説明

熱伝達装置

熱源及び熱負荷を有する熱伝達装置。熱源及び熱負荷は、熱を前記熱源と前記熱負荷との間で伝えるように構成した1次及び2次回路を有する熱交換器と流体接続され、フィードバック導管が、2次回路出力流体が2次回路の入力へ戻ることができるように、2次回路の出力を2次回路の入力と流体接続している。前記フィードバック導管を通る流れが制御され、それによって1次回路温度が調節され得る。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は熱伝達装置、詳細には熱電気複合利用(CHP)施設で使用するのに適した熱伝達装置に関する。
【背景技術】
【0002】
熱伝達装置は、熱を熱源から複数の放熱器のような熱負荷へ伝達する。熱電気複合利用(CHP)の適用において、熱源は電力を設備内の他の器具に供給するために使用される電気も発生する。例えば、機関冷却回路から熱を発生させ、また発電機を駆動して、家庭内の電気器具に電力を供給できる電気を発生する内燃(I.C.)機関が使用されることがある。
【0003】
典型的なCHP装置では、内燃機関が使用され、機関からの冷却回路はポンプに連結される。ポンプは、冷却液を、暖房を設備に施す多くの放熱器内を循環させる。放熱器を通過した戻り水が機関冷却回路に再び入るか、又は通常そうであるように、機関(1次回路)冷却液を放熱器(2次回路)冷却液から分離している熱交換器に入るように、回路は閉じている。次いで、水は再加熱され、装置を巡って再循環させられる。
【0004】
機関はまた、循環ポンプ、それと設備内の他の電気的負荷に電力を供給するために、電気を発生できる発電機に連結される。家庭環境で、このようなCHPユニットは、家庭の暖房及び電力需要の一部又は全部を供給するために使用される。より大きな規模のユニットが、産業ユニット又は施設に対して同じことを同様に行うことができる。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、先行技術の熱伝達装置に関連する多くの問題が、特にCHP応用にある。
【0006】
まず第1に、CHPユニットの効率は、電気的負荷及び暖房負荷によって、並びに回路内の構成要素の寿命及び効率のような他の要因によって大幅に変化し得る。従来のCHP設備内の潜在的な特に非効率な部分は、1次冷却液回路と2次冷却液回路を分離させるために使用される熱交換器の中にある。回路を分離させておく1つの理由は、放熱器回路からの汚染物が機関回路に入るのを防止することである。
【0007】
内部配管面が石灰化及び/又は腐食によって劣化するにつれて、熱交換器の効率は急速に低下することがある。熱交換器が硬水(すなわち、カルシウム含有量が大きい水)を用いて使用される場合には、内部配管又は導管は熱交換器の熱伝達特性を低下させる湯あか層で覆われることがある。内面を覆うことにより、2つの流体の間の熱伝達係数は小さくなり、これにより熱交換器の全効率が低下する。その結果、CHPユニットの設備の暖房の必要性を満足する能力が低下する。熱交換器劣化の問題は、熱交換器が保守作業のために分解され、湯あかが除去されたり、又は装置が完全に故障して初めて分かることが多い。
【0008】
非効率の別の部分は、熱交換器と連動する熱源の動作に関する。従来の熱伝達装置及びCHPユニットは、熱及び電力に対する需要に変動がある動作では極めて効率が悪いことがある。熱及び電力の源、例えば、供給と需要を一致させるように絶えず試みている内燃機関の動作において、需要変動はこれに対応する変動を引き起こす。極端な状況では、熱源は、設備の需要を満たすために、スイッチを断続的にオンオフすることがあり、これは非常に非効率な動作となる。
【0009】
熱及び電力源は、それが効率的に動作できる一定水準に維持することが望ましい。装置が動作しているとき、負荷の需要ができるだけ早急かつ効率良く満たされ得るように、熱源と熱負荷との間の最大可能熱伝達能力を維持することもまた望ましい。熱及び電力源に対する間欠的及び/又は不安定な需要は、源の最高動作温度が達成されないことを意味する。
【0010】
CHPユニットのような、家庭用及び産業用熱伝達装置の信頼性及び効率は、他の電力又は熱源が制限される場合には、重要である。CHPユニットが主又は唯一の熱及び電力源として選択された設備の場合は、特にそうである。
【0011】
したがって、先行技術の装置よりも改善した効率及び信頼性を与える熱伝達装置が必要である。
【0012】
本発明は、効率良く、かつ確実に動作するように、CHPユニットのような単一又は複数の熱伝達装置を動作させ、制御する装置を提供し、そして性能を監視することによって、かつ各ユニットに対して必要な保守の予定を決めることによって、電力及び熱の供給途絶を防止又は予測するための手段を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
本発明の第1態様によれば、熱源及び熱負荷を有する熱伝達装置が提供され、前記熱源及び熱負荷は、熱を前記熱源と前記熱負荷との間で伝えるように構成した1次及び2次回路を有する熱交換器に流体接続され、フィードバック導管が、2次回路出力流体が2次回路の入力へ戻ることができるように、2次回路の出力を2次回路の入力に流体接続しており、前記フィードバック導管を通る流れが制御され、それによって1次回路温度が調節され得る。
【0014】
したがって、本発明によって、2次回路冷却液が制御される再循環が提供される。熱源が高出力レベルで動作する場合、特に熱源が高い安定した温度で維持される場合は、熱源の効率は大いに改善される。2次回路の再循環を制御することにより、2次冷却液の温度(したがって1次冷却液回路と2次冷却液回路の温度差)の制御が可能になるので、1次回路温度の制御が可能になる。
【0015】
熱源は、ボイラーのような任意の適切な熱の形態であり得る。主源は、例えば発電機に連結した内燃ディーゼル機関のような熱及び電気の両方の源であることが好ましい。機関からの熱は、機関ブロックを巡って流れ、かつ熱交換器の1次回路へ送られる1次冷却液によって、CHPユニットの熱交換器へ伝達される。
【0016】
電気エネルギーは、機関に接続した発電機によって供給され、発電機自体はCHP装置の電気的負荷、例えば家庭内のテレビ又は湯沸かしに接続されている。2次冷却液は設備を巡って(例えば、放熱器を通って)、そして熱交換器の2次回路を通って流れ、熱交換器で熱は1次回路から伝達される。
【0017】
フィードバック管又は導管を通る流れは、例えば3方制御弁のような制御弁を用いて、容易に制御可能であることが好ましい。2次回路からの出力管は、混合制御弁を通して2次回路の入力に連結されることが好ましい。混合制御弁は流体を熱交換器から受け取る入力を有してもよく、また、流体を負荷又は設備へ(例えば、蓄熱槽又は放熱器へ)送る出力と、流体を熱交換器の2次側入力へ再循環する第2出力とを有してもよい。混合制御弁はまた、再循環配管と負荷配管との間で、熱交換器からの出力を選択的に制御する制御信号を受信するための制御手段を有する。
【0018】
制御弁は、熱交換器の1次及び2次回路における流体の温度を示す温度計からの信号に応答して、局所的に制御されてもよい。あるいは、制御弁は遠隔制御されてもよく、熱交換器回路及び熱源についての温度情報が、再循環流を制御するために、データを処理し、かつ制御信号を制御弁へ送信する中央処理センタへ送信される。
【0019】
熱源の動作状態の表示もまた、制御弁を制御するために使用されてもよい。例えばI.C.機関が用いられる場合には、機関によって発生する熱量、機関速度と機関に加えられる負荷との間には関連がある。このことは次々に、動作を維持するために機関から除去する必要がある熱量を示すことになる。CHP装置では、これは機関に最高許容戻り冷却液温度、すなわち熱交換器の1次側から機関へ戻る最高温度を与えることになる(2次冷却液が熱すぎる場合は、それは1次冷却液を介して機関から十分な熱を奪うことができない)。したがって制御弁はまた、機関動作を維持するために、所要再循環流を決定するために使用され得る機関温度の表示を備えてもよい。
【0020】
本発明の制御又は混合制御弁は、この機関固有の情報、及び熱交換器の1次側の戻り冷却液温度の表示を用いて、流体の再循環を制御するように構成されてもよい。混合弁は機関の要求、そしてまた設備の暖房要求に基づいて流体の流れを制御する。2次回路流体を熱交換器を巡って再循環させることは、2次回路流体が回路を巡って繰り返して流れて、1次回路からますます多くの熱を集めるので、2次回路流体の温度を高める効果がある。しかしながら、熱力学の原理は、2次回路温度が1次回路温度に近づくにつれて、1次から2次回路へ伝達される熱は減少することを定めている。したがって、これは1次回路及び機関から除去される熱を減らす効果があり、それ故に1次回路から機関への戻り温度を高めることになる。それによって混合弁の制御は、機関温度を正確に制御できる。
【0021】
2次冷却液流を再循環させる別の利点は、それは熱交換器の内部配管における石灰化を低下させることである。小さい流速は石灰化及び/又は腐食を増加させるのに対して、流速が大きい熱交換器はより少ない石灰化及び腐食を呈することが示されている。
【0022】
CHPユニット内の欠陥もまた、効率の低下をもたらすことがある。いくつかの欠陥は熱交換器を参照して説明されるように、装置が故障するまで、又はユニットが点検されるまで明らかではないことがある。
【0023】
本発明の別の態様によれば、熱源と、熱負荷と、熱を前記熱源から前記熱負荷へ伝達する熱交換器とを有する熱伝達装置が提供され、熱交換器の熱効率の変化は、熱効率を第1の時間及び第2の時間において測定することによって決定され、かつ熱交換器が所定の熱効率に達することになる時間を予測するために使用される。
【0024】
通常、熱交換器の熱効率は時間とともに低下する(石灰化などにより)ので、これは最適な点検を決定するために有用な方法を与える。
【0025】
同様に、CHPユニット内の他の構成要素を監視することができる。例えば、CHP装置内の故障した弁、ポンプなどに起因する問題は、構成要素が完全に故障するまで、又は予定した点検を行い、故障した構成要素が取り外され及び/又は交換されるまで、認識されないことがある。
【0026】
したがって、本発明は装置内の熱交換器の熱効率の変化を監視する手段を提供する。熱効率の変化の監視は、外挿によって、好ましくは装置の他の測定パラメーターと組み合わせて、熱交換器又は他の構成要素が保守及び/又は交換を必要とする時期を決定するために用いることができる。
【0027】
装置の他のパラメーター、例えば、1次回路質量流量、2次質量流量、及び設備の需要温度を定めて、装置の効率を正確に計算してもよい。これらのパラメーターもまた、装置の他の保守要求を予測するために、ある期間にわたって監視し、比較してもよい。
【0028】
効率又は他のパラメーターに関して記録したデータの分析は、瞬時に処理してもよく、又は後に効率を決定するために、記録し処理してもよい。例えば、データは毎日、毎週、又は毎月ごとに処理されてもよい。
【0029】
熱交換器の効率は、少なくとも1つの入力及び1つの出力の温度を測定することによって計算してもよい。熱効率は、熱交換器の全入力及び全出力で温度を測定することによって決定されることが好ましい。
【0030】
熱交換器の入力及び出力の温度は、任意の適切な温度感知装置を用いて測定され得る。例えば、熱交換器の入力及び/又は出力の温度を示す信号を戻す外部に取り付けた温度計が使用されることがある。あるいは温度計は配管内に、かつそれぞれの回路内の冷却液の流れの中に直接取り付けられてもよい。
【0031】
温度計は、所望の温度測定点に直近の熱交換器に形成した凹み又はくぼみにさらに設けられることがある。これらの「くぼみ」はサーモウエルとして知られる。
【0032】
熱交換器の入口及び出口の温度を測定するように配置される温度計は、内部の温度計でもよいし、外部からの温度計でもよい。プレート構造を有する熱交換器が使用される場合には、温度計は熱交換器のプレートに形成した凹みに取り付けられることが好ましい。熱交換器の個々のプレートは、動作中温度計を熱交換器の入口又は出口の近くに設置するように、配管の入口及び出口に直近の穴を有して形成されることがある。あるいは、熱交換器のプレートは、温度計が熱交換器の幅を横切る任意の点に設置され得るように、熱交換器の幅全体を貫通して形成される穴を有して構成されることがある。
【0033】
温度信号は、適切なアルゴリズムを使用して、与えられた温度信号に対する熱交換器の効率を示す信号を決定する処理装置によって受信されることが好ましい。効率は、コンピュータ又は他の処理装置に、格納及び/又は処理されてもよい。処理装置は、例えば、視覚的表示装置によって、又は何らかの警報器によって、ユーザーに計算された効率を出力するための手段をさらに備えてもよい。
【0034】
熱伝達装置は、熱交換器、熱源、及び設備から温度データ情報を受信する局所処理装置をさらに含むことがある。局所処理装置は、装置についてのリアルタイム及び/又は履歴データを用いて、装置の熱効率は低下しつつあるのか、及び/又は装置は保守を必要としているかどうかを決定することがある。処理装置は、装置の現在の状態を示し、装置の全て又は一部の保守を要求する手段を有することが好ましい。処理装置はまた、設備からの需要に関係なく熱源を制御するための手段を備えてもよい。
【0035】
装置は、データを中央処理センタ又は装置へ転送し、装置内の構成要素を制御する中央処理装置から制御信号を受信するための手段をさらに含んでもよい。例えば、中央処理センタは、高い機関温度信号に応答して機関速度を制御したり、又は小さい質量流量の信号に応答して再循環流を制御してもよい。CHPユニットの効率及び状態は、中央制御センタによって、局所的に又は遠隔的に監視され制御されてもよい。
【0036】
装置は、任意の適切な接続を経由して制御信号及び装置情報を送受信してもよい。接続は、中央処理装置へのダイアルアップ接続であってもよい。中央処理装置への接続は、適切な交信プロトコル、及び局所又はウェブベースのコンピュータ又はサーバを用いて、ワールドワイドウェブを経由することが好ましい。
【0037】
中央処理センタは、単一のCHPユニットを監視及び/又は制御してもよいが、複数のCHPユニットを監視及び/又は制御することが好ましい。中央処理センタはまた、ユニットの各々から受信した動作データに基づいて、他の装置の保守要求と組み合わせて、CHPユニットの各々について保守の予定を決めてもよい。
【0038】
したがって、別の態様から見て、複数のCHPユニットを制御する制御装置であって、各ユニットに関する動作データを受信する手段と、前記データを処理する中央処理装置と、制御信号を個々のCHPユニットに送信する手段とを備える制御装置が提供される。
【0039】
制御装置は、ユニットに関する任意の動作データを受信してもよい。例えば、装置は、機関負荷、機関温度、熱交換器温度、冷却液質量流量、並びに設備の暖房及び電力要求に関するデータを受信することがある。
【0040】
制御装置は、通常動作を維持するように、又は通常動作を延長するように、制御信号をユニットへ戻して、それぞれの構成要素を制御してもよい。制御装置は、例えば、機関の出力を遠隔調節するか、又は機関を完全にオン又はオフすることができるようにしてもよい。
【0041】
制御装置はまた、各ユニットに関する履歴データを格納してもよく、全ユニット又は各ユニットに対する点検の間隔又は保守要求を予測してもよい。
【0042】
したがって、さらに別の態様から見て、本発明は、(A)ユニットの効率又は性能に関するデータをある期間にわたって受信する工程と、(B)前記データを外挿して、予測される今後の効率又は性能情報を計算する工程と、(C)前記データが予め決めておいた値に達するのを回避するように保守の予定を決める工程とを含むCHPユニットに対する保守の予定を決める方法を提供する。
【0043】
これは、外挿した情報を予め決めておいた値と比較し、前記予め決めておいた値に達することになる時期を予測することによって行われてもよい。
【0044】
予め決めておいた値は、達した場合に装置を故障させることになる任意の値であり得る。あるいは、予め決めておいた値は、ユニットの特定の構成要素の許容上限又は下限であり得る。例えば、予め決めておいた値は、機関が過熱せずに受け入れることができる最高戻り温度であってもよく、一旦この温度に達すると、装置が動作し続ける場合は、機関は過熱し始めることになる。
【0045】
装置はさらに、保守が必要であること、あるいは予め決めておいた値に達したこと又は達することになることを、CHPユニットの操作者又はユーザーに知らせる手段を備えてもよい。所要の保守はユニット自体で局所的に計算され、保守に対する要求が局所制御ユニットから送出されてもよい。制御ユニットは、どのような種類の保守が要求されているかを要求でもって示すことが好ましい。多くのCHPユニットについての保守の予定は、中央で決められることが好ましい。
【発明を実施するための最良の形態】
【0046】
以下、本発明の好ましい実施の形態を、一例を通して、かつ添付図面を参照して説明する。
【0047】
図1は、簡単な熱交換器を示す。熱交換器は、入力2及び出力3を有する1次回路1と、入力5及び出力6を有する2次回路4とを有する。水又は冷却液が、熱源7例えばボイラー又は機関から、熱交換器の1次回路を通って、再び熱源へ戻るように流れる。2次側では、冷却液が、負荷8例えば放熱器から、熱交換器内の2次チャンネルを通って、再び負荷へ戻るように流れる。それによって、熱が1次回路から2次回路へ伝達される。2次回路の水の実際の温度は、2つの回路の温度差、放熱器の設計の熱効率、回路の質量流量、及び熱交換器の劣化の関数である。
【0048】
図2は家庭用設備における本発明に係る装置の構成要素を示し、図4は構成要素の好ましい設備図を示す。家庭に設置される典型的な熱電気複合利用ユニットでは、CHPユニットからの温水は、ポンプ2によって家を巡って放熱器1へ送水される。水が暖房回路又は設備を巡って移動するにつれて、熱は放熱器で消費される。冷水が逆止弁3及びフィルタ4を経由してCHPユニットへ最終的に戻って、設備の回路を完結する。
【0049】
CHPユニットに入る水は、戻り水管をヒートポンプ6、ボイラー8、そしてまた蓄熱槽9と連結させる多岐管5に入る。もしも水が著しく低い温度で戻る場合は、ヒートポンプ7は設備から戻る水を予熱するために使用される。機関19は最大暖房能力、例えば、機関が冷却液入力と冷却液出力との間に発生させることができる最大差を有するので、機関が設備の水を所要レベルに加熱できるように、ヒートポンプを動作させて、水を予熱レベルに至らせることが必要であることがある。ヒートポンプは、水ポンプ7を経由して水を受け取る。機関19は、ガス又はガソリン機関、あるいはその他の機関であってもよいが、ディーゼル内燃機関であることが最も好ましい。
【0050】
水はまた、水を予熱するという同じ目的のためにボイラー8へ迂回させられ得る。また、ユニットによって発生した熱のヒートシンクとして使用される槽から冷水を受け取る蓄熱槽9の低温側への連結部がある。これについて以下にさらに詳細に説明する。
【0051】
水は多岐管5を通り、熱交換器の連結管10を経由して、フィルター11を通過する。ポンプ13は、熱交換器の2次側すなわち低温側である熱交換器12の入口121に水を注入する。水は熱交換器の2次側を通過し、出口122へ流れて、入口123と出口124との間で熱交換器の1次側の温水流によって加熱される。
【0052】
熱交換器の1次側では、ポンプ20は、1次水流を熱交換器に巡らして機関19へ循環させる。水は機関内の冷却チャンネルに入り、水は加熱され、入口123において熱交換器へ戻される。選択的に電気ヒーターが、1次回路を予熱するために、かつ1次回路を加熱するプロセスを迅速化するために、1次回路に連結され得る。
【0053】
1次回路の水位は、少量の水が2次回路から1次回路へ直接流れることを可能にする水位補正ユニット23によって維持され、機関を巡る冷却液はいつも充満していることを確実にする。機関を巡る冷却液の水位の低下は過熱及び損傷を引き起こすことがあり得る。1次回路の、かつ機関を巡る水の質量流量は一定に維持されることが好ましい。
【0054】
熱交換器の2次側を出た水は、再循環連結部21と出力連結部22との間で水流を制御する3方混合制御弁14に入る。再循環連結部21は、水が熱交換器の2次回路を巡って再循環するのを可能にし、それによって流速を大きくし、水が循環するたびに2次水の温度を上げる。一実施の形態では、ポンプ13の速度はまた、混合弁14又はCHP制御ユニットからの制御信号に応答して流速を変えるように制御され得る。
【0055】
CHPユニットは、通常自律制御モードで動作し、3方弁14のような装置の構成要素は、局所的に監視され制御される。好ましい実施の形態では、この局所制御は、与えられたCHPユニットのための局所制御装置を監視し、制御し、さらには作動しないようにできる中央監視及び制御センタと連動して作動する。これらの制御ユニットは、以下のとおり詳細に説明される。
【0056】
図2及び図4をさらに参照すると、混合制御弁14及びポンプ13のような構成要素は、CHP局所制御ユニット27によって制御される。制御ユニット27は、機関19に戻る冷却液の水温を測定する温度センサー24から信号を制御ライン25で受信する。
【0057】
さらに、制御装置は、機関19からの制御ライン26の機関負荷及び/又は温度信号と、そしてまた、例えば、設備の温度を制御するための設備内の温度自動調節器からの設備の暖房要求を示す入力とを受信する。制御ユニット27は、機関負荷又は温度信号を受信し、与えられた機関及び負荷に関して、熱交換器の1次側の機関への冷却液の最高戻り温度を計算する。これはユニットにおける参照用テーブルの形態をしていてもいいし、又は、例えば周囲温度などのような、他のパラメーターを考慮して計算されてもよい。
【0058】
制御ユニットは、機関の出力温度、すなわち入口123における入力水の温度を最高にすることを目的にし、これは現在の状況下における機関の熱発生能力を考慮して、この温度を達成するために出口124で要求される水の温度を決定することによって行う。与えらた機関の熱出力は、与えらた機関負荷及び動作状況に関して分かっているので、これは計算し得る。
【0059】
制御ユニット27は制御信号を、再循環管21に沿って迂回させられる水の量を制御するために使用される制御ライン28に乗せて、混合弁14へ送信する。出口124の温度は、最高戻り温度に達するまで常に測定され、達した時点で制御ユニット27は制御信号を混合弁へ送信して、水をライン22に沿って迂回させる。機関負荷が変化するにつれて、個所124の最高水温もまた変化し、それに応じて混合弁は、機関へ戻る水の最高温度を維持するために制御され得る。
【0060】
例えば、高負荷の下では、機関は高いレベルの熱を発生することになり、したがって機関は、その最高許容動作温度に達したり、過熱したりしないことを確実にするために、より高いレベルの冷却を必要とすることになる。したがって、高負荷の下では、出口124の戻り温度は、機関の十分な冷却を確実にするために低下させられることになる。
【0061】
これを達成するために、混合弁14は管21を巡る水の再循環を減らすか、又は完全に止めることになる。そして混合弁に達した温水は全て管22へ迂回させて、要求されるだけの熱を機関から除去する。一旦、機関熱出力が安定化すると、混合弁は、制御ユニットによって、再循環水の正確な量を制御して、安定した戻り機関温度を達成できる。管連結部22の混合弁を通った水は蓄熱装置に入るか、又は管15を経由して設備へ迂回させられ得る。
【0062】
水流は、CHPユニット内の弁及びポンプを制御する局所制御ユニット27によって集中制御される。機関及び温度センサーからの制御信号に加えて、制御ユニットはまた、熱及び電気に関する設備の要求事項を示す設備からの信号を受信する。制御ユニットは、CHPユニット内の他の熱発生及び蓄熱手段と共に、機関及び熱交換器を制御して、供給を設備に対する需要に一致させることができる。
【0063】
制御ユニットは、制御ライン29、30を経由して中央制御センタ28に接続されることがある。CHP局所制御装置27は、通常動作において中央制御センタ28からの介入無しにユニットを自律的に制御できる。局所制御ユニットは、ユニットに関する情報を、ユニットの動作を監視できる中央センタへ送信することが好ましい。中央制御センタは、ユニットが正しく動作していないと判断する場合は、制御ライン29、30を用いてユニットを遠隔制御できる。中央制御センタは、複数のCHPユニット31、32、33、34を同じように制御し、ユニットの各々及び/又は全てに対して保守の予定を決めて、保守及び動作の総合効率を最大化することができる。
【0064】
典型的に、温水は混合弁を出て、出力ライン15を経由して設備へ送り込まれる。ライン15は、出力温水を多岐管5からライン18を経由した中間水と混合できる追加の混合弁17に連結される。これは、追加の制御レベルを追加する。多岐管に入る水が設備を巡って循環できるほどまだ熱い、すなわちその温度が設備の熱要求に近いか、又は適合する場合は、それはライン18を経由して再循環し、ポンプ2を経由したCHPからの出力と混合し、そして設備の放熱器1へ送り出すことが可能である。
【0065】
管連結部15はまた、ボイラーの出力、及び蓄熱装置又はヒートシンクにそれ自体連結される管連結部22に連結される。
【0066】
何らかの理由でCHPユニットが設備の暖房要求に応えることができないか、又は設備の電気的要求がゼロである場合は、制御ユニット27はボイラーを作動させて、代替熱源を提供できる。電気が全く必要ないか、又は少量の電気が必要である状況では、制御ユニットは、主としてヒートポンプ及び/又はボイラーから熱を発生するように、機関を完全に切るか、又は機関の出力を下げることがある。
【0067】
あるいは、制御ユニットは、機関によって生じる過剰な電気エネルギーを使用することによって、ヒートポンプ及び/又はボイラーに電力を供給して、追加の電気的に発生する熱を供給して、熱だけに対する設備からの要求に応えることがある。それによって、これは設備の熱要求を満たす際のユニットの効率を最大にすることになる。
【0068】
蓄熱槽9はヒートシンクとしての機能を果たして、熱の生成が需要を超えるときに、CHPユニットによって発生させられる過剰な熱を吸収する。過剰な熱は機関から除去され得る一方で、それは電気を発生するので、蓄熱槽を含んでいることは、熱に対する小さい需要及び電気に対するより大きい需要がある場合に、CHPが動作するのを可能にする。温水を吸収することができるのに加えて、槽はまた設備のための熱源としても使用され得る。槽温度が設備の温度要求にかなうレベルに達する場合に、水は多岐管及び管の連結部18を経由して設備へ直接供給されるために使用され得る。
【0069】
例えば、家庭でのCHP施設の通常動作中、電気及び暖房の両方に関する設備の需要は変動する。制御ユニットは、ユニットに対する最大可能効率を全体として達成するために、需要の変化に動的に応答しなければならない。ユニット及び機関の制御は、制御ユニット27によって受信される多くの因子及びパラメーターに依存する。
【0070】
ヒートポンプのような、蓄熱槽及び代替暖房装置と連動したCHP装置の構成は、需要を満たすように柔軟性を制御装置に与える。通常動作中、制御ユニットは設備の要求を常に監視し、機関及びユニット内の流れを制御して、その需要を満たす。しかしながら、装置の限界に達するか、又は異常な状態が起きた場合に、問題が起こる。これらの状況では、制御ユニットはユニットを制御するために代替の動作を起こす必要がある。
【0071】
CHPユニットの動作状況の4つの例は、次の通りである。
【0072】
状況1:蓄熱槽は容量いっぱいであり、それ以上の熱を蓄積できない。CHP施設は起動し、設備から電気的要求はあるが、熱要求は無く、例えば湯沸しのスイッチが入れられる。この状況では、機関は、機関を冷却するための容量が蓄熱装置に無いので動作不可能である。この状況では、ヒートシンクは、例えば、自動車の従来の機関で使用される空冷放熱器であり、CHP装置の外部に設けられ得る。追加のヒートシンクがなければ、機関は動作できず、ユニットは設備の需要を満たすことができない。
【0073】
状況2:機関を動作させて電気的需要を満たすための蓄熱槽の容量は、ぎりぎりである。電気的需要が終わった場合は、温水蓄熱槽ではどんな暖房需要をも満たすことができない。この状況では、機関は限られた電気的需要を満たすために動作できる。蓄熱槽が充分な熱を有する場合は、これを使用して設備からのどんな暖房需要も満たすことができる。この状況では、機関の動作はユニットの電気的需要にだけ依存する。
【0074】
状況3:設備からの暖房需要は増大しつつあるが、電気的需要は小さい。この状況では、制御ユニットは需要を満たすために蓄熱槽を使用することになる。蓄熱槽で所定の最低温度に達すると、制御ユニットは機関を作動させ、蓄熱槽を正常なレベルにし始める。この状況では、もし蓄熱槽の最小熱レベルに達せず、電気的需要がゼロであるならば、機関の動作もまた任意である。機関が動作していて、電気的需要が小さい場合には、制御ユニットは、それ自体追加の熱を発生することになり、機関によって発生する電気のための負荷としてのヒートポンプを作動させる。
【0075】
状況4:設備からの熱に対する大きい需要がある。この状況では、機関だけでは需要を満たすことができないことがあり、そこで制御ユニットはボイラー、ことによるとヒートポンプも作動させて、需要を満たす。この状況では、機関を作動させなければならない。
【0076】
熱伝達装置はまた、熱源から熱を除去するための他の手段を備えることがある。例えば、内燃機関が使用される場合には、排ガス熱交換器もまた機関を出た排ガスから熱を除去するために使用されることがある。排ガス熱交換器は水熱交換器に組み込まれるか、又は設備に連結される別個の熱交換器であってもよい。排ガス熱交換器は、排ガス熱交換器における任意の機能不良を示すために、本明細書に述べた水熱交換器と類似の方法で、温度計を用いて制御装置によって監視されてもよい。
【0077】
制御装置が、2次回路の水を予熱するために、ヒートポンプを使用しなければならない状況もまたある。これが起こるかもしれない状況は、設備からの戻り水が比較的又は非常に冷たいときである。例えば、設備の所要温度が80℃であり、機関が通常動作中30℃だけ温度を上げることができる場合は、これは、そのままでは、設備の要求を満たさないだろう。この状況では、制御装置は、ボイラー又はヒートポンプであり得る機関の電気的出力によって電力を供給されることが好ましい予熱器を作動させることになる。これはまた、増大した電気的負荷を備えるという利点を有し、この負荷は前記のように機関の熱出力を増大させる。
【0078】
例えば、設備からの戻り温度が30℃である場合は、ヒートポンプは温度を50℃まで高くするために使用されることもあり得る。次いでCHPは温度を残りの30度だけ上げて、所要の80度にすることもあり得る。設備からの戻り温度は環境及び周囲温度に依存して、例えば25から65℃と大幅に変化し得る。したがって、制御ユニットは戻り温度及び要求を常に監視し、必要に応じて予熱器を作動させることになる。
【0079】
図3は本発明の実施の形態を示し、ここでは熱交換器の出入口121、122、123、及び124は、各々その出入口で温度を読み取る温度センサー321、322、323、及び324を有する。温度の読みが、通信ライン331、332、333、及び334を伝わって、熱交換器の効率を決定するために情報を使用する制御ユニット335へ伝えられる。温度センサーは、熱交換器の周りの外部に取り付けてもよく、あるいは配管内に、又は熱交換器内もしくは配管内に形成される「サーモウエル」に取り付けられてもよい。制御ユニット335は、主局所制御ユニット27の一部であってもよく、又は主局所制御ユニットに接続される別個のユニットであってもよい。
【0080】
図5はプレート熱交換器を示し、サーモウエルが熱交換器の構造を構成するプレートの穴によって形成される。この構造では、サーモウエルをプレート熱交換器に直接構成し、したがって温度計又は温度センサーが熱交換器の導管出入口の近くに定置されることが可能である。この構成は、4つの熱交換器出入口における温度が正確に測定されるのを可能にする。図5に示すプレート熱交換器では、暖かい媒体及び冷たい媒体が図のようにプレートの間を流れる。プレートは、水をプレートの間のスペースへ分配する各隅の近くに穴を有して作られる。
【0081】
図6は、熱交換器内に温度計又は温度センサーを定置するためのさらに別の構成を示す。図6は熱交換器を示し、穴が熱交換器の幅全体を貫通する穴を備えるプレート構造内に形成されている。これらの穴により、管への連結部の反対側にサーモウエルを実装するスペースが設けられ、温度計又はセンサー401、402、403、404が熱交換器を横切る任意の個所に位置することが可能になる。
【0082】
熱伝達装置に対する制御及び監視、並びに熱交換器の効率の計算は、熱交換器及び電力ユニットからの温度入力に基づいている。電力ユニットの温度入力は、電力ユニットの瞬間熱生成を示す。熱交換器の効率は、局所的に制御ユニット27によって、又は制御センタ28で遠隔的に計算されてもよい。
【0083】
ユニットの効率を決定するために使用される計算は、以下に図7を参照して説明される。
【0084】
制御装置は、3つの異なる型のパラメーター、すなわち変数、状態定数、及び装置定数を用いて機能する。
【0085】
変数:第1は連続して監視される変数である。
【0086】
電力ユニットの実際の熱生成 qm
各種温度 Т
状態定数:第2は装置の状態を与える特性値である。これらは頻繁に計算され、次を含む。
【0087】
質量流、電力ループ mm
質量流、Тループ ml
熱交換器、熱伝達能力 kA
装置定数:装置定数は、与えられたCHPユニット用の設備によって予め設定される。
【0088】
電力ユニットの設定温度 Tmv,set
電力ユニットの上限温度 Tmv,upper
最大電力ユニット熱生成 qm,max
比熱容量、電力ループ cm
比熱容量、Тループ cl
図7に示すように、電力ループ701は熱交換器の1次回路に相当し、Тループ702は熱交換器の2次回路に相当する。
【0089】
前記のように、ユニットは自律モードで局所的に制御されてもよく、あるいは中央制御センタによって遠隔制御されてもよい。通常動作では、ユニットは図7を参照して次のように制御される。
【0090】
熱交換器の効率は、熱交換器の両側で安定な状態を維持することによって改善され得る。本発明による制御装置では、目的は、装置を制御して安定した熱交換器入力温度Tmv(703)を達成することである。従来の温度制御装置では、したがってТループ(702)は、Tmvについての温度測定によって直接制御されることになる。しかしながら、機関の熱容量、冷却液が電力ユニット(704)を通過するのに要する時間、及び3方弁(706)の時間遅延のために、この型の制御の動作は時間遅延が大きくなる。電力ユニットに加えられる負荷及び電力ユニットからの熱生成の変化が、Tmvを受入れ難いレベルで変動させる。
【0091】
本発明は、電力ループの質量流及び比熱容量を示す測定された情報と共に、電力ユニットの実際の熱生成に基づいて、新しい設定温度Tmv,setを連続して計算する。設定温度は3方弁(706)を作動させるトリガーとして作用する。設定温度は次式によって計算される。
【0092】
【数1】

【0093】
熱交換器(705)への入力に関する計算されたTmk,setと測定されたTmkとの間の差は、3方混合弁を制御するために使用される。このようにして3方弁を制御することは、機関の熱容量、及び冷却液が電力ユニットを通過するのに要する時間は、制御に影響を及ぼさないので、制御ループの時間遅延はより短くなることを意味する。さらに、機関の熱容量は、動的ダンパーとして作用して、一定のTmv値を維持するのに役立ち得る。
【0094】
機関温度が上昇し始める状況で、制御装置は機関が過熱を避けるために停止すべきかどうかを決定する必要がある。機関の最高温度はTmv,upperであり、このためTmvがこのレベルに達した場合は、機関は過熱しつつあることになる。Tmv,upperは、特定の機関及びユニットの特性に依存する装置の予め設定された値である。次式が規定の時間(例えば、10秒)に対して成り立つ場合に、制御装置は電力ユニットの停止を要求することになる。
【0095】
【数2】

【0096】
代案は、温度Tlk(707)とTretur(708)の差を使用することである。TreturがTlkに近づくと、それは、3方弁は完全に開いている、すなわち冷却液は導管(709)を経由して熱交換器へ再循環されず、装置はさらに温度を上げるための能力をもはや有しないことを示す。この条件に達すると、電力ユニットを停止させる。また一方、TreturがTlkよりも十分低い場合は、このことは、3方弁は温度を調節するためにまだ余裕があることを示す。
【0097】
装置定数は、装置が規定の時間(例えば、1分間)安定なレベルで作動している場合に計算される。一旦装置が安定すると、熱容量の状態定数、電力ループ流mm及びТループ流mlを較正することが可能である。用いられる式は次の通りである。
【0098】
【数3】

【0099】
【数4】

【0100】
(ここで、mmは電力ユニットにおける質量流量であり、mlはТループ流における質量流である。)
装置によって測定した変数及び定数は、CHPユニットの状態を評価するために使用されることが可能であり、どの構成要素(もしあれば)が、正常に機能していないかを決定するために使用され得る。前記のように、局所制御装置はユニットの状態を自律的に決定してもよいし、又は中央制御センタはユニットを監視し、ユニットを遠隔制御し、局所制御装置を作動しないようにしてもよい。
【0101】
熱交換器に結合した温度計もまた較正され、いかなる機能不良についても監視され得る。機関がより長い動作期間の後に停止した場合は、機関による熱生成は、周囲温度に達するまで低下する。流れが熱交換器内で連続しているので、4つの測定点全てが同じ安定な温度に急速に達することになる。この効果を用いて、熱交換器内の4つの温度計を較正する。温度計の1つが他の温度計からある限度よりも大きく変化する温度を示す場合は、この温度計は機能不良であると結論できる。
【0102】
前記の状態定数及び変数を用いて、熱交換器のような装置内の構成要素の状態を評価することが可能である。多くの問題が制御装置によって確認(局所的又は中央で)されることが可能であり、これらは次のように少なくとも3つのレベルに分割され得る。
【0103】
最低レベルの問題は、局所制御装置が、ユニットは最適状態で動作していないことを中央制御装置に知らせることを必要とすることがあることである。例えば、局所制御ユニットは、熱交換器は最適な性能で動作していないことをユーザー又は中央制御センタに示すことがある。これらの状態は、ユニットの連続動作にとって重大ではない。
【0104】
第2レベルの問題はこれより重大であり、この問題は、ユニットの点検又は修理を必要とする。制御装置からのレベル2表示は、ある期間にわたってユニットを監視することに基づいてもよい。レベル2表示又は警告は、動向を記録し、かつ所定の「警告」レベルに達した場合に報告することによって早期に確認されることが好ましいだろう。これは、例えば、もしかすると循環ポンプが故障し始めていることを示すТループ回路における質量流量の低下であるかもしれない。
【0105】
第3レベルの問題は重大であり、この問題は、ユニットがすぐに停止することを必要とする。これは、例えば、電力ユニットの過熱のためである。
【0106】
CHPユニットの状態は、装置の測定される変数の各々に関するデータ履歴を提供するために、連続して監視され、記録されることが好ましい。データは局所的に格納されるか、あるいは央制御装置に伝えられることがある。各個々のCHPユニットの性能を確認するために、データの動向が確定され、例えば外部空気温度のような他の変数と比較され得る。
【0107】
熱交換器は、CHP装置の重要な構成要素である。熱交換器の故障は、装置全体を停止する必要があることを意味する。熱交換器は、時間とともに劣化することが知られている1つの構成要素である。したがって熱交換器の能力は次のように連続して、ことによると断続的に監視される。
【0108】
熱交換器の効率もまた計算され、前記のように、熱交換器の必要な保守を予測し、その予定を決めるために用いられ得る。熱交換器の効率(kA)は次のように計算される。
【0109】
【数5】

【0110】
熱交換器が、例えば石灰化及び/又は腐食によって劣化するにつれて、その能力(kA)は低下することになる。kAの決定は上に示され、熱交換器の周りの温度を測定することによって計算することができる。制御装置は、熱交換器の劣化の速度を決定するために使用されるkAに関する値を、長い期間をかけて監視し記録する。収集データは、熱交換器が交換及び/又は修理される必要があるかどうかを決定するために、特定の熱交換器に関する既知の動作データと比較される。図8は、熱交換器が時間とともに、どのように劣化するかを示す。図8に示すように、熱交換器は劣化し、Tlk、すなわち、熱交換器に入ってTmvを一定に維持することができるТループ冷却液の最高温度も低下する。熱交換器の効率が低下すると同時に、これは、機関をその最高動作温度Tmv,upperより低く維持するために必要である設備からの戻り温度の低下をもたらす(劣化は、熱交換器が熱を電力ループ回路からТループ回路へ伝達することができないことを意味する)。これは、周囲温度が上昇すると、設備の戻り温度が高くなり、これによって電力ユニット回路の冷却液の冷却能力がさらに一層低下するという別の問題となり得る。図8(点X)に示すように、TlkがTreturに達した場合に、設備内にもはや「冷却」能力は無く、電力ユニット回路からの熱はそれ以上吸収されることはできない。周囲温度が高くなるにつれて、交点XはX2に示すように動く(図7の周囲温度Tretur参照)。これは、装置にとって重大な状況であり、CHPユニットをすぐに停止し、かつ保守が要求されることを必要とする。したがって、制御装置は、現在の熱交換器効率及び戻り温度に基づいて、機関の要求と組み合わせて臨界点を決定することがある。
【0111】
図8は、時間tA、tB、及びtCにわたる熱交換器の動作中にデータポイントA、B、Cを記録することによって、ユニット停止が必要となる以前に保守の予定が決められ得るように、劣化は記録され、外挿され得ることを示す。
【0112】
どのような設備も異なる要求を有する。例えば、設備の中には60℃を決して超えないTreturを有するものがあるのに対して、40℃の最高戻り温度を有する設備もある。戻り温度が60℃である設備の場合は、熱交換器は戻り温度が40℃を決して超えない設備よりも高い熱伝達能力を必要とする。これらの2つの場合の後者で、熱交換器は、熱交換器の劣化が両方の装置で同じである場合でさえも、より低い戻り温度を有する装置の後に保守を必要とすることになる。
【0113】
図8は、点X2において、戻り水温度(周囲温度Treturの線として示す)を高くすることは、熱交換器が周囲温度TreturとTlkとが交差する前に動作できる時間が減少することを示している。例えば夏における周囲温度の上昇は、このTreturの上昇、及び結果として起こる熱交換器が保守を必要とする前の時間の減少を引き起こすことになる。
【0114】
状態定数及び装置定数を組み合わせて用いて、本発明は、熱交換器の効率がユニットの現在の需要を満たすのに十分であるかどうか、あるいはそれは保守又は部品交換の予定を決める必要があるかどうかを計算する手段を提供する。
【0115】
状況が違えば、装置を完全に停止することは必要なく、その代わりに制御コマンドを発行して、電力ユニット又は機関の出力を制御してもよい。そのとき、ユニットは点検が予定され得る時までの期間、低下したレベルで動作することができるので、これにより、点検又は保守の要求に関する必要性を遅らせることができる。
【0116】
前記のように、ユニットの他の構成要素もまた監視され得る。例えば、電力ループ流mm及びТループ流mlを長い期間をかけて記録することは、湯あか又は故障した循環ポンプに起因する装置を巡る配管に関する問題を指摘することができる。記録されたデータは、CHPユニットに取り付けた特定のポンプに関する既知のデータと比較され得る。流量が規定レベル以下に低下する場合は、点検要求が必要となる。あるいは、流量が急激に減少する場合は、構成要素が交換され得るまでCHPユニットへの停止コマンドが必要となる。
【0117】
本発明によるCHPユニットのための中央制御センタは、多くのCHPユニット及び設備からのデータを収集し、監視するために使用され得る。中央制御センタは各CHPユニットを監視し、点検又は保守が要求されることになる時を予測する。そしてこれらは、同じ区域内の他のCHPユニットに対する保守についての予定を決め得る。中央制御センタはまた、例えば、CHPユニットが医療設備で過熱によって故障した場合を優先させることができる。この状況では、緊急の保守が故障したユニットについて実施されるのに対して、他のユニットに関する保守は遅延され得る。
【0118】
各CHPユニットに関して、局所制御ユニットによって収集された情報は、リアルタイムで中継され得るが、夜通しで中継されることが好ましい。各CHPユニットはまた、制御信号を中央制御センタから受信することができる。例えば、制御センタは機関負荷の表示を備えることがあり、機関の最高許容動作温度に達しないことを確実にするように、機関を制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0119】
【図1】熱源及び熱負荷を有する熱交換器の簡単な応用を示す図。
【図2】家庭の設備用のCHPユニットの構成要素を示す図。
【図3】温度センサーを含む本発明の一実施形態に係る熱交換器の模式図。
【図4】本発明の好ましい配管設備を示す図。
【図5】サーモウエル付きのプレート熱交換器を示す図。
【図6】サーモウエル付きの第2プレート熱交換器を示す図。
【図7】本発明の実施の形態に係る回路の模式図。
【図8】ユニットパラメータ対時間のグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱源及び熱負荷を有する熱伝達装置であって、前記熱源及び熱負荷は、熱を前記熱源と前記熱負荷との間で伝えるように構成した1次及び2次回路を有する熱交換器に流体接続され、フィードバック導管が、2次回路出力流体が前記2次回路の入力へ戻ることができるように、前記2次回路の出力を前記2次回路の入力に流体接続しており、前記フィードバック導管を通る流れが制御され、それによって1次回路温度が調節され得る熱伝達装置。
【請求項2】
前記フィードバック導管を通る流れは、前記2次回路の出力を前記熱負荷及びフィードバック導管に連結する制御弁によって制御される請求項1に記載の熱伝達装置。
【請求項3】
前記制御弁は、制御信号を受信して、前記フィードバック導管を通る流れを選択的に制御するように構成されている請求項2に記載の熱伝達装置。
【請求項4】
前記フィードバック導管を通る流れは、前記1次回路の温度の表示に応答して制御される請求項1から3のいずれかに記載の熱伝達装置。
【請求項5】
前記1次回路は、温度センサーを備える請求項1から4のいずれかに記載の熱伝達装置。
【請求項6】
前記熱源は最高動作温度を有し、前記1次回路の温度は、前記熱源の動作温度を前記最高動作温度未満に維持するように調節される請求項1から5のいずれかに記載の熱伝達装置。
【請求項7】
前記熱源は内燃機関であり、前記1次回路はその冷却回路を通って流れるように構成されている請求項1から6のいずれかに記載の熱伝達装置。
【請求項8】
前記2次回路は、蓄熱槽にも連結される請求項1から7のいずれかに記載の熱伝達装置。
【請求項9】
熱源及び熱負荷を有する熱伝達装置を動作させる方法であって、前記熱源及び熱負荷は、熱を前記熱源と前記熱負荷との間で伝えるように構成した1次及び2次回路を有する熱交換器に流体接続され、フィードバック導管が、2次回路出力流体が前記2次回路の入力へ戻ることができるように、前記2次回路の出力を前記2次回路の入力に流体接続しており、前記フィードバック導管を通る流れが制御され、それによって1次回路温度が調節され得る方法。
【請求項10】
熱源と、熱負荷と、熱を前記熱源から前記熱負荷へ伝える熱交換器とを有する熱伝達装置であって、前記熱交換器の熱効率の変化は、前記熱効率を第1の時間及び第2の時間において測定することによって決定され、かつ前記熱交換器が予め決めておいた熱効率に達する時間を予測するために使用される熱伝達装置。
【請求項11】
前記熱交換器が予め決めておいた熱効率に達する時間の前記予測は、前記熱伝達装置の保守の予定を決めるために使用される請求項10に記載の熱伝達装置。
【請求項12】
複数のCHPユニットを制御する制御装置であって、各ユニットに関する動作データを受信する手段と、前記データを処理する中央処理装置と、制御信号を個々のCHPユニットに送信する手段とを備える制御装置。
【請求項13】
CHPユニットの保守の予定を決める方法であって、
(A)ユニットの効率又は性能に関するデータをある期間にわたって受信する工程と、
(B)前記データを外挿して、予測される今後の効率又は性能情報を計算する工程と、
(C)前記データが予め決めておいた値に達するのを回避するように保守の予定を決める工程とを備えた方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公表番号】特表2007−507683(P2007−507683A)
【公表日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−530571(P2006−530571)
【出願日】平成16年9月30日(2004.9.30)
【国際出願番号】PCT/GB2004/004163
【国際公開番号】WO2005/036060
【国際公開日】平成17年4月21日(2005.4.21)
【出願人】(506115606)
【Fターム(参考)】