熱リサイクルシステム
【課題】低コストで省エネルギーなシステムを構築し得る熱リサイクルシステムを提供する。
【解決手段】この熱リサイクルシステム1は、相互に異なる温度域に管理される複数の主配管2,4と、流量可変なポンプを個別に有するとともに複数の主配管2,4に熱交換可能に接続される冷(温)熱製造機10,20と、流量可変なポンプを個別に有する個々の熱消費機8,9との熱交換が可能なように複数の主配管2,4に接続される分岐配管40と、複数の主配管2,4相互の流量を検出する流量計5と、複数の主配管2,4の状態を管理するコントローラ6とを備え、コントローラ6は、流量計5からの流量情報に基づいて、複数の主配管2,4相互間の流量を零にするように冷(温)熱製造機10,20の出力を制御する。
【解決手段】この熱リサイクルシステム1は、相互に異なる温度域に管理される複数の主配管2,4と、流量可変なポンプを個別に有するとともに複数の主配管2,4に熱交換可能に接続される冷(温)熱製造機10,20と、流量可変なポンプを個別に有する個々の熱消費機8,9との熱交換が可能なように複数の主配管2,4に接続される分岐配管40と、複数の主配管2,4相互の流量を検出する流量計5と、複数の主配管2,4の状態を管理するコントローラ6とを備え、コントローラ6は、流量計5からの流量情報に基づいて、複数の主配管2,4相互間の流量を零にするように冷(温)熱製造機10,20の出力を制御する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷(温)熱製造機や冷(温)熱消費機を分散配置した熱製造消費施設において、建物等の施設内および工場や地域等の域内で発生した熱を相互に回収し、再利用を行うことにより、従来捨てられていたエネルギーを有効活用し得る熱リサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
私たちの周りには、まだ使われていない種々のエネルギー源がある(例えばゴミ焼却場・変電所や工場から出る温熱、生活排水、川や海の水の冷温熱、雪氷の冷熱など)。これらは未利用エネルギーと呼ばれており、これらを活用すれば冷暖房や給湯等に利用できる。そして、未利用エネルギーを単独で利用するだけでなく、低温から高温までの未利用エネルギーを上手に組み合わせれば、地域的なエネルギーの供給システムを作り出すことができる。
【0003】
例えば冷(温)熱製造機や冷(温)熱消費機を分散配置した熱製造消費施設において、建物等の施設内および工場や地域等の域内で発生した熱を相互に回収し、再利用する熱リサイクルシステムを構築すれば、従来捨てられていたエネルギーを有効活用することができる。このように、未利用エネルギーの有効利用の可能性は広がっており、また、都市のヒートアイランド防止やCO2削減に対する大きな効果が期待される。
【0004】
ここで、従来の熱供給システムの一例を図16(a)、(b)に示す。
図16(a)に示すように、従来の熱供給システムでは、冷熱を供給する場合は、冷熱製造機からポンプにて配管系を通じて冷熱を供給し、温熱を供給する場合は、温熱製造機からポンプにて冷熱源とは別系統の配管系にて温熱の供給を行っている。このようなシステムの場合、冷熱と温熱が同時に必要な際には、各々の必要な熱量分だけ熱媒体をそれぞれ供給する。そのため、熱源からの水量が多くなり、搬送動力が大きくなる。また、図16(b)は冷熱の供給と温熱の供給を切り替え、1つの系統で熱供給を行うため、冷温熱を同時に供給できない。
【0005】
つまり、従来の熱供給システムでは、熱源から遠い位置に配置した場所で数カ所熱消費が発生した場合に、遠い位置に配置した場所まで冷(温)熱を搬送する必要があるため、ポンプに無駄な抵抗を含めた仕事をさせることになる。また、従来の熱供給システムでは、冷熱及び温熱が同時に発生した場合に、冷熱及び温熱の配管系が異なるため、各々の必要な熱量分を搬送する必要が生じ、より多くの流量を必要とすることになる。そのため、広域な熱供給システムを構築しようとすると、上記の問題が生じる。
【0006】
そこで、搬送動力を削減する先行技術として、例えば特許文献1に記載の技術が提案されている。特許文献1では、中央熱源に冷温水搬送用のポンプを有しない構成とし、熱媒体の流れの方向を決めて、この熱媒体の循環を、冷(温)熱製造機や冷(温)熱消費機に個別に付設されたポンプのみで行うことにより、循環ポンプを用いずに搬送動力を低減することを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2707362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、中央熱源に冷温水搬送用のポンプを有しないため、冷温熱のバランスを保つためには中央熱源までの配管内の循環を促すだけの搬送力が必要となる。そして、現実的には、年間を通して熱バランスがとれる時期は少なく、むしろ多くの無駄な搬送エネルギーを多くの時間にかけることとなる。したがって、特許文献1記載の技術を採用しても、図16(a)に示した循環ポンプと同様の搬送エネルギーを必要とし、広域に熱供給システムを構築する上で、搬送動力の低減を図りにくいという問題を解決することができない。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、広域に熱リサイクルシステムを構築する場合であっても、低コストで省エネルギーなシステムを構築し得る熱リサイクルシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、熱リサイクルシステムであって、相互に異なる温度域毎に1本の配管からなる複数の主配管と、流量可変なポンプを個別に有するとともに前記複数の主配管に熱交換可能に接続される冷熱製造機および温熱製造機と、流量可変なポンプを個別に有して個々の熱消費機との熱交換が可能なように前記複数の主配管に接続される分岐配管と、前記複数の主配管相互の均衡状態を検知する主配管均衡状態検知手段と、前記複数の主配管の均衡状態を管理するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記主配管均衡状態検知手段からの均衡状態情報に基づいて、前記複数の主配管相互の均衡状態を維持するように前記冷熱製造機および温熱製造機の出力を制御することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る熱リサイクルシステムによれば、相互に異なる温度域毎に1本の配管からなる複数の主配管と、分岐配管とを有し、この分岐配管を介して分散配置された冷(温)熱製造機や冷(温)熱消費機に個々に流量可変なポンプを設けたので、主配管には循環ポンプを設けないでも、熱を必要とするところへ次々と移動させていく(以下、「熱継送」ともいう)ことができる。つまり、必要なところへ必要なだけの熱を無駄なく熱継送できるため、省エネルギーな熱リサイクルシステムを構築することができる。また、異なる温度域毎に1本の主配管を付設するだけで良いので、配管量を削減でき、低コストでシステムを構築することができる。
【0012】
また、本発明に係る熱リサイクルシステムによれば、分岐配管を介して分散配置された冷(温)熱製造機や冷(温)熱消費機が個々に流量可変なポンプを有する構成により熱継送ができるため、冷(温)熱製造機や冷(温)熱消費機の設置場所が限定されず、系の中であれば自由に混在設置が可能(以下、「自由設置」ともいう)である。したがって、例えば広域な熱リサイクルシステムを構築する上で、建築的な制約が少なくなり、配管量や建築コストを低減することができる。
【0013】
ここで、本発明に係る熱リサイクルシステムにおいて、前記主配管均衡状態検知手段は、前記複数の主配管相互をつなぐ連結管路の流量を検出する流量計であって、前記コントローラは、前記流量計からの流量情報を均衡状態情報として取得するとともに、当該流量情報に基づいて、前記連結管路の流量を零にするように前記冷熱製造機および温熱製造機の出力を制御することは好ましい。
【0014】
また、前記コントローラが、流量計により検出された熱媒体の流れの向きによって冷熱移行要求か温熱移行要求かを判断し、連結管路の流量を零にするように、前記冷熱製造機および温熱製造機の流量を制御し熱媒体の供給量を調整することは好ましい。
このような構成であれば、コントローラが冷(温)熱製造機の流量と熱量を制御して、冷熱を主配管に供給する場合には、高温側の熱源水をポンプにて取得して低温側に冷熱を供給し、温熱を主配管に供給する場合には、低温側の熱源水をポンプにて取得して高温側に温熱を供給するように、冷熱製造機および温熱製造機を制御することができる。また、冷温熱の量と要求場所により、正流や逆流が生じる(以下、「自由流動」ともいう)。そのため、例えば広域な熱リサイクルシステムを構築する上で、必要なところへ必要なだけの熱を無駄なく熱継送する上で好適である。
【0015】
また、熱製造機の分岐配管(40)に主配管からの取得熱量を検知する流量計(12,22)を設置することは好ましい。さらに、当該流量計(12,22)と前記連結管路の流量計(5)の流量情報と冷(温)熱製造機の運転状態に基づいて、前記コントローラで冷(温)熱製造機(10、20)とそれに付随するポンプ(11、21)を制御することは好ましい。
【0016】
ここで、上記主配管の均衡状態を検知する主配管均衡状態検知手段として、流量計を例に説明する。
流量計5は、図4に示すように、流量零の前後に不感帯を設け、流量が低温側から高温側に流れる時をプラス、高温側から低温側に流れる時をマイナスとすると、プラスの時には冷熱製造機が運転中には冷熱供給を増加、温熱製造機が運転中には温熱供給を減少させる(以下、冷熱移行要求)。一方、マイナスの時には冷熱製造機が運転中には冷熱供給を減少、温熱製造機が運転中には温熱供給を増加させる(以下、温熱移行要求)。
【0017】
その際のポンプの出力設定値は、現在運転している熱製造機側の流量計(12または22)の数値に連結管路の流量計5の数値を足した数値(流量Q)になるように決定する。
流量Qがマイナスになる時には、冷熱製造機と温熱製造機が同時運転しないよう運転している熱製造機を停止させ、その後冷熱温熱の切り替えを行う。また、流量計5が零の時にはバランス状態のため、現状の運転を継続する。なお、ここでは主配管均衡状態検知手段として、流量計での検知の例で説明したが、水位や圧力によって主配管の均衡状態を検出してもよい。
【0018】
また、この熱リサイクルシステムにおいて、コントローラが、刻々変化する外気温湿度や熱消費機の負荷、熱製造消費機の特性に応じて、熱リサイクルシステムで最も効率が良くなるように複数の主配管毎の温度帯の温度を制御することは好ましい。また、例えば、主配管の本数を増やすことで、各々の熱消費機にきめ細かく対応でき、各域内で各々効率の高い運転が可能となり、省エネルギーな熱リサイクルシステムを構築できる。
【0019】
さらに、本発明に係る熱リサイクルシステムにおいて、熱リサイクルシステムを付設する各域内の熱的特性に適合させて前記複数の主配管の本数や相互に異なる温度域の設定を変えることは好ましい。このような構成であれば、主配管の本数や温度帯を各域内の熱的特性に適合させて変えることで、各域内の熱的特性に適合した、より効率の良いシステムを構築できる。
【0020】
また、本発明に係る熱リサイクルシステムにおいて、本発明に係る熱リサイクルシステムを複数連結したシステムとすれば、面的な広域熱リサイクルシステムを構築することができる。このような構成であれば、未利用エネルギーの更なる有効利用、都市のヒートアイランド現象の更なる防止やCO2削減に大きな効果がある。
【発明の効果】
【0021】
上述したように、本発明に係る熱リサイクルシステムによれば、広域に熱リサイクルシステムを構築する場合であっても、低コストで省エネルギーなシステムを構築し得る熱リサイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る熱リサイクルシステムの一実施形態の模式図である。
【図2】図1のコントローラのブロック図である。
【図3】コントローラが実行する熱供給量調整処理のフローチャートである。
【図4】熱供給量調整処理における流量と流量計出力との関係を示すグラフである。
【図5】主配管設定温度の制御フローである。
【図6】熱消費機の負荷側供給温度と外気温等の違いによる消費エネルギーの傾向を示す図である。
【図7】設定温度を説明する図であり、同図(a)は、ある時点での熱製造機の主配管温度に対する消費エネルギーを示す図、同図(b)は、ある時点での熱消費機の主配管温度に対する消費エネルギーを示す図、同図(c)は、決定する主配管設定温度と全消費エネルギーとの関係を示す図である。
【図8】熱リサイクルシステムの負荷と水量との関係を示すグラフ((a)、(b))である。
【図9】本発明に係る熱リサイクルシステムの動作の例を示す図((a)〜(c))である。
【図10】外気湿球温度、熱源水温度および熱負荷(水量)の関係を示すグラフである。
【図11】本発明に係る熱リサイクルシステムの他の実施形態(3管式)の模式図である。
【図12】本発明に係る熱リサイクルシステムに基づくシステム付設例を示す模式図である。
【図13】本発明に係る熱リサイクルシステムに基づく広域熱移動システムの構築例を示す模式図である。
【図14】コントローラが実行する熱リサイクルシステム相互の熱供給量調整をする連結部を説明する模式図((a)、(b))である。
【図15】本発明に係る熱リサイクルシステムに基づく広域熱移動システムの構築例を示す模式図である。
【図16】従来の熱供給システムの二つの実施形態の各模式図((a)、(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、この熱リサイクルシステム1は、複数(この例では2本)の主配管2,4を有している。これら主配管2,4には、循環ポンプを有しておらず、主配管2,4相互は重複しない異なる温度域が設定されている。本実施形態の例では、高温域主配管2は、温度域が20℃〜40℃程度に設定され、また、低温域主配管4は温度域が5℃〜35℃程度に設定されており、後述するコントローラ6によってそれぞれ管理されている。
【0024】
各主配管2,4には、冷熱製造機10および温熱製造機20が熱交換可能に分岐配管40を介して接続されている。冷熱製造機10および温熱製造機20は、それぞれ流量可変ポンプ11および流量可変ポンプ21を個別に有して構成されている。また、各主配管2,4には、熱消費機として、冷熱および温熱それぞれの熱交換が可能な熱消費機15、冷熱消費機8および温熱消費機9が接続されるようになっている。これら熱消費機8,9,15も、流量可変なポンプ31を個別に有しており、各主配管2,4に分岐配管40を介して熱交換が可能なように接続される。なお、個々の熱製造、消費機の種類の例を下表に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
さらに、上記主配管2,4相互間には、主配管均衡状態検知手段として、流量計5が付設されている。この流量計5は、主配管2,4相互の一方の末端の接続部分に、主配管2,4に連結管路7を介して接続されており、相互間の熱媒体(水)の流量およびその流れの向きを検出可能である。また、冷熱製造機10と温熱製造機20には、ポンプ40側の分岐配管40に流量計(12または22)がそれぞれ付設されている。
【0028】
また、この熱リサイクルシステム1は、コントローラ6を備えており、このコントローラ6は、流量計5、および熱製造機10,20の流量計12,22からの流量情報に基づいて、複数の主配管2,4の状態を管理するようになっている。
詳しくは、コントローラ6は、図2に示すように、所定の制御プログラムに基づいて演算およびシステム全体を制御するCPU64と、所定領域にあらかじめCPU64の制御プログラム等を格納している記憶装置66およびROM67と、この記憶装置66およびROM67等から読み出したデータやCPU64の演算過程で必要な演算結果を格納するためのRAM68と、熱リサイクルシステム1の、流量計5,12,22、冷熱製造機10および温熱製造機20、ポンプ11,21を含む外部装置に対してデータの入出力を媒介するインターフェース65とを備えて構成されており、これらは、データを転送するための信号線であるバスで相互にかつデータ授受可能に接続されている。
【0029】
そして、CPU64は、上記記憶装置66やROM67の所定領域に格納されている所定のプログラムを起動させ、そのプログラムに従って以下の熱供給量調整処理を実行する。そして、このコントローラ6において熱供給量調整処理が実行されると、複数の主配管2,4相互間の熱媒体の流量を零にするように熱製造機15、冷熱製造機8および温熱消費機9を制御するようになっている。
【0030】
詳しくは、熱供給量調整処理が実行されると、図3に示すように、まず、ステップS1に移行する。ステップS1では、各流量計5,12,22からの流量情報を取得してステップS2に移行し、ステップS2では、流量計5から取得した流量情報に基づいて、熱媒体の流れの向きによって現状を維持すべきか否か判断する。つまり、流量計5での流量が零の場合は、(YES)ステップS3に移行し、そうでなければステップS4に移行する。
【0031】
ステップS4では、冷熱製造機10が運転されているか否かが判定され、停止中であればステップS5に移行し、運転中であればステップS6に移行する。ステップS7では、温熱製造機20が運転されているか否かが判定され、停止中であればステップS8に移行し、運転中であればステップS7に移行する。
ステップS6では、流量計5と流量計12との合計流量(Q)を演算し、続くステップS9では、合計流量(Q)が零以下であるか否かが判定され、零以下であれば(YES)ステップS12に移行し、そうでなければ(NO)ステップS13に移行する。
【0032】
ステップS7では、流量計5と流量計22との合計流量(Q)を演算し、続くステップS10では、合計流量(Q)が零以下であるか否かが判定され、零以下であれば(YES)ステップS14に移行し、そうでなければ(NO)ステップS15に移行する。
ステップS8では、流量計5の流量が合計流量(Q)を演算し、続くステップS11では、合計流量(Q)が零を超えるか否かが判定され、零を超えていれば(YES)ステップS16に移行し、そうでなければ(NO)ステップS17に移行する。
【0033】
そして、ステップS12では、冷熱製造機10およびそのポンプ11を停止して処理を戻し、また、ステップS13では、冷熱製造機10を運転するとともに、そのポンプ11の出力を流量(Q)になるように変更して処理を戻す。
また、ステップS14では、温熱製造機20およびそのポンプ21を停止して処理を戻し、また、ステップS15では、温熱製造機20を運転するとともに、そのポンプ21の出力を流量(Q)になるように変更して処理を戻す。
【0034】
さらに、ステップS16では、冷熱製造機10を運転するとともに、そのポンプ11の出力を流量(Q)になるように変更して処理を戻し、また、ステップS17では、温熱製造機20を運転するとともに、そのポンプ21の出力を流量(Q)になるように変更して処理を戻す。
【0035】
次に、この熱リサイクルシステム1の作用・効果について説明する。
この熱リサイクルシステム1によれば、異なる温度域に管理される複数の主配管2,4と、これら主配管2,4に接続された分岐配管40とを有し、主配管2,4に、冷(温)熱消費機8,9,15や冷(温)熱製造機10,20が分岐配管40を介して熱交換可能に分散配置され、これらは、個々に流量可変なポンプ31、11,21を有するので、熱を必要とするところへ次々と移動させていくことができる。つまり、この熱リサイクルシステム1によれば、必要なところへ必要なだけの熱を無駄なく熱継送できるため、省エネルギーな熱リサイクルシステムを構築することができる。
【0036】
また、この熱リサイクルシステム1によれば、分岐配管40を介して分散配置された冷(温)熱消費機8,9,15や冷(温)熱製造機10,20が個々に流量可変なポンプ31、11,21を有する構成により熱継送ができるため、冷(温)熱製造機10,20や冷(温)熱消費機8,9の設置場所が限定されず、系の中であれば自由設置が可能である。したがって、例えば広域な熱リサイクルシステムを構築する上で、建築的な制約が少なくなり、配管量や建築コストを低減することができる。
【0037】
また、この熱リサイクルシステム1によれば、異なる温度域毎に1本の主配管を付設するだけで良い(本実施形態の例であれば2本の主配管2,4を付設するだけで良い)ので、配管量を削減でき、低コストでシステムを構築することができる。
例えば、上記「発明が解決しようとする課題」において例示したが、この熱リサイクルシステム1によれば、主配管2,4として、低温配管と高温配管の2本のみを付設すればよいので、図16に示した例と比べて大きく施工費を削減できる。なお、後述するように、本発明に係る熱リサイクルシステムにおいては、複数の主配管として、温度域を増やした3管方式とした場合であっても、従来の4管を有する構成に比べて施工費を削減することができる。
【0038】
ここで、上記熱リサイクルシステム1において、流量と負荷の量について、従来システム(図16の例)との比較をすると図8(a)および(b)に示すようになる。
特に、図8(b)に示すように、冷房負荷と暖房負荷の混在が多くなればなるほど、この熱リサイクルシステム1のメリットは大きくなる。例えば、図9(a)に示すように、冷水負荷だけがある場合、各冷熱消費機が熱を使用する時、仮に最遠端に位置する冷熱消費機の熱要求がないと、各ポンプの受け持つ抵抗(図9(a)に示す丸印の箇所A1)は最遠端までを受け持つ抵抗より小さく、図9(a)内の配管抵抗のみで運転ができる。さらに、この熱リサイクルシステム1によれば、熱源水を熱製造消費機に接続されたポンプによって熱媒体を流動させるので、熱の伝達性が優れている。
【0039】
従来システムとの違いが明確に出るのは、例えば、図9(b)に示すように、隣接する冷熱消費機8と温熱消費機9が稼動していた場合であって、このような場合であれば、隣接する熱消費機に接続されているポンプが稼働することにより、主配管2,4を自由流動によって、熱交換が可能となり冷温熱それぞれの流量が必要なくなるため搬送流量が削減できる。さらに、熱供給の必要な場所への最小の搬送抵抗と流量だけで済むので、搬送エネルギーを大きく削減することができる。
【0040】
なお、図9(b)に示すように、各熱消費機でバランスが取れている場合は、そのバランスが取れているエリア(同図での丸印の箇所A2およびA3)での熱移動しか生じない。また、図9(c)に示すように、多少冷熱需要が大きい場合であっても、冷熱製造機を稼働させることで、最低限の場所(同図での丸印の箇所A1)のみの熱供給を行えば足りる。
【0041】
以上説明したように、この熱リサイクルシステム1によれば、広域に熱リサイクルシステムを構築する場合であっても、低コストで省エネルギーなシステムを構築することができる。なお、本発明に係る熱リサイクルシステムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、コントローラ6において熱供給量調整処理が実行されると、流量計5により検出された熱媒体の流れの向きに基づいて、複数の主配管2,4相互間の流量を零にするように冷熱製造機10および温熱消費機20を制御する例で説明したが、これに限らず、コントローラ6は、例えば、刻々変化する外気温湿度や冷(温)熱消費機の負荷に応じて、熱リサイクルシステム全体で最も効率が良くなるように各複数の主配管毎の温度帯の温度を制御するように構成してもよい(その制御フローを図5に示す)。
【0042】
つまり、図6に示すように、熱製造消費機は負荷側供給温度や外気乾球温度または外気湿球温度(以下、外気温等)によっても変化をする。冷熱製造機と温熱消費機は負荷側供給温度または外気温等が高い場合は低い場合に比べ、消費エネルギーが多くなる傾向がある。また、主配管温度を低くするように設定するとより多くの消費エネルギーが必要となる。温熱製造機と冷熱製造機は負荷側供給温度または外気温等が低い場合は、高い場合に比べ、消費エネルギーが多くなる傾向がある。また、消費エネルギーは各熱製造消費機の特性に左右される。
【0043】
このように、熱リサイクルシステムでは様々な熱製造消費機が様々な運転状況にあるため、主配管設定温度を状況により変化させることでより省エネルギーなシステムになる。
制御フローを図5に示すように、消費エネルギーに起因する負荷側供給温度や流量(以下、負荷側の特性)、外気温等及び各熱製造消費機の特性より、主配管温度の違いによる各熱製造消費機の消費エネルギーが算出できる。なお、ある時点における算出した消費エネルギーは、熱製造機については図7(a)、熱消費機については図7(b)の傾向になる。
【0044】
この算出した各熱製造消費機の消費エネルギーに基づき、主配管設定温度の違いによる全消費エネルギーを算出する(負荷側で冷熱要求のみの時を図7(c)に例示する)。
冷熱消費機は主配管設定温度が高いほど消費エネルギーが多くなり、冷熱製造機は主配管設定温度が低いほど消費エネルギーが多くなる。熱製造機と熱消費機を足し合わせた全消費エネルギーは、最小消費エネルギーとなる主配管設定温度がある。この主配管設定温度になるように主配管設定温度を決定し、各熱製造消費機に指令を出す。なお、ここでは、計算により最も効率が高くなる主配管温度設定を算出したが、熱消費機が多い場合や熱消費機の特性情報が少ない場合は、過去の運転データを元に人が経験的に設定することもありうる。
【0045】
また、例えば一般的な事務所ビルの負荷パターンを例に以下説明する。外気条件、負荷、および熱源水の温度制御について図10に示す。
図10に示すように、負荷側の冷熱需要が少なくなり、暖房需要も少ない中間期(春期や秋期)などには、外気乾球温度または外気湿球温度(以下外気温等)は低いため、熱製造機も低温でも効率良く供給することが可能となる。
【0046】
また、夏期においては、負荷側にて除湿や冷却などの冷熱需要が多くなり、低温側主配管から取得し、高温側主配管に温熱を供給することになる。その際、主配管はなるべく低い温度があると、個々の熱消費機は効率の良い運転が可能となる。しかし、熱バランスを保つ熱製造機は低い温度を供給するためには、より多くのエネルギーが必要となる。そのため、消費エネルギーが最小となる主配管温度設定が必要となる。
【0047】
一方、暖房需要が多くなる冬期においては、高温側主配管から取得し、低温側主配管に排熱をする量が多くなる。
また、例えば上記実施形態では、相互に重複しない異なる温度域に管理される複数の主配管の本数を2本とした例で説明したが、これに限定されず、本発明に係る熱リサイクルシステムにおいて、例えば図11に示すように、主配管の本数を増やすことで、より多様な要求に対し対応することが可能となる。
【0048】
つまり、システムを構築する範囲が広域になるに従い、負荷側において低温要求、中温要求、高温要求がそれぞれ発生する可能性も大きくなる。それに伴い個々の熱消費機の効率が低下することが懸念される。そのため、同図に示すように、主配管を、低温側主配管4、中温側主配管3および高温側主配管2の3本にして、個々の熱消費機において中温が必要か、低温が必要かあるいは高温が必要かを判断して熱源水を取得するようにしてもよい。
【0049】
ここで、図11の冷熱消費機8において、中温側から高温側へ熱媒体が流れている場合と、低温側から中温側へ熱媒体が流れている場合とがあり得るが、熱消費機の種類によっては分岐配管40の配管を固定して接続する場合と、時期(春期、夏期、秋期、冬期)により主配管2,3,4に対する分岐配管40の配管の切り替えを行う熱源もあり得る。このように、主配管の本数を増やすことで需要に対して一層細やかな熱供給や、熱バランスの調整が可能となる。
【0050】
また、例えば図12に示すように、ビルAだけでなく、学校Bや、各種の施設C、工場D等などを含めたあるエリアでの熱供給も同様にして、本発明に係る熱リサイクルシステムを適用可能となることは勿論である。
また、図13に示すように、本発明に係る熱リサイクルシステム1を複数つなぎ合わせることで、動力を必要最小限にしながら、広域での排熱利用が可能となる。
【0051】
ここで、隣り合う熱リサイクルシステム1相互の連結部50の詳細について、図14に示す。
図14に示すように、隣り合う熱リサイクルシステム1間には、ポンプ52及び弁54を設置した連結部50が設けられる。このように上述した熱リサイクルシステム1を複数連結した構成とすれば、隣り合う熱リサイクルシステム1相互の連結部50において、共に冷熱過多または温熱過多という状態の時には、それぞれで熱供給を行うように制御することができる。
【0052】
具体的には、この連結部50において、隣り合う熱リサイクルシステム1のどちらかが冷熱過多、一方が温熱過多という場合は、例えば同図(a)に示すように、連結部50に設置したポンプ52b及び弁54bを稼働し、相互に熱を補完するように制御する。その際、各熱リサイクルシステム1のコントローラ6(同図では不図示)は、それぞれの熱リサイクルシステム1に付設された流量計5の検出した熱媒体の流れの向きに基づいて、上述したように、流量計5の流量がゼロになるように対応するポンプ52(aないしb)を制御すればよい。また、逆の要求の際は、例えば同図(b)に示すように、反対側のポンプ52aと弁54aが動作をするように制御を行うようにすればよい。
【0053】
さらには、上述した熱リサイクルシステム1を複数連結した構成例として、図15に示すように、よりエリアを拡大した熱リサイクルシステムを形成することで、熱リサイクル量を増加することができるので、例えばヒートアイランド対策も可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 熱リサイクルシステム
2 高温側主配管(主配管)
3 中温側主配管(主配管)
4 低温側主配管(主配管)
5 (連結管路の)流量計
6 コントローラ
7 連結管路
8 冷熱消費機(熱消費機)
9 温熱消費機(熱消費機)
10 冷熱製造機
11 冷熱製造機用の流量可変ポンプ(ポンプ)
12 (冷熱製造機用の)流量計
15 熱消費機
20 温熱製造機
21 温熱製造機用の流量可変ポンプ(ポンプ)
22 (温熱製造機用の)流量計
31 熱消費機用の流量可変ポンプ(ポンプ)
40 分岐配管
42、43 冷温熱切り替え弁
50 (熱リサイクルシステム相互の)連結部
52a,b (連結部の)ポンプ
54a,b (連結部の)弁
【技術分野】
【0001】
本発明は、冷(温)熱製造機や冷(温)熱消費機を分散配置した熱製造消費施設において、建物等の施設内および工場や地域等の域内で発生した熱を相互に回収し、再利用を行うことにより、従来捨てられていたエネルギーを有効活用し得る熱リサイクルシステムに関する。
【背景技術】
【0002】
私たちの周りには、まだ使われていない種々のエネルギー源がある(例えばゴミ焼却場・変電所や工場から出る温熱、生活排水、川や海の水の冷温熱、雪氷の冷熱など)。これらは未利用エネルギーと呼ばれており、これらを活用すれば冷暖房や給湯等に利用できる。そして、未利用エネルギーを単独で利用するだけでなく、低温から高温までの未利用エネルギーを上手に組み合わせれば、地域的なエネルギーの供給システムを作り出すことができる。
【0003】
例えば冷(温)熱製造機や冷(温)熱消費機を分散配置した熱製造消費施設において、建物等の施設内および工場や地域等の域内で発生した熱を相互に回収し、再利用する熱リサイクルシステムを構築すれば、従来捨てられていたエネルギーを有効活用することができる。このように、未利用エネルギーの有効利用の可能性は広がっており、また、都市のヒートアイランド防止やCO2削減に対する大きな効果が期待される。
【0004】
ここで、従来の熱供給システムの一例を図16(a)、(b)に示す。
図16(a)に示すように、従来の熱供給システムでは、冷熱を供給する場合は、冷熱製造機からポンプにて配管系を通じて冷熱を供給し、温熱を供給する場合は、温熱製造機からポンプにて冷熱源とは別系統の配管系にて温熱の供給を行っている。このようなシステムの場合、冷熱と温熱が同時に必要な際には、各々の必要な熱量分だけ熱媒体をそれぞれ供給する。そのため、熱源からの水量が多くなり、搬送動力が大きくなる。また、図16(b)は冷熱の供給と温熱の供給を切り替え、1つの系統で熱供給を行うため、冷温熱を同時に供給できない。
【0005】
つまり、従来の熱供給システムでは、熱源から遠い位置に配置した場所で数カ所熱消費が発生した場合に、遠い位置に配置した場所まで冷(温)熱を搬送する必要があるため、ポンプに無駄な抵抗を含めた仕事をさせることになる。また、従来の熱供給システムでは、冷熱及び温熱が同時に発生した場合に、冷熱及び温熱の配管系が異なるため、各々の必要な熱量分を搬送する必要が生じ、より多くの流量を必要とすることになる。そのため、広域な熱供給システムを構築しようとすると、上記の問題が生じる。
【0006】
そこで、搬送動力を削減する先行技術として、例えば特許文献1に記載の技術が提案されている。特許文献1では、中央熱源に冷温水搬送用のポンプを有しない構成とし、熱媒体の流れの方向を決めて、この熱媒体の循環を、冷(温)熱製造機や冷(温)熱消費機に個別に付設されたポンプのみで行うことにより、循環ポンプを用いずに搬送動力を低減することを意図している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第2707362号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、特許文献1記載の技術では、中央熱源に冷温水搬送用のポンプを有しないため、冷温熱のバランスを保つためには中央熱源までの配管内の循環を促すだけの搬送力が必要となる。そして、現実的には、年間を通して熱バランスがとれる時期は少なく、むしろ多くの無駄な搬送エネルギーを多くの時間にかけることとなる。したがって、特許文献1記載の技術を採用しても、図16(a)に示した循環ポンプと同様の搬送エネルギーを必要とし、広域に熱供給システムを構築する上で、搬送動力の低減を図りにくいという問題を解決することができない。
【0009】
そこで、本発明は、このような問題点に着目してなされたものであって、広域に熱リサイクルシステムを構築する場合であっても、低コストで省エネルギーなシステムを構築し得る熱リサイクルシステムを提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記課題を解決するために、本発明は、熱リサイクルシステムであって、相互に異なる温度域毎に1本の配管からなる複数の主配管と、流量可変なポンプを個別に有するとともに前記複数の主配管に熱交換可能に接続される冷熱製造機および温熱製造機と、流量可変なポンプを個別に有して個々の熱消費機との熱交換が可能なように前記複数の主配管に接続される分岐配管と、前記複数の主配管相互の均衡状態を検知する主配管均衡状態検知手段と、前記複数の主配管の均衡状態を管理するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記主配管均衡状態検知手段からの均衡状態情報に基づいて、前記複数の主配管相互の均衡状態を維持するように前記冷熱製造機および温熱製造機の出力を制御することを特徴とする。
【0011】
本発明に係る熱リサイクルシステムによれば、相互に異なる温度域毎に1本の配管からなる複数の主配管と、分岐配管とを有し、この分岐配管を介して分散配置された冷(温)熱製造機や冷(温)熱消費機に個々に流量可変なポンプを設けたので、主配管には循環ポンプを設けないでも、熱を必要とするところへ次々と移動させていく(以下、「熱継送」ともいう)ことができる。つまり、必要なところへ必要なだけの熱を無駄なく熱継送できるため、省エネルギーな熱リサイクルシステムを構築することができる。また、異なる温度域毎に1本の主配管を付設するだけで良いので、配管量を削減でき、低コストでシステムを構築することができる。
【0012】
また、本発明に係る熱リサイクルシステムによれば、分岐配管を介して分散配置された冷(温)熱製造機や冷(温)熱消費機が個々に流量可変なポンプを有する構成により熱継送ができるため、冷(温)熱製造機や冷(温)熱消費機の設置場所が限定されず、系の中であれば自由に混在設置が可能(以下、「自由設置」ともいう)である。したがって、例えば広域な熱リサイクルシステムを構築する上で、建築的な制約が少なくなり、配管量や建築コストを低減することができる。
【0013】
ここで、本発明に係る熱リサイクルシステムにおいて、前記主配管均衡状態検知手段は、前記複数の主配管相互をつなぐ連結管路の流量を検出する流量計であって、前記コントローラは、前記流量計からの流量情報を均衡状態情報として取得するとともに、当該流量情報に基づいて、前記連結管路の流量を零にするように前記冷熱製造機および温熱製造機の出力を制御することは好ましい。
【0014】
また、前記コントローラが、流量計により検出された熱媒体の流れの向きによって冷熱移行要求か温熱移行要求かを判断し、連結管路の流量を零にするように、前記冷熱製造機および温熱製造機の流量を制御し熱媒体の供給量を調整することは好ましい。
このような構成であれば、コントローラが冷(温)熱製造機の流量と熱量を制御して、冷熱を主配管に供給する場合には、高温側の熱源水をポンプにて取得して低温側に冷熱を供給し、温熱を主配管に供給する場合には、低温側の熱源水をポンプにて取得して高温側に温熱を供給するように、冷熱製造機および温熱製造機を制御することができる。また、冷温熱の量と要求場所により、正流や逆流が生じる(以下、「自由流動」ともいう)。そのため、例えば広域な熱リサイクルシステムを構築する上で、必要なところへ必要なだけの熱を無駄なく熱継送する上で好適である。
【0015】
また、熱製造機の分岐配管(40)に主配管からの取得熱量を検知する流量計(12,22)を設置することは好ましい。さらに、当該流量計(12,22)と前記連結管路の流量計(5)の流量情報と冷(温)熱製造機の運転状態に基づいて、前記コントローラで冷(温)熱製造機(10、20)とそれに付随するポンプ(11、21)を制御することは好ましい。
【0016】
ここで、上記主配管の均衡状態を検知する主配管均衡状態検知手段として、流量計を例に説明する。
流量計5は、図4に示すように、流量零の前後に不感帯を設け、流量が低温側から高温側に流れる時をプラス、高温側から低温側に流れる時をマイナスとすると、プラスの時には冷熱製造機が運転中には冷熱供給を増加、温熱製造機が運転中には温熱供給を減少させる(以下、冷熱移行要求)。一方、マイナスの時には冷熱製造機が運転中には冷熱供給を減少、温熱製造機が運転中には温熱供給を増加させる(以下、温熱移行要求)。
【0017】
その際のポンプの出力設定値は、現在運転している熱製造機側の流量計(12または22)の数値に連結管路の流量計5の数値を足した数値(流量Q)になるように決定する。
流量Qがマイナスになる時には、冷熱製造機と温熱製造機が同時運転しないよう運転している熱製造機を停止させ、その後冷熱温熱の切り替えを行う。また、流量計5が零の時にはバランス状態のため、現状の運転を継続する。なお、ここでは主配管均衡状態検知手段として、流量計での検知の例で説明したが、水位や圧力によって主配管の均衡状態を検出してもよい。
【0018】
また、この熱リサイクルシステムにおいて、コントローラが、刻々変化する外気温湿度や熱消費機の負荷、熱製造消費機の特性に応じて、熱リサイクルシステムで最も効率が良くなるように複数の主配管毎の温度帯の温度を制御することは好ましい。また、例えば、主配管の本数を増やすことで、各々の熱消費機にきめ細かく対応でき、各域内で各々効率の高い運転が可能となり、省エネルギーな熱リサイクルシステムを構築できる。
【0019】
さらに、本発明に係る熱リサイクルシステムにおいて、熱リサイクルシステムを付設する各域内の熱的特性に適合させて前記複数の主配管の本数や相互に異なる温度域の設定を変えることは好ましい。このような構成であれば、主配管の本数や温度帯を各域内の熱的特性に適合させて変えることで、各域内の熱的特性に適合した、より効率の良いシステムを構築できる。
【0020】
また、本発明に係る熱リサイクルシステムにおいて、本発明に係る熱リサイクルシステムを複数連結したシステムとすれば、面的な広域熱リサイクルシステムを構築することができる。このような構成であれば、未利用エネルギーの更なる有効利用、都市のヒートアイランド現象の更なる防止やCO2削減に大きな効果がある。
【発明の効果】
【0021】
上述したように、本発明に係る熱リサイクルシステムによれば、広域に熱リサイクルシステムを構築する場合であっても、低コストで省エネルギーなシステムを構築し得る熱リサイクルシステムを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明に係る熱リサイクルシステムの一実施形態の模式図である。
【図2】図1のコントローラのブロック図である。
【図3】コントローラが実行する熱供給量調整処理のフローチャートである。
【図4】熱供給量調整処理における流量と流量計出力との関係を示すグラフである。
【図5】主配管設定温度の制御フローである。
【図6】熱消費機の負荷側供給温度と外気温等の違いによる消費エネルギーの傾向を示す図である。
【図7】設定温度を説明する図であり、同図(a)は、ある時点での熱製造機の主配管温度に対する消費エネルギーを示す図、同図(b)は、ある時点での熱消費機の主配管温度に対する消費エネルギーを示す図、同図(c)は、決定する主配管設定温度と全消費エネルギーとの関係を示す図である。
【図8】熱リサイクルシステムの負荷と水量との関係を示すグラフ((a)、(b))である。
【図9】本発明に係る熱リサイクルシステムの動作の例を示す図((a)〜(c))である。
【図10】外気湿球温度、熱源水温度および熱負荷(水量)の関係を示すグラフである。
【図11】本発明に係る熱リサイクルシステムの他の実施形態(3管式)の模式図である。
【図12】本発明に係る熱リサイクルシステムに基づくシステム付設例を示す模式図である。
【図13】本発明に係る熱リサイクルシステムに基づく広域熱移動システムの構築例を示す模式図である。
【図14】コントローラが実行する熱リサイクルシステム相互の熱供給量調整をする連結部を説明する模式図((a)、(b))である。
【図15】本発明に係る熱リサイクルシステムに基づく広域熱移動システムの構築例を示す模式図である。
【図16】従来の熱供給システムの二つの実施形態の各模式図((a)、(b))である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
以下、本発明の一実施形態について、図面を適宜参照しつつ説明する。
図1に示すように、この熱リサイクルシステム1は、複数(この例では2本)の主配管2,4を有している。これら主配管2,4には、循環ポンプを有しておらず、主配管2,4相互は重複しない異なる温度域が設定されている。本実施形態の例では、高温域主配管2は、温度域が20℃〜40℃程度に設定され、また、低温域主配管4は温度域が5℃〜35℃程度に設定されており、後述するコントローラ6によってそれぞれ管理されている。
【0024】
各主配管2,4には、冷熱製造機10および温熱製造機20が熱交換可能に分岐配管40を介して接続されている。冷熱製造機10および温熱製造機20は、それぞれ流量可変ポンプ11および流量可変ポンプ21を個別に有して構成されている。また、各主配管2,4には、熱消費機として、冷熱および温熱それぞれの熱交換が可能な熱消費機15、冷熱消費機8および温熱消費機9が接続されるようになっている。これら熱消費機8,9,15も、流量可変なポンプ31を個別に有しており、各主配管2,4に分岐配管40を介して熱交換が可能なように接続される。なお、個々の熱製造、消費機の種類の例を下表に示す。
【0025】
【表1】
【0026】
【表2】
【0027】
さらに、上記主配管2,4相互間には、主配管均衡状態検知手段として、流量計5が付設されている。この流量計5は、主配管2,4相互の一方の末端の接続部分に、主配管2,4に連結管路7を介して接続されており、相互間の熱媒体(水)の流量およびその流れの向きを検出可能である。また、冷熱製造機10と温熱製造機20には、ポンプ40側の分岐配管40に流量計(12または22)がそれぞれ付設されている。
【0028】
また、この熱リサイクルシステム1は、コントローラ6を備えており、このコントローラ6は、流量計5、および熱製造機10,20の流量計12,22からの流量情報に基づいて、複数の主配管2,4の状態を管理するようになっている。
詳しくは、コントローラ6は、図2に示すように、所定の制御プログラムに基づいて演算およびシステム全体を制御するCPU64と、所定領域にあらかじめCPU64の制御プログラム等を格納している記憶装置66およびROM67と、この記憶装置66およびROM67等から読み出したデータやCPU64の演算過程で必要な演算結果を格納するためのRAM68と、熱リサイクルシステム1の、流量計5,12,22、冷熱製造機10および温熱製造機20、ポンプ11,21を含む外部装置に対してデータの入出力を媒介するインターフェース65とを備えて構成されており、これらは、データを転送するための信号線であるバスで相互にかつデータ授受可能に接続されている。
【0029】
そして、CPU64は、上記記憶装置66やROM67の所定領域に格納されている所定のプログラムを起動させ、そのプログラムに従って以下の熱供給量調整処理を実行する。そして、このコントローラ6において熱供給量調整処理が実行されると、複数の主配管2,4相互間の熱媒体の流量を零にするように熱製造機15、冷熱製造機8および温熱消費機9を制御するようになっている。
【0030】
詳しくは、熱供給量調整処理が実行されると、図3に示すように、まず、ステップS1に移行する。ステップS1では、各流量計5,12,22からの流量情報を取得してステップS2に移行し、ステップS2では、流量計5から取得した流量情報に基づいて、熱媒体の流れの向きによって現状を維持すべきか否か判断する。つまり、流量計5での流量が零の場合は、(YES)ステップS3に移行し、そうでなければステップS4に移行する。
【0031】
ステップS4では、冷熱製造機10が運転されているか否かが判定され、停止中であればステップS5に移行し、運転中であればステップS6に移行する。ステップS7では、温熱製造機20が運転されているか否かが判定され、停止中であればステップS8に移行し、運転中であればステップS7に移行する。
ステップS6では、流量計5と流量計12との合計流量(Q)を演算し、続くステップS9では、合計流量(Q)が零以下であるか否かが判定され、零以下であれば(YES)ステップS12に移行し、そうでなければ(NO)ステップS13に移行する。
【0032】
ステップS7では、流量計5と流量計22との合計流量(Q)を演算し、続くステップS10では、合計流量(Q)が零以下であるか否かが判定され、零以下であれば(YES)ステップS14に移行し、そうでなければ(NO)ステップS15に移行する。
ステップS8では、流量計5の流量が合計流量(Q)を演算し、続くステップS11では、合計流量(Q)が零を超えるか否かが判定され、零を超えていれば(YES)ステップS16に移行し、そうでなければ(NO)ステップS17に移行する。
【0033】
そして、ステップS12では、冷熱製造機10およびそのポンプ11を停止して処理を戻し、また、ステップS13では、冷熱製造機10を運転するとともに、そのポンプ11の出力を流量(Q)になるように変更して処理を戻す。
また、ステップS14では、温熱製造機20およびそのポンプ21を停止して処理を戻し、また、ステップS15では、温熱製造機20を運転するとともに、そのポンプ21の出力を流量(Q)になるように変更して処理を戻す。
【0034】
さらに、ステップS16では、冷熱製造機10を運転するとともに、そのポンプ11の出力を流量(Q)になるように変更して処理を戻し、また、ステップS17では、温熱製造機20を運転するとともに、そのポンプ21の出力を流量(Q)になるように変更して処理を戻す。
【0035】
次に、この熱リサイクルシステム1の作用・効果について説明する。
この熱リサイクルシステム1によれば、異なる温度域に管理される複数の主配管2,4と、これら主配管2,4に接続された分岐配管40とを有し、主配管2,4に、冷(温)熱消費機8,9,15や冷(温)熱製造機10,20が分岐配管40を介して熱交換可能に分散配置され、これらは、個々に流量可変なポンプ31、11,21を有するので、熱を必要とするところへ次々と移動させていくことができる。つまり、この熱リサイクルシステム1によれば、必要なところへ必要なだけの熱を無駄なく熱継送できるため、省エネルギーな熱リサイクルシステムを構築することができる。
【0036】
また、この熱リサイクルシステム1によれば、分岐配管40を介して分散配置された冷(温)熱消費機8,9,15や冷(温)熱製造機10,20が個々に流量可変なポンプ31、11,21を有する構成により熱継送ができるため、冷(温)熱製造機10,20や冷(温)熱消費機8,9の設置場所が限定されず、系の中であれば自由設置が可能である。したがって、例えば広域な熱リサイクルシステムを構築する上で、建築的な制約が少なくなり、配管量や建築コストを低減することができる。
【0037】
また、この熱リサイクルシステム1によれば、異なる温度域毎に1本の主配管を付設するだけで良い(本実施形態の例であれば2本の主配管2,4を付設するだけで良い)ので、配管量を削減でき、低コストでシステムを構築することができる。
例えば、上記「発明が解決しようとする課題」において例示したが、この熱リサイクルシステム1によれば、主配管2,4として、低温配管と高温配管の2本のみを付設すればよいので、図16に示した例と比べて大きく施工費を削減できる。なお、後述するように、本発明に係る熱リサイクルシステムにおいては、複数の主配管として、温度域を増やした3管方式とした場合であっても、従来の4管を有する構成に比べて施工費を削減することができる。
【0038】
ここで、上記熱リサイクルシステム1において、流量と負荷の量について、従来システム(図16の例)との比較をすると図8(a)および(b)に示すようになる。
特に、図8(b)に示すように、冷房負荷と暖房負荷の混在が多くなればなるほど、この熱リサイクルシステム1のメリットは大きくなる。例えば、図9(a)に示すように、冷水負荷だけがある場合、各冷熱消費機が熱を使用する時、仮に最遠端に位置する冷熱消費機の熱要求がないと、各ポンプの受け持つ抵抗(図9(a)に示す丸印の箇所A1)は最遠端までを受け持つ抵抗より小さく、図9(a)内の配管抵抗のみで運転ができる。さらに、この熱リサイクルシステム1によれば、熱源水を熱製造消費機に接続されたポンプによって熱媒体を流動させるので、熱の伝達性が優れている。
【0039】
従来システムとの違いが明確に出るのは、例えば、図9(b)に示すように、隣接する冷熱消費機8と温熱消費機9が稼動していた場合であって、このような場合であれば、隣接する熱消費機に接続されているポンプが稼働することにより、主配管2,4を自由流動によって、熱交換が可能となり冷温熱それぞれの流量が必要なくなるため搬送流量が削減できる。さらに、熱供給の必要な場所への最小の搬送抵抗と流量だけで済むので、搬送エネルギーを大きく削減することができる。
【0040】
なお、図9(b)に示すように、各熱消費機でバランスが取れている場合は、そのバランスが取れているエリア(同図での丸印の箇所A2およびA3)での熱移動しか生じない。また、図9(c)に示すように、多少冷熱需要が大きい場合であっても、冷熱製造機を稼働させることで、最低限の場所(同図での丸印の箇所A1)のみの熱供給を行えば足りる。
【0041】
以上説明したように、この熱リサイクルシステム1によれば、広域に熱リサイクルシステムを構築する場合であっても、低コストで省エネルギーなシステムを構築することができる。なお、本発明に係る熱リサイクルシステムは、上記実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しなければ種々の変形が可能である。
例えば、上記実施形態では、コントローラ6において熱供給量調整処理が実行されると、流量計5により検出された熱媒体の流れの向きに基づいて、複数の主配管2,4相互間の流量を零にするように冷熱製造機10および温熱消費機20を制御する例で説明したが、これに限らず、コントローラ6は、例えば、刻々変化する外気温湿度や冷(温)熱消費機の負荷に応じて、熱リサイクルシステム全体で最も効率が良くなるように各複数の主配管毎の温度帯の温度を制御するように構成してもよい(その制御フローを図5に示す)。
【0042】
つまり、図6に示すように、熱製造消費機は負荷側供給温度や外気乾球温度または外気湿球温度(以下、外気温等)によっても変化をする。冷熱製造機と温熱消費機は負荷側供給温度または外気温等が高い場合は低い場合に比べ、消費エネルギーが多くなる傾向がある。また、主配管温度を低くするように設定するとより多くの消費エネルギーが必要となる。温熱製造機と冷熱製造機は負荷側供給温度または外気温等が低い場合は、高い場合に比べ、消費エネルギーが多くなる傾向がある。また、消費エネルギーは各熱製造消費機の特性に左右される。
【0043】
このように、熱リサイクルシステムでは様々な熱製造消費機が様々な運転状況にあるため、主配管設定温度を状況により変化させることでより省エネルギーなシステムになる。
制御フローを図5に示すように、消費エネルギーに起因する負荷側供給温度や流量(以下、負荷側の特性)、外気温等及び各熱製造消費機の特性より、主配管温度の違いによる各熱製造消費機の消費エネルギーが算出できる。なお、ある時点における算出した消費エネルギーは、熱製造機については図7(a)、熱消費機については図7(b)の傾向になる。
【0044】
この算出した各熱製造消費機の消費エネルギーに基づき、主配管設定温度の違いによる全消費エネルギーを算出する(負荷側で冷熱要求のみの時を図7(c)に例示する)。
冷熱消費機は主配管設定温度が高いほど消費エネルギーが多くなり、冷熱製造機は主配管設定温度が低いほど消費エネルギーが多くなる。熱製造機と熱消費機を足し合わせた全消費エネルギーは、最小消費エネルギーとなる主配管設定温度がある。この主配管設定温度になるように主配管設定温度を決定し、各熱製造消費機に指令を出す。なお、ここでは、計算により最も効率が高くなる主配管温度設定を算出したが、熱消費機が多い場合や熱消費機の特性情報が少ない場合は、過去の運転データを元に人が経験的に設定することもありうる。
【0045】
また、例えば一般的な事務所ビルの負荷パターンを例に以下説明する。外気条件、負荷、および熱源水の温度制御について図10に示す。
図10に示すように、負荷側の冷熱需要が少なくなり、暖房需要も少ない中間期(春期や秋期)などには、外気乾球温度または外気湿球温度(以下外気温等)は低いため、熱製造機も低温でも効率良く供給することが可能となる。
【0046】
また、夏期においては、負荷側にて除湿や冷却などの冷熱需要が多くなり、低温側主配管から取得し、高温側主配管に温熱を供給することになる。その際、主配管はなるべく低い温度があると、個々の熱消費機は効率の良い運転が可能となる。しかし、熱バランスを保つ熱製造機は低い温度を供給するためには、より多くのエネルギーが必要となる。そのため、消費エネルギーが最小となる主配管温度設定が必要となる。
【0047】
一方、暖房需要が多くなる冬期においては、高温側主配管から取得し、低温側主配管に排熱をする量が多くなる。
また、例えば上記実施形態では、相互に重複しない異なる温度域に管理される複数の主配管の本数を2本とした例で説明したが、これに限定されず、本発明に係る熱リサイクルシステムにおいて、例えば図11に示すように、主配管の本数を増やすことで、より多様な要求に対し対応することが可能となる。
【0048】
つまり、システムを構築する範囲が広域になるに従い、負荷側において低温要求、中温要求、高温要求がそれぞれ発生する可能性も大きくなる。それに伴い個々の熱消費機の効率が低下することが懸念される。そのため、同図に示すように、主配管を、低温側主配管4、中温側主配管3および高温側主配管2の3本にして、個々の熱消費機において中温が必要か、低温が必要かあるいは高温が必要かを判断して熱源水を取得するようにしてもよい。
【0049】
ここで、図11の冷熱消費機8において、中温側から高温側へ熱媒体が流れている場合と、低温側から中温側へ熱媒体が流れている場合とがあり得るが、熱消費機の種類によっては分岐配管40の配管を固定して接続する場合と、時期(春期、夏期、秋期、冬期)により主配管2,3,4に対する分岐配管40の配管の切り替えを行う熱源もあり得る。このように、主配管の本数を増やすことで需要に対して一層細やかな熱供給や、熱バランスの調整が可能となる。
【0050】
また、例えば図12に示すように、ビルAだけでなく、学校Bや、各種の施設C、工場D等などを含めたあるエリアでの熱供給も同様にして、本発明に係る熱リサイクルシステムを適用可能となることは勿論である。
また、図13に示すように、本発明に係る熱リサイクルシステム1を複数つなぎ合わせることで、動力を必要最小限にしながら、広域での排熱利用が可能となる。
【0051】
ここで、隣り合う熱リサイクルシステム1相互の連結部50の詳細について、図14に示す。
図14に示すように、隣り合う熱リサイクルシステム1間には、ポンプ52及び弁54を設置した連結部50が設けられる。このように上述した熱リサイクルシステム1を複数連結した構成とすれば、隣り合う熱リサイクルシステム1相互の連結部50において、共に冷熱過多または温熱過多という状態の時には、それぞれで熱供給を行うように制御することができる。
【0052】
具体的には、この連結部50において、隣り合う熱リサイクルシステム1のどちらかが冷熱過多、一方が温熱過多という場合は、例えば同図(a)に示すように、連結部50に設置したポンプ52b及び弁54bを稼働し、相互に熱を補完するように制御する。その際、各熱リサイクルシステム1のコントローラ6(同図では不図示)は、それぞれの熱リサイクルシステム1に付設された流量計5の検出した熱媒体の流れの向きに基づいて、上述したように、流量計5の流量がゼロになるように対応するポンプ52(aないしb)を制御すればよい。また、逆の要求の際は、例えば同図(b)に示すように、反対側のポンプ52aと弁54aが動作をするように制御を行うようにすればよい。
【0053】
さらには、上述した熱リサイクルシステム1を複数連結した構成例として、図15に示すように、よりエリアを拡大した熱リサイクルシステムを形成することで、熱リサイクル量を増加することができるので、例えばヒートアイランド対策も可能となる。
【符号の説明】
【0054】
1 熱リサイクルシステム
2 高温側主配管(主配管)
3 中温側主配管(主配管)
4 低温側主配管(主配管)
5 (連結管路の)流量計
6 コントローラ
7 連結管路
8 冷熱消費機(熱消費機)
9 温熱消費機(熱消費機)
10 冷熱製造機
11 冷熱製造機用の流量可変ポンプ(ポンプ)
12 (冷熱製造機用の)流量計
15 熱消費機
20 温熱製造機
21 温熱製造機用の流量可変ポンプ(ポンプ)
22 (温熱製造機用の)流量計
31 熱消費機用の流量可変ポンプ(ポンプ)
40 分岐配管
42、43 冷温熱切り替え弁
50 (熱リサイクルシステム相互の)連結部
52a,b (連結部の)ポンプ
54a,b (連結部の)弁
【特許請求の範囲】
【請求項1】
相互に異なる温度域毎に1本の配管からなる複数の主配管と、流量可変なポンプを個別に有するとともに前記複数の主配管に熱交換可能に接続される冷熱製造機および温熱製造機と、流量可変なポンプを個別に有して個々の熱消費機との熱交換が可能なように前記複数の主配管に接続される分岐配管と、前記複数の主配管相互の均衡状態を検知する主配管均衡状態検知手段と、前記複数の主配管の均衡状態を管理するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記主配管均衡状態検知手段からの均衡状態情報に基づいて、前記複数の主配管相互の均衡状態を維持するように前記冷熱製造機および温熱製造機の出力を制御することを特徴とする熱リサイクルシステム。
【請求項2】
前記主配管均衡状態検知手段は、前記複数の主配管相互をつなぐ連結管路の流量を検出する流量計であって、前記コントローラは、前記流量計からの流量情報を均衡状態情報として取得するとともに、当該流量情報に基づいて、前記連結管路の流量を零にするように前記冷熱製造機および温熱製造機の出力を制御することを特徴とする請求項1に記載の熱リサイクルシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記流量計により検出された熱媒体の流れの向きによって冷熱移行要求か温熱移行要求かを判断し、主配管相互間の流量を零にするように、前記冷熱製造機および温熱製造機熱の流量を制御して、熱媒体の供給熱量を調整することを特徴とする請求項2に記載の熱リサイクルシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、主配管相互間の流量を検知する前記流量計と、稼動している熱製造機の流量を検知する流量計との合計流量に基づいて、前記冷熱製造機および温熱製造機熱の出力を増減し、これら熱製造機にて主配管に冷熱または温熱の供給を行うことを特徴とする請求項2または3に記載の熱リサイクルシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、刻々変化する外気温湿度や熱消費機の負荷の形態と機器の特性に応じて、熱リサイクルシステム全体で最も効率が良くなるように前記複数の主配管毎の温度帯の温度を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱リサイクルシステム。
【請求項6】
熱リサイクルシステムを付設する各域内の熱的特性に適合させて前記複数の主配管の本数や相互に異なる温度域の設定を変えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱リサイクルシステム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱リサイクルシステムを複数連結することを特徴とする熱リサイクルシステム。
【請求項1】
相互に異なる温度域毎に1本の配管からなる複数の主配管と、流量可変なポンプを個別に有するとともに前記複数の主配管に熱交換可能に接続される冷熱製造機および温熱製造機と、流量可変なポンプを個別に有して個々の熱消費機との熱交換が可能なように前記複数の主配管に接続される分岐配管と、前記複数の主配管相互の均衡状態を検知する主配管均衡状態検知手段と、前記複数の主配管の均衡状態を管理するコントローラとを備え、前記コントローラは、前記主配管均衡状態検知手段からの均衡状態情報に基づいて、前記複数の主配管相互の均衡状態を維持するように前記冷熱製造機および温熱製造機の出力を制御することを特徴とする熱リサイクルシステム。
【請求項2】
前記主配管均衡状態検知手段は、前記複数の主配管相互をつなぐ連結管路の流量を検出する流量計であって、前記コントローラは、前記流量計からの流量情報を均衡状態情報として取得するとともに、当該流量情報に基づいて、前記連結管路の流量を零にするように前記冷熱製造機および温熱製造機の出力を制御することを特徴とする請求項1に記載の熱リサイクルシステム。
【請求項3】
前記コントローラは、前記流量計により検出された熱媒体の流れの向きによって冷熱移行要求か温熱移行要求かを判断し、主配管相互間の流量を零にするように、前記冷熱製造機および温熱製造機熱の流量を制御して、熱媒体の供給熱量を調整することを特徴とする請求項2に記載の熱リサイクルシステム。
【請求項4】
前記コントローラは、主配管相互間の流量を検知する前記流量計と、稼動している熱製造機の流量を検知する流量計との合計流量に基づいて、前記冷熱製造機および温熱製造機熱の出力を増減し、これら熱製造機にて主配管に冷熱または温熱の供給を行うことを特徴とする請求項2または3に記載の熱リサイクルシステム。
【請求項5】
前記コントローラは、刻々変化する外気温湿度や熱消費機の負荷の形態と機器の特性に応じて、熱リサイクルシステム全体で最も効率が良くなるように前記複数の主配管毎の温度帯の温度を制御することを特徴とする請求項1〜4のいずれか一項に記載の熱リサイクルシステム。
【請求項6】
熱リサイクルシステムを付設する各域内の熱的特性に適合させて前記複数の主配管の本数や相互に異なる温度域の設定を変えることを特徴とする請求項1〜5のいずれか一項に記載の熱リサイクルシステム。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項に記載の熱リサイクルシステムを複数連結することを特徴とする熱リサイクルシステム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【公開番号】特開2011−47595(P2011−47595A)
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−197384(P2009−197384)
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000222956)東洋熱工業株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年3月10日(2011.3.10)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年8月27日(2009.8.27)
【出願人】(000222956)東洋熱工業株式会社 (35)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]