説明

熱アシスト磁気記録ヘッドおよび磁気記録装置

【課題】熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、温度変化や振動などの外乱や半導体レーザの経時劣化により、導波路を伝播する光の強度が揺らいでしまう。媒体表面に入射する光の強度が揺らぐと、磁気記録装置は、安定した記録ができなくなる。
【解決手段】熱アシスト磁気記録ヘッドの主磁極6近傍へ光を導くための導波路1の近傍に、導波路2を形成し、導波路1を伝播する光の一部を導波路2へ分岐させる。導波路2を伝わる光を光検出器16で検出することにより、導波路1を伝播する光の強度を検出する。磁気記録装置は、光検出器16に入る光量が多い場合は、半導体レーザ25の強度を小さくし、光検出器16に入る光量が少ない場合は、半導体レーザ25の強度を大きくする。このようにフィードバックループを構成することにより、導波路1中を伝播する光の強度を一定に保つ。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱アシスト磁気記録ヘッドおよび磁気記録装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、1Tb/in2以上の記録密度を実現する記録方式として、熱アシスト磁気記録方式が提案されている(非特許文献1)。従来の磁気記録装置では、記録密度が1Tb/in2以上になると、熱揺らぎによる記録情報の消失が問題となる。これを防ぐためには、磁気記録媒体の保磁力を上げる必要があるが、記録ヘッドから発生させることができる磁界の大きさには限りがあるため、保磁力を上げすぎると媒体に記録ビットを形成することが不可能となる。これを解決するために、熱アシスト記録方式では、記録の瞬間、媒体を光で加熱し保磁力を低下させる。これにより、高保磁力媒体への記録が可能となり、1Tb/in2以上の記録密度実現が可能となる。
【0003】
上記熱アシスト磁気記録方式では,磁界を印加するための磁極近傍を光で加熱する必要がある。そのためには,例えば導波路を磁極脇に形成し、光源である半導体レーザの光を、磁極の先端近傍にまで導く。このとき,半導体レーザは浮上スライダ上に搭載するか、サスペンションの根元において、そこから浮上スライダまで光ファイバなどの導波路を用いて光を導く(非特許文献2)。また、半導体レーザをサスペンション上に置き、そこからスライダまで、光を自由伝播光で伝播させ、その光をグレーティングカップラで導波路に結合させても良い(非特許文献3)。
【0004】
【非特許文献1】H. Saga, H. Nemoto, H. Sukeda, and M. Takahashi, Jpn. J. Appl. Phys. 38, Part 1, pp.1839 (1999)
【非特許文献2】Kenji Kato et al., Jpn. J. Appl. Phys. Vol. 42, pp. 51025106 (2003)
【非特許文献3】Edward C. Gage et. al, Technical digest of Magneto-optical Recording Internal Symposium 2006, p2 (2006)
【非特許文献4】T. Matsumoto et.al, Optics Letter, Vol.31, p259, (2006)
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
熱アシスト磁気記録装置において、光照射用の半導体レーザは、サスペンションまたはその根元に位置するアーム、または浮上スライダ上に配置する。サスペンションまたはアームに置く場合、半導体レーザから出射する光は、導波路または自由伝播でスライダ中へ導く。光を導波路で導く場合、半導体レーザとスライダ間を結ぶ導波路に加わる振動や温度変化などの外乱により、導波路中を伝わる光強度が変化してしまう。その結果スライダに到達する光の強度が変化してしまう。また、光をスライダまで自由伝播で導き、伝播してきた光を、グレーティングカップラにより磁極脇に形成された導波路に結合する場合、伝播光が磁極脇に形成された導波路に結合する割合(結合効率)は、グレーティングに入射する光の入射角度に依存する。したがって、スライダまたはサスペンションが振動すると、グレーティングに入射する光の方向が変化するので、導波路への結合効率が変化し、その結果、磁極脇に形成された導波路を伝わる光の強度が変動してしまう。また、グレーティングカップラを用いる場合、導波路への結合効率は、波長にも依存する。温度が変化すると、半導体レーザの光の波長が揺らぐので、結合効率が変動してしまう。その結果、磁極脇に形成された導波路を伝わる光の強度が変動してしまう。
【0006】
半導体レーザを浮上スライダ上に置く場合、半導体レーザからの出射光を磁極脇に形成された導波路へ結合させるためには、半導体レーザの出射端が導波路の入射端に接するように半導体レーザを配置する。または、半導体レーザからの出射光をスライダ上に置かれたマイクロレンズで集光し、その焦点に導波路の入射端を配置することにより、光を導波路へ導入しても良い。このとき、つぎの要因により導波路中を伝わる光の光量が変化してしまう可能性がある。
(1)半導体レーザやマイクロレンズを固定している接着剤やはんだの劣化により、長期間使用していると、半導体レーザやマイクロレンズの位置がずれ、導波路と入射光の結合効率が変化する。
(2)半導体レーザから発生する熱もしくはドライブ内で発生する熱により、スライダや光学素子に熱変形が発生し、導波路と入射光の結合効率が変化する。
(3)導波路と入射光の結合効率を大きくするためには、導波路中の光分布の径を、入射光のスポット径と同程度にするのが好ましい。ここでモードフィールド径とは、導波路中の光の強度分布の幅を言う。通常、半導体レーザの出射端における光スポット径は数μmである。これをレンズで集光しても回折限界のため、1〜2μm程度までにしか絞れない。したがって、モードフィールド径を1〜2μm程度にまで大きくするのが好ましい。一方、熱アシスト磁気記録において、光スポットの径は記録ビットと同程度まで小さくするのが好ましい。もし光スポットの径が記録ビットよりも大きくなると、隣接ビットが加熱され、その記録ビットが消去されてしまう。隣接ビット消去の問題を解決するためには、近接場光発生素子を利用して、微小な光スポットを発生させる。例えば、三角形の形状をした金属の散乱体などの近接場光発生素子をスライダ中の導波路の出射端に配置する(非特許文献4参照)。このとき、近接場光を発生させる効率を高くするためには、近接場光発生素子に入射する光のスポット径がなるべく小さくなるようにした方が良い。すなわち、導波路中のモードフィールド径がなるべく小さくなるようにした方が良い。上記の要求を満たす一つの方法として、導波路の入口で導波路の幅を大きくし、近接場光発生素子に近づくにつれて導波路の幅が徐々に小さくなるようにする方法が考えられる。この場合、導波路入口においては、幅が大きいために、基本モードの他に、高次の伝播モードも励起される可能性がある。このように高次モードが励起されると、高次のモードと基本モードは導波路中で干渉を起こす。そしてその導波路中の光強度分布は、温度などの外乱により変化する。その結果、導波路の細くなった部分に伝わる光の強度が揺らいでしまう。
【0007】
以上、温度変化や振動などの外乱による光強度の変動について説明したが、半導体レーザの経時劣化によっても光強度は変化する。温度変化や振動などの外乱や半導体レーザの経時劣化により、媒体表面に入射する光の強度が揺らいでしまうと、媒体の加熱温度が変化してしまう。その結果、記録条件が毎回変化し、安定な記録ができなくなる(ビットエラーレートが上昇する)。
本発明の目的は、温度変化や振動などの外乱や光源の経時劣化による光強度の変動を検出することができる熱アシスト磁気記録ヘッドを提供することである。
本発明の他の目的は、光源を浮上スライダ外部に配置し、光源と浮上スライダの間を導波路または自由伝播光で結合した熱アシスト磁気記録装置、あるいは光源をスライダ上に配置した熱アシスト磁気記録装置において、温度変化や振動などの外乱や光源の経時劣化による光強度の変動を低減し、安定した記録を実現することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の熱アシスト磁気記録ヘッドでは、主磁極近傍へ光を導くための第1の導波路の近傍に、第2の導波路を形成し、第1の導波路中を伝播する光の一部を第2の導波路へ分岐させる。そして、第2の導波路を伝わる光を光検出器で検出する。
【0009】
前記熱アシスト磁気記録ヘッドを搭載した本発明の磁気記録装置では、光検出器に入る光量が多い場合は、半導体レーザの出力を小さくし、光検出器に入る光量が少ない場合は、半導体レーザの出力を大きくする。このようにフィードバックループを構成することにより、第1の導波路中を伝播する光の強度を一定に保つ。
【0010】
前記熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、主磁極近傍へ光を導くための第1の導波路のコアと検出用の第2の導波路のコアは、お互いの距離が光波長以下になるように配置する。このとき、第1のコア表面のエバネッセント光が第2の導波路にカップリングするため、第1の導波路から第2の導波路へ光が移動する。
【0011】
第1の導波路から第2の導波路への光が移動する割合(カップリング効率)は、大きすぎると媒体表面の上昇温度が低下してしまう。上昇温度を200度以上にするには、カップリング効率は33%以下、250度以上にするには、カップリング効率は16%以下にすることが好ましい。
【0012】
第2の導波路と光検出器の間には、光路を折り曲げるための反射構造を形成すると良い。これにより、光検出器をスライダ上面に設置することが出来る。光路を折り曲げるためには、誘電体の表面で生じる全反射、もしくは金属の反射膜、反射ブロックを利用する。または、第2の導波路の形状を円弧状にすることにより、光を検出器に導いても良い。
【0013】
第1の導波路の出射端で生じる反射光、もしくは第1の導波路の出射端に設置した近接場光発生素子から生じる散乱光が、第2の導波路にカップリングして、第2の導波路の入口側の端で反射すると、光検出器にノイズが載ってしまう。それを防ぐためには、第2の導波路の入口側の端は斜めに削ると良い。もしくは、第2の導波路の入口側の端に誘電体多層膜で出来た反射防止膜を形成しても良い。
【0014】
入射光のスポット径に対し、第1の導波路のモードフィールド径が小さい場合、入射光の一部は、漏れ光として、導波路周辺に漏れてしまう。ここでモードフィールド径とは、導波路中の光の強度分布の幅を言う。この漏れ光が第2の導波路に入射することを防ぐために、第2の導波路の上部には、遮光構造を設けると良い。遮光構造としては、金属の膜または、金属のブロックもしくは、誘電体で出来たプリズムを利用する。プリズムを利用する場合、漏れ光は、全反射または屈折により、導波路とは垂直な方向に曲げられる。
【0015】
第1の導波路の光が入射する側の端には、入射光と導波路のカップリング効率を上げるために、テーパー部を設けても良い。この場合、導波路の幅が広くなった部分で高次のモードが励起され、基本モードと干渉を起こすため、導波路中の光パワーが変動してしまうが、第1の導波路の媒体に近い側に位置する幅が狭くなった部分の近傍に第2の導波路を配置し、その第2の導波路にカップリングする光を光検出器で検出して導波路中の光パワーが一定になるようにフィードバックループを構成すると、光パワーの変動を抑制することが出来る。
【0016】
入射光は、主磁極近傍へ光を導くための第1の導波路に直接導入することに替えて、光量をモニタするための第2の導波路へ導入しても良い。この場合、第2の導波路のコアの幅を第1の導波路のコアの幅よりも大きくすると、第1の導波路へ直接入射光を導入するよりも、全体の効率(導波路入口における光のエネルギと、近接場光エネルギの比)を大きくすることが出来る。すなわち、第2の導波路へ入射光をカップリングさせる場合、第2の導波路のモードフィールド径が入射光の径に近いほど入射光が第2の導波路にカップリングする効率は高くなる。一方,第1の導波路のモードフィールド径はなるべく小さい程、近接場光発生効率が高くなる。したがって、第2の導波路のモードフィールド径が入射光の径に近くなるように、第2の導波路の幅を大きくすれば、入射光が第2の導波路にカップリングする効率は高くなる。そして、第2の導波路から、幅の小さな第1の導波路へ、エバネッセント光を介して光を移せば、幅の小さな第1の導波路へ効率良く光を導くことが出来る。すなわち、全体の効率を大きくすることが出来る。
【0017】
上記第2の導波路へ光を導入する場合、第2の導波路から第1の導波路へのカップリング効率を向上させるために、2つの導波路がカップリングする部分において、第2の導波路の幅を狭める、または第1の導波路の幅を狭める、または第1と第2の導波路の両方の幅を狭めると良い。このとき、導波路のモードフィールド径と導波路の幅の関係において、モードフィール径が最も小さくなる幅をWminとしたとき、狭めた部分の一方の幅がWmin以下になるようにする。このように、幅を狭めると、狭めた部分において導波路のモードフィールド径が広がり、コア表面に染み出すエバネッセント光の染み出し深さが大きくなる、その結果、もう片方の導波路側へ光が多く染み出し、その結果カップリング効率が向上する。
【0018】
上記第2の導波路の入口側の端に光検出器を配置することで、第1の導波路の出射部に配置した近接場光を発生させる素子から生じる散乱光を検出しても良い。このように散乱光を検出することにより、媒体に記録されたデータを読み取ることが出来る。
【0019】
上記第2の導波路の出口の方向(第1の導波路から第2の導波路へ移った光が進行する方向)に、反射ミラーを設置することで、第1の導波路から第2の導波路へ移った光が、第2の導波路を反対方向に進むようにし、その光を第2の導波路の入口側の端に設置した光検出器で検出しても良い。この場合、第1の導波路から第2の導波路へ移った光と、第1の導波路の出射部に配置した近接場光発生素子から生じる散乱光が同時に光検出器で検出されてしまう。それを防ぐためには、第2の導波路の出口方向に設置した反射ミラーの手前に1/4波長板を配置することで、第1の導波路から第2の導波路へ移った光の偏光方向を90度回転させると良い。このようにすれば、第1の導波路から第2の導波路へ移った光の偏光方向と近接場光発生素子から生じる散乱光の偏光方向が直交するので、偏光ビームスプリッタで分離することが可能になる。
【0020】
上記のように、第1の導波路中の光量を検出するために、第2の導波路を第1の導波路近傍に設置し、エバネッセント光を介して第1の導波路中の光を第2の導波路へ移すことに替えて、第1の導波路のコアの表面に、光を散乱させるための構造を設置することにより、第1の導波路中の光を散乱させて、それを検出しても良い。
【0021】
光源である半導体レーザは、スライダ上部、またはサスペンション、またはアーム上に配置すれば良い。サスペンションまたはアーム上に配置する場合は、半導体レーザからスライダまでの間は、導波路または自由伝播で導く。自由伝播で導く場合は、伝播光とスライダ中の導波路は、グレーティングを用いてカップリングさせる。このように、導波路または、自由伝播で導く場合生じる光量の変動は、上記第2導波路中へカップリングする光の量を検出し、その強度を基に光源の強度を調整することで抑制することが出来る。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、温度変化や振動などの外乱や半導体レーザなどの光源の経時劣化による光強度の変動を検出することができる。また、半導体レーザなどの光源を浮上スライダ外部に配置し、光源と浮上スライダの間を導波路または自由伝播光で結合した熱アシスト磁気記録装置、または光源をスライダ上に配置した熱アシスト磁気記録装置において、温度変化や振動などの外乱や光源の経時劣化による光強度の変動を低減することができ、その結果安定した記録を実現することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
以下、図面を参照して本発明の実施の形態を説明する。
図3に、本発明に係る熱アシスト磁気記録ヘッドの全体図を示す。図3(a)は浮上スライダ部の側面図、図3(b)はサスペンションおよびスライダの全体図を示す。光源としては波長780nmの半導体レーザ25を利用し、この半導体レーザ25は、図3(b)に示すように、アーム34上に置いた。半導体レーザ25から発生する光は、導波路4を利用して浮上スライダ5へ導いた。導波路4としては、有機導波路またはガラスで出来た光ファイバを利用した。半導体レーザ25と導波路4の間にはカップリングレンズ23を配置し、半導体レーザからの光を導波路4に結合させた。半導体レーザとカップリングレンズは、薄型パッケージ24内に作りこんだ。導波路4における光源とは反対側の端4aは、45度に削り、光路がそこで90度曲がるようした。磁界を印加するための主磁極6の横には、主磁極6近傍へ光を導くための導波路1を配置した(図は、導波路1のコア部を示す)。この導波路1の入射口に、導波路4の端4aを配置し、導波路4からの光が、導波路1に導かれるようにした。導波路1の出射端には、光スポットの大きさをより小さくするために、近接場光発生素子15(図4参照)を形成した。このようにすることで、数10nm以下の微小な領域を加熱することができるので、隣接ビットの加熱を防ぐことが出来る。上述したように、隣接ビットが加熱されると、隣接ビットが消去されてしまう可能性がある。
【0024】
図4に示すように、近接場光発生素子15として、三角形の形状をした金属の散乱体を利用した。散乱体の寸法は、厚さShは50nm、長さSwは100nmとした。第1の導波路中を伝播する光の偏光方向がy方向を向くように光を入射すると、頂点44に強い近接場光が発生する。スポット径をより小さくするために、頂点44以外の部分において、散乱体表面の一部を削ってある。この近接場光発生素子15が発生する近接場光により、磁気記録媒体9の表面を150度以上に加熱することができる。加熱の瞬間、コイル8に電流を流すことにより、磁界を発生させ、発生した磁界は、主磁極6を利用して、記録媒体側へ導かれる。磁界の向きは、記録媒体表面に対して垂直方向である。このとき、主磁極6から発生する磁界は、導波路1側に漏れるようにし、導波路1の出射端における光の分布と、磁界の分布が重なるようにする必要がある。そのために、主磁極6の端から、導波路1のコア中心までの距離は大きすぎてはいけない。そこで、主磁極6の端から、導波路1のコア中心までの距離を1μmにした。上記構造により、光の分布と磁界の分布が重なった領域において、磁化が反転される。再生には、主磁極6の近くに設置した磁気再生素子(Giant Magneto Resistive (GMR)素子又はTunneling Magneto Resistive (TMR)素子)を利用した。なお、磁気記録媒体9の記録層10の材質には、FePt、CoPd、CoCrPt、TbFeCoなどを使用し、記録層10の磁化の向きは、媒体面に対し垂直もしくは斜めの方向を向くようにした。
【0025】
上記実施例では、磁界を浮上スライダ中に形成したコイルにより発生したが、記録に必要な磁界が小さい場合、磁界発生コイルはスライダの外部に配置しても良い。例えば、中央に磁極が形成されたコイルを記録媒体の反対側に配置しても良い。
【0026】
次に、図1及び図2を参照して実施例1による熱アシスト磁気記録ヘッドの光電変換素子部の構成を説明する。全体構成は図3に示したとおりである。導波路4から出射する光の強度は、振動や温度変化などにより変化する。その結果、導波路1を伝わる光の強度も変化する。そこで本実施例では、図1及び図2に示すように、導波路1(第1の導波路)の近傍に、導波路2(第2の導波路)を配置することにより、第1の導波路1を伝わる光の強度を検出できるようにした(図示された導波路は、導波路のコア部に相当する)。すなわち、導波路1のコア表面には、エバネッセント光が発生しているが、この導波路1のコア近傍に、導波路1と導波路2の距離が光波長以下になるように導波路2を配置すると、導波路1表面のエバネッセント光が導波路2へカップリングする。その結果、導波路1を伝わる光の一部が導波路2へ導かれる。導波路2へ導かれた光は、下方向(媒体側)へ伝播するが、これを折り返し点41で反射させ、第3の導波路3を上方向(スライダの上面側)へ伝播するようにする。上方向へ伝播した光は、導波路3の上部に配置した光検出器(フォトダイオード)16で検出される。なお、第2の導波路2へカップリングした光を検出するためのフォトダイオード16は、図8に示すように、スライダ5の浮上面(媒体側の面)に形成することも考えられるが、この場合、浮上面に凹凸が出来てしまい、そこで気流が乱れてしまう。その結果、スライダの浮上量が不安定になってしまう。したがって、本実施例では,光を折り返し点41で折り返すことにより、フォトダイオード16をスライダ5の上面に配置できるようにした。フォトダイオード16の出力は、導波路1中を伝わる光の強度に比例する。したがって、フォトダイオード16の検出出力から、光源である半導体レーザ25の光強度を検知することができる。
【0027】
ここで、図5Aを参照して、上記実施例1による熱アシスト磁気記録ヘッドを搭載した磁気記録装置の、レーザパワーのフィードバック制御を説明する。図5Aに示すように、フォトダイオード16の出力が一定になるように、フィードバックループを形成すれば、導波路1中を伝わる光の強度を一定にすることが出来る。すわなち、フォトダイオード16の出力電流をプリアンプ31により電圧信号に変換し、その出力電圧V1をPIDまたはPI制御回路32に入力する。PIDまたはPI制御回路32は、プリアンプ31の出力電圧V1と基準電圧V0を比較し、プリアンプ31の出力電圧V1が基準電圧V0を上回る場合、半導体レーザ25に流れる電流が小さくなるようにレーザドライバ27へ信号を送る。ここで、光強度が大きいとプリアンプ出力がプラス側に変化する場合を想定した。逆の場合、レーザ25に流れる電流が大きくなるようにレーザドライバ27へ信号を送る。これにより、導波路1中を伝わる光の強度を一定に保つことが出来る。
【0028】
上記基準電圧V0の値は、導波路の加工誤差が十分小さい場合、各ヘッドとも同じ値にしても良い。しかし、導波路の加工誤差が大きい場合、媒体面に入射する光の強度とフォトダイオードに入射する光の強度の比はヘッドごとに異なる。したがって、基準電圧V0はヘッドごとに変えなくてはいけない。その補正は、例えば次のように行う。(1)ヘッドを組み立てる際、導波路1からスライダ5の浮上面側に出射する光の量を検出する。この光の量が、最適値になるようにレーザ25の強度を調整する(このときフィードバックは機能させない)。その時のフォトダイオード16からの出力V1を基準電圧V0にする。
(2)記録装置を組み立て後、基準電圧V0を連続的に変えながら、記録・再生試験を行う。このとき、再生信号のS/N比が最も高くなったときの基準電圧V0を装置に記憶させる。なお、この試験は、装置組み立て直後だけでも良いが、長期に渡る装置の信頼性を維持するためには、定期的に行うと好ましい。例えば、記録動作を行う直前、または電源をOnしたとき、またはデータへのアクセスのないアイドリング状態などに未記録位置を利用して記録・再生試験を行う。このように、定期的に試験を行うことにより、半導体レーザの経時劣化など、装置の経時劣化に起因するエラーを抑制することが出来る。
【0029】
次に、図5Bを参照して、上記熱アシスト磁気記録ヘッドを搭載し、上記フィードバック制御を行う磁気記録装置(磁気ディスク装置)の全体構成を説明する。浮上スライダ5はサスペンション14に支持され、サスペンション14はアーム34に支持されている。浮上スライダ5は、アーム34及びサスペンション14を介してボイスコイルモータ33により磁気ディスク9の半径方向に移動され、記録トラックに位置決めされる。浮上スライダ5の浮上面には浮上用レールが形成されており、回転する磁気ディスク9の上面を浮上量10nm以下で浮上する。磁気ディスク9は、モータによって回転駆動されるスピンドル30に固定され回転される。半導体レーザ25は、アーム34の根元に搭載された薄型パッケージ24の中に実装されている。半導体レーザ25からの光は導波路4にカップリングされ、浮上スライダ5に導かれる。記録の瞬間、浮上スライダ5中に設けられたコイル8により磁界を発生すると同時に、半導体レーザ25を発光させ、主磁極6により記録マークを形成する。磁気ディスク9上に記録されたデータは、浮上スライダ5中に設けられた磁気再生素子(GMRまたはTMR素子)で再生される。記録信号及び再生信号の増幅はプリアンプ31により行われる。プリアンプ31に供給する記録信号の処理及びプリアンプ31からの再生信号の処理を行う信号処理回路、上記フィードバック制御を行う制御回路、装置全体の制御回路は、筐体裏面に取付けられた回路基板に実装される。
【0030】
次に、上記実施例1による熱アシスト磁気記録ヘッドの、電磁変換素子部の具体的構成を図1及び図2を参照して説明する。導波路1,2,4のコアの材質はTa2O5、クラッドの材質はSiO2にした。主磁極6の脇を通る導波路1の全長L2は300μm(浮上スライダ5の厚さに相当)にした。導波路1, 導波路2のy方向の幅W0は、いずれも250nmとした。導波路1,導波路2,導波路3の幅W1, W2, W3はいずれも250nmとした。導波路1と導波路2の間隔sは450nmとした。導波路1と導波路2が平行になった部分の長さL1は10μmにした。導波路2の長さL3は200μmとし、導波路1から折り返し点41までの距離L4は5μmとした。導波路1からフォトダイオード16までの距離L5は15μmにした。導波路2の折り返し点41は反射面であり、全反射により光路が90度曲がるようにした。導波路3のフォトディテクタ16側の端には、誘電体多層膜で形成された反射防止膜17を形成した。もしこの端で光が反射すると、光が半導体レーザ25に戻ってしまい、半導体レーザ25の発振が不安定になる(戻り光ノイズが生じる)。このように、反射防止膜17を形成すると、この反射光の発生を防ぐことが出来る。フォトディテクタ16にはSiフォトディテクタを利用した。このSiフォトディテクタは、スライダ上に配置したSi製のマウント12上に直接作りこんだ(Si上にpn接合を直接作りこんだ)。受光面の直径は、導波路3中のビーム径とディテクタを配置する時のアライメント誤差を足した値よりも大きければ良く、本実施例では5μmとした。フォトディテクタ用の配線は、マウント12上に作りこんだ。マウント12は、サスペンション14のフレクシャー13の下部に固定した。
【0031】
上記実施例1の導波路1と導波路2のカップリング部における光分布の計算結果を図6に示す。下側が入射側、上側が媒体側に相当する。入射光のスポット径はx方向が2μm、y方向が1ミクロンとした。この図に示すように、導波路1の基本モードが励起され、その基本モードの一部が、導波路2側に分岐されている。
【0032】
導波路1から導波路2へのカップリング効率(η)は、導波路1と導波路2の距離sや、2つの導波路が平行になっている部分の長さL1、それぞれの導波路の屈折率や径を変えることにより調整することが可能である。このとき、導波路1から導波路2
へのカップリング効率(η)が大きすぎると、媒体表面に照射される光の強度が低下するため、媒体表面の温度が低下してしまう。今、半導体レーザ25のパワーをI0,サスペンション上の導波路4の入口における光のカップリング効率をa1,スライダ中の導波路1の入口での光のカップリング効率をa2,主磁極周辺の伝播効率をa3とすると(導波路1と主磁極6を近接させると、主磁極6の影響で導波路1を伝わる光の強度が低下する)、導波路1の出口での光強度Ioutは次の1式で表される。
【0033】
【数1】

【0034】
導波路4,1へのカップリング効率a1,a2はアライメント時の誤差を考慮すると最大で約0.5であり、主磁極周辺の伝播効率a3は約0.5である。利用可能な半導体レーザのパワーは約120mWであるので,Ioutは次の2式で表される。
【0035】
【数2】

【0036】
媒体表面の温度はこのIoutに比例し、近接場光発生素子15として図4に示される三角形の形状をした散乱体を利用する場合、Ioutが約10mWのとき、媒体表面の温度は約200度に上昇する。以上のことから、導波路1から導波路2へのカップリング効率と媒体表面の温度の関係を図示すると図7のようになる。記録密度600Gb/in2以上の記録装置を実現するためには、媒体を200度以上に加熱する必要がある。そのためには、導波路1から導波路2へのカップリング効率(η)は33%以下である必要があることが分かる。また、記録密度1Tb/in2以上の記録装置を実現するためには、室温における保磁力がより大きな媒体を利用する必要があり、その保磁力を十分下げるためには、媒体を250度以上に加熱する必要がある。そのためには、導波路1から導波路2へのカップリング効率(η)は17%以下にする必要がある。本実施例では、カップリング効率は5%になるようにした。
【0037】
上記実施例では、導波路のコアの材料としてTa2O5 (屈折率=2.18)、クラッドの材料としてSiO2(屈折率=1.45)を利用したが、コアの屈折率がクラッドの屈折率よりも大きければコアおよびクラッドの材料は他の材料でも良く、例えばSiO2(屈折率=1.45)のクラッドに対して、コアをAl2O3(屈折率=1.63)、TiO2(屈折率=2.44)などにしても良い。また、クラッドの材質を、屈折率がSiO2よりも小さなMgF2 (屈折率n=1.38)にしても良い。また、コアの材質として、Geなど他の材料をドープしたSiO2を用いても良い。
【0038】
ところで、導波路1を下方向(媒体方向)へ進んだ光は、導波路1下部に形成された近接場光発生素子15に入射する。このとき、近接場光発生素子15から発生する近接場光は媒体9と相互作用する。その結果、近接場光発生素子周辺からは散乱光が発生する。この散乱光強度は、ヘッドと媒体の距離(スライダの浮上量)、媒体の記録状態などにより変化する。この散乱光は、導波路1を逆方向(光源側)へ進み、検出用の導波路2にカップリングする。この光が、もし導波路2の入口側の端36で反射されると、導波路2を下方向に伝わり、フォトダイオード16に入射してしまう。その結果、検出信号に、散乱光に起因するノイズが加わってしまう。これを防ぐために、本実施例では、導波路2の入口側の端36を斜めになるように削った。このように斜めにすると、光は斜め方向に反射するので、導波路2の下方向、すなわちフォトディテクタ16の方向へ光が進むことがなくなる。本実施例では、導波路2の入口側の端36の角度θは20度にした。なお、導波路3のフォトディテクタ16側の端においても、反射光を防ぐために、反射防止膜17を形成することに替えて、上記のように端を斜めに削っても良い。
【0039】
導波路2の入口側の端36は、図9に示すように、長さを延長してスライダ上面まで伸ばしても良い。このとき、導波路2の入口側の端36には、導波路2の入口側の端36における光の反射を防止するために、誘電体多層膜で出来た反射防止膜17′を設置すると良い。
【0040】
上記実施例では、導波路2中を伝わる光を上方向に折り返すために、全反射ミラーを用いた。このとき反射面の荒さに起因する光の漏れを小さくするために、図10のように、反射面に金属の反射構造11を形成してもよい。例えば、反射構造11として、金の膜またはブロックを折り返し点41に配置する。また、折り返し点での光エネルギのロスを小さくするために、図11に示すように、導波路2および導波路3の先端の幅W4を他の部分の幅よりも小さくしても良い。このようにすると、折り返し点41周辺において、導波路2および3の中を伝わる光のフィールド径が広がる。したがって、位置ずれの影響が小さくなり、位置ずれに起因するロスを小さくすることが出来る。
【0041】
以上の説明では、導波路2を伝播する光をスライダ上面に配置したフォトダイオード16へ導くために、折り返し点41で光を反射させたが、図12に示すように、反射させることに換えて、導波路2の形状を円弧状にすることにより、光の進行方向を180度回転させても良い。このとき、曲がった部分から発生する放射光を小さくするためには、導波路2のコアとクラッドの屈折率差は大きくした方が良い。例えば、使用波長は830nmとし、導波路1および2のコアの材質はSi(屈折率=3.7)、クラッドの材質はSiO2(屈折率=1.45)にし、導波路の径は、w=w1=w=200nmとし、曲率半径rは200μmにする。
【0042】
ところで、熱アシスト磁気記録において、導波路1を伝わる光の強度分布の径はなるべく小さくすることが好ましい。すなわち、近接場光の発生効率を高くするには、導波路1を伝わる光の強度分布はなるべく小さくすると良い。このとき、図13に示すように、導波路1を伝わる光の強度分布39の径は、入射光の強度分布38の径よりも小さくなるので、入射光の一部は、導波路1にカップングせずに、放射光として、横に漏れてしまう。この漏れ光が導波路2の入口側の端36から導波路2に進入してしまうと、導波路1の中を伝わる光の強度を正確にモニタすることが出来ない。これを防ぐためには、図13に示すように、導波路2の入口側の端36が横方向(導波路1の向きに対して垂直な方向)を向くようにすると良い。また、このように導波路2の入口側の端36を横方向に向けることに替えて、図14に示すように、導波路2の入口側の端36の上部に、遮光構造37を形成しても良い。例えば、図14(a)の例においては、遮光構造37として金属のブロックを形成した。このようなブロックを形成すれば、導波路1にカップリングせずに漏れた光は、このブロック37で反射し、上方向に進行するので、導波路2に入ることはない。この例では、ブロックのx方向の幅W9は5μm、z方向の幅W8は1μmにし、y方向の厚さは導波路2と同じ厚さである250nmとした。導波路1のコア表面にはエバネッセント光が染み出しているので、遮光構造37と導波路1の間隔dは小さすぎると、そのエバネッセント光の進行を阻害してしまう。そのため、遮光構造37と導波路1の間隔dは、エバネッセント光の染み出し深さ(およそ光波長に等しい)より大きくすると好ましい。この例では、間隔dは780nmとした。スライダ上面から遮光構造37までの距離Lは30μmにした。遮光構造37としては、図14(b)および(c)に示すように、光透過性のある誘電体で出来たプリズムを利用しても良い。図14(b)の場合、導波路1にカップリングせずに漏れた光は、プリズム37に入射した後、表面で全反射され横方向へ進行する。したがって、導波路2へは進入しない。また図14(c)の場合、プリズム37に入射した後、プリズム表面で屈折され、横方向へ進行する。したがって、導波路2へは進入しない。プリズムの材質は、導波路1および2と同じTa2O5とした。このように、導波路と同じ材質で作れば、導波路と同時に作りこむことが可能になり、加工の手間を少なくすることが出来る。プリズムの1辺の長さW10は5μmとし、導波路1とプリズムの距離dは780nm、スライダ上面からの距離Lは30μmとした。なお、上記遮光構造37は、漏れ光が導波路2に進入することを防ぐだけではなく、漏れ光により磁気ヘッド周辺が加熱され、磁気ヘッドの性能が劣化することを防止することも出来る。このためには、上記遮光構造37は、導波路2の上部だけではなく、導波路1の両側に形成すると良い。
【0043】
導波路1を伝わる光の強度分布の径が、入射光の強度分布の径よりも小さい場合、入射光の一部は横に漏れてしまうため、入射光が導波路1へカップリングする効率が低下してしまう。これを防ぐためには、図15に示すように、導波路1の入口の幅W5を広げ、導波路1の入口側にテーパー部40を設けると良い。このとき、テーパー部40には、導波路1の基本モードの他に、高次のモードも励起されるが、この高次のモードの一部は、基本モードに変換される。その結果、より高いカップリング効率が得られる。ただし、この高次のモードと基本モードは導波路中で干渉を起こす。その強度分布は、温度などの外乱により変化するため、導波路1の細くなった部分に伝わる光の強度が揺らいでしまう。これに対し、テーパー部40の終端部(導波路の幅W1が一定になった部分とテーパー部40の境目)よりも下部(スライダの浮上面に近い部分)に、光強度検出用の導波路2を設置すれば、フィードバックループを用いることにより導波路の幅W1が一定になった部分における光強度を常に一定に保つことが出来る。すなわち、光強度の揺らぎを抑えつつ、カップリング効率を向上させることが出来る。この例では、導波路1,2,3のコアの材質はTa2O5とし、クラッドの材質はSiO2とした。導波路1,2,3の厚さW0、導波路1の幅W1、導波路2の幅W2,導波路3の幅W3,はいずれも250nmとした。テーパー部40の側面は直線とし、テーパー部40の入口側の幅W5は2μm、テーパー部40の長さW8は100μmとした。導波路1と2の間隔sは450nmとし、導波路1と2が平行になった部分の長さL1は、10μmとした。
【0044】
図16に、上記の場合の、導波路1および2の中の光強度分布を示す。ここでは、入射光のスポット径はx方向が2μm、y方向が1μmとした。この図に示されるように、テーパー部における光強度分布は徐々に幅が狭くなり、導波路の幅が一定になった部分で強度分布の幅は一定になる。そして、その一部が導波路2へカップリングする。この例では、導波路1から導波路2へのカップリング効率(η)は約5%である。図17は、テーパー部40がある場合とない場合の導波路中の光パワーの分布を表す。ここで、光パワーは入射光の値で規格化した。このように、テーパー部を設けることにより、導波路1の出口まで伝わる光の量は約2倍増加することが分かる。
【0045】
上記の例では、テーパー部40の側面は直線にしたが,図18に示すように、曲線にしても良い。図18(a)の例では、x方向の幅は指数関数的に狭くなる。図18(b)の実施例では、x方向の幅W(z)は、3式のように変化させた。
【0046】
【数3】

【0047】
次に、図19を参照して、実施例2による熱アシスト磁気記録ヘッドの構成を説明する。全体構成は、図3で説明した構成と同じである。上記実施例1では、入射光を主磁極近傍へ光を導くための導波路1へカップリングさせたが、実施例2では図19に示すように、フォトダイオード16へつながった導波路2へカップリングさせるものである。この場合、光は導波路2から導波路1へ移動する。媒体の加熱温度を十分高くするために必要な導波路2から導波路1へのカップリング効率(η)は、実施例1の場合における導波路1から導波路2へ光が移動する場合のカップリング効率の逆を考えることにより求められ、η=0.67以上(上昇温度200度の場合)、またはη=0.83以上(上昇温度250度の場合)にする必要がある。
【0048】
上記のように、フォトダイオード16へつながった導波路2へ入射光をカップリングさせる場合、導波路2のモードフィールド径が入射光の径に近いほど、入射光が導波路2にカップリングする効率は高くなる。一方、導波路1のモードフィールド径はなるべく小さい方が好ましい(導波路1のモードフィールド径はなるべく小さい程、近接場光発生効率が高くなる)。以上の要求を満たすためには、導波路2の幅W2が導波路1の幅W1よりも大きくなるようにすると良い。このように導波路2のモードフィールド径が入射光の径に近くなるように、導波路2の幅W2を広げると、入射光が導波路2にカップリングする効率は高くなる。そして、導波路2から、幅の小さな導波路1へエバネッセント光を介して光を移せば、幅の小さな導波路1へ効率良く光を導くことが出来る。すなわち、全体の効率(導波路入口における光のエネルギと、近接場光エネルギの比)を大きくすることが出来る。
【0049】
上記のように、導波路2の幅W2を導波路1の幅W1よりも大きくする場合、幅W2が大きすぎると、高次モードが励起される場合がある。この場合、導波路の中の光量が変動する可能性がある。それを防ぐために、導波路2のコアの屈折率が導波路1のコアの屈折率よりも小さくなるようにしても良い。コアの屈折率が小さいほど、高次モードが存在可能な導波路の幅が大きくなる。すなわち、高次モードが励起されにくくなる。なお、導波路の励起モードは、コアとクラッドの屈折率差に依存する。したがって、導波路2のコア屈折率を小さくする替わりに、導波路2のクラッドの屈折率を大きくしても良い。
【0050】
上記のように、導波路2の幅W2が導波路1の幅W1よりも大きくなるようにしたとき、導波路2から導波路1へ光がカップリングする効率を高めるためには、図20(a)のようにカップリング部における導波路2の幅W6を部分的に狭めるか、図20(b)のように、カップリング部における導波路1の幅W7を部分的に狭める、もしくはカップリング部における導波路1と2の幅W6,W7の両方を部分的に狭めると良い。図21に示すように、導波路の径がある値Wよりも小さくなると、モードフィールド径は大きくなる。これは、径が小さくなると、コア表面に染み出すエバネッセント光成分が多くなるからである。したがって、コアの幅をモードフィールド径が最も小さくなる幅Wbよりも小さな値Waにすると、隣に置かれた別の導波路側への染み出し長が大きくなり、その隣の導波路へのカップリング効率が上がる。例えば、図20(a)のようにカップリング部における導波路2の幅W6を部分的に狭める場合、導波路2の部分的に狭まった部分において、導波路2中のモードフィールド径が広がる。これにより、コア表面に染み出すエバネッセント光の染み出し深さが大きくなり、導波路1へカップリングしやすくなる。また図20(b)のように、カップリング部における導波路1の幅W7を部分的に狭めた場合も同様に、導波路1の部分的に狭まった部分において、導波路1中のモードフィールド径が広がる。その結果、導波路2とカップリングしやすくなる。
【0051】
図22に、図20(a)の構成の場合の、導波路の光強度分布の計算結果を示す。この構成では、導波路1のコアの材質はTa2O5とし、導波路2および3のコアの材質はAl2O3とした。クラッドの材質は導波路1,2,3共にSiO2とした。導波路1,2,3の厚さW0は250nmとし、導波路1の幅W1は250nm、導波路2の幅W2および導波路3の幅W3はいずれも1μmとした。導波路2の部分的に狭まった部分の幅W6は500nmにした。導波路1と2の間隔sは100nmとし、導波路1と2が平行になった部分の長さL1は40μmとした。入射光のスポット径はx方向が2μm、y方向が1μmとした。この図に示すように、導波路2にカップリングした光が、導波路1へ効率良くカップリングしている。導波路2から導波路1へのカップリング効率は約95%である。導波路1の出口における光パワーは入射光パワーの65%であった。
【0052】
上記実施例1及び2では、媒体上に記録されたデータの再生は磁気再生素子を利用したが、磁気再生素子を利用することに替え、光を利用して再生しても良い。図23は光再生用の配置を示す。近接場光発生素子15により発生した近接場光が媒体9表面の記録層10と相互作用すると散乱光が発生する。この散乱光の偏光の向きは、カー効果により記録層10の磁化の向きに依存して変化する。この散乱光は、導波路1を上側に進み、導波路2の入口側の端36に向かい進む。導波路2の入口側の端36をスライダ上面まで延長し、その上に置いた光再生用フォトダイオード18,19でこの散乱光を検出する。偏光の回転を検出するためには、導波路2の入口側の端36を出射した光を偏光ビームスプリッタ20に通すことにより、直交する2つの偏光方向成分に分離する。この分離した光をそれぞれ再生用フォトダイオード18,19で検出する。このとき、偏光ビームスプリッタ20の下部には、1/2波長板21を置き、再生信号の大きさが最も大きくなるように1/2波長板21の向きを調整する。または、1/2波長板21を配置することに替えて、偏光ビームスプリッタ20の向きを変えることで、再生信号の大きさが最も大きくなるように調整しても良い。
【0053】
上記のように、導波路2を通して散乱光を検出して記録データを再生する場合、導波路1中の光が導波路2へカップリングする効率(η)は、上記のように33%以下でなくても良い。カップリング効率(η)が小さすぎると、散乱光が導波路2へカップリングする効率が低くなり、検出信号の信号対ノイズ比が大きくなってしまう。カップリング効率は50%とするのが望ましい。
【0054】
また、上記磁気記録装置では、媒体として磁気ディスクを利用したが、磁気ディスクに替えて、相変化媒体やフォトクロミック媒体などを利用しても良い。この場合、記録ビットを読み取るためには、媒体表面から発生する散乱光の強度変化を検出すれば良い。したがって、偏光ビームスプリッタ20で散乱光を分離する必要はなく、導波路2の入口側の端36から出射する光を1つのフォトダイオードで検出すれば良い。なお、媒体として、相変化媒体やフォトクロミック媒体などの磁気記録媒体以外の媒体を利用する場合は、コイル8や主磁極6などの磁界を印加させるための素子を、導波路1近傍に配置する必要はない。
【0055】
図24は、媒体表面から発生する散乱光の強度変化を、導波路2の入口側の端36で検出すると同時に、同じ位置で導波路1中を伝播する光の強度を検出する場合を示す。ここでは,導波路1から導波路2にカップリングし、下方向に進んだ光を、反射ミラー11で折り返し、導波路2の上方向へ進行するようにしている。このとき、反射ミラー11の手前には、1/4波長板22を配置することにより、偏光方向を90度回転させることができる。導波路2の入口側の端36には、偏光ビームスプリッタ20を配置し、入射光と同じ方向に偏光した光と、入射光と直交する方向に偏光した光とに分離する。入射光と同じ方向に偏光した光は、媒体表面から発生する散乱光に相当する。したがって、その光を検出することにより、記録ビットを再生することが出来る。一方、入射光と直交する方向に偏光した光は、導波路2を下方向に進んだ光で、その光の強度を検出することで、導波路1中を伝播する光の強度をモニタすることが出来る。
【0056】
次に、図25及び図26を参照して、実施例3による構成を説明する。実施例1では、導波路1から導波路2へ光を移動させるために、エバネッセント光カップリングを利用したが、エバネッセント光カップリングに替え、図25に示すように、グレーティング45を利用してカップリグしても良い。導波路1のコア表面にグレーティング45を形成すると、導波路1からは回折光が発生する。グレーティング45は導波路2上にも形成し、導波路1から回折された光を導波路2上のグレーティング45を利用して導波路2へ導くことができる。また、図26に示すように、エバネッセント光カップリングに替え、導波路1のコア表面に散乱体46を形成することにより、導波路1を伝わる光の一部を取り出しても良い。散乱体46としては、寸法が数100nm以下の金属の小片などを利用する。また、散乱体16を形成することに替え、導波路1のコア表面に切り込みや出っ張りを作ることで光を散乱させても良い。散乱させた光は、導波路1近傍に置いた検出用導波路2を用いてスライダ上に置かれたフォトダイオード16で検出すれば良いが、このとき集光効率をあげるために、導波路2の入口にレンズ47を配置して、散乱光を集光しても良い。このレンズ47は加工を容易にするために、平面状のレンズであっても良い。
【0057】
図27に、半導体レーザ25をスライダ上に配置する場合の構成を示す。図27(a)は側断面図、図27(b)はスライダ上に配置した半導体レーザを含む光モジュールを、スライダの背面側から見た図である。スライダ上に配置した光モジュールは、Siで出来たマウント12、半導体レーザ25、マイクロレンズ27および28、反射ミラー29から構成される。半導体レーザ25は、マウント12の中央部に窪みを形成し、そこに配置される。半導体レーザ25からの出射光はマイクロレンズ27でコリメートされ後、マイクロレンズ28で集光される。マイクロレンズ27および28は、透明基板26の両側に形成される。マイクロレンズ28で集光された光は、ミラー29で折り返えされる。ミラー29は、マウント12を削ることにより作製し、表面には、銀やアルミの金属がコートされている。導波路1中の光を検出するためのフォトダイオード16はミラー29の横に形成される。このフォトダイオード16は、Si製のマウント12表面に直接作り込むことができる。半導体レーザ25およびマイクロレンズ27および28の位置は、マイクロレンズ28で集光された光の焦点が導波路1の入射口に位置するように調整する。このとき、スライダ上面と平行な方向(x,y方向)の位置合わせにおいては、実際に半導体レーザ25を光らせた状態で、フォトダイオード16の出力をモニタしながら行う。レーザの集光点が、導波路1の中心に合ったとき、導波路1の光パワーは最大になるので、フォトダイオード16の出力も最大になる。したがって、大まかな位置を合わせておいてから、フォトダイオード16の出力をモニタしながら、光モジュールまたはスライダを数μmスキャンさせ、フォトダイオード16の出力が最大となる位置で光モジュールをスライダに対して固定すれば、非常に高い精度で、入射光と導波路1の位置合わせを行うことが可能である。
【0058】
ところで、1Tb/in2に近い記録密度を実現するためには、精密なトラッキングが必要であるが、そのためにはサスペンションとスライダの間にマイクロアクチュエータを配置するのが好ましい。スライダ上部に取り付けられる部品の厚さをなるべく小さくするためには、上記の半導体レーザ、マイクロレンズはマイクロアクチュエータの基板表面(スライダに接する面)の一部を削り、その上に直接配置するのが好ましく、光検出用のフォトダイオードも、マイクロアクチュエータの基板表面(スライダに接する面)に直接作りこむのが好ましい(マイクロアクチュエータの基板表面にpn接合を直接作製する)。
【0059】
図28は、実施例1の変形例であり、光の入射にグレーティングを用いた場合の構成を示す。半導体レーザ25は、サスペンションまたはアーム上に配置され、半導体レーザ25から出射した光はコリメートレンズ27で平行光42にされる。導波路1の上部にはテーパー部40が設けられ、その表面に平行光42をカップリングするためのグレーティング43が形成されている。このように、グレーティング43を用いてカップリングさせる場合、入射光が導波路1にカップリングする割合(カップリング効率)は、グレーティング43に入射する光の入射角度に依存する。したがって、スライダまたはサスペンションが振動すると、グレーティング43に入射する光の方向が変化するので、導波路1へのカップリング効率が変化してしまう。また、カップリング効率は、波長にも依存するので、温度変動などにより半導体レーザ25の光の波長が揺らぐと、カップリング効率が変動してしまう。このようにカップリング効率が変動すると、導波路1を伝わる光の強度が変動してしまうが、その変動を抑制するために、実施例1と同様に、導波路1中を伝わる光の一部を導波路2で分岐し、検出器16で検出し、その検出信号を利用してフィードバックループを構成し、導波路1中を伝わる光の強度が一定になるように制御する。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の実施例1による熱アシスト磁気記録ヘッドの部分斜視図である。
【図2】実施例1における導波路構造を示す図である。
【図3】本発明に関わる熱アシスト磁気記録ヘッドの全体構成を示す図で、(a)は測断面図、(b)はサスペンション全体を含む上面図である。
【図4】近接場光を発生させるための散乱体を示す図である。
【図5A】本発明に関わる磁気記録装置における、光強度を一定に制御するためのフィードバックループを示す図である。
【図5B】本発明に関わる磁気記録装置の全体構成を示す図である。
【図6】実施例1における導波路構造を伝播する光の強度分布の計算結果を示す図である。
【図7】第1の導波路から第2の導波路へのカップリング効率と媒体表面の温度の関係を示す図である。
【図8】第2の導波路の下部にフォトダイオードを配置した例を示す図である。
【図9】第2の導波路の入口側の端がスライダ上面まで伸びた場合を示す図である。
【図10】第2の導波路の折り返し点に金属膜または金属ブロックを配置した例を示す図である。
【図11】第2の導波路の折り返し点において、導波路の幅を小さくした例を示す図である。
【図12】第2の導波路の形状を円弧状にした例を示す図である。
【図13】第2の導波路の入口側の端を横方向に曲げた例を示す図である。
【図14】第2の導波路の入口側の端の上部に遮光構造を形成した例を示す図で、(a)は金属の遮光膜または遮光ブロックを形成した場合、(b)はプリズムを用いて漏れ光を全反射させる場合、(c)はプリズムを用いて漏れ光を屈折させる場合を示す図である。
【図15】第1の導波路の入口側にテーパー部を設けた例を示す図で、テーパー部の側面が直線の場合を示す図である。
【図16】第1の導波路の入口側にテーパー部を設けた場合の、導波路中の光強度分布の計算結果を示す図である。
【図17】第1の導波路の入口側にテーパー部を設けた場合と設けない場合の、導波路中の光パワー分布の計算結果を示す図である。
【図18】第1の導波路の入口側にテーパー部を設けた例を示す図で、(a)はテーパー部の幅が指数関数的に減少する場合、(b)はテーパー部の幅が2次関数的に減少する場合を示す図である。
【図19】実施例2による熱アシスト磁気記録ヘッドの導波路構造を示す図である。
【図20】実施例2における導波路構造において、(a)は光が入射する側の導波路の幅の一部を小さくする場合、(b)は光が移動する側の導波路の幅の一部を小さくする場合を示す図である。
【図21】導波路の径とモードフィールド径の関係を示す図である。
【図22】実施例2における導波路中の光強度分布の計算結果を示す図である。
【図23】実施例1において光再生用の光学系を設けた場合を示す図である。
【図24】実施例1において第2の導波路の下部に反射膜を設け、第2の導波路の入口側において光を検出する場合を示す図である。
【図25】実施例3による熱アシスト磁気記録ヘッドの導波路構造を示す図である。
【図26】実施例3における導波路構造の変形例を示す図である。
【図27】スライダ上に半導体レーザを配置する例を示す図で、(a)は測断面図、(b)は光モジュールをスライダ背面側から見た図である。
【図28】実施例1の変形例を示す図で、グレーティングを用いて光を第1の導波路へカップリングさせる場合を示す図である。
【符号の説明】
【0061】
1,2,3,4…導波路、
5…浮上スライダ、
6…主磁極、
7…補助磁極、
8…コイル、
9…磁気記録媒体、
10…記録層、
11…反射構造、
12…マウント、
13…フレクシャー、
14…サスペンション、
15…近接場光発生素子、
16…光検出器、
17,17′…反射防止膜、
18…再生用光検出器、
19…再生用光検出器、
20…偏光ビームスプリッタ、
21…1/2波長板、
22…1/4波長板、
23…カップリングレンズ、
24…パッケージ、
25…半導体レーザ、
26…透明基板、
27…コリメートレンズ、
28…集光レンズ、
29…ミラー、
30…スピンドル、
31…プリアンプ、
33…ボイスコイルモータ、
34…アーム、
35…磁気再生素子、
36…導波路2の入口側の端、
37…遮光構造、
38…入射光の光強度分布、
39…導波路内の光強度分布、
40…導波路のテーパー部、
41…検出用導波路の折り返し部、
42…入射光、
43…グレーティング、
44…近接場光が発生する頂点、
45…グレーティング、
46…散乱体、
47…レンズ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
浮上スライダと、該浮上スライダに搭載された磁界発生素子と、該磁界発生素子の近傍に配置され、入射した光を前記浮上スライダの浮上面側に導くための第1の導波路と、該第1の導波路の出射端に配置された近接場光発生素子と、該第1の導波路に対して光波長以下の距離になるように配置された第2の導波路と、該第2の導波路を伝播する光の強度を検出するための第1の光検出器とを有することを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項2】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記第2の導波路を伝播する光は前記第1の導波路を伝播する光の一部が前記第1の導波路周辺に発生するエバネッセント光を介して前記第2の導波路に移動した光であることを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項3】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記第1の導波路を伝播する光の強度と前記第2の導波路を伝播する光の強度が比例関係にあることを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項4】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、さらに前記第2の導波路と前記光検出器の間に光路を折り曲げるための構造を有し、前記第1の光検出器が前記浮上スライダの浮上面と反対側の面に配置されることを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項5】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、さらに前記第2の導波路を伝播する光を折り返す反射面と、該反射面で折り返された光を前記第1の光検出器に導くための第3の導波路を有し、前記第1の光検出器が前記浮上スライダの浮上面と反対側の面に配置されることを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項6】
請求項5記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記反射面近傍の前記第2の導波路の先端部と第3の導波路の先端部の幅が他の部分よりも狭くなっていることを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項7】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記第2の導波路は円弧状を成し、出射端が前記浮上スライダの浮上面と反対側に位置し、該出射端に前記第1の光検出器が設けられることを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項8】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記第2の導波路の入口側の端部が前記第1の導波路から離れる方向に曲がっていることを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項9】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記第1の導波路の光が入射する端部の周辺に、該第1の導波路へ入射しなかった光を遮光する遮光構造を有することを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項10】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記第1の導波路の幅が、光が入射する側の端部に向かい徐々に広くなり、かつ前記第1の導波路の光が入射する端部と反対側に位置する幅が狭くなった部分の近傍に前記第2の導波路が配置されていることを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項11】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記第1の導波路中を進行する光の進行方向と反対方向に位置する前記第2の導波路の端に第2の光検出器が配置され、前記近接場光発生素子が発生する近接場光が散乱されて発生する散乱光が、前記第2の導波路の端に配置された第2の光検出器で検出されることを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項12】
請求項1記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記浮上スライダの浮上面と反対側の面に配置され、前記第1の導波路に入射する光を発生する光源を有することを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項13】
浮上スライダと、該浮上スライダに搭載された磁界発生素子と、入射した光を前記浮上スライダの浮上面側に導くための第1の導波路と、該第1の導波路を伝播する光の強度を検出するための光検出器と、前記磁界発生素子及び第1の導波路の近傍に配置され、該第1の導波路との距離が光波長以下である第2の導波路と、該第2の導波路の出射端に配置された近接場光発生素子とを有することを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項14】
請求項13記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記第1の導波路の光が入射する端部のコアの幅が、前記第2の導波路のコアの幅よりも大きいことを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項15】
請求項13記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記第1の導波路のコアの屈折率が前記第2の導波路のコアの屈折率よりも小さいことを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項16】
請求項13記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記第1の導波路から前記第2の導波路へ光が移動する部分において、前記第2の導波路のコアの幅が、前記第1の導波路から前記第2の導波路へ光が移動する部分以外の部分における前記第2の導波路のコアの幅よりも小さいことを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項17】
請求項13記載の熱アシスト磁気記録ヘッドにおいて、前記第1の導波路から前記第2の導波路へ光が移動する部分において、前記第1の導波路のコアの幅が、前記第1の導波路から前記第2の導波路へ光が移動する部分以外の部分における前記第1の導波路のコアの幅よりも小さいことを特徴とする熱アシスト磁気記録ヘッド。
【請求項18】
磁気記録媒体と、
光源と、
浮上スライダと、該浮上スライダに搭載された磁界発生素子と、該磁界発生素子の近傍に配置され、前記光源からの入射光を前記磁気記録媒体側に導くための第1の導波路と、該第1の導波路の出射端に配置された近接場光発生素子と、該第1の導波路に対して光波長以下の距離になるように配置された第2の導波路と、該第2の導波路を伝播する光の強度を検出するための光検出器とを有する熱アシスト磁気記録ヘッドと、
前記熱アシスト磁気記録ヘッドを支持するサスペンションと、
前記サスペンションを支持するアームと、
前記光検出器で検出された光の強度を基準値と比較し、光強度が基準値より大きい場合は前記光源から発生する光の量を減少させ、前記光検出器で検出された光強度が基準値より小さい場合は前記光源から発生する光の量を増加させる制御回路と、
を有することを特徴とする磁気記録装置。
【請求項19】
請求項18記載の磁気記録装置において、前記光源は前記アームに配置され、前記光源からの光は第3の導波路により前記スライダの第1の導波路に導かれることを特徴とする磁気記録装置。
【請求項20】
請求項18記載の磁気記録装置において、前記光源は前記サスペンションに配置され、前記光源からの光は第3の導波路により前記スライダの第1の導波路に導かれることを特徴とする磁気記録装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20】
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【図21】
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【図22】
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【図23】
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【図24】
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【図25】
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【図26】
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【図27】
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【図28】
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【公開番号】特開2008−204586(P2008−204586A)
【公開日】平成20年9月4日(2008.9.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−42486(P2007−42486)
【出願日】平成19年2月22日(2007.2.22)
【国等の委託研究の成果に係る記載事項】(出願人による申告)平成17年度、独立行政法人新エネルギー・産業技術総合開発機構、「大容量光ストレージ技術の開発事業」(再)委託研究、産業再生法第30条の適用を受ける特許出願
【出願人】(000005108)株式会社日立製作所 (27,607)
【Fターム(参考)】