説明

煮魚の製造方法

【課題】 魚の煮崩れを防止し、均質一な煮魚を製造できると共に、一度に多量の煮魚を製造することが可能な煮魚の製造方法を提供すること。
【解決手段】 上面開口の容器4内の煮汁3に魚2を浸漬状態として飽和蒸気により蒸煮する蒸煮工程を含むことを特徴とする。また、煮汁3を入れる容器4に直接魚2を入れることを特徴とする。さらに、前記容器が魚を入れる上面開口の穴開きの第一容器31と、この第一容器31を収容するとともに煮汁を入れる上面開口の第二容器36とを含む
ことを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、煮魚の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
この種煮魚の製造方法として、魚の身のくずれを防止する方法が特許文献1にて提案されている。この特許文献1に記載の方法は、耐熱容器内に煮汁とともに魚を入れ、この容器を火にかけて煮るものである。
【0003】
【特許文献1】特開平7−95865号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
前記の従来例方法によると、加熱の際に煮汁が沸騰して、魚の身が崩れる虞がある。また、煮汁が容器外へ溢れるため、均質な煮魚の調理が行えないとともに、一度に多量の煮魚を製造できないという課題があった。
この発明は、魚の煮崩れを防止し、均質一な煮魚を製造できるとともに、一度に多量の煮魚を製造することが可能な煮魚の製造方法を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0005】
この発明は、前記の課題を解決するためになされたもので、請求項1に記載の発明は、上面開口の容器内の煮汁に魚を浸漬状態とし、飽和蒸気により蒸煮することを特徴としている。
【0006】
請求項2に記載の発明は、請求項1において、煮汁を入れる容器に直接魚を入れることを特徴としている。
【0007】
さらに、請求項3に記載の発明は、請求項1において、前記容器が魚を入れる上面開口の穴開きの第一容器と、この第一容器を収容するとともに煮汁を入れる上面開口の第二容器とを含むことを特徴としている。
【発明の効果】
【0008】
この発明によれば、上面開口の容器内に入れた煮汁に魚を浸漬して飽和蒸気により蒸煮するものであるから、前記容器内の煮汁が沸騰を生ずることがない。このため、魚の煮崩れを防止できるとともに、多めに煮汁を入れて蒸煮しても煮汁が前記容器外へ溢れることがないので、均質な煮魚を製造することができる。また、多数の容器を一度に蒸煮することができるので、一度に多量の煮魚を製造することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
(実施の形態)
つぎに、この発明の実施の形態について説明する。この実施の形態は、上面開口の容器内の煮汁に魚を浸漬として飽和蒸気により蒸煮する蒸煮工程を含むことを特徴とする煮魚の製造方法である。
【0010】
この実施の形態においては、上面開口の容器内の煮汁に魚を浸漬状態とする。その後、この容器毎を飽和蒸気により加熱する。飽和蒸気による加熱によれば、前記容器内の煮汁が飽和蒸気温度以上となることがなく、煮汁が沸騰することがないので、沸騰による魚の煮崩れおよび煮汁が前記容器外へ溢れ出すことを防止できる。
【0011】
この実施の形態によれば、魚の煮崩れを防止できるので、高品質の煮魚を製造することができる。また、前記容器から溢れ出す煮汁の量を零または極めて少ない量とすることができるので、煮汁の減少による調理品質の不均一さを抑制でき、均質な煮魚を製造することができる。また、火による直接加熱でなく、飽和蒸気による加熱を行うので、前記容器を多数用意すれば一度に多数の容器を加熱することができ、一度に多量の煮魚を製造することができる。
【0012】
さらに、この実施の形態の構成について説明する。前記容器は、皿またはトレーと称することができるものであり、耐熱性の材質からなり、魚と煮汁を入れることができる開口を上面に設けたものであれば、形状は限定されない。耐熱性の材質としては、好ましくは、120℃程度の蒸煮に耐えれることのできる合成樹脂とする。具体的には、PPフィラー(ポリプロピレンにタルクや炭酸カルシウムを混ぜて耐熱性を高めたもの)とすることができる。この実施の形態においては、直火による加熱でなく、飽和蒸気による蒸煮であるので、合成樹脂が使用でき、そうすることにより、そのまま最終商品としての配送容器として使用できる。
【0013】
また、この容器は、配送用の包装容器を兼用するものであって良いし、兼用しないものであっても良い。包装容器を兼用する場合には、煮汁を入れる容器に直接魚を入れることになる。また、この容器に収容する魚の数は、1または複数とすることができる。この1または複数は、魚が丸ごとの場合の1匹または複数匹と、切り身の場合の1切れまたは複数切れを含む概念である。
【0014】
前記容器内の煮汁内に魚を浸漬する方法は、魚を入れた後煮汁を入れる方法、煮汁を入れた状態で魚を入れる方法、魚と煮汁とを同時に入れる方法のいずれであっても良い。
【0015】
また、前記容器を包装用の容器と兼用しない場合は、耐熱性の上面開口を有するざる状の穴開き容器に魚を入れ、この穴開き容器ごと、第二の容器内の煮汁に浸漬するように構成することができる。すなわち、この場合は、前記容器が魚を入れる上面開口の穴開きの第一容器と、この第一容器を収容するとともに煮汁を入れる上面開口の第二容器とから構成される。この構成において、煮汁と前記第一容器との前記第二容器へ入れる順序は、いずれが先であっても、また同時であっても良い。前記穴開き容器とは、周壁に多数の煮汁が通過可能な小穴を有するものをいう。
この小穴は、好ましくは多数とするが、一つであっても良い。
【0016】
前記第一容器は、冷凍された複数の魚を入れて解凍する際に用いることができる。また、この第一容器は、解凍後の魚を沸騰した湯に通す湯通しの際の容器としても用いることができる。
【0017】
前記容器を包装用(配送用)の容器と兼用しない場合の煮汁は、殆ど味のない煮汁とすることができ、前記容器を包装用の容器と兼用する場合には、所定の味付きの煮汁とすることができる。
【0018】
前記容器を蒸煮する飽和蒸気は、好ましくは、約80℃〜120℃とするが、これに限定されない。この蒸煮には、蒸煮と真空冷却を行う蒸煮冷却機を用いることが好ましい。この蒸煮冷却機によれば、蒸煮後直ちに真空冷却を行うことができ、煮魚製造時間の短縮を可能とする。
【0019】
この実施の形態は、つぎの形態1および形態2を含む。
(1)形態1
この形態1は、上面開口の耐熱性の容器に魚を入れる魚入れ工程と、前記容器内に煮汁を入れる煮汁入れ工程と、前記魚入れ工程および煮汁入れ工程後の前記容器を飽和蒸気により蒸煮する蒸煮工程と、この蒸煮工程後の容器を真空冷却する真空冷却工程と、この真空冷却工程後の前記容器を包装する包装工程とを含む煮魚の製造方法を特徴とする。
【0020】
この形態1は、前記容器を蒸煮工程からから包装工程まで単一の容器を用いる点に特徴を有している。こうすることにより魚を前記容器から取り出すことなく商品として配送できるので、魚を取り出すことによる身の崩れを無くすることができる。
【0021】
(2)形態2
この形態2は、上面開口の耐熱性の穴開き第一容器に魚を入れる魚入れ工程と、前記第一容器を耐熱性の第二容器内に入れ、この第二容器内に煮汁を入れる煮汁入れ工程と、この煮汁入れ工程後の第二容器を飽和蒸気により蒸煮する蒸煮工程と、この蒸煮工程後の容器から粗熱を取る粗熱取り工程と、前記第二容器から前記第一容器を取り出し、第三容器内の味付け用汁(かけダレ)に浸漬する味付け用汁入れ工程と、この味付け用汁入れ工程後の第三容器を真空冷却する真空冷却工程と、この真空冷却後に魚を包装する包装工程とを含む煮魚の製造方法を特徴とする。
【0022】
この形態2において、好ましくは、煮汁と味付け用汁とを別の汁とするが、同じ汁を用いることも可能である。この形態2において、前記蒸煮工程と前記粗熱取り工程を同じ蒸煮冷却機で行い、前記真空冷却工程を前記蒸煮冷却機と別の真空冷却機により行うことができる。こうすることにより、前記蒸煮冷却機の減圧手段の能力を小さくすることができる。
【0023】
この形態2における包装工程における包装方法は、つぎの方法1〜方法3を含む。
前記方法1は、前記第一容器を前記第三容器から取り出し、第一容器内の魚を1または複数ずつ第四容器(配送用容器)へ移して収容し、前記第四容器ごと包装する方法である。前記方法2は、前記第一容器を前記第三容器から取り出し、前記第一容器ごと前記第四容器に収容して包装する方法である。前記方法3は、前記第四容器を用いることなく、前記第一容器を入れたままの前記第三容器ごと包装する方法である。蒸煮後身が柔らかくなる魚には方法2または方法3が好適であり、身が柔らかくならない魚には方法1が好適である。
【0024】
この形態2によれば、前記第一容器を用いて多数の魚を蒸煮から真空冷却まで一度に処理することができ、魚の身が崩れる可能性を低減できるとともに、処理効率を向上できる。
【実施例1】
【0025】
以下、この発明の具体的実施例1を図面に基づいて詳細に説明する。図1は、実施例1の概略構成を示すフロー図であり、図2は同実施例1に用いられる蒸煮冷却機1の概略構成を示す図である。
【0026】
この実施例1の煮魚製造方法を説明する前に、図2に従い前記蒸煮冷却機1について説明する。この蒸煮冷却機1は、魚2を煮汁3に浸漬状態とした複数の容器4,4,…を収容する調理室5、前記調理室5内へ飽和蒸気を供給して前記各容器4を加熱する加熱手段としての給蒸手段6、前記調理室5内の蒸気を排出する排蒸手段7、前記調理室5内を吸引排気する減圧手段8、減圧された前記調理室5へ外気を導入することにより復圧する復圧手段9を主要部として備えている。そして、前記調理室5内に溜まったドレンを排出するドレン排出手段10、前記調理室4内圧力を検出する圧力センサ11を備えている。
【0027】
前記各容器4は、上面に開口12を有し、約120℃程度の耐熱性の合成樹脂製の包装用容器を兼用した容器であり、棚13,13,…に載置される
【0028】
前記調理室5は、前記各容器4の出し入れのための扉(符号省略,図1では、紙面の奥側に設けている)を備え、内部を大気圧以下から大気圧以上の飽和蒸気で加熱するために、耐圧性の圧力容器として形成している。
【0029】
前記給蒸手段6は、一端を前記調理室5に接続し、リボイラからなる蒸気発生源(図示省略)からの飽和蒸気を前記調理室5内へ供給するための給蒸ライン(配管)14,飽和蒸気の供給を制御する蒸気制御弁15,前記給蒸ライン14に設けられ前記調理室5内へ飽和蒸気を噴出する蒸気ノズル16を含んで構成される。この蒸気ノズル16は、省略可能である。
【0030】
前記排蒸手段7は、蒸煮終了後、蒸気を前記調理室5外へ排出するとともに、無圧蒸煮時に蒸気を前記調理室5外へ排出するために使用されるもので、一端を前記調理室5と接続し、前記調理室5内の蒸気を室外へ排出する排蒸ライン17、排蒸を制御する排蒸制御弁18を含んで構成されている。前記ドレン排出手段10は、前記調理室5内に溜まったドレンを排出するためのもので、一端を前記調理室5に接続し前記調理室5内底部に溜まったドレンを室外へ排出するドレンライン19、ドレンが溜まったのを検知して開くドレントラップ20、ドレンの排出を制御するドレン制御弁21を含んで構成されている。
【0031】
前記減圧手段8は、真空吸引用の減圧ライン22とこれに設けるエゼクタ,熱交換器,真空ポンプ(いずれも図示省略)の一つまたは複数を組み合わせて構成される減圧器23を含んで構成される。前記復圧手段9は、一端を前記調理室5と接続した外気導入ライン24、このライン24中に設ける外気導入制御弁25、空気清浄用フィルタ26および逆止弁27を含んで構成されている。
【0032】
前記各制御弁15,18,21,25,前記減圧手段8および前記圧力センサ11は、制御器28と接続される。前記制御器28は、前記圧力センサ11などからの信号を入力し、所定の処理手順(調理プログラム)に従い、前記各制御弁15,18,21,25,および前記減圧手段8を制御するように構成されている。
【0033】
前記調理プログラムは、前記処理室内の空気を排除する空気排除工程,空気排除工程後に前記調理室内へ飽和蒸気を供給して所定圧力に制御しながら加熱調理する蒸煮工程,蒸煮工程後に前記調理室内の蒸気を排出し、大気圧に復圧する復圧工程、復圧工程後に前記調理室内を真空冷却する真空冷却工程などを含む。
【0034】
以上の構成の蒸煮冷却機1を用いた実施例1の煮魚の製造方法について、図1および図2に従い説明する。
【0035】
図1を参照して、まず、魚2を前記容器4内に入れる魚入れ工程(S1)を行う。この工程では、冷凍していない魚2,または解凍後の魚2を前記各容器4内に収容する。ついで、この容器4内に煮汁3を注入する煮汁入れ工程を行う。この実施例1では、前記蒸煮冷却機1内へ前記各容器4を収容する前に煮汁3を注入するが、前記蒸煮冷却機1内へ前記各容器4を収容後、煮汁3を注入するように構成することができる。この煮汁3の注入は、前記蒸煮冷却機1に自動注入装置(図示省略)を具備して行うことができる。
【0036】
前記二つの工程S1,S2により、魚2を煮汁3内へ浸漬状態とした各容器4を図2に示すように、前記蒸煮冷却機1内へ収容し、蒸煮冷却機1による蒸煮工程(S3)を行う。
【0037】
この蒸煮工程は、前記制御器28により制御される。まず、前記空気排除工程を行った後、前記蒸気制御弁14を開き、飽和蒸気による蒸煮工程を開始する。前記制御器28は、前記調理室5内圧力(温度)が設定値圧力(温度)となるように前記蒸気制御弁15の開閉を制御して蒸煮工程を行う。大気圧以上で蒸煮する場合には、前記ドレン制御弁21を開いたまま蒸煮を行い、大気圧以下で蒸煮する場合は、前記ドレン制御弁21は閉じておく。
【0038】
この蒸煮工程においては、飽和蒸気により加熱されるために、煮汁3の沸騰を生ずることがない。このため、魚2の身の煮くずれを生ずることが無く、質の高い煮魚を製造できる。また、煮汁3が前記各容器4外へ溢れ出すことがない。その結果、前記各容器4内の煮汁の量がほぼ一定となり、魚2の調理状態を均質にすることができる。また、煮汁3がこぼれないので、煮汁を節約できるとともに、前記調理室5内を清潔に保つことができ、衛生的である。
【0039】
この蒸煮工程が終了すると、前記排蒸制御弁18および前記ドレン制御弁21を開き、前記調理室5内の蒸気を排出する、または排蒸制御弁18および前記ドレン制御弁21を閉じて、前記復圧制御弁25を開き、前記減圧手段8を作動させることにより、前記調理室5内の蒸気を排出し、大気圧に復圧する復圧工程を行う。
【0040】
この復圧工程が終了すると、真空冷却工程(S4)を行う。前記制御器28は、前記前記給蒸制御弁15,前記排蒸制御弁18および前記ドレン制御弁21を閉じて、前記減圧手段8を作動させ、魚2および煮汁3の入った各容器4を真空冷却する。この真空冷却は、前記各容器4が約10℃〜20℃となるまで続けられる。この真空冷却工程は、別の真空冷却機(図示省略)により冷却する場合は、粗熱取りのための冷却工程とすることができる。粗熱取りの冷却の場合は、約50〜60℃まで冷却される。
【0041】
前記真空冷却工程(S4)を終えると、前記復圧工程と同様にして前記調理室5内を復圧し、前記扉を開いて、前記各容器4を前記蒸煮冷却機1から取り出す。取り出した前記各容器4の各開口12を蓋(図示省略)にて密閉し、公知の包装機(図示省略)により合成樹脂フィルムなどにより全体を包装する包装工程(S5)を行う。この包装工程においては、前記蓋を用いることなく包装するように構成することができる。
【0042】
この実施例1によれば、前記のように煮崩れがなく、均質な煮魚を製造できる。また、調理の過程において、魚を前記容器4から取り出すことが無いので、魚の身の崩れを生ずることがなく、見栄えの良好な煮魚を提供できる。また、蒸煮冷却機1により蒸煮を行うので、蒸煮冷却機1の容量および前記容器4の数を多くすることにより一度に多量の煮魚を製造することが可能となる。さらに、合成樹脂の容器4とすることにより、軽量、安価で取り扱いが容易となる。
【実施例2】
【0043】
つぎに、この発明の他の実施例2を図3〜図8に従い説明する。この実施例2において、使用する蒸煮冷却機1は、前記実施例1のものと同じであり、その他の構成要素についても前記実施例1と同じ構成要素は同じ符号を付して説明を省略する。以下、実施例2において実施例1と異なる構成について説明する。
【0044】
この実施例2の煮魚の製造方法は、図3のフローにより行われる。まず、冷凍した魚2を解凍する解凍工程(S11)を行う。解凍工程の前処理として冷凍され袋詰めされた複数の魚2,2,…を袋(図示省略)から取り出してざる状の耐熱性の穴開き第一容器(魚収容容器)31内に収容する。この第一容器31は、図5に示すように、上面に第一開口
32を有し、側壁33および底壁34に煮汁3の流通を許容する多数の小穴35,35,…を形成している。そして、前記実施例1の容器4に相当する第二容器(魚および煮汁収容容器)36の第二開口37の上端に係止される係止部38を形成している。この係止部38は、取っ手兼用としている。
【0045】
前記解凍工程は、前記第一容器31ごと真空蒸気解凍装置(図示省略)を用いて真空蒸気解凍により行う。しかしながら、この解凍工程は、温水噴霧による解凍など種々の解凍方法で解凍を行うことができる。
【0046】
解凍工程を終えると、湯通し工程(S12)を行う。この工程は、沸騰した湯の中に前記第一容器31ごと通した後、同容器31を取り出す処理である。この工程の目的は、魚2の皮や脂に含まれている生臭みの成分を湯に溶かし出し、また揮発させることによって生臭みを取ること、表面の蛋白変性を急速に行って旨み成分の流出を防ぐことにある。
【0047】
つぎは、煮汁入れ工程(S13)を行う。この煮汁入れ工程は、図6に示すように、解凍した魚3を収容した前記第一容器31を前記第二容器36内に収容して煮汁3を前記第二容器36内に入れる。この煮汁3は、薄味の煮汁で味付けを主たる目的とせず、煮ることを主たる目的とするだし汁である。
【0048】
煮汁入れ工程のつぎは、蒸煮工程(S14)を行う。この工程は、前記実施例1の蒸煮工程(S3)と同様であるので、説明を省略する。
【0049】
ついで、粗熱取り工程(S15)を行う。この粗熱取り工程では、収容物を含む前記第二容器36の粗熱を取る工程であり、約50℃になるまで冷却する。
【0050】
この粗熱取り工程後に、味付け用汁入れ工程(S16)を行う。この工程は、図7に示す味付け用汁(調味液)39を収容した第三容器40内へ蒸煮済の魚2を収容した前記第一容器31を収容する。この第三容器40は、上面に第四開口41を形成しており、耐熱性を要求されないが、前記第二容器36と同じものを使用することもできる。
【0051】
味付け用汁入れ工程を終えると、前記第三容器40ごとを前記蒸煮冷却機1と別の真空冷却機(図示省略)内に入れ真空冷却する真空冷却工程(S17)を行う。前記蒸煮冷却機1の真空冷却能力が大きい場合、この真空冷却工程を前記蒸煮冷却機1にて行うこともできる。
【0052】
真空冷却工程後の包装工程(S18)は、前記実施例1の包装工程(S5)と同様の包装工程である。この包装工程(S5)と異なるのは、前記第三容器40から前記第一容器31を取り出し、この第一容器31内の魚2を包装用の第四容器42内へ収容する点である。魚2を収容後、前記第四容器42の上面に形成した第四開口43に蓋44をして、全体を合成樹脂フィルムにより包装する点は、前記包装工程(S5)と同様である。この第四容器42内には味付け用汁39を必要に応じて少量入れておくことができるが、食べる時にかける袋入りタレ(図示省略)を入れておくこともできる。
【0053】
この実施例2によれば、実施例1と同様に、煮崩れがなく、均質な煮魚を製造できる。また、最終の包装工程までは、魚を前記第一容器31から取り出すことが無いので、魚の崩れの発生を少なくできる。また、蒸煮冷却機1により蒸煮を行うので、前記実施例1と同様に、一度に多量の煮魚を製造することが可能となる。さらに、前記第一容器31を用いて一度に多量の魚3の解凍から真空冷却迄の処理を行うことができるので、処理効率が向上する。
【図面の簡単な説明】
【0054】
【図1】本発明の実施例1の製造方法を説明する図である。
【図2】同実施例1に使用する蒸煮冷却機1の概略構成を示す説明図である。
【図3】本発明の実施例2の製造方法を説明する図である。
【図4】同実施例2に使用する蒸煮冷却機1の概略構成を示す説明図である。
【図5】同実施例2に製造過程の一態様を示す説明図である。
【図6】同実施例2に製造過程の他の態様を示す説明図である。
【図7】同実施例2に製造過程の他の態様を示す説明図である。
【図8】同実施例2に製造過程の他の態様を示す説明図である。
【符号の説明】
【0055】
1 蒸煮冷却機
2 魚
3 煮汁
4 容器
31 第一容器
36 第二容器

【特許請求の範囲】
【請求項1】
上面開口の容器内の煮汁に魚を浸漬状態とし、飽和蒸気により蒸煮することを特徴とする煮魚の製造方法。
【請求項2】
煮汁を入れる容器に直接魚を入れることを特徴とする請求項1に記載の煮魚の製造方法。
【請求項3】
前記容器が魚を入れる上面開口の穴開きの第一容器と、この第一容器を収容するとともに煮汁を入れる上面開口の第二容器とを含むことを特徴とする請求項1に記載の煮魚の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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