,N’−ビス(3−メチルフェニル)−N,N’−ジフェニル−[1,1’−ビフェニル]−4,4’−ジアミン(略称:TPD)、および4−フェニル−4’−(9−フェニルフルオレン−9−イル)トリフェニルアミン(略称:BPAFLP)などがある。正孔輸送材料としてのカルバゾール誘導体には、4,4’−ジ(N−カルバゾリル)ビフェニル(略称:CBP)、1,3,5−トリス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]ベンゼン(略称:TCPB)、9−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:CzPA)、9−フェニル−3−[4−(10−フェニル−9−アントリル)フェニル]−9H−カルバゾール(略称:PCzPA)、および、1,4−ビス[4−(N−カルバゾリル)フェニル]−2,3,5,6−テトラフェニルベンゼンなどがある。
【0061】
正孔輸送材料としての芳香族炭化水素化合物には、例えば、2−tert−ブチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:t−BuDNA)、2−tert−ブチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、9,10−ビス(3,5−ジフェニルフェニル)アントラセン(略称:DPPA)、2−tert−ブチル−9,10−ビス(4−フェニルフェニル)アントラセン(略称:t−BuDBA)、9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン(略称:DNA)、9,10−ジフェニルアントラセン(略称:DPAnth)、2−tert−ブチルアントラセン(略称:t−BuAnth)、9,10−ビス(4−メチル−1−ナフチル)アントラセン(略称:DMNA)、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]−2−tert−ブチルアントラセン、9,10−ビス[2−(1−ナフチル)フェニル]アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(1−ナフチル)アントラセン、2,3,6,7−テトラメチル−9,10−ジ(2−ナフチル)アントラセン、9,9’−ビアントリル、10,10’−ジフェニル−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス(2−フェニルフェニル)−9,9’−ビアントリル、10,10’−ビス[(2,3,4,5,6−ペンタフェニル)フェニル]−9,9’−ビアントリル、アントラセン、テトラセン、ルブレン、ペリレン、2,5,8,11−テトラ(tert−ブチル)ペリレン、ペンタセン、コロネン、4,4’−ビス(2,2−ジフェニルビニル)ビフェニル(略称:DPVBi)、および、9,10−ビス[4−(2,2−ジフェニルビニル)フェニル]アントラセン(略称:DPVPA)がある。
【0062】
また、アクセプター性物質として、7,7,8,8−テトラシアノ−2,3,5,6−テトラフルオロキノジメタン(略称:F−TCNQ)、クロラニルなどの有機化合物や、遷移金属酸化物を用いることができる。特に、第4族乃至第8族の遷移金属酸化物(例えば、酸化バナジウム、酸化ニオブ、酸化タンタル、酸化クロム、酸化モリブデン、酸化タングステン、酸化マンガン、および酸化レニウム)はアクセプター性が高いため好ましい。
【0063】
また、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPDなどの高分子化合物と上述したアクセプター性物質との複合材料で正孔注入層521を形成することができる。
【0064】
正孔輸送層522は、正孔輸送材料を含む層である。正孔輸送層522に用いられる正孔輸送材料としては、例えば、NPB、TPD、BPAFLP、4,4’−ビス[N−(9,9−ジメチルフルオレン−2−イル)−N−フェニルアミノ]ビフェニル(略称:DFLDPBi)、および、4,4’−ビス[N−(スピロ−9,9’−ビフルオレン−2−イル)−N―フェニルアミノ]ビフェニル(略称:BSPB)などの芳香族アミン化合物がある。さらに、正孔輸送材料として、CBP、CzPA、PCzPAのようなカルバゾール誘導体、t−BuDNA、DNA、DPAnthなどのアントラセン誘導体、ならびに、PVK、PVTPA、PTPDMA、Poly−TPDなどの高分子化合物を用いることもできる。
【0065】
電子輸送層524は、電子輸送性の高い物質(以下『電子輸送材料』と呼ぶ。)を含む層である。電子輸送材は1 ´10−6cm/Vs以上の電子移動度を有する物質が好ましい。電子輸送材料には、例えば、トリス(8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Alq)、トリス(4−メチル−8−キノリノラト)アルミニウム(略称:Almq)、ビス(10−ヒドロキシベンゾ[h]キノリナト)ベリリウム(略称:BeBq)、ビス(2−メチル−8−キノリノラト)(4−フェニルフェノラト)アルミニウム(略称:BAlq)などの、キノリン骨格またはベンゾキノリン骨格を有する金属錯体がある。また、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾオキサゾラト]亜鉛(略称:Zn(BOX))、ビス[2−(2−ヒドロキシフェニル)ベンゾチアゾラト]亜鉛(略称:Zn(BTZ))などのオキサゾール系、チアゾール系配位子を有する金属錯体がある。金属錯体以外の物質では、2−(4−ビフェニリル)−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール(略称:PBD)や、1,3−ビス[5−(p−tert−ブチルフェニル)−1,3,4−オキサジアゾール−2−イル]ベンゼン(略称:OXD−7)、3−(4−ビフェニリル)−4−フェニル−5−(4−tert−ブチルフェニル)−1,2,4−トリアゾール(略称:TAZ)、バソフェナントロリン(略称:BPhen)、バソキュプロイン(略称:BCP)などがある。
【0066】
電子注入層525は、電子注入性の高い物質(以下、『電子注入材料』と呼ぶ。)を含む層である。電子注入材料として、リチウム、セシウム、カルシウム、フッ化リチウム、フッ化セシウム、フッ化カルシウム、およびリチウム酸化物などのアルカリ金属、アルカリ土類金属、アルカリ金属化合物、アルカリ土類金属化合物、ならびに、フッ化エルビウムなどの希土類金属化合物を用いることができる。また、電子注入層525を上述した電子輸送層524の材料で形成することができる。
【0067】
OLED層540に、電子注入層525の代わりに、電子注入バッファー層、電子リレー層を設けてもよい。図7Bに、電子注入バッファー層および電子リレー層を有する有機EL素子の積層構造の一例を示す。図7Bに示すように、有機EL素子502は、電子輸送層524と電極512の間に、電子注入バッファー層531および電子リレー層532を有する。さらに、電極512に接して複合材料層533が形成されている。各層(531、532、533)は、電極512から電子輸送層524間の電子の移動を容易にし、有機EL素子502の駆動電圧を低減するために形成される。
【0068】
電極512と接する複合材料層533を設けることで、電極512を形成する際にOLED層540が受けるダメージを低減することができる。電極512をスパッタリング法で形成する場合のダメージ低減に、複合材料層533の存在は非常に有効である。複合材料層533は、上述した正孔輸送層522に用いられる正孔輸送材料にアクセプター物質を含有する複合材料で形成することができる。
【0069】
電子注入バッファー層531は、複合材料層533と電子輸送層524と間の注入障壁を緩和するために設けられ、電子注入材料で形成することができる。この電子注入材料には、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属化合物(酸化リチウムなどの酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウムなどの炭酸塩)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩)、および希土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩)などがある。
【0070】
また、電子注入バッファー層531を電子輸送材料とドナー性物質との複合材料で形成することができる。この場合は、電子輸送材料に対して、質量比で0.001以上0.1以下の比率でドナー性物質を添加することが好ましい。ドナー性物質には、例えば、アルカリ金属、アルカリ土類金属、希土類金属、アルカリ金属化合物(酸化リチウムなどの酸化物、ハロゲン化物、炭酸リチウムや炭酸セシウムなどの炭酸塩)、アルカリ土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩む)、希土類金属化合物(酸化物、ハロゲン化物、炭酸塩)、ならびにテトラチアナフタセン(略称:TTN)、ニッケロセン、デカメチルニッケロセンなどの有機化合物がある。また、電子注入バッファー層531の電子輸送材料には、電子輸送層524に適用される電子輸送材料と同じ材料を用いることができる。
【0071】
電子注入バッファー層531と複合材料層533との間に、電子リレー層532を形成することが好ましい。図7Bのように複合材料層533と電子注入バッファー層531との間に電子リレー層532を挟むことで、複合材料層533のアクセプター性物質と、電子注入バッファー層531のドナー性物質とが相互作用を受けにくくなり、互いの機能が阻害されにくい構造にすることができる。
【0072】
電子リレー層532は電子輸送材料を含む層である。この電子輸送材料には、そのLUMO準位が、複合材料層533に含まれるアクセプター性物質のLUMO準位と、電子輸送層524に含まれる電子輸送材料のLUMO準位との間の材料が選択される。このような電子輸送性材料には、例えば、フタロシアニン系の材料、および金属−酸素結合と芳香族配位子を有する金属錯体がある。
【0073】
フタロシアニン系材料には、例えば、CuPc、SnPc(Phthalocyanine tin(II) complex)、ZnPc(Phthalocyanine zinc complex)、CoPc(Cobalt(II)phthalocyanine, β−form)、FePc(Phthalocyanine Iron)およびPhO−VOPc(Vanadyl 2,9,16,23−tetraphenoxy−29H,31H−phthalocaynine)がある。
【0074】
金属錯体は金属−酸素の二重結合を有する金属錯体が好ましく、また、フタロシアニン系材料が好ましい。このような金属錯体として、例えば、PhO−VOPc、VOPc(Vanadyl phthalocyanine)、SnOPc(Phthalocyanine tin(IV) oxide complex)、およびTiOPc(Phthalocyanine titanium oxide complex)がある。
【0075】
電子リレー層532にドナー性物質を添加することができる。このドナー性物質には電子注入バッファー層531に添加できるドナー性物質と同じ材料を用いることができる。電子リレー層532にドナー性物質を含ませる場合、電子リレー層532の電子輸送材料としては上述した物質以外に、複合材料層533のアクセプター性物質のアクセプター準位より高いLUMO準位を有する物質を用いることができる。具体的には、−5.0eV以上、好ましくは−5.0eV以上−3.0eV以下の範囲にLUMO準位を有する物質が、電子輸送材料として好ましい。このような物質にはペリレン誘導体や、含窒素縮合芳香族化合物などがある。
【0076】
ペリレン誘導体には、例えば、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸二無水物(略称:PTCDA)、3,4,9,10−ペリレンテトラカルボキシリックビスベンゾイミダゾール(略称:PTCBI)、N,N’−ジオクチル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:PTCDI−C8H)、および、N,N’−ジヘキシル−3,4,9,10−ペリレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:Hex PTC)がある。
【0077】
含窒素縮合芳香族化合物には、例えば、ピラジノ[2,3−f][1,10]フェナントロリン−2,3−ジカルボニトリル(略称:PPDN)、2,3,6,7,10,11−ヘキサシアノ−1,4,5,8,9,12−ヘキサアザトリフェニレン(略称:HAT(CN))、2,3−ジフェニルピリド[2,3−b]ピラジン(略称:2PYPR)、および、2,3−ビス(4−フルオロフェニル)ピリド[2,3−b]ピラジン(略称:F2PYPR)がある。
【0078】
これらの物質の他に、電子輸送材料には、例えば、7,7,8,8,−テトラシアノキノジメタン(略称:TCNQ)、1,4,5,8,−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物(略称:NTCDA)、パーフルオロペンタセン、銅ヘキサデカフルオロフタロシアニン(略称:F16CuPc)、N,N’−ビス(2,2,3,3,4,4,5,5,6,6,7,7,8,8,8−ペンタデカフルオロオクチル−1,4,5,8−ナフタレンテトラカルボン酸ジイミド(略称:NTCDI−C8F)、3’,4’−ジブチル−5,5’’−ビス(ジシアノメチレン)−5,5’’−ジヒドロ−2,2’:5’,2’’−テルチオフェン)(略称:DCMT)、および、メタノフラーレン(例えば、[6,6]−フェニルC61酪酸メチルエステルなど)がある。
【0079】
有機EL素子にはOLED層を複数積層してもよい。図7Cに、複数のOLED層を備えた有機EL素子の構成例を示す。図7Cに示すように、有機EL素子503は、2つのOLED層540を有する。OLED層540を2層以上積層する場合は、隣接する2つのOLED層540の間に、電荷発生層535を設けることが好ましい。電荷発生層535は正孔注入層521と同じ複合材料で形成することができる。また、電荷発生層535はこの複合材料からなる層と他の材料からなる層との積層膜で形成することができる。この場合、複合材料層以外の層(前記他の材料からなる層)は、ドナー性物質と電子輸送材料との複合材料層や、電極511に用いることができる透光性の導電膜(例えば、酸化亜鉛膜、ITO膜)などで形成することができる。いずれにしても、電荷発生層535は、一方のOLED層に正孔を注入し、他方のOLED層に電子を注入する機能を有することが好ましい。なお、複数種類の層で電荷発生層535を形成することで、複数のOLED層540を備えた有機EL素子のキャリアバランスを向上させ、効率を高めることができる。このため、OLED層540の材料の選択の幅が広がる。
【0080】
本実施の形態は、他の実施の形態と適宜組み合わせることが可能である。
【0081】
(実施の形態3)
本実施の形態では、図8、図9A−図9Dを用いて照明装置の応用例を説明する。
【0082】
図8は照明装置10が適用された室内用照明装置を説明する図である。照明装置10は、例えば、天井用照明装置801、壁用照明装置802、卓上照明装置803に適用できる。照明装置10は、発光領域が広く、平面状(ボード状)にすることができるので、天井用照明装置801、壁用照明装置802、卓上照明装置803、床用照明装置に非常に好適である。なお、図8には住居用の照明装置の例を示したが、自動車、列車、航空機などの室用照明装置にも照明装置10を適用することが可能である。
【0083】
照明装置10は平面状(ボード状)なため、看板、標識などを背面から照らす光源に好適である。このような実施態様の一例として、図9Aに避難口誘導灯811を示す。避難口誘導灯811の標識部(文字、ピクトグラムなど)は照明装置の照明光を透過するように設けられている。また、液晶パネルのバックライトとして、照明装置10を用いることもできる。
【0084】
照明装置10は屋外用照明の光源に適用することができる。このような実施態様の一例として、図9Bに街灯821を示す。街灯821の光源822に実照明装置10が用いられる。
【0085】
照明装置10は、携帯ができる、または身体に装着できる小型の照明装置の光源に適用することができる。このような実施態様の一例として、図9Cに装着型ライトの構成例を示す。図9Cに示すように、装着型ライト831は、装着部832と、装着部832に固定されている光源833を有する。光源833に照明装置10が用いられる。図9Cの装着型ライト831は、ヘルメット型の装着部832を備えているが、このような構成に限定されない。例えば、伸縮性のベルトで装着部832を構成とすることもできる。
【0086】
図9Dに手持ち型ライトの構成例を示す。図9Dに示すように、手持ち型ライトは筐体841、光源843、およびスイッチ842を有する。光源843に照明装置10が用いられる。スイッチ842により、光源843の点灯、および明るさの調節を行う。
【符号の説明】
【0087】
10 照明装置
11 照明装置
12 照明装置
13 照明装置
100 有機EL発光装置
101 有機EL素子
111 電極
112 電極
113 発光層
131 基板
132 基板
135 シール材
140 乾燥剤
150 OLED光
200 LED
231 基板
250 LED光
501 有機EL素子
502 有機EL素子
503 有機EL素子
511 電極
512 電極
513 発光層
521 正孔注入層
522 正孔輸送層
524 電子輸送層
525 電子注入層
531 電子注入バッファー層
532 電子リレー層
533 複合材料層
535 電荷発生層
540 OLED層
550 OLED光
801 天井用照明装置
802 壁用照明装置
803 卓上照明装置
811 避難口誘導灯
821 街灯
822 光源
831 装着型ライト
832 装着部
833 光源
841 手持ち型ライト
842 筐体
843 光源
844 スイッチ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機EL素子を含む複数の発光装置と、複数の発光ダイオードとを有する照明装置であって、
前記複数の発光装置は、第1の基板、第2の基板、シール材、および前記有機EL素子を有し、
前記有機EL素子は、前記第1の基板、前記第2の基板および前記シール材により封止され、
前記複数の発光ダイオードは、前記複数の発光装置と重ならないように前記複数の発光装置の背面に設けられている照明装置。
【請求項2】
有機EL素子を含む複数の発光装置と、複数の発光ダイオードとを有する照明装置であって、
前記複数の発光装置は、第1の基板、第2の基板、シール材、および前記有機EL素子を有し、
前記有機EL素子は、前記第1の基板、前記第2の基板および前記シール材により封止され、
前記複数の発光ダイオードは、前記複数の発光装置と重ならないように前記複数の発光装置の前面に設けられている照明装置。
【請求項3】
請求項1および2において、
前記発光ダイオードは発光波長のピークが400nm以上500nm以下であり、
前記有機EL素子の発光色は、前記発光ダイオードの発光色の補色である照明装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−151101(P2012−151101A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−280641(P2011−280641)
【出願日】平成23年12月22日(2011.12.22)
【出願人】(000153878)株式会社半導体エネルギー研究所 (5,264)
【Fターム(参考)】