熱交換器及び熱交換器を用いた加熱装置
【課題】熱交換器の、熱膨張、収縮の繰返しによる破損を防止し、熱交換率の低下を防止すると共に、熱交換器の耐用期間を長くすることを目的とする。又、熱交換器の製造を容易化且つ低廉化すると共に、メンテナンスを容易とすることを目的とする。
【解決手段】両端が開口した筒状の熱交換管2と熱交換管2内部に設置される集熱体3を備え、集熱体3は、筒状部31と、筒状部31と一体成形され、筒状部31の内壁面312から筒状部31の内方へ延設された集熱フィン32を備え、筒状部31の外周面には、筒状部31の長手方向に亘って連続し、筒状部31の内方へ突出する凹部41が形成され、少なくとも、集熱体3が加熱されて膨張した際に、熱交換管2と集熱体3とが、しまりばめの状態になる熱交換器。
【解決手段】両端が開口した筒状の熱交換管2と熱交換管2内部に設置される集熱体3を備え、集熱体3は、筒状部31と、筒状部31と一体成形され、筒状部31の内壁面312から筒状部31の内方へ延設された集熱フィン32を備え、筒状部31の外周面には、筒状部31の長手方向に亘って連続し、筒状部31の内方へ突出する凹部41が形成され、少なくとも、集熱体3が加熱されて膨張した際に、熱交換管2と集熱体3とが、しまりばめの状態になる熱交換器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器及び熱交換器を用いた加熱装置に関し、特に、熱交換管の内側に、集熱フィンを備えた管状の集熱体を設置し、集熱体内の流体と熱交換管の外側の流体との熱交換を行う熱交換器及び当該熱交換器を用いた加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から管状体の内側に流体を流し、管状体の外側の流体との熱交換を行う熱交換器が知られている。そして、熱交換の効率を向上させるために、管状体の内壁に集熱フィンを固着することも行われている。
【0003】
そして、このような熱交換器として、例えば、図10及び図11に示すように、平板状のプレート90を曲折して、左右に略垂直な側面壁を有する筒状に形成されると共に、側面壁内面にその長手方向に沿ってコの字型或いはL字型の銅製のフィン91が溶接固着され、プレート90の端部同士を溶接して筒状に形成されている熱交換器9が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
又、上記特許文献1においては、上記熱交換器を用いた液体加熱装置が提案されている。そして、この液体加熱装置では、上記熱交換器は、液体加熱装置の液槽の側壁に直接溶接されて液槽内に設置され、筒状の熱交換器内を流れる燃焼ガスの熱を、液槽内の熱交換器の外側に存する液体に伝達し、液槽内の液体を加熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−157425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示された熱交換器は、筒状体に集熱用のフィンが溶接により固定されているため、繰り返しの使用による、膨張、収縮によりフィンが筒状体から剥離して、熱交換器が破損し易く、熱交換率を低下させるという問題点や、熱交換器の耐用期間が短いという問題点があった。特に、筒状体とフィンの材質が異なり、熱膨張率が異なる場合にこの問題が顕著であり、上記特許文献1に開示されているように、ステンレス製の筒状体と銅製のフィンでは、この問題が顕著であった。
【0007】
又、フィンが筒状体から剥離した場合、筒状体は液体加熱装置の液槽の側壁に直接溶接されて設置されているので、補修をするためには、溶接部分を溶かして或いは切断して、液体加熱装置の液槽の側壁から熱交換器を取り外す必要があるが、この作業は困難で、時間がかかり、費用も高くなり、メンテナンスが容易ではないという問題点があった。特に銅製のフィンを用いる場合には、重量が重いこともあり更にメンテナンスが困難であった。
【0008】
又、熱交換器の筒状体内を燃焼ガスが通るので、筒状体の内壁やフィンに煤等の汚物が付着し、熱交換率を低下させないためにも、熱交換器内部の清掃等のメンテナンスを行う必要があるが、上記特許文献1に開示された熱交換器は、筒状体に集熱用のフィンが溶接により固定され、しかも、筒状体は液体加熱装置の液槽の側壁に直接溶接されているので、熱交換器内部の清掃等のメンテナンスが容易ではないという問題点があった。
【0009】
又、その熱交換器の製造において、平板体の曲折、フィンの曲折、フィンの平板体への溶接、平板体の溶接を行うため、工程が複雑で、容易に製造することが出来ず、製造コストが高くなるという問題点があった。特に銅製のフィンを用いる場合には、製造コストの問題が顕著であると共に、重量が重いこともあり更に製造が困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、繰り返しの使用による、膨張、収縮の繰り返しによっても、熱交換器が容易に破損することを防止し、熱交換率を低下させることを防止すると共に、熱交換器の耐用期間を長くすることを目的とする。
【0011】
又、フィンの破損による補修や、内部の清掃等のメンテナンスを容易とすることを目的とする。
【0012】
又、熱交換器又は熱交換器を用いた加熱装置の製造を容易とすると共に、製造コストを低廉化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段としての本発明は、熱交換器内部の熱を熱交換器外部の被加熱体に伝達する熱交換器であって、両端が開口した筒状の熱交換管と当該熱交換管内部に設置される集熱体を備え、前記集熱体は、筒状部と、当該筒状部と一体成形され、当該筒状部の内壁面から当該筒状部の内方へ延設された集熱フィンを備え、少なくとも、前記集熱体が加熱されて膨張した際に、前記熱交換管と前記集熱体とが、しまりばめの状態になることを特徴とする熱交換器である。
【0014】
そして、筒状部と集熱フィンが一体形成されているので、集熱フィンが筒状体から剥離することがなく、熱交換器が破損し難く、熱交換率を低下させることが防止でき、熱交換器の耐用期間を長くすることが出来る。又、熱交換管と集熱体が別体であるので、集熱体は熱交換管に容易に挿脱できるので、熱交換器、それを用いた加熱装置のメンテナンスが容易となる。更に、部品は熱交換管と集熱体の2点で構成でき、部材の曲折や溶接も不要であり、製造工程が簡素で、容易に製造可能であり、製造コストも低廉化できる。
【0015】
又、上記熱交換器において、前記集熱体の筒状部の外周面には、前記筒状部の長手方向に亘って連続し、前記筒状部の内方へ突出する凹部が形成されていることを特徴とする熱交換器である。
【0016】
このような構成により、筒状部の径、外周形状を変形、縮小することが出来、加熱される前にしまりばめの状態である場合でも、熱交換管への集熱体の挿脱を容易とすることが出来る。又、筒状部が膨張した際に、凹部で膨張を吸収し、膨張方向をコントロール可能で、筒状部の径の伸長、外周の拡張を防止するので、集熱体が熱交換管に密着したまま、膨張が可能であり、又、熱交換管への応力を抑制し、熱交換管の破損、熱交換器の破損を防止することができる
【0017】
又、上記熱交換器において、前記熱交換管と前記集熱体が加熱される前において、前記熱交換管と前記集熱体とが、しまりばめの状態であることを特徴とする熱交換器である。このような構成により、集熱体から熱交換管への熱交換率を向上させることが出来る。
【0018】
又、上記熱交換器において、前記熱交換管と前記集熱体が加熱される前において、前記熱交換管と前記集熱体とが、ゆるみばめの状態であることを特徴とする熱交換器である。このような構成により、集熱体の熱交換管への挿入設置、抜き出しが容易となり、製造工程が簡素で、容易に製造可能であり、製造コストも低廉化できると共に、メンテナンスが容易となる。
【0019】
又、上記熱交換器において、前記集熱体は、前記集熱体の軸に対し平行方向に分割して形成したこと、又は前記集熱体の軸に対し垂直方向に分割して形成したことを特徴とする熱交換器である。このような構成により、集熱体の熱交換管への挿入設置、抜き出しが容易となり、製造工程が簡素で、容易に製造可能であり、製造コストも低廉化できると共に、メンテナンスが容易となる。
【0020】
又、上記熱交換器において、前記集熱体は、同一形状の複数の分割体を組み合わせて形成したことを特徴とする熱交換器である。
【0021】
又、上記熱交換器において、前記集熱体は、前記集熱体の軸方向に対して垂直方向の断面視において、少なくとも一部が湾曲した集熱フィンを備えることを特徴とする熱交換器である。
【0022】
又、上記熱交換器において、前記集熱体は、アルミニウム合金又は純アルミニウムで形成し、前記熱交換管はステンレスで形成したことを特徴とする熱交換器である。
【0023】
又、上記熱交換器において、前記集熱体の表面には、アルマイト加工を施したことを特徴とする熱交換器である。
【0024】
更に、熱交換器内部の熱を熱交換器外部の被加熱体に伝達する熱交換器の製造方法であって、両端が開口した筒状の熱交換管を成形する一方、筒状部と、当該筒状部の内壁面から当該筒状部の内方へ延設される集熱フィンを備えた集熱体を一体成形し、前記熱交換管内部に前記集熱体を挿入し、しまりばめの状態で設置することを特徴とする熱交換器の製造方法である。
【0025】
更に、上記熱交換器を用いた加熱装置であり、又、前記加熱装置は、本体内部の上方に液槽を備え、前記熱交換器が、前記液槽の対向面に亘って設置されている液体加熱装置であることを特徴とする加熱装置である。
【0026】
又、上記液体加熱装置は、茹麺器やフライヤーとすることが出来る。
【発明の効果】
【0027】
以上のような本発明によれば、繰り返しの使用による、膨張、収縮の繰り返しによっても、熱交換器が容易に破損することを防止することが可能となり、熱交換率の低下を防止出来ると共に、熱交換器の耐用期間を長くすることが可能となった。
【0028】
又、集熱フィンの破損による補修や、内部の清掃等のメンテナンスを容易とすることが可能となった。
【0029】
又、熱交換器の製造を容易とすることが可能となると共に、製造コストを低廉化することが可能となり、更に、熱交換器を用いた加熱装置の製造を容易とすることが可能となると共に、製造コストを低廉化することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明熱交換器一実施例部分破断斜視図
【図2】本発明熱交換器の集熱体の実施例断面図
【図3】本発明熱交換器実施例部分断面図
【図4】集熱体を構成する分割体の一実施例断面図
【図5】集熱体の一実施例斜視図
【図6】本発明熱交換器他実施例斜視図
【図7】本発明液体加熱装置一実施例斜視図
【図8】本発明液体加熱装置一実施例側面図
【図9】本発明液体加熱装置一実施例正面図
【図10】従来の熱交換器を示す正面図
【図11】従来の熱交換器を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。本発明の熱交換器1は、夫々別個に形成された、両端が開口した筒状の熱交換管2と熱交換管2内部に固着されずに設置される集熱体3を備えて構成されている。
【0032】
熱交換管2は、図1、図6及び図8に示すように、両端が開口した筒状であり、熱交換管2の軸に対し垂直方向の断面が円形に形成された、外形が円柱状の管体であり、ステンレスを用いて形成されている。熱交換管2は、集熱体3で集められた熱を受け取り、熱交換管2の外側に存する被加熱体に伝達するための部材である。
【0033】
熱交換管2の軸方向(長手方向)の長さ、外径、厚みは、特に限定されず、熱交換管2の材質、熱交換管2が用いられる加熱装置等の機器、そこで求められる熱交換性能等に応じて、適宜選択することができるが、例えば材質がJIS SUS304である場合、長さを312mm、外径を76mm、厚みを3mmとすることが出来る。厚みは、1.5〜4mm程度が好ましく、1.5mm以下であると強度的に弱くなり、4mm以上では、熱交換率が低下するからである。
【0034】
尚、熱交換管2の形状は、軸に対し垂直方向の断面が円形に限定されず、三角形、四角形、その他の多角形としてもよく、その材質は、ステンレスに限定されず、アルミニウムやその合金等の金属を用いることとしてもよい。
【0035】
集熱体3は、アルミニウム合金を用いて形成され、図2(a)に示すように、両端が開口した筒状であり、集熱体3の軸に対し、即ち長手方向に対し垂直方向の断面が円形に形成された外形が円柱状の管体である筒状部31と、筒状部31の内壁面312から筒状部31の内方へ延設された集熱フィン32を備えて構成されている。又、集熱フィン32は筒状部31と一体成形されている。そのため、熱膨張による応力が加わっても、集熱フィン32が筒状部31から剥離、離間することがなく、集熱体3、ひいては熱交換器1の破損を防止することが出来る。尚、集熱体3の素材は、アルミニウム合金に限定されず、ステンレスや純アルミニウム等の金属を用いることとしてもよい。
【0036】
筒状部31は、筒状部31の内側、或いは加えて後述する凹部41により形成される熱交換管2と集熱体3間の空間5に流される燃焼ガス等の加熱された流体から熱を集めると共に、集熱フィン32で集められた熱を集め、集めた熱を熱交換管2に伝達するための部材であり、熱交換管2に伝達された熱は、熱交換管2の外側に存する水や油等の液体又は気体である被加熱体に伝達される。
【0037】
そして、筒状部31の軸方向(長手方向)の長さ、外径、厚みは、夫々熱交換管2の長さ以下、内径未満に形成されると共に、集熱体3の材質、集熱体3が用いられる加熱装置等の機器、そこで求められる熱交換性能等に応じて適宜選択することができるが、例えば材質がJIS A6063である場合、長さを、250mm、外径を、72.5mm、厚みを3mmとすることが出来る。厚みは、1.5〜4mm程度が好ましく、1.5mm以下であると強度的に弱くなり、4mm以上では、熱交換率が低下するからである。
【0038】
集熱体3は、溶接やその他の方法により固着されずに、熱交換管2内に挿入して設置されている。熱交換管2の内形状及び集熱体3の外形状は、熱交換管2内に集熱体3を挿脱可能であって、少なくとも、集熱体3の筒状部31内が加熱され、その結果として集熱体3が膨張した際に、或いは集熱体3及び熱交換管2が膨張した際に、集熱体3の筒状部31の外壁面313が熱交換管2の内壁面26と密接する形状に形成されている。即ち、集熱体3の膨張時に、熱交換管2と集熱体3はしまりばめの状態になるよう形成されている。
【0039】
上記一例のような材質及び寸法の熱交換管2及び集熱体3を用いて熱交換器1を構成する場合、集熱体3及び熱交換管2が加熱される前において、熱交換管2と集熱体3とがゆるみばめの状態となっている。このような構成とすることで、集熱体3の熱交換管2への挿脱が容易となる。このような場合、集熱体3が熱交換管2から不用意に脱落しないように、集熱体3を熱交換管2に保持するため、クリップ状等のストッパーを熱交換管2に設置してもよい。尚、このように加熱前に熱交換管2と集熱体3とがゆるみばめの状態として構成する場合には、熱交換管2の材質は集熱体3の材質より熱膨張係数が小さい材質で形成する。
【0040】
又、熱交換器1は、集熱体3及び熱交換管2が加熱される前において、熱交換管2と集熱体3とがしまりばめの状態で構成することとしてもよい。この場合の製造方法として、集熱体3及び熱交換管2を夫々別個に成形し、熱交換管2内部に集熱体3を圧入等により挿入し、しまりばめの状態で設置する方法を採用することが出来る。このような構成とすることで、集熱体3が熱交換管2から不用意に抜けてしまうことを防止でき、又、集熱体3の筒状部31の外壁面313が熱交換管2の内壁面26に確実に密接し、熱交換性能を高めることが出来る。
【0041】
尚、しまりばめの状態とは、熱交換管2の内壁面26と集熱体3の外壁面313との間に隙間がなく、密接し、熱交換管2の内壁面26と集熱体3の外壁面313が互いに圧力を加えている状態であり、集熱体3が集熱体3の軸に垂直方向への移動が出来ない状態であり、挿入時であればしめしろができる状態をいう。但し、熱交換管2の内形状と集熱体3の外形状が完全な相似形でない場合に生じる隙間が存在してもしまりばめの状態というものとする。又、ゆるみばめの状態とは、熱交換管2の内壁面26と集熱体3の外壁面313との間に隙間があり、密接していない状態であり、集熱体3が集熱体3の軸に垂直方向への移動が出来る状態をいう。
【0042】
尚、筒状部31の形状は、熱交換管2に挿脱可能であり、少なくとも、集熱体3の筒状部31内が加熱され、その結果として集熱体3及び熱交換管2が膨張した際に、集熱体3の筒状部31の外壁面313が熱交換管2の内壁面26と密接すれば断面が円形に限定されず、熱交換管2の内部形状に適合させて、三角形、四角形、その他の多角形としてもよい。筒状部31の外壁面313の全面が熱交換管2の内壁面26に密接させるため、筒状部31の外形状と熱交換管2の内形状の夫々の断面は相似形とすることが好ましい。
【0043】
集熱体3の長さは、熱交換管2の長さ以下に形成するが、熱交換管2の長さ未満に形成し、図6に示すように、熱交換器1の少なくとも燃焼ガス等の加熱された流体が流入する側(図では左手前側)において、熱交換管2の端部から所定の距離をおいて集熱体3を設置することが好ましい。このような構成とすることで、ガスバーナー等の熱発生器具からの集熱体3への直接的な熱の影響を低減させることが出来、集熱体3の変形や劣化を抑制することが出来る。
【0044】
集熱フィン32は、筒状部31の内側に流される燃焼ガス等の加熱された流体から熱を集め、筒状部31に伝達するための部材である。集熱フィン32は、図1及び図2(a)に示すように、筒状部31の内壁面312に、所定の間隔をおいて、筒状部31の中心方向へ直線的に突設すると共に、筒状部31の長手方向に直線的に連続して複数形成している。集熱フィン32の高さH、即ち、筒状部31と接する基部321から先端部322までの高さHは、筒状部31の内半径以下の適宜高さとすると共に、個々の集熱フィン32で同一とし、筒状部31の長手方向に亘っても同一としている。又、集熱フィン32の厚みWは、基部321の厚みW1より先端部322の厚みW2を薄く形成している。
【0045】
尚、集熱フィン32は、筒状部31の長手方向に直線的に連続して形成せずに、筒状部31の長手方向に螺旋状に形成すること、断続的に形成すること、或いはこれらの形状を適宜組み合わせて形成することも出来る。
【0046】
又、集熱フィン32は、上記形状に限定されず、図2(b)〜(g)に示すように、高さHを異ならせた形状(b)(e)、基部321から先端部322の厚みを同一とした形状(e)、集熱体3の長手方向に対して垂直方向の断面視において、一部又は全部が湾曲した形状(f)、集熱フィン32同士が入り組んだ形状(f)、一枚の集熱フィン32から補助フィン325が突出した形状(d)、集熱フィン32が筒状部31に形成された円筒状の集熱フィン326を支持する形状(d)、集熱体3の長手方向に対して垂直方向の断面視において、少なくとも一部が湾曲し、一部が筒状部31の中心方向へ直線的に延びると共に、湾曲した集熱フィン32の一部は筒状部31の内半径以上の長さとし、湾曲した一部の集熱フィン32の先端部分が他の2個の集熱フィン32間に挿入された形状(g)、或いは、軸に対し垂直方向の断面において屈折した形状(図示せず)、又はこれらを適宜組み合わせた形状等に形成してもよい。集熱フィン32を湾曲又は屈曲させることにより、集熱体3の内側の表面積を大きくすることができ、集熱効率を高めることが出来る。
【0047】
又、集熱体3は、長手方向に対して垂直方向の断面形状を、長手方向に前後したどこの断面でも同一形状となるよう形成してもよいが、異なる形状となるよう形成してもよい。一具体例として、個々の集熱フィン32の高さH又は長さは、筒状部31の長手方向に亘って同一とするのではなく、図3に示すように、燃焼ガス等の加熱された流体が流入する側(図では左側)の高さH1を低くし、奥側(図では右側)の所定位置に向かって高くするように形成することも出来る。この高さの変化は、直線状や曲線状にすることが出来、又、筒状部31の長手方向一端から他端に亘って高さの変化を設けることとしてもよい。
【0048】
このような構成とすることで、通常、燃焼ガス等の加熱された流体が流入する側から奥側、排出する側に向かって、加熱された流体の温度が低くなるが、奥側の集熱フィンの面積を大きくすることで、集熱効果を高め、熱交換器1の全長に亘って均一な熱交換を行うことが出来る。
【0049】
熱交換器1の奥側の集熱フィンの面積を大きくするために、上記構成の他、加熱された流体が流入する側より奥側に多数の集熱フィン32を形成することも出来る。
【0050】
筒状部31には、図1、図2(b)〜(g)に示すように、筒状部31の長手方向に亘って直線的に連続し、筒状部31の内方へ突出する凹部41を形成することが好ましい。この凹部41により、筒状部31の外周面には所定深さの溝状の窪みが形成されると共に、筒状部31の内周面には所定高さの凸条が形成される。この凹部41は、筒状部31に弾性を付与し、筒状部31の径を短くし、外周を縮ませることが出来る。凹部41の形成数は特に限定されず、1個〜6個程度で充分であるが、筒状部31の外壁面313と熱交換管2の内壁面26との接触面積を大きくするために、出来るだけ少なくすることが好ましく、1個〜4個程度が好ましい。又、凹部41は、筒状部31の膨張及び膨張の吸収のバランスを均一化するために、筒状部31の外周面に等間隔で設けることが好ましい。
【0051】
尚、凹部41は、筒状部31の一部を筒状部31の中心軸方向へ凹ませて形成するが、この凹部41を形成する壁面も集熱フィン32となる。この場合、凹部41を形成する集熱フィン32は、筒状部31の内側に加えて凹部41により形成される熱交換管2と集熱体3間の空間5に流される燃焼ガス等の加熱された流体からも熱を集める。尚、凹部41を形成する外側の壁面は、筒状部31の外壁面313を構成するものではない。
【0052】
凹部41の、筒状部31の軸に対し垂直方向の断面形状は、特に限定されず、図2(b)に示すような筒状部31の外周面を底辺とする三角形状、図2(c)〜(e)に示すような頂角が半円形上の筒状部31の外周面を底辺とする三角形状の他、図示はしないが、半円形状、半楕円円形状、頂角が筒状部31の外周面に接する三角形状、一部が欠けた略円形状、扇形状等適宜の形状とすることが出来る。
【0053】
このような構成により、筒状部31の径、外周形状を変形、縮小することが出来、加熱される前にしまりばめの状態である場合でも、熱交換管2への挿脱時に外周形状を縮小させることで、挿脱を容易とすることが出来る。又、筒状部31が膨張した際に、凹部41で膨張を吸収し、膨張方向をコントロール可能で、筒状部31の径の伸長、外周の拡張を防止するので、集熱体3が熱交換管2に密着したまま、膨張が可能であり、又、熱交換管2への応力を抑制し、熱交換管2の破損、熱交換器1の破損を防止することができる。
【0054】
又、凹部41を形成しない場合は、少なくとも膨張時に筒状部31の外壁面313が熱交換管2の内壁面26と充分に密着する必要があると共に、筒状部31の膨張により、筒状部31又は/及び熱交換管2が破損しない範囲で設計、形成する必要があるので、筒状部31と熱交換管2の材質が異なる場合はもとより、同じ場合であっても、夫々の厚み等構成の違いによる膨張率、膨張方向等が異なる場合があり、場合によっては、筒状部31の外壁面313が熱交換管2の内壁面26と充分に密着しないこともあるので、設計、形成が容易ではない。しかし、凹部41を形成することにより、筒状部31の膨張を吸収し、膨張方向をコントロール可能なので、設計、形成が容易であると共に、筒状部31の外壁面313が熱交換管2の内壁面26に確実に密着させることが出来る。
【0055】
更に、筒状部31の熱交換管2への挿脱が容易であって、常に筒状部31の外壁面313と熱交換管2の内壁面26とを密接させておくことが出来る。
【0056】
尚、集熱フィン32が筒状部31の長手方向に螺旋状に連続して形成されている場合、凹部41も筒状部31の長手方向に螺旋状に形成することが、製造が容易であり好ましい。
【0057】
熱交換管2及び集熱体3は、夫々に用いる材質や形状に適した製造方法により形成すればよく、例えば、熱交換管2は、平板体を湾曲させて両端同士を溶接等により固着して形成したり、押出加工、引抜加工等を用いて形成することが出来、集熱体3は、押出加工、引抜加工、柱状体を用いたワイヤ放電加工やブローチ加工等を用いて形成することが出来る。又、集熱体3の材質がアルミニウム等腐食しやすい材質である場合には、集熱体3の表面、即ち筒状部31の端面を含む外側表面並びに内側表面及び集熱フィン32の表面には、腐食防止のためアルマイト加工を施すこととしてもよい。
【0058】
集熱体3は一体成形するが、分割して形成してもよい。分割形成する場合、集熱体3の長手方向、即ち軸に対し垂直方向に分割してもよく、図2(e)、(f)及び(g)に示すように、軸に対し平行方向、即ち集熱体3の長手方向に分割してもよい。分割形成することにより、一体成形では採用が困難な、集熱フィン32を含めた集熱体3の形状、材質、加工法等の組み合わせを容易とし、熱交換率が高い、集熱体3、熱交換器1を容易且つ廉価に製造することが出来る。
【0059】
そして、特に軸に対し平行方向に分割して形成する場合、集熱体3は、図2(e)に示すように、集熱体3を構成する分割体30の他の分割体30との対向部に係止突起37を設け、分割体30同士を係止させたり、又、図2(f)及び(g)に示すように、分割体30の筒状部31部分の両端部であって、集熱体3を組み立てた際の分割体30同士の対向部に係合突起38と係合凹部39を設け、集熱体3の長手方向にスライドさせて係合凹部39に係合突起38を挿入させて分割体30同士を係合させて集熱体3を形成することが好ましい。このような構成とすることで、集熱体3の組立時に分割体30のずれ、集熱体3の分解を防止できるからであり、特に係合させることにより、その効果が高まるからである。又、分割数は特に限定されないが、多すぎると、組立て、熱交換管2への挿脱の作業が煩雑になる場合もあるので、特に軸に対し平行方向に分割する場合には、2〜4分割程度が好ましく、特に2又は3分割が好ましい。
【0060】
複数の分割体30を組み合わせて集熱体3を形成する場合、夫々の分割体30に形成される集熱フィン32の形状、成形位置を異ならせ、分割体30の形状を異なる形状としてもよいが、夫々の分割体30は同一形状とすることが好ましい。同一形状とすることで、夫々の分割体30の相対的位置関係に注意して組み立てをする必要がなく、集熱体3の組立が容易となり、又、分割体30及び集熱体3の製造も容易且つ低廉化することが出来るからである。例えば、図2(g)に示す集熱体300を3個の分割体30で形成する場合、図4に示す断面形状の分割体301を3個組み合わせて組立形成することが出来、組み立てられた集熱体3の一形態として図5に示す集熱体300が形成される。更に、この集熱体300を用いた熱交換器の一実施例として、図6に示す熱交換器1が形成される。
【0061】
上記のような熱交換器1は、熱交換を必要とする加熱装置等の各種機器に利用することが出来、加熱装置の一例として、油を加熱するフライヤーや水を加熱する茹麺器等の液体加熱装置が挙げられる。以下、熱交換器1を加熱装置に用いる実施の形態を茹麺器を例として説明する。
【0062】
茹麺器10は、図7〜図9に示すように、厨房等の床面に設置するための脚部61を備えた本体6内部の上方に、麺を茹でる水を貯留するための液槽62を備え、本体6内部であって液槽62の前面621側(図8において左側)には、液槽62の外壁面と接し、その内部に熱発生器具たるガスバーナー63が設置された燃焼室64が設けられている。詳しくは、燃焼室64は、上下開口の箱体88を上部開口部を液槽62の外壁面に密接させ、液槽62の外壁面の一部をその上部壁として構成されている。又、液槽62の背面622側(図8において右側)には、排気路65が設けられている。そして、液槽62内部には、所定数の熱交換器1が、一端を燃焼室64、他端を排気路65に接続され、液槽62の対向面、即ち前面621から背面622に亘って略水平状態で設置されている。このようにして、燃焼室64から熱交換器1、そして排気路65へと通じる流路69が形成されている。
【0063】
尚、熱交換器1の設置は、液槽62の前面621及び背面622夫々に設けられた孔66に熱交換器1の熱交換管2の端部を溶接して行うが、集熱体3は予め熱交換管2内に設置しておいてもよく、熱交換管2の液槽62への固定後に熱交換管2に挿入することとしてもよい。
【0064】
次に茹麺器10の作動について説明する。液槽62に水7を熱交換器1より高い水位まで貯留後、ガスバーナー63を点火して、燃焼室64内で高温の燃焼ガスを発生させる。この燃焼ガスの流れは、図8において矢印Rで示すように、上昇し、熱交換器1の内部に進入し、集熱体3の内部、即ち筒状部31の内側、或いは加えて凹部41により形成される熱交換管2と集熱体3間の空間5に進入して、筒状部31と集熱フィン32と接触する。そして、燃焼ガスの熱が筒状部31及び集熱フィン32に吸収され、集熱フィン32で集められた熱は、筒状部31に伝達され、更に熱交換管2に伝達される。熱交換管2に伝達された熱は、液槽62内の水7と接する熱交換管2の外面に達し、液槽62内の水7との熱交換を行い、即ち水7を加熱する。熱交換器1の内部で熱を奪われた燃焼ガスは、排気路65を通り本体6の外部へ排出される。
【0065】
そして、熱交換器1のメンテナンスのために、集熱体3を熱交換管2から抜く時、メンテナンス終了時に集熱体3を熱交換管2に挿入する際には、燃焼室64を構成する着脱或いは開閉自在な箱体88及び本体6の前面に着脱或いは開閉自在に設けられた前蓋81を取除き或いは開けて行うことが出来る。
【実施例1】
【0066】
集熱フィン32が図2(g)に示す形状であって、図4に示す分割体301を3個組み合わせて、図5に示す形状に形成し、且つ筒状部の長手方向に亘って同一断面形状の集熱体300を用いた熱交換器を2個設置した茹麺器の立上り時間と熱効率を測定した。茹麺機は、タニコー株式会社製TU−50Nを使用し、熱交換管は、SUS304を用いて内径73.3mm、外径76.3mm、長さ305mmに形成したものを使用し、集熱体はAl6063を用いて内径68.2mm、外径74.2mm、長さ250mmに形成したものを使用した。側定時の室温は5.8℃で、液槽に10.2℃の水を36リットル貯留し、純プロパンガスを使用した。
【0067】
10.2℃から98℃になるまでの立上り時間は36分で、熱効率は62%であった。又、30℃から98℃になるまでの立上り時間は19分10秒で、熱効率は66.7%であった。このように立上り時間、熱効率共に良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の熱交換器1は、熱交換を必要とする加熱装置等の各種機器に利用することが出来、特に、油を加熱するフライヤーや水を加熱する茹麺器等の液体加熱装置に好適に利用することが出来る。
【符号の説明】
【0069】
1 熱交換器
10 茹麺器
2 熱交換管
3 集熱体
30 集熱体を構成する分割体
300 集熱体
301 集熱体を構成する分割体
31 筒状部
32 集熱フィン
325 補助フィン
37 係止突起
38 係合突起
39 係合凹部
41 凹部
6 本体
62 液槽
63 ガスバーナー
64 燃焼室
65 排気路
69 流路
7 水
H 集熱フィンの高さ
W 集熱フィンの厚み
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換器及び熱交換器を用いた加熱装置に関し、特に、熱交換管の内側に、集熱フィンを備えた管状の集熱体を設置し、集熱体内の流体と熱交換管の外側の流体との熱交換を行う熱交換器及び当該熱交換器を用いた加熱装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から管状体の内側に流体を流し、管状体の外側の流体との熱交換を行う熱交換器が知られている。そして、熱交換の効率を向上させるために、管状体の内壁に集熱フィンを固着することも行われている。
【0003】
そして、このような熱交換器として、例えば、図10及び図11に示すように、平板状のプレート90を曲折して、左右に略垂直な側面壁を有する筒状に形成されると共に、側面壁内面にその長手方向に沿ってコの字型或いはL字型の銅製のフィン91が溶接固着され、プレート90の端部同士を溶接して筒状に形成されている熱交換器9が提案されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
又、上記特許文献1においては、上記熱交換器を用いた液体加熱装置が提案されている。そして、この液体加熱装置では、上記熱交換器は、液体加熱装置の液槽の側壁に直接溶接されて液槽内に設置され、筒状の熱交換器内を流れる燃焼ガスの熱を、液槽内の熱交換器の外側に存する液体に伝達し、液槽内の液体を加熱している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】特開2000−157425号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上記特許文献1に開示された熱交換器は、筒状体に集熱用のフィンが溶接により固定されているため、繰り返しの使用による、膨張、収縮によりフィンが筒状体から剥離して、熱交換器が破損し易く、熱交換率を低下させるという問題点や、熱交換器の耐用期間が短いという問題点があった。特に、筒状体とフィンの材質が異なり、熱膨張率が異なる場合にこの問題が顕著であり、上記特許文献1に開示されているように、ステンレス製の筒状体と銅製のフィンでは、この問題が顕著であった。
【0007】
又、フィンが筒状体から剥離した場合、筒状体は液体加熱装置の液槽の側壁に直接溶接されて設置されているので、補修をするためには、溶接部分を溶かして或いは切断して、液体加熱装置の液槽の側壁から熱交換器を取り外す必要があるが、この作業は困難で、時間がかかり、費用も高くなり、メンテナンスが容易ではないという問題点があった。特に銅製のフィンを用いる場合には、重量が重いこともあり更にメンテナンスが困難であった。
【0008】
又、熱交換器の筒状体内を燃焼ガスが通るので、筒状体の内壁やフィンに煤等の汚物が付着し、熱交換率を低下させないためにも、熱交換器内部の清掃等のメンテナンスを行う必要があるが、上記特許文献1に開示された熱交換器は、筒状体に集熱用のフィンが溶接により固定され、しかも、筒状体は液体加熱装置の液槽の側壁に直接溶接されているので、熱交換器内部の清掃等のメンテナンスが容易ではないという問題点があった。
【0009】
又、その熱交換器の製造において、平板体の曲折、フィンの曲折、フィンの平板体への溶接、平板体の溶接を行うため、工程が複雑で、容易に製造することが出来ず、製造コストが高くなるという問題点があった。特に銅製のフィンを用いる場合には、製造コストの問題が顕著であると共に、重量が重いこともあり更に製造が困難であった。
【0010】
そこで、本発明は、繰り返しの使用による、膨張、収縮の繰り返しによっても、熱交換器が容易に破損することを防止し、熱交換率を低下させることを防止すると共に、熱交換器の耐用期間を長くすることを目的とする。
【0011】
又、フィンの破損による補修や、内部の清掃等のメンテナンスを容易とすることを目的とする。
【0012】
又、熱交換器又は熱交換器を用いた加熱装置の製造を容易とすると共に、製造コストを低廉化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記課題を解決するための手段としての本発明は、熱交換器内部の熱を熱交換器外部の被加熱体に伝達する熱交換器であって、両端が開口した筒状の熱交換管と当該熱交換管内部に設置される集熱体を備え、前記集熱体は、筒状部と、当該筒状部と一体成形され、当該筒状部の内壁面から当該筒状部の内方へ延設された集熱フィンを備え、少なくとも、前記集熱体が加熱されて膨張した際に、前記熱交換管と前記集熱体とが、しまりばめの状態になることを特徴とする熱交換器である。
【0014】
そして、筒状部と集熱フィンが一体形成されているので、集熱フィンが筒状体から剥離することがなく、熱交換器が破損し難く、熱交換率を低下させることが防止でき、熱交換器の耐用期間を長くすることが出来る。又、熱交換管と集熱体が別体であるので、集熱体は熱交換管に容易に挿脱できるので、熱交換器、それを用いた加熱装置のメンテナンスが容易となる。更に、部品は熱交換管と集熱体の2点で構成でき、部材の曲折や溶接も不要であり、製造工程が簡素で、容易に製造可能であり、製造コストも低廉化できる。
【0015】
又、上記熱交換器において、前記集熱体の筒状部の外周面には、前記筒状部の長手方向に亘って連続し、前記筒状部の内方へ突出する凹部が形成されていることを特徴とする熱交換器である。
【0016】
このような構成により、筒状部の径、外周形状を変形、縮小することが出来、加熱される前にしまりばめの状態である場合でも、熱交換管への集熱体の挿脱を容易とすることが出来る。又、筒状部が膨張した際に、凹部で膨張を吸収し、膨張方向をコントロール可能で、筒状部の径の伸長、外周の拡張を防止するので、集熱体が熱交換管に密着したまま、膨張が可能であり、又、熱交換管への応力を抑制し、熱交換管の破損、熱交換器の破損を防止することができる
【0017】
又、上記熱交換器において、前記熱交換管と前記集熱体が加熱される前において、前記熱交換管と前記集熱体とが、しまりばめの状態であることを特徴とする熱交換器である。このような構成により、集熱体から熱交換管への熱交換率を向上させることが出来る。
【0018】
又、上記熱交換器において、前記熱交換管と前記集熱体が加熱される前において、前記熱交換管と前記集熱体とが、ゆるみばめの状態であることを特徴とする熱交換器である。このような構成により、集熱体の熱交換管への挿入設置、抜き出しが容易となり、製造工程が簡素で、容易に製造可能であり、製造コストも低廉化できると共に、メンテナンスが容易となる。
【0019】
又、上記熱交換器において、前記集熱体は、前記集熱体の軸に対し平行方向に分割して形成したこと、又は前記集熱体の軸に対し垂直方向に分割して形成したことを特徴とする熱交換器である。このような構成により、集熱体の熱交換管への挿入設置、抜き出しが容易となり、製造工程が簡素で、容易に製造可能であり、製造コストも低廉化できると共に、メンテナンスが容易となる。
【0020】
又、上記熱交換器において、前記集熱体は、同一形状の複数の分割体を組み合わせて形成したことを特徴とする熱交換器である。
【0021】
又、上記熱交換器において、前記集熱体は、前記集熱体の軸方向に対して垂直方向の断面視において、少なくとも一部が湾曲した集熱フィンを備えることを特徴とする熱交換器である。
【0022】
又、上記熱交換器において、前記集熱体は、アルミニウム合金又は純アルミニウムで形成し、前記熱交換管はステンレスで形成したことを特徴とする熱交換器である。
【0023】
又、上記熱交換器において、前記集熱体の表面には、アルマイト加工を施したことを特徴とする熱交換器である。
【0024】
更に、熱交換器内部の熱を熱交換器外部の被加熱体に伝達する熱交換器の製造方法であって、両端が開口した筒状の熱交換管を成形する一方、筒状部と、当該筒状部の内壁面から当該筒状部の内方へ延設される集熱フィンを備えた集熱体を一体成形し、前記熱交換管内部に前記集熱体を挿入し、しまりばめの状態で設置することを特徴とする熱交換器の製造方法である。
【0025】
更に、上記熱交換器を用いた加熱装置であり、又、前記加熱装置は、本体内部の上方に液槽を備え、前記熱交換器が、前記液槽の対向面に亘って設置されている液体加熱装置であることを特徴とする加熱装置である。
【0026】
又、上記液体加熱装置は、茹麺器やフライヤーとすることが出来る。
【発明の効果】
【0027】
以上のような本発明によれば、繰り返しの使用による、膨張、収縮の繰り返しによっても、熱交換器が容易に破損することを防止することが可能となり、熱交換率の低下を防止出来ると共に、熱交換器の耐用期間を長くすることが可能となった。
【0028】
又、集熱フィンの破損による補修や、内部の清掃等のメンテナンスを容易とすることが可能となった。
【0029】
又、熱交換器の製造を容易とすることが可能となると共に、製造コストを低廉化することが可能となり、更に、熱交換器を用いた加熱装置の製造を容易とすることが可能となると共に、製造コストを低廉化することが可能となった。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】本発明熱交換器一実施例部分破断斜視図
【図2】本発明熱交換器の集熱体の実施例断面図
【図3】本発明熱交換器実施例部分断面図
【図4】集熱体を構成する分割体の一実施例断面図
【図5】集熱体の一実施例斜視図
【図6】本発明熱交換器他実施例斜視図
【図7】本発明液体加熱装置一実施例斜視図
【図8】本発明液体加熱装置一実施例側面図
【図9】本発明液体加熱装置一実施例正面図
【図10】従来の熱交換器を示す正面図
【図11】従来の熱交換器を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0031】
以下、本発明の実施の形態を図を参照して説明する。本発明の熱交換器1は、夫々別個に形成された、両端が開口した筒状の熱交換管2と熱交換管2内部に固着されずに設置される集熱体3を備えて構成されている。
【0032】
熱交換管2は、図1、図6及び図8に示すように、両端が開口した筒状であり、熱交換管2の軸に対し垂直方向の断面が円形に形成された、外形が円柱状の管体であり、ステンレスを用いて形成されている。熱交換管2は、集熱体3で集められた熱を受け取り、熱交換管2の外側に存する被加熱体に伝達するための部材である。
【0033】
熱交換管2の軸方向(長手方向)の長さ、外径、厚みは、特に限定されず、熱交換管2の材質、熱交換管2が用いられる加熱装置等の機器、そこで求められる熱交換性能等に応じて、適宜選択することができるが、例えば材質がJIS SUS304である場合、長さを312mm、外径を76mm、厚みを3mmとすることが出来る。厚みは、1.5〜4mm程度が好ましく、1.5mm以下であると強度的に弱くなり、4mm以上では、熱交換率が低下するからである。
【0034】
尚、熱交換管2の形状は、軸に対し垂直方向の断面が円形に限定されず、三角形、四角形、その他の多角形としてもよく、その材質は、ステンレスに限定されず、アルミニウムやその合金等の金属を用いることとしてもよい。
【0035】
集熱体3は、アルミニウム合金を用いて形成され、図2(a)に示すように、両端が開口した筒状であり、集熱体3の軸に対し、即ち長手方向に対し垂直方向の断面が円形に形成された外形が円柱状の管体である筒状部31と、筒状部31の内壁面312から筒状部31の内方へ延設された集熱フィン32を備えて構成されている。又、集熱フィン32は筒状部31と一体成形されている。そのため、熱膨張による応力が加わっても、集熱フィン32が筒状部31から剥離、離間することがなく、集熱体3、ひいては熱交換器1の破損を防止することが出来る。尚、集熱体3の素材は、アルミニウム合金に限定されず、ステンレスや純アルミニウム等の金属を用いることとしてもよい。
【0036】
筒状部31は、筒状部31の内側、或いは加えて後述する凹部41により形成される熱交換管2と集熱体3間の空間5に流される燃焼ガス等の加熱された流体から熱を集めると共に、集熱フィン32で集められた熱を集め、集めた熱を熱交換管2に伝達するための部材であり、熱交換管2に伝達された熱は、熱交換管2の外側に存する水や油等の液体又は気体である被加熱体に伝達される。
【0037】
そして、筒状部31の軸方向(長手方向)の長さ、外径、厚みは、夫々熱交換管2の長さ以下、内径未満に形成されると共に、集熱体3の材質、集熱体3が用いられる加熱装置等の機器、そこで求められる熱交換性能等に応じて適宜選択することができるが、例えば材質がJIS A6063である場合、長さを、250mm、外径を、72.5mm、厚みを3mmとすることが出来る。厚みは、1.5〜4mm程度が好ましく、1.5mm以下であると強度的に弱くなり、4mm以上では、熱交換率が低下するからである。
【0038】
集熱体3は、溶接やその他の方法により固着されずに、熱交換管2内に挿入して設置されている。熱交換管2の内形状及び集熱体3の外形状は、熱交換管2内に集熱体3を挿脱可能であって、少なくとも、集熱体3の筒状部31内が加熱され、その結果として集熱体3が膨張した際に、或いは集熱体3及び熱交換管2が膨張した際に、集熱体3の筒状部31の外壁面313が熱交換管2の内壁面26と密接する形状に形成されている。即ち、集熱体3の膨張時に、熱交換管2と集熱体3はしまりばめの状態になるよう形成されている。
【0039】
上記一例のような材質及び寸法の熱交換管2及び集熱体3を用いて熱交換器1を構成する場合、集熱体3及び熱交換管2が加熱される前において、熱交換管2と集熱体3とがゆるみばめの状態となっている。このような構成とすることで、集熱体3の熱交換管2への挿脱が容易となる。このような場合、集熱体3が熱交換管2から不用意に脱落しないように、集熱体3を熱交換管2に保持するため、クリップ状等のストッパーを熱交換管2に設置してもよい。尚、このように加熱前に熱交換管2と集熱体3とがゆるみばめの状態として構成する場合には、熱交換管2の材質は集熱体3の材質より熱膨張係数が小さい材質で形成する。
【0040】
又、熱交換器1は、集熱体3及び熱交換管2が加熱される前において、熱交換管2と集熱体3とがしまりばめの状態で構成することとしてもよい。この場合の製造方法として、集熱体3及び熱交換管2を夫々別個に成形し、熱交換管2内部に集熱体3を圧入等により挿入し、しまりばめの状態で設置する方法を採用することが出来る。このような構成とすることで、集熱体3が熱交換管2から不用意に抜けてしまうことを防止でき、又、集熱体3の筒状部31の外壁面313が熱交換管2の内壁面26に確実に密接し、熱交換性能を高めることが出来る。
【0041】
尚、しまりばめの状態とは、熱交換管2の内壁面26と集熱体3の外壁面313との間に隙間がなく、密接し、熱交換管2の内壁面26と集熱体3の外壁面313が互いに圧力を加えている状態であり、集熱体3が集熱体3の軸に垂直方向への移動が出来ない状態であり、挿入時であればしめしろができる状態をいう。但し、熱交換管2の内形状と集熱体3の外形状が完全な相似形でない場合に生じる隙間が存在してもしまりばめの状態というものとする。又、ゆるみばめの状態とは、熱交換管2の内壁面26と集熱体3の外壁面313との間に隙間があり、密接していない状態であり、集熱体3が集熱体3の軸に垂直方向への移動が出来る状態をいう。
【0042】
尚、筒状部31の形状は、熱交換管2に挿脱可能であり、少なくとも、集熱体3の筒状部31内が加熱され、その結果として集熱体3及び熱交換管2が膨張した際に、集熱体3の筒状部31の外壁面313が熱交換管2の内壁面26と密接すれば断面が円形に限定されず、熱交換管2の内部形状に適合させて、三角形、四角形、その他の多角形としてもよい。筒状部31の外壁面313の全面が熱交換管2の内壁面26に密接させるため、筒状部31の外形状と熱交換管2の内形状の夫々の断面は相似形とすることが好ましい。
【0043】
集熱体3の長さは、熱交換管2の長さ以下に形成するが、熱交換管2の長さ未満に形成し、図6に示すように、熱交換器1の少なくとも燃焼ガス等の加熱された流体が流入する側(図では左手前側)において、熱交換管2の端部から所定の距離をおいて集熱体3を設置することが好ましい。このような構成とすることで、ガスバーナー等の熱発生器具からの集熱体3への直接的な熱の影響を低減させることが出来、集熱体3の変形や劣化を抑制することが出来る。
【0044】
集熱フィン32は、筒状部31の内側に流される燃焼ガス等の加熱された流体から熱を集め、筒状部31に伝達するための部材である。集熱フィン32は、図1及び図2(a)に示すように、筒状部31の内壁面312に、所定の間隔をおいて、筒状部31の中心方向へ直線的に突設すると共に、筒状部31の長手方向に直線的に連続して複数形成している。集熱フィン32の高さH、即ち、筒状部31と接する基部321から先端部322までの高さHは、筒状部31の内半径以下の適宜高さとすると共に、個々の集熱フィン32で同一とし、筒状部31の長手方向に亘っても同一としている。又、集熱フィン32の厚みWは、基部321の厚みW1より先端部322の厚みW2を薄く形成している。
【0045】
尚、集熱フィン32は、筒状部31の長手方向に直線的に連続して形成せずに、筒状部31の長手方向に螺旋状に形成すること、断続的に形成すること、或いはこれらの形状を適宜組み合わせて形成することも出来る。
【0046】
又、集熱フィン32は、上記形状に限定されず、図2(b)〜(g)に示すように、高さHを異ならせた形状(b)(e)、基部321から先端部322の厚みを同一とした形状(e)、集熱体3の長手方向に対して垂直方向の断面視において、一部又は全部が湾曲した形状(f)、集熱フィン32同士が入り組んだ形状(f)、一枚の集熱フィン32から補助フィン325が突出した形状(d)、集熱フィン32が筒状部31に形成された円筒状の集熱フィン326を支持する形状(d)、集熱体3の長手方向に対して垂直方向の断面視において、少なくとも一部が湾曲し、一部が筒状部31の中心方向へ直線的に延びると共に、湾曲した集熱フィン32の一部は筒状部31の内半径以上の長さとし、湾曲した一部の集熱フィン32の先端部分が他の2個の集熱フィン32間に挿入された形状(g)、或いは、軸に対し垂直方向の断面において屈折した形状(図示せず)、又はこれらを適宜組み合わせた形状等に形成してもよい。集熱フィン32を湾曲又は屈曲させることにより、集熱体3の内側の表面積を大きくすることができ、集熱効率を高めることが出来る。
【0047】
又、集熱体3は、長手方向に対して垂直方向の断面形状を、長手方向に前後したどこの断面でも同一形状となるよう形成してもよいが、異なる形状となるよう形成してもよい。一具体例として、個々の集熱フィン32の高さH又は長さは、筒状部31の長手方向に亘って同一とするのではなく、図3に示すように、燃焼ガス等の加熱された流体が流入する側(図では左側)の高さH1を低くし、奥側(図では右側)の所定位置に向かって高くするように形成することも出来る。この高さの変化は、直線状や曲線状にすることが出来、又、筒状部31の長手方向一端から他端に亘って高さの変化を設けることとしてもよい。
【0048】
このような構成とすることで、通常、燃焼ガス等の加熱された流体が流入する側から奥側、排出する側に向かって、加熱された流体の温度が低くなるが、奥側の集熱フィンの面積を大きくすることで、集熱効果を高め、熱交換器1の全長に亘って均一な熱交換を行うことが出来る。
【0049】
熱交換器1の奥側の集熱フィンの面積を大きくするために、上記構成の他、加熱された流体が流入する側より奥側に多数の集熱フィン32を形成することも出来る。
【0050】
筒状部31には、図1、図2(b)〜(g)に示すように、筒状部31の長手方向に亘って直線的に連続し、筒状部31の内方へ突出する凹部41を形成することが好ましい。この凹部41により、筒状部31の外周面には所定深さの溝状の窪みが形成されると共に、筒状部31の内周面には所定高さの凸条が形成される。この凹部41は、筒状部31に弾性を付与し、筒状部31の径を短くし、外周を縮ませることが出来る。凹部41の形成数は特に限定されず、1個〜6個程度で充分であるが、筒状部31の外壁面313と熱交換管2の内壁面26との接触面積を大きくするために、出来るだけ少なくすることが好ましく、1個〜4個程度が好ましい。又、凹部41は、筒状部31の膨張及び膨張の吸収のバランスを均一化するために、筒状部31の外周面に等間隔で設けることが好ましい。
【0051】
尚、凹部41は、筒状部31の一部を筒状部31の中心軸方向へ凹ませて形成するが、この凹部41を形成する壁面も集熱フィン32となる。この場合、凹部41を形成する集熱フィン32は、筒状部31の内側に加えて凹部41により形成される熱交換管2と集熱体3間の空間5に流される燃焼ガス等の加熱された流体からも熱を集める。尚、凹部41を形成する外側の壁面は、筒状部31の外壁面313を構成するものではない。
【0052】
凹部41の、筒状部31の軸に対し垂直方向の断面形状は、特に限定されず、図2(b)に示すような筒状部31の外周面を底辺とする三角形状、図2(c)〜(e)に示すような頂角が半円形上の筒状部31の外周面を底辺とする三角形状の他、図示はしないが、半円形状、半楕円円形状、頂角が筒状部31の外周面に接する三角形状、一部が欠けた略円形状、扇形状等適宜の形状とすることが出来る。
【0053】
このような構成により、筒状部31の径、外周形状を変形、縮小することが出来、加熱される前にしまりばめの状態である場合でも、熱交換管2への挿脱時に外周形状を縮小させることで、挿脱を容易とすることが出来る。又、筒状部31が膨張した際に、凹部41で膨張を吸収し、膨張方向をコントロール可能で、筒状部31の径の伸長、外周の拡張を防止するので、集熱体3が熱交換管2に密着したまま、膨張が可能であり、又、熱交換管2への応力を抑制し、熱交換管2の破損、熱交換器1の破損を防止することができる。
【0054】
又、凹部41を形成しない場合は、少なくとも膨張時に筒状部31の外壁面313が熱交換管2の内壁面26と充分に密着する必要があると共に、筒状部31の膨張により、筒状部31又は/及び熱交換管2が破損しない範囲で設計、形成する必要があるので、筒状部31と熱交換管2の材質が異なる場合はもとより、同じ場合であっても、夫々の厚み等構成の違いによる膨張率、膨張方向等が異なる場合があり、場合によっては、筒状部31の外壁面313が熱交換管2の内壁面26と充分に密着しないこともあるので、設計、形成が容易ではない。しかし、凹部41を形成することにより、筒状部31の膨張を吸収し、膨張方向をコントロール可能なので、設計、形成が容易であると共に、筒状部31の外壁面313が熱交換管2の内壁面26に確実に密着させることが出来る。
【0055】
更に、筒状部31の熱交換管2への挿脱が容易であって、常に筒状部31の外壁面313と熱交換管2の内壁面26とを密接させておくことが出来る。
【0056】
尚、集熱フィン32が筒状部31の長手方向に螺旋状に連続して形成されている場合、凹部41も筒状部31の長手方向に螺旋状に形成することが、製造が容易であり好ましい。
【0057】
熱交換管2及び集熱体3は、夫々に用いる材質や形状に適した製造方法により形成すればよく、例えば、熱交換管2は、平板体を湾曲させて両端同士を溶接等により固着して形成したり、押出加工、引抜加工等を用いて形成することが出来、集熱体3は、押出加工、引抜加工、柱状体を用いたワイヤ放電加工やブローチ加工等を用いて形成することが出来る。又、集熱体3の材質がアルミニウム等腐食しやすい材質である場合には、集熱体3の表面、即ち筒状部31の端面を含む外側表面並びに内側表面及び集熱フィン32の表面には、腐食防止のためアルマイト加工を施すこととしてもよい。
【0058】
集熱体3は一体成形するが、分割して形成してもよい。分割形成する場合、集熱体3の長手方向、即ち軸に対し垂直方向に分割してもよく、図2(e)、(f)及び(g)に示すように、軸に対し平行方向、即ち集熱体3の長手方向に分割してもよい。分割形成することにより、一体成形では採用が困難な、集熱フィン32を含めた集熱体3の形状、材質、加工法等の組み合わせを容易とし、熱交換率が高い、集熱体3、熱交換器1を容易且つ廉価に製造することが出来る。
【0059】
そして、特に軸に対し平行方向に分割して形成する場合、集熱体3は、図2(e)に示すように、集熱体3を構成する分割体30の他の分割体30との対向部に係止突起37を設け、分割体30同士を係止させたり、又、図2(f)及び(g)に示すように、分割体30の筒状部31部分の両端部であって、集熱体3を組み立てた際の分割体30同士の対向部に係合突起38と係合凹部39を設け、集熱体3の長手方向にスライドさせて係合凹部39に係合突起38を挿入させて分割体30同士を係合させて集熱体3を形成することが好ましい。このような構成とすることで、集熱体3の組立時に分割体30のずれ、集熱体3の分解を防止できるからであり、特に係合させることにより、その効果が高まるからである。又、分割数は特に限定されないが、多すぎると、組立て、熱交換管2への挿脱の作業が煩雑になる場合もあるので、特に軸に対し平行方向に分割する場合には、2〜4分割程度が好ましく、特に2又は3分割が好ましい。
【0060】
複数の分割体30を組み合わせて集熱体3を形成する場合、夫々の分割体30に形成される集熱フィン32の形状、成形位置を異ならせ、分割体30の形状を異なる形状としてもよいが、夫々の分割体30は同一形状とすることが好ましい。同一形状とすることで、夫々の分割体30の相対的位置関係に注意して組み立てをする必要がなく、集熱体3の組立が容易となり、又、分割体30及び集熱体3の製造も容易且つ低廉化することが出来るからである。例えば、図2(g)に示す集熱体300を3個の分割体30で形成する場合、図4に示す断面形状の分割体301を3個組み合わせて組立形成することが出来、組み立てられた集熱体3の一形態として図5に示す集熱体300が形成される。更に、この集熱体300を用いた熱交換器の一実施例として、図6に示す熱交換器1が形成される。
【0061】
上記のような熱交換器1は、熱交換を必要とする加熱装置等の各種機器に利用することが出来、加熱装置の一例として、油を加熱するフライヤーや水を加熱する茹麺器等の液体加熱装置が挙げられる。以下、熱交換器1を加熱装置に用いる実施の形態を茹麺器を例として説明する。
【0062】
茹麺器10は、図7〜図9に示すように、厨房等の床面に設置するための脚部61を備えた本体6内部の上方に、麺を茹でる水を貯留するための液槽62を備え、本体6内部であって液槽62の前面621側(図8において左側)には、液槽62の外壁面と接し、その内部に熱発生器具たるガスバーナー63が設置された燃焼室64が設けられている。詳しくは、燃焼室64は、上下開口の箱体88を上部開口部を液槽62の外壁面に密接させ、液槽62の外壁面の一部をその上部壁として構成されている。又、液槽62の背面622側(図8において右側)には、排気路65が設けられている。そして、液槽62内部には、所定数の熱交換器1が、一端を燃焼室64、他端を排気路65に接続され、液槽62の対向面、即ち前面621から背面622に亘って略水平状態で設置されている。このようにして、燃焼室64から熱交換器1、そして排気路65へと通じる流路69が形成されている。
【0063】
尚、熱交換器1の設置は、液槽62の前面621及び背面622夫々に設けられた孔66に熱交換器1の熱交換管2の端部を溶接して行うが、集熱体3は予め熱交換管2内に設置しておいてもよく、熱交換管2の液槽62への固定後に熱交換管2に挿入することとしてもよい。
【0064】
次に茹麺器10の作動について説明する。液槽62に水7を熱交換器1より高い水位まで貯留後、ガスバーナー63を点火して、燃焼室64内で高温の燃焼ガスを発生させる。この燃焼ガスの流れは、図8において矢印Rで示すように、上昇し、熱交換器1の内部に進入し、集熱体3の内部、即ち筒状部31の内側、或いは加えて凹部41により形成される熱交換管2と集熱体3間の空間5に進入して、筒状部31と集熱フィン32と接触する。そして、燃焼ガスの熱が筒状部31及び集熱フィン32に吸収され、集熱フィン32で集められた熱は、筒状部31に伝達され、更に熱交換管2に伝達される。熱交換管2に伝達された熱は、液槽62内の水7と接する熱交換管2の外面に達し、液槽62内の水7との熱交換を行い、即ち水7を加熱する。熱交換器1の内部で熱を奪われた燃焼ガスは、排気路65を通り本体6の外部へ排出される。
【0065】
そして、熱交換器1のメンテナンスのために、集熱体3を熱交換管2から抜く時、メンテナンス終了時に集熱体3を熱交換管2に挿入する際には、燃焼室64を構成する着脱或いは開閉自在な箱体88及び本体6の前面に着脱或いは開閉自在に設けられた前蓋81を取除き或いは開けて行うことが出来る。
【実施例1】
【0066】
集熱フィン32が図2(g)に示す形状であって、図4に示す分割体301を3個組み合わせて、図5に示す形状に形成し、且つ筒状部の長手方向に亘って同一断面形状の集熱体300を用いた熱交換器を2個設置した茹麺器の立上り時間と熱効率を測定した。茹麺機は、タニコー株式会社製TU−50Nを使用し、熱交換管は、SUS304を用いて内径73.3mm、外径76.3mm、長さ305mmに形成したものを使用し、集熱体はAl6063を用いて内径68.2mm、外径74.2mm、長さ250mmに形成したものを使用した。側定時の室温は5.8℃で、液槽に10.2℃の水を36リットル貯留し、純プロパンガスを使用した。
【0067】
10.2℃から98℃になるまでの立上り時間は36分で、熱効率は62%であった。又、30℃から98℃になるまでの立上り時間は19分10秒で、熱効率は66.7%であった。このように立上り時間、熱効率共に良好であった。
【産業上の利用可能性】
【0068】
本発明の熱交換器1は、熱交換を必要とする加熱装置等の各種機器に利用することが出来、特に、油を加熱するフライヤーや水を加熱する茹麺器等の液体加熱装置に好適に利用することが出来る。
【符号の説明】
【0069】
1 熱交換器
10 茹麺器
2 熱交換管
3 集熱体
30 集熱体を構成する分割体
300 集熱体
301 集熱体を構成する分割体
31 筒状部
32 集熱フィン
325 補助フィン
37 係止突起
38 係合突起
39 係合凹部
41 凹部
6 本体
62 液槽
63 ガスバーナー
64 燃焼室
65 排気路
69 流路
7 水
H 集熱フィンの高さ
W 集熱フィンの厚み
【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱交換器内部の熱を熱交換器外部の被加熱体に伝達する熱交換器であって、両端が開口した筒状の熱交換管と当該熱交換管内部に設置される集熱体を備え、前記集熱体は、筒状部と、当該筒状部と一体成形され、当該筒状部の内壁面から当該筒状部の内方へ延設された集熱フィンを備え、少なくとも、前記集熱体が加熱されて膨張した際に、前記熱交換管と前記集熱体とが、しまりばめの状態になることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記集熱体の筒状部の外周面には、前記筒状部の長手方向に亘って連続し、前記筒状部の内方へ突出する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記熱交換管と前記集熱体が加熱される前において、前記熱交換管と前記集熱体とが、しまりばめの状態であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記熱交換管と前記集熱体が加熱される前において、前記熱交換管と前記集熱体とが、ゆるみばめの状態であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記集熱体は、前記集熱体の軸に対し平行方向に分割して形成したことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記集熱体は、前記集熱体の軸に対し垂直方向に分割して形成したことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記集熱体は、同一形状の複数の分割体を組み合わせて形成したことを特徴とする請求項5又は6に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記集熱体は、前記集熱体の軸方向に対して垂直方向の断面視において、少なくとも一部が湾曲した集熱フィンを備えることを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記集熱体は、アルミニウム合金又は純アルミニウムで形成し、前記熱交換管はステンレスで形成したことを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記集熱体の表面には、アルマイト加工を施したことを特徴とする請求項9に記載の熱交換器。
【請求項11】
熱交換器内部の熱を熱交換器外部の被加熱体に伝達する熱交換器の製造方法であって、両端が開口した筒状の熱交換管を成形する一方、筒状部と、当該筒状部の内壁面から当該筒状部の内方へ延設される集熱フィンを備えた集熱体を一体成形し、前記熱交換管内部に前記集熱体を挿入し、しまりばめの状態で設置することを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項12】
前記請求項1〜10のうちいずれか1項に記載の熱交換器を用いた加熱装置。
【請求項13】
前記加熱装置は、本体内部の上方に液槽を備え、前記熱交換器が、前記液槽の対向面に亘って設置されている液体加熱装置であることを特徴とする請求項12に記載の加熱装置。
【請求項14】
前記液体加熱装置は、茹麺器であることを特徴とする請求項13に記載の加熱装置。
【請求項15】
前記液体加熱装置は、フライヤーであることを特徴とする請求項13に記載の加熱装置。
【請求項1】
熱交換器内部の熱を熱交換器外部の被加熱体に伝達する熱交換器であって、両端が開口した筒状の熱交換管と当該熱交換管内部に設置される集熱体を備え、前記集熱体は、筒状部と、当該筒状部と一体成形され、当該筒状部の内壁面から当該筒状部の内方へ延設された集熱フィンを備え、少なくとも、前記集熱体が加熱されて膨張した際に、前記熱交換管と前記集熱体とが、しまりばめの状態になることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記集熱体の筒状部の外周面には、前記筒状部の長手方向に亘って連続し、前記筒状部の内方へ突出する凹部が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記熱交換管と前記集熱体が加熱される前において、前記熱交換管と前記集熱体とが、しまりばめの状態であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記熱交換管と前記集熱体が加熱される前において、前記熱交換管と前記集熱体とが、ゆるみばめの状態であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記集熱体は、前記集熱体の軸に対し平行方向に分割して形成したことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項6】
前記集熱体は、前記集熱体の軸に対し垂直方向に分割して形成したことを特徴とする請求項1〜4のうちいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項7】
前記集熱体は、同一形状の複数の分割体を組み合わせて形成したことを特徴とする請求項5又は6に記載の熱交換器。
【請求項8】
前記集熱体は、前記集熱体の軸方向に対して垂直方向の断面視において、少なくとも一部が湾曲した集熱フィンを備えることを特徴とする請求項1〜7のうちいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項9】
前記集熱体は、アルミニウム合金又は純アルミニウムで形成し、前記熱交換管はステンレスで形成したことを特徴とする請求項1〜8のうちいずれか1項に記載の熱交換器。
【請求項10】
前記集熱体の表面には、アルマイト加工を施したことを特徴とする請求項9に記載の熱交換器。
【請求項11】
熱交換器内部の熱を熱交換器外部の被加熱体に伝達する熱交換器の製造方法であって、両端が開口した筒状の熱交換管を成形する一方、筒状部と、当該筒状部の内壁面から当該筒状部の内方へ延設される集熱フィンを備えた集熱体を一体成形し、前記熱交換管内部に前記集熱体を挿入し、しまりばめの状態で設置することを特徴とする熱交換器の製造方法。
【請求項12】
前記請求項1〜10のうちいずれか1項に記載の熱交換器を用いた加熱装置。
【請求項13】
前記加熱装置は、本体内部の上方に液槽を備え、前記熱交換器が、前記液槽の対向面に亘って設置されている液体加熱装置であることを特徴とする請求項12に記載の加熱装置。
【請求項14】
前記液体加熱装置は、茹麺器であることを特徴とする請求項13に記載の加熱装置。
【請求項15】
前記液体加熱装置は、フライヤーであることを特徴とする請求項13に記載の加熱装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2011−191049(P2011−191049A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−32374(P2011−32374)
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(592193535)タニコー株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年2月17日(2011.2.17)
【出願人】(592193535)タニコー株式会社 (46)
【Fターム(参考)】
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