説明

熱伝導部材

【解決手段】熱伝導性硬化物の薄膜の一方の面に基材フィルムを、他方の面にセパレーターフィルムをそれぞれ剥離可能に有する熱伝導部材であって、熱伝導性硬化物が、
(a)オルガノポリシロキサン、
(b)熱伝導性充填剤、
(c)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(d)白金系化合物、
(e)反応制御剤、
(f)R3SiO1/2単位(Rは脂肪族不飽和結合を含有しない1価炭化水素基)とSiO4/2単位とを含み、R3SiO1/2単位とSiO4/2単位とのモル比が0.5〜1.5であるシリコーンレジン
を必須成分とする組成物の硬化物であり、基材フィルムがパーフロロアルキル基及びパーフロロポリエーテル基から選ばれるフッ素置換基を主鎖にもつ変性シリコーンにて離型処理を施したものである熱伝導部材。
【効果】本発明の熱伝導部材は、単層、薄膜でも取り扱い性が良好であり、また発熱性素子や放熱部材に粘着して容易に固定でき、しかも基材からの剥離性も良好である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、特には発熱性素子の冷却のために、発熱性素子の熱境界面とヒートシンク又は回路基板などの放熱部材との間に介装し得る熱伝導部材に関する。
【背景技術】
【0002】
パーソナルコンピューター、デジタルビデオディスク、携帯電話等の電子機器に使用されるCPU、ドライバICやメモリー等のLSIチップ、LED等の発光素子は、高性能化・高速化・小型化・高集積化に伴い、それ自身が大量の熱を発生するようになり、その熱による素子の温度上昇は素子自身の動作不良、破壊を引き起こす。そのため、動作中の素子の温度上昇を抑制するための多くの熱放散方法及びそれに使用する放熱部材が提案されている。
【0003】
従来、電子機器等においては、動作中の素子の温度上昇を抑えるために、アルミニウムや銅等の熱伝導率の高い金属板を用いたヒートシンク等の放熱部材が使用されている。この放熱部材は、素子が発生する熱を伝導し、熱を外気との温度差によって表面から放出する。
【0004】
素子から発生する熱を放熱部材に効率よく伝えるためには、素子と放熱部材との間に生じるわずかな間隙を熱伝導性素材で埋めることが効果的である。その熱伝導性素材として、熱伝導性充填剤を配合した熱伝導性シートや熱伝導性グリース等が用いられ、これら熱伝導性素材を素子と放熱部材との間に介装させ、これら熱伝導性素材を介して素子から放熱部材への熱伝導を実現している。
【0005】
シートはグリースに比べ取り扱い性に優れており、熱伝導性シリコーンゴム等で形成された熱伝導性シートは様々な分野に用いられている。
熱伝導性シートは、取り扱い性を重視した一般品と、密着性を重視した低硬度品とに大別することができる。
【0006】
このうち一般品は、殆どの場合、タイプAデュロメーター硬度60以上の硬いゴムをシート状にしたものであり、0.1mm程度の薄膜状態であっても単品での取り扱いが可能であるが、表面に粘着感がないため、素子及び放熱部材への仮固定が困難である。これを解決するため、薄膜状の放熱シートの片面乃至両面に粘着剤を塗布し、容易に仮固定ができるようにした粘着性付与タイプが提案されている。しかしながら、塗布した粘着成分は熱伝導性が十分なものではないため、粘着剤塗布品の熱抵抗は塗布しないものに比べ大きく増加してしまうという問題があった。また、粘着剤の塗布は、シートの厚さそのものを増加させるため、この点においても熱抵抗には不利に働く。
【0007】
一方、低硬度品は、アスカーC硬度60以下の低硬度熱伝導材料をシート状に成形したものであり、粘着剤などを塗布せずとも、自身を仮固定できる程度の粘着力を保持している。しかしながら、その低硬度を実現するために、シート中に多量の可塑剤を配合したり、架橋を非常に緩くしているため、薄膜にした際の強度及び取り扱い性に難点があり、良好な取り扱い性を得るためにはある一定以上の厚みが必要であった。そのため、低硬度品の熱抵抗を低下させることは困難であった。また、このような低硬度品は、オイルブリードが発生し、近傍の素子を汚染し易いという欠点があった。
なお、本発明に関連する先行文献としては、下記のものが挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2005−035264号公報
【特許文献2】特開2005−206733号公報
【特許文献3】特開2006−182888号公報
【特許文献4】特開2006−188610号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明の目的は、単層・薄膜でも取り扱い可能で、かつ、自身を素子又は放熱部材に容易に固定できる粘着性をもつ熱伝導部材を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、付加反応硬化型のシリコーンゴム組成物に熱伝導性充填剤を配合すると共に、シリコーンレジンを配合し、これを非ジメチルシリコーンにて表面離型処理を施した基材に薄膜状に塗布し、硬化させた熱伝導性硬化物が、後述する実施例に示した通り、良好な表面粘着を有し、またブリード性、基材からの剥離性、剥離後の取り扱い性が良好で、発熱性素子と放熱部材との間に介装して発熱性素子から発生する熱を放熱部材に伝えるための熱伝導部材として非常に有効であることを知見し、本発明をなすに至ったものである。
【0011】
従って、本発明は、熱伝導性硬化物の薄膜の一方の面に基材フィルムを、他方の面にセパレーターフィルムをそれぞれ剥離可能に有する熱伝導部材であって、熱伝導性硬化物が、
(a)アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(b)熱伝導性充填剤:200〜2,000質量部、
(c)オルガノハイドロジェンポリシロキサン:(c)成分のケイ素原子に直接結合した水素原子と(a)成分のアルケニル基とのモル比で0.5〜5.0となる量、
(d)白金系化合物:白金系元素量で(a)成分の0.1〜1,000ppm、
(e)反応制御剤:必要量、
(f)R3SiO1/2単位(Rは脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基を示す)とSiO4/2単位とを含み、R3SiO1/2単位とSiO4/2単位とのモル比が0.5〜1.5であるシリコーンレジン:50〜300質量部
を必須成分とする組成物の硬化物であり、基材フィルムがパーフロロアルキル基及びパーフロロポリエーテル基から選ばれるフッ素置換基を主鎖にもつ変性シリコーンにて離型処理を施したものであることを特徴とする熱伝導部材を提供する。
【0012】
この場合、セパレーターフィルムが、パーフロロアルキル基及びパーフロロポリエーテル基から選ばれるフッ素置換基を主鎖にもつ変性シリコーンにて離型処理を施したものであることが好ましく、パーフロロポリエーテル基が、下記式(7)〜(9)
【化1】

で示されるものであることが好ましい。
【0013】
更に、シリコーンレジン(f)の配合量が99.6〜300質量部であることが好ましく、熱伝導性充填剤(b)が金属、酸化物、窒化物から選ばれるものが好ましい。
【発明の効果】
【0014】
本発明の熱伝導部材は、熱伝導性硬化物が、単層、薄膜でも取り扱い性が良好であり、また発熱性素子や放熱部材に粘着して容易に固定でき、しかも基材からの剥離性も良好である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の熱伝導性硬化物を得るためのシリコーンゴム組成物は、
(a)アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン、
(b)熱伝導性充填剤、
(c)オルガノハイドロジェンポリシロキサン、
(d)白金系化合物、
(e)反応制御剤、
(f)シリコーンレジン
を必須成分とする。
【0016】
本発明に用いられる(a)成分のアルケニル基を有するオルガノポリシロキサンは、分子鎖に少なくとも2個のアルケニル基を含有するもので、通常は、主鎖部分が基本的にジオルガノシロキサン単位の繰り返しからなるものが好ましい。
【0017】
(a)成分として具体例には、下記平均構造式(1)〜(3)で表されるものが挙げられる。
【0018】
【化2】


(式中、R1は相互に独立した脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基、Xはアルケニル基である。a及びbはそれぞれ0又は1以上の正数、cは1以上の正数、dは2以上の正数である。)
【0019】
上記式中、R1の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基などのアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基、並びにこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等の炭素原子数が1〜10、特に炭素原子数が1〜6のものが挙げられ、これらの中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の非置換又は置換のアルキル基、及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基である。また、R1は全てが同一であっても異なっていてもよい。R1には耐溶剤性などの特殊な特性を要求されない限り、コスト、その入手のし易さ、化学的安定性、環境負荷などの理由により全てメチル基が選ばれることが多い。
【0020】
また、Xのアルケニル基としては、例えば、ビニル基、アリル基、プロペニル基、イソプロペニル基、ブテニル基、ヘキセニル基、シクロヘキセニル基等の通常、炭素原子数2〜8程度のものが挙げられ、中でもビニル基、アリル基等の低級アルケニル基が好ましく、特にはビニル基が好ましい。
【0021】
式中、aは0又は1以上の正数であるが、10≦a≦10,000を満たす正数であることが好ましく、より好ましくは50≦a≦2,000を満足する正数であり、更に好ましくは100≦a≦1,000を満足する正数である。bは0又は1以上の正数であるが、望ましくは0≦b/(a+b)≦0.5であり、更に望ましくは0≦b/(a+b)≦0.1である。cは1以上の正数であるが、望ましくは0<c/(a+c)≦0.5であり、更に望ましくは0<c/(a+c)≦0.1である。dは2以上の正数であるが、望ましくは0<d/(a+d)≦0.5であり、更に望ましくは0<d/(a+d)≦0.1である。
このオルガノポリシロキサンは、1種単独で使用しても、複数の異なる粘度のものを併用してもかまわない。
【0022】
本発明に用いられる(b)成分の熱伝導性充填剤は、非磁性の銅、アルミニウム等の金属、アルミナ、シリカ、マグネシア、ベンガラ、ベリリア、チタニア、ジルコニア等の金属酸化物、窒化アルミニウム、窒化ケイ素、窒化ホウ素等の金属窒化物、人工ダイヤモンドあるいは炭化ケイ素等、一般に熱伝導性充填剤とされる物質を用いることができる。
【0023】
これら熱伝導性充填剤は、平均粒径が0.1〜100μm、望ましくは0.5〜50μm、更に望ましくは0.5〜30μmのものを用いることができる。これら充填剤は1種単独で用いてもよいし、複数種を混合して用いてもよい。また、平均粒径の異なる粒子を2種以上用いることも可能である。なお、本発明において、平均粒径は体積平均粒径であり、マイクロトラック粒度分布測定装置MT3300EX(日機装株式会社)による測定値である。
【0024】
熱伝導性充填剤の配合量は、(a)成分100質量部に対して200〜2,000質量部、好ましくは300〜1,500質量部である。熱伝導性充填剤の配合量が多すぎると流動性が失われ、成形が困難であり、少なすぎると所望の熱伝導性を得ることができない。
【0025】
本発明に用いられる(c)成分のオルガノハイドロジェンポリシロキサンは、分子鎖にケイ素原子に直接結合する水素原子(即ち、Si−H基)を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するものである。
このようなオルガノハイドロジェンポリシロキサンとして、具体的には、下記平均構造式(4)〜(6)で表されるものが挙げられる。
【0026】
【化3】


(式中、R2は相互に独立した脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、e、hは0又は1以上の正数、gは1以上の正数、fは2以上の正数である。)
【0027】
上記式(4)〜(6)中、R2の脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基、並びにこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等の炭素原子数が1〜10、特に炭素原子数が1〜6のものが挙げられ、これらの中でも、好ましくはメチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の非置換又は置換のアルキル基及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基である。また、R2は全てが同一であっても異なっていてもよいが、R1と同じ置換基であることが望ましい。
【0028】
2には、R1と同様に、耐溶剤性などの特殊な特性を要求されない限り、コスト、その入手のし易さ、化学的安定性、環境負荷などの理由により全てメチル基が選ばれることが多い。
【0029】
また、式中のeは0又は1以上の正数であるが、好ましくは0〜500であり、より好ましくは5〜100の正数である。fは2以上の正数であるが、好ましくは2〜100であり、より好ましくは2〜50の正数である。gは1以上の正数であるが、好ましくは1〜100であり、より好ましくは1〜50の正数である。hは0又は1以上の正数であるが、好ましくは0〜100であり、より好ましくは0〜50の正数である。
【0030】
これら(c)成分の添加量は、(c)成分のSi−H基が(a)成分中のアルケニル基1モルに対して0.5〜5.0モルとなる量、望ましくは0.8〜4.0モルとなる量、更に望ましくは1.0〜3.0モルとなる量である。(c)成分のSi−H基の量が(a)成分中のアルケニル基1モルに対して0.5モル未満では成形したシートが硬化しなかったり、成形したシートの強度が不十分で、成形体として取り扱うことができなくなるなどの問題が発生する。5.0モルを超える量では、成形後のシートに粘着感が不十分となり、自身の粘着で自身を固定することができないという問題が発生する。
【0031】
本発明に用いられる(d)成分の白金系化合物(白金族系硬化触媒)は、(a)成分中のアルケニル基と、(c)成分中のSi−H基との付加反応を促進するための触媒であり、ヒドロシリル化反応に用いられる触媒として周知の触媒が挙げられる。その具体例としては、例えば、白金(白金黒を含む)、ロジウム、パラジウム等の白金族金属単体、H2PtCl4・nH2O、H2PtCl6・nH2O、NaHPtCl6・nH2O、KHPtCl6・nH2O、Na2PtCl6・nH2O、K2PtCl4・nH2O、PtCl4・nH2O、PtCl2、Na2HPtCl4・nH2O(但し、式中、nは0〜6の整数であり、好ましくは0又は6である。)等の塩化白金、塩化白金酸及び塩化白金酸塩、アルコール変性塩化白金酸、塩化白金酸とオレフィンとのコンプレックス、白金黒、パラジウム等の白金族金属をアルミナ、シリカ、カーボン等の担体に担持させたもの、ロジウム−オレフィンコンプレックス、クロロトリス(トリフェニルフォスフィン)ロジウム(ウィルキンソン触媒)、塩化白金、塩化白金酸又は塩化白金酸塩とビニル基含有シロキサンとのコンプレックスなどが挙げられる。
【0032】
(d)成分の使用量は、所謂触媒量でよく、通常、(a)成分に対する白金族金属元素の質量換算で、0.1〜1,000ppmであるが、望ましくは0.5〜200ppm、更に望ましくは1.0〜100ppmである。
【0033】
本発明に用いられる(e)成分の反応制御剤は、(d)成分の存在下で進行する(a)成分と(c)成分の反応速度を調整するためのものである。
【0034】
(e)成分の例としては、アセチレンアルコール化合物、アミン化合物、リン化合物、硫黄化合物などが挙げられるが、この中でもアセチレンアルコール化合物が望ましい。その添加量は、所望の反応速度に調整できる量であれば任意であるが、(a)成分100質量部に対し0.01〜2.0質量部が好ましい。
【0035】
本発明に用いられる(f)成分のシリコーンレジンは、本発明の硬化物に粘着性を付与させるために添加される。
【0036】
(f)成分はR3SiO1/2単位(M単位)と、SiO4/2単位(Q単位)の共重合体であり、M単位とQ単位の比(モル比)がM/Q=0.5〜1.5、好ましくは0.6〜1.4、更に好ましくは0.7〜1.3である。
M/Qが0.5未満の場合、あるいはM/Qが1.5を超える場合、所望の粘着力が得られなくなる。
【0037】
Rは脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert−ブチル基、ペンチル基、ネオペンチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基、ドデシル基等のアルキル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基等のシクロアルキル基、フェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニリル基等のアリール基、ベンジル基、フェニルエチル基、フェニルプロピル基、メチルベンジル基等のアラルキル基、並びにこれらの基の炭素原子に結合している水素原子の一部又は全部が、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、シアノ基などで置換された基、例えば、クロロメチル基、2−ブロモエチル基、3−クロロプロピル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基、シアノエチル基、3,3,4,4,5,5,6,6,6−ノナフルオロヘキシル基等の炭素原子数が1〜10、特に炭素原子数が1〜6のものが挙げられ、これらの中でも好ましくは、メチル基、エチル基、プロピル基、クロロメチル基、ブロモエチル基、3,3,3−トリフルオロプロピル基、シアノエチル基等の炭素原子数1〜3の非置換又は置換のアルキル基及びフェニル基、クロロフェニル基、フルオロフェニル基等の非置換又は置換のフェニル基である。また、Rは全てが同一であっても異なっていてもよいが、R1と同じ置換基であることが望ましい。
【0038】
Rには、R1と同様に、耐溶剤性などの特殊な特性を要求されない限り、コスト、その入手のし易さ、化学的安定性、環境負荷などの理由により全てメチル基が選ばれることが多い。
【0039】
(f)成分の添加量は、(a)成分100質量部に対して、50〜300質量部、好ましくは60〜200質量部、更に好ましくは70〜150質量部である。(f)成分の添加量が、50質量部未満及び300質量部を超える場合は、所望の粘着性が得られなくなる。
【0040】
(f)成分そのものは室温で固体又は粘稠な液体であるが、溶剤に溶解した状態で使用することも可能である。その場合、組成物への添加量は、溶剤分を除いた量で決定される。
【0041】
本組成物には、この他に、熱伝導性充填剤の表面処理剤、着色のための顔料・染料、難燃性付与剤、その他機能を向上させるための様々な添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加することが可能である。
【0042】
上記成分を均一に混合し、その混合物を基材上に薄膜状に成形し、加熱硬化することにより、本発明の熱伝導性硬化物を得ることが可能である。
【0043】
その成形厚さは、好ましくは20〜1,000μmであり、更に好ましくは30〜500μmである。成形厚さが20μm未満では、取り扱いが悪く、かつ粘着感が低下してしまう。一方、成形厚さが1,000μmを超えると所望の熱伝導性が得られなくなる。
【0044】
また、塗工成形する際には、粘度調整のためにトルエン等の溶剤を添加することも可能である。
【0045】
本発明に用いられるシリコーンゴム組成物を塗布する基材としては、紙やPETフィルムに非ジメチルシリコーン系ポリマーにて離型処理を施したものが適している。
非ジメチルシリコーン系ポリマーとしては、パーフロロアルキル基や、パーフロロポリエーテル基等のフッ素置換基を主鎖にもつ変性シリコーンを挙げることができる。
上記パーフロロポリエーテル基は、下記式(7)〜(9)で表すことができる。
【0046】
【化4】

【0047】
また、かかるフッ素置換基をもつ変性シリコーンとして具体的には、信越化学工業(株)製のX−70−201、X−70−258などが挙げられる。
【0048】
基材上への成形方法は、バーコーター、ナイフコーター、コンマコーター、スピンコーターなどを用いて基材上に液状の材料を塗布すること等が挙げられるが、上記記載方法に限定されるものではない。
【0049】
また、成形後に加熱させるための加熱温度条件は、溶剤を添加した場合は用いた溶剤が揮発し、(a)成分と(c)成分が反応し得る程度の温度であればかまわないが、生産性などの観点から60〜150℃が望ましく、80〜150℃が更に望ましい。60℃未満では、硬化反応が遅く生産性が悪くなってしまい、150℃を超えると、基材として用いるフィルムが変形してしまうおそれがある。なお、硬化時間は、通常0.5〜30分、好ましくは1〜20分である。
【0050】
硬化後の熱伝導性硬化物は、基材フィルムと同様な離型処理フィルムをセパレーターフィルムとして、基材とは逆の面に貼り合わせることで、輸送、定尺カット等の取り扱いを容易にすることができる。この際、基材フィルムとは離型剤の処理量や種類、フィルムの材質を変えて、基材フィルムとセパレーターフィルムの剥離力の軽重をつけることも可能である。
【0051】
このようにして得られた熱伝導性硬化物は、セパレーターフィルム又は基材フィルムを剥離した後、発熱素子又は放熱部材に貼り付け、その後、残りのフィルムを剥離することにより、薄膜であっても容易に配置することができ、かつ優れた熱伝導特性を示す。
【実施例】
【0052】
以下、実施例及び比較例を示し、本発明を具体的に説明するが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。なお、下記の例において%は、質量%を示す。
【0053】
[実施例1]
600mm2/sの粘度をもつ末端をビニル基で封止したジメチルポリシロキサン100gと10μmの平均粒径をもつアルミナ(電気化学工業(株)製DAW−10)600gを、品川式万能撹拌機に仕込み、60分間混合せしめ、次いで2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液を0.2g添加し、均一に混合せしめ、更に50%エチニルシクロヘキサノール−トルエン溶液を0.2g添加して均一に混合せしめ、最後に、下記平均構造式(10)をもつオルガノハイドロジェンポリシロキサンを5g、及びシリコーンレジントルエン溶液(不揮発分60%、M/Q(モル比)=1.15)を166g添加し、均一に混合して組成物aを得た。信越化学工業(株)製X−70−201を1.0g/m2塗布した厚さ100μmのPETフィルムに、この組成物aを風乾後の厚さが0.1mmとなるように塗布し、10分間室温にて風乾せしめた後、100℃雰囲気下に10分間曝露して硬化せしめ、厚さ0.1mmの硬化物Aを得た。
【0054】
【化5】

(Meはメチル基を示す。)
【0055】
[比較例1]
600mm2/sの粘度をもつ末端をビニル基で封止したジメチルポリシロキサン100g、100mm2/sの粘度をもつ末端をメチル基で封止したジメチルポリシロキサン100gと10μmの平均粒径をもつアルミナ(電気化学工業(株)製DAW−10)600gを、品川式万能撹拌機に仕込み、60分間混合せしめ、次いで2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液を0.2g添加し、均一に混合せしめ、更に50%エチニルシクロヘキサノール−トルエン溶液を0.2g添加して均一に混合せしめ、最後に、平均構造式(10)をもつオルガノハイドロジェンポリシロキサンを5g、及びトルエンを66g添加し、均一に混合して組成物bを得た。信越化学工業(株)製X−70−201を1.0g/m2塗布した厚さ100μmのPETフィルムに、この組成物bを風乾後の厚さが0.1mmとなるように塗布し、10分間室温にて風乾せしめた後、100℃雰囲気下に10分間曝露して硬化せしめ、厚さ0.1mmの硬化物Bを得た。
【0056】
[比較例2]
600mm2/sの粘度をもつ末端をビニル基で封止したジメチルポリシロキサン200gと10μmの平均粒径をもつアルミナ(電気化学工業(株)製DAW−10)600gを、品川式万能撹拌機に仕込み、60分間混合せしめ、次いで2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液を0.2g添加し、均一に混合せしめ、更に50%エチニルシクロヘキサノール−トルエン溶液を0.2g添加して均一に混合せしめ、最後に、平均構造式(10)をもつオルガノハイドロジェンポリシロキサンを5g、及びトルエンを66g添加し、均一に混合して組成物cを得た。信越化学工業(株)製X−70−201を1.0g/m2塗布した厚さ100μmのPETフィルムに、この組成物cを風乾後の厚さが0.1mmとなるように塗布し、10分間室温にて風乾せしめた後、100℃雰囲気下に10分間曝露して硬化せしめ、厚さ0.1mmの硬化物Cを得た。
【0057】
[比較例3]
600mm2/sの粘度をもつ末端をビニル基で封止したジメチルポリシロキサン200gと10μmの平均粒径をもつアルミナ(電気化学工業(株)製DAW−10)600gを、品川式万能撹拌機に仕込み、60分間混合せしめ、次いで2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液を0.2g添加し、均一に混合せしめ、更に50%エチニルシクロヘキサノール−トルエン溶液を0.2g添加して均一に混合せしめ、最後に、平均構造式(10)をもつオルガノハイドロジェンポリシロキサンを3.5g、及びトルエンを66g添加し、均一に混合して組成物dを得た。信越化学工業(株)製X−70−201を1.0g/m2塗布した厚さ100μmのPETフィルムに、この組成物dを風乾後の厚さが0.1mmとなるように塗布し、10分間室温にて風乾せしめた後、100℃雰囲気下に10分間曝露して硬化せしめ、厚さ0.1mmの硬化物Dを得た。
【0058】
[比較例4]
600mm2/sの粘度をもつ末端をビニル基で封止したジメチルポリシロキサン100g、100mm2/sの粘度をもつ末端をメチル基で封止したジメチルポリシロキサン100gと10μmの平均粒径をもつアルミナ(電気化学工業(株)製DAW−10)600gを、品川式万能撹拌機に仕込み、60分間混合せしめ、次いで2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液を0.2g添加し、均一に混合せしめ、更に50%エチニルシクロヘキサノール−トルエン溶液を0.2g添加して均一に混合せしめ、最後に、平均構造式(10)をもつオルガノハイドロジェンポリシロキサンを5g添加し、均一に混合して組成物eを得た。信越化学工業(株)製X−70−201を1.0g/m2塗布した厚さ100μmのPETフィルムに、この組成物eを風乾後の厚さが0.1mm及び0.5mmとなるように塗布し、100℃雰囲気下に10分間曝露して硬化せしめ、厚さ0.1mmの硬化物E1及び厚さ0.5mmの硬化物E2を得た。
【0059】
[比較例5]
600mm2/sの粘度をもつ末端をビニル基で封止したジメチルポリシロキサン200gと10μmの平均粒径をもつアルミナ(電気化学工業(株)製DAW−10)600gを、品川式万能撹拌機に仕込み、60分間混合せしめ、次いで2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液を0.2g添加し、均一に混合せしめ、更に50%エチニルシクロヘキサノール−トルエン溶液を0.2g添加して均一に混合せしめ、最後に、平均構造式(10)をもつオルガノハイドロジェンポリシロキサンを5g添加し、均一に混合して組成物fを得た。信越化学工業(株)製X−70−201を1.0g/m2塗布した厚さ100μmのPETフィルムに、この組成物fを風乾後の厚さが0.1mm及び0.5mmとなるように塗布し、100℃雰囲気下に10分間曝露して硬化せしめ、厚さ0.1mmの硬化物F1及び厚さ0.5mmの硬化物F2を得た。
【0060】
[比較例6]
600mm2/sの粘度をもつ末端をビニル基で封止したジメチルポリシロキサン200gと10μmの平均粒径をもつアルミナ(電気化学工業(株)製DAW−10)600gを、品川式万能撹拌機に仕込み、60分間混合せしめ、次いで2%塩化白金酸2−エチルヘキサノール溶液を0.2g添加し、均一に混合せしめ、更に50%エチニルシクロヘキサノール−トルエン溶液を0.2g添加して均一に混合せしめ、最後に、平均構造式(10)をもつオルガノハイドロジェンポリシロキサンを3.5g添加し、均一に混合して組成物gを得た。信越化学工業(株)製X−70−201を1.0g/m2塗布した厚さ100μmのPETフィルムに、この組成物gを風乾後の厚さが0.1mm及び0.5mmとなるように塗布し、100℃雰囲気下に10分間曝露して硬化せしめ、厚さ0.1mmの硬化物G1及び厚さ0.5mmの硬化物G2を得た。
【0061】
[比較例7]
実施例1で得た組成物aを100μmのPETフィルムに風乾後の厚さが0.1mmとなるように塗布し、10分間室温にて風乾せしめた後、100℃雰囲気下に10分間曝露して硬化せしめ、厚さ0.1mmの硬化物Hを得た。
【0062】
[比較例8]
実施例1で得た組成物aをニッパ(株)製PET75−V0に風乾後の厚さが0.1mmとなるように塗布し、10分間室温にて風乾せしめた後、100℃雰囲気下に10分間曝露して硬化せしめ、厚さ0.1mmの硬化物Iを得た。
【0063】
得られた硬化物A〜Iについて、表面の粘着、ブリード性、基材からの剥離性、剥離後の取り扱い性、熱抵抗について、比較を行った。結果を表1に示す。
【0064】
ブリード性は、0.1mm厚のサンプルを基材ごと20mm角にカットし、上質紙の上に樹脂層を向けて載せ、その上に100gの分銅を載せて密着させ、1日後の上質紙へのオイル移行具合を目視で確認し、比較した。
【0065】
剥離性は、硬化後の熱伝導性硬化物を基材フィルムより手によって剥がす際の重さにより評価した(感触による評価)。
【0066】
剥離後の取り扱い性は、剥がした後の熱伝導性硬化物の手による取り扱い性を本体形状に着目して評価した。
【0067】
熱抵抗は、TO−3P型トランジスタ形状のヒーターとヒートシンクの間に硬化物を挟み、300gf(=29kPa)の荷重をかけ、ヒーターに一定電力を印加して、ヒーター温度とヒートシンクの温度を測定し、以下の式により決定した。
熱抵抗=(ヒーター温度−ヒートシンク温度)/印加電力
【0068】
【表1】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱伝導性硬化物の薄膜の一方の面に基材フィルムを、他方の面にセパレーターフィルムをそれぞれ剥離可能に有する熱伝導部材であって、熱伝導性硬化物が、
(a)アルケニル基を有するオルガノポリシロキサン:100質量部、
(b)熱伝導性充填剤:200〜2,000質量部、
(c)オルガノハイドロジェンポリシロキサン:(c)成分のケイ素原子に直接結合した水素原子と(a)成分のアルケニル基とのモル比で0.5〜5.0となる量、
(d)白金系化合物:白金系元素量で(a)成分の0.1〜1,000ppm、
(e)反応制御剤:必要量、
(f)R3SiO1/2単位(Rは脂肪族不飽和結合を含有しない非置換又は置換の1価炭化水素基を示す)とSiO4/2単位とを含み、R3SiO1/2単位とSiO4/2単位とのモル比が0.5〜1.5であるシリコーンレジン:50〜300質量部
を必須成分とする組成物の硬化物であり、基材フィルムがパーフロロアルキル基及びパーフロロポリエーテル基から選ばれるフッ素置換基を主鎖にもつ変性シリコーンにて離型処理を施したものであることを特徴とする熱伝導部材。
【請求項2】
セパレーターフィルムが、パーフロロアルキル基及びパーフロロポリエーテル基から選ばれるフッ素置換基を主鎖にもつ変性シリコーンにて離型処理を施したものである請求項1記載の熱伝導部材。
【請求項3】
パーフロロポリエーテル基が、下記式(7)〜(9)
【化1】

で示されるものである請求項1又は2記載の熱伝導部材。
【請求項4】
シリコーンレジン(f)の配合量が99.6〜300質量部である請求項1、2又は3記載の熱伝導部材。
【請求項5】
熱伝導性充填剤(b)が、金属、酸化物、窒化物から選ばれる請求項1〜4のいずれか1項記載の熱伝導部材。

【公開番号】特開2012−102340(P2012−102340A)
【公開日】平成24年5月31日(2012.5.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−31271(P2012−31271)
【出願日】平成24年2月16日(2012.2.16)
【分割の表示】特願2007−102677(P2007−102677)の分割
【原出願日】平成19年4月10日(2007.4.10)
【出願人】(000002060)信越化学工業株式会社 (3,361)
【Fターム(参考)】