説明

熱交換装置

【課題】本発明は、容器の外周又は内周に設ける熱媒体流路を円筒状熱交換構造体により簡単に得ることを目的とする。
【解決手段】本発明による熱交換装置は、円筒状熱交換構造体(20)が、軸方向に分割して得た複数の弧状長手部材(23,23a)の軸方向に沿って所定の間隔で形成された多数の凸条部(21)又は凹条部(21a)と、各凸条部(21)又は凹条部(21a)の周方向における両端に形成されたエッジ部分(12,13)と、からなり、各凸条部(21)又は凹条部(21a)を互いに1ピッチずらせて接続することにより、螺旋状通路(25)を形成する構成である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱交換装置に関し、特に、容器の外周又は内周に設ける熱媒体流路を円筒状熱交換構造体により簡単に得るための新規な改良に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、用いられていたこの種の熱交換装置としては、例えば、特許文献1の図1のように、パイプ状でつづら状の通水路を熱交換プレートに対して取付けることにより、熱交換装置を構成しており、医薬等の分野で用いられる熱交換装置としては、図5〜図7で示される構成が一般に用いられていた。
すなわち、図5において符号1で示されるものは全体形状がカップ型をなす缶体等の有底型の容器2を有する熱交換装置であり、この容器2の外周2aにはパイプを半分に切断した断面半円状の熱媒体通路3が螺旋状に巻付けられている。
前記熱媒体通路3は、前記外周2aとの接触部に溶接による溶接部4を形成することにより、螺旋状の前記熱媒体通路3が形成され、この熱媒体通路3の上下両端には、入口5及び出口6が形成されている。
【0003】
前記容器2の底部には、被加熱試料等を出し入れするための出入口7が形成され、この出入口7から注入されて容器2内に貯蔵された試料は、熱媒体通路3を循環する熱媒体10によって熱交換され、所定の温度に維持される。
【0004】
図6において、熱交換装置1の有底型の容器2の外周2aには、空隙7を有するジャケット8が設けられ、このジャケット8の上部と下部には、出口6と入口5とが設けられている。
前記容器2の底部の出入口7からは、試料等の出し入れができ、容器2内の試料等はジャケット8内を循環する熱媒体10により熱交換できるように構成されている。
【0005】
図7に示す従来構成においては、基本的に図6の構成と同様のジャケット8を用いた構成であるが、熱媒体10の循環効率が向上するように、ジャケット8の空隙7内にジャマ板11をスパイラル状に配設した構成である。
従って、ジャケット8内の熱媒体10は、図7の点線で示されるように、スパイラル状となって容器2の外周2aを循環して熱交換することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2009−216369号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
従来の熱交換装置は、以上のように構成されていたため、次のような課題が存在していた。
すなわち、特許文献1の構成の場合、水又は媒体を案内する通路としては管状体が用いられているため、その製作及び取付けには多大の労力と困難を伴っていた。
【0008】
また、図5の従来構成においては、半円筒状の熱媒体通路を溶接部を介して容器の外周に全面的に取付けなければならず、溶接個所が多く、溶接に時間がかかり、コストアップとなっていた。
また、溶接した部分の溶接不良の発生が高く、溶接による容器(缶体)全体の歪みが大となるため、例えば、グラスライニングを施す構成の容器(缶体)には不適であった。
【0009】
また、図6の従来構成においては、ジャケット内部に熱媒体の偏流や滞留部が発生し、容器内部の流体を均一に加熱又は冷却することが困難であった。
また、容器(缶体)の外面と熱媒体の接線流速を高くすることが困難なため、熱交換効率が良好ではなかった。
【0010】
さらに、図7の構成においては、図6の構成を改善するためにジャマ板を設けた構成で、図6の構成よりも熱交換効率が改善できるが、ジャマ板をジャケットの内面に溶接等によって固定する必要があるため、コストアップとなっていた。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明による熱交換装置は、容器の外周又は内周に設けられた円筒状熱交換構造体と、前記円筒状熱交換構造体に形成され熱媒体を循環させるための螺旋状通路と、からなる熱交換装置において、前記円筒状熱交換構造体は、軸方向に分割して得た複数の弧状長手部材と、前記各弧状長手部材の軸方向に沿って所定の間隔で形成された多数の凸条部又は凹条部と、前記各凸条部又は凹条部の周方向における両端に形成されたエッジ部分と、からなり、前記各弧状長手部材の各凸条部又は凹条部を互いに1ピッチずらせて各エッジ部分を接続することにより、前記各凸条部又は凹条部は螺旋状に接続されて前記螺旋状通路を形成し、前記螺旋状通路の両端には前記熱媒体を循環させるための入口と出口が形成されている構成であり、また、前記各弧状長手部材は、半円筒状で一対よりなる構成であり、また、前記各弧状長手部材は、180°以下の弧状をなし少なくとも3個以上よりなる構成であり、また、前記各凸条部又は凹条部は、断面形状で半円、台形、矩形の何れかよりなる構成であり、また、前記弧状長手部材は、ロール転造又はプレス加工により形成されている構成であり、また、前記容器はグラスライニング製である構成である。
【発明の効果】
【0012】
本発明による熱交換装置は、以上のように構成されているため、次のような効果を得ることができる。
すなわち、容器の外周又は内周に設けられた円筒状熱交換構造体と、前記円筒状熱交換構造体に形成され熱媒体を循環させるための螺旋状通路と、からなる熱交換装置において、前記円筒状熱交換構造体は、軸方向に分割して得た複数の弧状長手部材と、前記各弧状長手部材の軸方向に沿って所定の間隔で形成された多数の凸条部又は凹条部と、前記各凸条部又は凹条部の周方向における両端に形成されたエッジ部分と、からなり、前記各弧状長手部材の各凸条部又は凹条部を互いに1ピッチずらせて各エッジ部分を接続することにより、前記各凸条部又は凹条部は螺旋状に接続されて前記螺旋状通路を形成し、前記螺旋状通路の両端には前記熱媒体を循環させるための入口と出口が形成されていることにより、螺旋状通路を簡単に得ることができる。
また、前記各弧状長手部材は、半円筒状で一対よりなることにより、二つ割りの弧状長手部材を互いに1ピッチずらせることによって螺旋状通路を得ることができる。
また、前記各弧状長手部材は、180°以下の弧状をなし少なくとも3個以上よりなることにより、螺旋状通路を得ることができる。
また、前記各凸条部又は凹条部は、断面形状で半円、台形、矩形の何れかよりなることにより、簡単に螺旋状通路を得ることができる。
また、前記弧状長手部材は、ロール転造又はプレス加工により形成されていることにより、簡単に凸条部を有する弧状長手部材を形成することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】本発明による熱交換装置の円筒状装置を示す分解斜視図である。
【図2】本発明による熱交換装置を示す正面一部断面図である。
【図3】図2の他の形態を示す正面一部断面図である。
【図4】図2の他の形態を示す断面図である。
【図5】従来の熱交換装置を示す正面一部断面図である。
【図6】従来の熱交換装置を示す正面一部断面図である。
【図7】従来の熱交換装置を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、容器の外周に設ける熱媒体流路を円筒状熱交換構造体により簡単に得るようにした熱交換装置を提供することを目的とする。
【実施例】
【0015】
以下、図面と共に本発明による熱交換装置の好適な実施の形態について説明する。
尚、従来例と同一又は同等部分には、同一符号を付して説明する。
尚、図1は軸方向に切断されて二体に形成されているが、まず、二体になる前の円筒状の状態について説明する。
図1において、符号20で示されるものは全体形状が円筒状をなし金属板をロール転造又はプレス加工により形成された円筒状熱交換構造体であり、この円筒状熱交換構造体20は、全体形状が蛇腹状に形成されていると共に、所定のピッチで輪状の凸条部21が形成されている。
【0016】
前記各凸条部21間には、この円筒状熱交換構造体20の内径に等しい輪状平坦部22A(後に弧状平坦部22となる)が形成されている。
図1に示される構成は、前述の円筒状構造体20を、円周の180°位置で軸方向に切断して二体(例えば、180°以下として二体以上、三体等も可)として一対の軸方向に沿って長手の半円筒状の弧状長手部材23,23aが形成された状態を示している。
【0017】
前記円筒状熱交換構造体20は、前述のように180°位置における切断部位24により、二体の弧状長手部材23,23aに分割され、180°位置にエッジ部分12,13が形成されている。
前述の構成において、前記弧状長手部材23の各凸条部21に対して、弧状長手部材23aの各凸条部21のピッチを1ピッチずらせて各エッジ12,13を溶接等によって接合させると、図1では右ネジ状(左ネジ状も可)に凸条部21が連続して形成され、螺旋状通路25が形成される。
【0018】
前述のように、各弧状長手部材23,23aが軸方向に沿って1ピッチずれた状態で接合された円筒状熱交換構造体20が形成されると、図1の円筒状熱交換構造体20の両端に形成されているように、軸方向に沿う両端のエッジ部分12,13が解放された状態の円筒状熱交換構造体20を得ることができる。
従って、このエッジ部分12は入口5とし、エッジ部分13は出口6として用いることができる。
【0019】
図2は、図5の従来例に対応しており、前述の円筒状熱交換構造体20を、有底型で出入口7を有する缶体等からなる容器2の外周2aに嵌着させ、前記弧状平坦部22を介してスポット溶接によるスポット溶接部32を形成することによって、円筒状熱交換構造体20は容器2の外周2aに密合し、前記凸条部21の内部が螺旋状に連続した前記螺旋状通路25となる。尚、各凸条部21が軸方向に連続して形成されていることにより、従来のような溶接を行うことなく、スポット溶接部32で気密が保たれ十分に同じ作用を得ることができる。
図2では、前記各エッジ部分12,13を溶接により接合させて形成される軸方向に沿う直線状の径方向接続面33が形成されており、前記円筒状熱交換構造体20の軸線に沿う両端に形成された一対の軸方向端面部34,35が容器2の外周2aに溶接によって接合していることにより、容器2の強度も向上する。
【0020】
前述の図2の熱交換装置1の構成において、容器2の下部に形成された出入口7から加熱又は冷却用の液体を注入した後、円筒状熱交換構造体20の入口5から熱媒体10を供給すると、熱媒体10は螺旋状通路25を経て出口6から図示しない加熱又は冷却用の熱源装置に戻り、加熱又は冷却されて再び螺旋状通路25を循環することにより、容器2内の液体と熱交換を行うことができる。尚、凸条部21又は後述の図4の凹条部21aの寸法及び形状は、熱交換する液体等の物質の物性、流速、温度差等によって決定することができる。
【0021】
図3の形態は、従来の図6及び図7の従来例に対応しており、図1及び図2と同一部分は同一符号を付しその説明は省略するものとし、異なる部分についてのみ説明する。
すなわち、図3において容器2の外周2aには凸条部21の断面形状が半円型をなす円筒状熱交換構造体20が設けられ、この円筒状熱交換構造体20の外側位置に円筒型をなすジャケット40が設けられている。
従って、図3の形態においては、ジャケット40の中に円筒状熱交換構造体20が内蔵されている。尚、容器2がグラスライニングされている場合、容器2に別の金属を溶接するとグラスライニングのガラス部分が溶接の部分加熱により破損する。このため、この図3の構成はグラスライニング製の容器2に好適と云える。
【0022】
図4の形態は、図2の他の形態を示すもので、容器2内に攪拌羽根を内設する用途に最適な構成であり、図1及び図2と同一部分には同一符号を付し、異なる部分についてのみ説明する。
すなわち、図4においては、円筒状熱交換構造体20の凹条部21aが内方へ向けて突出する構成で、この円筒状熱交換構造体20が容器2の内周2b側に設けられることにより、容器2内に内設されて螺旋状通路25が形成されている。
従って、前述の図4の形態においては、入口5から供給した熱媒体10は、容器2の内側に設けられた螺旋状通路25を介して内部で循環して出口6から外部へ出て再び循環装置(図示せず)を経て入口5に供給でき、熱交換が行われるように構成されている。
従って、前述のように攪拌機を用いる場合、内部流体の流れが乱流となり、更に熱交換が効果的に行われる。
【0023】
従って、前述の構成をまとめると、次の通りである。
すなわち、容器2の外周又は内周に設けられた円筒状熱交換構造体20と、前記円筒状熱交換構造体20に形成され熱媒体10を循環させるための螺旋状通路25と、からなる熱交換装置において、
前記円筒状熱交換構造体20は、軸方向に分割して得た複数の弧状長手部材23,23aと、前記各弧状長手部材23,23aの軸方向に沿って所定の間隔で形成された多数の凸条部21又は凹条部21aと、前記各凸条部21又は凹条部21aの周方向における両端に形成されたエッジ部分12,13と、からなり、
前記各弧状長手部材23,23aの各凸条部21又は凹条部21aを互いに1ピッチずらせて各エッジ部分12,13を接続することにより、前記各凸条部21又は凹条部21aは螺旋状に接続されて前記螺旋状通路25を形成し、前記螺旋状通路25の両端には前記熱媒体10を循環させるための入口5と出口6が形成されている熱交換装置であり、また、前記各弧状長手部材23,23aは、半円筒状で一対よりなる熱交換装置であり、また、前記各弧状長手部材23,23aは、180°以下の弧状をなし少なくとも3個以上よりなる熱交換装置であり、また、前記各凸条部21又は凹条部21aは、断面形状で半円、台形、矩形の何れかよりなる熱交換装置であり、また、前記弧状長手部材23,23aは、ロール転造又はプレス加工により形成されている熱交換装置であり、また、前記容器2はグラスライニング製である熱交換装置である。
【産業上の利用可能性】
【0024】
本発明による熱交換装置は、医薬、工業薬品、電子材料等の分野における各種化学装置、機器内部に攪拌羽根を設けた攪拌機及び熱交換器等に適用できる。
【符号の説明】
【0025】
1 熱交換装置
2 容器(缶体)
2a 外周
2b 内周
5 入口
6 出口
7 出入口
12,13 エッジ部分
20 円筒状熱交換構造体
21 凸条部
21a 凹条部
22 弧状平坦部
23 弧状長手部材
23a 弧状長手部材
24 切断部位
25 螺旋状通路
32 スポット溶接部
33 径方向接続面
34、35 軸方向端面部
10 熱媒体

【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器(2)の外周又は内周に設けられた円筒状熱交換構造体(20)と、前記円筒状熱交換構造体(20)に形成され熱媒体(10)を循環させるための螺旋状通路(25)と、からなる熱交換装置において、
前記円筒状熱交換構造体(20)は、軸方向に分割して得た複数の弧状長手部材(23,23a)と、前記各弧状長手部材(23,23a)の軸方向に沿って所定の間隔で形成された多数の凸条部(21)又は凹条部(21a)と、前記各凸条部(21)又は凹条部(21a)の周方向における両端に形成されたエッジ部分(12,13)と、からなり、
前記各弧状長手部材(23,23a)の各凸条部(21)又は凹条部(21a)を互いに1ピッチずらせて各エッジ部分(12,13)を接続することにより、前記各凸条部(21)又は凹条部(21a)は螺旋状に接続されて前記螺旋状通路(25)を形成し、前記螺旋状通路(25)の両端には前記熱媒体(10)を循環させるための入口(5)と出口(6)が形成されていることを特徴とする熱交換装置。
【請求項2】
前記各弧状長手部材(23,23a)は、半円筒状で一対よりなることを特徴とする請求項1記載の熱交換装置。
【請求項3】
前記各弧状長手部材(23,23a)は、180°以下の弧状をなし少なくとも3個以上よりなることを特徴とする請求項1記載の熱交換装置。
【請求項4】
前記各凸条部(21)又は凹条部(21a)は、断面形状で半円、台形、矩形の何れかよりなることを特徴とする請求項1ないし3の何れかに記載の熱交換装置。
【請求項5】
前記弧状長手部材(23,23a)は、ロール転造又はプレス加工により形成されていることを特徴とする請求項1ないし4の何れかに記載の熱交換装置。
【請求項6】
前記容器(2)はグラスライニング製であることを特徴とする請求項1ないし5の何れかに記載の熱交換装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate