説明

熱力学的に安定な結晶形の4″−デオキシ−4″−エピ−メチルアミノアベルメクチンB1a/B1bの安息香酸塩及びその製造法

【課題】熱力学的に安定な、半水和物(タイプB)である、結晶形の4″−デオキシ−4″−エピ−メチルアミノアベルメクチンB1a/B1bの安息香酸塩、その製造方法の提供。
【解決手段】結晶形A、C又はDの化合物を約50〜60℃の有機溶媒に溶解し、必要量の水で処理し、タイプBの結晶を接種し、約15〜30℃に冷却し、該温度で約2〜4時間熟成させ、さらに約1〜2時間かけて約5℃に冷却する。結晶性物質を濾過して回収し、真空下に乾燥する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
4″−デオキシ−4″−エピ−メチルアミノアベルメクチン(avermectin)B1a/B1bの安息香酸塩は公知であり、且つ欧州特許出願公開第0465121-A1号明細書(特開昭53-6294)に記載のように安定な塩であることが知られている。従前知られた塩酸塩よりも安定性が増したために、この重要な農業用殺虫剤の貯蔵寿命が著しく伸びた。
【0002】
発明の要旨
本発明は、公知の農業用殺虫剤である、4″−デオキシ−4″−エピ−メチルアミノアベルメクチンB1a/B1b安息香酸塩の4種の結晶形のうちで、最も安定な形態及びその製造法に関する。
【0003】
確認された4種の結晶形は、A、B、C及びD形と称され、その中の3種(B、C及びD)は水和物である。熱力学的に最も安定な結晶形は半水和物Bである。最も安定な結晶形を見い出し、該結晶形製品の製造法を案出したことは、貯蔵中に別の結晶形に転換されない結晶均質性を有する原材料を提供するという点で極めて重要である。
【0004】
B型結晶形の新規な製造法は、調節量の水を含む有機溶媒から該化合物を結晶化させることを含む。
【0005】
本発明の新規化合物は、実質的に純粋な形態の半水和物である、結晶性4″−デオキシ−4″−エピ−メチルアミノアベルメクチンB1a/B1bの安息香酸塩である。
【0006】
該化合物は、以下の構造式:
【0007】
【化1】

〔式中、Rは−CH3(B1a)又は−H(B1b)であり、結晶形B、タイプB又は類似の名称で呼ぶ〕を有する。
【0008】
開放カップ中、窒素流下に20℃/分の昇温速度で測定された示差走査熱量(DSC)曲線は、74℃のピーク温度を有する比較的広幅の脱水吸熱及び56ジュール/gmの熱を伴い、補外により150℃とされる開始温度と155℃のピーク温度を有する主要な融解/分解吸熱を特徴としている。B型のX線粉末回折パターンは、18.13、9.08、8.68、5.03、4.61、4.53、3.97及び3.82Åのd−間隔を特徴としている。水溶度はpH依存性である。pH5の酢酸塩緩衝液中では、0.32mg/mlの溶解度を有する。
【0009】
本発明の新規方法は、水性有機溶媒から任意のエネルギー状態の化合物を再結晶することを含む。
【0010】
該新規な方法に有用な水性有機溶媒は、2〜4w/w%の水を含むアセトニトリル、0.5〜0.8w/w%の水を含むメチルt−ブチルエーテル(MTBE)又は0.1〜0.3w/w%の水を含むイソプロパノール(IPA)であるのが好ましい。
【0011】
結晶形A、C又はDの化合物を約50〜60℃の有機溶媒に溶解し、必要量の水で処理し、タイプBの結晶を接種し、約15〜30℃に冷却し、該温度で約2〜4時間熟成させ、さらに約1〜2時間かけて約5℃に冷却する。
【0012】
結晶性物質を濾過して回収し、真空下に乾燥する。
【0013】
本明細書に記載の安息香酸塩及びその遊離塩基の有用性及び使用法は当業者には周知であり、EP0465121号明細書のような科学及び特許文献に十分に記載されている。
【0014】
本発明化合物は、ヒト及び動物の健康並びに農業用に、駆虫性の外部寄生虫撲滅剤、殺虫剤及び殺ダニ剤として優れた寄生虫撲滅活性を有している。農業用殺虫剤としては、該化合物は、Tribolium属、Tenebrio属のような貯蔵穀物の害虫及びクモダニ(Tetranychus属)、アブラムシ(Acyrthiosiphon属)のような農植物の害虫、イナゴ及び植物組織に生息する未成熟段階の昆虫に対する抗虫害活性を有している。該化合物は、土壌線虫及び農業において重要なMeloidogyne属のような植物寄生虫を防除するための殺線虫薬として有用である。該化合物は、南部アワヨトウ(southern army worm)及びマダラテントウ虫(Mexican bean beetle)の幼虫のような他の植物害虫に対しても活性である。
【0015】
該化合物は、生育中又は貯蔵中の穀物をそのような農業害虫から保護するべく、噴霧、散布、エマルジョンなどの公知技術を用いて適用される。生育中の穀物を処理する場合には、該化合物を1ヘクタール当たり約5〜50gmの割合で投与する。貯蔵穀物を保護する場合には、通常、該化合物を0.1〜10ppm含む溶液を噴霧により投与する。
【実施例】
【0016】
【表1】

50l容量の4首丸底フラスコに、機械撹拌機、N2入口、熱電対及び漏斗を備えた。該容器にN2を通気した後、アセトニトリル(12l、KF=0.2mg/ml)を加え、50〜55℃に温め、タイプA材料を充填した。添加完了(30分)後、混合物をさらに10分間窒素雰囲気下に熟成させて、透明な赤茶色の溶液を得た。
【0017】
追加のアセトニトリル(6l)でバッチを希釈し、水(270ml)を加え、次いでタイプB形の種晶(10g)を45℃で加えた。45℃で直ちに結晶の成長が始まり、急速であった。
タイプB結晶の形成を確実にするためには、結晶化の開始及び進行の大部分を>35℃でしなければならない。
【0018】
バッチを45分かけて20℃に冷却し、2.5時間熟成させた。この期間に結晶性スラリーは濃厚になり、撹拌が困難になった。追加のアセトニトリル(2l)を加え、1時間かけてスラリーを5℃に冷却した。5℃で30分間熟成させた後、スラリーを、濾紙及びポリプロピレンを敷いた直径22インチのCenco−Lapp漏斗で濾過した。母液を結晶化容器に再循環させてリンスし、残留生成物を移動させた。ケークを冷たい(2℃)湿潤アセトニトリル(5×4l、それぞれ水中に1.5%(v/v))で洗浄した。約30分間ケークに窒素流を通過させてケークを一部乾燥し、次いでHull乾燥機に移した。
【0019】
ケークを真空下(25in.)に30℃で3日かけて恒量に乾燥し、GCにより定量するとアセトニトリル含量は<0.1重量%であった。バッチ生成物は4.95kgのタイプB物質であった。
【0020】
【表2】


【特許請求の範囲】
【請求項1】
実質的に純粋な形態の半水和物(タイプB)である、結晶性化合物4”−デオキシ−4”−エピ−メチルアミノアベルメクチンB1a/B1bの安息香酸塩。
【請求項2】
農業昆虫の防除法であって、そのような農業昆虫に感染した領域に有効量の請求項1に記載の安定な塩を適用することを含む方法。
【請求項3】
不活性担体及び有効量の請求項1に記載の安定な塩を含む植物又は植物製品の昆虫による感染を処置するのに有用な組成物。

【公開番号】特開2007−176946(P2007−176946A)
【公開日】平成19年7月12日(2007.7.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−30096(P2007−30096)
【出願日】平成19年2月9日(2007.2.9)
【分割の表示】特願平7−507130の分割
【原出願日】平成6年8月15日(1994.8.15)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】