熱伝導率算出方法および熱伝導率算出システム
【課題】簡易な構成により未知の熱伝導率を精度良く得る技術を提供する。
【解決手段】測定対象の熱伝導率の仮の値を変化させてシミュレーションした結果と、実測結果とから、測定対象の熱伝導率を算出する。このとき実測環境をシンプルなものとし、シミュレーションでその環境を再現しやすくする。シンプルな実測環境として、対流、放射の影響を抑え、伝導のみが支配的なものとする。また、温度差を用いることにより、シミュレーション時に設定する境界条件の誤差をキャンセルし、シミュレーションの精度をさらに高める。
【解決手段】測定対象の熱伝導率の仮の値を変化させてシミュレーションした結果と、実測結果とから、測定対象の熱伝導率を算出する。このとき実測環境をシンプルなものとし、シミュレーションでその環境を再現しやすくする。シンプルな実測環境として、対流、放射の影響を抑え、伝導のみが支配的なものとする。また、温度差を用いることにより、シミュレーション時に設定する境界条件の誤差をキャンセルし、シミュレーションの精度をさらに高める。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の未知の熱伝導率を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気製品や電子機器の複雑化、小型化に伴い、構成部品の放熱等を考慮した熱設計が重要になっている。製品内部の気流や熱などの熱流体現象を解析するにあたり、個々の構成部品の正確な熱物性値を得ることは非常に重要である。熱物性値の中でも、特に、温度に寄与する熱伝導率の把握は重要視されている。
【0003】
一般に、物体の熱伝導率を測定するためには、断熱体で覆ったヒータ、熱伝導率を測定する対象の物体(測定サンプル)、および熱伝導率が既知の物体(既知サンプル)、を重ね、それぞれの間に熱電対を取り付け、熱電対の出力を用いて算出する手法が用いられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところが、この手法を実現する装置は非常に高価である。例えば、0.01〜50W/mK程度の熱伝導率が低い物体の測定では、この手法の中でも熱線プローブ法やホットディスク法が用いられる。これを実現する装置の価格は約数百万円である。また、400W/mK以上といった熱伝導率の高い物体の測定ではレーザーフラッシュ法が用いられる。これを実現する装置の価格は数千万円である。
【0005】
熱設計では、物体の一部に発熱体(ヒータ)を取り付けて加熱した場合の物体内の熱分布を計算する熱流体解析ソフトウェアが利用されている。良く知られているものに、例えば、FLUENT(登録商標)やCFdesign(登録商標)などがある。これらの熱流体解析ソフトウェアに、ヒータ電力、ケース外空気などの境界条件と、物体の熱物性値(熱伝導率、放射率、密度など)とを入力し、シミュレーションを行うことで、物体の熱分布、すなわち、物体各部の温度を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−21512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実測した物体の温度と、熱流体解析ソフトウェアによるシミュレーション結果とのフィッティングにより、熱伝導率等の物性値を、高価な測定装置を使用することなく求めることが考えられるが、求められる物性値の信頼性を向上させることは困難であった。その原因は、精度よく物体の温度を測定できたとしても、熱流体解析ソフトウェアで用いる境界条件などを正確に入力することが困難であり、測定状態を精度よく再現してシミュレーションすることが難しいためであると考えられる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、簡易な構成により未知の熱伝導率を精度良く得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、測定対象の熱伝導率の仮の値を変化させてシミュレーションして得た温度と、実測温度とから、測定対象の熱伝導率を決定する。このとき、実測環境をシンプルなものとし、シミュレーションでその環境を再現しやすくし、実測温度とシミュレーションにより得た温度との整合性を高める。
【0010】
具体的には、測定サンプルの熱伝導率を算出する熱伝導率算出方法であって、前記測定サンプルに熱を供給する発熱体に投入する電力を決定する投入電力決定ステップと、前記発熱体に前記投入電力を投入して発熱させた際の前記測定サンプルの温度を、予め定めた測定点において測定し、実測温度を得る温度測定ステップと、予め定められた複数の熱伝導率設定値それぞれに対応する前記測定サンプルの温度を推定温度として算出する温度推定ステップと、前記複数の熱伝導率設定値毎の前記推定温度から熱伝導率と推定温度とを関連付ける近似関数を決定する近似関数算出ステップと、前記近似関数上で、前記実測温度を用い、当該測定サンプルの熱伝導率を算出する熱伝導率算出ステップと、を備えることを特徴とする熱伝導率算出方法を提供する。
【0011】
また、測定サンプルの未知の熱伝導率を算出する熱伝導率算出システムであって、前記測定サンプルに熱を供給する発熱体に投入する投入電力を決定する投入電力決定手段と前記発熱体に前記電力を投入して発熱させた際の前記測定サンプルの温度を、予め定めた測定点において測定し、実測温度を得る温度測定手段と、予め定められた複数の熱伝導率設定値それぞれに対応する前記測定サンプルの温度を推定温度として算出する温度推定手段と、前記複数の熱伝導率設定値毎の前記推定温度から熱伝導率と推定温度とを関連付ける近似関数を決定する近似関数算出手段と、前記近似関数上で、前記実測温度を用い、当該測定サンプルの熱伝導率を算出する熱伝導率算出手段と、を備えることを特徴とする熱伝導率算出システムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成により未知の熱伝導率を精度良く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一の実施形態の熱伝導率算出システムの構成図である。
【図2】第一の実施形態の温度測定装置を説明するための説明図である。
【図3】第一の実施形態の熱伝導率算出装置の機能ブロック図である。
【図4】第一の実施形態の熱伝導率算出処理のフローチャートである。
【図5】第一の実施形態の投入電力決定処理のフローチャートである。
【図6】(a)は第一の実施形態の測定点の位置を説明するための説明図であり、(b)は第一の実施形態の投入電力決定処理の測定結果を説明するための説明図である。
【図7】第一の実施形態の熱流体解析処理のフローチャートである。
【図8】第一の実施形態の熱流体解析結果のグラフである。
【図9】第二の実施形態の温度測定点を説明するための説明図である。
【図10】第二の実施形態の熱流体解析処理のフローチャートである。
【図11】第二の実施形態の熱流体解析結果のグラフである。
【図12】第三の実施形態の熱流体解析結果に近似関数作成のための処理を施した後のグラフである。
【図13】実施例1のグラフである。
【図14】実施例2のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用する第一の実施形態について説明する。本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
本実施形態の熱伝導率算出システムでは、実測値と熱流体解析ソフトウェアによるシミュレーション結果とから、測定対象物体(測定サンプル)の所望の熱伝導率を求める。なお、測定サンプルは、導電体、絶縁体などとする。
【0016】
従来、熱流体解析ソフトウェアでのシミュレーション値と実測値との整合性は低いことが知られている。これは、前述のように境界条件の入力が難しく、それに影響を受ける対流、放射の影響を再現することが難しいためである。さらに、演算されるパラメータの中で、対流・放射のパラメータは、オペレーションで設定したメッシュサイズにより変化する。その結果、対流・放射の影響が大きい環境では、最終的に見積もられる温度結果がメッシュサイズにより異なるという、メッシュサイズによる算出誤差も発生する。なお、メッシュサイズを細かくすると精度は高まるが、計算時間とのトレードオフ関係にあるため、極端に細かくすることは現実的ではない。また、ある一定のメッシュサイズでは、発熱量が大きくなるとともに対流と反射とが促進されるため、対流・放射のパラメータが算出結果に及ぼす影響が大きくなり、精度は悪化する。換言すると、適切なメッシュサイズであれば、発熱量が小さいほど実測との差異は小さくできる。熱伝導率推定において、熱流体解析結果と実測の差異は小さい方が望ましい。従って、精度を高めるような最小の発熱量で実測と熱流体解析を実施すればよい。そこで、本実施形態では、最小の発熱量で熱流体解析ソフトウェアを用いたシミュレーションを行い、求めたシミュレーション結果と実測値とから熱伝導率を精度よく求める。
【0017】
具体的には、後述する図4の投入電力決定処理において、熱伝導率算出にあたり、熱移動のうち、対流・放射の影響が少なく伝導が支配的となる条件を実現するものとして、測定サンプル上で温度差が生じる発熱量の中で最小の発熱量を実現する投入電力を決定する。求めた条件で、実測およびシミュレーション(熱流体解析処理)をそれぞれ行い、実測値に一致するシミュレーション条件を測定対象の熱伝導率とする。
【0018】
まず、本実施形態の熱伝導率算出システム全体の構成について説明する。図1は、本実施形態の熱伝導率算出システム100の構成図である。本図に示すように、本実施形態の熱伝導率算出システム100は、温度測定装置110と熱伝導率算出装置120とを備える。温度測定装置110は、熱伝導率算出装置120からの指示に従って、測定サンプルの表面温度を測定する。熱伝導率算出装置120は、温度測定装置110による測定結果と予め保持する熱流体解析ソフトウェアを用いたシミュレーション結果とから、熱伝導率を算出する熱伝導率算出処理を行う。
【0019】
図2は、本実施形態の温度測定装置110を説明するための図である。本図に示すように、温度測定装置110は、内部に測定サンプル111を設置する樹脂ケース112と、測定サンプル111を熱するヒータ113と、測定サンプル111に接触させてその温度を測定する熱電対114と、非接触でその放射エネルギー量を検知することで測定サンプル111表面の温度を測定する放射温度計115と、を備える。
【0020】
ここで、放射温度計115は、測定サンプル111と対向して少なくとも1つ以上設置される。設置場所は、ヒータ113などの発熱体からの放射エネルギーの影響を受けない部分に設置することが好ましい。具体的には、例えば、ヒートシンクを測定する場合には熱源から離れたフィン部を測定する。
【0021】
本実施形態の温度測定装置110は、熱伝導率算出装置120から指示された電力をヒータ113に投入し、熱伝導率算出装置120で指示された測定点の温度を熱電対114および/または放射温度計115で計測し、熱伝導率算出装置120に出力する。
【0022】
ヒータ113は、熱伝導グリスやシートなどのTIM(Thermal Interface Material)を介して測定サンプル111に取り付けられる。
【0023】
また、熱電対114は、少なくとも、予め定められた測定サンプル111上の温度を測定する測定点に設置される。
【0024】
放射温度計115は、少なくとも、熱電対114による各測定点の近傍に設置される。放射温度計115は、熱流体解析ソフトウェアでシミュレーションを行う際のパラメータとしての放射率を求めるために用いる。熱電対114や熱電対114を固定するテープなどは、放射温度計115による温度計測の誤差要因となるため、測定箇所は、測定サンプル111の表面であって、これらを含まない領域とする。従って、放射温度計115は、その測定範囲をレーザポインタで認識できる構成が望ましい。
【0025】
樹脂ケース112は、温度測定時に外乱の影響を受けないように設けられる。用いる樹脂には、熱伝導率が低い絶縁部材、例えば、アクリルやポリカーボネートなどが選択される。なお、樹脂ケース112の大きさは、対流と放射との影響を小さくするために測定の際の発熱により樹脂ケース112内の空気温度が大きく上昇しない程度とする。
【0026】
図3は、本実施形態の熱伝導率算出装置120の機能ブロック図である。本図に示すように、本実施形態の熱伝導率算出装置120は、実測した温度と熱流体解析実測値と熱流体解析ソフトウェアによるシミュレーション値とから熱伝導率を求める。これを実現するため、熱伝導率算出装置120は、ヒータ113を所望の発熱量で発熱させるためにヒータ113に投入する投入電力を決定する投入電力決定部210と、温度測定装置110を動作させて測定サンプル111の所定の温度測定点の温度を計測するとともにシミュレーションに必要なパラメータを算出するパラメータ決定部220と、予め用意される熱伝導率の仮設定値毎に熱流体解析ソフトウェアを用いてシミュレーションを行い、温度測定点の温度を推定する熱流体解析を行う熱流体解析部230と、熱流体解析結果から熱伝導率と温度との関係を特定する近似関数を作成する近似関数作成部240と、近似関数から熱伝導率を算出する熱伝導率算出部250と、温度測定装置110から測定値を受け取り保持する測定値保持部310と、シミュレーションの際に用いる測定対象の未知の熱伝導率の仮設定値を保持する仮設定値保持部320と、を備える。ここでは、仮設定値保持部320には、熱伝導率の仮設定値(熱伝導率設定値)として、予め入力された複数の異なる値が、それぞれ一意に特定可能な識別情報とともに保持される。
【0027】
熱伝導率算出装置120は、例えば、CPUとメモリと記憶装置とを備える汎用の情報処理装置で構成される。投入電力決定部210とパラメータ決定部220と熱流体解析部230と近似関数作成部240と熱伝導率算出部250とは、記憶装置に格納されるプログラムをCPUがメモリにロードして実行することにより実現される。また、測定値保持部310と仮設定値保持部320とは、記憶装置に構成される。なお、熱伝導率算出システム100による熱伝導率算出処理の途中に生成される各種の中間データも、記憶装置に記憶される。
【0028】
本実施形態の熱伝導率算出システム100による熱伝導率算出処理の流れを説明する。図4は、本実施形態の熱伝導率算出処理の処理フローである。
【0029】
ユーザから開始の指示を受け付けると、まず、投入電力決定部210が、測定サンプル111の温度を測定する際のヒータ113への投入電力を決定する投入電力決定処理を行う(ステップS1101)。これにより、上述したように対流・放射の影響の少ない、伝導が支配的となるヒータ発熱量を実現する投入電力を求める。また、このヒータ発熱量は、後述する熱流体解析に用いる。
【0030】
次に、パラメータ決定部220は、温度測定装置110に、ステップS1101で決定した投入電力をヒータ113に投入させ、熱電対114により、測定サンプル111の予め定められた測定点(温度測定点)の温度を測定させる(ステップS1102)。次に、放射温度計115で測定した測定点の温度が熱電対114で測定した温度と同じになるように、放射温度計に入力する放射率を変化させることにより、温度測定点の放射率を求める(ステップS1103)。本実施形態では、温度測定点は1点とする。温度測定点は、発熱源であるヒータ113の近傍とする。発熱源近傍は、対流や放射の影響が少なく、シミュレーションでその環境を再現しやすいためである。なお、パラメータ決定部220は、測定した温度を測定点に対応づけて測定値保持部310に記憶する。また、算出した放射率、ステップS1101で決定した投入電力(発熱量)も測定値保持部310に記憶する。
【0031】
次に、熱流体解析部230は、予め記憶装置に保持する熱流体解析ソフトウェアを用いて熱流体解析処理を行う(ステップS1104)。このとき、入力パラメータのうち、発熱量、放射率については、測定値保持部310に保持するデータを、熱伝導率については、仮設定値保持部320に保持する複数の熱伝導率設定値を用いる。
【0032】
次に、近似関数作成部240は、熱流体解析結果を用い、熱伝導率と温度との関係を示す関数の近似式を決定し、近似関数を生成する(近似関数生成処理:ステップS1105)。そして、熱伝導率算出部250は、近似関数にステップS1102で実測した温度を代入することにより、測定サンプル111の熱伝導率を求め(ステップS1106)、処理を終了する。
【0033】
以下、各処理の詳細について説明する。
【0034】
まず、ステップS1101の、投入電力決定部210による投入電力決定処理を説明する。投入電力決定部210は、温度測定装置110を用いて温度を実測しながら投入電力を決定する。
【0035】
前述したように、熱流体解析ソフトウェアを用いて算出する温度(推定温度)の精度を向上させることは難しい。これは、熱流体解析では伝導、対流、放射といった、複数の異なる形態の熱移動を扱い、現象が複雑になっていることが一因である。これらの熱移動の要因の中で、1の要因が支配的となるような環境において実測を行うことにより、モデル化する環境を単純化し、シミュレーションでその環境を再現しやすいものとする。
【0036】
本実施形態では、対流や放射の影響が少なく、伝導が支配的となる環境下で実測を行う。このような環境は、できるだけヒータ113の発熱量を小さくし、かつ、測定サンプル111上の2つの測定点間には測定可能な程度の温度差が生じるようにすることで実現できる。ヒータ113の発熱量を小さくすることにより、測定サンプル111において対流と放射との影響を少なくできるためである。また、測定点間に測定可能な温度差が生じるようにすることで、測定サンプル111における伝導の影響を確認できる。本実施形態では、測定サンプル111の2つの測定点間の温度差が所定以下(例えば、10℃以下)となる投入電力を求める。適切な温度差は測定サンプル111の大きさ、素材等によって異なり、例えば、100mm角1mm厚の銅平板では、2℃である。
【0037】
なお、投入電力決定処理の測定点は、少なくとも2点を設定する。一方の測定点(第一の測定点)は、ヒータ113近傍の位置に、他方の測定点(第二の測定点)は、第一の測定点から、熱伝導による等軸上で出来うる限り距離をおいて設置する。これは、温度差がない(2点間の温度差が0℃となる)場合、熱伝導率算出の計算が発散し、解が求められないためである。なお、測定点を3点以上設定する場合は、両端の2点について、この条件を満たすよう設定し、残りの点については、その間に等間隔に設定する。
【0038】
また、測定は、常温・常圧下で行い、ヒータ113の電力を投入後、測定サンプル111と樹脂ケース112内の空気温度とが定常状態に達してから行う。
【0039】
図5は、本実施形態の投入電力決定処理の処理フローである。ここでは、測定点として2点設定する場合を例にあげて説明する。また、初期電力(PW0)と、投入する電力(PW)の変化量(ΔPW)と、温度差の有無の判定に用いる閾値ΔT0と、は予め定められ、記憶装置に保持される。
【0040】
まず、投入電力決定部210は、ヒータ113に投入する電力(PW)として初期電力(PW0)を設定し、当該電力を投入するよう温度測定装置110に指示を出す(ステップS1201)。それを受けて、温度測定装置110では、投入電力(PW)に初期電力(PW0)を設定し、測定サンプル111を熱する(ステップS1202)。そして、温度測定装置110では、設定した測定点2点の温度を測定する(ステップS1203)。測定点は、上記条件に従って設定される。また、温度の測定は、熱電対114による接触法、放射温度計115による非接触法のいずれであってもよい。また、この他の手法を用いてもよい。
【0041】
温度測定装置110から測定結果を受け取ると、投入電力決定部210は、2点の測定結果間に所定の温度差(ΔT0)が発生したか否かを判別する(ステップS1204)。ここでは、両測定点間の温度差ΔTが閾値ΔT0以上の場合、温度差が発生したと判別する。温度差が発生したと判別された場合、その時点で設定されている電力(PW)を、投入電力と決定する(ステップS1205)。なお、ヒータ113は温度によって内部抵抗が変動するため、時間の経過に伴い、滑らかに消費電力は下がる。従って、後述する熱流体解析処理に用いる発熱量は、ヒータ113の消費電力が十分低下した後の最終電力値を用いる。
【0042】
一方、ステップS1204において、両測定点間に温度差が発生していないと判別された場合、電力PWを、予め定めた変化量(ΔPW)増加させ(ステップS1206)、ステップS1202に戻る。
【0043】
以上の手順で投入電力を決定する具体例を図6に示す。図6(a)は、測定点の位置を説明するための図である。ここでは、測定サンプル111が、100mm角1mm厚の銅平板で、測定点11(第一の測定点)が、ヒータ113が設置される端部から20mmの位置に設置され、測定点12(第二の測定点)が、同端部から80mmの位置に設置される。初期電力PW0は0.5W、変化量ΔPWは0.5W、温度差の有無の判定に用いる閾値ΔT0は2℃とする。
【0044】
図6(b)は、投入電力決定処理実行中の温度測定結果を示す。本図に示す結果から、上記条件では、電力PWを、0.5Wから0.5W刻みで上昇させると、2Wの時点で測定点11と測定点12との温度差ΔTが閾値である2℃に達する。従って、この場合、投入電力を、2Wと決定する。
【0045】
次に、上記熱伝導率算出処理のステップS1104の熱流体解析部230による熱流体解析処理を説明する。図7は、熱流体解析処理の処理フローである。
【0046】
ここでは、市販の熱流体解析ソフト(例えば、FLUENT(登録商標)、CFdesign(登録商標))などを用いて行う。また、仮設定値保持部320には、熱伝導率設定値として、文献値・公表値などを参考に決定する概略値と、当該概略値を基準に、その±30%、±60%等正負同じ幅で変化させた、少なくとも3つ、好ましくは5つ以上の異なる値を保持する。ここでは、N個(Nは3以上の自然数)の異なる熱伝導率設定値が、1からNまでの番号に対応づけて保持されているものとする。なお、熱伝導率の変化に対し温度変化が大きくなる領域(凡そ100[W/(m・K)]以下)では、さらに保持する熱伝導率の値を追加してもよい。
【0047】
熱流体解析処理開始の指示を受け付けると、熱流体解析部230は、まず、カウンタnを1とする(ステップS1301)。熱流体解析に必要なヒータ113、TIM、測定サンプル111、樹脂ケース112、樹脂ケース112内空気、樹脂ケース112外空気を3次元CADによりモデリングし、解析モデルを生成する(ステップS1302)。
【0048】
この際、解析結果と実測温度との差異が大きくならない程度に、測定した状態を再現しておく。これは、実際の温度測定環境とシミュレーションに用いる環境とを一致させることを意味する。具体的な手順としては、まず、実際の温度測定において、外乱の影響を受けないように、測定サンプル111を樹脂ケース112に入れて測定する。ここで、外乱としては、空気の対流や他の熱源からの放射が挙げられる。そして、シミュレーションでも、モデリングや条件設定を行って、その算出時に用いる環境として上記実測環境を再現する。
【0049】
次に、解析前処理を行う(ステップS1303)。解析前処理として、ここでは、解析モデルで特定される解析空間を分割するメッシュを生成し、熱流体解析ソフトウェアに設定する。また、樹脂ケース112外の空気温度、ステップS1101で算出したヒータ113の発熱量等の境界条件と、ステップS1103で算出した放射率、密度など、熱伝導率以外の熱伝導率とを熱流体解析ソフトに設定する。密度等は、予め入力し、記憶装置に保持しておく。
【0050】
次に、熱伝導率を熱流体解析ソフトウェアの熱伝導率に設定する(ステップS1304)。ここでは、仮設定値保持部320に保持されている、n番目の熱伝導率設定値を設定する。
【0051】
そして、熱流体解析ソフトを用い、温度測定点の温度をシミュレーションにより算出する(ステップS1305)。なお、算出した温度は、推定温度として、ステップS1304で設定した熱伝導率設定値に対応づけて記憶装置に記憶する。
【0052】
全ての熱伝導率設定値について処理を終えたか判別し(n=N?)(ステップS1306)。終えていれば、処理を終了する。一方、未処理の熱伝導率設定値があれば、カウンタnを1インクリメントし(ステップS1307)、ステップS1304に移行し、処理を続ける。
【0053】
以上により、本実施形態の熱流体解析部230は、熱流体解析結果としてそれぞれの熱伝導率設定値と温度測定点の推定温度との関係を得ることができる。
【0054】
次に、上記熱流体解析処理のステップS1105における、近似関数作成部240による近似関数作成処理について説明する。
【0055】
ここでは、上記熱流体解析結果を、横軸を熱伝導率、縦軸を温度としたグラフにプロットし、プロット結果の近似曲線を表す式(近似式)を決定する。図8に、熱伝導率設定値毎の推定温度のプロット結果を示す。ここでは、熱伝導率設定値が5種保持されている場合を例示する。このプロット結果の近似式を近似関数と決定する。
【0056】
熱伝導率算出部250は、求めた図8の近似曲線f(x)を示す関数に、ステップS1102で実測した温度(T)を代入することにより、測定サンプルの熱伝導率(ここでは、熱伝導率)f(T)を求めることができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、実測温度とシミュレーション結果とを用いて未知の熱伝導率を算出するにあたり、対流と放射との影響を抑え、伝導が支配的となる環境で温度を実測する。このような環境は、熱流体解析ソフトウェアによるシミュレーションで再現しやすいため、実測環境とシミュレーション環境との乖離による誤差を低減することができる。従って、高い精度で未知の熱伝導率を算出することができる。
【0058】
また、実測時に用いる温度測定装置110は、簡易で安価な構成である。従って、本実施形態によれば、高価な熱伝導率測定装置を用いることなく、低コストで未知の熱伝導率を精度良く得ることができる。
【0059】
さらに、本実施形態の温度測定装置110は、高価な熱伝導率測定装置に使用される断熱材を使用する必要がないため、環境負荷を少なくすることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、パラメータ決定処理において測定サンプル111の温度測定点の温度を測定しているが、ここで測定を行わず、投入電力決定処理において得た、ヒータ113近傍の測定点の温度を用いるよう構成してもよい。この場合、投入電力決定処理において、測定した温度を測定値保持部310に記憶する。
【0061】
<<第二の実施形態>>
本発明を適用する第二の実施形態について説明する。本実施形態は、基本的に第一の実施形態と同様である。ただし、第一の実施形態では、温度を実測する温度測定点を1点としたが、本実施形態では、この温度測定点を複数設定する。これにより、求める熱伝導率の精度を向上させる。以下、本実施形態の構成を、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0062】
本実施形態の熱伝導率算出システム100は、基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。ただし、本実施形態では、測定サンプル111上の複数の点を計測するため、温度測定装置110における熱電対114は、少なくとも温度測定点の数、備える。
【0063】
本実施形態の投入電力決定部210による投入電力決定処理およびパラメータ決定部220によるパラメータ決定処理は、基本的に第一の実施形態と同様である。ただし、本実施形態のパラメータ決定部230は、複数の測定点で温度を測定する。そして、得られた複数の実測温度を、温度測定点に対応づけて測定値保持部310に記憶する。また、放射率は、いずれか一箇所の温度測定点で算出する。
【0064】
なお、本実施形態では、温度測定点は、2点以上であればよいが、3点以上設定することが望ましい。温度測定点を2点とする場合は、1点を発熱源であるヒータ113の近傍に設定し、他点を、そこから可能な限り距離を置いた位置に設定する。これは、温度測定点間の温度差ができる限り大きい方が測定誤差の影響を相対的に小さくすることができるためである。また、温度測定点を3点以上とする場合は、両端の点を上記のように設定した2点間に残りの点を等間隔で設ける。図9に温度測定点を3点(点A、点B、点C)設ける場合を例示する。
【0065】
次に、本実施形態の熱流体解析部230による熱流体解析処理について説明する。本実施形態の熱流体解析部230による熱流体解析処理は、基本的には第一の実施形態と同様である。
【0066】
本実施形態の熱流体解析部230による熱流体解析処理の処理フローを図10に示す。ここでは、第一の実施形態と同様にN個(Nは3以上の自然数)の異なる熱伝導率設定値が保持されているものとし、温度測定点はM個(Mは2以上の自然数)とする。
【0067】
まず、カウンタnおよびmを1とする(ステップS1401)。そして、3次元CADにより解析モデルを生成する(ステップS1402)。次に、解析前処理を行う(ステップS1403)。
【0068】
次に、熱伝導率を設定する(ステップS1404)。ここでは、仮設定値保持部320に保持される、n番目の熱伝導率設定値を設定する。
【0069】
そして、熱流体解析ソフトを用い、温度測定点の温度を算出する(ステップS1406)。なお、算出した温度は、推定温度として、温度測定点とステップS1404で設定した熱伝導率設定値とに対応づけて記憶装置に記憶する。
【0070】
全ての熱伝導率設定値について処理を終えたか判別し(n=N?)(ステップS1406)。未処理の熱伝導率設定値があれば、nを1インクリメントし(ステップS1407)、ステップS1404に移行し、処理を続ける。
【0071】
一方、ステップS1406で、全ての熱伝導率設定値について処理を終えたものと判別された場合、全ての温度測定点について処理を終えたか判別し(m=M?)(ステップS1408)、終えていれば、処理を終了する。一方、未処理の温度測定点があれば、カウンタmを1インクリメントするとともに、カウンタnを1とし(ステップS1409)、ステップS1404に移行し、処理を続ける。
【0072】
以上により、本実施形態の熱流体解析部230は、熱流体解析結果として温度測定点毎に、熱伝導率設定値毎の推定温度を得る。
【0073】
次に、本実施形態の近似関数作成部240による近似関数作成処理について説明する。近似関数作成処理も基本的に第一の実施形態と同様であるが、本実施形態では、測定点毎に近似関数を作成する。
【0074】
すなわち、本実施形態の近似関数作成部240は、まず、上記熱流体解析結果を、横軸を熱伝導率、縦軸を温度としたグラフにプロットし、温度測定点毎に、プロット結果の近似式を決定する。図11に、温度測定点を3点(点A、点B、点C)とした場合の、熱伝導率設定値毎の推定温度のプロット結果を示す。そして、本実施形態の近似関数作成部240は、このプロット結果から第一の実施形態と同様の手法で、温度測定点毎の近似関数を決定する。ここでは、3つの近似関数が得られる。
【0075】
次に、本実施形態の熱伝導率算出部250による、熱伝導率算出処理について説明する。本実施形態では、複数の近似関数が得られる。各温度測定点の実測温度を、それぞれ、TA、TB、TCとし、図11に示す各温度測定点の近似関数を、それぞれfA(x)、fB(x)、fC(x)とすると(ここで、xは熱伝導率)、各実測温度に対応する熱伝導率は、それぞれ、fA(TA)、fB(TB)、fC(TC)となる。
【0076】
実測温度に対応する熱伝導率が、各温度測定点について同じとなる場合は、第一の実施形態と同様に、近似関数上で実測温度に対応する熱伝導率を、測定サンプル111の熱伝導率と算出する。すなわち、fA(TA)=fB(TB)=fC(TC)の場合、熱伝導率算出部250は、fA(TA)を熱伝導率とする。
【0077】
一方、いずれかの近似関数から算出した実測温度に対応する熱伝導率が異なる場合は、熱伝導率算出部250は、以下の手法で実測温度と推定温度との差異が最小となる熱伝導率を求め、測定サンプル111の熱伝導率とする。具体的な手法を、温度測定点が3点の場合を例にあげて説明する。
【0078】
まず、各温度測定点について、実測温度と、熱伝導率をxとした場合の近似関数から得られる推定温度との差を算出する式FA(x)、FB(x)、FC(x)を求める。ここで、FA(x)、FB(x)、FC(x)は、それぞれ、
FA(x)=TA−fA(x)
FB(x)=TB−fB(x)
FC(x)=TC−fC(x)
と表される。
【0079】
そして、熱伝導率算出部250は、FA(x)、FB(x)、FC(x)の2乗和(G(x)=(FA(x))2+(FB(x))2+(FC(x))2)を最小とするxを算出し、測定サンプルの熱伝導率とする。
【0080】
以上説明したように、本実施形態によれば、第一の実施形態同様の環境で測定サンプル111の温度を実測するとともに熱流体解析ソフトウェアによるシミュレーションを行うため、第一の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
さらに、本実施形態によれば、複数の温度測定点で測定した実測温度を用い、熱伝導率を算出している。測定サンプル111全体の測定数を増やすことにより、算出結果について測定誤差の影響を小さくすることができるため、本実施形態によれば、より高い精度で測定サンプル111の熱伝導率を得ることができる。
【0082】
本実施形態においても、投入電力決定処理において温度を測定する測定点の数と、温度測定点の数とが同じであれば、第一の実施形態と同様、パラメータ決定処理において改めて測定点の温度を測定せず、投入電力決定処理において測定した温度を用いるよう構成してもよい。
【0083】
なお、熱伝導率算出処理において、実測温度に対応する熱伝導率が近似関数毎に異なる場合の処理は、上記手法に限られない。例えば、各温度測定点について得られた熱伝導率の平均を、測定サンプル111の熱伝導率と算出してもよい。
【0084】
<<第三の実施形態>>
本発明を適用する第三の実施形態について説明する。本実施形態は、基本的に第二の実施形態と同様である。ただし、第二の実施形態では、温度測定点毎に、実測温度および推定温度をそのまま用いて熱伝導率を算出しているが、本実施形態では、各温度測定点間の温度差を用いて熱伝導率を算出する。これにより、求められる熱伝導率の精度を向上させる。以下、本実施形態の構成を、第二の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0085】
本実施形態の熱伝導率算出システム100は、第二の実施形態と基本的に同様の構成を有する。すなわち、第二の実施形態と同様の手法で投入電力を決定し、同様の手法で熱流体解析結果を得る。ただし、上述のように、本実施形態では、熱伝導率を算出するにあたり、各測定点間の温度差を用いるため、近似関数作成処理が異なる。
【0086】
本実施形態の近似関数作成部240による近似関数作成処理について説明する。本実施形態の近似関数作成部240は、記憶装置に保持される熱流体解析結果で得た温度測定点毎の推定温度から、熱伝導率毎に、各温度測定点間の推定温度差を算出する。推定温度差は、温度測定点の全組合せについて算出する。
【0087】
例えば、第二の実施形態のように、温度測定点が3点(点A、点B、点C)の場合、点Aと点Bとの間の推定温度差tAB、点Aと点Cとの間の推定温度差tAC、点Bと点Cとの間の推定温度差tBCを算出する。なお、各温度測定点の推定温度をそれぞれtA、tB、tCとすると、それぞれ、tAB=tA−tB、tAC=tA−tC、tBC=tB−tCである。
【0088】
得られた各温度差を、温度測定点間毎に、横軸を熱伝導率、縦軸を温度差とするグラフにプロットし、プロット結果の近似式を決定する。図12に、温度測定点が3点の場合の、熱伝導率設定値毎の推定温度の温度差のプロット結果を示す。本実施形態においても、熱伝導率設定値は5種保持されている場合を例示する。近似関数作成部240は、上記各実施形態同様の手法で、このプロット結果の近似式を算出し、温度測定点間毎の近似関数と決定する。
【0089】
次に、本実施形態の熱伝導率算出部250による熱伝導率算出処理について説明する。本実施形態では、各温度測定点間の実測温度差と推定温度差から得た複数の近似関数とから熱伝導率を推定する。
【0090】
例えば、温度測定点が点Aおよび点Cの2点の場合、得られる近似関数は1つである。従って、熱伝導率算出部250は、第一の実施形態同様、この近似関数上で、実測温度の温度差に対応する熱伝導率を、測定サンプル111の熱伝導率とする。
【0091】
一方、温度測定点が3点(点A、点B、点C)の場合は、まず、各温度測定点間の実測温度差を算出する。各温度測定点の実測温度をそれぞれTA、TB、TCとすると、点Aと点Bとの間の実測温度差TABはTA−TB、点Aと点Cとの間の実測温度差TACは、TA−TC、点Bと点Cとの間の実測温度差TBCは、TB−TCと求められる。ここで、図12に示す、各測定点の温度差と熱伝導率設定値との関係から算出された近似関数を、それぞれfAB(x)、fAC(x)、fBC(x)とすると(ここで、xは熱伝導率)、各温度測定点間の実測温度差に対応する熱伝導率は、それぞれ、fAC(TAC)、fAB(TAB)、fBC(TBC)となる。
【0092】
第二の実施形態同様、各温度測定点間の実測温度差に対応する熱伝導率が、各近似関数で同じとなる場合は、第二の実施形態と同様、近似関数上で実測温度差に対応する熱伝導率を、測定サンプルの熱伝導率とする。すなわち、fAC(TAC)=fAB(TAB)=fBC(TBC)の場合、熱伝導率算出部250は、fAC(TAC)を熱伝導率とする。
【0093】
一方、実測温度差に対応する熱伝導率が、近似関数毎に異なる場合は、熱伝導率算出部250は、以下の手法で、実測温度差と推定温度差との差異が最小となる熱伝導率を求め、測定サンプル111の熱伝導率とする。
【0094】
まず、各温度測定点間について、実測温度差と、熱伝導率がxの場合の近似関数から得られる推定温度差との差を算出する式FAB(x)、FAC(x)、FBC(x)を求める。式FAB(x)、FAC(x)、FBC(x)は、それぞれ、
FAB(x)=TAB−fAB(x)
FAC(x)=TAC−fAC(x)
FBC(x)=TBC−fBC(x)
となる。
【0095】
そして、熱伝導率算出部250は、FAB(x)、FAC(x)、FBC(x)の2乗和(GG(x)=(FAB(x))2+(FAC(x))2+(FBC(x))2)を最小とするxを計算し、測定サンプル111の熱伝導率とする。
【0096】
以上説明したように、本実施形態によれば、上記各実施形態同様の環境で測定サンプル111の温度を実測するとともに熱流体解析ソフトウェアによるシミュレーションを行うため、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
また、本実施形態によれば、近似関数を複数の温度測定点の推定温度について、温度測定点間の温度差から決定し、熱伝導率を、この温度差と複数の温度測定点で測定した実測温度の温度測定点間の温度差とを用いて算出する。これにより、よりシミュレーション結果と実測との差異を小さくすることが出来、得られる熱伝導率の精度も高まる。
【0098】
一般に、熱流体解析ソフトによるシミュレーション結果と実測結果との差異を熱伝導率が算出できる程度(±5℃以内)に抑えることは非常に困難であることが知られている。このようなシミュレーション結果と実測結果との乖離は、対流と放射のパラメータに起因すると考えられる。一方、部材内部の熱移動である熱伝導は両結果に影響を与えにくいパラメータである。そこで、本実施形態のように、温度の絶対値ではなく温度差(測定サンプル111内部の熱伝導)を用い、近似曲線の決定、および、この近似曲線と実測値による熱伝導率の算出を行うと、実測結果とシミュレーション結果との誤差が少ない状態で熱伝導率を算出することができる。このため、高い精度で熱伝導率の算出を行うことができる。
【0099】
なお、熱伝導率算出処理において、実測温度に対応する熱伝導率が近似関数毎に異なる場合の処理は、上記手法に限られない。例えば、各温度測定点について得られた熱伝導率の平均を、測定サンプル111の熱伝導率と算出してもよい。
【0100】
本実施形態においても、投入電力決定処理において温度を測定する測定点の数と、温度測定点の数とが同じであれば、第一の実施形態と同様、パラメータ決定処理において改めて測定点の温度を測定せず、投入電力決定処理において測定した温度を用いるよう構成してもよい。
【0101】
<<実施例1>>
以下、本発明の実施例を示す。まず、第一および第二の実施形態の実施例を示す。ここでは、100mm角×1mmの銅平板(390W/mK)と150mm×50mm×50mmのアルミ合金(170W/mK)の成型品を被測定物(測定サンプル)111とし、投入電力は測定点の温度差が2℃となる2Wとした。また、熱伝導率設定値として、200W/mK、300W/mK、400W/mK、500W/mK、600W/mKの5種を用いた。また、温度測定点は、図9に示す3点(それぞれ、A点、B点、C点)とした。熱流体解析ソフトウェアとして、CFdesign(登録商標)を用いた。
【0102】
図13は、上記第二の実施形態の手法に従って、熱伝導率算出処理を行い、シミュレートして得た熱伝導率設定値毎の推定温度を、温度測定点毎にフィッティングした近似曲線のグラフである。
【0103】
このとき、温度測定点Aでの実測温度は、46.9℃であった。また、測定点Bでの実測温度は、45.7℃であり、測定点Cでの実測温度は、45.2℃であった。図13のグラフから測定サンプル111の熱伝導率として、発熱源近傍の温度測定点Aによる結果から、約62.5W/mKを得た。ここでは、熱伝導率の公表値が390W/mKといった高い熱伝導率を有するアルミ合金による成型品を用いたが、熱伝導率が10W/mK程度と低い高熱伝導樹脂などでは、第一および第二の実施形態の温度による熱伝導率推定の精度はさらに高まる。
【0104】
<<実施例2>>
次に、第三の実施形態の実施例を示す。測定サンプル111、投入電力、用いた熱伝導率設定値、温度測定点、使用した熱流体解析ソフトウェアは、上記実施例1と同じとした。
【0105】
図14は、上記第三の実施形態の手法に従って、熱伝導率算出処理を行い、シミュレートして得た熱伝導率設定値毎の、A点とB点との推定温度差、A点とC点との推定温度差、B点とC点との推定温度差それぞれの近似曲線のグラフである。
【0106】
各点の実測温度は、上記第二の実施例のとおりである。従って、測定サンプル111の熱伝導率として、456W/mKを得る。この値は公表値390W/mKと17%の差異となり、測定対象が高い熱伝導率を有する場合であっても、実施例1よりもさらに精度良く測定できることが分かる。
【符号の説明】
【0107】
11:測定点、12:測定点、100:熱伝導率算出システム、110:温度測定装置、111:測定サンプル、112:樹脂ケース、113:ヒータ、114:熱電対、115:放射温度計、120:熱伝導率算出装置、210:投入電力決定部、220:パラメータ決定部、230:熱流体解析部、240:近似関数作成部、250:熱伝導率算出部、310:測定値保持部、320:仮設定値保持部
【技術分野】
【0001】
本発明は、物体の未知の熱伝導率を算出する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
電気製品や電子機器の複雑化、小型化に伴い、構成部品の放熱等を考慮した熱設計が重要になっている。製品内部の気流や熱などの熱流体現象を解析するにあたり、個々の構成部品の正確な熱物性値を得ることは非常に重要である。熱物性値の中でも、特に、温度に寄与する熱伝導率の把握は重要視されている。
【0003】
一般に、物体の熱伝導率を測定するためには、断熱体で覆ったヒータ、熱伝導率を測定する対象の物体(測定サンプル)、および熱伝導率が既知の物体(既知サンプル)、を重ね、それぞれの間に熱電対を取り付け、熱電対の出力を用いて算出する手法が用いられる(例えば、特許文献1参照。)。
【0004】
ところが、この手法を実現する装置は非常に高価である。例えば、0.01〜50W/mK程度の熱伝導率が低い物体の測定では、この手法の中でも熱線プローブ法やホットディスク法が用いられる。これを実現する装置の価格は約数百万円である。また、400W/mK以上といった熱伝導率の高い物体の測定ではレーザーフラッシュ法が用いられる。これを実現する装置の価格は数千万円である。
【0005】
熱設計では、物体の一部に発熱体(ヒータ)を取り付けて加熱した場合の物体内の熱分布を計算する熱流体解析ソフトウェアが利用されている。良く知られているものに、例えば、FLUENT(登録商標)やCFdesign(登録商標)などがある。これらの熱流体解析ソフトウェアに、ヒータ電力、ケース外空気などの境界条件と、物体の熱物性値(熱伝導率、放射率、密度など)とを入力し、シミュレーションを行うことで、物体の熱分布、すなわち、物体各部の温度を得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2001−21512号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
実測した物体の温度と、熱流体解析ソフトウェアによるシミュレーション結果とのフィッティングにより、熱伝導率等の物性値を、高価な測定装置を使用することなく求めることが考えられるが、求められる物性値の信頼性を向上させることは困難であった。その原因は、精度よく物体の温度を測定できたとしても、熱流体解析ソフトウェアで用いる境界条件などを正確に入力することが困難であり、測定状態を精度よく再現してシミュレーションすることが難しいためであると考えられる。
【0008】
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、簡易な構成により未知の熱伝導率を精度良く得る技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明は、測定対象の熱伝導率の仮の値を変化させてシミュレーションして得た温度と、実測温度とから、測定対象の熱伝導率を決定する。このとき、実測環境をシンプルなものとし、シミュレーションでその環境を再現しやすくし、実測温度とシミュレーションにより得た温度との整合性を高める。
【0010】
具体的には、測定サンプルの熱伝導率を算出する熱伝導率算出方法であって、前記測定サンプルに熱を供給する発熱体に投入する電力を決定する投入電力決定ステップと、前記発熱体に前記投入電力を投入して発熱させた際の前記測定サンプルの温度を、予め定めた測定点において測定し、実測温度を得る温度測定ステップと、予め定められた複数の熱伝導率設定値それぞれに対応する前記測定サンプルの温度を推定温度として算出する温度推定ステップと、前記複数の熱伝導率設定値毎の前記推定温度から熱伝導率と推定温度とを関連付ける近似関数を決定する近似関数算出ステップと、前記近似関数上で、前記実測温度を用い、当該測定サンプルの熱伝導率を算出する熱伝導率算出ステップと、を備えることを特徴とする熱伝導率算出方法を提供する。
【0011】
また、測定サンプルの未知の熱伝導率を算出する熱伝導率算出システムであって、前記測定サンプルに熱を供給する発熱体に投入する投入電力を決定する投入電力決定手段と前記発熱体に前記電力を投入して発熱させた際の前記測定サンプルの温度を、予め定めた測定点において測定し、実測温度を得る温度測定手段と、予め定められた複数の熱伝導率設定値それぞれに対応する前記測定サンプルの温度を推定温度として算出する温度推定手段と、前記複数の熱伝導率設定値毎の前記推定温度から熱伝導率と推定温度とを関連付ける近似関数を決定する近似関数算出手段と、前記近似関数上で、前記実測温度を用い、当該測定サンプルの熱伝導率を算出する熱伝導率算出手段と、を備えることを特徴とする熱伝導率算出システムを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明によれば、簡易な構成により未知の熱伝導率を精度良く得ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【図1】第一の実施形態の熱伝導率算出システムの構成図である。
【図2】第一の実施形態の温度測定装置を説明するための説明図である。
【図3】第一の実施形態の熱伝導率算出装置の機能ブロック図である。
【図4】第一の実施形態の熱伝導率算出処理のフローチャートである。
【図5】第一の実施形態の投入電力決定処理のフローチャートである。
【図6】(a)は第一の実施形態の測定点の位置を説明するための説明図であり、(b)は第一の実施形態の投入電力決定処理の測定結果を説明するための説明図である。
【図7】第一の実施形態の熱流体解析処理のフローチャートである。
【図8】第一の実施形態の熱流体解析結果のグラフである。
【図9】第二の実施形態の温度測定点を説明するための説明図である。
【図10】第二の実施形態の熱流体解析処理のフローチャートである。
【図11】第二の実施形態の熱流体解析結果のグラフである。
【図12】第三の実施形態の熱流体解析結果に近似関数作成のための処理を施した後のグラフである。
【図13】実施例1のグラフである。
【図14】実施例2のグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0014】
<<第一の実施形態>>
以下、本発明を適用する第一の実施形態について説明する。本発明の実施形態を説明するための全図において、同一機能を有するものは同一符号を付し、その繰り返しの説明は省略する。
【0015】
本実施形態の熱伝導率算出システムでは、実測値と熱流体解析ソフトウェアによるシミュレーション結果とから、測定対象物体(測定サンプル)の所望の熱伝導率を求める。なお、測定サンプルは、導電体、絶縁体などとする。
【0016】
従来、熱流体解析ソフトウェアでのシミュレーション値と実測値との整合性は低いことが知られている。これは、前述のように境界条件の入力が難しく、それに影響を受ける対流、放射の影響を再現することが難しいためである。さらに、演算されるパラメータの中で、対流・放射のパラメータは、オペレーションで設定したメッシュサイズにより変化する。その結果、対流・放射の影響が大きい環境では、最終的に見積もられる温度結果がメッシュサイズにより異なるという、メッシュサイズによる算出誤差も発生する。なお、メッシュサイズを細かくすると精度は高まるが、計算時間とのトレードオフ関係にあるため、極端に細かくすることは現実的ではない。また、ある一定のメッシュサイズでは、発熱量が大きくなるとともに対流と反射とが促進されるため、対流・放射のパラメータが算出結果に及ぼす影響が大きくなり、精度は悪化する。換言すると、適切なメッシュサイズであれば、発熱量が小さいほど実測との差異は小さくできる。熱伝導率推定において、熱流体解析結果と実測の差異は小さい方が望ましい。従って、精度を高めるような最小の発熱量で実測と熱流体解析を実施すればよい。そこで、本実施形態では、最小の発熱量で熱流体解析ソフトウェアを用いたシミュレーションを行い、求めたシミュレーション結果と実測値とから熱伝導率を精度よく求める。
【0017】
具体的には、後述する図4の投入電力決定処理において、熱伝導率算出にあたり、熱移動のうち、対流・放射の影響が少なく伝導が支配的となる条件を実現するものとして、測定サンプル上で温度差が生じる発熱量の中で最小の発熱量を実現する投入電力を決定する。求めた条件で、実測およびシミュレーション(熱流体解析処理)をそれぞれ行い、実測値に一致するシミュレーション条件を測定対象の熱伝導率とする。
【0018】
まず、本実施形態の熱伝導率算出システム全体の構成について説明する。図1は、本実施形態の熱伝導率算出システム100の構成図である。本図に示すように、本実施形態の熱伝導率算出システム100は、温度測定装置110と熱伝導率算出装置120とを備える。温度測定装置110は、熱伝導率算出装置120からの指示に従って、測定サンプルの表面温度を測定する。熱伝導率算出装置120は、温度測定装置110による測定結果と予め保持する熱流体解析ソフトウェアを用いたシミュレーション結果とから、熱伝導率を算出する熱伝導率算出処理を行う。
【0019】
図2は、本実施形態の温度測定装置110を説明するための図である。本図に示すように、温度測定装置110は、内部に測定サンプル111を設置する樹脂ケース112と、測定サンプル111を熱するヒータ113と、測定サンプル111に接触させてその温度を測定する熱電対114と、非接触でその放射エネルギー量を検知することで測定サンプル111表面の温度を測定する放射温度計115と、を備える。
【0020】
ここで、放射温度計115は、測定サンプル111と対向して少なくとも1つ以上設置される。設置場所は、ヒータ113などの発熱体からの放射エネルギーの影響を受けない部分に設置することが好ましい。具体的には、例えば、ヒートシンクを測定する場合には熱源から離れたフィン部を測定する。
【0021】
本実施形態の温度測定装置110は、熱伝導率算出装置120から指示された電力をヒータ113に投入し、熱伝導率算出装置120で指示された測定点の温度を熱電対114および/または放射温度計115で計測し、熱伝導率算出装置120に出力する。
【0022】
ヒータ113は、熱伝導グリスやシートなどのTIM(Thermal Interface Material)を介して測定サンプル111に取り付けられる。
【0023】
また、熱電対114は、少なくとも、予め定められた測定サンプル111上の温度を測定する測定点に設置される。
【0024】
放射温度計115は、少なくとも、熱電対114による各測定点の近傍に設置される。放射温度計115は、熱流体解析ソフトウェアでシミュレーションを行う際のパラメータとしての放射率を求めるために用いる。熱電対114や熱電対114を固定するテープなどは、放射温度計115による温度計測の誤差要因となるため、測定箇所は、測定サンプル111の表面であって、これらを含まない領域とする。従って、放射温度計115は、その測定範囲をレーザポインタで認識できる構成が望ましい。
【0025】
樹脂ケース112は、温度測定時に外乱の影響を受けないように設けられる。用いる樹脂には、熱伝導率が低い絶縁部材、例えば、アクリルやポリカーボネートなどが選択される。なお、樹脂ケース112の大きさは、対流と放射との影響を小さくするために測定の際の発熱により樹脂ケース112内の空気温度が大きく上昇しない程度とする。
【0026】
図3は、本実施形態の熱伝導率算出装置120の機能ブロック図である。本図に示すように、本実施形態の熱伝導率算出装置120は、実測した温度と熱流体解析実測値と熱流体解析ソフトウェアによるシミュレーション値とから熱伝導率を求める。これを実現するため、熱伝導率算出装置120は、ヒータ113を所望の発熱量で発熱させるためにヒータ113に投入する投入電力を決定する投入電力決定部210と、温度測定装置110を動作させて測定サンプル111の所定の温度測定点の温度を計測するとともにシミュレーションに必要なパラメータを算出するパラメータ決定部220と、予め用意される熱伝導率の仮設定値毎に熱流体解析ソフトウェアを用いてシミュレーションを行い、温度測定点の温度を推定する熱流体解析を行う熱流体解析部230と、熱流体解析結果から熱伝導率と温度との関係を特定する近似関数を作成する近似関数作成部240と、近似関数から熱伝導率を算出する熱伝導率算出部250と、温度測定装置110から測定値を受け取り保持する測定値保持部310と、シミュレーションの際に用いる測定対象の未知の熱伝導率の仮設定値を保持する仮設定値保持部320と、を備える。ここでは、仮設定値保持部320には、熱伝導率の仮設定値(熱伝導率設定値)として、予め入力された複数の異なる値が、それぞれ一意に特定可能な識別情報とともに保持される。
【0027】
熱伝導率算出装置120は、例えば、CPUとメモリと記憶装置とを備える汎用の情報処理装置で構成される。投入電力決定部210とパラメータ決定部220と熱流体解析部230と近似関数作成部240と熱伝導率算出部250とは、記憶装置に格納されるプログラムをCPUがメモリにロードして実行することにより実現される。また、測定値保持部310と仮設定値保持部320とは、記憶装置に構成される。なお、熱伝導率算出システム100による熱伝導率算出処理の途中に生成される各種の中間データも、記憶装置に記憶される。
【0028】
本実施形態の熱伝導率算出システム100による熱伝導率算出処理の流れを説明する。図4は、本実施形態の熱伝導率算出処理の処理フローである。
【0029】
ユーザから開始の指示を受け付けると、まず、投入電力決定部210が、測定サンプル111の温度を測定する際のヒータ113への投入電力を決定する投入電力決定処理を行う(ステップS1101)。これにより、上述したように対流・放射の影響の少ない、伝導が支配的となるヒータ発熱量を実現する投入電力を求める。また、このヒータ発熱量は、後述する熱流体解析に用いる。
【0030】
次に、パラメータ決定部220は、温度測定装置110に、ステップS1101で決定した投入電力をヒータ113に投入させ、熱電対114により、測定サンプル111の予め定められた測定点(温度測定点)の温度を測定させる(ステップS1102)。次に、放射温度計115で測定した測定点の温度が熱電対114で測定した温度と同じになるように、放射温度計に入力する放射率を変化させることにより、温度測定点の放射率を求める(ステップS1103)。本実施形態では、温度測定点は1点とする。温度測定点は、発熱源であるヒータ113の近傍とする。発熱源近傍は、対流や放射の影響が少なく、シミュレーションでその環境を再現しやすいためである。なお、パラメータ決定部220は、測定した温度を測定点に対応づけて測定値保持部310に記憶する。また、算出した放射率、ステップS1101で決定した投入電力(発熱量)も測定値保持部310に記憶する。
【0031】
次に、熱流体解析部230は、予め記憶装置に保持する熱流体解析ソフトウェアを用いて熱流体解析処理を行う(ステップS1104)。このとき、入力パラメータのうち、発熱量、放射率については、測定値保持部310に保持するデータを、熱伝導率については、仮設定値保持部320に保持する複数の熱伝導率設定値を用いる。
【0032】
次に、近似関数作成部240は、熱流体解析結果を用い、熱伝導率と温度との関係を示す関数の近似式を決定し、近似関数を生成する(近似関数生成処理:ステップS1105)。そして、熱伝導率算出部250は、近似関数にステップS1102で実測した温度を代入することにより、測定サンプル111の熱伝導率を求め(ステップS1106)、処理を終了する。
【0033】
以下、各処理の詳細について説明する。
【0034】
まず、ステップS1101の、投入電力決定部210による投入電力決定処理を説明する。投入電力決定部210は、温度測定装置110を用いて温度を実測しながら投入電力を決定する。
【0035】
前述したように、熱流体解析ソフトウェアを用いて算出する温度(推定温度)の精度を向上させることは難しい。これは、熱流体解析では伝導、対流、放射といった、複数の異なる形態の熱移動を扱い、現象が複雑になっていることが一因である。これらの熱移動の要因の中で、1の要因が支配的となるような環境において実測を行うことにより、モデル化する環境を単純化し、シミュレーションでその環境を再現しやすいものとする。
【0036】
本実施形態では、対流や放射の影響が少なく、伝導が支配的となる環境下で実測を行う。このような環境は、できるだけヒータ113の発熱量を小さくし、かつ、測定サンプル111上の2つの測定点間には測定可能な程度の温度差が生じるようにすることで実現できる。ヒータ113の発熱量を小さくすることにより、測定サンプル111において対流と放射との影響を少なくできるためである。また、測定点間に測定可能な温度差が生じるようにすることで、測定サンプル111における伝導の影響を確認できる。本実施形態では、測定サンプル111の2つの測定点間の温度差が所定以下(例えば、10℃以下)となる投入電力を求める。適切な温度差は測定サンプル111の大きさ、素材等によって異なり、例えば、100mm角1mm厚の銅平板では、2℃である。
【0037】
なお、投入電力決定処理の測定点は、少なくとも2点を設定する。一方の測定点(第一の測定点)は、ヒータ113近傍の位置に、他方の測定点(第二の測定点)は、第一の測定点から、熱伝導による等軸上で出来うる限り距離をおいて設置する。これは、温度差がない(2点間の温度差が0℃となる)場合、熱伝導率算出の計算が発散し、解が求められないためである。なお、測定点を3点以上設定する場合は、両端の2点について、この条件を満たすよう設定し、残りの点については、その間に等間隔に設定する。
【0038】
また、測定は、常温・常圧下で行い、ヒータ113の電力を投入後、測定サンプル111と樹脂ケース112内の空気温度とが定常状態に達してから行う。
【0039】
図5は、本実施形態の投入電力決定処理の処理フローである。ここでは、測定点として2点設定する場合を例にあげて説明する。また、初期電力(PW0)と、投入する電力(PW)の変化量(ΔPW)と、温度差の有無の判定に用いる閾値ΔT0と、は予め定められ、記憶装置に保持される。
【0040】
まず、投入電力決定部210は、ヒータ113に投入する電力(PW)として初期電力(PW0)を設定し、当該電力を投入するよう温度測定装置110に指示を出す(ステップS1201)。それを受けて、温度測定装置110では、投入電力(PW)に初期電力(PW0)を設定し、測定サンプル111を熱する(ステップS1202)。そして、温度測定装置110では、設定した測定点2点の温度を測定する(ステップS1203)。測定点は、上記条件に従って設定される。また、温度の測定は、熱電対114による接触法、放射温度計115による非接触法のいずれであってもよい。また、この他の手法を用いてもよい。
【0041】
温度測定装置110から測定結果を受け取ると、投入電力決定部210は、2点の測定結果間に所定の温度差(ΔT0)が発生したか否かを判別する(ステップS1204)。ここでは、両測定点間の温度差ΔTが閾値ΔT0以上の場合、温度差が発生したと判別する。温度差が発生したと判別された場合、その時点で設定されている電力(PW)を、投入電力と決定する(ステップS1205)。なお、ヒータ113は温度によって内部抵抗が変動するため、時間の経過に伴い、滑らかに消費電力は下がる。従って、後述する熱流体解析処理に用いる発熱量は、ヒータ113の消費電力が十分低下した後の最終電力値を用いる。
【0042】
一方、ステップS1204において、両測定点間に温度差が発生していないと判別された場合、電力PWを、予め定めた変化量(ΔPW)増加させ(ステップS1206)、ステップS1202に戻る。
【0043】
以上の手順で投入電力を決定する具体例を図6に示す。図6(a)は、測定点の位置を説明するための図である。ここでは、測定サンプル111が、100mm角1mm厚の銅平板で、測定点11(第一の測定点)が、ヒータ113が設置される端部から20mmの位置に設置され、測定点12(第二の測定点)が、同端部から80mmの位置に設置される。初期電力PW0は0.5W、変化量ΔPWは0.5W、温度差の有無の判定に用いる閾値ΔT0は2℃とする。
【0044】
図6(b)は、投入電力決定処理実行中の温度測定結果を示す。本図に示す結果から、上記条件では、電力PWを、0.5Wから0.5W刻みで上昇させると、2Wの時点で測定点11と測定点12との温度差ΔTが閾値である2℃に達する。従って、この場合、投入電力を、2Wと決定する。
【0045】
次に、上記熱伝導率算出処理のステップS1104の熱流体解析部230による熱流体解析処理を説明する。図7は、熱流体解析処理の処理フローである。
【0046】
ここでは、市販の熱流体解析ソフト(例えば、FLUENT(登録商標)、CFdesign(登録商標))などを用いて行う。また、仮設定値保持部320には、熱伝導率設定値として、文献値・公表値などを参考に決定する概略値と、当該概略値を基準に、その±30%、±60%等正負同じ幅で変化させた、少なくとも3つ、好ましくは5つ以上の異なる値を保持する。ここでは、N個(Nは3以上の自然数)の異なる熱伝導率設定値が、1からNまでの番号に対応づけて保持されているものとする。なお、熱伝導率の変化に対し温度変化が大きくなる領域(凡そ100[W/(m・K)]以下)では、さらに保持する熱伝導率の値を追加してもよい。
【0047】
熱流体解析処理開始の指示を受け付けると、熱流体解析部230は、まず、カウンタnを1とする(ステップS1301)。熱流体解析に必要なヒータ113、TIM、測定サンプル111、樹脂ケース112、樹脂ケース112内空気、樹脂ケース112外空気を3次元CADによりモデリングし、解析モデルを生成する(ステップS1302)。
【0048】
この際、解析結果と実測温度との差異が大きくならない程度に、測定した状態を再現しておく。これは、実際の温度測定環境とシミュレーションに用いる環境とを一致させることを意味する。具体的な手順としては、まず、実際の温度測定において、外乱の影響を受けないように、測定サンプル111を樹脂ケース112に入れて測定する。ここで、外乱としては、空気の対流や他の熱源からの放射が挙げられる。そして、シミュレーションでも、モデリングや条件設定を行って、その算出時に用いる環境として上記実測環境を再現する。
【0049】
次に、解析前処理を行う(ステップS1303)。解析前処理として、ここでは、解析モデルで特定される解析空間を分割するメッシュを生成し、熱流体解析ソフトウェアに設定する。また、樹脂ケース112外の空気温度、ステップS1101で算出したヒータ113の発熱量等の境界条件と、ステップS1103で算出した放射率、密度など、熱伝導率以外の熱伝導率とを熱流体解析ソフトに設定する。密度等は、予め入力し、記憶装置に保持しておく。
【0050】
次に、熱伝導率を熱流体解析ソフトウェアの熱伝導率に設定する(ステップS1304)。ここでは、仮設定値保持部320に保持されている、n番目の熱伝導率設定値を設定する。
【0051】
そして、熱流体解析ソフトを用い、温度測定点の温度をシミュレーションにより算出する(ステップS1305)。なお、算出した温度は、推定温度として、ステップS1304で設定した熱伝導率設定値に対応づけて記憶装置に記憶する。
【0052】
全ての熱伝導率設定値について処理を終えたか判別し(n=N?)(ステップS1306)。終えていれば、処理を終了する。一方、未処理の熱伝導率設定値があれば、カウンタnを1インクリメントし(ステップS1307)、ステップS1304に移行し、処理を続ける。
【0053】
以上により、本実施形態の熱流体解析部230は、熱流体解析結果としてそれぞれの熱伝導率設定値と温度測定点の推定温度との関係を得ることができる。
【0054】
次に、上記熱流体解析処理のステップS1105における、近似関数作成部240による近似関数作成処理について説明する。
【0055】
ここでは、上記熱流体解析結果を、横軸を熱伝導率、縦軸を温度としたグラフにプロットし、プロット結果の近似曲線を表す式(近似式)を決定する。図8に、熱伝導率設定値毎の推定温度のプロット結果を示す。ここでは、熱伝導率設定値が5種保持されている場合を例示する。このプロット結果の近似式を近似関数と決定する。
【0056】
熱伝導率算出部250は、求めた図8の近似曲線f(x)を示す関数に、ステップS1102で実測した温度(T)を代入することにより、測定サンプルの熱伝導率(ここでは、熱伝導率)f(T)を求めることができる。
【0057】
以上説明したように、本実施形態によれば、実測温度とシミュレーション結果とを用いて未知の熱伝導率を算出するにあたり、対流と放射との影響を抑え、伝導が支配的となる環境で温度を実測する。このような環境は、熱流体解析ソフトウェアによるシミュレーションで再現しやすいため、実測環境とシミュレーション環境との乖離による誤差を低減することができる。従って、高い精度で未知の熱伝導率を算出することができる。
【0058】
また、実測時に用いる温度測定装置110は、簡易で安価な構成である。従って、本実施形態によれば、高価な熱伝導率測定装置を用いることなく、低コストで未知の熱伝導率を精度良く得ることができる。
【0059】
さらに、本実施形態の温度測定装置110は、高価な熱伝導率測定装置に使用される断熱材を使用する必要がないため、環境負荷を少なくすることができる。
【0060】
なお、本実施形態では、パラメータ決定処理において測定サンプル111の温度測定点の温度を測定しているが、ここで測定を行わず、投入電力決定処理において得た、ヒータ113近傍の測定点の温度を用いるよう構成してもよい。この場合、投入電力決定処理において、測定した温度を測定値保持部310に記憶する。
【0061】
<<第二の実施形態>>
本発明を適用する第二の実施形態について説明する。本実施形態は、基本的に第一の実施形態と同様である。ただし、第一の実施形態では、温度を実測する温度測定点を1点としたが、本実施形態では、この温度測定点を複数設定する。これにより、求める熱伝導率の精度を向上させる。以下、本実施形態の構成を、第一の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0062】
本実施形態の熱伝導率算出システム100は、基本的に第一の実施形態と同様の構成を有する。ただし、本実施形態では、測定サンプル111上の複数の点を計測するため、温度測定装置110における熱電対114は、少なくとも温度測定点の数、備える。
【0063】
本実施形態の投入電力決定部210による投入電力決定処理およびパラメータ決定部220によるパラメータ決定処理は、基本的に第一の実施形態と同様である。ただし、本実施形態のパラメータ決定部230は、複数の測定点で温度を測定する。そして、得られた複数の実測温度を、温度測定点に対応づけて測定値保持部310に記憶する。また、放射率は、いずれか一箇所の温度測定点で算出する。
【0064】
なお、本実施形態では、温度測定点は、2点以上であればよいが、3点以上設定することが望ましい。温度測定点を2点とする場合は、1点を発熱源であるヒータ113の近傍に設定し、他点を、そこから可能な限り距離を置いた位置に設定する。これは、温度測定点間の温度差ができる限り大きい方が測定誤差の影響を相対的に小さくすることができるためである。また、温度測定点を3点以上とする場合は、両端の点を上記のように設定した2点間に残りの点を等間隔で設ける。図9に温度測定点を3点(点A、点B、点C)設ける場合を例示する。
【0065】
次に、本実施形態の熱流体解析部230による熱流体解析処理について説明する。本実施形態の熱流体解析部230による熱流体解析処理は、基本的には第一の実施形態と同様である。
【0066】
本実施形態の熱流体解析部230による熱流体解析処理の処理フローを図10に示す。ここでは、第一の実施形態と同様にN個(Nは3以上の自然数)の異なる熱伝導率設定値が保持されているものとし、温度測定点はM個(Mは2以上の自然数)とする。
【0067】
まず、カウンタnおよびmを1とする(ステップS1401)。そして、3次元CADにより解析モデルを生成する(ステップS1402)。次に、解析前処理を行う(ステップS1403)。
【0068】
次に、熱伝導率を設定する(ステップS1404)。ここでは、仮設定値保持部320に保持される、n番目の熱伝導率設定値を設定する。
【0069】
そして、熱流体解析ソフトを用い、温度測定点の温度を算出する(ステップS1406)。なお、算出した温度は、推定温度として、温度測定点とステップS1404で設定した熱伝導率設定値とに対応づけて記憶装置に記憶する。
【0070】
全ての熱伝導率設定値について処理を終えたか判別し(n=N?)(ステップS1406)。未処理の熱伝導率設定値があれば、nを1インクリメントし(ステップS1407)、ステップS1404に移行し、処理を続ける。
【0071】
一方、ステップS1406で、全ての熱伝導率設定値について処理を終えたものと判別された場合、全ての温度測定点について処理を終えたか判別し(m=M?)(ステップS1408)、終えていれば、処理を終了する。一方、未処理の温度測定点があれば、カウンタmを1インクリメントするとともに、カウンタnを1とし(ステップS1409)、ステップS1404に移行し、処理を続ける。
【0072】
以上により、本実施形態の熱流体解析部230は、熱流体解析結果として温度測定点毎に、熱伝導率設定値毎の推定温度を得る。
【0073】
次に、本実施形態の近似関数作成部240による近似関数作成処理について説明する。近似関数作成処理も基本的に第一の実施形態と同様であるが、本実施形態では、測定点毎に近似関数を作成する。
【0074】
すなわち、本実施形態の近似関数作成部240は、まず、上記熱流体解析結果を、横軸を熱伝導率、縦軸を温度としたグラフにプロットし、温度測定点毎に、プロット結果の近似式を決定する。図11に、温度測定点を3点(点A、点B、点C)とした場合の、熱伝導率設定値毎の推定温度のプロット結果を示す。そして、本実施形態の近似関数作成部240は、このプロット結果から第一の実施形態と同様の手法で、温度測定点毎の近似関数を決定する。ここでは、3つの近似関数が得られる。
【0075】
次に、本実施形態の熱伝導率算出部250による、熱伝導率算出処理について説明する。本実施形態では、複数の近似関数が得られる。各温度測定点の実測温度を、それぞれ、TA、TB、TCとし、図11に示す各温度測定点の近似関数を、それぞれfA(x)、fB(x)、fC(x)とすると(ここで、xは熱伝導率)、各実測温度に対応する熱伝導率は、それぞれ、fA(TA)、fB(TB)、fC(TC)となる。
【0076】
実測温度に対応する熱伝導率が、各温度測定点について同じとなる場合は、第一の実施形態と同様に、近似関数上で実測温度に対応する熱伝導率を、測定サンプル111の熱伝導率と算出する。すなわち、fA(TA)=fB(TB)=fC(TC)の場合、熱伝導率算出部250は、fA(TA)を熱伝導率とする。
【0077】
一方、いずれかの近似関数から算出した実測温度に対応する熱伝導率が異なる場合は、熱伝導率算出部250は、以下の手法で実測温度と推定温度との差異が最小となる熱伝導率を求め、測定サンプル111の熱伝導率とする。具体的な手法を、温度測定点が3点の場合を例にあげて説明する。
【0078】
まず、各温度測定点について、実測温度と、熱伝導率をxとした場合の近似関数から得られる推定温度との差を算出する式FA(x)、FB(x)、FC(x)を求める。ここで、FA(x)、FB(x)、FC(x)は、それぞれ、
FA(x)=TA−fA(x)
FB(x)=TB−fB(x)
FC(x)=TC−fC(x)
と表される。
【0079】
そして、熱伝導率算出部250は、FA(x)、FB(x)、FC(x)の2乗和(G(x)=(FA(x))2+(FB(x))2+(FC(x))2)を最小とするxを算出し、測定サンプルの熱伝導率とする。
【0080】
以上説明したように、本実施形態によれば、第一の実施形態同様の環境で測定サンプル111の温度を実測するとともに熱流体解析ソフトウェアによるシミュレーションを行うため、第一の実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0081】
さらに、本実施形態によれば、複数の温度測定点で測定した実測温度を用い、熱伝導率を算出している。測定サンプル111全体の測定数を増やすことにより、算出結果について測定誤差の影響を小さくすることができるため、本実施形態によれば、より高い精度で測定サンプル111の熱伝導率を得ることができる。
【0082】
本実施形態においても、投入電力決定処理において温度を測定する測定点の数と、温度測定点の数とが同じであれば、第一の実施形態と同様、パラメータ決定処理において改めて測定点の温度を測定せず、投入電力決定処理において測定した温度を用いるよう構成してもよい。
【0083】
なお、熱伝導率算出処理において、実測温度に対応する熱伝導率が近似関数毎に異なる場合の処理は、上記手法に限られない。例えば、各温度測定点について得られた熱伝導率の平均を、測定サンプル111の熱伝導率と算出してもよい。
【0084】
<<第三の実施形態>>
本発明を適用する第三の実施形態について説明する。本実施形態は、基本的に第二の実施形態と同様である。ただし、第二の実施形態では、温度測定点毎に、実測温度および推定温度をそのまま用いて熱伝導率を算出しているが、本実施形態では、各温度測定点間の温度差を用いて熱伝導率を算出する。これにより、求められる熱伝導率の精度を向上させる。以下、本実施形態の構成を、第二の実施形態と異なる構成に主眼をおいて説明する。
【0085】
本実施形態の熱伝導率算出システム100は、第二の実施形態と基本的に同様の構成を有する。すなわち、第二の実施形態と同様の手法で投入電力を決定し、同様の手法で熱流体解析結果を得る。ただし、上述のように、本実施形態では、熱伝導率を算出するにあたり、各測定点間の温度差を用いるため、近似関数作成処理が異なる。
【0086】
本実施形態の近似関数作成部240による近似関数作成処理について説明する。本実施形態の近似関数作成部240は、記憶装置に保持される熱流体解析結果で得た温度測定点毎の推定温度から、熱伝導率毎に、各温度測定点間の推定温度差を算出する。推定温度差は、温度測定点の全組合せについて算出する。
【0087】
例えば、第二の実施形態のように、温度測定点が3点(点A、点B、点C)の場合、点Aと点Bとの間の推定温度差tAB、点Aと点Cとの間の推定温度差tAC、点Bと点Cとの間の推定温度差tBCを算出する。なお、各温度測定点の推定温度をそれぞれtA、tB、tCとすると、それぞれ、tAB=tA−tB、tAC=tA−tC、tBC=tB−tCである。
【0088】
得られた各温度差を、温度測定点間毎に、横軸を熱伝導率、縦軸を温度差とするグラフにプロットし、プロット結果の近似式を決定する。図12に、温度測定点が3点の場合の、熱伝導率設定値毎の推定温度の温度差のプロット結果を示す。本実施形態においても、熱伝導率設定値は5種保持されている場合を例示する。近似関数作成部240は、上記各実施形態同様の手法で、このプロット結果の近似式を算出し、温度測定点間毎の近似関数と決定する。
【0089】
次に、本実施形態の熱伝導率算出部250による熱伝導率算出処理について説明する。本実施形態では、各温度測定点間の実測温度差と推定温度差から得た複数の近似関数とから熱伝導率を推定する。
【0090】
例えば、温度測定点が点Aおよび点Cの2点の場合、得られる近似関数は1つである。従って、熱伝導率算出部250は、第一の実施形態同様、この近似関数上で、実測温度の温度差に対応する熱伝導率を、測定サンプル111の熱伝導率とする。
【0091】
一方、温度測定点が3点(点A、点B、点C)の場合は、まず、各温度測定点間の実測温度差を算出する。各温度測定点の実測温度をそれぞれTA、TB、TCとすると、点Aと点Bとの間の実測温度差TABはTA−TB、点Aと点Cとの間の実測温度差TACは、TA−TC、点Bと点Cとの間の実測温度差TBCは、TB−TCと求められる。ここで、図12に示す、各測定点の温度差と熱伝導率設定値との関係から算出された近似関数を、それぞれfAB(x)、fAC(x)、fBC(x)とすると(ここで、xは熱伝導率)、各温度測定点間の実測温度差に対応する熱伝導率は、それぞれ、fAC(TAC)、fAB(TAB)、fBC(TBC)となる。
【0092】
第二の実施形態同様、各温度測定点間の実測温度差に対応する熱伝導率が、各近似関数で同じとなる場合は、第二の実施形態と同様、近似関数上で実測温度差に対応する熱伝導率を、測定サンプルの熱伝導率とする。すなわち、fAC(TAC)=fAB(TAB)=fBC(TBC)の場合、熱伝導率算出部250は、fAC(TAC)を熱伝導率とする。
【0093】
一方、実測温度差に対応する熱伝導率が、近似関数毎に異なる場合は、熱伝導率算出部250は、以下の手法で、実測温度差と推定温度差との差異が最小となる熱伝導率を求め、測定サンプル111の熱伝導率とする。
【0094】
まず、各温度測定点間について、実測温度差と、熱伝導率がxの場合の近似関数から得られる推定温度差との差を算出する式FAB(x)、FAC(x)、FBC(x)を求める。式FAB(x)、FAC(x)、FBC(x)は、それぞれ、
FAB(x)=TAB−fAB(x)
FAC(x)=TAC−fAC(x)
FBC(x)=TBC−fBC(x)
となる。
【0095】
そして、熱伝導率算出部250は、FAB(x)、FAC(x)、FBC(x)の2乗和(GG(x)=(FAB(x))2+(FAC(x))2+(FBC(x))2)を最小とするxを計算し、測定サンプル111の熱伝導率とする。
【0096】
以上説明したように、本実施形態によれば、上記各実施形態同様の環境で測定サンプル111の温度を実測するとともに熱流体解析ソフトウェアによるシミュレーションを行うため、上記各実施形態と同様の効果を得ることができる。
【0097】
また、本実施形態によれば、近似関数を複数の温度測定点の推定温度について、温度測定点間の温度差から決定し、熱伝導率を、この温度差と複数の温度測定点で測定した実測温度の温度測定点間の温度差とを用いて算出する。これにより、よりシミュレーション結果と実測との差異を小さくすることが出来、得られる熱伝導率の精度も高まる。
【0098】
一般に、熱流体解析ソフトによるシミュレーション結果と実測結果との差異を熱伝導率が算出できる程度(±5℃以内)に抑えることは非常に困難であることが知られている。このようなシミュレーション結果と実測結果との乖離は、対流と放射のパラメータに起因すると考えられる。一方、部材内部の熱移動である熱伝導は両結果に影響を与えにくいパラメータである。そこで、本実施形態のように、温度の絶対値ではなく温度差(測定サンプル111内部の熱伝導)を用い、近似曲線の決定、および、この近似曲線と実測値による熱伝導率の算出を行うと、実測結果とシミュレーション結果との誤差が少ない状態で熱伝導率を算出することができる。このため、高い精度で熱伝導率の算出を行うことができる。
【0099】
なお、熱伝導率算出処理において、実測温度に対応する熱伝導率が近似関数毎に異なる場合の処理は、上記手法に限られない。例えば、各温度測定点について得られた熱伝導率の平均を、測定サンプル111の熱伝導率と算出してもよい。
【0100】
本実施形態においても、投入電力決定処理において温度を測定する測定点の数と、温度測定点の数とが同じであれば、第一の実施形態と同様、パラメータ決定処理において改めて測定点の温度を測定せず、投入電力決定処理において測定した温度を用いるよう構成してもよい。
【0101】
<<実施例1>>
以下、本発明の実施例を示す。まず、第一および第二の実施形態の実施例を示す。ここでは、100mm角×1mmの銅平板(390W/mK)と150mm×50mm×50mmのアルミ合金(170W/mK)の成型品を被測定物(測定サンプル)111とし、投入電力は測定点の温度差が2℃となる2Wとした。また、熱伝導率設定値として、200W/mK、300W/mK、400W/mK、500W/mK、600W/mKの5種を用いた。また、温度測定点は、図9に示す3点(それぞれ、A点、B点、C点)とした。熱流体解析ソフトウェアとして、CFdesign(登録商標)を用いた。
【0102】
図13は、上記第二の実施形態の手法に従って、熱伝導率算出処理を行い、シミュレートして得た熱伝導率設定値毎の推定温度を、温度測定点毎にフィッティングした近似曲線のグラフである。
【0103】
このとき、温度測定点Aでの実測温度は、46.9℃であった。また、測定点Bでの実測温度は、45.7℃であり、測定点Cでの実測温度は、45.2℃であった。図13のグラフから測定サンプル111の熱伝導率として、発熱源近傍の温度測定点Aによる結果から、約62.5W/mKを得た。ここでは、熱伝導率の公表値が390W/mKといった高い熱伝導率を有するアルミ合金による成型品を用いたが、熱伝導率が10W/mK程度と低い高熱伝導樹脂などでは、第一および第二の実施形態の温度による熱伝導率推定の精度はさらに高まる。
【0104】
<<実施例2>>
次に、第三の実施形態の実施例を示す。測定サンプル111、投入電力、用いた熱伝導率設定値、温度測定点、使用した熱流体解析ソフトウェアは、上記実施例1と同じとした。
【0105】
図14は、上記第三の実施形態の手法に従って、熱伝導率算出処理を行い、シミュレートして得た熱伝導率設定値毎の、A点とB点との推定温度差、A点とC点との推定温度差、B点とC点との推定温度差それぞれの近似曲線のグラフである。
【0106】
各点の実測温度は、上記第二の実施例のとおりである。従って、測定サンプル111の熱伝導率として、456W/mKを得る。この値は公表値390W/mKと17%の差異となり、測定対象が高い熱伝導率を有する場合であっても、実施例1よりもさらに精度良く測定できることが分かる。
【符号の説明】
【0107】
11:測定点、12:測定点、100:熱伝導率算出システム、110:温度測定装置、111:測定サンプル、112:樹脂ケース、113:ヒータ、114:熱電対、115:放射温度計、120:熱伝導率算出装置、210:投入電力決定部、220:パラメータ決定部、230:熱流体解析部、240:近似関数作成部、250:熱伝導率算出部、310:測定値保持部、320:仮設定値保持部
【特許請求の範囲】
【請求項1】
測定サンプルの熱伝導率を算出する熱伝導率算出方法であって、
前記測定サンプルに熱を供給する発熱体に投入する電力を決定する投入電力決定ステップと、
前記発熱体に前記投入電力を投入して発熱させた際の前記測定サンプルの温度を、予め定めた測定点において測定し、実測温度を得る温度測定ステップと、
予め定められた複数の熱伝導率設定値それぞれに対応する前記測定サンプルの温度を推定温度として算出する温度推定ステップと、
前記複数の熱伝導率設定値毎の前記推定温度から熱伝導率と推定温度とを関連付ける近似関数を決定する近似関数算出ステップと、
前記近似関数上で、前記実測温度を用い、当該測定サンプルの熱伝導率を算出する熱伝導率算出ステップと、を備えること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項2】
請求項1記載の熱伝導率算出方法であって、
前記熱伝導率算出ステップでは、前記近似関数上で前記実測温度に対応する熱伝導率を当該測定サンプルの熱伝導率とすること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項3】
請求項1記載の熱伝導率算出方法であって、
前記温度測定ステップで前記実測温度を得る測定点は複数であり、
前記温度推定ステップでは、前記複数の測定点それぞれの推定温度を算出し、
前記近似関数算出ステップでは、前記複数の測定点それぞれについて前記近似関数を決定し、
前記熱伝導率算出ステップでは、前記測定点毎の近似関数上で、前記実測温度を用い、当該測定サンプルの熱伝導率を算出すること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項4】
請求項3記載の熱伝導率算出方法であって、
前記熱伝導率算出ステップでは、前記複数の測定点それぞれについて求めた前記近似関数上で熱伝導率に対応する近似温度と実測温度との差の2乗和が最小となる熱伝導率を、当該測定サンプルの熱伝導率とすること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項5】
請求項1記載の熱伝導率算出方法であって、
前記温度測定ステップが前記実測温度を得る測定点は複数であり、
前記温度推定ステップでは、前記複数の測定点それぞれの推定温度を算出し、
前記近似関数算出ステップでは、前記複数の測定点間の推定温度の差である推定温度差を算出し、当該測定点間毎に前記近似関数を熱伝導率と推定温度差とを関連付ける関数として決定し、
前記熱伝導率算出ステップでは、前記複数の測定点間の実測温度の差である実測温度差を算出し、前記測定点間毎の近似関数上で、前記実測温度差を用い、当該測定サンプルの熱伝導率を算出すること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項6】
請求項5記載の熱伝導率算出方法であって、
前記温度測定ステップが前記実測温度を得る測定点は3以上であり、
前記熱伝導率算出ステップでは、前記複数の測定点間それぞれについて求めた前記近似関数上で熱伝導率に対応する近似温度差と実測温度差との差の2乗和が最小となる熱伝導率を、当該測定サンプルの熱伝導率とすること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項7】
請求項1から6記載の熱伝導率算出方法であって、
前記投入電力決定ステップでは、前記測定サンプル上の、前記発熱体に最も近い位置と最も離れた位置との温度差が所定以上となる電力であって、最小の電力を、前記投入電力と決定すること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項8】
請求項1から7記載の熱伝導率算出方法であって、
前記温度測定ステップ直後に前記測定サンプルの表面の放射率を算出する放射率算出手段をさらに備え、
前記温度推定ステップでは、前記放射率も加味し、前記推定温度を算出すること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項9】
請求項1から8いずれか1項記載の熱伝導率算出方法であって、
前記温度推定ステップでは、熱流体解析ソフトウェアを用い、前記推定温度を算出すること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項10】
測定サンプルの未知の熱伝導率を算出する熱伝導率算出システムであって、
前記測定サンプルに熱を供給する発熱体に投入する投入電力を決定する投入電力決定手段と、
前記発熱体に前記電力を投入して発熱させた際の前記測定サンプルの温度を、予め定めた測定点において測定し、実測温度を得る温度測定手段と、
予め定められた複数の熱伝導率設定値それぞれに対応する前記測定サンプルの温度を推定温度として算出する温度推定手段と、
前記複数の熱伝導率設定値毎の前記推定温度から熱伝導率と推定温度とを関連付ける近似関数を決定する近似関数算出手段と、
前記近似関数上で、前記実測温度を用い、当該測定サンプルの熱伝導率を算出する熱伝導率算出手段と、を備えること
を特徴とする熱伝導率算出システム。
【請求項11】
コンピュータを、
測定サンプルに熱を供給する発熱体に投入する投入電力を決定する投入電力決定手段と、
前記発熱体に前記電力を投入して発熱させた際の前記測定サンプルの温度を、予め定めた測定点において測定し、実測温度を得る温度測定手段と、
測定サンプルの未知の熱伝導率の、予め定められた複数の設定値それぞれに対応する前記測定サンプルの温度を推定温度として算出する温度推定手段と、
前記複数の設定値毎の前記推定温度から熱伝導率と推定温度とを関連付ける近似関数を決定する近似関数算出手段と、
前記近似関数上で、前記実測温度を用い、当該測定サンプルの熱伝導率を算出する熱伝導率算出手段として機能させるためのプログラム。
【請求項1】
測定サンプルの熱伝導率を算出する熱伝導率算出方法であって、
前記測定サンプルに熱を供給する発熱体に投入する電力を決定する投入電力決定ステップと、
前記発熱体に前記投入電力を投入して発熱させた際の前記測定サンプルの温度を、予め定めた測定点において測定し、実測温度を得る温度測定ステップと、
予め定められた複数の熱伝導率設定値それぞれに対応する前記測定サンプルの温度を推定温度として算出する温度推定ステップと、
前記複数の熱伝導率設定値毎の前記推定温度から熱伝導率と推定温度とを関連付ける近似関数を決定する近似関数算出ステップと、
前記近似関数上で、前記実測温度を用い、当該測定サンプルの熱伝導率を算出する熱伝導率算出ステップと、を備えること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項2】
請求項1記載の熱伝導率算出方法であって、
前記熱伝導率算出ステップでは、前記近似関数上で前記実測温度に対応する熱伝導率を当該測定サンプルの熱伝導率とすること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項3】
請求項1記載の熱伝導率算出方法であって、
前記温度測定ステップで前記実測温度を得る測定点は複数であり、
前記温度推定ステップでは、前記複数の測定点それぞれの推定温度を算出し、
前記近似関数算出ステップでは、前記複数の測定点それぞれについて前記近似関数を決定し、
前記熱伝導率算出ステップでは、前記測定点毎の近似関数上で、前記実測温度を用い、当該測定サンプルの熱伝導率を算出すること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項4】
請求項3記載の熱伝導率算出方法であって、
前記熱伝導率算出ステップでは、前記複数の測定点それぞれについて求めた前記近似関数上で熱伝導率に対応する近似温度と実測温度との差の2乗和が最小となる熱伝導率を、当該測定サンプルの熱伝導率とすること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項5】
請求項1記載の熱伝導率算出方法であって、
前記温度測定ステップが前記実測温度を得る測定点は複数であり、
前記温度推定ステップでは、前記複数の測定点それぞれの推定温度を算出し、
前記近似関数算出ステップでは、前記複数の測定点間の推定温度の差である推定温度差を算出し、当該測定点間毎に前記近似関数を熱伝導率と推定温度差とを関連付ける関数として決定し、
前記熱伝導率算出ステップでは、前記複数の測定点間の実測温度の差である実測温度差を算出し、前記測定点間毎の近似関数上で、前記実測温度差を用い、当該測定サンプルの熱伝導率を算出すること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項6】
請求項5記載の熱伝導率算出方法であって、
前記温度測定ステップが前記実測温度を得る測定点は3以上であり、
前記熱伝導率算出ステップでは、前記複数の測定点間それぞれについて求めた前記近似関数上で熱伝導率に対応する近似温度差と実測温度差との差の2乗和が最小となる熱伝導率を、当該測定サンプルの熱伝導率とすること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項7】
請求項1から6記載の熱伝導率算出方法であって、
前記投入電力決定ステップでは、前記測定サンプル上の、前記発熱体に最も近い位置と最も離れた位置との温度差が所定以上となる電力であって、最小の電力を、前記投入電力と決定すること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項8】
請求項1から7記載の熱伝導率算出方法であって、
前記温度測定ステップ直後に前記測定サンプルの表面の放射率を算出する放射率算出手段をさらに備え、
前記温度推定ステップでは、前記放射率も加味し、前記推定温度を算出すること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項9】
請求項1から8いずれか1項記載の熱伝導率算出方法であって、
前記温度推定ステップでは、熱流体解析ソフトウェアを用い、前記推定温度を算出すること
を特徴とする熱伝導率算出方法。
【請求項10】
測定サンプルの未知の熱伝導率を算出する熱伝導率算出システムであって、
前記測定サンプルに熱を供給する発熱体に投入する投入電力を決定する投入電力決定手段と、
前記発熱体に前記電力を投入して発熱させた際の前記測定サンプルの温度を、予め定めた測定点において測定し、実測温度を得る温度測定手段と、
予め定められた複数の熱伝導率設定値それぞれに対応する前記測定サンプルの温度を推定温度として算出する温度推定手段と、
前記複数の熱伝導率設定値毎の前記推定温度から熱伝導率と推定温度とを関連付ける近似関数を決定する近似関数算出手段と、
前記近似関数上で、前記実測温度を用い、当該測定サンプルの熱伝導率を算出する熱伝導率算出手段と、を備えること
を特徴とする熱伝導率算出システム。
【請求項11】
コンピュータを、
測定サンプルに熱を供給する発熱体に投入する投入電力を決定する投入電力決定手段と、
前記発熱体に前記電力を投入して発熱させた際の前記測定サンプルの温度を、予め定めた測定点において測定し、実測温度を得る温度測定手段と、
測定サンプルの未知の熱伝導率の、予め定められた複数の設定値それぞれに対応する前記測定サンプルの温度を推定温度として算出する温度推定手段と、
前記複数の設定値毎の前記推定温度から熱伝導率と推定温度とを関連付ける近似関数を決定する近似関数算出手段と、
前記近似関数上で、前記実測温度を用い、当該測定サンプルの熱伝導率を算出する熱伝導率算出手段として機能させるためのプログラム。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【公開番号】特開2011−106918(P2011−106918A)
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−261001(P2009−261001)
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成23年6月2日(2011.6.2)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年11月16日(2009.11.16)
【出願人】(000002303)スタンレー電気株式会社 (2,684)
【Fターム(参考)】
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