熱交換器
【課題】水道環境下における高い耐食性を有しつつ、内管と外管の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供する。
【解決手段】水が流れる外管としての第1伝熱管20と、第1伝熱管20の内部に配置され、冷媒が流れる内管としての第2伝熱管30とを備え、水と冷媒との間で熱交換させる2重管タイプの熱交換器において、第1伝熱管20と第2伝熱管30の少なくとも一方を、母材がAl金属で構成されたAl金属管21、31とするとともに、水と接触する表面全域にCu金属層22、32を形成する。
【解決手段】水が流れる外管としての第1伝熱管20と、第1伝熱管20の内部に配置され、冷媒が流れる内管としての第2伝熱管30とを備え、水と冷媒との間で熱交換させる2重管タイプの熱交換器において、第1伝熱管20と第2伝熱管30の少なくとも一方を、母材がAl金属で構成されたAl金属管21、31とするとともに、水と接触する表面全域にCu金属層22、32を形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器に関するものであり、水と冷媒とを熱交換して水を加熱するヒートポンプ式給湯器に搭載される水冷媒熱交換器に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の水冷媒熱交換器として、外管の内側に内管を配置した2重管タイプの熱交換器がある(例えば、特許文献1、2参照)。そして、このような2重管タイプの熱交換器では、熱伝導性、水道環境下における耐食性確保の観点から、内管と外管の両方をCu金属で構成したものが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3922214号公報
【特許文献2】特許第4200323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、Cu金属は、材料費が高く、重量が重いため、内管と外管の両方をCu金属で構成した熱交換器は、コストが高く、重いという問題がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、内管と外管の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、水と冷媒の一方が流れる第1伝熱管(20)と、第1伝熱管(20)の内部に配置され、水と冷媒の他方が流れる第2伝熱管(30)とを備え、水と冷媒との間で熱交換させる2重管タイプの熱交換器において、第1伝熱管(20)と第2伝熱管(30)の少なくとも一方は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(21、31)であるとともに、水と接触する表面全域にCu金属層(22、32)が形成されていることを特徴としている。
【0007】
これによると、第1、第2伝熱管の少なくとも一方をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層を形成しているので、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、第1、第2伝熱管の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供できる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、第1伝熱管(20)は水が流れ、第2伝熱管(30)は冷媒が流れるものであり、第1伝熱管(20)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(21)であるとともに、水と接触する内面全域にCu金属層(22)が形成されており、第2伝熱管(30)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(31)であるとともに、水と接触する外面全域にCu金属層(32)が形成されていることを特徴としている。
【0009】
これによると、第1、第2伝熱管の両方をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層を形成しているので、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、第1、第2伝熱管の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供できる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、第1伝熱管(20)は水が流れ、第2伝熱管(30)は冷媒が流れるものであり、第1伝熱管(20)は、母材がCu金属で構成されたCu金属管(23)であり、第2伝熱管(30)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(31)であるとともに、水と接触する外面全域にCu金属層(32)が形成されていることを特徴としている。
【0011】
これによると、第2伝熱管をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層を形成しているので、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、第1、第2伝熱管の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供できる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、第1伝熱管(20)は冷媒が流れ、第2伝熱管(30)は水が流れるものであり、第1伝熱管(20)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(21)であり、第2伝熱管(30)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(31)であるとともに、水と接触する内面全域にCu金属層(32)が形成されていることを特徴としている。
【0013】
これによると、第1、第2伝熱管の両方をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層を形成しているので、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、第1、第2伝熱管の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供できる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項2、3、4に記載の発明において、第2伝熱管(30)は、内部に複数の流路を有する多穴管(31)であることを特徴としている。
【0015】
ここで、Cu金属は微細加工が困難であるため、Cu金属で多穴管を製造することが困難であったが、第2伝熱管を微細加工が容易なAl金属で構成することで、第2伝熱管として多穴管を製造することができる。これにより、第2伝熱管をCu金属で構成する場合と比較して、熱交換器の小型高性能化が可能となる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、第1伝熱管(20)および第2伝熱管(30)は、水配管および冷媒配管と接続するための継手(40)と接続されており、AlとCuの共晶温度よりも融点が低い溶加材(43)を用いて、Cu金属層(22、32)が継手(40)とろう接されていることを特徴としている。
【0017】
このように、Cu金属層を継手とろう接することで、Al金属が水に曝されるのを防止でき、高い耐食性を確保できる。また、AlとCuの共晶温度よりも融点が低い溶加材を用いることで、ろう接の際にCu金属層が溶融しないようにすることができる。
【0018】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態におけるヒートポンプ式給湯器の全体構成図である。
【図2】図1中の水冷媒熱交換器の正面図である。
【図3】図2中のIII−III線断面図である。
【図4】第1実施形態における継手40の縦断面図である。
【図5】第2実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図6】第3実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図7】第4実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図8】第5実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図9】第6実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図10】第7実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図11】第8実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図12】第9実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図13】他の実施形態における継手40の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0021】
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明に係る熱交換器をヒートポンプ式給湯器の水冷媒熱交換器に適用したものである。図1に、本実施形態におけるヒートポンプ式給湯器の全体構成図を示す。
【0022】
図1に示すように、ヒートポンプ式給湯器は、給湯水を貯留する貯湯タンク10、貯湯タンク10内の給湯水を循環する水循環通路11、および、給湯水を加熱するためのヒートポンプサイクル装置12を備えている。
【0023】
貯湯タンク10は、高温の給湯水を長時間保温することができる温水タンクである。貯湯タンク10に貯留された給湯水は、貯湯タンク10の上部に設けられた出湯口10aから出湯され、台所や風呂等に給湯される。貯湯タンク10内の下部に設けられた給水口10bから水道水が補給されるようになっている。
【0024】
水循環通路11には、給湯水を循環させる電動水ポンプ13が配置されており、給湯水は、貯湯タンク10下部の給湯水出口10c→電動水ポンプ13→水冷媒熱交換器15→貯湯タンク10上部の給湯水入口10dの順に流れる。
【0025】
ヒートポンプサイクル装置12は、電動圧縮機14、水冷媒熱交換器15、膨張弁16、蒸発器17等を順次配管接続したものであり、周知の冷凍サイクルを構成している。
【0026】
水冷媒熱交換器15は、給湯水が流れる水流路15aと、電動圧縮機14吐出後の高温高圧の冷媒が流れる冷媒流路15bとを有し、給湯水と電動圧縮機14吐出後の高温冷媒との間で熱交換させて、給湯水を加熱する加熱用熱交換器である。
【0027】
次に、本実施形態の水冷媒熱交換器15の具体的構造について説明する。図2に水冷媒熱交換器15の正面図を示し、図3に図2中のIII−III線断面図を示す。
【0028】
図2、3に示すように、水冷媒熱交換器15は、2重管タイプのものであり、具体的には、外側に配置された第1伝熱管(外管)20と、第1伝熱管20の内部に配置された第2伝熱管(内管)30とを備え、第1伝熱管20が螺旋状に巻回された構成となっている。そして、第1伝熱管20が水流路15aを構成し、第2伝熱管30が冷媒流路15bを構成しており、第1伝熱管20の内部かつ第2伝熱管30の外部を水が流れ、第2伝熱管30の内部を冷媒が流れることにより、第2伝熱管30を介して、水と冷媒とが熱交換する。
【0029】
図3に示すように、第1伝熱管20および第2伝熱管30は、ともに断面円形状の円筒管であり、第1伝熱管20の内部に、1つの第2伝熱管30が同心状に配置されている。
【0030】
第1伝熱管20は、母材がAl金属で構成されたAl金属管21であるとともに、水と接触する内面全域にCu金属層22が形成されている。第2伝熱管30は、母材がAl金属で構成されたAl金属管31であるとともに、水と接触する外面全域にCu金属層32が形成されている。
【0031】
本実施形態では、Al金属管21、31は、どちらも、Al金属のみで構成されている。なお、Al金属管21、31は、母材がAl金属で構成されていれば、母材の表面に他の金属層や酸化被膜が形成されていても良い。ちなみに、本明細書でいう母材とは重量比で半分以上を占めている主な材料を意味する。
【0032】
Cu金属層22、32は、Cu金属材料とAl金属材料との同時引抜加工または同時押出加工によって形成されたものである。なお、Cu金属層とAl金属層とが予め張り合わされたクラッド材を用いての金属加工や、メッキ法、溶射法によって、Cu金属層22、32を形成しても良い。
【0033】
このように、本実施形態では、第1伝熱管20および第2伝熱管30の両方をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層22、32を形成している。これにより、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、第1伝熱管20および第2伝熱管30の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供できる。
【0034】
また、第1伝熱管20および第2伝熱管30は、その先端側にて、水配管および冷媒配管と接続するための継手(ジョイント)40と接続されている。ここで、図4に、この継手40の縦断面図を示す。
【0035】
継手40は、Cu金属もしくは真鍮で構成され、図4に示すように、第1伝熱管20に接続される第1接続部41と、水配管と接続される第2接続部42とを備えている。第1接続部41は、円筒形状の内管41aと外管41bとが同心状に配置された2重管構造である。第1接続部41の内管41aと外管41bとの間が水流路となっており、この水流路は円筒形状の第2接続部42に連なっている。第2接続部42は、第1接続部41の内管41aと外管41bの延伸方向に交差(直交)する方向に延びている。
【0036】
第1伝熱管20および第2伝熱管30と継手40との接続状態では、第1接続部41の内部(内管41aの内側)を第2伝熱管30が貫通することにより、第2伝熱管30の先端側が継手40の外部に取り出された状態となる。また、第1伝熱管20の内側に第1接続部41が挿入された状態となる。
【0037】
そして、第1伝熱管20内面のCu金属層22が第1接続部41の外管41bとろう接され、第2伝熱管30外面のCu金属層32が第1接続部41の内管41aとろう接されることにより、第1伝熱管20および第2伝熱管30と継手40との間がシールされている。
【0038】
因みに、「ろう接」とは、例えば「接続・接合技術」(東京電機大学出版局)に記載されているように、溶加材(ろう材やはんだ)を用いて母材を接合する技術を意味する。融点が450℃以上の溶加材を用いて接合するときをろう付けと言い、その際の溶加材をろう材と呼び、融点が450℃未満の溶加材を用いて接合するときをはんだ付けと言い、その際の溶加材をはんだと呼ぶ。
【0039】
本実施形態では、ろう接に用いる溶加材43として、AlとCuとの共晶温度である548℃よりも融点が低いものを用いている。このような溶加材としては、例えば、Zn金属、Sn金属が挙げられる。ここで、Alの融点ではなく、AlとCuとの共晶温度よりも低い温度とするのは、ろう接の際の加熱によって、Al金属管21、31とCu金属層22、32との間で金属原子が拡散するためである。これにより、ろう接の際に、Cu金属層22、32が溶融しないようにすることができる。
【0040】
ところで、第1伝熱管20および第2伝熱管30と継手40との接続において、本実施形態とは異なり、第1接続部41の外管41bが第1伝熱管20の外側に位置した状態とすると、第1伝熱管20(Al金属管21)の先端面50が水に曝されてしまい、水道水に対する耐食性を確保できなくなってしまう。
【0041】
これに対して、本実施形態では、第1接続部41の外管41bが第1伝熱管20の内側に位置した状態で、第1伝熱管20内面のCu金属層22と外管41bとがろう接によって接合されている。これにより、第1伝熱管20(Al金属管21)の先端面50が水に曝されるのを防止でき、水道水に対する耐食性を確保できる。
【0042】
(第2実施形態)
図5に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図5は、図3に対応している。図5に示すように、本実施形態は、第1実施形態(図3参照)に対して、第1伝熱管20の内部に配置された第2伝熱管30の数を1つから複数(図5では2つ)に変更したものである。なお、第2伝熱管30のCu金属層31は第1実施形態と同様に製造されるものである。このため、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0043】
(第3実施形態)
図6に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図6は、図3に対応している。図6に示すように、本実施形態は、第1実施形態(図3参照)に対して、第1伝熱管20の内部に配置された第2伝熱管30のAl金属管31を微細多穴管に変更したものである。
【0044】
この微細多穴管31は、横断面が扁平形状であって、1つの管に複数の冷媒流路15bが形成されている。微細多穴管31は、Al金属材料の押出加工または引抜加工によって形成される。また、微細多穴管31の外面にはCu金属層32が形成されており、このCu金属層32は、メッキ法や溶射法によって形成されるものである。
【0045】
本実施形態によれば、第1実施形態と効果に加え、次の効果も奏する。すなわち、第2伝熱管30をAl金属で構成する場合、Al金属は微細化加工が可能なため、本実施形態のように、押出加工等による微細多穴管31の製造が可能である。ここで、伝熱管内に同じ冷媒流量を流す場合では、伝熱管内に1つの冷媒流路が形成されているときよりも、複数の冷媒流路が形成されている方が、冷媒流路の流路断面積が小さくなるので、冷媒と水との間での熱交換性能が向上する。また、複数本の伝熱管を別体で形成するよりも、1つの伝熱管で形成した方が、伝熱管全体のサイズを小さくできる。よって、第2伝熱管30を微細多穴管31で構成することで、水冷媒熱交換器15の小型高性能化が可能となる。
【0046】
(第4実施形態)
図7に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図7は、図3に対応している。図7に示すように、本実施形態は、第1実施形態(図3参照)における第1伝熱管20を、内面にCu金属層22が形成されたAl金属管21からCu金属管23に変更したものである。Cu金属管23は、母材がCu金属で構成されたものであり、ここでは、管の全部がCu金属で構成されている。第2伝熱管30は第1実施形態と同じである。
【0047】
本実施形態では、第1伝熱管20および第2伝熱管30の一方(第2伝熱管30)をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層32を形成している。これによっても、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、第1伝熱管20および第2伝熱管30の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供できる。
【0048】
(第5実施形態)
図8に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図8は、図5に対応している。図8に示すように、本実施形態は、第2実施形態(図5参照)における第1伝熱管20を、第4実施形態と同様に、内面にCu金属層22が形成されたAl金属管21からCu金属管23に変更したものである。第2伝熱管30は第2実施形態と同じである。このため、本実施形態においても、第4実施形態と同様の効果を奏する。
【0049】
(第6実施形態)
図9に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図9は、図6に対応している。図9に示すように、本実施形態は、第3実施形態(図6参照)における第1伝熱管20を、第4実施形態と同様に、内面にCu金属層22が形成されたAl金属管21からCu金属管23に変更したものである。第2伝熱管30は第3実施形態と同じである。このため、本実施形態においても、第3、第4実施形態と同様の効果を奏する。
【0050】
(第7実施形態)
図10に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図10は、図3に対応している。
【0051】
本実施形態は、第1実施形態と同様に、第1伝熱管20および第2伝熱管30が円筒管であり、第2伝熱管30が第1伝熱管20の内部に同心状に配置されているが、第1実施形態とは逆に、第1伝熱管20が冷媒流路15bを構成し、第2伝熱管30が水流路15aを構成している。このため、第1伝熱管20の内部かつ第2伝熱管30の外部を冷媒が流れ、第2伝熱管30の内部を水が流れる。
【0052】
そして、本実施形態では、第1伝熱管20は、Al金属管21のみで構成されており、Cu金属層は形成されていない。第2伝熱管30は、Al金属管31であるとともに、水と接触する内面全域にCu金属層32が形成されている。
【0053】
Cu金属層32は、Cu金属材料とAl金属材料との同時引抜加工または同時押出加工によって形成されたものである。なお、Cu金属層とAl金属層とが予め張り合わされたクラッド材を用いての金属加工や、メッキ法によって、Cu金属層32を形成しても良い。
【0054】
このように、本実施形態では、第1伝熱管20および第2伝熱管30の両方をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水が流れる第2伝熱管30における水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層32を形成している。これにより、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、第1伝熱管20および第2伝熱管30の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供できる。
【0055】
(第8実施形態)
図11に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図11は、図10に対応している。図11に示すように、本実施形態は、第7実施形態(図10参照)に対して、第1伝熱管20の内部に配置された第2伝熱管30の数を1つから複数(図11では2つ)に変更したものである。なお、第2伝熱管30のCu金属層31は第7実施形態と同様に製造されるものである。このため、本実施形態においても、第7実施形態と同様の効果を奏する。
【0056】
(第9実施形態)
図12に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図12は、図10に対応している。図12に示すように、本実施形態は、第7実施形態(図10参照)に対して、第1伝熱管20の内部に配置された第2伝熱管30のAl金属管31を第3実施形態と同様に微細多穴管に変更したものである。したがって、本実施形態においても、第3、第7実施形態と同様の効果を奏する。
【0057】
微細多穴管31は、第3実施形態と同様の形状であって、Al金属材料の押出加工または引抜加工によって形成される。また、微細多穴管31の水と接触する内面全域には、Cu金属層32が形成されており、このCu金属層32は、メッキ法等によって形成されるものである。
【0058】
(他の実施形態)
(1)第4〜第6実施形態は、第1〜第3実施形態に対して第1伝熱管(外管)20をCu金属管23に変更したものであったが、第1〜第3実施形態に対して第2伝熱管(内管)30をCu金属管に変更し、第1伝熱管(外管)20を第1〜第3実施形態と同じとする構成を採用しても良い。
【0059】
すなわち、第1伝熱管20および第2伝熱管30の一方(第1伝熱管20)をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層を形成し、他方(第2伝熱管30)をCu金属で構成しても良い。
【0060】
(2)図13に本実施形態における継手40の縦断面図を示す。図13は図4に対応している。第1実施形態では、第1伝熱管20および第2伝熱管30と継手40との間のシールをろう接によって行っていたが、図13に示すように、ろう接の代わりにOリング44を用いてシールしても良い。
【0061】
この場合においても、図13に示すように、第1接続部41の外管41bが第1伝熱管20の内側に位置した状態で、第1伝熱管20内面のCu金属層22と外管41bとをOリング43を介した密閉構造とする。これにより、第1伝熱管20(Al金属管21)の先端面50が水に曝されるのを防止でき、水道水に対する耐食性を確保できる。
【0062】
(3)上述の各実施形態では、水冷媒熱交換器15は、図2に示すように、第1伝熱管(外管)20が螺旋状に巻回されたものであったが、水冷媒熱交換器15の形状を他の形状に変更しても良い。
【0063】
(4)上述の各実施形態では、ヒートポンプ式給湯器に用いられる水冷媒熱交換器に本発明を適用したが、他の用途に用いられる水冷媒熱交換器においても、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0064】
15 水冷媒熱交換器(熱交換器)
15a 水流路
15b 冷媒流路
20 第1伝熱管(外管)
21 Al金属管(母材)
22 Cu金属層
23 Cu金属管(母材)
30 第2伝熱管(内管)
31 Al金属管(母材)
32 Cu金属層
40 継手(ジョイント)
【技術分野】
【0001】
本発明は、水と冷媒との間で熱交換を行う熱交換器に関するものであり、水と冷媒とを熱交換して水を加熱するヒートポンプ式給湯器に搭載される水冷媒熱交換器に用いて好適である。
【背景技術】
【0002】
従来の水冷媒熱交換器として、外管の内側に内管を配置した2重管タイプの熱交換器がある(例えば、特許文献1、2参照)。そして、このような2重管タイプの熱交換器では、熱伝導性、水道環境下における耐食性確保の観点から、内管と外管の両方をCu金属で構成したものが一般的である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特許第3922214号公報
【特許文献2】特許第4200323号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、Cu金属は、材料費が高く、重量が重いため、内管と外管の両方をCu金属で構成した熱交換器は、コストが高く、重いという問題がある。
【0005】
本発明は上記点に鑑みて、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、内管と外管の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、請求項1に記載の発明では、水と冷媒の一方が流れる第1伝熱管(20)と、第1伝熱管(20)の内部に配置され、水と冷媒の他方が流れる第2伝熱管(30)とを備え、水と冷媒との間で熱交換させる2重管タイプの熱交換器において、第1伝熱管(20)と第2伝熱管(30)の少なくとも一方は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(21、31)であるとともに、水と接触する表面全域にCu金属層(22、32)が形成されていることを特徴としている。
【0007】
これによると、第1、第2伝熱管の少なくとも一方をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層を形成しているので、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、第1、第2伝熱管の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供できる。
【0008】
請求項2に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、第1伝熱管(20)は水が流れ、第2伝熱管(30)は冷媒が流れるものであり、第1伝熱管(20)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(21)であるとともに、水と接触する内面全域にCu金属層(22)が形成されており、第2伝熱管(30)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(31)であるとともに、水と接触する外面全域にCu金属層(32)が形成されていることを特徴としている。
【0009】
これによると、第1、第2伝熱管の両方をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層を形成しているので、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、第1、第2伝熱管の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供できる。
【0010】
請求項3に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、第1伝熱管(20)は水が流れ、第2伝熱管(30)は冷媒が流れるものであり、第1伝熱管(20)は、母材がCu金属で構成されたCu金属管(23)であり、第2伝熱管(30)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(31)であるとともに、水と接触する外面全域にCu金属層(32)が形成されていることを特徴としている。
【0011】
これによると、第2伝熱管をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層を形成しているので、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、第1、第2伝熱管の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供できる。
【0012】
請求項4に記載の発明では、請求項1に記載の発明において、第1伝熱管(20)は冷媒が流れ、第2伝熱管(30)は水が流れるものであり、第1伝熱管(20)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(21)であり、第2伝熱管(30)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(31)であるとともに、水と接触する内面全域にCu金属層(32)が形成されていることを特徴としている。
【0013】
これによると、第1、第2伝熱管の両方をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層を形成しているので、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、第1、第2伝熱管の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供できる。
【0014】
請求項5に記載の発明では、請求項2、3、4に記載の発明において、第2伝熱管(30)は、内部に複数の流路を有する多穴管(31)であることを特徴としている。
【0015】
ここで、Cu金属は微細加工が困難であるため、Cu金属で多穴管を製造することが困難であったが、第2伝熱管を微細加工が容易なAl金属で構成することで、第2伝熱管として多穴管を製造することができる。これにより、第2伝熱管をCu金属で構成する場合と比較して、熱交換器の小型高性能化が可能となる。
【0016】
請求項6に記載の発明では、第1伝熱管(20)および第2伝熱管(30)は、水配管および冷媒配管と接続するための継手(40)と接続されており、AlとCuの共晶温度よりも融点が低い溶加材(43)を用いて、Cu金属層(22、32)が継手(40)とろう接されていることを特徴としている。
【0017】
このように、Cu金属層を継手とろう接することで、Al金属が水に曝されるのを防止でき、高い耐食性を確保できる。また、AlとCuの共晶温度よりも融点が低い溶加材を用いることで、ろう接の際にCu金属層が溶融しないようにすることができる。
【0018】
なお、この欄および特許請求の範囲で記載した各手段の括弧内の符号は、後述する実施形態に記載の具体的手段との対応関係を示すものである。
【図面の簡単な説明】
【0019】
【図1】本発明の第1実施形態におけるヒートポンプ式給湯器の全体構成図である。
【図2】図1中の水冷媒熱交換器の正面図である。
【図3】図2中のIII−III線断面図である。
【図4】第1実施形態における継手40の縦断面図である。
【図5】第2実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図6】第3実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図7】第4実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図8】第5実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図9】第6実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図10】第7実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図11】第8実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図12】第9実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図である。
【図13】他の実施形態における継手40の縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0020】
以下、本発明の実施形態について図に基づいて説明する。なお、以下の各実施形態相互において、互いに同一もしくは均等である部分には、説明の簡略化を図るべく、図中、同一符号を付してある。
【0021】
(第1実施形態)
本実施形態は、本発明に係る熱交換器をヒートポンプ式給湯器の水冷媒熱交換器に適用したものである。図1に、本実施形態におけるヒートポンプ式給湯器の全体構成図を示す。
【0022】
図1に示すように、ヒートポンプ式給湯器は、給湯水を貯留する貯湯タンク10、貯湯タンク10内の給湯水を循環する水循環通路11、および、給湯水を加熱するためのヒートポンプサイクル装置12を備えている。
【0023】
貯湯タンク10は、高温の給湯水を長時間保温することができる温水タンクである。貯湯タンク10に貯留された給湯水は、貯湯タンク10の上部に設けられた出湯口10aから出湯され、台所や風呂等に給湯される。貯湯タンク10内の下部に設けられた給水口10bから水道水が補給されるようになっている。
【0024】
水循環通路11には、給湯水を循環させる電動水ポンプ13が配置されており、給湯水は、貯湯タンク10下部の給湯水出口10c→電動水ポンプ13→水冷媒熱交換器15→貯湯タンク10上部の給湯水入口10dの順に流れる。
【0025】
ヒートポンプサイクル装置12は、電動圧縮機14、水冷媒熱交換器15、膨張弁16、蒸発器17等を順次配管接続したものであり、周知の冷凍サイクルを構成している。
【0026】
水冷媒熱交換器15は、給湯水が流れる水流路15aと、電動圧縮機14吐出後の高温高圧の冷媒が流れる冷媒流路15bとを有し、給湯水と電動圧縮機14吐出後の高温冷媒との間で熱交換させて、給湯水を加熱する加熱用熱交換器である。
【0027】
次に、本実施形態の水冷媒熱交換器15の具体的構造について説明する。図2に水冷媒熱交換器15の正面図を示し、図3に図2中のIII−III線断面図を示す。
【0028】
図2、3に示すように、水冷媒熱交換器15は、2重管タイプのものであり、具体的には、外側に配置された第1伝熱管(外管)20と、第1伝熱管20の内部に配置された第2伝熱管(内管)30とを備え、第1伝熱管20が螺旋状に巻回された構成となっている。そして、第1伝熱管20が水流路15aを構成し、第2伝熱管30が冷媒流路15bを構成しており、第1伝熱管20の内部かつ第2伝熱管30の外部を水が流れ、第2伝熱管30の内部を冷媒が流れることにより、第2伝熱管30を介して、水と冷媒とが熱交換する。
【0029】
図3に示すように、第1伝熱管20および第2伝熱管30は、ともに断面円形状の円筒管であり、第1伝熱管20の内部に、1つの第2伝熱管30が同心状に配置されている。
【0030】
第1伝熱管20は、母材がAl金属で構成されたAl金属管21であるとともに、水と接触する内面全域にCu金属層22が形成されている。第2伝熱管30は、母材がAl金属で構成されたAl金属管31であるとともに、水と接触する外面全域にCu金属層32が形成されている。
【0031】
本実施形態では、Al金属管21、31は、どちらも、Al金属のみで構成されている。なお、Al金属管21、31は、母材がAl金属で構成されていれば、母材の表面に他の金属層や酸化被膜が形成されていても良い。ちなみに、本明細書でいう母材とは重量比で半分以上を占めている主な材料を意味する。
【0032】
Cu金属層22、32は、Cu金属材料とAl金属材料との同時引抜加工または同時押出加工によって形成されたものである。なお、Cu金属層とAl金属層とが予め張り合わされたクラッド材を用いての金属加工や、メッキ法、溶射法によって、Cu金属層22、32を形成しても良い。
【0033】
このように、本実施形態では、第1伝熱管20および第2伝熱管30の両方をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層22、32を形成している。これにより、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、第1伝熱管20および第2伝熱管30の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供できる。
【0034】
また、第1伝熱管20および第2伝熱管30は、その先端側にて、水配管および冷媒配管と接続するための継手(ジョイント)40と接続されている。ここで、図4に、この継手40の縦断面図を示す。
【0035】
継手40は、Cu金属もしくは真鍮で構成され、図4に示すように、第1伝熱管20に接続される第1接続部41と、水配管と接続される第2接続部42とを備えている。第1接続部41は、円筒形状の内管41aと外管41bとが同心状に配置された2重管構造である。第1接続部41の内管41aと外管41bとの間が水流路となっており、この水流路は円筒形状の第2接続部42に連なっている。第2接続部42は、第1接続部41の内管41aと外管41bの延伸方向に交差(直交)する方向に延びている。
【0036】
第1伝熱管20および第2伝熱管30と継手40との接続状態では、第1接続部41の内部(内管41aの内側)を第2伝熱管30が貫通することにより、第2伝熱管30の先端側が継手40の外部に取り出された状態となる。また、第1伝熱管20の内側に第1接続部41が挿入された状態となる。
【0037】
そして、第1伝熱管20内面のCu金属層22が第1接続部41の外管41bとろう接され、第2伝熱管30外面のCu金属層32が第1接続部41の内管41aとろう接されることにより、第1伝熱管20および第2伝熱管30と継手40との間がシールされている。
【0038】
因みに、「ろう接」とは、例えば「接続・接合技術」(東京電機大学出版局)に記載されているように、溶加材(ろう材やはんだ)を用いて母材を接合する技術を意味する。融点が450℃以上の溶加材を用いて接合するときをろう付けと言い、その際の溶加材をろう材と呼び、融点が450℃未満の溶加材を用いて接合するときをはんだ付けと言い、その際の溶加材をはんだと呼ぶ。
【0039】
本実施形態では、ろう接に用いる溶加材43として、AlとCuとの共晶温度である548℃よりも融点が低いものを用いている。このような溶加材としては、例えば、Zn金属、Sn金属が挙げられる。ここで、Alの融点ではなく、AlとCuとの共晶温度よりも低い温度とするのは、ろう接の際の加熱によって、Al金属管21、31とCu金属層22、32との間で金属原子が拡散するためである。これにより、ろう接の際に、Cu金属層22、32が溶融しないようにすることができる。
【0040】
ところで、第1伝熱管20および第2伝熱管30と継手40との接続において、本実施形態とは異なり、第1接続部41の外管41bが第1伝熱管20の外側に位置した状態とすると、第1伝熱管20(Al金属管21)の先端面50が水に曝されてしまい、水道水に対する耐食性を確保できなくなってしまう。
【0041】
これに対して、本実施形態では、第1接続部41の外管41bが第1伝熱管20の内側に位置した状態で、第1伝熱管20内面のCu金属層22と外管41bとがろう接によって接合されている。これにより、第1伝熱管20(Al金属管21)の先端面50が水に曝されるのを防止でき、水道水に対する耐食性を確保できる。
【0042】
(第2実施形態)
図5に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図5は、図3に対応している。図5に示すように、本実施形態は、第1実施形態(図3参照)に対して、第1伝熱管20の内部に配置された第2伝熱管30の数を1つから複数(図5では2つ)に変更したものである。なお、第2伝熱管30のCu金属層31は第1実施形態と同様に製造されるものである。このため、本実施形態においても、第1実施形態と同様の効果を奏する。
【0043】
(第3実施形態)
図6に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図6は、図3に対応している。図6に示すように、本実施形態は、第1実施形態(図3参照)に対して、第1伝熱管20の内部に配置された第2伝熱管30のAl金属管31を微細多穴管に変更したものである。
【0044】
この微細多穴管31は、横断面が扁平形状であって、1つの管に複数の冷媒流路15bが形成されている。微細多穴管31は、Al金属材料の押出加工または引抜加工によって形成される。また、微細多穴管31の外面にはCu金属層32が形成されており、このCu金属層32は、メッキ法や溶射法によって形成されるものである。
【0045】
本実施形態によれば、第1実施形態と効果に加え、次の効果も奏する。すなわち、第2伝熱管30をAl金属で構成する場合、Al金属は微細化加工が可能なため、本実施形態のように、押出加工等による微細多穴管31の製造が可能である。ここで、伝熱管内に同じ冷媒流量を流す場合では、伝熱管内に1つの冷媒流路が形成されているときよりも、複数の冷媒流路が形成されている方が、冷媒流路の流路断面積が小さくなるので、冷媒と水との間での熱交換性能が向上する。また、複数本の伝熱管を別体で形成するよりも、1つの伝熱管で形成した方が、伝熱管全体のサイズを小さくできる。よって、第2伝熱管30を微細多穴管31で構成することで、水冷媒熱交換器15の小型高性能化が可能となる。
【0046】
(第4実施形態)
図7に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図7は、図3に対応している。図7に示すように、本実施形態は、第1実施形態(図3参照)における第1伝熱管20を、内面にCu金属層22が形成されたAl金属管21からCu金属管23に変更したものである。Cu金属管23は、母材がCu金属で構成されたものであり、ここでは、管の全部がCu金属で構成されている。第2伝熱管30は第1実施形態と同じである。
【0047】
本実施形態では、第1伝熱管20および第2伝熱管30の一方(第2伝熱管30)をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層32を形成している。これによっても、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、第1伝熱管20および第2伝熱管30の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供できる。
【0048】
(第5実施形態)
図8に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図8は、図5に対応している。図8に示すように、本実施形態は、第2実施形態(図5参照)における第1伝熱管20を、第4実施形態と同様に、内面にCu金属層22が形成されたAl金属管21からCu金属管23に変更したものである。第2伝熱管30は第2実施形態と同じである。このため、本実施形態においても、第4実施形態と同様の効果を奏する。
【0049】
(第6実施形態)
図9に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図9は、図6に対応している。図9に示すように、本実施形態は、第3実施形態(図6参照)における第1伝熱管20を、第4実施形態と同様に、内面にCu金属層22が形成されたAl金属管21からCu金属管23に変更したものである。第2伝熱管30は第3実施形態と同じである。このため、本実施形態においても、第3、第4実施形態と同様の効果を奏する。
【0050】
(第7実施形態)
図10に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図10は、図3に対応している。
【0051】
本実施形態は、第1実施形態と同様に、第1伝熱管20および第2伝熱管30が円筒管であり、第2伝熱管30が第1伝熱管20の内部に同心状に配置されているが、第1実施形態とは逆に、第1伝熱管20が冷媒流路15bを構成し、第2伝熱管30が水流路15aを構成している。このため、第1伝熱管20の内部かつ第2伝熱管30の外部を冷媒が流れ、第2伝熱管30の内部を水が流れる。
【0052】
そして、本実施形態では、第1伝熱管20は、Al金属管21のみで構成されており、Cu金属層は形成されていない。第2伝熱管30は、Al金属管31であるとともに、水と接触する内面全域にCu金属層32が形成されている。
【0053】
Cu金属層32は、Cu金属材料とAl金属材料との同時引抜加工または同時押出加工によって形成されたものである。なお、Cu金属層とAl金属層とが予め張り合わされたクラッド材を用いての金属加工や、メッキ法によって、Cu金属層32を形成しても良い。
【0054】
このように、本実施形態では、第1伝熱管20および第2伝熱管30の両方をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水が流れる第2伝熱管30における水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層32を形成している。これにより、水道環境下における高い耐食性を有しつつ、第1伝熱管20および第2伝熱管30の両方をCu金属のみで構成した場合と比較して、安価かつ軽量な熱交換器を提供できる。
【0055】
(第8実施形態)
図11に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図11は、図10に対応している。図11に示すように、本実施形態は、第7実施形態(図10参照)に対して、第1伝熱管20の内部に配置された第2伝熱管30の数を1つから複数(図11では2つ)に変更したものである。なお、第2伝熱管30のCu金属層31は第7実施形態と同様に製造されるものである。このため、本実施形態においても、第7実施形態と同様の効果を奏する。
【0056】
(第9実施形態)
図12に本実施形態における第1、第2伝熱管20、30の横断面図を示す。図12は、図10に対応している。図12に示すように、本実施形態は、第7実施形態(図10参照)に対して、第1伝熱管20の内部に配置された第2伝熱管30のAl金属管31を第3実施形態と同様に微細多穴管に変更したものである。したがって、本実施形態においても、第3、第7実施形態と同様の効果を奏する。
【0057】
微細多穴管31は、第3実施形態と同様の形状であって、Al金属材料の押出加工または引抜加工によって形成される。また、微細多穴管31の水と接触する内面全域には、Cu金属層32が形成されており、このCu金属層32は、メッキ法等によって形成されるものである。
【0058】
(他の実施形態)
(1)第4〜第6実施形態は、第1〜第3実施形態に対して第1伝熱管(外管)20をCu金属管23に変更したものであったが、第1〜第3実施形態に対して第2伝熱管(内管)30をCu金属管に変更し、第1伝熱管(外管)20を第1〜第3実施形態と同じとする構成を採用しても良い。
【0059】
すなわち、第1伝熱管20および第2伝熱管30の一方(第1伝熱管20)をCu金属よりも材料費が安くて軽いAl金属で構成し、水と接する表面全域に耐食性の高いCu金属層を形成し、他方(第2伝熱管30)をCu金属で構成しても良い。
【0060】
(2)図13に本実施形態における継手40の縦断面図を示す。図13は図4に対応している。第1実施形態では、第1伝熱管20および第2伝熱管30と継手40との間のシールをろう接によって行っていたが、図13に示すように、ろう接の代わりにOリング44を用いてシールしても良い。
【0061】
この場合においても、図13に示すように、第1接続部41の外管41bが第1伝熱管20の内側に位置した状態で、第1伝熱管20内面のCu金属層22と外管41bとをOリング43を介した密閉構造とする。これにより、第1伝熱管20(Al金属管21)の先端面50が水に曝されるのを防止でき、水道水に対する耐食性を確保できる。
【0062】
(3)上述の各実施形態では、水冷媒熱交換器15は、図2に示すように、第1伝熱管(外管)20が螺旋状に巻回されたものであったが、水冷媒熱交換器15の形状を他の形状に変更しても良い。
【0063】
(4)上述の各実施形態では、ヒートポンプ式給湯器に用いられる水冷媒熱交換器に本発明を適用したが、他の用途に用いられる水冷媒熱交換器においても、本発明を適用できる。
【符号の説明】
【0064】
15 水冷媒熱交換器(熱交換器)
15a 水流路
15b 冷媒流路
20 第1伝熱管(外管)
21 Al金属管(母材)
22 Cu金属層
23 Cu金属管(母材)
30 第2伝熱管(内管)
31 Al金属管(母材)
32 Cu金属層
40 継手(ジョイント)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
水と冷媒の一方が流れる第1伝熱管(20)と、
前記第1伝熱管(20)の内部に配置され、水と冷媒の他方が流れる第2伝熱管(30)とを備え、水と冷媒との間で熱交換させる2重管タイプの熱交換器において、
前記第1伝熱管(20)と前記第2伝熱管(30)の少なくとも一方は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(21、31)であるとともに、水と接触する表面全域にCu金属層(22、32)が形成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記第1伝熱管(20)は水が流れ、前記第2伝熱管(30)は冷媒が流れるものであり、
前記第1伝熱管(20)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(21)であるとともに、水と接触する内面全域にCu金属層(22)が形成されており、
前記第2伝熱管(30)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(31)であるとともに、水と接触する外面全域にCu金属層(32)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第1伝熱管(20)は水が流れ、前記第2伝熱管(30)は冷媒が流れるものであり、
前記第1伝熱管(20)は、母材がCu金属で構成されたCu金属管(23)であり、
前記第2伝熱管(30)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(31)であるとともに、水と接触する外面全域にCu金属層(32)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第1伝熱管(20)は冷媒が流れ、前記第2伝熱管(30)は水が流れるものであり、
前記第1伝熱管(20)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(21)であり、
前記第2伝熱管(30)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(31)であるとともに、水と接触する内面全域にCu金属層(32)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第2伝熱管(30)は、内部に複数の流路を有する多穴管(31)であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれが1つに記載の熱交換器。
【請求項6】
前記第1伝熱管(20)および前記第2伝熱管(30)は、水配管および冷媒配管と接続するための継手(40)と接続されており、
AlとCuの共晶温度よりも融点が低い溶加材(43)を用いて、前記Cu金属層(22、32)が前記継手(40)とろう接されていることを特徴とする請求項2または3に記載の熱交換器。
【請求項1】
水と冷媒の一方が流れる第1伝熱管(20)と、
前記第1伝熱管(20)の内部に配置され、水と冷媒の他方が流れる第2伝熱管(30)とを備え、水と冷媒との間で熱交換させる2重管タイプの熱交換器において、
前記第1伝熱管(20)と前記第2伝熱管(30)の少なくとも一方は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(21、31)であるとともに、水と接触する表面全域にCu金属層(22、32)が形成されていることを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
前記第1伝熱管(20)は水が流れ、前記第2伝熱管(30)は冷媒が流れるものであり、
前記第1伝熱管(20)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(21)であるとともに、水と接触する内面全域にCu金属層(22)が形成されており、
前記第2伝熱管(30)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(31)であるとともに、水と接触する外面全域にCu金属層(32)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項3】
前記第1伝熱管(20)は水が流れ、前記第2伝熱管(30)は冷媒が流れるものであり、
前記第1伝熱管(20)は、母材がCu金属で構成されたCu金属管(23)であり、
前記第2伝熱管(30)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(31)であるとともに、水と接触する外面全域にCu金属層(32)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項4】
前記第1伝熱管(20)は冷媒が流れ、前記第2伝熱管(30)は水が流れるものであり、
前記第1伝熱管(20)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(21)であり、
前記第2伝熱管(30)は、母材がAl金属で構成されたAl金属管(31)であるとともに、水と接触する内面全域にCu金属層(32)が形成されていることを特徴とする請求項1に記載の熱交換器。
【請求項5】
前記第2伝熱管(30)は、内部に複数の流路を有する多穴管(31)であることを特徴とする請求項2ないし4のいずれが1つに記載の熱交換器。
【請求項6】
前記第1伝熱管(20)および前記第2伝熱管(30)は、水配管および冷媒配管と接続するための継手(40)と接続されており、
AlとCuの共晶温度よりも融点が低い溶加材(43)を用いて、前記Cu金属層(22、32)が前記継手(40)とろう接されていることを特徴とする請求項2または3に記載の熱交換器。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
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【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−2422(P2012−2422A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−137229(P2010−137229)
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年6月16日(2010.6.16)
【出願人】(000004260)株式会社デンソー (27,639)
【Fターム(参考)】
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