説明

熱交換器

【課題】内管及び外管に対する応力集中を防止することで耐久信頼性の低下を抑制しつつ、エンドキャップの周方向位置決めを行うことができる熱交換器を提供すること。
【解決手段】第1流体(低圧冷媒)が流れる内管11を第2流体(高圧冷媒)が流れる外管12内に挿入し、内管11と外管12との間にフィン13を介装して第1流体と第2流体との間で熱交換を行う二重管式の熱交換器(内部熱交換器)10において、外管12の長手方向端部12bに接続され、内管11が挿通する第1開口部15と、第1開口部15と同一直線状に開放して内管11が挿通する第2開口部16と、内管11と外管12との間隙に連通して第2流体(高圧冷媒)が流れる第3開口部17と、を有するエンドキャップ14を備え、フィン13の長手方向端部13bと第1開口部15との間に、エンドキャップ14の周方向の位置決めを行う凹凸嵌め合い構造を設けた。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、内管を外管内に挿入すると共に、内管と外管との間にフィンを配置して熱交換を行う二重管式の熱交換器に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、内管と、内管が挿入された外管と、両管の間に介装されたフィンと、外管の端部に設けられ、内管が貫通すると共に内管と外管との間隙に連通する連通流路を有するエンドキャップと、を備えた二重管式の熱交換器が知られている(例えば、特許文献1,特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2010-96225号公報
【特許文献2】特開2006-3071号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来の熱交換器では、エンドキャップと内管の接触面、及び、エンドキャップと外管の接触面は、それぞれ環状をなしている。そのため、互いに周方向に回転可能となっており、エンドキャップの周方向の位置決めをすることが困難であった。しかも、内管や外管の内部を流れる第1,第2流体の圧力は高く、内管及び外管にエンドキャップを位置決めするための変形箇所を設けてしまうと、その変形箇所に応力集中が発生して耐久信頼性が損なわれてしまうという問題が生じてしまう。
【0005】
そこで、この発明は、内管及び外管に対する応力集中を防止することで耐久信頼性の低下を抑制しつつ、エンドキャップの周方向位置決めを容易に行うことができる熱交換器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、この発明は、第1流体が流れる内管を第2流体が流れる外管内に挿入し、前記内管と前記外管との間にフィンを介装して前記第1流体と前記第2流体との間で熱交換を行う二重管式の熱交換器において、前記外管の長手方向端部に接続され、前記内管が挿通する第1開口部と、前記第1開口部と同一直線状に開放して前記内管が挿通する第2開口部と、前記内管と前記外管との間隙に連通して前記第2流体が流れる第3開口部と、有するエンドキャップを備え、前記フィンの長手方向端部と前記第1開口部との間に、前記エンドキャップの周方向の位置決めを行う凹凸嵌め合い構造を設けたことを特徴としている。
【発明の効果】
【0007】
この発明によれば、外管の端部に設けられたエンドキャップの第1開口部と、内管と外管の間に介装されるフィンの長手方向端部の間に、エンドキャップの周方向の位置決めを行う凹凸嵌め合い構造が設けられる。
すなわち、凹凸嵌め合い構造によってフィンに対してエンドキャップの周方向の位置決めがなされる。ここで、フィンは、内管と外管の間に介装されているため、フィンに対してエンドキャップの位置決めが出来れば、内管及び外管に対してもエンドキャプの位置決めが自動的になされる。つまり、内管及び外管にエンドキャップの位置決めのための変形箇所を設けることなく、エンドキャップの周方向の位置決めができる。
これにより、内管及び外管に対する応力集中を防止することで耐久信頼性の低下を抑制しつつ、エンドキャップの周方向位置決めを容易に行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例1の熱交換器を内部熱交換器として適用した冷凍サイクルを示す全体システム図である。
【図2】実施例1の内部熱交換器の要部を示す分解斜視図である。
【図3】図2におけるA−A断面図である。
【図4】実施例1の内部熱交換器の長手方向端部における縦断面図である。
【図5A】実施例1における内部熱交換器の製造方法を示す説明図であり、(a)は内管形成工程を示し、(b)は外管形成工程を示し、(c)はフィン形成工程を示す。
【図5B】実施例1における内部熱交換器の製造方法を示す説明図であり、(d)は管組立工程を示し、(e)はエンドキャップ組付工程を示し、(f)はボール通し工程を示し、(g)ロー付け工程を示す。
【図6】比較例の熱交換器を示す図であり、(a)は要部拡大断面図を示し、(b)はエンドキャップを示す斜視図である。
【図7】本発明の熱交換器の他の例の要部を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明の熱交換器を実現する最良の形態を、図面に示す実施例1に基づいて説明する。
【実施例1】
【0010】
まず、構成を説明する。
図1は、実施例1の熱交換器を内部熱交換器として適用した冷凍サイクルを示す全体システム図である。図2は、実施例1の内部熱交換器の要部を示す分解斜視図である。図3は、図2におけるA−A断面図である。図4は、実施例1の内部熱交換器の長手方向端部における縦断面図である。
【0011】
実施例1における冷凍サイクルは、図1に示すように、コンプレッサ1と、コンデンサ(ガスクーラ)2と、膨張弁3と、エバポレータ4と、を順次環状に接続し、前記コンデンサ2を出た高圧冷媒と前記エバポレータ4を出た低圧冷媒との間で熱交換する内部熱交換器(熱交換器)10を備えることで構成される。
【0012】
前記コンプレッサ1は、エンジンやモータなどにより駆動され、エバポレータ4からのガス冷媒を圧縮し、高温・高圧のガス冷媒とする。
【0013】
前記コンデンサ2は、コンプレッサ1からの高温・高圧のガス冷媒を外気と熱交換し、低温・高圧のガス冷媒とする凝縮器である。このコンデンサ2としては、互いに間隔をおいて縦平行に配置された左右一対のヘッダータンクと、両端をそれぞれ前記ヘッダータンクに連通接続して横平行に多数配置された熱交換チューブと、隣接する熱交換チューブの空気流通間隙に配置されたフィンと、を備えて構成される。そして、一対のヘッダータンクの内部が、仕切り手段により横方向に仕切られることにより、熱交換チューブによる冷媒通路が、入口側通路群と中間通路群と出口側通路群というように、少なくとも2つ以上の通路群に区画されている。
【0014】
前記膨張弁3は、エンジンルーム内に設置され、コンデンサ2からの高圧ガス冷媒の圧力を低圧の液ガス混合冷媒とする。実施例1の場合、コンデンサ2の出口冷媒温度及び出口冷媒圧力に基づいて、冷媒の過熱度(スーパーヒート)を一定に保持するように膨張弁開度を制御する制御型膨張弁を採用している。
【0015】
前記エバポレータ4は、車室内空調を行う車両用空調ユニット内に、送風機等と共に配置される熱交換器である。膨張弁3からの低温・低圧の液ガス混合冷媒を循環させることで周囲の空気から熱を奪い、冷媒の温度を高め、ガス化を促進する。このため、エバポレータ4は、コア・配管・フランジまでを一体化する構造とし、これにより、Oリングシールなどのスローリークを含む車室内への冷媒漏れを防いでいる。
【0016】
前記内部熱交換器10は、コンデンサ2を出た高圧冷媒とエバポレータ4を出た低圧冷媒が、隣接して対向に流れることで熱交換する。すなわち、冷凍サイクル内で熱交換が行われ、外部の空気と熱交換しないので「内部熱交換器」と呼んでいる。この内部熱交換器10により膨張弁3の入口冷媒温度を低減し、エバポレータ4の入口エンタルピを下げることによって、COP(効率:Coefficient Of Performance)を向上させる。そして、この内部熱交換器10は、内管11と、外管12と、フィン13と、エンドキャップ14と、を備えている。
【0017】
前記内管11は、アルミ製丸管であり、エバポレータ4を出た低圧冷媒(第1流体)が内部を流れる。この内管11の外周面11aには、ろう材としてのAl-Si系合金(例えば、JIS A4343やJIS A4045等)が付着している。
【0018】
前記外管12は、間隙をあけた状態で内管11を挿入可能な内径寸法のアルミ製丸管であり、内側に挿入した内管11との間にコンデンサ2を出た高圧冷媒(第2流体)が流れる。ここで、内管11と外管12は同心軸上に配置されたいわゆる二重管構造をなす。また、この外管12の内周面12aには、ろう材としてのAl-Si系合金(例えば、JIS A4343やJIS A4045等)が付着している。
【0019】
前記フィン13は、内管11及び外管12の周方向に沿って並び、長手方向に延在する多数の凹凸13a,…を有するアルミ製の管であり、内管11と外管12の間に介装されている。すなわち、フィン13は、コンデンサ2を出た高圧冷媒(第2流体)が流れる流路内に配置され、低圧冷媒は、多数の凹凸13a,…の間を流れる。そして、図3に示すように、フィン13の多数の凹凸13a,…は、径方向先端部分が内管11の外周面11a又は外管12の内周面12aに接触する。さらに、この実施例1の内部熱交換器10のフィン13の長手方向端部13bには、複数のフィン側切欠部13c,…が形成されている。
【0020】
前記フィン側切欠部13cは、フィン13の多数の凹凸13a,…に拘らず、フィン13の長手方向端部13bを一定間隔で矩形状に切り欠くことで形成されている。なお、このフィン側切欠部13cは、フィン13の全周にわたって形成されている。
【0021】
そして、実施例1の内部熱交換器10では、内管11と外管12とフィン13のうち、内管11の長手方向寸法が最も長い長さに設定され、外管12とフィン13の長手方向寸法は同じ長さに設定されている。そのため、外管12に内管11を挿入し、その間にフィン13を介装した状態では、フィン13が外管12の内部に収納され、内管11の長手方向端部11bが外管12から外方(外管12の長手方向)に突出する。なお、フィン側切欠部13cの位置では、フィン13の長手方向端部13bが切り欠かれているため、フィン13は外管12の内側に位置することとなる。
【0022】
前記エンドキャップ14は、外管12の長手方向端部12bに設けられ、同軸上を流れるコンデンサ2を出た高圧冷媒と、エバポレータ4を出た低圧冷媒の流れ方向を分岐する。このエンドキャップ14は、第1開口部15と、第2開口部16と、第3開口部17と、を有している。
【0023】
前記第1開口部15は、内管11がわずかな間隔をあけて挿通可能な内径に設定され、外管12から突出した内管11が挿入される。そして、この第1開口部15の周縁部には、内管11と外管12の間に挿入されるインロー部18が形成されている。
【0024】
前記インロー部18は、第1開口部15に挿入された内管11を取り囲む円弧形状を呈している。このインロー部18は、外管12に挿入した際に、外側面が外管12と接触し、内管11の外周面11aとの間に僅かな間隙が生じる厚みに設定されている。すなわち、内管11と外管12の間を流れる高温高圧冷媒は、インロー部18と内管11との間を流れる。
さらに、このインロー部18は、周方向に並ぶ複数のキャップ側切欠部18a,…を有している。このキャップ側切欠部18aは、インロー部18を一定間隔で矩形状に切り欠くことで形成され、インロー部18を外管12に挿入した際に、フィン13に形成したフィン側切欠部13c,…と噛み合う。これにより、実施例1の内部熱交換器10では、フィン側切欠部13c,…とキャップ側切欠部18a,…により、エンドキャップ14の周方向の位置決めを行う凹凸嵌め合い構造が構成される。
【0025】
前記第2開口部16は、内管11が隙間なく挿通可能な内径に設定され、外管12から突出した内管11が貫通する。ここで、第1開口部15と第2開口部16は、同軸方向に開放している。
【0026】
前記第3開口部17は、内管11と外管12との間隙に連通し、コンデンサ2を出た高圧冷媒(第2流体)が流れる。ここで、第3開口部17は、第1,第2開口部15,16の開放方向に対して直交する方向に開放している。
【0027】
次に、実施例1の内部熱交換器10の製造方法について説明する。
【0028】
図5Aは、実施例1における内部熱交換器の製造方法を示す説明図であり、(a)は内管形成工程を示し、(b)は外管形成工程を示し、(c)はフィン形成工程を示す。図5Bは、実施例1における内部熱交換器の製造方法を示す説明図であり、(d)は管組立工程を示し、(e)はエンドキャップ組付工程を示し、(f)はボール通し工程を示し、(g)ロー付け工程を示す。
【0029】
内管形成工程では、図5A(a)に示すように、ろう材が付着した面を外側にした状態でアルミ平板鋼板をロール成形加工し、合わせ部分を溶着して外周面11aにろう材が付着した内管11を形成する。ここで、内管11の外径は、例えば15mmに設定する。
【0030】
外管形成工程では、図5A(b)に示すように、ろう材が付着した面を内側にした状態でアルミ平板鋼板をロール成形加工し、合わせ部分を溶着して内周面12aにろう材が付着した外管12を形成する。ここで、外管12の内径は、例えば19.6mmに設定する。
【0031】
フィン形成工程では、図5A(c)に示すように、まず、打ち抜き加工により、アルミ平板鋼板の長手方向端部に、一定間隔をおいて矩形状のフィン側切欠部13c,…を形成する。次に、フィン側切欠部13c,…が形成されたアルミ平板鋼板をプレス加工して全面に多数の凹凸13aを形成する。その後、ロール成形加工し、合わせ部分を溶着する。これにより、周方向に沿って並び、長手方向に延在する多数の凹凸13a,…を有すると共に、長手方向端部13bにフィン側切欠部13c,…を有する管状のフィン13を形成する。ここで、凹凸13aの高さは例えば1.8mmに設定し、周方向のピッチ間隔は例えば1.4mmに設定する。
【0032】
管組立工程では、図5B(d)に示すように、外管形成工程にて形成した外管12に、内管形成工程にて形成した内管11を挿入し、その後、内管11と外管12の間にフィン形成工程にて形成したフィン13を挿入する。このとき、フィン13の長手方向端部13bは外管12の長手方向端部12bと同じ位置になり、内管11の長手方向端部11bは外管12及びフィン13から外方(フィン13の長手方向)に突出する。
なお、内管11の外径を15mmに設定し、外管12の内径を19.6mmに設定した場合では、内管11と外管12との間隙は2.3mmとなる。このため、フィン13の凹凸13aの高さを1.8mmに設定すれば、このフィン13は、内管11と外管12の間に円滑に挿入することができる。
【0033】
エンドキャップ組付工程では、図5B(e)に示すように、外管12の両端部にエンドキャップ14を取り付ける。このとき、エンドキャップ14の第1開口部15の周縁部に形成されたインロー部18を外管12に挿入すると同時に、外管12から突出した内管11を第1開口部15に挿入する。ここで、フィン13のフィン側切欠部13cとインロー部18のキャップ側切欠部18aとが互いに噛み合うように、エンドキャップ14の周方向の位置を調整する。
【0034】
ボール通し工程では、図5B(f)に示すように、エンドキャップ組付工程によりエンドキャップ14が組みつけられた内管11内に、一方の長手方向端部11bから、金属ボールBを挿入し、そのまま貫通させる。この金属ボールBは、内管11の内径よりも大きい外径を有する。これにより、内管11がフィン13と共に内側から押し広げられて拡径する。このため、内管11の外周面11aは、フィン13の凹凸13aの径方向先端部分及びエンドキャップ14の第1,第2開口部15,16に密着すると共に、フィン13の凹凸13aの径方向先端部分は、外管12の内周面12aに密着する。なお、金属ボールBの外径寸法は、内管11の外径が第1,第2開口部15,16と同じ寸法になるように設定する。
【0035】
ロー付け工程では、図5B(g)に示すように、ボール通し工程により内管11と外管12とフィン13及びエンドキャップ14の接触部分が互いに密着した状態の組立品の全体を加熱し、内管11及び外管12に付着したろう材を溶融する。これにより、内管11と外管12は、それぞれフィン13と一体化するとともに、エンドキャップ14が固定される。そして、最後に内管11及びエンドキャップ14に分岐管19を取り付け、2重管式の内部熱交換器10が形成される。
【0036】
次に、作用を説明する。
まず、「比較例の熱交換器におけるエンドキャップ」の説明を行い、続いて、実施例1の熱交換器における「フィン延長作用」について説明する。
【0037】
[比較例の熱交換器におけるエンドキャップ]
図6は、比較例の熱交換器を示す図であり、(a)は要部拡大断面図を示し、(b)はエンドキャップを示す斜視図である。
【0038】
比較例の熱交換器20は、低温低圧冷媒が流れる内管21と、内管21が挿入され、この内管21との間隙に高温高圧冷媒が流れる外管22と、内管21と外管22との間に介装されるフィン23と、外管22の端部に設けられるエンドキャップ24と、を備えている。
【0039】
ここで、内管21は外管22よりも長手方向長さが長く設定されており、外管22の両端部から内管21の長手方向端部21bが突出する。そして、エンドキャップ24は、内管21が挿通する第1開口部24aと、この第1開口部24aと同一直線状に開放して内管21が挿通する第2開口部24bと、内管21と外管22との間隙に連通して高温高圧冷媒が流れる第3開口部24cと、を有している。
【0040】
さらに、このエンドキャップ24の第1開口部24aの周囲には、図6(b)に示すように、外管22に挿入される環状のインロー部25が形成されている。このインロー部25は、内管21と外管22の間に挿入され、エンドキャップ24のがたつきや冷媒漏れを防止する。なお、インロー部25は、外周面25aが外管22と接触し、内周面25bと内管21との間には間隙が生じる。このため、内管21と外管22の間を流れる高温高圧冷媒は、インロー部25と内管21との間を流れ、第3開口部24cから流出する。
【0041】
さらに、インロー部25が外管22に挿入されることで、外管22内のフィン23とインロー部25が干渉する。このとき、フィン23の長手方向端部23bとインロー部25の先端部は、互いに環状をなす円滑面になっている。そのため、互いに周方向に回転可能となっており、エンドキャップ24の周方向の位置を固定することはできなかった。これにより、内管21および外管22に対するエンドキャップ24の周方向の位置決めを行うことが困難であった。
【0042】
[エンドキャップ位置決め作用]
実施例1の内部熱交換器10では、フィン13の長手方向端部13bと第1開口部15との間に、エンドキャップ14の周方向の位置決めを行う凹凸嵌め合い構造が設けられている。すなわち、エンドキャップ14は、第1開口部15の周縁から突出して内管11と外管12の間に挿入されるインロー部18を有し、凹凸嵌め合い構造は、複数のフィン側切欠部13c,…と、このフィン側切欠部13c,…に噛み合う複数のキャップ側切欠部18a,…と、から構成されている。
【0043】
ここで、内管11と外管12の間に介装されたフィン13は、凹凸13aの径方向先端が内管11の外周面11a又は外管12の内周面12aに接触し、ろう付けによって固定されている。このため、フィン13は、内管11及び外管12に対して周方向に回転することはない。そのため、周方向に回転不能とされたフィン13のフィン側切欠部13cにキャップ側切欠部18a,…が噛み合うことで、エンドキャップ14の周方向の回転が規制され、エンドキャップ14の周方向の位置決めを容易に行うことができる。
【0044】
しかも、フィン13とエンドキャップ14を噛み合わせてエンドキャップ14の位置決めを行うため、流体圧力が作用する内管11及び外管12には、エンドキャップ位置決めのための変形箇所を設ける必要はなくなる。そのため、内管11や外管12に応力集中が発生せず、耐久信頼性の低下を抑制することができる。
【0045】
また、実施例1の内部熱交換器10では、凹凸嵌め合い構造は、フィン13の長手方向端部13bに形成された複数のフィン側切欠部13c,…と、エンドキャップ14のインロー部18に形成され、フィン側切欠部13c,…に噛み合う複数のキャップ側切欠部18a,…と、から構成されている。このため、簡易な構造によってエンドキャップ14の周方向の位置決めを行うことができる。
【0046】
次に、効果を説明する。
実施例1の熱交換器にあっては、下記に列挙する効果を得ることができる。
【0047】
(1) 第1流体(低圧冷媒)が流れる内管11を第2流体(高圧冷媒)が流れる外管12内に挿入し、前記内管11と前記外管12との間にフィン13を介装して前記第1流体(低圧冷媒)と前記第2流体(高圧冷媒)との間で熱交換を行う二重管式の熱交換器(内部熱交換器)10において、前記外管12の長手方向端部12bに接続され、前記内管11が挿通する第1開口部15と、前記第1開口部15と同一直線状に開放して前記内管11が挿通する第2開口部16と、前記内管11と前記外管12との間隙に連通して前記第2流体(高圧冷媒)が流れる第3開口部17と、を有するエンドキャップ14を備え、前記フィン13の長手方向端部13bと前記第1開口部15との間に、前記エンドキャップ14の周方向の位置決めを行う凹凸嵌め合い構造を設けた構成とした。
これにより、内管及び外管に対する応力集中を防止することで耐久信頼性の低下を抑制しつつ、エンドキャップの周方向位置決めを容易に行うことができる。
【0048】
(2) 前記エンドキャップ14は、前記第1開口部15の周縁から突出して前記内管11と前記外管12の間に挿入されるインロー部18を有し、前記凹凸嵌め合い構造は、前記フィン13の長手方向端部13bに設けられ、周方向に並ぶ複数のフィン側切欠部13c,…と、前記インロー部18に設けられ、前記フィン側切欠部13c,…に噛み合う複数のキャップ側切欠部18a,…と、から構成する。
これにより、簡易な構造によってエンドキャップ14の周方向の位置決めを行うことができる。
【0049】
以上、本発明の熱交換器を実施例1に基づき説明してきたが、具体的な構成については、この実施例に限られるものではなく、特許請求の範囲の各請求項に係る発明の要旨を逸脱しない限り、設計の変更や追加等は許容される。
【0050】
実施例1の熱交換器では、フィン13の長手方向端部13bに形成されたフィン側切欠部13c,…と、エンドキャップ14のインロー部18に形成されたキャップ側切欠部18a,…によって、凹凸噛み合い構造を構成しているが、これに限らない。
【0051】
例えば、図7に示すように、エンドキャップ14の第1開口部15の周縁から突出したインロー部30の先端30aを、フィン13の多数の凹凸13a,…の間に挿入可能になるように櫛歯状に形成してもよい。すなわち、フィン13の長手方向端部13bに矩形状の切欠を形成することなく、長手方向端部13bを外管12の長手方向端部12bと重複する位置まで延在する。一方、インロー部30の先端30aをフィン13の凹凸13aの間に合わせた大きさの櫛歯状に形成する。
【0052】
これにより、フィン13の凹凸13a,…にインロー部30の櫛歯状の先端30aが噛み合って、エンドキャップ14の周方向の回転が規制される。そのため、フィン13に切欠を形成することなくエンドキャップ14の位置決めを行うことができ、実施例1の場合と比較すると製造工程の短縮を図ることができる。さらに、フィン13に切欠を形成しない分、フィン13と内管11との接触面積が増加し、熱交換効率が向上する。
【0053】
また、実施例1では、車両のエアコンシステムに適用する冷凍サイクルにおける内部熱交換器の例を示したが、車両以外、例えば家庭用のエアコンシステムや工場や事業所のエアコンシステム等の冷凍サイクルにおける内部熱交換器としても適用できる。要するに、内管と外管と、その間に介装したフィンと、両端に設けたエンドキャップを有する二重管構造の熱交換器であれば、本発明を適用することができる。
【符号の説明】
【0054】
10 内部熱交換器(熱交換器)
11 内管
12 外管
13 フィン
13a 凹凸
13b 長手方向端部
13c フィン側切欠部
14 エンドキャップ
15 第1開口部
16 第2開口部
17 第3開口部
18 インロー部
18a キャップ側切欠部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1流体が流れる内管を第2流体が流れる外管内に挿入し、前記内管と前記外管との間にフィンを介装して前記第1流体と前記第2流体との間で熱交換を行う二重管式の熱交換器において、
前記外管の長手方向端部に接続され、前記内管が挿通する第1開口部と、前記第1開口部と同一直線状に開放して前記内管が挿通する第2開口部と、前記内管と前記外管との間隙に連通して前記第2流体が流れる第3開口部と、有するエンドキャップを備え、
前記フィンの長手方向端部と前記第1開口部との間に、前記エンドキャップの周方向の位置決めを行う凹凸嵌め合い構造を設けたことを特徴とする熱交換器。
【請求項2】
請求項1に記載された熱交換器において、
前記エンドキャップは、前記第1開口部の周縁から突出して前記内管と前記外管の間に挿入されるインロー部を有し、
前記凹凸嵌め合い構造は、前記フィンの長手方向端部に設けられ、周方向に並ぶ複数のフィン側切欠部と、前記インロー部に設けられ、前記フィン側切欠部に噛み合う複数のキャップ側切欠部と、から構成することを特徴とする熱交換器。
【請求項3】
請求項1に記載された熱交換器において、
前記フィンは、前記内管及び前記外管の周方向に沿って並び、長手方向に延在する多数の凹凸を有し、
前記エンドキャップは、前記第1開口部の周縁から突出し、前記凹凸の間に挿入可能になるように櫛歯状に形成されたインロー部を有し、
前記凹凸嵌め合い構造は、前記多数の凹凸と、櫛歯状に形成された前記インロー部と、から構成することを特徴とする熱交換器。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5A】
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【図5B】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2013−88091(P2013−88091A)
【公開日】平成25年5月13日(2013.5.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−231467(P2011−231467)
【出願日】平成23年10月21日(2011.10.21)
【出願人】(000004765)カルソニックカンセイ株式会社 (3,404)
【Fターム(参考)】