説明

熱処理装置

【課題】 冷却性能を低下させることなく装置を簡略化及び低コスト化する。
【解決手段】 熱処理炉1内を循環する冷却ガスXの流路途中に被処理物Wを配置することによって上記被処理物Wを冷却処理する熱処理装置であって、上記冷却ガスXの循環方向における上記被処理物Wの前段に、上記冷却ガスXの流速及び流量が流路断面において均一化されるように、上記冷却ガスXのムラに応じた開口部を有する均一化手段8を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱処理装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
被処理物である金属材を加熱し、冷却することによって、いわゆる焼入れ等の処理を行う熱処理装置の中に、加熱処理された被処理物を熱処理炉内において循環する冷却ガスの流路途中に配置することによって冷却処理するものがある(特許文献1及び非特許文献1参照)。
具体的には、熱処理炉の内部に形成された熱処理室の内部に被処理物を配置し、この熱処理室の上下方向に冷却ガスが通過させることによって、被処理物を冷却ガスの流路途中に配置している。そして、このような熱処理装置においては、被処理物の均一な冷却を実現するために、熱処理室内部においてムラのない均一な冷却ガスの流れを形成することが好ましい。
このため、熱処理室の冷却ガス出入口に冷却ガスの均一な流れを形成するための流量分散板や整流器を配置する場合がある。例えば、特許文献1においては、流量分散板によって冷却ガス流の圧力損失係数0.1以上の流路抵抗をつけることによって、冷却ガスの流速の均一化を効率的に達成しようとしている。ところが、実際の装置においては流量分散板として全面に均一に開口部が形成されたパンチングメタルを用いており、この流量分散板によってのみでは十分に均一な冷却ガスを形成することが困難であった。よって、より冷却ガスの均一化を図るために、実際の装置においては、熱処理室の冷却ガスの入口近傍に冷却ガスの流れ方向を案内する案内板を設置し、この案内板によって冷却ガスの流れ方向を案内するとともに冷却ガスの流量ムラを調整している。
【特許文献1】特開2005−29872号公報
【非特許文献1】「石川島播磨重工業株式会社、株式会社石川島岩国製作所:真空熱処理炉 VQシリーズ 高速ガス冷却式横型真空炉:商品パンフレット」
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
しかしながら、上述のような案内板を設置した場合には、装置構成が複雑化及び大型化するとともに装置コストも増加してしまう。
また、非特許文献1に記載されているような、1つの熱処理室の内部において被処理物に対して加熱処理及び冷却処理を行う熱処理装置においては、加熱処理の際に熱が熱処理室の外部に逃げないように熱処理室の冷却ガス出入口を閉じる扉(冷却扉)を設置する必要があるが、上述のような案内板がある場合には、扉の開閉領域に制限が生じ、扉を観音開き構造あるいは両側スライド開き構造にせざるを得なくなる。このように、熱処理室の冷却ガス出入口を閉じる扉を観音開き構造あるいは両側スライド開き構造にする場合には、さらに装置コストが増加してしまうこととなる。
【0004】
本発明は、上述する問題点に鑑みてなされたもので、冷却性能を低下させることなく装置を簡略化及び低コスト化することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
上記目的を達成するために、本発明の熱処理装置では、第1の手段として、熱処理炉内を循環する冷却ガスの流路途中に被処理物を配置することによって上記被処理物を冷却処理する熱処理装置であって、上記冷却ガスの循環方向における上記被処理物の前段に、上記冷却ガスの流速及び流量が流路断面において均一化されるように、上記冷却ガスのムラに応じた開口部を有する均一化手段を有するという構成を採用する。
【0006】
第2の手段として、上記第1の手段において、上記冷却ガスの循環方向における上記被処理物の後段に上記均一化手段をさらに備えるという構成を採用する。
【0007】
第3の手段として、上記第1あるいは第2の手段において、複数の上記均一化手段が立体的に組み上げられているという構成を採用する。
【0008】
第4の手段として、上記第1あるいは第2の手段において、上記均一化手段が立体的に加工されているという構成を採用する。
【0009】
第5の手段として、上記第1〜第4いずれかの手段において、上記均一化手段は、パンチングメタルであるという構成を採用する。
【0010】
第6の手段として、上記第1〜第5いずれかの手段において、前記熱処理炉の冷却ガス出入口と前記均一化手段との間に昇降式扉を有するという構成を採用する。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱処理装置によれば、冷却ガスの循環方向における被処理物の前段に配置された、冷却ガスのムラに応じた開口部を有する均一化手段によって、冷却ガスの流速及び流量が流路断面において均一化される。
つまり、単一の均一化手段を設置するのみで、冷却ガスの流速及び流量が流路断面において均一化されるため、別途案内板を設置する必要がなくなる。したがって、本発明の熱処理装置によれば、冷却性能を低下させることなく装置を簡略化及び低コスト化することが可能となる。
また、本発明を、1つの熱処理室の内部において被処理物に対して加熱処理及び冷却処理を行う熱処理装置に応用した場合には、案内板を設置する必要がなくなり、扉の開閉可能領域を広く確保することができるため、扉を観音開き構造あるいは両側スライド開き構造にする必要がなくなる。よって、さらに装置を低コスト化することが可能となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
以下、図面を参照して、本発明に係る熱処理装置の一実施形態について説明する。なお、以下の図面において、各部材を認識可能な大きさとするために、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0013】
(第1実施形態)
本第1実施形態の熱処理装置S1は、1つの熱処理室の内部において被処理物に対して加熱処理及び冷却処理を行う、いわゆるバッチ式の熱処理装置である。図1及び図2は、本第1実施形態の熱処理装置S1の概略構成を示したものであり、図1が熱処理装置S1を横方向から見た断面図であり、図2が図1のA−A線断面図である。
【0014】
これらの図に示すように、本実施形態の熱処理装置S1は、内部において冷却ガスXが循環される熱処理炉1と、熱処理炉1の内部に配置される熱処理室2とを備えて構成されている。
また、熱処理炉1の内部には、熱処理室2の他に、冷却ガスXを冷却するための熱交換器3と冷却ガスXを熱処理炉1の内部において循環させるためのファン4とが配置されている。
【0015】
熱処理炉1は、熱処理炉1の内部の圧力状態が変化した場合であってもその圧力に耐えられるように略円筒形状に形状設定されており、この円筒形の中心軸が水平となるように姿勢設定されている。
また、熱処理炉1の片側端部はクラッチ式扉11として構成されている。なお、このクラッチ式扉11の内側と、熱処理室2の脱着自在な側壁部21とは接続されており、クラッチ式扉11を開けることによって側壁部21脱離され、熱処理室2の内部に被処理物Wを搬入あるいは熱処理室2の内部から被処理物Wを搬出することができる構成とされている。また、クラッチ式扉11が閉鎖されている場合には、熱処理炉1は密閉空間となる。
なお、熱処理炉1の内部において、熱処理室2の外部空間は、仕切板5によって上下に2分されている。また、この仕切板5によって熱処理室2が支持されている。
【0016】
熱処理室2は、その内部において被処理物Wを加熱処理及び冷却処理するものである。この熱処理室2の内部には、被処理物Wを載置するための載置台22が配置されており、この載置台22には被処理物Wの搬出入を容易にするためのフリーローラ23が複数設置されている。なお、この載置台22は、図2に示すように、上下方向に気体が通過可能な構造(例えば、格子状)とされている。
また、熱処理室2の内部には、被処理物Wを加熱処理するための複数のヒータ6が設置されている。
【0017】
また、熱処理室2の上壁部及び下壁部は、冷却ガスXを整流するための整流部7(7a,7b)として構成されている。具体的には、この整流部7としては、格子状に間切りをされた格子箱が用いられている。
【0018】
そして、本実施形態の熱処理装置S1においては、整流部7と隣接して均一化部8(均一化手段)が設置されている。より詳細には、熱処理室2の上壁部を構成する整流部7aの上部に均一化部8aが設置され、熱処理室2の下壁部を構成する整流部7bの下部に均一化部8bが設置されている。すなわち、均一化部8は、熱処理炉1の内部を循環される冷却ガスXの循環方向における被処理物Wの前段及び後段に配置されている。なお、冷却ガスXの循環方向は、図1に示す矢印方向とその逆方向とに変換可能とされている。そして、冷却ガスXの循環方向が、図1に示す矢印方向であった場合には、均一化部8aが被処理物Wの前段に配置される均一化部として機能し、均一化部8bが被処理物Wの後段に配置される均一化部として機能する。また、冷却ガスの循環方向が、図1に示す矢印方向と逆方向であった場合には、均一化部8bが被処理物Wの前段に配置される均一化部として機能し、金貨塚部8aが被処理物Wの後段に配置される均一化部として機能する。
この均一化部8は、冷却ガスXの流速及び流量を流路断面において均一化するものであり、本実施形態の熱処理装置S1においては、冷却ガスのムラに応じた開口部を有するパンチングメタルが用いられている。
なお、ここで言う冷却ガスの「ムラ」とは、流路断面における冷却ガスの流速及び流量ばらつきのことである。
また、ここで言う「冷却ガスのムラに応じた開口部」とは、例えば、冷却ガスのムラに応じて適切な抵抗値となるように設計された開口部のことである。なお、開口部の設計は、具体的には、パンチングメタル(均一化手段)取付部の面積に対する開口面積の比率や、開口部の形状・配置・寸法等によって決定される。
また、ここで言う「冷却ガスのムラに応じた開口部を有する」とは、例えば、均一化手段の場所ごとに冷却ガスのムラに応じた開口部を有するという意味である。つまり、均一化手段がパンチングメタルである場合には、単一のパンチングメタル内において開口部の設計を変更しても良いし、また、パンチングメタルが組み上げられるあるいは加工されることによって立体形状を有している場合には、立体形状の面ごとに開口部の設計を変更しても良い。
そして、このような均一化部8を被処理物Wの前段に配置することによって、冷却ガスの流速及び流量が流路断面において均一化され、被処理物Wが均一に冷却される。このため、従来の熱処理装置に設置してあった案内板が必要なくなり、別途案内板を設置する必要がなくなる。したがって、本実施形態の熱処理装置S1によれば、冷却性能を低下させることなく装置を簡略化及び低コスト化することが可能となる。
【0019】
また、本実施形態の熱処理装置S1においては、図3に示すように、均一化部8が複数のパンチングメタル81が枠体82によって立体的に組み上げられた構造を有している。
このような立体構造を採用することによって、均一化部8の気体を通過できる表面積が増加し、均一化部8を単位時間に抜ける冷却ガスXの流量を増加させることが可能となる。したがって、より多くの流量の冷却ガスXを熱処理室2の内部に流入させることができ、被処理物Wをより短時間で急速冷却することが可能となる。
なお、均一化部8の上面部83の面積は、熱処理室2の冷却ガス出入口(整流部7の平面視領域)と略同一の広さとされている。
【0020】
また、本実施形態の熱処理装置S1においては、加熱処理の際に熱が熱処理室2の外部に逃げないように熱処理室2の冷却ガス出入口を閉じる扉9が設置されている。この扉9は、均一化部8の上面部83の形状に合わせて、すなわち熱処理室2の開口部(冷却ガス出入口)の形状に合わせて形状設定されており、図2に示すように、昇降部10によって昇降可能とされている。
従来の熱処理装置S1においては、案内板が熱処理室2の近傍に配置されていたがために、扉を昇降することができず、観音開きの扉あるいは両側スライド開き構造を設置していた。このため、装置コストが大幅に増加していたが、本実施形態の熱処理装置S1によれば、案内板の設置の必要がないために昇降部10による扉9の昇降が可能となり、扉を観音開き構造あるいは両側スライド開き構造にする必要がなくなる。したがって、本実施形態の熱処理装置S1によれば、さらに装置コストを低減させることが可能となる。
【0021】
熱交換器3は、複数のフィンチューブから構成されており、被処理物Wを冷却することによって加温された冷却ガスXを再び冷却するものである。
また、ファン4は、冷却ガスXを循環させるものであり、熱交換器3によって冷却ガスXを吸い込んでから噴出することによって、冷却ガスXに流れを与えている。
また、本実施形態の熱処理装置S1は、冷却ガスXの循環方向を変化させるための循環方向切替板12が設置されている。この循環方向切替板12によって熱処理炉1の内部空間の適所を塞ぎ、適所を開放することによって、熱処理炉1の内部における冷却ガスXの循環方向を変化させることが可能となる。
【0022】
次に、このように構成された本実施形態の熱処理装置S1の動作について説明する。
【0023】
まず、熱処理炉1のクラッチ式扉11及び熱処理室2の側壁部21とが開放された状態で、熱処理室2の内部に被処理物Wを搬入する。
その後、クラッチ式扉11及び熱処理室2の側壁部21を閉鎖し、さらに昇降部10を駆動することによって、熱処理室2の開口部(冷却ガス出入口)を扉9によって閉じる。
【0024】
そして、ヒータ6によって被処理物Wを加熱することによって、被処理物Wを加熱処理する。この加熱処理では、被処理物Wを所定時間かけて所定の温度まで加熱する。
【0025】
このような加熱処理が完了すると、昇降部10が駆動され扉9が移動されることによって、熱処理室2の冷却ガス出入口が開放されるとともに、均一化部8の上面部83が塞がれる。
これと同時に、熱交換器3が冷却ガスXを冷却し、さらにファンが冷却ガスXに流れを与えることによって、冷却ガスXが熱処理炉1の内部を循環される。
このように循環される冷却ガスXは、例えば、図1に示す矢印方向に循環されている場合には、ファン4から排出された後、均一化部8a及び整流部7aを通過した後に熱処理室2の内部に流入する。
ここで、本実施形態の熱処理装置S1においては、均一化部8aにおいて冷却ガスXの流量及び流速が流路断面において均一化され、さらに整流部7aにおいて冷却ガスXの流れが整流される。このため、被処理物Wの全体に均一に冷却ガスXが吹付けられ、被処理物Wを均一に冷却することができる。
また、本実施形態の熱処理装置S1においては、均一化部8がパンチングメタルが立体的に組み上げられた構造を有しているため、より多くの流量の冷却ガスXを熱処理室2の内部に流入させることができる。したがって、本実施形態の熱処理装置S1によれば、被処理物Wを急速冷却することが可能となる。
【0026】
熱処理室2の内部に流入した冷却ガスXは、被処理物Wを冷却した後、均一化部8b及び整流部7bを通過して熱処理室2の外部に流出する。
なお、熱処理室2の外部に流出する冷却ガスXも整流部7bによって整流され、均一化部8bによって流路断面における流量及び流速が均一化される。このように、均一化部8a及び整流部7aと均一化部8b及び整流部7bとの間に挟まれた空間においては、冷却ガスXの流れを安定化させる強制力が働くこととなるため、熱処理室2の内部空間における冷却ガスXの流れを安定化することが可能となる。
【0027】
その後、熱処理室2の外部に流出した冷却ガスXは、再び熱交換器3によって熱交換されることによって冷却され、ファン4によって循環される。
【0028】
なお、循環方向切替板12によって冷却ガスXの循環方向を逆方向に変化させた場合には、冷却ガスXは、ファン4から排出された後、均一化部8b及び整流部7bを通過した後に熱処理室2の内部に流入する。そして、冷却ガスXは、被処理物Wを冷却した後に均一化部8a及び整流部7aを通過して熱処理室2の外部に流出する。
【0029】
このようにして被処理物Wの冷却処理が完了すると、熱処理炉1のクラッチ式扉11及び熱処理室2の側壁部21とが開放され、熱処理室2の内部に配置された被処理物Wが熱処理室2の外部に搬出される。
【0030】
このような本実施形態の熱処理装置S1によれば、均一化部8によって、冷却ガスXの流速及び流量が流路断面において均一化される。
よって、単一の均一化部8a,8bを設置するのみで、冷却ガスXの流速及び流量が流路断面において均一化されるため、別途案内板を設置する必要がなくなる。したがって、冷却性能を低下させることなく装置を簡略化及び低コスト化することが可能となる。
また、案内板を設置する必要がなくなることで、扉9の開閉可能領域を広く確保することができるため、扉9を観音開き構造あるいはスライド開き構造にする必要がなくなる。よって、さらに装置を低コスト化することが可能となる。
【0031】
また、本実施形態の熱処理装置S1においては、より多くの冷却ガスXを熱処理室2の内部に流入させることができるように、均一化部8としてパンチングメタルが立体的に組み上げられた構造を採用した。このような構成を採用することによって、より多くの冷却ガスXを熱処理室2内部に流入させることができるだけでなく、立体構造の面ごとに開口部の設計を変更することが可能となり、より効率的に冷却ガスXのムラに応じた開口部を設計することが可能となる。
また、均一化部8としてパンチングメタルが立体的に組み上げられた構造を採用することによって、立体構造の面ごとに開口部の設計を変更し、必要部分だけ交換することが容易となる。このため、どのような冷却ガスXのムラが発生するにしても、より柔軟に対応することが可能となる。
また、均一化部8としてパンチングメタルが立体的に組み上げられた構造を採用することによって、より多くの冷却ガスXを熱処理室2の内部に流入させることができるとともに、パンチングメタルの設計しろが大きくなり、きめの細かい設計が可能となる。
【0032】
なお、本実施形態においては、より多くの冷却ガスXを熱処理室2の内部に流入させることができるように、均一化部8としてパンチングメタルが立体的に組み上げられた構造を採用した。しかしながら、本発明はこれに限定されるものではなく、多くの冷却ガスXを熱処理室2の内部に流入させる必要がないような場合には、均一化部として、板形状のパンチングメタルを1枚用いる構成を採用しても良い。
また、例えば、一枚の板形状のパンチングメタルを立体的に加工することによって、熱処理室2の内部に流入させる冷却ガスXの流量を確保することも可能である。
さらに、パンチングメタルでなくとも同等の機能を有する他の部材であっても良い。
なお、いずれの構成を採用する場合であっても、パンチングメタルが、冷却ガスの流速及び流量が流路断面において均一化されるように、冷却ガスXのムラに応じた開口部を有していることは言うまでもない。
【0033】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。なお、本第2実施形態の説明において、上記第1実施形態と同様の部分については、その説明を省略あるいは簡略化する。
【0034】
図4は、本実施形態の熱処理装置S2を横方向から見た断面図である。この図に示すように、本実施形態の熱処理装置S2は、被処理物Wを冷却する冷却室(熱処理室)20及び被処理物Wを加熱する加熱室30を備える多室型熱処理装置であり、これらに加えて、冷却室20と加熱室30との間に中間室40を有している。
【0035】
冷却室20の構造は、上記第1実施形態の熱処理装置S1の構造とほぼ同様であるが、本実施形態の冷却室20は被処理物Wを冷却処理のみするためのものであり、ヒータ6及び扉9を備えていない。また、熱処理室2の側壁部21が真空シールド扉80に接続されている点、また、側壁部21と対向する、同じく開閉可能な側壁部25が、熱交換器3及びファン4を含んで開閉可能とされた扉50と接続されている点で上記第1実施形態と異なる。
【0036】
なお、扉50は、支持脚51によって支持されており、この支持脚51は地面に設置されたスライド装置52に固定されている。このスライド装置52が駆動することによって、扉50は、図示するように、冷却室20に対して水平方向に近接あるいは離間する。このようなスライド装置52を採用することによって扉50の開閉を容易に行うことが可能となる。なお、容易に扉50を開閉する機構としては、スライド装置52に限られるものではなく、例えば、ヒンジ装置等であっても良い。
【0037】
加熱室30は、冷却室20と同様に略円筒形に形状設定されており、図示するように、冷却室20に対向配置されている。また、加熱室30に連結された搬送棒収納室62の内部には、本熱処理装置S1の内部において、被処理物Wを搬送するための搬送棒61が設置されている。
【0038】
加熱室30の内部には略直方形に形状設定された断熱室31が設置されている。この断熱室31の一方側(冷却室20と対向する側)の側面部には、断熱扉32が設置されており、他方側の側面部には搬送棒61の出入口となる搬送棒用扉33が設置されている。この搬送棒用扉33は、加熱室30の外壁から突出するように設置された昇降部41によって開閉が規定される。なお、この搬送棒用扉33も断熱扉32と同様に断熱設計されている。断熱室31の内部には、被処理物Wを載置するための載置台34が設置されている。この載置台34は、被処理物Wが均一に加熱されるように、例えばフレーム状に形成されると共に、被処理物Wの移送を良好に行うためのフリーローラ35が設置されている。なお、断熱室31内部に設置された載置台34と熱処理室2内部に設置された載置台22とは、同じ高さに配置されている。また、断熱室31の内部には、被処理物Wを加熱するためのヒータ36が複数設置されている。
【0039】
中間室40は、中空の略方形状に形状設定されており、冷却室20と加熱室30との間に配置されている。その上部には、真空シールド扉80を昇降するためのシールド扉用昇降部41と断熱扉32を昇降するための断熱扉用昇降部42とが設置されている。
【0040】
次に、このように構成された本発明に係る熱処理装置の動作について説明する。
【0041】
まず、スライド装置52によって扉50が冷却室20に対して離間された状態で、被処理物Wは、熱処理室2内部の載置台22に載置される。そして、扉50がスライド装置52によって冷却室20に当接され、冷却室20が密閉される。そして、冷却室20、加熱室30及び中間室40は、減圧装置(不図示)の駆動によって真空引きされる。そして、昇降部41、真空シールド扉用昇降部41及び断熱扉用昇降部42とが駆動することによって搬送棒用扉33、真空シールド扉80及び断熱扉32が開放される。
【0042】
ここで、搬送棒61によって、被処理物Wは、熱処理室2内部の載置台22から断熱室31内部の載置台34上に移送される。そして、再び昇降部41及び断熱扉用昇降部42とが駆動して搬送棒用扉33及び断熱扉32が閉じられる。そして、この状態において、被処理物Wは、ヒータ36によって加熱される。被処理物Wの加熱が完了すると、搬送棒用扉33及び断熱扉32が開放され、被処理物Wは、搬送棒61によって再び熱処理室2内部の載置台22に移送される。そして、被処理物Wが熱処理室2の載置台22に移送されると、真空シールド扉80が密閉される。
【0043】
そして、上記第1実施形態と同様に、熱交換器3によって冷却された冷却ガスXがファン4によって循環され、この循環される冷却ガスXが均一化部8によって流量及び流速が流路断面において均一化され、この均一化された冷却ガスXが被処理物Wに吹付けられることによって、被処理物Wが均一に冷却される。
【0044】
そして、被処理物Wが所定の温度まで冷却されると、扉50が冷却室20から脱離され、被処理物Wが外部に搬出される。
【0045】
このような本実施形態の熱処理装置S2においても、上記第1実施形態の熱処理装置S1と同様に、均一化部8によって冷却ガスXの流量及び流速が流路断面において均一化されるため、案内板を設置する必要がなくなる。したがって、冷却性能を低下させることなく装置を簡略化及び低コスト化することが可能となる。
【0046】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る熱処理装置の好適な実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限定されないことは言うまでもない。上述した実施形態において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【図面の簡単な説明】
【0047】
【図1】本発明の第1実施形態である熱処理装置を横方向から見た断面図である。
【図2】図1のA−A線断面図である。
【図3】均一化部の構成図である。
【図4】本発明の第2実施形態である熱処理装置を横方向から見た断面図である。
【符号の説明】
【0048】
S1,S2……熱処理装置
1……熱処理炉
2……熱処理室
8(8a,8b)……均一化部(均一化手段)
X……冷却ガス
W……被処理物




【特許請求の範囲】
【請求項1】
熱処理炉内を循環する冷却ガスの流路途中に被処理物を配置することによって前記被処理物を冷却処理する熱処理装置であって、
前記冷却ガスの循環方向における前記被処理物の前段に、前記冷却ガスの流速及び流量が流路断面において均一化されるように、前記冷却ガスのムラに応じた開口部を有する均一化手段を有することを特徴とする熱処理装置。
【請求項2】
前記冷却ガスの循環方向における前記被処理物の後段に前記均一化手段をさらに備えることを特徴とする請求項1記載の熱処理装置。
【請求項3】
複数の前記均一化手段が立体的に組み上げられていることを特徴とする請求項1または2記載の熱処理装置。
【請求項4】
前記均一化手段が立体的に加工されていることを特徴とする請求項1または2記載の熱処理装置。
【請求項5】
前記均一化手段は、パンチングメタルであることを特徴とする請求項1〜4いずれかに記載の熱処理装置。
【請求項6】
前記熱処理炉の冷却ガス出入口と前記均一化手段との間に昇降式扉を有することを特徴とする請求項1〜5いずれかに記載の熱処理装置。





【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2007−92137(P2007−92137A)
【公開日】平成19年4月12日(2007.4.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−283854(P2005−283854)
【出願日】平成17年9月29日(2005.9.29)
【出願人】(000000099)石川島播磨重工業株式会社 (5,014)
【Fターム(参考)】