説明

熱交換器および冷凍サイクル装置

【課題】伝熱管内の内容積を減少させ、熱交換性能向上と省冷媒化を図る。
【解決手段】伝熱管12の流路中に、断面の最大寸法が前記伝熱管の内径より小さく、複数の棒状部材が密着しながら螺旋状に絡み合うように捻って構成される挿入部材13を設け、流体が流動する流路断面積を、流体の乾き度が小さくなるに従って減少させる。これにより、蒸発時の圧力損失を抑制しつつ、冷媒の流れの乱流化を促進し、蒸発能力の向上又は低下抑制を図ることができるし、熱交換器を凝縮器として使用した場合、凝縮した液が挿入部材の外表面に付着することで管内面の液膜の薄膜化が図れ、熱交換性能の高い熱交換器を得ることができ、加えて伝熱管内の内容積の減少で充填する冷媒量の削減を図れる熱交換器を提供できる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主として空気調和機などに使用されるフィン付き熱交換器や二重管熱交換器などの熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、この種のフィン付き熱交換器は、図12に示すように、所定間隔で並べられたフィン群201と、このフィン群201のフィン面に垂直な方向に貫通して挿入される伝熱管群202とから構成されている。気流203はフィン間を矢印方向に流動し、伝熱管群202の流路を流れる流体と熱交換する。(例えば、特許文献1参照)
図13は、特許文献1に記載された従来のフィン付き熱交換器で、伝熱管の一部を示す縦断面図である。この従来技術は、伝熱管202の内部に、金属の細線をスパイラル状に巻いて構成されるコイル204を挿入し、このコイル204の外周を伝熱管202の内面に密着固定し、さらに伝熱管202内面に多数の粉粒体を接合して多孔質体層を形成したものである。この構成によれば、伝熱管202にコイル204を密着させていることにより伝熱管202の内面の伝熱面積が増大したような形になるとともに、乱流効果、毛細管現象効果、及び核沸騰効果も発揮され、伝熱性能が向上するとされている。
【0003】
図14は従来のフィン付き熱交換器の他の例を示し、その伝熱管中心を通る面での断面図である。この従来技術は、伝熱管202内に、熱で変形するスペーサ206を挿入し、挿入後に熱を加えてスペーサ205を管内壁に密着させるものである。なお、伝熱管202の外周面には、フィン群201が接合されている。この構成も伝熱管202にスペーサ206を密着させていることにより伝熱管202の内面の伝熱面積が増大したような形になり、また乱流効果も発揮され、伝熱低能が向上するとされている。(例えば、特許文献2参照)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開昭61−15089号公報
【特許文献2】実開昭58−52491号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、前記特許文献1、2に記載された熱交換器の構成は伝熱管202内に設けたコイル204、スペーサ206はいずれもその全長にわたって同じ断面積のものであるため、伝熱面積を増やしたり、乱流効果を発揮させることはできるものの、流体として冷媒を用いる場合の性能アップ、すなわち、液体から気体に相変化する流体の圧力損失を抑制しつつ伝熱性と流れの乱流化を促進して熱交換効率を向上させことはできないものであった。
【0006】
その上前記特許文献1に記載された従来の熱交換器の構成では、コイルとしてかなり細い線径の線を使用しているので、管内にコイルを挿入していても、管内容積を大きく削減して流体流量を低減することはできないし、また、熱交換器を凝縮器として使用した場合、凝縮した液により、伝熱面である管内面は厚い凝縮液膜で覆われやすく、熱交換性能を低下させるという課題を有している。
【0007】
また、特許文献2に記載された熱交換器の構成では、主に伝熱管内面の伝熱面積の増大と乱流効果に着目していることと、スペーサの厚みについては特に特定がないことからみ
て、当該スペーサは伝熱管の肉厚程度であると思われ、やはり管内容積を大きく削減して流体流量を低減することはできなし、また、熱交換器を凝縮器として使用した場合、凝縮した液により、伝熱面である管内面は厚い凝縮液膜で覆われやすく、熱交換性能を低下させるという課題を有している。
【0008】
本発明はこのような従来の課題を解決するものであり、液体から気体に相変化する流体の圧力損失を抑制しつつ伝熱性と流れの乱流化を促進して熱交換効率を向上させる上に流体流量の低減が可能な熱交換器の提供を目的としたものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
前記従来の課題を解決するために、本発明の熱交換器は、伝熱管内の流路を流れる相変化を伴う流体と前記伝熱管の外部を流れる流体とが熱交換し、前記伝熱管の内径を減少又は前記伝熱管の分岐数を減少させて、相変化を伴う流体が流動する流路断面積を、流体の乾き度が小さくなるに従って減少させる構成を持つ熱交換器において、相変化を伴う流体が気液二相状態又は液相状態で流動している前記伝熱管の流路中に、断面の最大寸法が前記伝熱管の内径より小さく、複数の棒状部材が密着しながら螺旋状に絡み合うように捻って構成される挿入部材を設け、流体が流動する流路断面積を、流体の乾き度が小さくなるに従って減少させたことを特徴とする。
【0010】
この構成によれば、乾き度が大きくなるに従い圧力損失の影響が大きいために、乾き度が大きい流路では流路を広くすることにより、効果的な圧力損失の低減が図れ、蒸発能力の向上又は低下抑制が図れる。また、乾き度が小さい流路では伝熱管内を流れる冷媒の流速を速くし、複数の棒状部材が密着しながら螺旋状に絡み合うように捻って構成されるため、熱交換器を凝縮器として使用した場合、伝熱管内を流れる流体の乱流を促進し、凝縮液による管内面の液膜の薄膜化を図ることができ、管内での熱交換性能の高い熱交換器が得られる。
【0011】
また、本発明の冷凍サイクル装置は上記熱交換器を用いて冷凍サイクルを構成するとともに、当該熱交換器の伝熱管内の流路を流れる流体として、ハイドロフルオロカーボン(HFC)、又はハイドロカーボン(HC)や二酸化炭素(CO2)などの自然冷媒を主成分とした冷媒を用いることを特徴とする。そしてこの構成によれば、オゾン破壊を防止し、また高効率な運転を実現し、地球温暖化に対しその影響を少なくすることができる。
【発明の効果】
【0012】
本発明は熱交換性能の高い熱交換器を得ることができ、さらに、伝熱管内の内容積を減少させることで、充填する冷媒量の削減を図ることができる。すなわち、複数の棒状部材が密着しながら螺旋状に絡み合うように捻って構成される挿入部材が、乾き度が小さくなるに従い冷媒流路を小さくするように伝熱管内に挿入されているので、蒸発時の圧力損失を抑制しつつ、螺旋状であることもあって冷媒の流れの乱流化を促進し、蒸発能力の向上又は低下抑制を図ることができるし、熱交換器を凝縮器として使用した場合、二相域に挿入した部材により、凝縮した液が挿入部材の外表面に付着することで管内面の液膜の薄膜化が図れ、さらに、挿入部材により伝熱管内の流路断面積を小さくでき、伝熱管内を流れる冷媒の流速向上を図り、既述した通り螺旋状であることから冷媒の流れの乱流化を促進し、熱交換性能の高い熱交換器を得ることができ、加えて伝熱管内の内容積を減少させることで、充填する冷媒量の削減を図れる熱交換器を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】(a)本発明の実施の形態1におけるフィン付き熱交換器の伝熱管中心線上での断面図、(b)は(a)のA−A線での断面図
【図2】(a)本発明の実施の形態2におけるフィン付き熱交換器の伝熱管中心線上での断面図、(b)は(a)のA−A線での断面図
【図3】本発明の挿入部材の一例を示し、実施の形態2におけるフィン付き熱交換器の伝熱管のA−A線での断面図
【図4】本発明の挿入部材の一例を示し、実施の形態2におけるフィン付き熱交換器の伝熱管のA−A線での断面図
【図5】本発明の挿入部材の一例を示し、実施の形態2におけるフィン付き熱交換器の伝熱管のA−A線での断面図
【図6】(a)本発明の実施の形態3におけるフィン付き熱交換器の伝熱管中心線上での断面図、(b)は(a)のA−A線での断面図、(c)は(a)のB−B線での断面図、(d)は(a)のC−C線での断面図
【図7】(a)本発明の実施の形態4におけるフィン付き熱交換器の伝熱管中心線上での断面図、(b)は(a)のA−A線での断面図、(c)は(a)のB−B線での断面図、(d)は(a)のC−C線での断面図
【図8】(a)本発明の実施の形態5におけるフィン付き熱交換器の伝熱管中心線上での断面図、(b)は(a)のA−A線での断面図
【図9】(a)本発明の実施の形態6におけるフィン付き熱交換器の伝熱管中心線上での断面図、(b)は(a)のA−A線での断面図
【図10】本発明の各実施の形態におけるモリエル線図上に冷凍サイクルの動作点を記入したイメージ図
【図11】本発明の前記各実施の形態を用いた冷凍サイクル装置の冷凍サイクル図
【図12】従来のフィン付き熱交換器を示す斜視図
【図13】従来の熱交換器の伝熱管の一例を示す縦断面図
【図14】従来のフィン付き熱交換器の他の伝熱管中心を通る面での断面図
【発明を実施するための形態】
【0014】
第1の発明は、伝熱管内の流路を流れる相変化を伴う流体と伝熱管の外部を流れる流体とが熱交換し、伝熱管の内径を減少又は伝熱管の分岐数を減少させて、相変化を伴う流体が流動する流路断面積を、流体の乾き度が小さくなるに従って減少させる構成を持つ熱交換器において、相変化を伴う流体が気液二相状態又は液相状態で流動している流路中に、複数の棒状部材が密着しながら螺旋状に絡み合うように捻って構成される挿入部材を設け、流体が流動する流路断面積を、流体の乾き度が小さくなるに従って減少させたものである。
【0015】
そしてこの構成によれば、乾き度が大きくなるに従い圧力損失の影響が大きいために、乾き度が大きい流路では流路を広くすることにより、効果的な圧力損失の低減が図れ、蒸発能力の向上又は低下抑制が図れる。また、乾き度が小さい流路では伝熱管内を流れる冷媒の流速を速くし、複数の棒状部材が密着しながら螺旋状に絡み合うように捻って構成されるため、熱交換器を凝縮器として使用した場合、伝熱管内を流れる流体の乱流を促進し、凝縮液による管内面の液膜の薄膜化を図ることができ、管内での熱交換性能の高い熱交換器が得られる。
【0016】
第2の発明は、棒状部材の外表面に、溝又は凹凸を有すことにより、挿入部材の外表面積が拡大するとともに伝熱管内を流れる流体の乱流を促進するために、挿入部材への凝縮液の付着量が多くなり、伝熱管の内周面の凝縮液膜をさらに薄くすることができ、管内熱伝達率の向上が図れる。さらに、伝熱管内の内容積を減少させることができるので、充填する冷媒量の削減が図れる。
【0017】
第3の発明は、棒状部材の断面の外形形状を略円状、多角形状、又は星形状とすることにより、挿入部材の外表面積が拡大するために、挿入部材への凝縮液の付着量が多くなり、伝熱管の内周面の凝縮液膜をさらに薄くすることができ、管内熱伝達率の向上が図れる
。さらに、伝熱管内の内容積を減少させることができるので、充填する冷媒量の削減が図れる。
【0018】
第4の発明は、棒状部材を多孔質材で構成し、多孔質材によってさらに外表面積が拡大することにより、挿入部材への凝縮液の付着量が多くなり、伝熱管の内周面の凝縮液膜をさらに薄くすることができ、管内熱伝達率の向上が図れる。
【0019】
第5の発明は、棒状部材を中実又は両端を閉塞した中空の部材で構成することによち、熱交換器の重量増加を抑えることができる。
【0020】
第6の発明は、第1から第5の発明の熱交換器を用いた冷凍サイクル装置であって、当該熱交換器の伝熱管内の流路を流れる流体として、ハイドロフルオロカーボン(HFC)又はハイドロカーボン(HC)や二酸化炭素(CO2)などの自然冷媒を主成分とした冷媒を用いたものであり、これにより、オゾン破壊を防止し、また高効率な運転を実現し、地球温暖化に対しその影響を少なくすることができる。
【0021】
第7の発明は、第6の発明の冷凍サイクル装置において、伝熱管内の流路を流れる流体として、炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィン単独、またはそれをベース成分とし、2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンと混合した冷媒を用いることにより、回収されない冷媒が大気に放出されても地球温暖化に対しその影響を極少に保つことができる。
【0022】
第8の発明は、第7の発明の冷凍サイクル装置において、ハイドロフルオロオレフィンはテトラフルオロプロペンをベース成分とし、ジフルオロメタン(R32)、ペンタフルオロエタン(R125)およびテトラフルオロエタン(R134a)などの2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンを、地球温暖化係数が少なくとも5以上、750以下となるように、望ましくは350以下、さらに望ましくは150以下となるようにそれぞれ2成分混合もしくは3成分混合した冷媒を封入することにより、効率向上を図るとともに、回収されない冷媒が大気に放出されても地球温暖化に対しその影響を極少に保つことができる。
【0023】
第9の発明は、第7の発明の冷凍サイクル装置において、ハイドロフルオロオレフィンはトリフルオロプロペンをベース成分とし、ジフルオロメタン(R32)、ペンタフルオロエタン(R125)およびテトラフルオロエタン(R134a)などの2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンを、地球温暖化係数が少なくとも5以上、750以下となるように、望ましくは350以下、さらに望ましくは150以下となるようにそれぞれ2成分混合もしくは3成分混合した冷媒を封入することによりした、効率向上を図るとともに、回収されない冷媒が大気に放出されても地球温暖化に対しその影響を極少に保つことができる。
【0024】
第10の発明は、第6の発明ないし第9の発明のいずれかに記載の冷凍サイクル装置において、冷凍機油はポリオキシアルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリ(オキシ)アルキレングリコールまたはそのモノエーテルとポリビニルエーテルの共重合体、ポリオールエステル類およびポリカーボネート類の含酸素化合物を主成分とする合成油か、アルキルベンゼン類やαオレフィン類を主成分とする合成油を用いることにより、信頼性の高い冷凍サイクル装置を実現できる。
【0025】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照しながら説明する。なお、この実施の形態によって本発明が限定されるものではない。また、実施の形態の説明では、フィン付き熱交換器について行うが、本発明は相変化を伴う冷媒が流れる流路内で効果を得られる
発明であり、二重管熱交換器のような伝熱管のみで構成された熱交換器で、内管の内側や外側であっても相変化を伴う流体が流れるものについても同様の効果が得られる。
【0026】
(実施の形態1)
図1は、本発明の第1の実施の形態におけるフィン付き熱交換器の伝熱管中心線上での断面図、図1(b)は(a)のA−A線での断面図である。また、図10は冷凍サイクルでの効果をモリエル線図上に表したイメージ図を示すものである。
【0027】
図1(a)および(b)において、11はフィン、12は伝熱管で、管径は12A、12B、12Cの順に大きく、管内の流路断面積も14A、14B、14Cの順に大きくなり、13は複数本の棒状部材が密着しながら螺旋状に絡み合うように捻って構成される部材である。伝熱管12は、U字状に形成された配管12A、12B、12Cと、配管12Bの一端と配管12Cの一端を連結するUベント12Dにより構成されている。なお、本実施の形態の熱交換器は、伝熱管12を、3つの配管で構成した場合を示しているが、熱交換器の能力に応じて配管数は変更されるものである。挿入部材13は配管12Aの流路14Aと、配管12Bの流路14Bに設けられている。
【0028】
このフィン付き熱交換器は、凝縮器として使用する場合には、伝熱管端部Bが流路を流れる流体の入口、伝熱管端部Cが流路を流れる流体の出口となる。このように凝縮器として使用する場合には、伝熱管端部Bからガス状態の流体が流入し、伝熱管端部Cから液状態の流体が流出する。従って、伝熱管端部Bから伝熱管端部Cに流動するに従って、液体の乾き度は小さくなる。なお、矢印は流路を流れる流体の方向を示している。
【0029】
図10において、ライン212は飽和液線、ライン213は飽和ガス線、実線225は挿入部材を挿入したときの動作線、破線226は部材を挿入しない通常のときの動作線、ポイント214は圧縮機の吸入ポイント、ポイント215は凝縮器の入口ポイント、ポイント217は部材を挿入しない通常のときの凝縮器の出口ポイント、ポイント218は部材を挿入したときの凝縮器の出口ポイント、ポイント219は部材を挿入したときの蒸発器の入口ポイント、ポイント220は部材を挿入しない通常のときの蒸発器の入口ポイント、ポイント222は蒸発器の出口ポイント、ポイント216は平均凝縮温度、ポイント221は平均蒸発温度、エリア223は凝縮器出口付近、エリア224は蒸発器入口付近を表す。
【0030】
凝縮器として使用される場合には、図1(a)に措いて、伝熱管内を流れる流体は、伝熱管端部B側から流入し、伝熱管端部C側へ流出し、その間において、伝熱管12の外周に設けられたフィン11の隙間を流動する気流と熱交換する。伝熱管内の流路断面積は14C、14B、14Aの順に小さくなり、流路14Bは挿入部材13によってさらに狭くなり、また流路14Aは挿入部材13によって最も狭くなっている。従って、配管12を流れる流体は、流路14Bにおいて次第に流速が速まり、流路14Aにおいて最速で流動するため、管内熱伝達率が向上する。さらに、挿入部材13は複数の棒状部材が密着しながら螺旋状に絡み合うように捻って構成されるため、熱交換器を凝縮器として使用した場合、伝熱管内を流れる流体の乱流を促進するため、さらに管内熱伝達率が向上する。
【0031】
本実施の形態は、挿入部材13を凝縮器出口付近223に挿入するため、図10に示すように、圧力損失は凝縮器の出口付近223でのみ増大し、平均凝縮温度216の低下抑制が図れる。また、気液二相域では、凝縮した液は挿入部材13の外周面にも付着するために、配管12の内周面の凝縮液膜を薄くすることができ、管内熱伝達率の向上が図れる。また、挿入部材13を設けることで、配管12内の容積を削減でき、冷媒充填量を削減することができる。また、蒸発器として使用する場合には、図1(a)において、伝熱管内を流れる流体は、凝縮器として使用する場合の流れ方向とは逆方向となり、伝熱管端部
C側から流入し、伝熱管端部B側へ流出し、その間において、伝熱管12の外周に設けられたフィン11の隙間を流動する気流と熱交換する。流路14Aは挿入部材13Aによって狭くなっており、また流路14Bは挿入部材13Bによって漸次狭くなっている。従って、配管12を流れる流体の流速は、速くなるために管内熱伝達率は向上する。また本実施の形態は、挿入部材13A、13Bを蒸発器の入口付近224に挿入し、さらに伝熱管内の流路断面積は12A、12B、12Cの順に大きくなるため、図10の実線225で示すように、圧力損失は蒸発器の入口付近224で大きく、乾き度が大きくなるに従い、流路断面積は大きくなるため圧力損失は小さくなる。これにより、圧力損失が増大しても、その圧力損失の増加は蒸発器の入口付近224のみで、流体の流速向上による管内熱伝達率の向上の効果を活かし、蒸発能力の向上が図れる。従って、少なくとも蒸発能力の低下を抑制することができる。
【0032】
(実施の形態2)
図2は、本発明の第2の実施の形態におけるフィン付き熱交換器の伝熱管中心線上での断面図、図2(b)は(a)のA−A線での断面図である。また、図10は冷凍サイクルでの効果をモリエル線図上に表したイメージ図を示すものである。
【0033】
前記実施の形態1と異なる点は伝熱管12に挿入する挿入部材の径を管12A、12Bに挿入されるものの順に小さくした点である。すなわち、23Aは複数本の棒状部材が密着しながら螺旋状に絡み合うように捻って構成される部材で、断面積が一定の挿入部材、23Bは、複数本の棒状部材が密着しながら螺旋状に絡み合うように捻って構成される部材で、断面積が一定の挿入部材であり、挿入部材23Aの断面積より小さきものを用いている。そして、挿入部材23Aは配管12Aの流路24Aに、挿入部材23Bは配管12Bの流路24Bに設けられており、管内の流路断面積は24A、24B、24Cの順に大きくなっている。
【0034】
この実施の形態2においても前記実施の形態1で説明した場合と同様の作用効果を発揮するのはもちろん、異なる直径の挿入部材を挿入することで、容易に流路の断面積を変化させるという効果も期待できる。
【0035】
なお、上記挿入部材23A、23Bの断面の外形形状は、略円状の他、図3に示すような多角形状や図4に示すような星形状とすることが好ましい。また、挿入部材23A、23Bは、図2から図4に示すような中実の棒状部材、又は図5に示すような両端を閉塞した中空の棒状部材で構成されている。また、挿入部材23A、23Bの材質は、鉄、アルミなどの金属や樹脂材など冷媒に対し耐食性のあるものとする。これらは本発明のいずれの実施形態においても同様である。
【0036】
(実施の形態3)
図6(a)は、本発明の第3の実施の形態のフィン付き熱交換器の伝熱管中心線上での断面図、図6(b)は(a)のA−A線での断面図、図6(c)は(a)のB−B線での断面図、図6(d)は(a)のC−C線での断面図である。
【0037】
この実施の形態3は伝熱12Aにのみ挿入部材33を設け、この挿入部材33の断面積を段階的に異なるものとした点が先の各実施の形態とは異なる。すなわち、配管12の流路34内には、挿入部材33A、挿入部材33B、挿入部材33Cが設けられている。ここで、挿入部材33A、挿入部材33B、挿入部材33Cは、複数本の棒状部材が密着しながら螺旋状に絡み合うように捻って構成され、それぞれの断面積は一定で、挿入部材33Aの断面積は挿入部材33Bの断面積よりも大きく、また挿入部材33Bの断面積は挿入部材33Cの断面積よりも大きい。また、挿入部材33A、挿入部材33B、挿入部材33Cは、それぞれ順に連結されている。なお、断面積の最も大きな挿入部材33Aを伝
熱管端部C側に配置しており、流体が流動できる流路34は、乾き度が小さくなるに従い徐々に狭くなっている。
【0038】
この実施の形態3においても先の各実施の形態と同様の作用効果を発揮するとともに、異なる直径の挿入部材を組み合せることで、容易に流路の断面積を変化させることができるという利点がある。
【0039】
(実施の形態4)
図7(a)は本発明の第4の実施の形態のフィン付き熱交換器の伝熱管中心線上での断面図、図7(b)は(a)のA−A線での断面図、図7(c)は(a)のB−B線での断面図、図7(d)は(a)のC−C線での断面図である。
【0040】
この実施の形態4は挿入部材43の断面積を連続的に変化させる構成とした点が上記実施の形態3と異なる。すなわち、この挿入部材43は長さの異なる棒状部材を螺旋状に絡み合うように捻ることによって段階的、あるいは次第にその棒状部材の本数を減らし、挿入部材全体の断面積が変化するように構成してある。なお、挿入部材43も断面積が大きな側の端部を伝熱管端部C側に配置しており、断面積が大きな側の端部を伝熱管端部C側に配置することで、流体が流動できる流路44は、乾き度が小さくなるに従い徐々に狭くなっている。
【0041】
この実施の形態4も先の各実施の形態と同様の作用効果を発揮するとともに、棒状部材の長さを変えていくだけで断面積を容易に変化させることができるという利点がある。
【0042】
(実施の形態5)
図8(a)は本発明の第5の実施の形態のフィン付き熱交換器の伝熱管中心線上での断面図、図8(b)は(a)のA−A線での断面図である。
【0043】
この実施の形態5は配管12内に設ける挿入部材53A、53Bの外表面の長手方向に複数の溝53Cを施した点が先の各実施の形態と異なる。
【0044】
この実施の形態5においても先の各実施の形態と同様の作用効果を発揮するとともに、溝53Cによる外表面積の拡大により挿入部材53Aおよび53Bへの凝縮液の付着量が多くなり、配管12の内周面の凝縮液膜をさらに薄くすることができて、管内熱伝達率の向上が図れる利点がある。
【0045】
なお、図8(a)は直線状の溝を示したが、螺旋状の溝を設けることで乱流促進による熱伝導率の向上や、これによる能力向上が図れる。また、溝加工をディンプル加工など凹凸加工で施しても同様の効果が得られる。
【0046】
(実施の形態6)
図9(a)は本発明の第6の実施の形態のフィン付き熱交換器の伝熱管中心線上での断面図、図9(b)は(a)のA−A線での断面図である。
【0047】
この実施の形態6は配管12内に設ける挿入部材63A、63Bを多孔質材で形成したものである。すなわち、挿入部材は多孔質材で構成された複数本の棒状部材を密着しながら螺旋状に絡み合うように捻って構成し、配管12A流路64Aには断面積が一定の部材63Aを挿入し、配管12Bの流路64B内には断面積が一定で挿入部材63Aの断面積より小さい挿入部材63Bが挿入してあり、断面積が大きな挿入部材63Aを伝熱管端部C側に配置することで、流体が流動できる流路64は、乾き度が小さくなるに従い狭くなっている。
【0048】
この実施の形態6も先の各実施の形態と同様の作用効果を発揮するとともに、多孔質形状としたことで外表面積を拡大でき、挿入部材63A、63Bへの凝縮液の付着量が多くなり、配管12の内周面の凝縮液膜をさらに薄くすることができて、管内熱伝達率の向上が図れる。
【0049】
(実施の形態7)
図11は上記各実施の形態で説明した熱交換器を用いた冷凍サイクル装置を示し、この冷凍サイクル装置は、冷媒を圧縮する圧縮機71、冷房暖房運転時の冷媒回路を切り替える四方弁72、冷媒と外気の熱を交換する室外熱交換器73、冷媒を減圧する絞り装置74、冷媒と室内空気の熱を交換する室内熱交換器75で構成され、上記各熱交換器73、75は先の各実施の形態で説明したもののひとつを用いている。圧縮機71、四方弁72、室外熱交換器73、絞り装置74、及び室内熱交換器75は接続管で環状に接続されている。室外ユニット80には、圧縮機71、四方弁72、室外熱交換器73、絞り装置74を有し、室内ユニット81には室内熱交換器75を有している。そして室外ユニット80と室内ユニット81とは、液接続管82とガス接続管83とで接続されている。
【0050】
そして、冷媒としては次のようなものを用いている。すなわち、ハイドロフルオロカーボン(HFC)の単体冷媒および混合冷媒R407C(R32/R125/R134a(23/25/52wt%))、R410A(R32/R125(50/50wt%))、あるいはプロパン(R290)などのハイドロカーボン(HC)や二酸化炭素(CO2)などの自然冷媒の単体冷媒や混合冷媒を用いている。
【0051】
また、炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィンとして、テトラフルオロプロペン(HFO−1234)またはトリフルオロプロペン(HFO−1243)をベースに、ジフルオロメタン(R32)とペンタフルオロエタン(R125)、ペンタフルオロエタン(R125)およびテトラフルオロエタン(R134a)などの2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンを、地球温暖化係数が4以上、750以下となるように、望ましくは350以下、さらに望ましくは150以下となるようにそれぞれ2成分混合もしくは3成分混合した冷媒を用いることができる。具体的には表1に示すようにテトラフルオロプロペンとの2成分混合の場合にはジフルオロメタンの場合は350以下でジフルオロメタン51.5wt%、ペンタフルオロエタンの場合は750以下でペンタフルオロエタン21.3wt%、350以下で9.8wt%と混合することになる。
【0052】
【表1】

【0053】
さらに、圧縮機31に封入される冷凍機油は、基油として、ポリオキシアルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリ(オキシ)アルキレングリコール又はそのモノエーテルとポリビニルエーテルとの共重合体、ポリオールエステル類及びポリカーボネート類の含酸素有機化合物の中から選ばれる少なくとも1種の含酸素有機化合物を主成分として、それらに極圧剤、油性剤、酸化防止剤、酸捕捉剤および泡消剤などの各種の添加剤を必要に応じて選択して加え、前記冷媒と相溶性を持つ油が望ましい。しかし、家庭用の空調機など小型の冷却サイクル装置では冷媒の配管内流速が早ければ、アルキルベンゼン類やαオレフィン類など前記冷媒と相溶性がない冷凍機油でも実用上、使用することができる。
【0054】
上記構成の冷凍サイクル装置は、冷房運転時には、圧縮機71によって圧縮された冷媒は高温高圧の冷媒となって四方弁72を通って室外熱交換器73に送られる。そして、外気と熱交換して放熱し、高圧の液冷媒となり絞り装置74に送られる。絞り装置74では減圧されて低温低圧の二相冷媒となり、液接続管82を通って、室内熱交換器75に入り室内空気と熱交換して吸熱し、蒸発気化して低温のガス冷媒となる。このとき室内空気は冷却されて室内を冷房する。さらに冷媒はガス接続管83を通って、四方弁72を経由して圧縮機71に戻される。
【0055】
暖房運転時には、圧縮機71によって圧縮された冷媒は高温高圧の冷媒となって四方弁72を通ってガス接続管83に送られる。そして、室内熱交換器75に入り室内空気と熱交換して放熱し、冷却され高圧の液冷媒となる。このとき室内空気は加熱されて室内を暖房する。その後、冷媒は液接続管82を通って絞り装置74に送られ、絞り装置74において減圧されて低温低圧の二相冷媒となり、室外熱交換器73に送られて外気と熱交換して蒸発気化し、四方弁2を経由して圧縮機2へ戻される。
【産業上の利用可能性】
【0056】
以上のように、本発明にかかる熱交換器および冷凍サイクル装置は、熱交換性能の高い熱交換器を得ることができ、さらに、伝熱管内の内容積を減少させることで、冷凍サイクル装置に充填する冷媒量の削減が可能となるので、ヒートポンプ給湯機等の用途にも適用できる。
【符号の説明】
【0057】
11 フィン
12A 伝熱管
12B 伝熱管
12C 伝熱管
13 挿入部材
23A 挿入部材
23B 挿入部材
33A 挿入部材
33B 挿入部材
33C 挿入部材
43 挿入部材
53A 挿入部材
53B 挿入部材
63A 挿入部材
64B 挿入部材
14A 流路
14B 流路
14C 流路

【特許請求の範囲】
【請求項1】
伝熱管内の流路を流れる相変化を伴う流体と前記伝熱管の外部を流れる流体とが熱交換し、前記伝熱管の内径を減少又は前記伝熱管の分岐数を減少させて、相変化を伴う流体が流動する流路断面積を、流体の乾き度が小さくなるに従って減少させる構成を持つ熱交換器であって、相変化を伴う流体が気液二相状態又は液相状態で流動している前記伝熱管の流路中に、断面の最大寸法が前記伝熱管の内径より小さく、複数の棒状部材が密着しながら螺旋状に絡み合うように捻って構成される挿入部材を設け、流体が流動する流路断面積を、流体の乾き度が小さくなるに従ってさらに減少させたことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記棒状部材の外表面に、溝又は凹凸を有すことを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記棒状部材の断面の外形形状を略円状、多角形状、又は星形状とすることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記棒状部材を多孔質材で構成したことを特徴とする請求項1から請求項3のいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記棒状部材を中実又は両端を閉塞した中空の部材で構成したことを特徴とする請求項1から請求項4のいずれかに記載の熱交換器。
【請求項6】
少なくとも圧縮機、室外熱交換器、絞り装置、及び室内熱交換器を環状に接続するとともに、前記各熱交換器の少なくとも一方は請求項1から5のいずれか1項記載の熱交換器で構成し、かつ、前記伝熱管内の流路を流れる流体として、ハイドロフルオロカーボン(HFC)又はハイドロカーボン(HC)や二酸化炭素(CO2)などの自然冷媒を主成分とした単体冷媒や混合冷媒を用いることを特徴とする冷凍サイクル装置。
【請求項7】
炭素と炭素間に2重結合を有するハイドロフルオロオレフィン単独、またはそれをベース成分とし、2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンと混合した冷媒を用いることを特徴する請求項6記載の冷凍サイクル装置。
【請求項8】
ハイドロフルオロオレフィンはテトラフルオロプロペン(HFO1234)をベース成分とし、ジフルオロメタン(R32)、ペンタフルオロエタン(R125)およびテトラフルオロエタン(R134a)などの2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンを、地球温暖化係数が4以上、750以下となるように、望ましくは350以下、さらに望ましくは150以下となるようにそれぞれ2成分混合もしくは3成分混合した冷媒を封入したことを特徴とする請求項7に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項9】
ハイドロフルオロオレフィンはトリフルオロプロペン(HFO1243)をベース成分とし、ジフルオロメタン(R32)、ペンタフルオロエタン(R125)およびテトラフルオロエタン(R134a)などの2重結合を有しないハイドロフルオロカーボンを、地球温暖化係数が4以上、750以下となるように、望ましくは350以下、さらに望ましくは150以下となるようにそれぞれ2成分混合もしくは3成分混合した冷媒を封入したことを特徴とする請求項7に記載の冷凍サイクル装置。
【請求項10】
冷媒は冷凍機油を備え、前記冷凍機油はポリオキシアルキレングリコール類、ポリビニルエーテル類、ポリ(オキシ)アルキレングリコールまたはそのモノエーテルとポリビニルエーテルの共重合体、ポリオールエステル類およびポリカーボネート類の含酸素化合物を主成分とする合成油か、アルキルベンゼン類やαオレフィン類を主成分とする合成油とし
たことを特徴とする請求項6から請求項9のいずれかに記載の冷凍サイクル装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図10】
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【図11】
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【公開番号】特開2011−106770(P2011−106770A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−263743(P2009−263743)
【出願日】平成21年11月19日(2009.11.19)
【出願人】(000005821)パナソニック株式会社 (73,050)
【Fターム(参考)】