説明

熱分解装置、脱塩素処理装置、熱分解方法および脱塩素方法

【課題】処理中に廃棄物から酸素が発生する場合には、処理工程および処理装置が複雑になる。
【解決手段】有機物を含む熱分解対象物を加熱する加熱炉と、加熱炉を加熱する加熱部と、加熱炉に、過熱水蒸気を供給する水蒸気供給部と、加熱炉の内部の温度を測定する温度測定部と、加熱炉の内部の温度を制御する制御部とを備え、制御部は、温度測定部の測定結果に基づき、加熱部および水蒸気供給部の少なくとも一方を制御して、加熱炉の内部の温度を、予め定められた時間、150℃以上300℃未満に維持した後、加熱炉の内部の温度を300℃以上600℃以下に制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱分解装置、脱塩素処理装置、熱分解方法および脱塩素方法に関する。
【背景技術】
【0002】
プラスチックまたは合成樹脂を含む廃棄物を油化する油化装置が知られている。油化装置は、熱分解炉に収容した廃棄物を加熱して熱分解ガスを発生させ、発生した熱分解ガスを凝縮させることで廃棄物を油化する(例えば、特許文献1参照)。
特許文献1 特開2009−249576
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
熱分解ガスは可燃性を有するので、廃棄物は低酸素または無酸素状態の還元性雰囲気下で加熱される。そのため、処理中に廃棄物から酸素が発生する場合には、処理工程および処理装置が複雑になる。
【課題を解決するための手段】
【0004】
上記課題を解決するために、本発明の第1の態様においては、有機物を含む熱分解対象物を加熱する加熱炉と、加熱炉を加熱する加熱部と、加熱炉に、過熱水蒸気を供給する水蒸気供給部と、加熱炉の内部の温度を測定する温度測定部と、加熱炉の内部の温度を制御する制御部とを備え、制御部は、温度測定部の測定結果に基づき、加熱部および水蒸気供給部の少なくとも一方を制御して、加熱炉の内部の温度を、予め定められた時間、150℃以上300℃未満に維持した後、加熱炉の内部の温度を300℃以上600℃以下に制御する熱分解装置を提供することができる。
【0005】
上記の熱分解装置において、加熱炉から排出された熱分解ガスを凝縮させる凝縮部を更に備えてよい。加熱炉は、加熱炉の内部のガスを排出するガス排出部と、制御部の指示に基づいて、ガス排出部から排出されるガスを凝縮部に移送するか否かを選択する選択部とを備えてよい。上記の熱分解装置において、制御部は、予め定められた時間が経過した後、選択部を制御して、ガス排出部から排出されるガスを凝縮部に供給してよい。
【0006】
上記の熱分解装置において、加熱炉の内部における酸素ガス濃度を測定する酸素濃度測定部を更に備えてよい。制御部は、酸素濃度測定部の測定結果が予め定められた値より小さい場合に、選択部を制御して、ガス排出部から排出されるガスを凝縮部に供給してよい。上記の熱分解装置において、加熱炉の内部における塩素元素を含むガスの濃度を測定する塩素濃度測定部を更に備えてよい。制御部は、塩素濃度測定部の測定結果が予め定められた値より小さい場合に、選択部を制御して、ガス排出部から排出されるガスを凝縮部に供給してよい。
【0007】
上記の熱分解装置において、加熱炉に、塩素元素を含むガスを吸収するガスが供給されてよい。上記の熱分解装置において、塩素元素を含むガスを吸収するガスが、アルカリ性ガスであってよい。
【0008】
本発明の第2の態様においては、塩素元素を含む脱塩素対象物を加熱する脱塩素部と、脱塩素部を制御する制御部とを備え、脱塩素部は、脱塩素対象物を収容する収容部と、収容部の内部に過熱水蒸気を供給する水蒸気供給部と、収容部の内部のガスを排出するガス排出部と、収容部から脱塩素対象物を排出する収容物排出部と、収容部の内部の温度を測定する温度測定部と、収容部の内部における酸素ガス濃度を測定する酸素濃度測定部、および収容部の内部における塩素元素を含むガスの濃度を測定する塩素濃度測定部の少なくとも一方とを有し、制御部は、収容物排出部を制御して、温度測定部の測定結果が予め定められた値より大きくなった後、酸素濃度測定部および塩素濃度測定部の少なくとも一方の測定結果が予め定められた値より小さくなった場合に、脱塩素対象物を排出させる脱塩素処理装置を提供することができる。
【0009】
上記の脱塩素処理装置において、収容部に、塩素元素を含むガスを吸収するガスが供給されてよい。
【0010】
本発明の第3の態様においては、上記の脱塩素処理装置と、脱塩素処理装置から排出された脱塩素対象物を加熱して、熱分解ガスを発生させる熱分解部とを備える熱分解装置を提供することができる。
【0011】
本発明の第4の態様においては、有機物を含む熱分解対象物を加熱する加熱炉の内部に、熱分解対象物を投入する段階と、予め定められた時間、加熱炉の内部の温度を第1の温度に維持しながら、加熱炉の内部に過熱水蒸気を供給する段階と、加熱炉の内部の温度を第1の温度より高い第2の温度に加熱して、熱分解対象物を熱分解する段階とを備える、熱分解方法を提供することができる。
【0012】
上記の熱分解方法において、熱分解対象を第1の温度に加熱する段階が、予め定められた時間、加熱炉の内部の温度を第1の温度に維持する段階を含んでよい。第1の温度は150℃以上300℃未満であってよく、第2の温度は300℃以上600℃以下であってよい。
【0013】
本発明の第5の態様においては、塩素元素を含む脱塩素対象物を加熱する加熱炉の内部に、脱塩素対象物を投入する段階と、脱塩素対象物を加熱して、塩素元素を含むガスを発生させる段階とを備え、塩素元素を含むガスを発生させる段階が、塩素元素を含むガスを吸収するガスおよび過熱水蒸気を、加熱炉の内部に供給する段階を有する脱塩素方法を提供することができる。
【0014】
なお、上記の発明の概要は、本発明の必要な特徴の全てを列挙したものではない。また、これらの特徴群のサブコンビネーションもまた、発明となりうる。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】熱分解装置100の一例を概略的に示す。
【図2】投入部110および熱分解部120の断面の一例を概略的に示す。
【図3】投入部110および熱分解部120のA−A'断面の一例を概略的に示す。
【図4】熱分解装置100における処理方法の一例を概略的に示す。
【図5】熱分解装置500の一例を概略的に示す。
【図6】脱塩素部510および熱分解部120の断面の一例を概略的に示す。
【図7】熱分解装置500における処理方法の一例を概略的に示す。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
【0017】
図面を参照して、実施形態について説明するが、図面の記載において、同一または類似の部分には同一の参照番号を付して重複する説明を省く場合がある。なお、図面は模式的なものであり、厚みと平面寸法との関係、比率等は現実のものとは異なる場合がある。また、説明の都合上、図面相互間においても互いの寸法の関係又は比率が異なる部分が含まれる場合がある。
【0018】
図1は、熱分解装置100の一例を概略的に示す。熱分解装置100は、投入部110と、熱分解部120と、凝縮部130と、残渣受け容器140と、生成油タンク150と、未凝縮ガス燃焼部160と、バーナー170と、ボイラ180と、制御部190とを備えてよい。熱分解装置100は、弁122、弁124、弁126および弁182を備えてよい。
【0019】
熱分解装置100は、熱分解装置および脱塩素処理装置の一例であってよい。バーナー170およびボイラ180は、加熱部の一例であってよい。ボイラ180および弁182は、水蒸気供給部の一例であってよい。弁122、弁124、弁126および弁182は、流体の流量を調整する流量調整部材の一例であってよい。弁122は、選択部の一例であってよい。
【0020】
本実施形態において、被処理物10は投入部110に投入され、熱分解部120に移送される。熱分解部120は被処理物10を加熱する。被処理物10が樹脂を含む場合、被処理物10を加熱すると樹脂が溶融する。被処理物10が有機物を含む場合、被処理物10を加熱すると熱分解ガスが発生する。熱分解ガスは、炭素元素を有する物質を含む。
【0021】
被処理物10が塩素元素を有する物質を含む場合、被処理物10を加熱すると、塩素元素を有する物質の一部が解離して生成された物質を含むガス(塩素元素を含むガスを称する場合がある。)が発生する。これにより、被処理物10の脱塩素処理を実施することができ、塩素元素の少ない残渣を得ることができる。塩素元素を含むガスとして、塩化水素を例示することができる。
【0022】
熱分解部120で発生した熱分解ガスは、凝縮部130に移送される。熱分解部120で熱分解しなかった被処理物10(残渣と称する場合がある。)は、残渣受け容器140に移送される。凝縮部130は、熱分解ガスを冷却する。冷却された熱分解ガスの少なくとも一部が凝縮して、油(生成油と称する場合がある。)が生成される。
【0023】
凝縮部130で得られた生成油は生成油タンク150に移送される。凝縮部130で凝縮しなかった熱分解ガス(未凝縮ガスと称する場合がある。)は、未凝縮ガス燃焼部160またはバーナー170に移送される。未凝縮ガス燃焼部160は、未凝縮ガスを燃焼させて燃焼ガスとして排出する。バーナー170は、未凝縮ガスを燃焼させて得られた熱または熱風を熱分解部120に供給する。
【0024】
残渣、生成油および未凝縮ガスは、バーナー170、ボイラ180またはその他の装置の燃料として利用されてよい。未凝縮ガス燃焼部160から排出される燃焼ガスは、ボイラ180またはその他の装置の熱源として利用されてよい。未凝縮ガス燃焼部160およびバーナー170の廃熱は、ボイラ180またはその他の装置の熱源として利用されてよい。熱分解装置100の廃熱は、その他の装置の熱源として利用されてよい。生成油は、蒸留塔または精留塔を用いて精製されてよい。熱分解ガスは、改質された後、凝縮部130に移送されてよい。
【0025】
被処理物10は、プラスチック、合成樹脂、木材、紙などの有機物を含んでよい。医療廃棄物、感染性廃棄物、廃プラスチック、廃木材、生ごみなどの有機性廃棄物を含んでよい。被処理物10は、熱分解対象物の一例であってよい。被処理物10は、塩素元素を含む物質を含んでよい。塩素元素を含む物質としては、ポリ塩化ビニルなどの塩化ビニル樹脂を例示することができる。被処理物10は、脱塩素対象物の一例であってよい。
【0026】
被処理物10は、熱分解装置100に投入される前に破砕または溶融されてよい。被処理物10は、熱分解装置100に投入される前に、金属、土砂、硝子、セラミックなどの異物が除去されてよい。被処理物10は、内部に空気または酸素を保持する容器であってもよい。例えば、医療廃棄物は、蓋のついた樹脂製の容器に収容される。この場合、樹脂製の容器の内部には医療廃棄物だけでなく、空気も保持される。
【0027】
投入部110は、熱分解装置100に投入された被処理物10を一時的に収容してよい。投入部110は、被処理物10を収容する前に、投入部110の内部の雰囲気を調整してよい。投入部110の内部の気体を排出したり、投入部110の内部の気体を外部の空気で置換したりすることで、投入部110の内部の雰囲気を調整してよい。これにより、熱分解部120の内部の気体が、外部に漏出することを防止することができる。
【0028】
投入部110は、収容した被処理物10を熱分解部120に移送してよい。投入部110は、被処理物10を熱分解部120に移送する前に、投入部110の内部の雰囲気を調整してよい。投入部110の内部の気体を排出したり、投入部110の内部の気体を酸素濃度が低い気体で置換したりすることで、投入部110の内部の雰囲気を調整してよい。これにより、熱分解部120における雰囲気の変動を抑制することができる。
【0029】
投入部110の内部の酸素濃度は、16%以下、好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下に調整されることが好ましい。これにより、熱分解部120を安全に運転することができる。また、熱分解部120において、安定的に熱分解ガスを発生させることができる。
【0030】
熱分解部120は、被処理物10を収容する熱分解炉を有してよい。熱分解炉は加熱炉、脱塩素部、および収容部の一例であってよい。熱分解部120は、熱分解炉に収容した被処理物10を加熱してよい。熱分解部120は、低酸素または無酸素の雰囲気下で被処理物10を加熱してよい。熱分解部120は、酸素濃度が16%以下、好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下の雰囲気下で被処理物10を加熱してよい。これにより、安定的に熱分解ガスを発生させることができる。
【0031】
熱分解部120としては、ガス化炉、スクリューコンベア、ロータリーキルンを例示することができる。熱分解部120は、外熱式のロータリーキルンであってよい。熱分解部120は、熱分解炉の内部の温度を測定する温度測定部を有してよい。熱分解部120は、熱分解炉の内部における酸素ガス濃度を測定する酸素濃度測定部と、熱分解炉の内部における塩素元素を含むガスの濃度を測定する塩素濃度測定部との少なくとも一方を有してよい。これにより、熱分解炉の内部の状態を把握することができる。
【0032】
熱分解部120は、バーナー170から供給された熱により被処理物10を加熱してよい。熱分解部120は、ボイラ180から供給された水蒸気により被処理物10を加熱してよい。熱分解部120は、バーナー170から供給された熱で熱分解炉を加熱しながら、熱分解炉に水蒸気を供給してもよい。
【0033】
熱分解部120は、過熱水蒸気を熱分解炉に供給してよい。熱分解部120は、熱分解炉に過熱水蒸気を供給しながら被処理物10を加熱してよい。熱分解部120は、予め定められた条件が満たされた場合に、熱分解炉に過熱水蒸気を供給して、熱分解炉内の雰囲気を過熱水蒸気で置換してもよい。
【0034】
過熱水蒸気は熱媒体としての特性に優れるので、熱分解炉に過熱水蒸気を供給することで、被処理物10を効率よく加熱することができる。また、被処理物10を均一に加熱することができる。過熱水蒸気中の酸素濃度は非常に小さいので、熱分解炉に過熱水蒸気を供給することで、熱分解炉の内部の酸素濃度を低下させることができる。
【0035】
過熱水蒸気は常圧過熱水蒸気であってよい。過熱水蒸気の圧力は0.1〜0.6MPaであってもよい。過熱水蒸気の温度は、100〜800℃、好ましくは150〜600℃であってよい。過熱水蒸気中の酸素濃度は0.1体積%〜0.5体積%であってよい。
【0036】
本発明者らは、熱分解炉に過熱水蒸気を供給しながら被処理物10を加熱することで、被処理物10の脱塩素処理が促進されることを見出した。詳細な原理は不明であるが、熱分解炉に過熱水蒸気を供給することで、加水分解反応により被処理物10の分解が促進されることが考えられる。また、塩素元素を含むガスが過熱水蒸気に吸収されたり、過熱水蒸気とともに熱分解炉から排出されることで、熱分解炉の内部における塩素元素を含むガスの濃度が低下して、被処理物10の分解が進行する方向に平衡状態が移動することが考えられる。
【0037】
熱分解部120は、熱分解炉に、塩素元素を含むガスを吸収するガス供給してよい。塩素元素を含むガスを吸収するガスは、アルカリ性ガスであってよい。アルカリ性ガスは、アンモニアガスであってよい。これにより、脱塩素反応を促進することができる。また、熱分解炉から塩素元素を効率よく排出することができる。
【0038】
被処理物10の熱分解反応は、物質の種類に応じて定まる温度を超えると、急激に進行する。また、一般に、熱分解反応の開始温度は、脱塩素反応の開始温度より高い。そこで、熱分解部120は、熱分解ガスの発生量が少ない間は、熱分解炉から排出されるガスを未凝縮ガス燃焼部160に移送してよい。あるいは、熱分解炉から排出されるガスの一部または全部を、再度、熱分解炉に供給してもよい。
【0039】
このとき、熱分解炉から排出されるガスの流路にスチームトラップを設けて、ドレインを除去してよい。これにより、ドレインとともに塩化水素などの水溶性の物質を系外に排出することができる。また、熱分解炉から排出されるガスを、再度、熱分解炉に供給する前に、酸素吸収剤などを用いて酸素を除去してよい。
【0040】
熱分解炉から排出されるガスを未凝縮ガス燃焼部160に移送することで、当該ガス中にウイルス、細菌、真菌、微生物、病原体などが含まれる可能性がある場合でも、当該ガスを未凝縮ガス燃焼部160で燃焼させることにより、当該ガスを滅菌することができる。熱分解炉から排出されるガスの一部または全部を、再度、熱分解炉に供給することで、過熱水蒸気を効率よく使用することができる。
【0041】
熱分解部120は、熱分解ガスの発生量が増加する時期に合わせて、熱分解炉から排出されたガスを凝縮部130に移送してよい。熱分解炉から排出されたガスを凝縮部130に移送する条件としては、熱分解炉の内部の温度が予め定められた値より大きい場合、熱分解炉の内部の酸素の濃度が予め定められた値より小さい、熱分解炉の内部の塩素元素を含むガスの濃度が予め定められた値より小さい場合を例示することができる。熱分解部120は、予め定められた時間、予め定められた条件が継続した場合に、熱分解炉から排出されたガスを凝縮部130に移送してもよい。
【0042】
生成油または残渣を燃料などに再利用するとき、生成油または残渣に含まれる不純物の濃度、比重または発熱量について、予め定められた基準を満たすことを求められる場合がある。しかし、熱分解炉の内部の温度が予め定められた値より大きい場合または熱分解炉の内部の酸素の濃度が予め定められた値より小さい場合には、比較的安定した状態で熱分解反応を実施することができる。
【0043】
これにより、熱分解ガスに含まれる分子の分子量を制御することができ、生成油の品質を向上させることができる。また、このような場合には、被処理物から塩素元素を含むガスがすでに十分に放出されていることが期待されるので、生成油中の塩素濃度を低減することができる。熱分解炉の内部の塩素元素を含むガスの濃度が予め定められた値より小さい場合に、熱分解炉から排出されたガスを凝縮部130に移送することで、凝縮部130に移送される塩素元素を含むガスの量を抑制して、生成油中の塩素濃度を低減することができる。
【0044】
なお、本願明細書において、塩素元素を含むガスの濃度を塩素濃度と称する場合がある。上述の通り、塩素元素を含むガスは、塩素に限らず、塩化水素をも含む。被処理物10がプラスチックまたは合成樹脂を多く含む場合、塩素元素を含むガスは塩化水素を多く含む。そこで、塩化水素の濃度を測定して、塩素元素を含むガスの濃度としてもよい。
【0045】
弁122、弁124および弁126は、熱分解部120から排出されるガスの移送先を選択してよい。弁122は、制御部190の指示に基づいて、熱分解部120から排出されるガスを凝縮部130に移送するか否かを選択してよい。弁124は、制御部190の指示に基づいて、熱分解部120から排出されるガスを熱分解部120に返送させるか否かを選択してよい。弁126は、制御部190の指示に基づいて、熱分解部120から排出されるガスを未凝縮ガス燃焼部160に移送させるか否かを選択してよい。
【0046】
なお、本実施形態においては、熱分解炉に過熱水蒸気が供給される場合について説明した。熱分解炉に供給される流体は過熱水蒸気であることが好ましいが、これに限定されない。熱分解炉に供給される流体は、熱媒体として優れた流体であってよい。熱分解炉に供給される流体は、酸素濃度が16%以下、好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下の流体であってよい。熱分解炉に供給される流体は、有機物の加水分解反応を促進する物質を含んでよい。熱分解炉に供給される流体は、塩素元素を含むガスを吸収する物質を含んでよい。
【0047】
熱分解炉の内部の雰囲気を低酸素状態または無酸素状態に維持することを目的とする場合には、熱分解炉に供給される流体は、酸素濃度が16%以下、好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下のガスであってよい。熱分解炉の内部における塩素元素を含むガスの濃度を低減させることを目的とする場合には、熱分解炉に供給する流体は、塩素元素を含むガスを吸収するガスであってよい。
【0048】
なお、本実施形態においては、熱分解炉に被処理物10を投入し、被処理物10を加熱することで熱分解ガスを発生させる場合について説明した。しかし、熱分解ガスの発生方法はこれに限定されない。熱分解炉に被処理物10と、鉄、銅などの金属とを投入して、被処理物10を鉄、銅などの金属と接触させながら加熱してもよい。これにより、被処理物10からの熱分解ガスまたは塩素元素を含むガスの放出を促進させることができる。
【0049】
鉄、銅などの金属は、粉末状であってよく、塊状であってもよい。熱分解炉の内部に、球状の金属、金属が担持された球状のセラミック、表面を金属で覆われた球状のセラミックなどが配されてもよい。
【0050】
凝縮部130は、熱分解部120から排出された熱分解ガスを凝縮させてよい。凝縮部130は、生成油と熱分解ガスとを接触させることで、熱分解ガスを凝縮させてよい。凝凝縮部130は、熱交換器により熱分解ガスを冷却することで、熱分解ガスを凝縮させてよい。凝縮部130は、未凝縮ガスを、未凝縮ガス燃焼部160またはバーナー170に移送してよい。
【0051】
残渣受け容器140は、熱分解部120から排出される残渣を貯留する。残渣受け容器140は、内部に水を貯留してよい。これにより、残渣を冷却することができる。また、残渣に水分を含ませることにより、粉塵の発生を抑制することができる。生成油タンク150は、凝縮部130で得られた生成油を貯留する。
【0052】
未凝縮ガス燃焼部160は、凝縮部130から移送された未凝縮ガスを燃焼させる。未凝縮ガス燃焼部160は、燃焼ガスの温度が800℃以上の温度を保ちつつ、2秒以上滞留できる燃焼室を有してよい。未凝縮ガス燃焼部160は、燃焼ガスを排ガス処理設備などにより無害化した後、外部に排出してよい。
【0053】
バーナー170は、熱分解部120の熱分解炉を加熱する。バーナー170は、熱分解炉を直接加熱してもよく、熱分解炉に熱風を供給することで熱分解炉を加熱してもよい。バーナー170は、制御部190の指示に基づいて、熱分解炉を加熱してよい。
【0054】
ボイラ180は、熱分解部120の熱分解炉に水蒸気を供給してよい。ボイラ180は、制御部190の指示に基づいて、水蒸気の温度及び圧力を調整してよい。ボイラ180は、過熱水蒸気を供給してよい。弁182は、制御部190の指示に基づいて、熱分解部120に供給する水蒸気の流量を調整してよい。
【0055】
制御部190は、熱分解装置100を制御する。制御部190は、熱分解部120の熱分解炉の内部の温度を制御してよい。制御部190は、温度測定部の測定結果に基づいて、熱分解部120の熱分解炉の内部の温度を制御してよい。制御部190は、バーナー170、ボイラ180および弁182の少なくとも一つを制御して、熱分解部120の熱分解炉の内部の温度を制御してよい。制御部190は、バーナー170の燃焼温度、バーナー170から熱分解部120に供給される熱風の温度および流量、ボイラ180が発生させる水蒸気の温度、圧力および発生量、ならびに、弁182の開度から選択される少なくとも一つを制御してよい。
【0056】
制御部190は、予め定められた条件が満たされるまでの間、熱分解炉の内部の温度を150℃以上300℃未満の第1の温度に維持した後、予め定められた条件が満たされた場合に、熱分解炉の内部の温度を300℃以上600℃以下の第2の温度に上昇させてよい。制御部190による温度制御の例としては、熱分解炉の内部の温度を、予め定められた時間、150℃以上300℃未満の第1の温度に維持した後、熱分解炉の内部の温度を300℃以上600℃以下の第2の温度に制御することを例示することができる。
【0057】
第1の温度は、150℃以上250℃以下であることが好ましい。第2の温度は、400℃以上600℃以下であることが好ましい。ここで、熱分解炉の内部の温度を第1の温度に維持するとは、熱分解炉の内部の温度を予め定められた温度範囲内に維持することをいう。熱分解炉の内部の温度を第2の温度に制御するとは、熱分解炉の内部の温度が予め定められた温度範囲内で推移するように制御することをいう。
【0058】
予め定められた条件としては、予め定められた時点を基準として、予め定められた時間が経過したこと、温度測定部の測定結果が予め定められた値より大きいこと、酸素濃度測定部の測定結果が予め定められた値より小さいこと、熱分解炉の内部における酸素の濃度の変化率が予め定められた値より小さいこと、塩素濃度測定部の測定結果が予め定められた値より小さいこと、熱分解炉の内部における塩素元素を含むガスの濃度の変化率が予め定められた値より小さいこと、および、これらの組合せを例示することができる。濃度の変化率は、予め定められた時間における濃度の変化量を、当該予め定められた時間で除して算出することができる。
【0059】
予め定められた時点を基準として、予め定められた時間が経過したことの一例は、被処理物10を熱分解炉に投入してから予め定められた時間が経過したこと、または、熱分解炉の温度が第1の温度になってから予め定められた時間が経過したことであってよい。温度測定部の測定結果に対する予め定められた値は、第1の温度であってよい。熱分解炉の内部における酸素の濃度の変化率は、酸素濃度測定部の測定結果に基づいて算出してよい。熱分解炉の内部における塩素元素を含むガスの濃度または濃度の変化率は、塩素濃度測定部の測定結果に基づいて算出してよい。
【0060】
一般に、有機物を300℃以上に加熱することで、有機物の熱分解反応が急激に促進される。そこで、熱分解炉の内部の温度を、第2の温度に上昇させることで、被処理物10の熱分解反応を促進することができる。
【0061】
一方、被処理物10を300℃以上に加熱すると、被処理物10の種類によっては、熱分解ガスとともに酸素が発生して、熱分解反応が不安定になる可能性がある。また、被処理物10の種類によっては、塩素元素を含むガスが発生して、生成油中の塩素濃度が増加する可能性がある。さらに、被処理物10が病原体で汚染されている可能性がある場合には、被処理物10を滅菌した後、熱分解部120から排出することが望まれる。
【0062】
熱分解炉の内部の温度を、予め定められた時間、第1の温度に維持することで、被処理物10を溶融させることができる。これにより、被処理物10が内部に空気または酸素を保持している場合に、被処理物10から空気または酸素を放出させることができる。また、被処理物10が、過酸化水素のような、反応により酸素を発生させる物質を含む場合に、当該物質を反応させて酸素を放出させることができる。
【0063】
そこで、熱分解炉の内部の温度を300℃以上に加熱する前に、上記の処理を実施することで、被処理物10の熱分解反応が活発になる前に、熱分解炉の内部から酸素を排出することができる。これにより、その後、熱分解炉の内部の温度を第2の温度に上昇させた場合に、熱分解炉の内部を低酸素または無酸素状態に維持することができる。
【0064】
熱分解炉の内部の温度を、予め定められた時間、第1の温度に維持することで、被処理物10が塩素元素を有する物質を含む場合に、塩素元素を含むガスを発生させることができる。そこで、熱分解炉の内部の温度を300℃以上に加熱する前に、上記の処理を実施することで、被処理物10の熱分解反応が活発になる前に、被処理物10の脱塩素処理を実施することができる。これにより、その後、熱分解炉の内部の温度を第2の温度に上昇させた場合に、熱分解ガス中に塩素元素を含むガスが混入することを抑制することができる。
【0065】
熱分解炉の内部の温度を、予め定められた時間、第1の温度に維持することで、被処理物10を滅菌することができる。この場合、予め定められた時間は、被処理物10および熱分解炉の内部を滅菌するのに十分な時間であってよい。予め定められた時間は、20分以上90分以下であってよい。
【0066】
制御部190は、弁122、弁124および弁126の開度を制御してよい。制御部190は、温度測定部、酸素濃度測定部および塩素濃度測定部の少なくとも一つの測定結果に基づいて、弁122、弁124および弁126を制御してよい。制御部190は、弁122を制御して、熱分解炉から排出されるガスを凝縮部130に移送するか否かを選択してよい。
【0067】
制御部190は、予め定められた条件が満たされるまでの間、弁122を閉じて、熱分解炉から排出されるガスを熱分解炉または未凝縮ガス燃焼部160に供給してよい。制御部190は、予め定められた条件が満たされた場合に、弁122を開き、弁124および弁126を閉じて、熱分解炉から排出されるガスを凝縮部130に供給してよい。これにより、生成油の品質を向上させることができる。
【0068】
この場合の予め定められた条件としては、熱分解炉の内部の温度を第2の温度に上昇させる場合の条件と同様の条件を例示することができる。なお、条件の組合せおよび条件の設定値は、熱分解炉の内部の温度を第2の温度に上昇させる場合と異なってもよい。
【0069】
制御部190は、熱分解炉の内部の温度を第2の温度に上昇させた後、予め定められた条件が満たされた場合に、熱分解部120を制御して残渣を排出させてよい。これにより、残留塩素の少ない残渣が得られるので、熱分解装置100を脱塩素処理装置として用いることができる。この場合の予め定められた条件としては、熱分解炉の内部の温度を第2の温度に上昇させる場合の条件と同様の条件を例示することができる。なお、条件の組合せおよび条件の設定値は、熱分解炉の内部の温度を第2の温度に上昇させる場合と異なってもよい。
【0070】
弁122が閉じられている間、制御部190は、弁122および弁124を制御して、熱分解炉から排出されるガスの移送先および移送量を制御してよい。制御部190は、温度測定部、酸素濃度測定部および塩素濃度測定部の少なくとも一つの測定結果に基づいて、弁124および弁126の開度を制御してよい。
【0071】
制御部190は、酸素濃度測定部の測定結果が予め定められた値より大きい場合に、弁124の開度を小さくし、弁126の開度を大きくしてよい。このとき、制御部190は、弁124を閉じてもよい。これにより、酸素濃度の大きなガスが熱分解炉に流入することが抑制されるので、熱分解炉の内部を低酸素または無酸素状態に維持することができる。その結果、生成油の品質を向上させることができる。このとき、制御部190は、弁182を制御して、熱分解部120に供給される水蒸気の流量を増加させてもよい。
【0072】
制御部190は、塩素濃度測定部の測定結果が予め定められた値より大きい場合に、弁124の開度を小さくし、弁126の開度を大きくしてよい。このとき、制御部190は、弁124を閉じてもよい。これにより、熱分解炉の内部における塩素元素を含むガスの濃度を低減させることができる。このとき、制御部190は、弁182を制御して、熱分解部120に供給される水蒸気の流量を増加させてもよい。
【0073】
制御部190は、温度計測部の測定結果が300℃または第2の温度より大きく、かつ、酸素濃度測定部の測定結果が予め定められた値より大きい場合には、バーナー170およびボイラ180を制御して、熱分解炉の内部の温度を300℃未満に下げてよい。制御部190は、バーナー170から熱分解炉への熱風の供給を停止させ、ボイラ180から熱分解炉の内部に300℃未満好ましくは100℃〜150度の水蒸気を供給させることで、熱分解炉の内部の温度を300℃未満に下げてよい。これにより、熱分解炉の酸素濃度が大きな状態で、被処理物10が熱分解することを抑制することができる。その結果、熱分解部120を安全に運転することができる。
【0074】
以上の記載から明らかなとおり、本願明細書には、有機物を含む熱分解対象物を加熱する加熱炉の内部に、熱分解対象物を投入する段階と、予め定められた時間、加熱炉の内部の温度を第1の温度に維持しながら、加熱炉の内部に過熱水蒸気を供給する段階と、加熱炉の内部の温度を第1の温度より高い第2の温度に加熱して、熱分解対象物を熱分解する段階とを備える熱分解方法が記載されている。また、塩素元素を含む脱塩素対象物を加熱する加熱炉の内部に、脱塩素対象物を投入する段階と、脱塩素対象物を加熱して塩素元素を含むガスを発生させる段階とを備え、塩素元素を含むガスを発生させる段階が、塩素元素を含むガスを吸収するガスおよび過熱水蒸気を、加熱炉の内部に供給する段階を有する脱塩素方法が記載されている。
【0075】
図2は、投入部110および熱分解部120の断面の一例を概略的に示す。図3は、投入部110および熱分解部120のA−A'断面の一例を概略的に示す。図2および図3は、投入部110および熱分解部120を、バーナー170および架台202とともに示す。図2および図3を用いて、投入部110および熱分解部120について説明する。
【0076】
本実施形態において、架台202の上部に熱分解部120が配され、架台202の下部にバーナー170が配される。投入部110は、筐体210と、ゲートバルブ222、ゲートバルブ224およびゲートバルブ226とを備えてよい。熱分解部120は、熱分解炉250と、排出部260と、外筒270と、駆動部310とを備えてよい。投入部110は熱分解部120に連結してよい。筐体210と熱分解炉250とは、ゲートバルブ226を介して連通してよい。
【0077】
まず、投入部110の各部について説明する。筐体210は、ゲートバルブ222およびゲートバルブ224により仕切られるバッファ部212と、ゲートバルブ224およびゲートバルブ226により仕切られる押出部214とを有してよい。バッファ部212および押出部214は、収容部の一例であってよい。
【0078】
バッファ部212は、熱分解装置100に投入された被処理物10を一時的に収容してよい。バッファ部212は、収容した被処理物10を押出部214に移送してよい。バッファ部212は、熱分解装置100の外部の空気が押出部214の内部に流入することを防止してよい。バッファ部212は、押出部214の内部の気体を熱分解装置100の内部に保持してよい。
【0079】
押出部214は、バッファ部212から排出された被処理物10を熱分解炉250に移送してよい。押出部214は、熱分解装置100の外部の空気が熱分解炉250の内部に流入することを防止してよい。押出部214は、熱分解炉250の内部の気体を熱分解装置100内部に保持してよい。
【0080】
押出部214の内部には、被処理物10を押出部214から押し出す押出部材244が配されてよい。押出部材244は、ロッド248に連結されてよい。押出部材244は、シリンダ246がロッド248を伸縮させることで、被処理物10を押出部214の内部から押し出して、被処理物10を熱分解炉250の内部に移送してよい。
【0081】
ゲートバルブ222は、熱分解装置100の外部とバッファ部212の内部とを連結および遮断してよい。ゲートバルブ224は、バッファ部212の内部と押出部214の内部とを連結および遮断してよい。ゲートバルブ226は、押出部214の内部と熱分解炉250の内部とを連結および遮断してよい。ゲートバルブ222、ゲートバルブ224およびゲートバルブ226は、筐体210を複数の区画に仕切る仕切部材の一例であってよい。ゲートバルブ224およびゲートバルブ226は、収容物排出部の一例であってよい。
【0082】
ゲートバルブ222は、弁箱232と、弁体234と、シリンダ236と、ロッド238とを有してよい。弁箱232は、弁体234を移動可能に収容する。弁体234はロッド238に連結されてよく、シリンダ236がロッド238を伸縮させることで、弁体234が筐体210の外部とバッファ部212の内部とを連結および遮断してよい。ゲートバルブ224およびゲートバルブ226は、ゲートバルブ222と同様の構成を有してよい。
【0083】
投入部110の動作の一例を以下に示す。本実施形態において、投入部110は、ゲートバルブ224が閉じた状態でゲートバルブ222を開き、投入された被処理物10をバッファ部212に収容する。投入部110は、ゲートバルブ222を開く前に、バッファ部212の内部の雰囲気を調整してよい。バッファ部212の内部の酸素濃度は、16%以下、好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下に調整されてよい。図示しない給排気機構によりバッファ部212の内部の気体が排気されてよい。また、バッファ部212の内部に過熱水蒸気が供給され、バッファ部212の内部の気体が過熱水蒸気で置換されてよい。
【0084】
次に、投入部110は、ゲートバルブ222を閉じ、ゲートバルブ224を開くことで、被処理物10を押出部214に排出する。このとき、シリンダ246がロッド248を収納していることが好ましい。また、ゲートバルブ226が閉じていることが好ましい。次に、投入部110は、ゲートバルブ224を閉じ、ゲートバルブ226を開く。その後、シリンダ246がロッド248を伸ばして、押出部材244が被処理物10を押し出すことで、被処理物10を熱分解炉250に移送する。そして、シリンダ246がロッド248を収納した後、投入部110がゲートバルブ226を閉じる。
【0085】
これにより、投入部110が熱分解炉250に被処理物10を投入することができる。このとき、ゲートバルブ224が閉じているので、熱分解部120の内部の気体が外部に漏出することを防止することができる。また、熱分解部120における雰囲気の変動を抑制することができる。
【0086】
次に、熱分解部120の各部について説明する。本実施形態において、熱分解部120は、外熱式のロータリーキルンであってよい。熱分解炉250は、被処理物10を収容する。熱分解炉250は、被処理物10を加熱する。熱分解炉250は、加熱炉、脱塩素部および収容部の一例であってよい。熱分解炉250は、円筒状の形状を有してよい。熱分解炉250は、一方の端部において投入部110と連結され、他方の端部において排出部260と連結されてよい。熱分解炉250は、投入部110および排出部260と回転可能に連結されてよい。熱分解炉250と、投入部110および排出部260との連結部分は、シールされてよい。
【0087】
熱分解炉250は、駆動部310により回転駆動されてよい。本実施形態において、駆動部310の動力が熱分解炉250の駆動ギア258に伝達され、熱分解炉250が回転する。熱分解炉250の回転方向は、周期的に切り替えられてよい。熱分解炉250の回転軸は、水平方向からわずかに傾いてよい。これにより、熱分解炉250は、収容した被処理物10を加熱しながら、一方の端部から他方の端部に移送することができる。熱分解炉250の少なくとも一部は、外筒270に覆われてよい。バーナー170から外筒270に送風される熱風により、熱分解炉250の外部が加熱されることで、被処理物10が加熱されてよい。
【0088】
熱分解炉250は、水蒸気流入部252と、アンモニアガス流入部254と、温度計292を有してよい。水蒸気流入部252は、ボイラ180および弁182が供給する水蒸気を熱分解炉250の内部に流入させる。水蒸気流入部252は、配管であってよい。水蒸気流入部252は、水蒸気供給部の一例であってよい。
【0089】
アンモニアガス流入部254は、アンモニアガスを熱分解炉250の内部に流入させる。アンモニアガス流入部254は、配管であってよい。アンモニアガスは、塩素元素を含むガスを吸収するガスの一例であってよい。アンモニアガス流入部254は、塩素元素を含むガスを吸収するガスを供給する塩素吸収ガス供給部の一例であってよい。温度計292は、熱分解炉250の内部の温度を測定してよい。温度計292は、温度測定部の一例であってよい。
【0090】
排出部260は、ガス排出部262と、残渣排出部264とを有してよい。排出部260は、熱分解炉250から移送される被処理物10の残渣と、熱分解炉250から排出されるガスとを分離してよい。ガス排出部262は、熱分解炉250の内部のガスを排出してよい。ガス排出部262から排出されたガスは、弁122を介して凝縮部130に移送されてよい。ガス排出部262から排出されたガスは、弁124を介して、再度、熱分解炉250に供給されてよい。ガス排出部262から排出されたガスは、弁126を介して、未凝縮ガス燃焼部160に移送されてよい。
【0091】
ガス排出部262には、酸素濃度計294および塩化水素濃度計296が配されてよい。酸素濃度計294は、熱分解炉250の内部における酸素ガス濃度を測定してよい。酸素濃度計294は、横河電機株式会社製のZR202GまたはZR22GおよびZR402Gであってよい。酸素濃度計294は、酸素濃度計測部の一例であってよい。塩化水素濃度計296は、熱分解炉250の内部における塩素元素を含むガスの濃度を測定してよい。塩化水素濃度計296は、京都電子工業株式会社製のHL−36Nであってよい。塩化水素濃度計296は、塩素濃度計測部の一例であってよい。
【0092】
残渣排出部264は、熱分解炉250から移送される被処理物10の残渣を排出してよい。残渣排出部264は、残渣を残渣受け容器140に移送してよい。熱分解装置100を脱塩素処理に用いる場合には、残渣排出部264は、制御部190の指示に基づいて、予め定められた時間が経過した後、または、熱分解炉250に被処理物10を投入してから、温度計292の測定結果が150℃以上になった後、酸素濃度計294および塩化水素濃度計296の少なくとも一方の測定結果が予め定められた値より小さくなった場合に、残渣を排出してよい。残渣排出部264は、収容物排出部の一例であってよい。
【0093】
外筒270は、熱分解炉250を加熱してよい。外筒270は、熱分解炉250の少なくとも一部を覆ってよい。外筒270の内部には、バーナー170から連結部272を介して熱風が供給されてよい。外筒270は加熱部の一例であってよい。
【0094】
駆動部310は、熱分解炉250を駆動してよい。駆動部310は、架台312と、支持ローラ314と、モータ316と、チェーン318とを有してよい。架台312は、支持ローラ314およびモータ316を支持してよい。支持ローラ314は、熱分解炉250を回転可能に支持してよい。モータ316は、チェーン318を介して駆動ギア258を回転させてよい。チェーン318は、モータ316および駆動ギア258との間に掛け渡され、モータ316の動力を駆動ギア258に伝達してよい。
【0095】
図4は、熱分解装置100における処理方法の一例を概略的に示す。本実施形態では、S402において、制御部190が、弁122および弁124を閉じ、弁126を開く。これにより、熱分解炉250から排出されるガスの移送先を未凝縮ガス燃焼部160に設定することができる。
【0096】
S404において、投入部110が熱分解炉250に被処理物10を投入する。また、駆動部310が熱分解炉250を回転させる。これにより、被処理物10が排出部260に向かって移送される。駆動部310は、熱分解炉250の回転方向を周期的に反転させてよい。
【0097】
S406において、制御部190がボイラ180を制御して、過熱水蒸気を発生させる。過熱水蒸気の温度は、150℃以上300℃未満であってよい。制御部190は、弁182を開いて、熱分解炉250への過熱水蒸気の供給を開始する。このとき、過熱水蒸気とともにアンモニアガスが熱分解炉250に供給されてもよい。
【0098】
制御部190は、バーナー170を制御して、外筒270への熱風の供給を開始する。このとき、バーナー170からの熱風の温度および供給量は、過熱水蒸気が熱分解炉250または排出部260の内部で凝縮することを防止する程度の量であってよい。
【0099】
S408において、制御部190は、温度計292の測定結果に基づいて、予め定められた時間、熱分解炉250の内部の温度を150℃以上300℃未満の第1の温度に維持する。これにより、被処理物10が塩素元素を有する物質を含む場合には、被処理物10から塩素元素を含むガスが発生する。被処理物10が空気または酸素を保持する場合には、被処理物10が溶解して、被処理物10から酸素が放出される。また、被処理物10を滅菌してもよい。
【0100】
制御部190は、温度計292の測定結果に基づいて、バーナー170、ボイラ180および弁182の少なくとも一つを制御することで、熱分解炉250の内部の温度を制御してよい。この間、制御部190は、酸素濃度計294および塩化水素濃度計296の少なくとも一方の測定結果に基づいて、弁124および弁126を制御してよい。また、酸素濃度計294および塩化水素濃度計296の少なくとも一方の測定結果に基づいて、バーナー170、ボイラ180および弁182の少なくとも一つを制御してもよい。
【0101】
S410において、S408における予め定められた時間が経過した後、制御部190は、熱分解炉250の内部の温度を300℃以上600℃以下の第2の温度に上昇させる。これにより、被処理物10の熱分解を促進することができる。制御部190は、温度計292の測定結果に基づいて、バーナー170、ボイラ180および弁182の少なくとも一つを制御することで、熱分解炉250の内部の温度を制御してよい。
【0102】
このとき、制御部190は、ボイラ180を制御して、過熱水蒸気の温度を300℃以上600℃以下の温度に設定してよい。制御部190は、弁182を制御して、過熱水蒸気の供給量を、S408における供給量と比較して減少させてよい。制御部190は、バーナー170を制御して、熱分解炉250に供給する熱量をS408における供給熱量と比較して増加させてよい。これにより、凝縮部130に移送される水蒸気の流量を抑制することができる。
【0103】
S412において、制御部190は、弁122を制御して、熱分解炉250から排出されるガスの移送先を凝縮部130に変更する。制御部190は、S408における予め定められた時間が経過した後、弁122を開き、熱分解炉250から排出されるガスを凝縮部130に移送してよい。制御部190は、熱分解炉250の内部における酸素もしくは塩素元素を含むガスの濃度、または、濃度の変化率が予め定められた値より小さい場合に、熱分解炉250から排出されるガスを凝縮部130に移送してもよい。
【0104】
S414において、凝縮部130が熱分解炉250から排出されるガスを冷却して、熱分解ガスを凝縮させる。制御部190は、生成油の生成速度が予め定められた値より小さくなった場合に、弁122を閉じ、バーナー170、ボイラ180および弁182の少なくとも一つを制御して熱分解炉250の内部の温度を300℃未満に降温してよい。このとき、制御部190は、弁124を閉じ、弁126を開いて、熱分解炉250から排出されるガスを未凝縮ガス燃焼部160に移送してよい。
【0105】
以上の工程により、熱分解装置100は、被処理物10を脱塩素することができる。また、熱分解装置100は、被処理物10を熱分解することができる。なお、本実施形態では、熱分解炉250に過熱水蒸気を供給して、熱分解炉250の内部の温度を第1の温度に昇温および維持することで、予め定められた時間、熱分解炉250の内部の温度を第1の温度に維持しながら、熱分解炉250の内部に過熱水蒸気を供給する場合について説明した。
【0106】
予め定められた時間、熱分解炉250の内部の温度を第1の温度に維持しながら、熱分解炉250の内部に過熱水蒸気を供給する方法はこれに限定されない。S406とS408の順番を入れ替えてもよい。例えば、S404の後、過熱水蒸気を供給しない状態で、予め定められた条件を満たすまで、熱分解炉250の内部の温度を第1の温度に維持する。次に、予め定められた条件が満たされた場合に、熱分解炉250に過熱水蒸気を供給する。その後、S410において、熱分解炉250の内部の温度を第2の温度に上昇させてよい。
【0107】
この場合の予め定められた条件としては、予め定められた時間が経過すること、酸素濃度計294の測定結果が予め定められた値より大きいこと、塩化水素濃度計296の測定結果が予め定められた値より大きいこと、熱分解炉250の内部における酸素濃度の変化率が予め定められた値より小さいこと、熱分解炉250の内部における塩素元素を含むガスの濃度の変化率が予め定められた値より小さいこと、および、これらの条件の組合せを例示することができる。これにより、被処理物10に含まれる塩素元素および酸素を十分に放出させた後、熱分解炉250の内部の気体を過熱水蒸気で置換することができる。
【0108】
また、本実施形態では、S410において、S408における予め定められた時間が経過した後、制御部190が、熱分解炉250の内部の温度を第2の温度に上昇させる場合について説明した。しかし、熱分解炉250の内部の温度を変更するタイミングは、これに限定されない。
【0109】
制御部190は、S408において予め定められた条件が満たされた場合に、熱分解炉250の内部の温度を第2の温度に上昇させてよい。この場合の予め定められた条件としては、熱分解炉の内部の温度を第2の温度に上昇させる場合の条件と同様の条件を例示することができる。なお、条件の組合せおよび条件の設定値は、熱分解炉の内部の温度を第2の温度に上昇させる場合と異なってもよい。
【0110】
図5は、熱分解装置500の一例を概略的に示す。熱分解装置500は、熱分解装置および脱塩素処理装置の一例であってよい。以下、熱分解装置500と熱分解装置100との相違点を中心に説明して、共通する説明については省略する場合がある。
【0111】
熱分解装置500は、脱塩素部510と、熱分解部120と、凝縮部130と、残渣受け容器140と、生成油タンク150と、未凝縮ガス燃焼部160と、バーナー170と、ボイラ180と、制御部590とを備えてよい。熱分解装置500は、ゲートバルブ226、弁514、弁516、弁182および弁582を備えてよい。
【0112】
熱分解装置100と熱分解装置500とは、熱分解装置500が、投入部110の代わりに脱塩素部510を備える点で相違する。熱分解装置100が、熱分解部120において、第1の温度における処理と、第2の温度における処理とを実施するのに対して、熱分解装置500は、脱塩素部510において第1の温度における処理を実施して、熱分解部120において第2の温度における処理を実施する点で相違する。
【0113】
これにより、熱分解装置500では、被処理物10を熱分解部120に連続的に投入することができる。その結果、熱分解装置500においては、熱分解部120から排出されるガスを熱分解部120または未凝縮ガス燃焼部160に移送する流路を省略することができる。
【0114】
なお、熱分解装置500はこれに限定されない。熱分解装置500は、熱分解部120から排出されるガスを熱分解部120または未凝縮ガス燃焼部160に移送する流路を有してよい。熱分解装置500は、複数の熱分解部120を備えてよい。脱塩素部510から排出される被処理物10は、予め定められた順番または条件に基づいて、複数の熱分解部120のいずれかに移送されてよい。
【0115】
本実施形態において、被処理物10は脱塩素部510に投入される。脱塩素部510は、被処理物10を加熱する。脱塩素部510は、低酸素または無酸素の雰囲気下で被処理物10を加熱してよい。脱塩素部510は、酸素濃度が16%以下、好ましくは8%以下、さらに好ましくは5%以下の雰囲気下で被処理物10を加熱してよい。脱塩素部510は、弁582を介してボイラ180から供給された水蒸気により、被処理物10を加熱してよい。弁582は、水蒸気供給部の一例であってよい。ボイラ180は、脱塩素部510に過熱水蒸気を供給してよい。
【0116】
制御部590は、熱分解装置500を制御してよい。制御部590は、制御部190が熱分解装置100を制御したのと同様の方法で、熱分解装置500を制御してよい。以下、制御部590と制御部190との相違点を中心に説明して、共通する説明については省略する場合がある。
【0117】
制御部590は、脱塩素部510に配された温度測定部の測定結果に基づいて、熱分解部120の熱分解炉の内部の温度を制御してよい。温度測定部は、脱塩素部510の内部の温度を測定してよい。制御部590は、バーナー170、ボイラ180および弁582を制御して、脱塩素部510の内部の温度を制御してよい。制御部590は、脱塩素部510の内部の温度を、予め定められた時間、150℃以上300℃未満の第1の温度に維持してよい。
【0118】
制御部590はゲートバルブ226を制御して、被処理物10を脱塩素部510から熱分解部120に移送するか否かを選択してよい。制御部590は、脱塩素部510に配された酸素濃度測定部および塩素濃度測定部の少なくとも一方の測定結果に基づいて、ゲートバルブ226を制御してよい。酸素濃度測定部は、脱塩素部510の内部における酸素の濃度を測定してよい。塩素濃度測定部は、脱塩素部510の内部における塩素元素を含むガスの濃度を測定してよい。
【0119】
制御部590は、予め定められた条件が満たされた場合に、ゲートバルブ226を開いて、被処理物10を脱塩素部510から熱分解部120に移送してよい。この場合の予め定められた条件としては、熱分解装置100において、熱分解炉の内部の温度を第2の温度に上昇させる場合の条件と同様の条件を例示することができる。
【0120】
条件の組合せとしては、温度測定部の測定結果が予め定められた値より大きくなった後、酸素濃度測定部および塩素濃度測定部の少なくとも一方の測定結果が予め定められた値より小さくなることを例示することができる。温度測定部の測定結果に対する予め定められた値は、第1の温度であってよい。温度測定部の測定結果に対する予め定められた値は、150℃であってよい。
【0121】
制御部590は、弁514および弁516を制御して、脱塩素部510から排出されるガスの移送先を選択してよい。制御部590は、脱塩素部510に配された酸素濃度測定部および塩素濃度測定部の少なくとも一方の測定結果に基づいて、脱塩素部510から排出されるガスの移送先を選択してよい。
【0122】
制御部590は、制御部190による熱分解炉から排出されるガスの移送先および移送量に制御と同様にして、脱塩素部510から排出されるガスを、再度、脱塩素部510に供給するか否かを選択してよい。脱塩素部510から排出されるガスを脱塩素部510に供給しない場合、制御部590は、当該ガスを未凝縮ガス燃焼部160に移送してよい。
【0123】
脱塩素部510から排出されるガスを脱塩素部510に供給する流路には、スチームトラップが設けられてよい。脱塩素部510から排出されるガスが脱塩素部510に供給される前に、酸素吸収剤などにより、脱塩素部510から排出されるガスから酸素が除去されてよい。
【0124】
制御部590は、過熱水蒸気を脱塩素部510に供給しながら、被処理物10を加熱してよい。制御部590は、塩素元素を含むガスを吸収するガスを脱塩素部510に供給しながら、被処理物10を加熱してよい。塩素元素を含むガスを吸収するガスは、アルカリ性ガスであってよい。アルカリ性ガスは、アンモニアガスであってよい。
【0125】
熱分解部120は、脱塩素部510から排出された被処理物10を加熱して、熱分解ガスを発生させてよい。熱分解部120は、ボイラ180から供給される過熱水蒸気を用いて被処理物10を加熱してよい。熱分解部120は、被処理物10を加熱して発生させたガスを凝縮部130に移送してよい。
【0126】
図6は、脱塩素部510および熱分解部120の断面の一例を概略的に示す。図6を用いて、脱塩素部510について説明する。なお、投入部110との相違点を中心に説明して、共通する説明については省略する場合がある。
【0127】
脱塩素部510は、筐体210と、ゲートバルブ222、ゲートバルブ224およびゲートバルブ226とを備えてよい。筐体210は、ゲートバルブ222およびゲートバルブ224により仕切られるバッファ部212と、ゲートバルブ224およびゲートバルブ226により仕切られる押出部214とを有してよい。押出部214の内部には、被処理物10を押出部214から押し出す押出部材244が配されてよい。押出部材244は、ロッド248を介してシリンダ246と連結されてよい。
【0128】
脱塩素部510は、バッファ部212が、水蒸気流入部652、アンモニアガス流入部654、ガス排出部662、温度計692、酸素濃度計694および塩化水素濃度計696を有する点で、投入部110と相違する。水蒸気流入部652は、バッファ部212の内部に水蒸気を供給する。水蒸気流入部652は、ボイラ180および弁582から供給された水蒸気を供給する配管であってよい。水蒸気流入部652は、バッファ部212の内部に過熱水蒸気を供給してよい。水蒸気流入部652は、水蒸気供給部の一例であってよい。
【0129】
アンモニアガス流入部654は、アンモニアガスをバッファ部212の内部に流入させる。アンモニアガス流入部654は、配管であってよい。アンモニアガス流入部654は、塩素吸収ガス供給部の一例であってよい。アンモニアガス流入部654は、水蒸気流入部652よりゲートバルブ224から遠い位置に配されてよい。ガス排出部662は、バッファ部212の内部のガスを排出する。ガス排出部662は、水蒸気流入部652よりゲートバルブ224から遠い位置に配されてよい。
【0130】
温度計692は、バッファ部212の内部の温度を測定する。温度計692は温度測定部の一例であってよい。酸素濃度計694は、バッファ部212の内部における酸素ガス濃度を測定する。酸素濃度計694は、塩化水素濃度計696は、バッファ部212の内部における塩素元素を含むガスの濃度を測定する。塩化水素濃度計696は、塩素濃度測定部の一例であってよい。
【0131】
脱塩素部510の動作の一例を以下に示す。脱塩素部510に投入された被処理物10は、バッファ部212に収容される。水蒸気流入部652からバッファ部212の内部に過熱水蒸気が供給され、被処理物10の脱塩素処理が実施される。その後、制御部590の指示に基づいてゲートバルブ224が開き、被処理物10がバッファ部212から排出される。バッファ部212から排出された被処理物10は押出部214に移送され、押出部材244により、熱分解炉250の内部に投入される。
【0132】
図7は、熱分解装置500における処理方法の一例を概略的に示す。なお、図4に関連して説明した熱分解装置100における処理方法との相違点を中心に説明して、共通する説明については省略する場合がある。
【0133】
本実施形態では、S702において、制御部590がゲートバルブ224を閉じ、ゲートバルブ222を開く。これにより、被処理物10がバッファ部212に投入される。S704において、制御部590がボイラ180および弁582を制御して、水蒸気流入部652を介してバッファ部212に過熱水蒸気を供給する。これにより、被処理物10を加熱する。このとき、アンモニアガス流入部654を介して、バッファ部212にアンモニアガスが供給されてよい。
【0134】
S706において、制御部590は、温度計692の測定結果に基づいて、予め定められた時間、バッファ部212の内部の温度を150℃以上300℃未満の第1の温度に維持する。これにより、被処理物10が塩素元素を有する物質を含む場合には、被処理物10から塩素元素を含むガスが発生する。被処理物10が空気または酸素を保持する場合には、被処理物10が溶解して、被処理物10から酸素が放出される。この間、制御部590は、酸素濃度計694および塩化水素濃度計696の少なくとも一方の測定結果に基づいて、弁514および弁516を制御してよい。
【0135】
S708において、制御部590は、S706における予め定められた時間が経過した後、ゲートバルブ226を閉じ、ゲートバルブ224を開く。これにより、被処理物10がバッファ部212から排出され、押出部214に移送される。次に、制御部590は、ゲートバルブ224を閉じ、ゲートバルブ226を開く。そして、制御部590は、シリンダ246を伸ばし、押出部材244により被処理物10を熱分解炉250の内部に投入する。
【0136】
S710において、制御部590は、熱分解炉250の内部の温度を熱分解炉250の内部の温度を300℃以上600℃以下の第2の温度に制御する。これにより、投入された被処理物10が加熱され、熱分解ガスが発生する。S712において、熱分解ガスが凝縮部130に移送され、冷却される。これにより、熱分解ガスの一部が凝縮して生成油が得られる。
【0137】
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更または改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更または改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
【0138】
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順で実施することが必須であることを意味するものではない。
【符号の説明】
【0139】
10 被処理物
100 熱分解装置
110 投入部
120 熱分解部
122 弁
124 弁
126 弁
130 凝縮部
140 残渣受け容器
150 生成油タンク
160 未凝縮ガス燃焼部
170 バーナー
180 ボイラ
182 弁
190 制御部
202 架台
210 筐体
212 バッファ部
214 押出部
222 ゲートバルブ
224 ゲートバルブ
226 ゲートバルブ
232 弁箱
234 弁体
236 シリンダ
238 ロッド
244 押出部材
246 シリンダ
248 ロッド
250 熱分解炉
252 水蒸気流入部
254 アンモニアガス流入部
258 駆動ギア
260 排出部
262 ガス排出部
264 残渣排出部
270 外筒
272 連結部
292 温度計
294 酸素濃度計
296 塩化水素濃度計
310 駆動部
312 架台
314 支持ローラ
316 モータ
318 チェーン
500 熱分解装置
510 脱塩素部
514 弁
516 弁
582 弁
590 制御部
652 水蒸気流入部
654 アンモニアガス流入部
662 ガス排出部
692 温度計
694 酸素濃度計
696 塩化水素濃度計

【特許請求の範囲】
【請求項1】
有機物を含む熱分解対象物を加熱する加熱炉と、
前記加熱炉を加熱する加熱部と、
前記加熱炉に、過熱水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
前記加熱炉の内部の温度を測定する温度測定部と、
前記加熱炉の内部の温度を制御する制御部と、
を備え、
前記制御部は、前記温度測定部の測定結果に基づき、前記加熱部および前記水蒸気供給部の少なくとも一方を制御して、前記加熱炉の内部の温度を、予め定められた時間、150℃以上300℃未満に維持した後、前記加熱炉の内部の温度を300℃以上600℃以下に制御する、
熱分解装置。
【請求項2】
前記加熱炉から排出された熱分解ガスを凝縮させる凝縮部を更に備え、
前記加熱炉は、
前記加熱炉の内部のガスを排出するガス排出部と、
前記制御部の指示に基づいて、前記ガス排出部から排出されるガスを前記凝縮部に移送するか否かを選択する選択部と、
を備える、
請求項1に記載の熱分解装置。
【請求項3】
前記制御部は、前記予め定められた時間が経過した後、前記選択部を制御して、前記ガス排出部から排出されるガスを前記凝縮部に供給する、
請求項2に記載の熱分解装置。
【請求項4】
前記加熱炉の内部における酸素ガス濃度を測定する酸素濃度測定部を更に備え、
前記制御部は、前記酸素濃度測定部の測定結果が予め定められた値より小さい場合に、前記選択部を制御して、前記ガス排出部から排出されるガスを前記凝縮部に供給する、
請求項2または請求項3に記載の熱分解装置。
【請求項5】
前記加熱炉の内部における塩素元素を含むガスの濃度を測定する塩素濃度測定部を更に備え、
前記制御部は、前記塩素濃度測定部の測定結果が予め定められた値より小さい場合に、前記選択部を制御して、前記ガス排出部から排出されるガスを前記凝縮部に供給する、
請求項2から請求項4までの何れか一項に記載の熱分解装置。
【請求項6】
前記加熱炉に、塩素元素を含むガスを吸収するガスが供給される、
請求項1から請求項5までの何れか一項に記載の熱分解装置。
【請求項7】
前記塩素元素を含むガスを吸収するガスが、アルカリ性ガスである、
請求項6に記載の熱分解装置。
【請求項8】
塩素元素を含む脱塩素対象物を加熱する脱塩素部と、
前記脱塩素部を制御する制御部と、
を備え、
前記脱塩素部は、
前記脱塩素対象物を収容する収容部と、
前記収容部の内部に過熱水蒸気を供給する水蒸気供給部と、
前記収容部の内部のガスを排出するガス排出部と、
前記収容部から前記脱塩素対象物を排出する収容物排出部と、
前記収容部の内部の温度を測定する温度測定部と、
前記収容部の内部における酸素ガス濃度を測定する酸素濃度測定部、および前記収容部の内部における塩素元素を含むガスの濃度を測定する塩素濃度測定部の少なくとも一方と、
を有し、
前記制御部は、前記収容物排出部を制御して、前記温度測定部の測定結果が予め定められた値より大きくなった後、前記酸素濃度測定部および前記塩素濃度測定部の少なくとも一方の測定結果が予め定められた値より小さくなった場合に、前記脱塩素対象物を排出させる、
脱塩素処理装置。
【請求項9】
前記収容部に、塩素元素を含むガスを吸収するガスが供給される、
請求項8に記載の脱塩素処理装置。
【請求項10】
請求項8または請求項9に記載の脱塩素処理装置と、
前記脱塩素処理装置から排出された前記脱塩素対象物を加熱して、熱分解ガスを発生させる熱分解部と、
を備える、
熱分解装置。
【請求項11】
有機物を含む熱分解対象物を加熱する加熱炉の内部に、前記熱分解対象物を投入する段階と、
予め定められた時間、前記加熱炉の内部の温度を第1の温度に維持しながら、前記加熱炉の内部に過熱水蒸気を供給する段階と、
前記加熱炉の内部の温度を前記第1の温度より高い第2の温度に加熱して、熱分解対象物を熱分解する段階と、
を備える、
熱分解方法。
【請求項12】
前記熱分解対象を第1の温度に加熱する段階が、予め定められた時間、前記加熱炉の内部の温度を前記第1の温度に維持する段階を含み、
前記第1の温度が、150℃以上300℃未満であり、
前記第2の温度が、300℃以上600℃以下である、
請求項11に記載の熱分解方法。
【請求項13】
塩素元素を含む脱塩素対象物を加熱する加熱炉の内部に、前記脱塩素対象物を投入する段階と、
前記脱塩素対象物を加熱して、塩素元素を含むガスを発生させる段階と、
を備え、
前記塩素元素を含むガスを発生させる段階が、
前記塩素元素を含むガスを吸収するガスおよび過熱水蒸気を、前記加熱炉の内部に供給する段階を有する、
脱塩素方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−11299(P2012−11299A)
【公開日】平成24年1月19日(2012.1.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−149561(P2010−149561)
【出願日】平成22年6月30日(2010.6.30)
【出願人】(506007208)株式会社アルティス (5)
【Fターム(参考)】