熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置
【課題】高周波の記録周波数に対応可能な熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ、及びハードディスク装置を提供する。
【解決手段】媒体対向面Sと、主磁極340の先端3401から磁気記録媒体までの距離が、媒体対向面Sから磁気記録媒体までの距離よりも大きく設定される磁気記録素子34と、光が入射される光導波路の第一コア35と、第一コア35の第一光出射面353と媒体対向面Sとの間に位置し、磁気記録媒体側に第二光出射面301を有する光導波路の第二コア30とを備え、第一光出射面353内の光強度分布中心の第二光出射面301を含む基準平面Sへの正射影位置と、主磁極340の先端3401の中心の基準平面Sへの正射影位置との間の距離は、第二光出射面301内の光強度分布中心と、主磁極340の先端3401の中心の基準平面Sへの正射影位置との間の距離よりも大きい。
【解決手段】媒体対向面Sと、主磁極340の先端3401から磁気記録媒体までの距離が、媒体対向面Sから磁気記録媒体までの距離よりも大きく設定される磁気記録素子34と、光が入射される光導波路の第一コア35と、第一コア35の第一光出射面353と媒体対向面Sとの間に位置し、磁気記録媒体側に第二光出射面301を有する光導波路の第二コア30とを備え、第一光出射面353内の光強度分布中心の第二光出射面301を含む基準平面Sへの正射影位置と、主磁極340の先端3401の中心の基準平面Sへの正射影位置との間の距離は、第二光出射面301内の光強度分布中心と、主磁極340の先端3401の中心の基準平面Sへの正射影位置との間の距離よりも大きい。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱アシスト磁気記録方式により信号の書き込みを行う熱アシスト磁気ヘッド、この熱アシスト磁気ヘッドを備えたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)及びHGAを備えたハードディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置の高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドのさらなる性能の向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、磁気抵抗(MR)効果素子等の磁気検出素子と電磁コイル素子等の磁気記録素子とを積層した構造である複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられており、これらの素子によって磁気記録媒体である磁気ディスクにデータ信号が読み書きされる。
【0003】
一般に、磁気記録媒体は、いわば磁性微粒子が集合した不連続体であり、それぞれの磁性微粒子は単磁区構造となっている。ここで、1つの記録ビットは、複数の磁性微粒子から構成されている。従って、記録密度を高めるためには、磁性微粒子を小さくして、記録ビットの境界の凹凸を減少させなければならない。しかし、磁性微粒子を小さくすると、体積減少に伴う磁化の熱安定性の低下が問題となる。
【0004】
磁化の熱安定性の目安は、KUV/kBTで与えられる。ここで、KUは磁性微粒子の磁気異方性エネルギー、Vは1つの磁性微粒子の体積、kBはボルツマン定数、Tは絶対温度である。磁性微粒子を小さくするということは、まさにVを小さくすることであり、そのままではKUV/kBTが小さくなって熱安定性が損なわれる。この問題への対策として、同時にKUを大きくすることが考えられるが、このKUの増加は、記録媒体の保磁力の増加をもたらす。これに対して、磁気ヘッドによる書き込み磁界強度は、ヘッド内の磁極を構成する軟磁性材料の飽和磁束密度でほぼ決定されてしまう。従って、保磁力が、この書き込み磁界強度の限界から決まる許容値を超えると書き込みが不可能となってしまう。
【0005】
このような磁化の熱安定性の問題を解決する方法として、KUの大きな磁性材料を用いる一方で、書き込み磁界印加の直前に記録媒体に熱を加えることによって、保磁力を小さくして書き込みを行う、いわゆる熱アシスト磁気記録方式が提案されている。この方式は、磁気ドミネント記録方式と光ドミネント記録方式とに大別される。磁気ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は電磁コイル素子であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)に比べて大きくなっている。一方、光ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は光放射部であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)とほぼ同じとなっている。すなわち、磁気ドミネント記録方式は、空間分解能を磁界に持たせているのに対し、光ドミネント記録方式は、空間分解能を光に持たせている。
【0006】
このような熱アシスト磁気ヘッドとして、特許文献1には、電磁コイル素子に近接して光導波路を設けた熱アシスト磁気ヘッドが開示されている。この構成においては、発光素子の出射光を光導波路内に導入し、媒体対向面内にある光導波路の光出射面から出射させて、磁気記録媒体を局所的に加熱する。続いて、局所的に加熱され保磁力が低下している磁気記録媒体の局所領域に対して、電磁コイル素子によって書き込み磁界を印加して書き込みを行う。
【0007】
また、非特許文献1には、水晶のスライダ上に形成されたU字型の近接場光発生部を利用した熱アシスト磁気ヘッドが開示されている。この構成においては、近接場光発生部のU字型形状の湾曲部にレーザ光を照射して近接場光を発生させ、磁気記録媒体を局所的に加熱し、続いて、近接場光発生部に電流を流し、その湾曲部から発生する誘導磁界によって書き込みを行っている。
【特許文献1】特開2005−190655号公報
【非特許文献1】IEEE Trans. Magn. Vol.41, p.2817 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の熱アシスト磁気ヘッドでは、高周波の記録周波数に対応することができず、高転送速度のハードディスク装置を実現することができないという問題点がある。
【0009】
即ち、上記特許文献1に使用される光導波路は、光の進行方向に沿って、高屈折率領域であるコアを低屈折領域であるクラッドによって包み込んだ構成となっている。そして、コアとクラッドは、光導波路としての機能を果たすためには、導入する光の波長よりも厚く形成する必要がある。例えば、光源として青色レーザを用いた場合には、コア及びクラッドは、それぞれ少なくとも400nm以上の厚さとする必要がある。
【0010】
従って、上記特許文献1に記載の熱アシスト磁気ヘッドでは、光導波路の出射面と電磁コイル間の距離が長く(例えば、400nm以上)となってしまい、磁気記録媒体を加熱してから記録磁界を印加するまでには、ある程度の時間が必要となる。そのため、磁気記録媒体を光照射によって加熱した後、その高温状態をある程度の時間保持する必要がある。その時間を見積もると、磁気記録媒体が5400rpmで回転し、磁気記録媒体の中心から20mm離れた部分の上方に磁気ヘッドが浮上している場合、磁気ヘッドと磁気記録媒体の相対位置が400nm移動するのに要する時間は、約35n秒となる。ところが、例えば1GHzの記録周波数では、1ビット当たり1n秒程度で磁気記録を行う必要があるため、上述のように35n秒もの時間にわたって磁気記録媒体の高温状態を保持する必要のある記録システムでは、高周波の記録周波数に対応することは困難である。
【0011】
この問題点を解消するためには、光照射部(媒体加熱部)と記録磁界印加部の位置が略一致した構造の磁気ヘッドとすればよい。その点、上記非特許文献1に記載の熱アシスト磁気ヘッドの構成は優れているが、この構成の場合、記録磁界の発生強度が不十分という問題点がある。
【0012】
即ち、熱アシスト磁気記録においては、磁気記録媒体の記録領域を、その保磁力が0になる程度まで加熱してしまうと、磁気記録媒体上の保護膜や潤滑材が熱分解等してしまう虞がある。そのような事態を防止するため、熱アシスト磁気記録時には、磁気記録媒体の記録領域を、その保磁力が0になるまで加熱するのではなく、その保磁力をある程度だけ低下させるように加熱した状態で記録磁界を印加する必要がある。そのためには、印加される記録磁界には十分な強度が必要であるが、非特許文献1に記載の熱アシスト磁気ヘッドは、誘導磁界を集中させる役割を果たす磁極を備えていないため、十分な強度の磁界を磁気記録媒体に印加することができない。その上、非特許文献1に記載の熱アシスト磁気ヘッドにおいては、積層面と媒体対向面が一致した構造となっており、従来の磁気ヘッドの構成とは異なっている。そのため、磁気検出素子と磁気記録素子とを積層した構造である複合型薄膜磁気ヘッドを従来の製造方法によって製造することができず、十分な性能を備えた熱アシスト磁気ヘッドを得ることが困難である。
【0013】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、高周波の記録周波数に対応可能な熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ、及び、ハードディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る熱アシスト磁気ヘッドは、磁気記録媒体に対向する媒体対向面と、主磁極の先端から磁気記録媒体までの距離が、媒体対向面から磁気記録媒体までの距離よりも大きく設定される磁気記録素子と、熱アシスト用の光が入射される光導波路の第一コアと、第一コアの第一光出射面と媒体対向面との間に位置し、磁気記録媒体側に第二光出射面を有する光導波路の第二コアとを備え、第一光出射面内の光強度分布中心の第二光出射面を含む基準平面への正射影位置と、主磁極の先端の中心の基準平面への正射影位置との間の距離は、第二光出射面内の光強度分布中心と、主磁極の先端の中心の基準平面への正射影位置との間の距離よりも大きいことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、光導波路の第一コアに光を入射させると、媒体対向面側の第二光出射面から光が出射され、磁気記録媒体の記録領域を加熱する。磁気記録媒体が加熱されると、記録領域の保磁力が低下するため、磁気記録素子への通電によって発生した磁界を記録領域に印加することにより、容易に書き込みを行うことができる。
【0016】
さらに、本発明によれば、光導波路の第一コアを主磁極に沿って直線的に媒体対向面まで延長して光出射面を形成した場合と比較して、磁気ヘッドから磁気記録媒体に向けて出射される際の光の強度分布の中心と、記録磁界印加部である主磁極の先端とは、媒体対向面側から見た位置が近づけられている。即ち、第一コアの第一光出射面から出射した光は、第二コアの光入射面から入射し、媒体対向面側に設けられた第二光出射面から出射される。この際、第二コアは、第一コアの第一光出射面から出射される際の光の強度分布の中心より、第二コアの第二光出射面から出射される際の光の強度分布の中心の方が、媒体対向面側から見て主磁極側に近づける作用を有する。換言すると、第二コアは、入射された光を媒体対向面側から見て主磁極の先端側に近づけながら第二光出射面まで導く。これにより、磁気記録媒体を加熱してから、その加熱した記録領域へ書き込み磁界を印加するまでの時間を短縮することが可能である。その結果、磁気記録媒体の記録領域の高温状態を長時間保持する必要がなくなるため、磁気記録の際の記録周波数を高くすることが可能となる。
【0017】
さらに、主磁極の先端の中心の基準平面への正射影位置は、第二光出射面内にあることが好ましい。これにより、磁気ヘッドから磁気記録媒体に向けて出射される際の光の強度分布の中心と、記録磁界印加部である主磁極の先端とは、媒体対向面側から見た位置が略一致する。これにより、磁気記録媒体を加熱してから、その加熱した記録領域へ書き込み磁界を印加するまでの時間をさらに短縮することが可能となる。
【0018】
さらに、第二光出射面に近接場光発生部が設けられていることが好ましい。これにより、第一コアに光を入射させると、第二コアの第二光出射面に設けられた近接場光発生部に光を照射することができ、第二光出射面から近接場光を出射させることができる。この近接場光は、光導波路の第一コアに入射させた光と比較して非常に強度が強くなるため、磁気記録媒体の記録領域を十分に加熱することが可能となる。
【0019】
さらに、第二コアは、第一コア側から主磁極側へ向かう方向に沿って、実効的な屈折率が増加することが好ましい。これにより、第二コアが有する屈折率分布に基づく作用によって、第二コアの光入射面に入射された光を、媒体対向面側から見て主磁極の先端側に近づけながら第二光出射面まで導くことが可能となる。
【0020】
さらに、第二コアは、屈折率の異なる二種類の材料を交互に積層して形成したものであることが好ましい。これにより、第二コアの構造が簡単であるという効果を有する。
【0021】
また、第一コアは、主磁極のトラック幅方向に交差する側面に沿って延びており、かつ、主磁極をトラック幅方向に貫く直線と交差していることが好ましい。これにより、第一コアのビット長方向(磁気ヘッドの積層方向)の位置は、主磁極の先端の中心と、略一致する。そのため、第一コアの光出射面から出射して第二コアの光入射面に入射した光を、第二コアによってビット長方向に進行方向を曲げる必要がなくなる。その結果、第二コアの第二光出射面から出射される際の光の強度分布の中心を、媒体対向面側から見た主磁極の位置に確実に近づけることが可能となる。
【0022】
さらに、第一コアは、主磁極のトラック幅方向に交差する両側面に沿って延びていることが好ましい。これにより、第一コアは十分な強度の光を第二コアの光出射面に導くことができるため、磁気記録媒体を十分に加熱することが可能となる。
【0023】
本発明に係るHGAは、上述の熱アシスト磁気ヘッドと、熱アシスト磁気ヘッドを支持
するサスペンションとを備えることが好ましく、本発明に係るハードディスク装置は、上
記HGAと、媒体対向面に対向する磁気記録媒体とを備えることが好ましい。これにより、高周波の記録周波数に対応した熱アシスト磁気記録を行うハードディスク装置が得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高周波の記録周波数に対応可能な熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ、及びハードディスク装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、同一の要素は、同一の参照番号を用いて示されている。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
[第一実施形態]
【0026】
まず、本発明に係る熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置の第一実施形態について説明する。
(ハードディスク装置)
【0027】
図1は、実施の形態に係るハードディスク装置の斜視図である。
【0028】
ハードディスク装置1は、スピンドルモータ11の回転軸の回りを回転する複数の磁気記録媒体である磁気ディスク(磁気記録媒体)10、熱アシスト磁気ヘッド21をトラック上に位置決めするためのアセンブリキャリッジ装置12、この熱アシスト磁気ヘッド21の書き込み及び読み出し動作を制御し、さらに後に詳述する熱アシスト磁気記録用のレーザ光を発生させる光源であるレーザダイオードを制御するための記録再生及び発光制御回路(制御回路)13を備えている。
【0029】
アセンブリキャリッジ装置12には、複数の駆動アーム14が設けられている。これらの駆動アーム14は、ボイスコイルモータ(VCM)15によってピボットベアリング軸16を中心にして揺動可能であり、この軸16に沿った方向に積層されている。各駆動アーム14の先端部には、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)17が取り付けられている。各HGA17には、熱アシスト磁気ヘッド21が、各磁気ディスク10の表面に対向するように設けられている。磁気ディスク10の表面に対向する面が熱アシスト磁気ヘッド21の媒体対向面S(エアベアリング面とも呼ばれる)である。なお、磁気ディスク10、駆動アーム14、HGA17及び熱アシスト磁気ヘッド21は、単数であってもよい。
(HGA)
【0030】
図2は、HGA17の斜視図である。同図は、HGA17の媒体対向面Sを上にして示してある。
【0031】
HGA17は、サスペンション20の先端部に、熱アシスト磁気ヘッド21を固着し、さらにその熱アシスト磁気ヘッド21の端子電極に配線部材203の一端を電気的に接続して構成される。サスペンション20は、ロードビーム200と、このロードビーム200上に固着され支持された弾性を有するフレクシャ201と、フレックシャの先端に板ばね状に形成されたタング部204と、ロードビーム200の基部に設けられたベースプレート202と、フレクシャ201上に設けられておりリード導体及びその両端に電気的に接続された接続パッドからなる配線部材203とから主として構成されている。
【0032】
なお、HGA17におけるサスペンションの構造は、以上述べた構造に限定されるものではないことは明らかである。なお、図示されていないが、サスペンション20の途中にヘッド駆動用ICチップを装着してもよい。
(熱アシスト磁気ヘッド)
【0033】
図3は、図1に示した熱アシスト磁気ヘッド21の近傍の拡大斜視図である。
【0034】
配線部材203は、記録信号用の一対の電極パッド237、237、読出信号用の一対の電極パッド238、238、光源駆動用の一対の電極パッド247、248に接続されている。
【0035】
熱アシスト磁気ヘッド21は、スライダ22と、光源支持基板230及び熱アシスト磁気記録用の光源となるレーザダイオード(発光素子)40を備えた光源ユニット23とが、スライダ基板220の背面(第1面)2201及び光源支持基板230の接着面(第2面)2300を接面させて接着、固定された構成を有している。ここで、スライダ基板220の背面2201は、スライダ22の媒体対向面Sとは反対側の面である。また、光源支持基板230の底面2301がフレクシャ201のタング部204に、例えば、エポキシ樹脂等の接着剤により接着されている。
【0036】
スライダ22は、スライダ基板220及びデータ信号の書き込み及び読み出しを行う磁気ヘッド部32を備えている。
【0037】
スライダ基板220は、板状を呈し、適切な浮上量を得るように加工された媒体対向面Sを有する。スライダ基板220は導電性のアルティック(Al2O3−TiC)等から形成されている。
【0038】
磁気ヘッド部32は、スライダ基板220の媒体対向面Sに対して略垂直な側面である集積面2202に形成されている。磁気ヘッド部32は、磁気情報を検出する磁気検出素子としてのMR効果素子33、磁界の生成により磁気情報を書き込む垂直(面内でも良い)磁気記録素子としての電磁コイル素子34、MR効果素子33及び電磁コイル素子34の間を通して設けられている平面導波路のコア35、磁気ディスクの記録層部分を加熱するための近接場光を発生させる近接場光発生部(プラズモン・プローブ)36、及び、これらMR効果素子33、電磁コイル素子34、コア35及び近接場光発生部36を覆うように集積面2202上に形成された絶縁層(クラッド)38とを備えている。
【0039】
更に、磁気ヘッド部32は、絶縁層38の露出面上に形成され、MR効果素子33の入出力端子にそれぞれ接続された一対の信号端子用の電極パッド371、371、電磁コイル素子34の両端にそれぞれ接続された一対の信号端子用の電極パッド373、373、及び、スライダ基板220と電気的に接続されたグランド用の電極パッド375を備えている。ビアホール375aを介して、スライダ基板220と電気的に接続された電極パッド375は、フレクシャ201の電極パッド247と、ボンディングワイヤにより接続されており、スライダ基板220の電位は電極パッド247により、例えばグラウンド電位に制御されている。
【0040】
MR効果素子33、電磁コイル素子34、及び近接場光発生部36の各端面は、媒体対向面S上に露出している。また、レーザダイオード40の両端は、それぞれ電極パッド47,48に接続されている。
【0041】
図4は、図3に示した熱アシスト磁気ヘッド21のIV−IV矢印断面図である。
【0042】
MR効果素子33は、MR積層体332と、このMR積層体332を挟む位置に配置されている下部シールド層330及び上部シールド層334とを含む。下部シールド層330及び上部シールド層334は、例えば、フレームめっき法を含むパターンめっき法等によって形成された厚さ0.5〜3μm程度のNiFe、CoFeNi、CoFe、FeN若しくはFeZrN等の磁性材料で構成することができる。上下部シールド層334及び330は、MR積層体332が雑音となる外部磁界の影響を受けることを防止する。
【0043】
MR積層体332は、面内通電型(CIP(CurrentIn Plane))巨大磁気抵抗(GMR(Giant Magneto Resistance))多層膜、垂直通電型(CPP(Current Perpendicular to Plane))GMR多層膜、又はトンネル磁気抵抗(TMR(Tunnel Magneto Resistance))多層膜等の磁気抵抗効果膜を含み、非常に高い感度で磁気ディスクからの信号磁界を感受する。
【0044】
MR積層体332は、例えば、TMR効果多層膜を含む場合、IrMn、PtMn、NiMn、RuRhMn等からなる厚さ5〜15nm程度の反強磁性層と、例えば強磁性材料であるCoFe等、又はRu等の非磁性金属層を挟んだ2層のCoFe等から構成されており反強磁性層によって磁化方向が固定されている磁化固定層と、例えばAl、AlCu等からなる厚さ0.5〜1nm程度の金属膜が真空装置内に導入された酸素によって又は自然酸化によって酸化された非磁性誘電材料からなるトンネルバリア層と、例えば強磁性材料である厚さ1nm程度のCoFe等と厚さ3〜4nm程度のNiFe等との2層膜から構成されておりトンネルバリア層を介して磁化固定層との間でトンネル交換結合をなす磁化自由層とが、順次積層された構造を有している。
【0045】
MR効果素子33とコア35との間には、下部シールド層330と同様の材料からなる素子間シールド層148が形成されている。素子間シールド層148は、MR効果素子33を、電磁コイル素子34より発生する磁界から遮断して読み出しの際の外来ノイズを防止する役割を果たす。また、素子間シールド層148とコア35との間に、さらに、バッキングコイル部が形成されていてもよい。バッキングコイル部は、電磁コイル素子34から発生してMR効果素子33の上下部電極層を経由する磁束ループを打ち消す磁束を発生させて、磁気ディスクへの不要な書き込み又は消去動作である広域隣接トラック消去(WATE)現象の抑制を図るものである。
【0046】
MR積層体332の媒体対向面Sとは反対側のシールド層330、334間、シールド層330、334、148の媒体対向面Sとは反対側、下部シールド層330とスライダ基板220との間、及び、素子間シールド層148とコア35との間にはアルミナ等から形成された絶縁層38が形成されている。
【0047】
なお、MR積層体332がCIP−GMR多層膜を含む場合、上下部シールド層334及び330の各々とMR積層体332との間に、アルミナ等により形成されたアルミナ等の絶縁用の上下部シールドギャップ層がそれぞれ設けられる。さらに、図示は省略するが、MR積層体332にセンス電流を供給して再生出力を取り出すためのMRリード導体層が形成される。一方、MR積層体332がCPP−GMR多層膜又はTMR多層膜を含む場合、上下部シールド層334及び330はそれぞれ上下部の電極層としても機能する。この場合、上下部シールドギャップ層とMRリード導体層とは不要であって省略される。
【0048】
MR積層体332のトラック幅方向の両側には、磁区の安定化用の縦バイアス磁界を印加するための、CoTa,CoCrPt,CoPt等の強磁性材料からなるハードバイアス層(図示せず)が形成される。
【0049】
平面導波路のコア35(第一コア)は、内部コア35bと、内部コア35bを積層方向(図4の左右方向)から挟むように設けられた外部コア35a、35cとで構成されている。コア35は、MR効果素子33と電磁コイル素子34との間に位置していて集積面(YZ平面)2202と平行に延びており、媒体対向面Sに設けられている導波路のコア30(第二コア)の媒体対向面Sとは反対側の面302まで延びている。コア35は、集積面2202と平行な2つの上面352a、下面352b、媒体対向面S側の端面となる光出射面353(第一光出射面)、及び、光出射面353とは反対側の光入射面354を有している。外部コア35a、35cは、内部コア35bよりも屈折率が小さい材料で形成されており、内部コア35bに対するクラッドとして機能する。また、コア35の上面352a、下面352bは、外部コア35a、35cよりも屈折率が小さくコア35に対するクラッドとして機能する絶縁層38と接している。
【0050】
このコア35は、レーザダイオード40の発光面からZ軸に沿って出射された後に光入射面354から入射した光を、上面352a、下面352bで反射させつつ、媒体対向面S側の端面である光出射面(第一光出射面)353に導くことが可能となっている。
【0051】
コア35は、何れの部分においても、絶縁層38を形成する材料よりも高い屈折率nを有する、例えばスパッタリング法等を用いて形成された誘電材料から構成されている。例えば、クラッドとしての絶縁層38が、SiO2(n=1.5)から形成されている場合、外部コア35a、35cを形成する材料(A)及び内部コア35bを形成する材料(B)の組み合せ(A,B)は、例えば(Al2O3,TaOX),(Al2O3,TiOX),(Al2O3,MgO),(Al2O3,HfO2)とすることができる。また、絶縁層38が、Al2O3(n=1.63)から形成されている場合、外部コア35a、35cを形成する材料(A)及び内部コア35bを形成する材料(B)の組み合せ(A,B)は、例えば(MgO,HfO2),(HfO2,TaOX),(MgO,TaOX),(MgO,TiOX),(TaOX,TiOX)とすることができる。コア35をこのような材料で構成することによって、材料そのものが有する良好な光学特性によるだけではなく、界面での全反射条件が整うことによって、レーザ光の伝播損失が小さくなる。なお、外部コア35a及び外部コア35cは、内部コア35bよりも屈折率が小さく、絶縁層38よりも屈折率が大きければ、それぞれ異なる材料で構成してもよい。また、コア35は、内部コア35bのみで構成してもよい。
【0052】
コア30は、コア35の光出射面353と、媒体対向面Sとの間に位置している。コア30の光入射面302はコア35の光出射面353と接し、コア30の光出射面301(第二光出射面)は、媒体対向面S内に設けられている。なお、光出射面301は、後述の近接場光発生部からの光が磁気記録媒体に到達する距離以内の範囲であれば、媒体対向面Sよりも深部(図4のZ軸方向)に位置してもよい。
【0053】
このコア30は、コア35の光出射面353から出射された光を、光入射面302から光出射面301まで図4の左方向に曲げながら導くことが可能となっている(詳細は後述)。
【0054】
近接場光発生部36は、コア30の光出射面301の図4における左端付近に配置されている板状部材である。近接場光発生部36は、その端面が媒体対向面Sに露出するようにコア30の光出射面301に埋設されている。そして、レーザダイオード40からの光が近接場光発生部36に照射されることで近接場光が発生する。近接場光発生部36に光を照射すると、近接場光発生部36を構成する金属内の電子がプラズマ振動し、その先端部において電界の集中が生じる。この近接場光の拡がりは、近接場光発生部の先端部の半径程度となるため、この先端部の半径をトラック幅以下とすれば、擬似的に出射光が回折限界以下にまで絞り込まれた効果を奏する。
【0055】
電磁コイル素子34は、垂直磁気記録用が好ましく、図4に示すように、主磁極(層)340、ギャップ層341a、コイル絶縁層341b、コイル層342、及び補助磁極層344を備えている。主磁極340は、コイル層342によって誘導された磁束を、書き込みがなされる磁気ディスク(媒体)の記録層まで収束させながら導くための導磁路であり、コイル層342の螺旋中心から媒体対向面Sの方向に向かって延びている。コイル層342に通電を行うと、主磁極340を介して磁界が主磁極340の媒体対向面S側の先端まで導かれ、その先端から書き込み磁界を発生させることができる。
【0056】
主磁極340に磁気的に結合した補助磁極層344の媒体対向面S側の端部は、補助磁極層344の他の部分よりも層断面が広いトレーリングシールド部を形成している。補助磁極層344は、主磁極340の媒体対向面S側の端部とアルミナ等の絶縁材料により形成されたギャップ層(クラッド)341a,コイル絶縁層341bを介して略対向している。このような補助磁極層344を設けることによって、媒体対向面S近傍における補助磁極層344と主磁極340との間において磁界勾配がより急峻になる。この結果、信号出力のジッタが小さくなって読み出し時のエラーレートを小さくすることができる。
【0057】
補助磁極層344は、例えば、厚さ約0.5〜約5μmの、例えばフレームめっき法、スパッタリング法等を用いて形成されたNi、Fe及びCoのうちいずれか2つ若しくは3つからなる合金、又はこれらを主成分として所定の元素が添加された合金等から構成されている。
【0058】
ギャップ層341aは、コイル層342と主磁極340とを離間しており、例えば、厚さ約0.01〜約0.5μmの、例えばスパッタリング法、CVD法等を用いて形成されたAl2O3又はDLC等から構成されている。
【0059】
コイル層342は、例えば、厚さ約0.5〜約3μmの、例えばフレームめっき法等を用いて形成されたCu等から構成されている。主磁極340の後端と補助磁極層344の媒体対向面Sから離れた部分とが結合され、コイル層342はこの結合部分を取り囲むように形成されている。
【0060】
コイル絶縁層341bは、コイル層342と、補助磁極層344とを離間し、例えば、厚さ約0.1〜約5μmの熱硬化されたアルミナやレジスト層等の電気絶縁材料から構成されている。
【0061】
図5は、熱アシスト磁気ヘッド21の回路図である。
【0062】
配線部材203を構成する配線の1つは、電極パッド247及び電極パッド47を介してレーザダイオード40のカソードに電気的に接続されており、別の配線は電極パッド248及び電極パッド48を介してレーザダイオード40のアノードに電気的に接続されている。電極パッド247,248間に駆動電流を供給するとレーザダイオード40が発光する。この光は、コア35、コア30及び媒体対向面S(図4参照)を介して磁気記録媒体の記録領域に照射される。
【0063】
配線部材203を構成する別の一対の配線は、電極パッド237、ボンディングワイヤBW及び電極パッド371を介して電磁コイル素子34の両端にそれぞれ接続されている。一対の電極パッド237間に電圧を印加すると、磁気記録素子としての電磁コイル素子34に通電が行われ、書き込み磁界が発生する。熱アシスト磁気ヘッド21では、レーザダイオード40から出射された光は、コア35の光入射面354に入射して、媒体対向面Sに設けられた光出射面301から出射し、磁気記録媒体の記録領域に照射される(図4参照)。したがって、媒体対向面Sに対向する磁気記録媒体の記録領域の温度が上昇し、記録領域の保持力が一時的に低下する。この保持力の低下期間内に電磁コイル素子34に通電を行い、書き込み磁界を発生させることで、記録領域に情報を書き込むことができる。
【0064】
配線部材203を構成する別の一対の配線は、電極パッド238、ボンディングワイヤBW及び電極パッド373を介してMR効果素子33の両端にそれぞれ接続されている。一対の電極パッド238に電圧を印加するとMR効果素子33にセンス電流が流れる。記録領域に書き込まれた情報は、MR効果素子33にセンス電流を流すことで読み出すことができる。
【0065】
次に、図6〜8を参照して、本実施形態における主磁極340、コア35及びコア30の構成について詳細に説明する。
【0066】
図6は、図4の断面図における主磁極層340付近の拡大図であり、図7はさらにコア30付近を拡大した図である。図6に示すように、主磁極340の先端3401は、媒体対向面SよりもR340の距離だけ深部(図6のZ軸方向)にあり、また、コア35の光出射面353は、媒体対向面SよりもR35の距離だけ深部にある。本実施形態においては、R340とR35の大きさは等しいが、異なっていてもよい。R340(又はR35)の大きさは、例えば0.3〜1.2μmとすることができ、主磁極340の前方に光を導くことができる。
【0067】
コア30は、コア35の光出射面353と、媒体対向面Sとの間に位置しており、コア35の光出射面と接する光入射面302、及び、光入射面302の反対側の光出射面301を有している。そして、光出射面301の左側の端部付近には、近接場光発生部36が設けられている。
【0068】
図7に示すように、コア30は、図7のX軸の方向に積層された複数の種類の材料からなる。具体的には、X軸方向の両端面には第一低屈折率層30aが形成され、これらの層の間に、高屈折率層30bと第二低屈折率層30cが交互に形成されている。これらの材料は、屈折率が互いに異なり、第一低屈折率層30aが最も屈折率が小さく、高屈折率層30bが最も屈折率が大きくなるように、これらの材料は選択される。
【0069】
また、各高屈折率層30bはそれぞれ同一の厚さとなっているが、各第二低屈折率層30cは、図7の左側に向かって漸次厚さが減少している。そのため、コア30は、図7の左側に向かうに従って、単位厚み当りの高屈折率層30bの割合が増加するため、コア30の部分的な領域に着目した場合の、その領域の平均的な屈折率(実効的な屈折率)は、図7の左側(コア30の、コア35側から主磁極340側へ向かう方向)に向かって漸次増加することとなる。これにより、コア30の光入射面302に入射させた光は、図7の左側に漸次曲がりながら光出射面301に向かうこととなり、光出射面301の左端付近に設けられた近接場光発生部36に照射される。
【0070】
第一低屈折率層30aとしては、光入射面302に入射した光を、図7の左右方向に逃がさないようにする観点から屈折率が低いものが好ましく、例えば、Al2O3,SiO2を用いることができる。また、高屈折率層30b(A)と第二低屈折率層30c(B)の組み合わせ(A,B)は、例えば、(TaOX,Al2O3),(MgO,Al2O3),(TaOX,MgO)とすることができる。
【0071】
なお、本実施形態においては、各高屈折率層30bの厚さはそれぞれ同一としたが、図7における左側に向かって実効的な屈折率が増加するように、各高屈折率層30bと各第二低屈折率層30cの厚さを選択すればよい。また、本実施形態においては、高屈折率層30bと第二低屈折率層30cを交互に積層させてコア30を形成しているため、コア30の構成が簡単になるという利点を有しているが、このような構成でなくても、例えば、図7の左側に向かって連続的に組成を変化させ、連続的に屈折率を増加させる構成も可能である。また、第一低屈折率層30aを特に設けない構成も可能である。
【0072】
コア30が有する上述の作用により、磁気記録媒体に照射される光の強度分布の中心と、磁気記録媒体に印加される磁場の強度分布の中心を、近づけることが可能となる。即ち、図6において、コア35から光が出射される際の、その光の強度分布の中心は光出射面353の中心となる。また、コア30から光が出射される際の、その光の強度分布の中心は光出射面301の近接場光発生部36が設けられている位置となる。また、主磁極から磁気記録媒体に磁場が印加される際の、その磁場の強度分布の中心は、主磁極340の先端3401の中心となる。なお、光強度分布の中心とはピーク強度を与える位置であり、先端の中心とは先端の平面図形の重心を意味する。
【0073】
そして、光出射面353の光強度分布の中心、光出射面301の光強度分布の中心、及び、主磁極の先端の中心を、光出射面301を含む基準平面S(本実施形態においては、光出射面301は媒体対向面S内に設けられているため、媒体対向面と同一の符号を使用する。)へ正射影した点は、それぞれ、C35、C30、及びC340となる。そして、本実施形態によれば、C30からC340までの距離であるS30は、C35からC340までの距離であるS35よりも短くなっている。換言すれば、距離S35は距離S30よりも大きい。
【0074】
図8は、図6のVIII−VIII線断面図である。主磁極340は、媒体対向面S側の先端部のトラック幅方向の幅が、媒体対向面Sとは反対側の基端部の幅よりも狭く形成されており、コイル層342(図4参照)による誘導磁場を集中させて、磁気記録媒体の記録領域に印加する。また、コア30は、媒体対向面S側に向かってトラック幅方向の幅が漸次狭くなり、先細り形状をなしている。これにより、コア30内を伝搬する光を集中させて近接場光発生部36に照射し、高強度の近接場光を発生させることが可能となっている。
【0075】
図9は、媒体対向面S側から見た磁気ヘッド主要部の平面図である。図9に示すように、媒体対向面S側から見て、光出射面301と主磁極340の先端3401位置は、トラック幅と直角の方向(ビット長方向)に近接している。そして、光出射面301から出射される光の強度分布の中心となる近接場光発生部36が設けられている位置と、主磁極340の先端3401は、ビット長方向に非常に近接することとなる。
【0076】
コア30の光出射面301のトラック幅方向の幅W30は、例えば、0.4〜5.0μmとすることができ、ビット長方向の長さH30は、例えば、0.8〜5.0μmとすることができる。
【0077】
また、主磁極層340は、例えばフレームめっき法、スパッタリング法等を用いて形成されたNi、Fe及びCoのうちいずれか2つ若しくは3つからなる合金、又はこれらを主成分として所定の元素が添加された合金等から構成されていることが好ましい。
【0078】
また、本実施形態における変形例を、図10〜13を用いて説明する。図10は、主磁極層340付近の拡大図であって図6に対応する図であり、図11は図10におけるXI−XI線断面図である。また、図12は、本変形例における媒体対向面S側から見た磁気ヘッド主要部の平面図であり、図13は、本変形例における磁気ヘッド部32の媒体対向面S側から見た斜視図である。
【0079】
本変形例は、コア30の位置・形状のみが異なる。即ち、図10〜13に示すように、コア30は、コア35の光出射面353と媒体対向面Sとの間だけでなく、主磁極340の先端3401と媒体対向面Sとの間にも設けられている。これにより、図10に示すように、光出射面301の光強度分布の中心、及び、主磁極の先端の中心を、基準平面Sにそれぞれ正射影した点である、C301及びC340の位置を略一致させることが可能となる。そして、図12に示すように、本変形例においては、媒体対向面S側から見ると、主磁極340の先端3401の位置は、光出射面301の位置と重複する。そして、主磁極340の先端3401の中心の基準平面Sへの正射影位置は、光出射面301内の近接場光発生部36の位置と略一致させることが可能となる。
【0080】
なお、磁気記録媒体Mに対向する媒体対向面Sと、主磁極340の先端3401から磁気記録媒体Mまでの距離M340が、媒体対向面Sから磁気記録媒体Mまでの距離MSよりも大きく設定されており、すなわち、主磁極340がヘッドの深部に位置しており、距離R340(又はR35)は上述のように設定される。
【0081】
以上の熱アシスト磁気ヘッド21は、媒体対向面S、媒体対向面Sの反対側に位置する第1面2201、及び媒体対向面と第1面2201との間に位置する側面を有するスライダ基板220と、媒体対向面S側とは反対側に光入射面354を有するコア35と、コア35の光出射面353と接する光入射面302を有し、媒体対向面S側に光出射面301を有するコア30と、光出射面301に近接した磁気記録素子34とを有し、スライダ基板220の側面の一つに固定された磁気ヘッド部32と、第1面2201に固定された第2面2300を有する光源支持基板230と、コア35の光入射面354に対向し、光源支持基板230に固定された発光素子40とを備えている(図4参照)。
【0082】
光源支持基板230にはレーザダイオード40が固定されており、スライダ基板220の第1面2201は光源支持基板230の第2面2300に固定されているので、スライダ基板220とレーザダイオード40との位置関係が固定される。レーザダイオード40はコア35の光入射面354に対向しているので、従来のような長距離の光伝播は行われず、取り付け誤差や光の結合損失を許容して、発光素子の出射光を媒体対向面まで導くことができる。
【0083】
図14は、媒体対向面Sから見た近接場光発生部36の斜視図である。
【0084】
近接場光発生部36は、媒体対向面Sから見て三角形状を呈し、導電材料により形成されている。三角形の底辺36dがスライダ基板220の集積面2202と平行すなわちトラック幅方向と平行に配置され、底辺と向き合う頂点36cが底辺36dよりも集積面2202側とは反対側に配置されている。近接場光発生部36の好ましい形態は、底辺36dの両端の2つの底角がいずれも同じとされた二等辺三角形である。
【0085】
近接場光発生部36の頂点36cの曲率半径rは5〜100nmとすることが好ましい。三角形の高さH36は、入射されるレーザ光の波長よりも十分に小さく、20〜400nmとすることが好ましい。底辺36dの幅Wは、入射されるレーザ光の波長よりも十分に小さく、20〜400nmとすることが好ましい。頂点36cの角度βは例えば60度である。
【0086】
近接場光発生部36の厚みT36は10〜100nmとすることが好ましい。
【0087】
このような近接場光発生部36がコア30の光出射面301に設けられていると、近接場光発生部36の頂点36c近傍に電界が集中して頂点36c近傍から媒体に向かって近接場光が発生する。
【0088】
近接場光は、入射されるレーザ光の波長及びコア35の形状にも依存するが、一般に、媒体対向面Sから見て近接場光発生部36の境界で最も強い強度を有する。特に、本実施形態では、近接場光発生部36に到達する光の電界ベクトルは、レーザダイオード40の積層方向(X方向)となる。したがって、頂点36c近傍にて最も強い近接場光の放射が起こる。すなわち、磁気ディスクの記録層部分を光により加熱する熱アシスト作用において、この頂点36c近傍と対向する部分が、主要な加熱作用部分となる。
【0089】
この近接場光の電界強度は、入射光に比べて桁違いに強く、この非常に強力な近接場光が、磁気ディスク表面の対向する局所部分を急速に加熱する。これにより、この局所部分の保磁力が、書き込み磁界による書き込みが可能な大きさまでに低下するので、高密度記録用の高保磁力の磁気ディスクを使用しても、電磁コイル素子34による書き込みが可能となる。なお、近接場光は、媒体対向面Sから磁気ディスクの表面に向かって、10〜30nm程度の深さまで到達する。従って、10nm又はそれ以下の浮上量である現状において、近接場光は、十分に記録層部分に到達することができる。また、このように発生する近接場光のトラック幅方向の幅や媒体移動方向の幅は、上述の近接場光の到達深さと同程度であって、また、この近接場光の電界強度は、距離が離れるに従って指数関数的に減衰するので、非常に局所的に磁気ディスクの記録層部分を加熱することができる。
【0090】
図15は、近接場光発生部36への入射光の波長λ(nm)と近接場光強度I(a.u.)との関係を示すグラフである。なお、近接場光発生部36の長さH36=100nmである。
【0091】
近接場光発生部36としてAlを用いた場合には入射光の波長λ(nm)が350nm付近に近接場光の強度ピークを有し、Agを用いた場合には530nm付近に強度ピークを有し、Auを用いた場合には650nm付近に強度ピークを有する。近接場光発生部36の材料としては、Al、Ag、Auの他、Cu、Pd、Pt、Rh又はIrを用いることができる。また、近接場光発生部36の材料として、これらの金属材料のうちのいくつかの組合せからなる合金を採用することもできる。
【0092】
図16は、近接場光発生部36への入射光の波長λ(nm)と近接場光強度I(a.u.)との関係を示すグラフである。なお、近接場光発生部36の材料はAuであり、長さH36は100nm、200nm、300nmである。長さH36は20〜400nmが好ましいが、短波長の光を入射させた方が、スペクトルの半値幅を狭くなる傾向にあり、入射光波長の揺らぎに対する近接場光強度変動の耐性が高くなる。
(光源ユニット)
【0093】
次いで、図3及び図4を再び参照して、熱アシスト磁気ヘッド21の光源ユニット23の構成要素について説明する。
【0094】
光源ユニット23は、光源支持基板230、及び、外形形状が板状のレーザダイオード発光素子40を主として備えている。
【0095】
光源支持基板230はアルティック(Al2O3−TiC)等からなる基板であり、スライダ基板220の背面2201に接着している接着面2300を有している。接着面2300にはアルミナ等の断熱層230aが形成されている。この接着面2300を底面とした際の一つの側面である素子形成面2302上に、アルミナ等の絶縁材料から形成された絶縁層41が設けられており、この絶縁層41の上に、電極パッド47、48が形成され、電極パッド47上にレーザダイオード40が固定されている。
【0096】
電極パッド47、48は、絶縁層41の表面かつ媒体対向面Sと交差する面411、言い換えると、スライダ基板220の集積面2202と平行な面411上に、レーザ駆動用に形成されている。
【0097】
電極パッド47は、図4に示すように、絶縁層41内に設けられたビアホール47aにより光源支持基板230と電気的に接続されている。また、電極パッド47は、レーザダイオード40駆動時の熱をビアホール47aを介して光源支持基板230側へ逃がすためのヒートシンクとしても機能する。
【0098】
電極パッド47は、図3に示すように、絶縁層41の面411の中央部にトラック幅方向に延びて形成されている。一方、電極パッド48は、電極パッド47からトラック幅方向に離間した位置に形成されている。各電極パッド47、48は、半田リフローによるフレクシャ201との接続のために、さらに、フレクシャ201側に向かって延びている。
【0099】
電極パッド47、48は、それぞれ、フレクシャ201の電極パッド247、248とリフロー半田により電気的に接続されており、これにより光源の駆動が可能となっている。また、電極パッド47は上述のように光源支持基板230と電気的に接続されているため、電極パッド247により光源支持基板230の電位を例えばグラウンド電位に制御することが可能となっている。
【0100】
電極パッド47、48は、例えば、厚さ10nm程度のTa、Ti等からなる下地層を介して形成された、厚さ1〜3μm程度の、例えば真空蒸着法やスパッタリング法等を用いて形成されたAu、Cu等の層から形成することができ。
【0101】
そして、レーザダイオード40は、電極パッド47の上にAu−Sn等の導電性の半田材料からなる半田層42(図4参照)により電気的に接続されている。このとき、レーザダイオード40は、電極パッド47の一部のみを覆うように電極パッド47に対して配置されている。
【0102】
図17は、発光素子40の斜視図である。
【0103】
発光素子(レーザダイオード)40は、通常、光学系ディスクストレージに使用されるものと同じ構造を有していてよく、例えば、n電極40aと、n−GaAs基板40bと、n−InGaAlPクラッド層40cと、第1のInGaAlPガイド層40dと、多重量子井戸(InGaP/InGaAlP)等からなる活性層40eと、第2のInGaAlPガイド層40fと、p−InGaAlPクラッド層40gと、*n−GaAs電流阻止層40hと、p−GaAsコンタクト層40iと、p電極40jとが順次積層された構造を有する。これらの多層構造の劈開面の前後には、全反射による発振を励起するためのSiO2、Al2O3等からなる反射膜50及び51が成膜されており、レーザ光が放射される出光端400には、一方の反射膜50における活性層40eの位置に開口が設けられている。このような発光素子40は、膜厚方向に電圧が印加されることにより、出光端400からレーザ光を出射する。
【0104】
放射されるレーザ光の波長λLは、例えば600〜650nm程度である。ただし、近接場光発生部36の金属材料に応じた適切な励起波長が存在することに留意しなければならない。例えば、近接場光発生部36としてAuを用いる場合、レーザ光の波長λLは、600nm近傍が好ましい。
【0105】
発光素子40の大きさは、上述したように、例えば、幅(W40)が200〜350μm、長さ(奥行き、L40)が250〜600μm、厚み(T40)が60〜200μm程度である。ここで、発光素子40の幅W40は、電流阻止層40hの対向端の間隔を下限として、例えば、100μm程度までに小さくすることができる。ただし、発光素子40の長さは、電流密度と関係する量であり、それほど小さくすることはできない。いずれにしても、発光素子40に関しては、搭載の際のハンドリングを考慮して、相当の大きさが確保されることが好ましい。
【0106】
また、この発光素子40の駆動においては、ハードディスク装置内の電源が使用可能である。実際、ハードディスク装置は、通常、例えば2V程度の電源を備えており、レーザ発振動作には十分の電圧を有している。また、発光素子40の消費電力も、例えば、数十mW程度であり、ハードディスク装置内の電源で十分に賄うことができる。
【0107】
発光素子40のn電極40aが電極パッド47にAuSn等の半田層42(図4参照)により固定されている。ここで、発光素子40の出光端(光出射面)400が図4の下向き(−Z方向)、すなわち出光端400が接着面2300と平行になるように発光素子40が光源支持基板230に固定されており、出光端400はスライダ22のコア35の光入射面354と対向可能となっている。実際の発光素子40の固定においては、例えば、電極パッド47の表面に厚さ0.7〜1μm程度のAuSn合金の蒸着膜を成膜し、発光素子40を乗せた後、熱風ブロア下でホットプレート等による200〜300℃程度までの加熱を行って固定すればよい。
【0108】
また、電極パッド48と、発光素子40のp電極40jと、がボンディングワイヤにより電気的に接続されている。なお、電極パッド47と接続される電極は、n電極40aでなくp電極40jでもかまわず、この場合、n電極40aが電極パッド48とボンディングワイヤにより接続される。さらに、発光素子40の支持基板側を段差状に加工することにより、ボンディングワイヤを用いない電気的な接続構造も可能である。
【0109】
ここで、上述したAuSn合金による半田付けをする場合、光源ユニットを例えば300℃前後の高温に加熱することになるが、本発明によれば、この光源ユニット23がスライダ22とは別に製造されるため、スライダ内の磁気ヘッド部がこの高温の悪影響を受けずに済む。
【0110】
そして、上述のスライダ22の背面2201と光源ユニット23の接着面2300とが、例えば、UV硬化型接着剤等の接着剤層44(図4参照)により接着されており、発光素子40の出光端400がコア35の光入射面354と対向するように配置されている。
【0111】
なお、発光素子40及び電極パッドの構成は、当然に、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、発光素子40は、GaAlAs系等、他の半導体材料を用いた他の構成のものであってもよい。さらに、発光素子40と電極との半田付けに、他のろう材を用いて行うことも可能である。さらにまた、発光素子40を、ユニット基板上に直接、半導体材料をエピタキシャル成長させることによって形成してもよい。
(製造方法)
【0112】
以下、図18〜図26を参照し、第1実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッドの製造方法について説明する。各層の形成にはスパッタ法を用いることができるが、その他、化学的気相成長(CVD)法等を用いることも可能である。また、エッチングには、IBE(イオンビームエッチング)、RIE(反応性イオンエッチング)、希ガスを用いたスパッタリングなどのドライエッチングを用いることができるが、化学エッチング(ウェットエッチング)を用いることも可能である。
【0113】
図18(a)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図18(b)は図18(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXVIIIb−XVIIIb矢印断面図である。
【0114】
まず、クラッドとなる基板としての絶縁層38上にコア層30を形成する。コア層30の光出射面上には、近接場光発生部が形成されている。近接場光発生部の形成方法については後述する。
【0115】
図18(c)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図18(d)は図18(c)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXVIIId−XVIIId矢印断面図である。
【0116】
次に、先端部用のコア層30上にマスクとしてのホトレジスト70を塗布し、基端部用のコア層35(図19(d)参照)の形成予定領域が開口するように露光を行い、ホトレジスト70を現像処理し、レジストパターンを形成する。レジストパターンの形成後、ホトレジスト70の開口内の領域(コア層30)を絶縁層38の表面が露出するまでエッチングする。しかる後、溶剤を用いてホトレジスト70を剥離する。
【0117】
図19(a)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図19(b)は図19(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXIVb−XIVb矢印断面図である。
【0118】
ホトレジスト70の剥離後、基板上に基端部用のコア層35を形成する。コア層35の材料は基本的にはコア層30の材料と同一である。コア層30を複数の層から形成することも可能であり、この場合において、コア層35も光伝達が可能であれば、これと同一又は類似の層構造を採用することができ、光透過材料からなる。コア層35は、絶縁層(クラッド)38の露出表面上のみならず、周囲のコア層30上にも堆積される。
【0119】
図19(c)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図19(d)は図19(c)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXIVd−XIVd矢印断面図である。
【0120】
コア層35の堆積後、基板表面をコア層30が露出するまで化学機械研磨し、コア層35、30の被研磨表面が同一平面内に含まれるようにする。換言すれば、コア層35、30の絶縁層38からの高さは同一となり、露出平面は平坦化される。
【0121】
図20(a)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図20(b)は図20(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXb−XXb矢印断面図、図20(c)は図20(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXc−XXc矢印断面図である。
【0122】
上述の化学機械研磨工程を行った後、コア層30,35をフォトリソグラフィによって加工する。すなわち、断面XXc−XXc上のコア層30の中心部分が残留し、断面XXb上のコア層35の中心部分がコア層30の最大幅と等しい幅で残留するように、ホトレジスト70を平坦化された露出平面上に形成し、中心部分以外のコア層30,35を、ホトレジスト70をマスクとしてエッチングする。すなわち、コア層35の長手方向に垂直な幅が狭くなり、コア層30はコア層35の長手方向の一端に連続し、コア層35から離れるに従って幅が狭くなるように、ホトレジスト70が塗布され、続いて、露光及び現像される。
【0123】
図20(d)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図20(e)は図20(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXe−XXe矢印断面図、図20(f)は図20(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXf−XXf矢印断面図である。
【0124】
上述のホトレジスト70をマスクとして、コア層30、35のエッチングが行われる。このエッチングによって、コア層35の先端側にコア層30が連続し、コア層30は先端に向かうに従って幅が狭くなることになる。エッチングの終了後、ホトレジスト70が除去される。
【0125】
図21(a)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図21(b)は図21(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIb−XXIb矢印断面図、図21(c)は図21(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIc−XXIc矢印断面図である。
【0126】
上述のように加工されたコア層30,35及び絶縁層38の露出表面上に上部クラッド層となる絶縁層38を堆積する。なお、上部クラッド層は、下部クラッド層を構成する絶縁層38と同一材料であり、形成後には下部クラッド層と一体化するため、これらは同一符号を用いることとする。
【0127】
図21(d)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図21(e)は図21(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIe−XXIe矢印断面図、図21(f)は図21(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIf−XXIf矢印断面図である。
【0128】
次に、上部クラッド層となる絶縁層38を、表面が平坦になるまで化学機械研磨する。研磨後の露出表面とコア層30,35との間には絶縁層38が介在しており、これらの表面は絶縁層38によって被覆されている。
【0129】
図22(a)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図22(b)は図22(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIb−XXIIb矢印断面図、図22(c)は図22(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIc−XXIIc矢印断面図である。
【0130】
上記化学機械研磨工程の後、上部クラッド層となる絶縁層38の露出表面上にホトレジスト70を塗布し、コア層30の直上領域とコア層35の一部の先端部側領域のみが開口するようにホトレジスト70を露光、現像処理し、この先端部領域のみが開口したレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクとして、絶縁層38をコア層30の表面が露出するまでエッチング(イオンミリング)し、絶縁層38の表面層を除去する。
【0131】
図22(d)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図22(e)は図22(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIe−XXIIe矢印断面図、図22(f)は図22(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIf−XXIIf矢印断面図である。
【0132】
上述のエッチング工程の後、ホトレジスト70からなるレジストパターンを溶剤を用いて除去する。ホトレジスト70を除去することにより、絶縁層38の全表面が露出することになる。
【0133】
図23(a)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図23(b)は図23(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIIb−XXIIIb矢印断面図、図23(c)は図23(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIIc−XXIIIc矢印断面図である。
【0134】
全表面が露出した絶縁層38上にホトレジスト70を塗布し、所定の露光及び現像処理を行ってレジストパターンを形成する。このレジストパターンは、コア層30の直上領域とコア層35の先端部側の一部領域が開口することで先端側に先端側開口領域OP1を有しており、開口領域OP1に連続しコア層30からコア層35に向かう方向に延びた基端側開口領域OP2を有している。このレジストパターンをマスクとして、基板上に磁性材料を堆積すると、コア層30の露出表面に接触し、コア層35に沿って延びる主磁極340が形成される。なお、磁性材料の堆積にあたってはメッキ法を用いることとし、必要に応じて磁性材料の下地に種層をスパッタ法などで形成しておいてもよい。
【0135】
図23(d)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図23(e)は図23(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIIe−XXIIIe矢印断面図、図23(f)は図23(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIIf−XXIIIf矢印断面図である。
【0136】
上記レジストパターンをマスクとして、基板全面上に磁性材料を堆積した後、溶剤を用いてホトレジスト70を溶かすことで、リフトオフ等のホトレジスト70の剥離工程を実行し、上記開口内のみに磁性材料が残留してなる主磁極340を形成する。主磁極340の幅はコア層30からコア層35に向かうに従って広くなっており、基端部側ではコア層35よりも幅広になるように設定されている。
【0137】
図24(a)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図24(b)は図24(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIVb−XXIVb矢印断面図、図24(c)は図24(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIVc−XXIVc矢印断面図、図24(d)は図24(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIVd−XXIVd矢印断面図である。
【0138】
主磁極340cの形成後、基板全面上に保護膜及び先端側のコア層30に対するクラッド層として機能する絶縁層38を堆積し、絶縁層38の表面を主磁極340の表面が露出し、且つ、露出表面が平坦になるまで化学機械研磨する。絶縁層38はAl2O3等から形成される。なお、主磁極340の先端側は、コア層30の先端部に形成された近接場光発生部36が所定の厚みになるまで研磨される。なお、上述のコア層35は、例えば、内側のコア材料と外側のコア材料からなる二重構造としてもよく、また、単一の材料からなることとしてもよい。
【0139】
次に、上述の近接場光発生部となる金属層36aの形成されたコア層30の製造方法について説明する。
【0140】
まず、図25の(a)に示すように、最初に、Al2O3等の絶縁層38a上に、コア層30の一部となる、絶縁層38aよりも屈折率の高いTa2O5等の誘電体多層膜30Xを成膜し、その上に、Au等の金属層36aを製膜し、その上に、リフトオフ用の底部が窪んだレジストパターン1002を形成する。
【0141】
次いで、図25の(b)に示すように、イオンミリング法等を用いて、レジストパターン1002の直下を除いて、金属層36aの不要部分を除去することにより、誘電体多層膜30Xの上に下部が広い台形状の金属層36aが積層されたパターンが形成される。
【0142】
その後、図25の(c)に示すように、レジストパターン1002を除去した後に、台形状の金属層36aの両斜面側からそれぞれイオンミリング法等により各斜面の一部をそれぞれ除去して、断面三角形状の金属層36aを形成する。
【0143】
続いて、図25の(d)に示すように、金属層36aを覆うように誘電体多層膜30X上に誘電体多層膜30Xと同じ材料による単層又は多層の誘電体膜30Pを成膜し、将来媒体対向面が形成される側に金属層36aの端面を形成するためのレジストパターン1003を積層し、図26の(a)に示すように、将来媒体対向面が形成される側とは反対側において、金属層36a及び誘電体膜30Pをイオンミリング法等により除去し、その後、除去した部分に誘電体膜30Pとは同じ材料によりなる単一又は多層の誘電体膜30Yを成膜する。
【0144】
さらに、図26の(b)に示すように、誘電体膜30P及び30Y上に、さらに、誘電体膜30Yと実効的な屈折率が異なる単一又は多層の誘電体膜30Zを積層することにより、近接場光発生部36の元になる金属層36aが埋め込まれたコア層30が完成する。図26の(b)の手前側の面がABS面となるが、この面は、クラッド及び主磁極の形成後にラッピングを行うことで、金属層36aが所定の厚みになるまで研磨され、したがって、三角形状の近接場光発生部36が光出射面(ABS面)上に形成されることになる。
【0145】
以上の工程により、近接場光発生部36を備えたコア層30を形成することができる。その後、公知の方法により、図4に示したような電磁コイル素子34を形成し、その後、アルミナ等による絶縁層38を形成し、接続のための電極パッド371等を形成し、その後エアベアリング面やその裏面のラッピングを行うことによりスライダ22が完成する。この後、スライダ22の電磁コイル素子34やMR効果素子33のテストを各スライダごとに行い、良品を選別する。続いて、図4に示した光源ユニット23を組み立てて良品を選別する。
【0146】
次に、図27(a)に示すように、良品とされた光源ユニット23の接着面2300と、良品とされたスライダ22の背面2201のいずれか又は両方にUV硬化型接着剤44aを塗布する。UV硬化型接着剤としては、UV硬化型エポキシ樹脂や、UV硬化型アクリル樹脂等が挙げられる。
【0147】
そして、図27(b)に示すように、光源ユニット23の接着面2300とスライダ22の背面2201とを重ね合わせた後、電極パッド47,48間に電圧を印加して端面発光型の発光素子40を発光させると共に、コア層35の光出射面353に光検出器DTを対向配置し、光源ユニット23とスライダ22とを相対的に図27(b)の矢印方向に移動させ、最も光検出器DTの出力が高くなる位置を探し出し、その位置で、外部からUV硬化型接着剤に紫外線を照射することによりUV硬化型接着剤44aを硬化させ、これによりレーザダイオードの光軸とコア層35の光軸とを合わせた状態で光源ユニット23とスライダ22との接着をすることができる。
(作用)
【0148】
続いて、本実施形態にかかる熱アシスト磁気ヘッド21の作用について説明する。
【0149】
書き込み又は読み出し動作時には、熱アシスト磁気ヘッド21は、回転する磁気ディスク(媒体)10の表面上において流体力学的に所定の浮上量をもって浮上する。この際、MR効果素子33及び電磁コイル素子34の媒体対向面S側の端が磁気ディスク10と微小なスペーシングを介して対向することによって、データ信号磁界の感受による読み出しとデータ信号磁界の印加による書き込みとが行われる。
【0150】
ここで、データ信号の書き込みの際、光源ユニット23からコア35を通って伝播してきたレーザ光が近接場光発生部36に到達し、近接場光発生部36から近接場光が発生する。この近接場光によって、熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0151】
熱アシスト磁気記録方式を採用することにより、高保磁力の磁気ディスクに垂直磁気記録用の薄膜磁気ヘッドを用いて書き込みを行い、記録ビットを極微細化することによって、例えば、1Tbits/in2級の記録密度を達成することも可能となり得る。
【0152】
さらに、本実施形態においては、コア35の光出射面353から出射した光は、コア30の光入射面302から入射し、媒体対向面S側に設けられた光出射面301から出射される。この際、コア30の作用により、コア35の光出射面353から出射される際の光の強度分布の中心より、コア30の光出射面301から出射される際の光の強度分布の中心の方が、媒体対向面S側から見て主磁極340の先端3401に近くなる(図6参照)。これにより、磁気記録媒体を加熱してから、その加熱した記録領域へ書き込み磁界を印加するまでの時間を短縮することが可能となる。その結果、磁気記録媒体の記録領域の高温状態を長時間保持する必要がなくなるため、磁気記録の際の記録周波数を高くすることが可能となる。
【0153】
特に本実施形態の変形例においては、媒体対向面S側から見て、コア30の光出射面301から出射される際の光の強度分布の中心と、主磁極340の先端3401の中心とを略一致させることが可能であるため、磁気記録媒体の加熱と、その加熱した記録領域への書き込み磁界の印加を略同時に行うことが可能である。その結果、磁気記録の際の記録周波数をさらに高くすることが可能である。
【0154】
本実施形態においては、主磁極340の先端3401は、媒体対向面SからR340の距離だけ深部に設けられている。そのため、媒体対向面S内に主磁極340の先端3401を設けた場合と比較して、磁気記録媒体に印加される磁場の強度は多少減少する。図28に、記録磁場強度と、媒体対向面Sから主磁極340の先端3401までの距離R340(リセス量)との関係のシミュレーション結果を示す。図に示すように、リセス量が増えると、記録磁場強度は単調に減少することがわかる。
【0155】
しかし、距離R340を大きくする程、媒体対向面S側から見て、コア30の光出射面301から出射される際の光の強度分布の中心と、主磁極340の先端3401の中心とをより近づけることが可能となる。従って、R340の大きさを適宜選択することにより、記録磁界の強度減少を許容される範囲に保ちつつ、記録周波数の性能が向上された磁気ヘッドを得ることができる。好適な距離R340の範囲は0.4〜0.8μmである。
【0156】
そして、本実施形態では、光源ユニット23を用いることによって、スライダ22のコア35の光入射面(端面)354に、コア35の層面に平行な方向に伝播するレーザ光を入射させることができる。すなわち、集積面2202と媒体対向面Sとが垂直である構成を有する熱アシスト磁気ヘッド21において、適切な大きさ及び方向を有するレーザ光が、確実に供給可能となる。その結果、磁気ディスクの記録層の加熱効率が高い熱アシスト磁気記録を実現可能とする。
【0157】
そして、本実施形態によれば、磁気ヘッド部32がスライダ基板220に固定され、光源であるレーザダイオード40が光源支持基板230にそれぞれ別に固定されているので、スライダ基板220に固定された電磁コイル素子34と、光源支持基板230に固定されたレーザダイオード40とをそれぞれ独立に試験した上で、良品であるスライダ22と良品である光源ユニット23とを互いに固定することにより良品である熱アシスト磁気ヘッド21を歩留まり良く製造できる。
【0158】
また、磁気ヘッド部32がスライダ基板220の側面に設けられているので、従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法を用いて磁気ヘッド部32の電磁コイル素子34やMR効果素子33等を容易に形成できる。
【0159】
さらに、レーザダイオード40が媒体対向面Sから離れた位置かつスライダ22の近傍にあるので、レーザダイオード40から発生する熱による電磁コイル素子34やMR効果素子33等への悪影響やレーザダイオード40と磁気ディスク10との接触等の可能性が抑制されると共に、光ファイバ、レンズ、ミラー等が必須では無いので光の伝播損失が低減でき、さらに、磁気記録装置全体の構造も簡単にできる。
【0160】
また、本実施形態では、光源支持基板230の裏面に断熱層230aが形成されているので、レーザダイオード40から発生する熱がより一層スライダ22に伝導しにくくなっている。
【0161】
また、上記実施形態では、スライダ基板220と光源支持基板230とには、同じアルティック製の基板を採用しているが、異なる材料の基板を用いることも可能である。この場合でも、スライダ基板220の熱伝導率をλs、光源支持基板230の熱伝導率をλlとすると、λs≦λlを満たすようにすることが好ましい。これにより、レーザダイオード40が発生する熱を、なるべくスライダ基板220に伝わらないようにしつつ光源支持基板230を通して外部に逃がすことが容易となる。
【0162】
なお、スライダ22及び光源ユニット23の大きさは任意であるが、例えば、スライダ22は、トラック幅方向の幅700μm×長さ(奥行き)850μm×厚み230μmの、いわゆるフェムトスライダであってもよい。この場合、光源ユニット23は、これとほぼ同じ幅及び長さを有することができる。実際、例えば、通常用いられるレーザダイオードの典型的な大きさは、幅250μm×長さ(奥行き)350μm×厚み65μm程度であり、例えば、この大きさの光源支持基板230の側面にこの大きさのレーザダイオード40を設置することが、十分に可能となっている。なお、光源支持基板230の底面に溝を設け、この溝内にレーザダイオード40を設けることも可能である。
【0163】
また、電磁コイル素子34が、長手磁気記録用であってもかまわない。この場合、主磁極層340及び補助磁極層344の代わりに、下部磁極層及び上部磁極層が設けられ、さらに、下部磁極層及び上部磁極層の媒体対向面S側の端部に挟持された書き込みギャップ層が設けられる。この書き込みギャップ層位置からの漏洩磁界によって書き込みが行われる。
[第二実施形態]
【0164】
次に、本発明に係る熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置の第二実施形態について図29〜図33を用いて説明する。図29〜図33は、それぞれ第一実施形態の図4、図6、図8、図9、図13に対応する。第二実施形態は、主磁極340、コア35、コア30及び近接場光発生部36の態様が第一実施形態と異なる。
【0165】
図29及び図30に示すように、主磁極340の先端3401及びコア30の光出射面353は、第一実施形態と同様に、媒体対向面SからR340(R35)だけ深部に位置している。また、コア30は、コア35の光出射面353と、媒体対向面Sとの間に位置している点も同様である。しかし、第一実施形態とは異なり、主磁極340は、コア35の上面352aとは接しておらず、図3のIV−IV線断面から見た位置は、一致している。また、近接場光発生部36は、コア30の光出射面301の中心に設けられている点においても第一実施形態と異なっている。
【0166】
図31は、図30のXXXI−XXXI線断面図である。図に示すように、コア35は、主磁極340をトラック幅方向の両側面から挟み込む形状をしている。即ち、コア35は、主磁極340のトラック幅方向に交差する側面((*)XZ面及びXZ面をX軸周りに±90度よりも小さい角度で回転させた面)に沿って延びており、かつ、主磁極340をトラック幅方向に貫く直線と交差している。
【0167】
コア30は、第一実施形態の変形例と同様に、コア35の光出射面353と媒体対向面Sとの間だけでなく、主磁極340の先端3401と媒体対向面Sとの間にも設けられている。また、媒体対向面S側に向かってトラック幅方向の幅が漸次狭くなり、先細り形状をなしていることによって、コア30内を伝搬する光を集中させて近接場光発生部36に照射し、高強度の近接場光を発生させることが可能となっている点においても、第一実施形態と同様である。しかし、コア30は、積層構造としたものではなく、コア30全体が例えばコア35の内部コア35bを構成する材料と同様の材料で構成されている。
【0168】
図32は、媒体対向面S側から見た第二実施形態に係る磁気ヘッド主要部の平面図であり、図33は、第二実施形態における磁気ヘッド部32の媒体対向面S側から見た斜視図である。これらの図に示すように、媒体対向面S側から見ると、主磁極340の先端3401の位置は、光出射面301の位置と重複する。そして、主磁極340の先端3401の中心の基準平面Sへの正射影位置は、光出射面301内の近接場光発生部36の位置と略一致させることが可能となる。
【0169】
なお、磁気記録媒体Mに対向する媒体対向面Sと、主磁極340の先端3401から磁気記録媒体Mまでの距離M340が、媒体対向面Sから磁気記録媒体Mまでの距離MSよりも大きく設定されており、すなわち、主磁極340がヘッドの深部に位置しており、距離R340(又はR35)は上述のように設定される。
【0170】
第二実施形態においては、図31に示すように、光出射面353の光強度分布の中心、光出射面301の光強度分布の中心、及び、主磁極340の先端3401の中心を、光出射面301を含む基準平面S(第二実施形態においても、光出射面301は媒体対向面S内に設けられているため、媒体対向面と同一の符号を使用する。)へ正射影した点を、それぞれ、C35、C30、及びC340とした場合、C30からC340までの距離(S30=0)は、C35からC340までの距離S35よりも短くなっている。換言すれば、距離S35は距離(S30)よりも大きい。そのため、第一実施形態における場合と同様に、磁気記録媒体を加熱してから、その加熱した記録領域へ書き込み磁界を印加するまでの時間を短縮することが可能となる。その結果、磁気記録媒体の記録領域の高温状態を長時間保持する必要がなくなるため、磁気記録の際の記録周波数を高くすることが可能となる。
【0171】
さらに、第二実施形態においては、コア35のビット長方向(磁気ヘッドの積層方向)の位置は、主磁極340の先端3401の中心と、略一致する。そのため、コア35の光出射面353から出射してコア30の光入射面302に入射した光を、コア30によってビット長方向に進行方向を曲げる必要がなくなる。その結果、コア30の光出射面301から出射される際の光の強度分布の中心を、媒体対向面S側から見た主磁極340の位置に確実に近づけることが可能となる。
【0172】
なお、図31において、コア35は、主磁極340のトラック幅方向の両側面に沿って延びているが、一方の側面のみに沿って延びていても構わない。
【0173】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0174】
例えば、近接光発生部の形状は、上述のものに限られず、たとえば、三角形でなく頂点36cが平らになった台形状でも実施可能であり、また、三角形状または台形状の板を、その頂点同士または短辺同士が所定距離離間して対向するように一対配置した、いわゆる「蝶ネクタイ型」構造でも実施可能である。
【0175】
図34は、「蝶ネクタイ型」構造の近接場光発生部36の斜視図である。一対の近接場光発生部36がX軸に沿って対向して配置されており、その頂点36c同士が所定の間隔を隔てて突き合されている。この「蝶ネクタイ型」構造においては、頂点36c間の中心部に非常に強い電界の集中が発生し、近接場光が生じる。
【0176】
また、コイル層342は、図4等において1層であるが、2層以上又はヘリカルコイルでもよい。
【0177】
また、断熱層230aは、スライダ基板220の背面2201に形成されていてもよく、全く設けなくても実施は可能である。
【0178】
また、光源ユニット23とスライダ22との接着に、UV硬化型接着剤以外の接着剤例えば、レーザダイオード40と電極パッド47との接着に用いたAuSn等の半田層を用いても実施は可能である。
【0179】
なお、上記熱アシスト磁気ヘッド及びHGAを備えたハードディスク装置では、高周波の記録周波数に対応した熱アシスト磁気記録が実現可能である。
【0180】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】実施の形態に係るハードディスク装置の斜視図である。
【図2】HGA17の斜視図である。
【図3】図1に示した熱アシスト磁気ヘッド21の近傍の拡大斜視図である。
【図4】図3に示した熱アシスト磁気ヘッド21のIV−IV矢印断面図である。
【図5】熱アシスト磁気ヘッド21の回路図である。
【図6】図4に示した断面図のコア35近傍の拡大断面図である。
【図7】図6に示した断面図のコア30の拡大断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII矢印断面図である。
【図9】媒体対向面側から見た磁気ヘッド主要部の平面図である。
【図10】第一実施形態の変形例におけるコア35近傍の拡大断面図である。
【図11】図10のXI−XI断面図である。
【図12】第一実施形態の変形例における媒体対向面側から見た磁気ヘッド主要部の平面図である。
【図13】第一実施形態の変形例における磁気ヘッド部32の媒体対向面側から見た斜視図である。
【図14】媒体対向面Sから見た近接場光発生部36の斜視図である。
【図15】近接場光発生部36への入射光の波長λ(nm)と近接場光強度I(a.u.)との関係を示すグラフである。
【図16】近接場光発生部36への入射光の波長λ(nm)と近接場光強度I(a.u.)との関係を示すグラフである。
【図17】発光素子40の斜視図である。
【図18】コア35及び主磁極340の形成方法の一実施形態の一部を説明する工程図である。
【図19】コア35及び主磁極340の形成方法の一実施形態の一部を説明する工程図である。
【図20】コア35及び主磁極340の形成方法の一実施形態の一部を説明する工程図である。
【図21】コア35及び主磁極340の形成方法の一実施形態の一部を説明する工程図である。
【図22】コア35及び主磁極340の形成方法の一実施形態の一部を説明する工程図である。
【図23】コア35及び主磁極340の形成方法の一実施形態の一部を説明する工程図である。
【図24】コア35及び主磁極340の形成方法の一実施形態の一部を説明する工程図である。
【図25】近接場光発生部36を備えたコア層30の形成方法の一実施形態を説明する斜視図である。
【図26】近接場光発生部36を備えたコア層30の形成方法の一実施形態を説明する斜視図である。
【図27】熱アシスト磁気ヘッドの製造方法を示す斜視図である。
【図28】記録磁場強度と、主磁極340のリセス量との関係のシミュレーション結果を示す図である。
【図29】第二実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッド21の断面図である。
【図30】図29に示した断面図のコア35近傍の拡大断面図である。
【図31】図30のXXXI−XXXI線断面図である。
【図32】第二実施形態における磁気ヘッド部32の媒体対向面側から見た斜視図である。
【図33】第二実施形態における磁気ヘッド部32の媒体対向面側から見た斜視図である。
【図34】「蝶ネクタイ型」構造の近接場光発生部36の斜視図である。
【符号の説明】
【0182】
1…ハードディスク装置、10…磁気ディスク(記録媒体)、17…ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)、20…サスペンション、21…熱アシスト磁気ヘッド、22…スライダ、220…スライダ基板、2202…集積面、23…光源ユニット、230…光源支持基板、30…コア(第二コア)、301…光出射面(第二出射面)、302…光入射面、32…磁気ヘッド部、33…MR効果素子(磁気検出素子)、34…電磁コイル素子(磁気記録素子)、340…主磁極、3401…主磁極の先端、35…コア(第一コア)、353…光出射面(第一光出射面)、354…光入射面(端面)、36…近接場光発生部、38…絶縁層(クラッド)、40…レーザダイオード(光源)、400…出光端、S…媒体対向面。
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱アシスト磁気記録方式により信号の書き込みを行う熱アシスト磁気ヘッド、この熱アシスト磁気ヘッドを備えたヘッドジンバルアセンブリ(HGA)及びHGAを備えたハードディスク装置に関する。
【背景技術】
【0002】
ハードディスク装置の高記録密度化に伴い、薄膜磁気ヘッドのさらなる性能の向上が要求されている。薄膜磁気ヘッドとしては、磁気抵抗(MR)効果素子等の磁気検出素子と電磁コイル素子等の磁気記録素子とを積層した構造である複合型薄膜磁気ヘッドが広く用いられており、これらの素子によって磁気記録媒体である磁気ディスクにデータ信号が読み書きされる。
【0003】
一般に、磁気記録媒体は、いわば磁性微粒子が集合した不連続体であり、それぞれの磁性微粒子は単磁区構造となっている。ここで、1つの記録ビットは、複数の磁性微粒子から構成されている。従って、記録密度を高めるためには、磁性微粒子を小さくして、記録ビットの境界の凹凸を減少させなければならない。しかし、磁性微粒子を小さくすると、体積減少に伴う磁化の熱安定性の低下が問題となる。
【0004】
磁化の熱安定性の目安は、KUV/kBTで与えられる。ここで、KUは磁性微粒子の磁気異方性エネルギー、Vは1つの磁性微粒子の体積、kBはボルツマン定数、Tは絶対温度である。磁性微粒子を小さくするということは、まさにVを小さくすることであり、そのままではKUV/kBTが小さくなって熱安定性が損なわれる。この問題への対策として、同時にKUを大きくすることが考えられるが、このKUの増加は、記録媒体の保磁力の増加をもたらす。これに対して、磁気ヘッドによる書き込み磁界強度は、ヘッド内の磁極を構成する軟磁性材料の飽和磁束密度でほぼ決定されてしまう。従って、保磁力が、この書き込み磁界強度の限界から決まる許容値を超えると書き込みが不可能となってしまう。
【0005】
このような磁化の熱安定性の問題を解決する方法として、KUの大きな磁性材料を用いる一方で、書き込み磁界印加の直前に記録媒体に熱を加えることによって、保磁力を小さくして書き込みを行う、いわゆる熱アシスト磁気記録方式が提案されている。この方式は、磁気ドミネント記録方式と光ドミネント記録方式とに大別される。磁気ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は電磁コイル素子であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)に比べて大きくなっている。一方、光ドミネント記録方式においては、書き込みの主体は光放射部であり、光の放射径はトラック幅(記録幅)とほぼ同じとなっている。すなわち、磁気ドミネント記録方式は、空間分解能を磁界に持たせているのに対し、光ドミネント記録方式は、空間分解能を光に持たせている。
【0006】
このような熱アシスト磁気ヘッドとして、特許文献1には、電磁コイル素子に近接して光導波路を設けた熱アシスト磁気ヘッドが開示されている。この構成においては、発光素子の出射光を光導波路内に導入し、媒体対向面内にある光導波路の光出射面から出射させて、磁気記録媒体を局所的に加熱する。続いて、局所的に加熱され保磁力が低下している磁気記録媒体の局所領域に対して、電磁コイル素子によって書き込み磁界を印加して書き込みを行う。
【0007】
また、非特許文献1には、水晶のスライダ上に形成されたU字型の近接場光発生部を利用した熱アシスト磁気ヘッドが開示されている。この構成においては、近接場光発生部のU字型形状の湾曲部にレーザ光を照射して近接場光を発生させ、磁気記録媒体を局所的に加熱し、続いて、近接場光発生部に電流を流し、その湾曲部から発生する誘導磁界によって書き込みを行っている。
【特許文献1】特開2005−190655号公報
【非特許文献1】IEEE Trans. Magn. Vol.41, p.2817 (2005)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、上記特許文献1に記載の熱アシスト磁気ヘッドでは、高周波の記録周波数に対応することができず、高転送速度のハードディスク装置を実現することができないという問題点がある。
【0009】
即ち、上記特許文献1に使用される光導波路は、光の進行方向に沿って、高屈折率領域であるコアを低屈折領域であるクラッドによって包み込んだ構成となっている。そして、コアとクラッドは、光導波路としての機能を果たすためには、導入する光の波長よりも厚く形成する必要がある。例えば、光源として青色レーザを用いた場合には、コア及びクラッドは、それぞれ少なくとも400nm以上の厚さとする必要がある。
【0010】
従って、上記特許文献1に記載の熱アシスト磁気ヘッドでは、光導波路の出射面と電磁コイル間の距離が長く(例えば、400nm以上)となってしまい、磁気記録媒体を加熱してから記録磁界を印加するまでには、ある程度の時間が必要となる。そのため、磁気記録媒体を光照射によって加熱した後、その高温状態をある程度の時間保持する必要がある。その時間を見積もると、磁気記録媒体が5400rpmで回転し、磁気記録媒体の中心から20mm離れた部分の上方に磁気ヘッドが浮上している場合、磁気ヘッドと磁気記録媒体の相対位置が400nm移動するのに要する時間は、約35n秒となる。ところが、例えば1GHzの記録周波数では、1ビット当たり1n秒程度で磁気記録を行う必要があるため、上述のように35n秒もの時間にわたって磁気記録媒体の高温状態を保持する必要のある記録システムでは、高周波の記録周波数に対応することは困難である。
【0011】
この問題点を解消するためには、光照射部(媒体加熱部)と記録磁界印加部の位置が略一致した構造の磁気ヘッドとすればよい。その点、上記非特許文献1に記載の熱アシスト磁気ヘッドの構成は優れているが、この構成の場合、記録磁界の発生強度が不十分という問題点がある。
【0012】
即ち、熱アシスト磁気記録においては、磁気記録媒体の記録領域を、その保磁力が0になる程度まで加熱してしまうと、磁気記録媒体上の保護膜や潤滑材が熱分解等してしまう虞がある。そのような事態を防止するため、熱アシスト磁気記録時には、磁気記録媒体の記録領域を、その保磁力が0になるまで加熱するのではなく、その保磁力をある程度だけ低下させるように加熱した状態で記録磁界を印加する必要がある。そのためには、印加される記録磁界には十分な強度が必要であるが、非特許文献1に記載の熱アシスト磁気ヘッドは、誘導磁界を集中させる役割を果たす磁極を備えていないため、十分な強度の磁界を磁気記録媒体に印加することができない。その上、非特許文献1に記載の熱アシスト磁気ヘッドにおいては、積層面と媒体対向面が一致した構造となっており、従来の磁気ヘッドの構成とは異なっている。そのため、磁気検出素子と磁気記録素子とを積層した構造である複合型薄膜磁気ヘッドを従来の製造方法によって製造することができず、十分な性能を備えた熱アシスト磁気ヘッドを得ることが困難である。
【0013】
本発明は、このような課題に鑑みてなされたものであり、高周波の記録周波数に対応可能な熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ、及び、ハードディスク装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明に係る熱アシスト磁気ヘッドは、磁気記録媒体に対向する媒体対向面と、主磁極の先端から磁気記録媒体までの距離が、媒体対向面から磁気記録媒体までの距離よりも大きく設定される磁気記録素子と、熱アシスト用の光が入射される光導波路の第一コアと、第一コアの第一光出射面と媒体対向面との間に位置し、磁気記録媒体側に第二光出射面を有する光導波路の第二コアとを備え、第一光出射面内の光強度分布中心の第二光出射面を含む基準平面への正射影位置と、主磁極の先端の中心の基準平面への正射影位置との間の距離は、第二光出射面内の光強度分布中心と、主磁極の先端の中心の基準平面への正射影位置との間の距離よりも大きいことを特徴とする。
【0015】
本発明によれば、光導波路の第一コアに光を入射させると、媒体対向面側の第二光出射面から光が出射され、磁気記録媒体の記録領域を加熱する。磁気記録媒体が加熱されると、記録領域の保磁力が低下するため、磁気記録素子への通電によって発生した磁界を記録領域に印加することにより、容易に書き込みを行うことができる。
【0016】
さらに、本発明によれば、光導波路の第一コアを主磁極に沿って直線的に媒体対向面まで延長して光出射面を形成した場合と比較して、磁気ヘッドから磁気記録媒体に向けて出射される際の光の強度分布の中心と、記録磁界印加部である主磁極の先端とは、媒体対向面側から見た位置が近づけられている。即ち、第一コアの第一光出射面から出射した光は、第二コアの光入射面から入射し、媒体対向面側に設けられた第二光出射面から出射される。この際、第二コアは、第一コアの第一光出射面から出射される際の光の強度分布の中心より、第二コアの第二光出射面から出射される際の光の強度分布の中心の方が、媒体対向面側から見て主磁極側に近づける作用を有する。換言すると、第二コアは、入射された光を媒体対向面側から見て主磁極の先端側に近づけながら第二光出射面まで導く。これにより、磁気記録媒体を加熱してから、その加熱した記録領域へ書き込み磁界を印加するまでの時間を短縮することが可能である。その結果、磁気記録媒体の記録領域の高温状態を長時間保持する必要がなくなるため、磁気記録の際の記録周波数を高くすることが可能となる。
【0017】
さらに、主磁極の先端の中心の基準平面への正射影位置は、第二光出射面内にあることが好ましい。これにより、磁気ヘッドから磁気記録媒体に向けて出射される際の光の強度分布の中心と、記録磁界印加部である主磁極の先端とは、媒体対向面側から見た位置が略一致する。これにより、磁気記録媒体を加熱してから、その加熱した記録領域へ書き込み磁界を印加するまでの時間をさらに短縮することが可能となる。
【0018】
さらに、第二光出射面に近接場光発生部が設けられていることが好ましい。これにより、第一コアに光を入射させると、第二コアの第二光出射面に設けられた近接場光発生部に光を照射することができ、第二光出射面から近接場光を出射させることができる。この近接場光は、光導波路の第一コアに入射させた光と比較して非常に強度が強くなるため、磁気記録媒体の記録領域を十分に加熱することが可能となる。
【0019】
さらに、第二コアは、第一コア側から主磁極側へ向かう方向に沿って、実効的な屈折率が増加することが好ましい。これにより、第二コアが有する屈折率分布に基づく作用によって、第二コアの光入射面に入射された光を、媒体対向面側から見て主磁極の先端側に近づけながら第二光出射面まで導くことが可能となる。
【0020】
さらに、第二コアは、屈折率の異なる二種類の材料を交互に積層して形成したものであることが好ましい。これにより、第二コアの構造が簡単であるという効果を有する。
【0021】
また、第一コアは、主磁極のトラック幅方向に交差する側面に沿って延びており、かつ、主磁極をトラック幅方向に貫く直線と交差していることが好ましい。これにより、第一コアのビット長方向(磁気ヘッドの積層方向)の位置は、主磁極の先端の中心と、略一致する。そのため、第一コアの光出射面から出射して第二コアの光入射面に入射した光を、第二コアによってビット長方向に進行方向を曲げる必要がなくなる。その結果、第二コアの第二光出射面から出射される際の光の強度分布の中心を、媒体対向面側から見た主磁極の位置に確実に近づけることが可能となる。
【0022】
さらに、第一コアは、主磁極のトラック幅方向に交差する両側面に沿って延びていることが好ましい。これにより、第一コアは十分な強度の光を第二コアの光出射面に導くことができるため、磁気記録媒体を十分に加熱することが可能となる。
【0023】
本発明に係るHGAは、上述の熱アシスト磁気ヘッドと、熱アシスト磁気ヘッドを支持
するサスペンションとを備えることが好ましく、本発明に係るハードディスク装置は、上
記HGAと、媒体対向面に対向する磁気記録媒体とを備えることが好ましい。これにより、高周波の記録周波数に対応した熱アシスト磁気記録を行うハードディスク装置が得られる。
【発明の効果】
【0024】
本発明によれば、高周波の記録周波数に対応可能な熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ、及びハードディスク装置が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に、本発明を実施するための形態について、添付図面を参照しながら詳細に説明する。なお、各図面において、同一の要素は、同一の参照番号を用いて示されている。また、図面中の構成要素内及び構成要素間の寸法比は、図面の見易さのため、それぞれ任意となっている。
[第一実施形態]
【0026】
まず、本発明に係る熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置の第一実施形態について説明する。
(ハードディスク装置)
【0027】
図1は、実施の形態に係るハードディスク装置の斜視図である。
【0028】
ハードディスク装置1は、スピンドルモータ11の回転軸の回りを回転する複数の磁気記録媒体である磁気ディスク(磁気記録媒体)10、熱アシスト磁気ヘッド21をトラック上に位置決めするためのアセンブリキャリッジ装置12、この熱アシスト磁気ヘッド21の書き込み及び読み出し動作を制御し、さらに後に詳述する熱アシスト磁気記録用のレーザ光を発生させる光源であるレーザダイオードを制御するための記録再生及び発光制御回路(制御回路)13を備えている。
【0029】
アセンブリキャリッジ装置12には、複数の駆動アーム14が設けられている。これらの駆動アーム14は、ボイスコイルモータ(VCM)15によってピボットベアリング軸16を中心にして揺動可能であり、この軸16に沿った方向に積層されている。各駆動アーム14の先端部には、ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)17が取り付けられている。各HGA17には、熱アシスト磁気ヘッド21が、各磁気ディスク10の表面に対向するように設けられている。磁気ディスク10の表面に対向する面が熱アシスト磁気ヘッド21の媒体対向面S(エアベアリング面とも呼ばれる)である。なお、磁気ディスク10、駆動アーム14、HGA17及び熱アシスト磁気ヘッド21は、単数であってもよい。
(HGA)
【0030】
図2は、HGA17の斜視図である。同図は、HGA17の媒体対向面Sを上にして示してある。
【0031】
HGA17は、サスペンション20の先端部に、熱アシスト磁気ヘッド21を固着し、さらにその熱アシスト磁気ヘッド21の端子電極に配線部材203の一端を電気的に接続して構成される。サスペンション20は、ロードビーム200と、このロードビーム200上に固着され支持された弾性を有するフレクシャ201と、フレックシャの先端に板ばね状に形成されたタング部204と、ロードビーム200の基部に設けられたベースプレート202と、フレクシャ201上に設けられておりリード導体及びその両端に電気的に接続された接続パッドからなる配線部材203とから主として構成されている。
【0032】
なお、HGA17におけるサスペンションの構造は、以上述べた構造に限定されるものではないことは明らかである。なお、図示されていないが、サスペンション20の途中にヘッド駆動用ICチップを装着してもよい。
(熱アシスト磁気ヘッド)
【0033】
図3は、図1に示した熱アシスト磁気ヘッド21の近傍の拡大斜視図である。
【0034】
配線部材203は、記録信号用の一対の電極パッド237、237、読出信号用の一対の電極パッド238、238、光源駆動用の一対の電極パッド247、248に接続されている。
【0035】
熱アシスト磁気ヘッド21は、スライダ22と、光源支持基板230及び熱アシスト磁気記録用の光源となるレーザダイオード(発光素子)40を備えた光源ユニット23とが、スライダ基板220の背面(第1面)2201及び光源支持基板230の接着面(第2面)2300を接面させて接着、固定された構成を有している。ここで、スライダ基板220の背面2201は、スライダ22の媒体対向面Sとは反対側の面である。また、光源支持基板230の底面2301がフレクシャ201のタング部204に、例えば、エポキシ樹脂等の接着剤により接着されている。
【0036】
スライダ22は、スライダ基板220及びデータ信号の書き込み及び読み出しを行う磁気ヘッド部32を備えている。
【0037】
スライダ基板220は、板状を呈し、適切な浮上量を得るように加工された媒体対向面Sを有する。スライダ基板220は導電性のアルティック(Al2O3−TiC)等から形成されている。
【0038】
磁気ヘッド部32は、スライダ基板220の媒体対向面Sに対して略垂直な側面である集積面2202に形成されている。磁気ヘッド部32は、磁気情報を検出する磁気検出素子としてのMR効果素子33、磁界の生成により磁気情報を書き込む垂直(面内でも良い)磁気記録素子としての電磁コイル素子34、MR効果素子33及び電磁コイル素子34の間を通して設けられている平面導波路のコア35、磁気ディスクの記録層部分を加熱するための近接場光を発生させる近接場光発生部(プラズモン・プローブ)36、及び、これらMR効果素子33、電磁コイル素子34、コア35及び近接場光発生部36を覆うように集積面2202上に形成された絶縁層(クラッド)38とを備えている。
【0039】
更に、磁気ヘッド部32は、絶縁層38の露出面上に形成され、MR効果素子33の入出力端子にそれぞれ接続された一対の信号端子用の電極パッド371、371、電磁コイル素子34の両端にそれぞれ接続された一対の信号端子用の電極パッド373、373、及び、スライダ基板220と電気的に接続されたグランド用の電極パッド375を備えている。ビアホール375aを介して、スライダ基板220と電気的に接続された電極パッド375は、フレクシャ201の電極パッド247と、ボンディングワイヤにより接続されており、スライダ基板220の電位は電極パッド247により、例えばグラウンド電位に制御されている。
【0040】
MR効果素子33、電磁コイル素子34、及び近接場光発生部36の各端面は、媒体対向面S上に露出している。また、レーザダイオード40の両端は、それぞれ電極パッド47,48に接続されている。
【0041】
図4は、図3に示した熱アシスト磁気ヘッド21のIV−IV矢印断面図である。
【0042】
MR効果素子33は、MR積層体332と、このMR積層体332を挟む位置に配置されている下部シールド層330及び上部シールド層334とを含む。下部シールド層330及び上部シールド層334は、例えば、フレームめっき法を含むパターンめっき法等によって形成された厚さ0.5〜3μm程度のNiFe、CoFeNi、CoFe、FeN若しくはFeZrN等の磁性材料で構成することができる。上下部シールド層334及び330は、MR積層体332が雑音となる外部磁界の影響を受けることを防止する。
【0043】
MR積層体332は、面内通電型(CIP(CurrentIn Plane))巨大磁気抵抗(GMR(Giant Magneto Resistance))多層膜、垂直通電型(CPP(Current Perpendicular to Plane))GMR多層膜、又はトンネル磁気抵抗(TMR(Tunnel Magneto Resistance))多層膜等の磁気抵抗効果膜を含み、非常に高い感度で磁気ディスクからの信号磁界を感受する。
【0044】
MR積層体332は、例えば、TMR効果多層膜を含む場合、IrMn、PtMn、NiMn、RuRhMn等からなる厚さ5〜15nm程度の反強磁性層と、例えば強磁性材料であるCoFe等、又はRu等の非磁性金属層を挟んだ2層のCoFe等から構成されており反強磁性層によって磁化方向が固定されている磁化固定層と、例えばAl、AlCu等からなる厚さ0.5〜1nm程度の金属膜が真空装置内に導入された酸素によって又は自然酸化によって酸化された非磁性誘電材料からなるトンネルバリア層と、例えば強磁性材料である厚さ1nm程度のCoFe等と厚さ3〜4nm程度のNiFe等との2層膜から構成されておりトンネルバリア層を介して磁化固定層との間でトンネル交換結合をなす磁化自由層とが、順次積層された構造を有している。
【0045】
MR効果素子33とコア35との間には、下部シールド層330と同様の材料からなる素子間シールド層148が形成されている。素子間シールド層148は、MR効果素子33を、電磁コイル素子34より発生する磁界から遮断して読み出しの際の外来ノイズを防止する役割を果たす。また、素子間シールド層148とコア35との間に、さらに、バッキングコイル部が形成されていてもよい。バッキングコイル部は、電磁コイル素子34から発生してMR効果素子33の上下部電極層を経由する磁束ループを打ち消す磁束を発生させて、磁気ディスクへの不要な書き込み又は消去動作である広域隣接トラック消去(WATE)現象の抑制を図るものである。
【0046】
MR積層体332の媒体対向面Sとは反対側のシールド層330、334間、シールド層330、334、148の媒体対向面Sとは反対側、下部シールド層330とスライダ基板220との間、及び、素子間シールド層148とコア35との間にはアルミナ等から形成された絶縁層38が形成されている。
【0047】
なお、MR積層体332がCIP−GMR多層膜を含む場合、上下部シールド層334及び330の各々とMR積層体332との間に、アルミナ等により形成されたアルミナ等の絶縁用の上下部シールドギャップ層がそれぞれ設けられる。さらに、図示は省略するが、MR積層体332にセンス電流を供給して再生出力を取り出すためのMRリード導体層が形成される。一方、MR積層体332がCPP−GMR多層膜又はTMR多層膜を含む場合、上下部シールド層334及び330はそれぞれ上下部の電極層としても機能する。この場合、上下部シールドギャップ層とMRリード導体層とは不要であって省略される。
【0048】
MR積層体332のトラック幅方向の両側には、磁区の安定化用の縦バイアス磁界を印加するための、CoTa,CoCrPt,CoPt等の強磁性材料からなるハードバイアス層(図示せず)が形成される。
【0049】
平面導波路のコア35(第一コア)は、内部コア35bと、内部コア35bを積層方向(図4の左右方向)から挟むように設けられた外部コア35a、35cとで構成されている。コア35は、MR効果素子33と電磁コイル素子34との間に位置していて集積面(YZ平面)2202と平行に延びており、媒体対向面Sに設けられている導波路のコア30(第二コア)の媒体対向面Sとは反対側の面302まで延びている。コア35は、集積面2202と平行な2つの上面352a、下面352b、媒体対向面S側の端面となる光出射面353(第一光出射面)、及び、光出射面353とは反対側の光入射面354を有している。外部コア35a、35cは、内部コア35bよりも屈折率が小さい材料で形成されており、内部コア35bに対するクラッドとして機能する。また、コア35の上面352a、下面352bは、外部コア35a、35cよりも屈折率が小さくコア35に対するクラッドとして機能する絶縁層38と接している。
【0050】
このコア35は、レーザダイオード40の発光面からZ軸に沿って出射された後に光入射面354から入射した光を、上面352a、下面352bで反射させつつ、媒体対向面S側の端面である光出射面(第一光出射面)353に導くことが可能となっている。
【0051】
コア35は、何れの部分においても、絶縁層38を形成する材料よりも高い屈折率nを有する、例えばスパッタリング法等を用いて形成された誘電材料から構成されている。例えば、クラッドとしての絶縁層38が、SiO2(n=1.5)から形成されている場合、外部コア35a、35cを形成する材料(A)及び内部コア35bを形成する材料(B)の組み合せ(A,B)は、例えば(Al2O3,TaOX),(Al2O3,TiOX),(Al2O3,MgO),(Al2O3,HfO2)とすることができる。また、絶縁層38が、Al2O3(n=1.63)から形成されている場合、外部コア35a、35cを形成する材料(A)及び内部コア35bを形成する材料(B)の組み合せ(A,B)は、例えば(MgO,HfO2),(HfO2,TaOX),(MgO,TaOX),(MgO,TiOX),(TaOX,TiOX)とすることができる。コア35をこのような材料で構成することによって、材料そのものが有する良好な光学特性によるだけではなく、界面での全反射条件が整うことによって、レーザ光の伝播損失が小さくなる。なお、外部コア35a及び外部コア35cは、内部コア35bよりも屈折率が小さく、絶縁層38よりも屈折率が大きければ、それぞれ異なる材料で構成してもよい。また、コア35は、内部コア35bのみで構成してもよい。
【0052】
コア30は、コア35の光出射面353と、媒体対向面Sとの間に位置している。コア30の光入射面302はコア35の光出射面353と接し、コア30の光出射面301(第二光出射面)は、媒体対向面S内に設けられている。なお、光出射面301は、後述の近接場光発生部からの光が磁気記録媒体に到達する距離以内の範囲であれば、媒体対向面Sよりも深部(図4のZ軸方向)に位置してもよい。
【0053】
このコア30は、コア35の光出射面353から出射された光を、光入射面302から光出射面301まで図4の左方向に曲げながら導くことが可能となっている(詳細は後述)。
【0054】
近接場光発生部36は、コア30の光出射面301の図4における左端付近に配置されている板状部材である。近接場光発生部36は、その端面が媒体対向面Sに露出するようにコア30の光出射面301に埋設されている。そして、レーザダイオード40からの光が近接場光発生部36に照射されることで近接場光が発生する。近接場光発生部36に光を照射すると、近接場光発生部36を構成する金属内の電子がプラズマ振動し、その先端部において電界の集中が生じる。この近接場光の拡がりは、近接場光発生部の先端部の半径程度となるため、この先端部の半径をトラック幅以下とすれば、擬似的に出射光が回折限界以下にまで絞り込まれた効果を奏する。
【0055】
電磁コイル素子34は、垂直磁気記録用が好ましく、図4に示すように、主磁極(層)340、ギャップ層341a、コイル絶縁層341b、コイル層342、及び補助磁極層344を備えている。主磁極340は、コイル層342によって誘導された磁束を、書き込みがなされる磁気ディスク(媒体)の記録層まで収束させながら導くための導磁路であり、コイル層342の螺旋中心から媒体対向面Sの方向に向かって延びている。コイル層342に通電を行うと、主磁極340を介して磁界が主磁極340の媒体対向面S側の先端まで導かれ、その先端から書き込み磁界を発生させることができる。
【0056】
主磁極340に磁気的に結合した補助磁極層344の媒体対向面S側の端部は、補助磁極層344の他の部分よりも層断面が広いトレーリングシールド部を形成している。補助磁極層344は、主磁極340の媒体対向面S側の端部とアルミナ等の絶縁材料により形成されたギャップ層(クラッド)341a,コイル絶縁層341bを介して略対向している。このような補助磁極層344を設けることによって、媒体対向面S近傍における補助磁極層344と主磁極340との間において磁界勾配がより急峻になる。この結果、信号出力のジッタが小さくなって読み出し時のエラーレートを小さくすることができる。
【0057】
補助磁極層344は、例えば、厚さ約0.5〜約5μmの、例えばフレームめっき法、スパッタリング法等を用いて形成されたNi、Fe及びCoのうちいずれか2つ若しくは3つからなる合金、又はこれらを主成分として所定の元素が添加された合金等から構成されている。
【0058】
ギャップ層341aは、コイル層342と主磁極340とを離間しており、例えば、厚さ約0.01〜約0.5μmの、例えばスパッタリング法、CVD法等を用いて形成されたAl2O3又はDLC等から構成されている。
【0059】
コイル層342は、例えば、厚さ約0.5〜約3μmの、例えばフレームめっき法等を用いて形成されたCu等から構成されている。主磁極340の後端と補助磁極層344の媒体対向面Sから離れた部分とが結合され、コイル層342はこの結合部分を取り囲むように形成されている。
【0060】
コイル絶縁層341bは、コイル層342と、補助磁極層344とを離間し、例えば、厚さ約0.1〜約5μmの熱硬化されたアルミナやレジスト層等の電気絶縁材料から構成されている。
【0061】
図5は、熱アシスト磁気ヘッド21の回路図である。
【0062】
配線部材203を構成する配線の1つは、電極パッド247及び電極パッド47を介してレーザダイオード40のカソードに電気的に接続されており、別の配線は電極パッド248及び電極パッド48を介してレーザダイオード40のアノードに電気的に接続されている。電極パッド247,248間に駆動電流を供給するとレーザダイオード40が発光する。この光は、コア35、コア30及び媒体対向面S(図4参照)を介して磁気記録媒体の記録領域に照射される。
【0063】
配線部材203を構成する別の一対の配線は、電極パッド237、ボンディングワイヤBW及び電極パッド371を介して電磁コイル素子34の両端にそれぞれ接続されている。一対の電極パッド237間に電圧を印加すると、磁気記録素子としての電磁コイル素子34に通電が行われ、書き込み磁界が発生する。熱アシスト磁気ヘッド21では、レーザダイオード40から出射された光は、コア35の光入射面354に入射して、媒体対向面Sに設けられた光出射面301から出射し、磁気記録媒体の記録領域に照射される(図4参照)。したがって、媒体対向面Sに対向する磁気記録媒体の記録領域の温度が上昇し、記録領域の保持力が一時的に低下する。この保持力の低下期間内に電磁コイル素子34に通電を行い、書き込み磁界を発生させることで、記録領域に情報を書き込むことができる。
【0064】
配線部材203を構成する別の一対の配線は、電極パッド238、ボンディングワイヤBW及び電極パッド373を介してMR効果素子33の両端にそれぞれ接続されている。一対の電極パッド238に電圧を印加するとMR効果素子33にセンス電流が流れる。記録領域に書き込まれた情報は、MR効果素子33にセンス電流を流すことで読み出すことができる。
【0065】
次に、図6〜8を参照して、本実施形態における主磁極340、コア35及びコア30の構成について詳細に説明する。
【0066】
図6は、図4の断面図における主磁極層340付近の拡大図であり、図7はさらにコア30付近を拡大した図である。図6に示すように、主磁極340の先端3401は、媒体対向面SよりもR340の距離だけ深部(図6のZ軸方向)にあり、また、コア35の光出射面353は、媒体対向面SよりもR35の距離だけ深部にある。本実施形態においては、R340とR35の大きさは等しいが、異なっていてもよい。R340(又はR35)の大きさは、例えば0.3〜1.2μmとすることができ、主磁極340の前方に光を導くことができる。
【0067】
コア30は、コア35の光出射面353と、媒体対向面Sとの間に位置しており、コア35の光出射面と接する光入射面302、及び、光入射面302の反対側の光出射面301を有している。そして、光出射面301の左側の端部付近には、近接場光発生部36が設けられている。
【0068】
図7に示すように、コア30は、図7のX軸の方向に積層された複数の種類の材料からなる。具体的には、X軸方向の両端面には第一低屈折率層30aが形成され、これらの層の間に、高屈折率層30bと第二低屈折率層30cが交互に形成されている。これらの材料は、屈折率が互いに異なり、第一低屈折率層30aが最も屈折率が小さく、高屈折率層30bが最も屈折率が大きくなるように、これらの材料は選択される。
【0069】
また、各高屈折率層30bはそれぞれ同一の厚さとなっているが、各第二低屈折率層30cは、図7の左側に向かって漸次厚さが減少している。そのため、コア30は、図7の左側に向かうに従って、単位厚み当りの高屈折率層30bの割合が増加するため、コア30の部分的な領域に着目した場合の、その領域の平均的な屈折率(実効的な屈折率)は、図7の左側(コア30の、コア35側から主磁極340側へ向かう方向)に向かって漸次増加することとなる。これにより、コア30の光入射面302に入射させた光は、図7の左側に漸次曲がりながら光出射面301に向かうこととなり、光出射面301の左端付近に設けられた近接場光発生部36に照射される。
【0070】
第一低屈折率層30aとしては、光入射面302に入射した光を、図7の左右方向に逃がさないようにする観点から屈折率が低いものが好ましく、例えば、Al2O3,SiO2を用いることができる。また、高屈折率層30b(A)と第二低屈折率層30c(B)の組み合わせ(A,B)は、例えば、(TaOX,Al2O3),(MgO,Al2O3),(TaOX,MgO)とすることができる。
【0071】
なお、本実施形態においては、各高屈折率層30bの厚さはそれぞれ同一としたが、図7における左側に向かって実効的な屈折率が増加するように、各高屈折率層30bと各第二低屈折率層30cの厚さを選択すればよい。また、本実施形態においては、高屈折率層30bと第二低屈折率層30cを交互に積層させてコア30を形成しているため、コア30の構成が簡単になるという利点を有しているが、このような構成でなくても、例えば、図7の左側に向かって連続的に組成を変化させ、連続的に屈折率を増加させる構成も可能である。また、第一低屈折率層30aを特に設けない構成も可能である。
【0072】
コア30が有する上述の作用により、磁気記録媒体に照射される光の強度分布の中心と、磁気記録媒体に印加される磁場の強度分布の中心を、近づけることが可能となる。即ち、図6において、コア35から光が出射される際の、その光の強度分布の中心は光出射面353の中心となる。また、コア30から光が出射される際の、その光の強度分布の中心は光出射面301の近接場光発生部36が設けられている位置となる。また、主磁極から磁気記録媒体に磁場が印加される際の、その磁場の強度分布の中心は、主磁極340の先端3401の中心となる。なお、光強度分布の中心とはピーク強度を与える位置であり、先端の中心とは先端の平面図形の重心を意味する。
【0073】
そして、光出射面353の光強度分布の中心、光出射面301の光強度分布の中心、及び、主磁極の先端の中心を、光出射面301を含む基準平面S(本実施形態においては、光出射面301は媒体対向面S内に設けられているため、媒体対向面と同一の符号を使用する。)へ正射影した点は、それぞれ、C35、C30、及びC340となる。そして、本実施形態によれば、C30からC340までの距離であるS30は、C35からC340までの距離であるS35よりも短くなっている。換言すれば、距離S35は距離S30よりも大きい。
【0074】
図8は、図6のVIII−VIII線断面図である。主磁極340は、媒体対向面S側の先端部のトラック幅方向の幅が、媒体対向面Sとは反対側の基端部の幅よりも狭く形成されており、コイル層342(図4参照)による誘導磁場を集中させて、磁気記録媒体の記録領域に印加する。また、コア30は、媒体対向面S側に向かってトラック幅方向の幅が漸次狭くなり、先細り形状をなしている。これにより、コア30内を伝搬する光を集中させて近接場光発生部36に照射し、高強度の近接場光を発生させることが可能となっている。
【0075】
図9は、媒体対向面S側から見た磁気ヘッド主要部の平面図である。図9に示すように、媒体対向面S側から見て、光出射面301と主磁極340の先端3401位置は、トラック幅と直角の方向(ビット長方向)に近接している。そして、光出射面301から出射される光の強度分布の中心となる近接場光発生部36が設けられている位置と、主磁極340の先端3401は、ビット長方向に非常に近接することとなる。
【0076】
コア30の光出射面301のトラック幅方向の幅W30は、例えば、0.4〜5.0μmとすることができ、ビット長方向の長さH30は、例えば、0.8〜5.0μmとすることができる。
【0077】
また、主磁極層340は、例えばフレームめっき法、スパッタリング法等を用いて形成されたNi、Fe及びCoのうちいずれか2つ若しくは3つからなる合金、又はこれらを主成分として所定の元素が添加された合金等から構成されていることが好ましい。
【0078】
また、本実施形態における変形例を、図10〜13を用いて説明する。図10は、主磁極層340付近の拡大図であって図6に対応する図であり、図11は図10におけるXI−XI線断面図である。また、図12は、本変形例における媒体対向面S側から見た磁気ヘッド主要部の平面図であり、図13は、本変形例における磁気ヘッド部32の媒体対向面S側から見た斜視図である。
【0079】
本変形例は、コア30の位置・形状のみが異なる。即ち、図10〜13に示すように、コア30は、コア35の光出射面353と媒体対向面Sとの間だけでなく、主磁極340の先端3401と媒体対向面Sとの間にも設けられている。これにより、図10に示すように、光出射面301の光強度分布の中心、及び、主磁極の先端の中心を、基準平面Sにそれぞれ正射影した点である、C301及びC340の位置を略一致させることが可能となる。そして、図12に示すように、本変形例においては、媒体対向面S側から見ると、主磁極340の先端3401の位置は、光出射面301の位置と重複する。そして、主磁極340の先端3401の中心の基準平面Sへの正射影位置は、光出射面301内の近接場光発生部36の位置と略一致させることが可能となる。
【0080】
なお、磁気記録媒体Mに対向する媒体対向面Sと、主磁極340の先端3401から磁気記録媒体Mまでの距離M340が、媒体対向面Sから磁気記録媒体Mまでの距離MSよりも大きく設定されており、すなわち、主磁極340がヘッドの深部に位置しており、距離R340(又はR35)は上述のように設定される。
【0081】
以上の熱アシスト磁気ヘッド21は、媒体対向面S、媒体対向面Sの反対側に位置する第1面2201、及び媒体対向面と第1面2201との間に位置する側面を有するスライダ基板220と、媒体対向面S側とは反対側に光入射面354を有するコア35と、コア35の光出射面353と接する光入射面302を有し、媒体対向面S側に光出射面301を有するコア30と、光出射面301に近接した磁気記録素子34とを有し、スライダ基板220の側面の一つに固定された磁気ヘッド部32と、第1面2201に固定された第2面2300を有する光源支持基板230と、コア35の光入射面354に対向し、光源支持基板230に固定された発光素子40とを備えている(図4参照)。
【0082】
光源支持基板230にはレーザダイオード40が固定されており、スライダ基板220の第1面2201は光源支持基板230の第2面2300に固定されているので、スライダ基板220とレーザダイオード40との位置関係が固定される。レーザダイオード40はコア35の光入射面354に対向しているので、従来のような長距離の光伝播は行われず、取り付け誤差や光の結合損失を許容して、発光素子の出射光を媒体対向面まで導くことができる。
【0083】
図14は、媒体対向面Sから見た近接場光発生部36の斜視図である。
【0084】
近接場光発生部36は、媒体対向面Sから見て三角形状を呈し、導電材料により形成されている。三角形の底辺36dがスライダ基板220の集積面2202と平行すなわちトラック幅方向と平行に配置され、底辺と向き合う頂点36cが底辺36dよりも集積面2202側とは反対側に配置されている。近接場光発生部36の好ましい形態は、底辺36dの両端の2つの底角がいずれも同じとされた二等辺三角形である。
【0085】
近接場光発生部36の頂点36cの曲率半径rは5〜100nmとすることが好ましい。三角形の高さH36は、入射されるレーザ光の波長よりも十分に小さく、20〜400nmとすることが好ましい。底辺36dの幅Wは、入射されるレーザ光の波長よりも十分に小さく、20〜400nmとすることが好ましい。頂点36cの角度βは例えば60度である。
【0086】
近接場光発生部36の厚みT36は10〜100nmとすることが好ましい。
【0087】
このような近接場光発生部36がコア30の光出射面301に設けられていると、近接場光発生部36の頂点36c近傍に電界が集中して頂点36c近傍から媒体に向かって近接場光が発生する。
【0088】
近接場光は、入射されるレーザ光の波長及びコア35の形状にも依存するが、一般に、媒体対向面Sから見て近接場光発生部36の境界で最も強い強度を有する。特に、本実施形態では、近接場光発生部36に到達する光の電界ベクトルは、レーザダイオード40の積層方向(X方向)となる。したがって、頂点36c近傍にて最も強い近接場光の放射が起こる。すなわち、磁気ディスクの記録層部分を光により加熱する熱アシスト作用において、この頂点36c近傍と対向する部分が、主要な加熱作用部分となる。
【0089】
この近接場光の電界強度は、入射光に比べて桁違いに強く、この非常に強力な近接場光が、磁気ディスク表面の対向する局所部分を急速に加熱する。これにより、この局所部分の保磁力が、書き込み磁界による書き込みが可能な大きさまでに低下するので、高密度記録用の高保磁力の磁気ディスクを使用しても、電磁コイル素子34による書き込みが可能となる。なお、近接場光は、媒体対向面Sから磁気ディスクの表面に向かって、10〜30nm程度の深さまで到達する。従って、10nm又はそれ以下の浮上量である現状において、近接場光は、十分に記録層部分に到達することができる。また、このように発生する近接場光のトラック幅方向の幅や媒体移動方向の幅は、上述の近接場光の到達深さと同程度であって、また、この近接場光の電界強度は、距離が離れるに従って指数関数的に減衰するので、非常に局所的に磁気ディスクの記録層部分を加熱することができる。
【0090】
図15は、近接場光発生部36への入射光の波長λ(nm)と近接場光強度I(a.u.)との関係を示すグラフである。なお、近接場光発生部36の長さH36=100nmである。
【0091】
近接場光発生部36としてAlを用いた場合には入射光の波長λ(nm)が350nm付近に近接場光の強度ピークを有し、Agを用いた場合には530nm付近に強度ピークを有し、Auを用いた場合には650nm付近に強度ピークを有する。近接場光発生部36の材料としては、Al、Ag、Auの他、Cu、Pd、Pt、Rh又はIrを用いることができる。また、近接場光発生部36の材料として、これらの金属材料のうちのいくつかの組合せからなる合金を採用することもできる。
【0092】
図16は、近接場光発生部36への入射光の波長λ(nm)と近接場光強度I(a.u.)との関係を示すグラフである。なお、近接場光発生部36の材料はAuであり、長さH36は100nm、200nm、300nmである。長さH36は20〜400nmが好ましいが、短波長の光を入射させた方が、スペクトルの半値幅を狭くなる傾向にあり、入射光波長の揺らぎに対する近接場光強度変動の耐性が高くなる。
(光源ユニット)
【0093】
次いで、図3及び図4を再び参照して、熱アシスト磁気ヘッド21の光源ユニット23の構成要素について説明する。
【0094】
光源ユニット23は、光源支持基板230、及び、外形形状が板状のレーザダイオード発光素子40を主として備えている。
【0095】
光源支持基板230はアルティック(Al2O3−TiC)等からなる基板であり、スライダ基板220の背面2201に接着している接着面2300を有している。接着面2300にはアルミナ等の断熱層230aが形成されている。この接着面2300を底面とした際の一つの側面である素子形成面2302上に、アルミナ等の絶縁材料から形成された絶縁層41が設けられており、この絶縁層41の上に、電極パッド47、48が形成され、電極パッド47上にレーザダイオード40が固定されている。
【0096】
電極パッド47、48は、絶縁層41の表面かつ媒体対向面Sと交差する面411、言い換えると、スライダ基板220の集積面2202と平行な面411上に、レーザ駆動用に形成されている。
【0097】
電極パッド47は、図4に示すように、絶縁層41内に設けられたビアホール47aにより光源支持基板230と電気的に接続されている。また、電極パッド47は、レーザダイオード40駆動時の熱をビアホール47aを介して光源支持基板230側へ逃がすためのヒートシンクとしても機能する。
【0098】
電極パッド47は、図3に示すように、絶縁層41の面411の中央部にトラック幅方向に延びて形成されている。一方、電極パッド48は、電極パッド47からトラック幅方向に離間した位置に形成されている。各電極パッド47、48は、半田リフローによるフレクシャ201との接続のために、さらに、フレクシャ201側に向かって延びている。
【0099】
電極パッド47、48は、それぞれ、フレクシャ201の電極パッド247、248とリフロー半田により電気的に接続されており、これにより光源の駆動が可能となっている。また、電極パッド47は上述のように光源支持基板230と電気的に接続されているため、電極パッド247により光源支持基板230の電位を例えばグラウンド電位に制御することが可能となっている。
【0100】
電極パッド47、48は、例えば、厚さ10nm程度のTa、Ti等からなる下地層を介して形成された、厚さ1〜3μm程度の、例えば真空蒸着法やスパッタリング法等を用いて形成されたAu、Cu等の層から形成することができ。
【0101】
そして、レーザダイオード40は、電極パッド47の上にAu−Sn等の導電性の半田材料からなる半田層42(図4参照)により電気的に接続されている。このとき、レーザダイオード40は、電極パッド47の一部のみを覆うように電極パッド47に対して配置されている。
【0102】
図17は、発光素子40の斜視図である。
【0103】
発光素子(レーザダイオード)40は、通常、光学系ディスクストレージに使用されるものと同じ構造を有していてよく、例えば、n電極40aと、n−GaAs基板40bと、n−InGaAlPクラッド層40cと、第1のInGaAlPガイド層40dと、多重量子井戸(InGaP/InGaAlP)等からなる活性層40eと、第2のInGaAlPガイド層40fと、p−InGaAlPクラッド層40gと、*n−GaAs電流阻止層40hと、p−GaAsコンタクト層40iと、p電極40jとが順次積層された構造を有する。これらの多層構造の劈開面の前後には、全反射による発振を励起するためのSiO2、Al2O3等からなる反射膜50及び51が成膜されており、レーザ光が放射される出光端400には、一方の反射膜50における活性層40eの位置に開口が設けられている。このような発光素子40は、膜厚方向に電圧が印加されることにより、出光端400からレーザ光を出射する。
【0104】
放射されるレーザ光の波長λLは、例えば600〜650nm程度である。ただし、近接場光発生部36の金属材料に応じた適切な励起波長が存在することに留意しなければならない。例えば、近接場光発生部36としてAuを用いる場合、レーザ光の波長λLは、600nm近傍が好ましい。
【0105】
発光素子40の大きさは、上述したように、例えば、幅(W40)が200〜350μm、長さ(奥行き、L40)が250〜600μm、厚み(T40)が60〜200μm程度である。ここで、発光素子40の幅W40は、電流阻止層40hの対向端の間隔を下限として、例えば、100μm程度までに小さくすることができる。ただし、発光素子40の長さは、電流密度と関係する量であり、それほど小さくすることはできない。いずれにしても、発光素子40に関しては、搭載の際のハンドリングを考慮して、相当の大きさが確保されることが好ましい。
【0106】
また、この発光素子40の駆動においては、ハードディスク装置内の電源が使用可能である。実際、ハードディスク装置は、通常、例えば2V程度の電源を備えており、レーザ発振動作には十分の電圧を有している。また、発光素子40の消費電力も、例えば、数十mW程度であり、ハードディスク装置内の電源で十分に賄うことができる。
【0107】
発光素子40のn電極40aが電極パッド47にAuSn等の半田層42(図4参照)により固定されている。ここで、発光素子40の出光端(光出射面)400が図4の下向き(−Z方向)、すなわち出光端400が接着面2300と平行になるように発光素子40が光源支持基板230に固定されており、出光端400はスライダ22のコア35の光入射面354と対向可能となっている。実際の発光素子40の固定においては、例えば、電極パッド47の表面に厚さ0.7〜1μm程度のAuSn合金の蒸着膜を成膜し、発光素子40を乗せた後、熱風ブロア下でホットプレート等による200〜300℃程度までの加熱を行って固定すればよい。
【0108】
また、電極パッド48と、発光素子40のp電極40jと、がボンディングワイヤにより電気的に接続されている。なお、電極パッド47と接続される電極は、n電極40aでなくp電極40jでもかまわず、この場合、n電極40aが電極パッド48とボンディングワイヤにより接続される。さらに、発光素子40の支持基板側を段差状に加工することにより、ボンディングワイヤを用いない電気的な接続構造も可能である。
【0109】
ここで、上述したAuSn合金による半田付けをする場合、光源ユニットを例えば300℃前後の高温に加熱することになるが、本発明によれば、この光源ユニット23がスライダ22とは別に製造されるため、スライダ内の磁気ヘッド部がこの高温の悪影響を受けずに済む。
【0110】
そして、上述のスライダ22の背面2201と光源ユニット23の接着面2300とが、例えば、UV硬化型接着剤等の接着剤層44(図4参照)により接着されており、発光素子40の出光端400がコア35の光入射面354と対向するように配置されている。
【0111】
なお、発光素子40及び電極パッドの構成は、当然に、上述した実施形態に限定されるものではなく、例えば、発光素子40は、GaAlAs系等、他の半導体材料を用いた他の構成のものであってもよい。さらに、発光素子40と電極との半田付けに、他のろう材を用いて行うことも可能である。さらにまた、発光素子40を、ユニット基板上に直接、半導体材料をエピタキシャル成長させることによって形成してもよい。
(製造方法)
【0112】
以下、図18〜図26を参照し、第1実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッドの製造方法について説明する。各層の形成にはスパッタ法を用いることができるが、その他、化学的気相成長(CVD)法等を用いることも可能である。また、エッチングには、IBE(イオンビームエッチング)、RIE(反応性イオンエッチング)、希ガスを用いたスパッタリングなどのドライエッチングを用いることができるが、化学エッチング(ウェットエッチング)を用いることも可能である。
【0113】
図18(a)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図18(b)は図18(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXVIIIb−XVIIIb矢印断面図である。
【0114】
まず、クラッドとなる基板としての絶縁層38上にコア層30を形成する。コア層30の光出射面上には、近接場光発生部が形成されている。近接場光発生部の形成方法については後述する。
【0115】
図18(c)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図18(d)は図18(c)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXVIIId−XVIIId矢印断面図である。
【0116】
次に、先端部用のコア層30上にマスクとしてのホトレジスト70を塗布し、基端部用のコア層35(図19(d)参照)の形成予定領域が開口するように露光を行い、ホトレジスト70を現像処理し、レジストパターンを形成する。レジストパターンの形成後、ホトレジスト70の開口内の領域(コア層30)を絶縁層38の表面が露出するまでエッチングする。しかる後、溶剤を用いてホトレジスト70を剥離する。
【0117】
図19(a)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図19(b)は図19(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXIVb−XIVb矢印断面図である。
【0118】
ホトレジスト70の剥離後、基板上に基端部用のコア層35を形成する。コア層35の材料は基本的にはコア層30の材料と同一である。コア層30を複数の層から形成することも可能であり、この場合において、コア層35も光伝達が可能であれば、これと同一又は類似の層構造を採用することができ、光透過材料からなる。コア層35は、絶縁層(クラッド)38の露出表面上のみならず、周囲のコア層30上にも堆積される。
【0119】
図19(c)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図19(d)は図19(c)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXIVd−XIVd矢印断面図である。
【0120】
コア層35の堆積後、基板表面をコア層30が露出するまで化学機械研磨し、コア層35、30の被研磨表面が同一平面内に含まれるようにする。換言すれば、コア層35、30の絶縁層38からの高さは同一となり、露出平面は平坦化される。
【0121】
図20(a)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図20(b)は図20(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXb−XXb矢印断面図、図20(c)は図20(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXc−XXc矢印断面図である。
【0122】
上述の化学機械研磨工程を行った後、コア層30,35をフォトリソグラフィによって加工する。すなわち、断面XXc−XXc上のコア層30の中心部分が残留し、断面XXb上のコア層35の中心部分がコア層30の最大幅と等しい幅で残留するように、ホトレジスト70を平坦化された露出平面上に形成し、中心部分以外のコア層30,35を、ホトレジスト70をマスクとしてエッチングする。すなわち、コア層35の長手方向に垂直な幅が狭くなり、コア層30はコア層35の長手方向の一端に連続し、コア層35から離れるに従って幅が狭くなるように、ホトレジスト70が塗布され、続いて、露光及び現像される。
【0123】
図20(d)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図20(e)は図20(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXe−XXe矢印断面図、図20(f)は図20(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXf−XXf矢印断面図である。
【0124】
上述のホトレジスト70をマスクとして、コア層30、35のエッチングが行われる。このエッチングによって、コア層35の先端側にコア層30が連続し、コア層30は先端に向かうに従って幅が狭くなることになる。エッチングの終了後、ホトレジスト70が除去される。
【0125】
図21(a)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図21(b)は図21(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIb−XXIb矢印断面図、図21(c)は図21(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIc−XXIc矢印断面図である。
【0126】
上述のように加工されたコア層30,35及び絶縁層38の露出表面上に上部クラッド層となる絶縁層38を堆積する。なお、上部クラッド層は、下部クラッド層を構成する絶縁層38と同一材料であり、形成後には下部クラッド層と一体化するため、これらは同一符号を用いることとする。
【0127】
図21(d)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図21(e)は図21(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIe−XXIe矢印断面図、図21(f)は図21(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIf−XXIf矢印断面図である。
【0128】
次に、上部クラッド層となる絶縁層38を、表面が平坦になるまで化学機械研磨する。研磨後の露出表面とコア層30,35との間には絶縁層38が介在しており、これらの表面は絶縁層38によって被覆されている。
【0129】
図22(a)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図22(b)は図22(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIb−XXIIb矢印断面図、図22(c)は図22(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIc−XXIIc矢印断面図である。
【0130】
上記化学機械研磨工程の後、上部クラッド層となる絶縁層38の露出表面上にホトレジスト70を塗布し、コア層30の直上領域とコア層35の一部の先端部側領域のみが開口するようにホトレジスト70を露光、現像処理し、この先端部領域のみが開口したレジストパターンを形成する。このレジストパターンをマスクとして、絶縁層38をコア層30の表面が露出するまでエッチング(イオンミリング)し、絶縁層38の表面層を除去する。
【0131】
図22(d)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図22(e)は図22(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIe−XXIIe矢印断面図、図22(f)は図22(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIf−XXIIf矢印断面図である。
【0132】
上述のエッチング工程の後、ホトレジスト70からなるレジストパターンを溶剤を用いて除去する。ホトレジスト70を除去することにより、絶縁層38の全表面が露出することになる。
【0133】
図23(a)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図23(b)は図23(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIIb−XXIIIb矢印断面図、図23(c)は図23(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIIc−XXIIIc矢印断面図である。
【0134】
全表面が露出した絶縁層38上にホトレジスト70を塗布し、所定の露光及び現像処理を行ってレジストパターンを形成する。このレジストパターンは、コア層30の直上領域とコア層35の先端部側の一部領域が開口することで先端側に先端側開口領域OP1を有しており、開口領域OP1に連続しコア層30からコア層35に向かう方向に延びた基端側開口領域OP2を有している。このレジストパターンをマスクとして、基板上に磁性材料を堆積すると、コア層30の露出表面に接触し、コア層35に沿って延びる主磁極340が形成される。なお、磁性材料の堆積にあたってはメッキ法を用いることとし、必要に応じて磁性材料の下地に種層をスパッタ法などで形成しておいてもよい。
【0135】
図23(d)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図23(e)は図23(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIIe−XXIIIe矢印断面図、図23(f)は図23(d)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIIIf−XXIIIf矢印断面図である。
【0136】
上記レジストパターンをマスクとして、基板全面上に磁性材料を堆積した後、溶剤を用いてホトレジスト70を溶かすことで、リフトオフ等のホトレジスト70の剥離工程を実行し、上記開口内のみに磁性材料が残留してなる主磁極340を形成する。主磁極340の幅はコア層30からコア層35に向かうに従って広くなっており、基端部側ではコア層35よりも幅広になるように設定されている。
【0137】
図24(a)は熱アシスト磁気ヘッド中間体の平面図、図24(b)は図24(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIVb−XXIVb矢印断面図、図24(c)は図24(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIVc−XXIVc矢印断面図、図24(d)は図24(a)に示した熱アシスト磁気ヘッド中間体のXXIVd−XXIVd矢印断面図である。
【0138】
主磁極340cの形成後、基板全面上に保護膜及び先端側のコア層30に対するクラッド層として機能する絶縁層38を堆積し、絶縁層38の表面を主磁極340の表面が露出し、且つ、露出表面が平坦になるまで化学機械研磨する。絶縁層38はAl2O3等から形成される。なお、主磁極340の先端側は、コア層30の先端部に形成された近接場光発生部36が所定の厚みになるまで研磨される。なお、上述のコア層35は、例えば、内側のコア材料と外側のコア材料からなる二重構造としてもよく、また、単一の材料からなることとしてもよい。
【0139】
次に、上述の近接場光発生部となる金属層36aの形成されたコア層30の製造方法について説明する。
【0140】
まず、図25の(a)に示すように、最初に、Al2O3等の絶縁層38a上に、コア層30の一部となる、絶縁層38aよりも屈折率の高いTa2O5等の誘電体多層膜30Xを成膜し、その上に、Au等の金属層36aを製膜し、その上に、リフトオフ用の底部が窪んだレジストパターン1002を形成する。
【0141】
次いで、図25の(b)に示すように、イオンミリング法等を用いて、レジストパターン1002の直下を除いて、金属層36aの不要部分を除去することにより、誘電体多層膜30Xの上に下部が広い台形状の金属層36aが積層されたパターンが形成される。
【0142】
その後、図25の(c)に示すように、レジストパターン1002を除去した後に、台形状の金属層36aの両斜面側からそれぞれイオンミリング法等により各斜面の一部をそれぞれ除去して、断面三角形状の金属層36aを形成する。
【0143】
続いて、図25の(d)に示すように、金属層36aを覆うように誘電体多層膜30X上に誘電体多層膜30Xと同じ材料による単層又は多層の誘電体膜30Pを成膜し、将来媒体対向面が形成される側に金属層36aの端面を形成するためのレジストパターン1003を積層し、図26の(a)に示すように、将来媒体対向面が形成される側とは反対側において、金属層36a及び誘電体膜30Pをイオンミリング法等により除去し、その後、除去した部分に誘電体膜30Pとは同じ材料によりなる単一又は多層の誘電体膜30Yを成膜する。
【0144】
さらに、図26の(b)に示すように、誘電体膜30P及び30Y上に、さらに、誘電体膜30Yと実効的な屈折率が異なる単一又は多層の誘電体膜30Zを積層することにより、近接場光発生部36の元になる金属層36aが埋め込まれたコア層30が完成する。図26の(b)の手前側の面がABS面となるが、この面は、クラッド及び主磁極の形成後にラッピングを行うことで、金属層36aが所定の厚みになるまで研磨され、したがって、三角形状の近接場光発生部36が光出射面(ABS面)上に形成されることになる。
【0145】
以上の工程により、近接場光発生部36を備えたコア層30を形成することができる。その後、公知の方法により、図4に示したような電磁コイル素子34を形成し、その後、アルミナ等による絶縁層38を形成し、接続のための電極パッド371等を形成し、その後エアベアリング面やその裏面のラッピングを行うことによりスライダ22が完成する。この後、スライダ22の電磁コイル素子34やMR効果素子33のテストを各スライダごとに行い、良品を選別する。続いて、図4に示した光源ユニット23を組み立てて良品を選別する。
【0146】
次に、図27(a)に示すように、良品とされた光源ユニット23の接着面2300と、良品とされたスライダ22の背面2201のいずれか又は両方にUV硬化型接着剤44aを塗布する。UV硬化型接着剤としては、UV硬化型エポキシ樹脂や、UV硬化型アクリル樹脂等が挙げられる。
【0147】
そして、図27(b)に示すように、光源ユニット23の接着面2300とスライダ22の背面2201とを重ね合わせた後、電極パッド47,48間に電圧を印加して端面発光型の発光素子40を発光させると共に、コア層35の光出射面353に光検出器DTを対向配置し、光源ユニット23とスライダ22とを相対的に図27(b)の矢印方向に移動させ、最も光検出器DTの出力が高くなる位置を探し出し、その位置で、外部からUV硬化型接着剤に紫外線を照射することによりUV硬化型接着剤44aを硬化させ、これによりレーザダイオードの光軸とコア層35の光軸とを合わせた状態で光源ユニット23とスライダ22との接着をすることができる。
(作用)
【0148】
続いて、本実施形態にかかる熱アシスト磁気ヘッド21の作用について説明する。
【0149】
書き込み又は読み出し動作時には、熱アシスト磁気ヘッド21は、回転する磁気ディスク(媒体)10の表面上において流体力学的に所定の浮上量をもって浮上する。この際、MR効果素子33及び電磁コイル素子34の媒体対向面S側の端が磁気ディスク10と微小なスペーシングを介して対向することによって、データ信号磁界の感受による読み出しとデータ信号磁界の印加による書き込みとが行われる。
【0150】
ここで、データ信号の書き込みの際、光源ユニット23からコア35を通って伝播してきたレーザ光が近接場光発生部36に到達し、近接場光発生部36から近接場光が発生する。この近接場光によって、熱アシスト磁気記録を行うことが可能となる。
【0151】
熱アシスト磁気記録方式を採用することにより、高保磁力の磁気ディスクに垂直磁気記録用の薄膜磁気ヘッドを用いて書き込みを行い、記録ビットを極微細化することによって、例えば、1Tbits/in2級の記録密度を達成することも可能となり得る。
【0152】
さらに、本実施形態においては、コア35の光出射面353から出射した光は、コア30の光入射面302から入射し、媒体対向面S側に設けられた光出射面301から出射される。この際、コア30の作用により、コア35の光出射面353から出射される際の光の強度分布の中心より、コア30の光出射面301から出射される際の光の強度分布の中心の方が、媒体対向面S側から見て主磁極340の先端3401に近くなる(図6参照)。これにより、磁気記録媒体を加熱してから、その加熱した記録領域へ書き込み磁界を印加するまでの時間を短縮することが可能となる。その結果、磁気記録媒体の記録領域の高温状態を長時間保持する必要がなくなるため、磁気記録の際の記録周波数を高くすることが可能となる。
【0153】
特に本実施形態の変形例においては、媒体対向面S側から見て、コア30の光出射面301から出射される際の光の強度分布の中心と、主磁極340の先端3401の中心とを略一致させることが可能であるため、磁気記録媒体の加熱と、その加熱した記録領域への書き込み磁界の印加を略同時に行うことが可能である。その結果、磁気記録の際の記録周波数をさらに高くすることが可能である。
【0154】
本実施形態においては、主磁極340の先端3401は、媒体対向面SからR340の距離だけ深部に設けられている。そのため、媒体対向面S内に主磁極340の先端3401を設けた場合と比較して、磁気記録媒体に印加される磁場の強度は多少減少する。図28に、記録磁場強度と、媒体対向面Sから主磁極340の先端3401までの距離R340(リセス量)との関係のシミュレーション結果を示す。図に示すように、リセス量が増えると、記録磁場強度は単調に減少することがわかる。
【0155】
しかし、距離R340を大きくする程、媒体対向面S側から見て、コア30の光出射面301から出射される際の光の強度分布の中心と、主磁極340の先端3401の中心とをより近づけることが可能となる。従って、R340の大きさを適宜選択することにより、記録磁界の強度減少を許容される範囲に保ちつつ、記録周波数の性能が向上された磁気ヘッドを得ることができる。好適な距離R340の範囲は0.4〜0.8μmである。
【0156】
そして、本実施形態では、光源ユニット23を用いることによって、スライダ22のコア35の光入射面(端面)354に、コア35の層面に平行な方向に伝播するレーザ光を入射させることができる。すなわち、集積面2202と媒体対向面Sとが垂直である構成を有する熱アシスト磁気ヘッド21において、適切な大きさ及び方向を有するレーザ光が、確実に供給可能となる。その結果、磁気ディスクの記録層の加熱効率が高い熱アシスト磁気記録を実現可能とする。
【0157】
そして、本実施形態によれば、磁気ヘッド部32がスライダ基板220に固定され、光源であるレーザダイオード40が光源支持基板230にそれぞれ別に固定されているので、スライダ基板220に固定された電磁コイル素子34と、光源支持基板230に固定されたレーザダイオード40とをそれぞれ独立に試験した上で、良品であるスライダ22と良品である光源ユニット23とを互いに固定することにより良品である熱アシスト磁気ヘッド21を歩留まり良く製造できる。
【0158】
また、磁気ヘッド部32がスライダ基板220の側面に設けられているので、従来の薄膜磁気ヘッドの製造方法を用いて磁気ヘッド部32の電磁コイル素子34やMR効果素子33等を容易に形成できる。
【0159】
さらに、レーザダイオード40が媒体対向面Sから離れた位置かつスライダ22の近傍にあるので、レーザダイオード40から発生する熱による電磁コイル素子34やMR効果素子33等への悪影響やレーザダイオード40と磁気ディスク10との接触等の可能性が抑制されると共に、光ファイバ、レンズ、ミラー等が必須では無いので光の伝播損失が低減でき、さらに、磁気記録装置全体の構造も簡単にできる。
【0160】
また、本実施形態では、光源支持基板230の裏面に断熱層230aが形成されているので、レーザダイオード40から発生する熱がより一層スライダ22に伝導しにくくなっている。
【0161】
また、上記実施形態では、スライダ基板220と光源支持基板230とには、同じアルティック製の基板を採用しているが、異なる材料の基板を用いることも可能である。この場合でも、スライダ基板220の熱伝導率をλs、光源支持基板230の熱伝導率をλlとすると、λs≦λlを満たすようにすることが好ましい。これにより、レーザダイオード40が発生する熱を、なるべくスライダ基板220に伝わらないようにしつつ光源支持基板230を通して外部に逃がすことが容易となる。
【0162】
なお、スライダ22及び光源ユニット23の大きさは任意であるが、例えば、スライダ22は、トラック幅方向の幅700μm×長さ(奥行き)850μm×厚み230μmの、いわゆるフェムトスライダであってもよい。この場合、光源ユニット23は、これとほぼ同じ幅及び長さを有することができる。実際、例えば、通常用いられるレーザダイオードの典型的な大きさは、幅250μm×長さ(奥行き)350μm×厚み65μm程度であり、例えば、この大きさの光源支持基板230の側面にこの大きさのレーザダイオード40を設置することが、十分に可能となっている。なお、光源支持基板230の底面に溝を設け、この溝内にレーザダイオード40を設けることも可能である。
【0163】
また、電磁コイル素子34が、長手磁気記録用であってもかまわない。この場合、主磁極層340及び補助磁極層344の代わりに、下部磁極層及び上部磁極層が設けられ、さらに、下部磁極層及び上部磁極層の媒体対向面S側の端部に挟持された書き込みギャップ層が設けられる。この書き込みギャップ層位置からの漏洩磁界によって書き込みが行われる。
[第二実施形態]
【0164】
次に、本発明に係る熱アシスト磁気ヘッド、ヘッドジンバルアセンブリ及びハードディスク装置の第二実施形態について図29〜図33を用いて説明する。図29〜図33は、それぞれ第一実施形態の図4、図6、図8、図9、図13に対応する。第二実施形態は、主磁極340、コア35、コア30及び近接場光発生部36の態様が第一実施形態と異なる。
【0165】
図29及び図30に示すように、主磁極340の先端3401及びコア30の光出射面353は、第一実施形態と同様に、媒体対向面SからR340(R35)だけ深部に位置している。また、コア30は、コア35の光出射面353と、媒体対向面Sとの間に位置している点も同様である。しかし、第一実施形態とは異なり、主磁極340は、コア35の上面352aとは接しておらず、図3のIV−IV線断面から見た位置は、一致している。また、近接場光発生部36は、コア30の光出射面301の中心に設けられている点においても第一実施形態と異なっている。
【0166】
図31は、図30のXXXI−XXXI線断面図である。図に示すように、コア35は、主磁極340をトラック幅方向の両側面から挟み込む形状をしている。即ち、コア35は、主磁極340のトラック幅方向に交差する側面((*)XZ面及びXZ面をX軸周りに±90度よりも小さい角度で回転させた面)に沿って延びており、かつ、主磁極340をトラック幅方向に貫く直線と交差している。
【0167】
コア30は、第一実施形態の変形例と同様に、コア35の光出射面353と媒体対向面Sとの間だけでなく、主磁極340の先端3401と媒体対向面Sとの間にも設けられている。また、媒体対向面S側に向かってトラック幅方向の幅が漸次狭くなり、先細り形状をなしていることによって、コア30内を伝搬する光を集中させて近接場光発生部36に照射し、高強度の近接場光を発生させることが可能となっている点においても、第一実施形態と同様である。しかし、コア30は、積層構造としたものではなく、コア30全体が例えばコア35の内部コア35bを構成する材料と同様の材料で構成されている。
【0168】
図32は、媒体対向面S側から見た第二実施形態に係る磁気ヘッド主要部の平面図であり、図33は、第二実施形態における磁気ヘッド部32の媒体対向面S側から見た斜視図である。これらの図に示すように、媒体対向面S側から見ると、主磁極340の先端3401の位置は、光出射面301の位置と重複する。そして、主磁極340の先端3401の中心の基準平面Sへの正射影位置は、光出射面301内の近接場光発生部36の位置と略一致させることが可能となる。
【0169】
なお、磁気記録媒体Mに対向する媒体対向面Sと、主磁極340の先端3401から磁気記録媒体Mまでの距離M340が、媒体対向面Sから磁気記録媒体Mまでの距離MSよりも大きく設定されており、すなわち、主磁極340がヘッドの深部に位置しており、距離R340(又はR35)は上述のように設定される。
【0170】
第二実施形態においては、図31に示すように、光出射面353の光強度分布の中心、光出射面301の光強度分布の中心、及び、主磁極340の先端3401の中心を、光出射面301を含む基準平面S(第二実施形態においても、光出射面301は媒体対向面S内に設けられているため、媒体対向面と同一の符号を使用する。)へ正射影した点を、それぞれ、C35、C30、及びC340とした場合、C30からC340までの距離(S30=0)は、C35からC340までの距離S35よりも短くなっている。換言すれば、距離S35は距離(S30)よりも大きい。そのため、第一実施形態における場合と同様に、磁気記録媒体を加熱してから、その加熱した記録領域へ書き込み磁界を印加するまでの時間を短縮することが可能となる。その結果、磁気記録媒体の記録領域の高温状態を長時間保持する必要がなくなるため、磁気記録の際の記録周波数を高くすることが可能となる。
【0171】
さらに、第二実施形態においては、コア35のビット長方向(磁気ヘッドの積層方向)の位置は、主磁極340の先端3401の中心と、略一致する。そのため、コア35の光出射面353から出射してコア30の光入射面302に入射した光を、コア30によってビット長方向に進行方向を曲げる必要がなくなる。その結果、コア30の光出射面301から出射される際の光の強度分布の中心を、媒体対向面S側から見た主磁極340の位置に確実に近づけることが可能となる。
【0172】
なお、図31において、コア35は、主磁極340のトラック幅方向の両側面に沿って延びているが、一方の側面のみに沿って延びていても構わない。
【0173】
本発明は上記実施形態に限定されるものではない。
【0174】
例えば、近接光発生部の形状は、上述のものに限られず、たとえば、三角形でなく頂点36cが平らになった台形状でも実施可能であり、また、三角形状または台形状の板を、その頂点同士または短辺同士が所定距離離間して対向するように一対配置した、いわゆる「蝶ネクタイ型」構造でも実施可能である。
【0175】
図34は、「蝶ネクタイ型」構造の近接場光発生部36の斜視図である。一対の近接場光発生部36がX軸に沿って対向して配置されており、その頂点36c同士が所定の間隔を隔てて突き合されている。この「蝶ネクタイ型」構造においては、頂点36c間の中心部に非常に強い電界の集中が発生し、近接場光が生じる。
【0176】
また、コイル層342は、図4等において1層であるが、2層以上又はヘリカルコイルでもよい。
【0177】
また、断熱層230aは、スライダ基板220の背面2201に形成されていてもよく、全く設けなくても実施は可能である。
【0178】
また、光源ユニット23とスライダ22との接着に、UV硬化型接着剤以外の接着剤例えば、レーザダイオード40と電極パッド47との接着に用いたAuSn等の半田層を用いても実施は可能である。
【0179】
なお、上記熱アシスト磁気ヘッド及びHGAを備えたハードディスク装置では、高周波の記録周波数に対応した熱アシスト磁気記録が実現可能である。
【0180】
以上述べた実施形態は全て本発明を例示的に示すものであって限定的に示すものではなく、本発明は他の種々の変形態様及び変更態様で実施することができる。従って本発明の範囲は特許請求の範囲及びその均等範囲によってのみ規定されるものである。
【図面の簡単な説明】
【0181】
【図1】実施の形態に係るハードディスク装置の斜視図である。
【図2】HGA17の斜視図である。
【図3】図1に示した熱アシスト磁気ヘッド21の近傍の拡大斜視図である。
【図4】図3に示した熱アシスト磁気ヘッド21のIV−IV矢印断面図である。
【図5】熱アシスト磁気ヘッド21の回路図である。
【図6】図4に示した断面図のコア35近傍の拡大断面図である。
【図7】図6に示した断面図のコア30の拡大断面図である。
【図8】図6のVIII−VIII矢印断面図である。
【図9】媒体対向面側から見た磁気ヘッド主要部の平面図である。
【図10】第一実施形態の変形例におけるコア35近傍の拡大断面図である。
【図11】図10のXI−XI断面図である。
【図12】第一実施形態の変形例における媒体対向面側から見た磁気ヘッド主要部の平面図である。
【図13】第一実施形態の変形例における磁気ヘッド部32の媒体対向面側から見た斜視図である。
【図14】媒体対向面Sから見た近接場光発生部36の斜視図である。
【図15】近接場光発生部36への入射光の波長λ(nm)と近接場光強度I(a.u.)との関係を示すグラフである。
【図16】近接場光発生部36への入射光の波長λ(nm)と近接場光強度I(a.u.)との関係を示すグラフである。
【図17】発光素子40の斜視図である。
【図18】コア35及び主磁極340の形成方法の一実施形態の一部を説明する工程図である。
【図19】コア35及び主磁極340の形成方法の一実施形態の一部を説明する工程図である。
【図20】コア35及び主磁極340の形成方法の一実施形態の一部を説明する工程図である。
【図21】コア35及び主磁極340の形成方法の一実施形態の一部を説明する工程図である。
【図22】コア35及び主磁極340の形成方法の一実施形態の一部を説明する工程図である。
【図23】コア35及び主磁極340の形成方法の一実施形態の一部を説明する工程図である。
【図24】コア35及び主磁極340の形成方法の一実施形態の一部を説明する工程図である。
【図25】近接場光発生部36を備えたコア層30の形成方法の一実施形態を説明する斜視図である。
【図26】近接場光発生部36を備えたコア層30の形成方法の一実施形態を説明する斜視図である。
【図27】熱アシスト磁気ヘッドの製造方法を示す斜視図である。
【図28】記録磁場強度と、主磁極340のリセス量との関係のシミュレーション結果を示す図である。
【図29】第二実施形態に係る熱アシスト磁気ヘッド21の断面図である。
【図30】図29に示した断面図のコア35近傍の拡大断面図である。
【図31】図30のXXXI−XXXI線断面図である。
【図32】第二実施形態における磁気ヘッド部32の媒体対向面側から見た斜視図である。
【図33】第二実施形態における磁気ヘッド部32の媒体対向面側から見た斜視図である。
【図34】「蝶ネクタイ型」構造の近接場光発生部36の斜視図である。
【符号の説明】
【0182】
1…ハードディスク装置、10…磁気ディスク(記録媒体)、17…ヘッドジンバルアセンブリ(HGA)、20…サスペンション、21…熱アシスト磁気ヘッド、22…スライダ、220…スライダ基板、2202…集積面、23…光源ユニット、230…光源支持基板、30…コア(第二コア)、301…光出射面(第二出射面)、302…光入射面、32…磁気ヘッド部、33…MR効果素子(磁気検出素子)、34…電磁コイル素子(磁気記録素子)、340…主磁極、3401…主磁極の先端、35…コア(第一コア)、353…光出射面(第一光出射面)、354…光入射面(端面)、36…近接場光発生部、38…絶縁層(クラッド)、40…レーザダイオード(光源)、400…出光端、S…媒体対向面。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
磁気記録媒体に対向する媒体対向面と、
主磁極の先端から磁気記録媒体までの距離が、前記媒体対向面から磁気記録媒体までの距離よりも大きく設定される磁気記録素子と、
熱アシスト用の光が入射される光導波路の第一コアと、
前記第一コアの第一光出射面と前記媒体対向面との間に位置し、前記磁気記録媒体側に第二光出射面を有する光導波路の第二コアと、
を備え、
前記第一光出射面内の光強度分布中心の前記第二光出射面を含む基準平面への正射影位置と、前記主磁極の先端の中心の前記基準平面への正射影位置との間の距離は、
前記第二光出射面内の光強度分布中心と、前記主磁極の先端の中心の前記基準平面への正射影位置との間の距離よりも大きいことを特徴とする熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項2】
前記主磁極の先端の中心の前記基準平面への正射影位置は、前記第二光出射面内にあることを特徴とする請求項1に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項3】
前記第二光出射面に近接場光発生部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項4】
前記第二コアは、前記第一コア側から前記主磁極側へ向かう方向に沿って、実効的な屈折率が増加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項5】
前記第二コアは、屈折率の異なる二種類の材料を交互に積層して形成したものであることを特徴とする請求項4に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項6】
前記第一コアは、前記主磁極のトラック幅方向に交差する側面に沿って延びており、かつ、前記主磁極をトラック幅方向に貫く直線と交差していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項7】
前記第一コアは、前記主磁極のトラック幅方向に交差する両側面に沿って延びていることを特徴とする請求項6に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱アシスト磁気ヘッドと、
前記熱アシスト磁気ヘッドを支持するサスペンションと、
を備えたヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項9】
請求項8に記載のヘッドジンバルアセンブリと、
前記媒体対向面に対向する前記磁気記録媒体と、
を備えたハードディスク装置。
【請求項1】
磁気記録媒体に対向する媒体対向面と、
主磁極の先端から磁気記録媒体までの距離が、前記媒体対向面から磁気記録媒体までの距離よりも大きく設定される磁気記録素子と、
熱アシスト用の光が入射される光導波路の第一コアと、
前記第一コアの第一光出射面と前記媒体対向面との間に位置し、前記磁気記録媒体側に第二光出射面を有する光導波路の第二コアと、
を備え、
前記第一光出射面内の光強度分布中心の前記第二光出射面を含む基準平面への正射影位置と、前記主磁極の先端の中心の前記基準平面への正射影位置との間の距離は、
前記第二光出射面内の光強度分布中心と、前記主磁極の先端の中心の前記基準平面への正射影位置との間の距離よりも大きいことを特徴とする熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項2】
前記主磁極の先端の中心の前記基準平面への正射影位置は、前記第二光出射面内にあることを特徴とする請求項1に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項3】
前記第二光出射面に近接場光発生部が設けられていることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項4】
前記第二コアは、前記第一コア側から前記主磁極側へ向かう方向に沿って、実効的な屈折率が増加することを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項5】
前記第二コアは、屈折率の異なる二種類の材料を交互に積層して形成したものであることを特徴とする請求項4に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項6】
前記第一コアは、前記主磁極のトラック幅方向に交差する側面に沿って延びており、かつ、前記主磁極をトラック幅方向に貫く直線と交差していることを特徴とする請求項1〜3のいずれか一項に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項7】
前記第一コアは、前記主磁極のトラック幅方向に交差する両側面に沿って延びていることを特徴とする請求項6に記載の熱アシスト磁気ヘッド。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか一項に記載の熱アシスト磁気ヘッドと、
前記熱アシスト磁気ヘッドを支持するサスペンションと、
を備えたヘッドジンバルアセンブリ。
【請求項9】
請求項8に記載のヘッドジンバルアセンブリと、
前記媒体対向面に対向する前記磁気記録媒体と、
を備えたハードディスク装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図20】
【図21】
【図22】
【図23】
【図24】
【図25】
【図26】
【図27】
【図28】
【図29】
【図30】
【図31】
【図32】
【図33】
【図34】
【公開番号】特開2008−243296(P2008−243296A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−82764(P2007−82764)
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年3月27日(2007.3.27)
【出願人】(000003067)TDK株式会社 (7,238)
【Fターム(参考)】
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