説明

熱反応修正システム

【課題】感熱式プリントヘッドへのエネルギーの提供に対する感熱式プリントヘッド要素の、時間に沿った熱反応をモデル化する、感熱式プリントヘッドのモデルを提供すること。
【解決手段】所望の濃度を有する点を生成するためにプリントヘッドサイクル中にプリントヘッド要素のそれぞれに対して提供されるエネルギーの量は、(1)プリントヘッドサイクル中にプリントヘッド要素によって生成されるべき所望の濃度と、(2)プリントヘッドサイクルの開始時におけるプリントヘッド要素の予測温度と、(3)プリントヘッドサイクルの開始時におけるプリンタ周囲温度と、(4)周囲相対湿度とに基づいて計算される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、感熱式プリントに関し、より詳細には、感熱式プリントヘッドに対する熱履歴の影響を補正することによって感熱式プリンタ出力を改善するための技術に関する。
【背景技術】
【0002】
感熱式プリンタは、一般的に、たとえば、顔料または染料をドナーシートから出力媒体へ転写することによって、あるいは、色を形成する化学物質を出力媒体内で活性化させることによって、出力媒体上にプリントする、発熱体(「プリントヘッド要素」とも呼ぶ)の直線的なアレイを含む。出力媒体は、一般的に、転写された顔料を受容できる、多孔性のレシーバ、あるいは、色を形成する化学物質で被覆された紙である。プリントヘッド要素のそれぞれは、起動されると、プリントヘッド要素の下を通過する媒体上に色を形成し、特定の濃度を有する点を作る。より大きな点または濃度の濃い点を伴う領域は、より小さな点または濃度の薄い点を伴う領域よりも暗く感じられる。デジタル画像は、非常に小さな緊密に配置された二次元アレイとして表現される。
【0003】
感熱式プリントヘッド要素は、エネルギーを提供することによって起動される。エネルギーをプリントヘッド要素に提供すると、プリントヘッド要素の温度が上昇し、出力媒体への顔料の転写またはレシーバ内での色の形成が起こる。この方法でプリントヘッド要素によって発生された出力の濃度は、プリントヘッド要素に対して提供されたエネルギー量の関数である。プリントヘッド要素に対して提供されるエネルギー量は、たとえば、特定の時間間隔内にプリントヘッド要素への電力の量を変動させることによって、あるいは、プリントヘッド要素に対して、より長い時間間隔の間電力を提供することによって、変動し得る。
【0004】
従来の感熱式プリンタにおいて、デジタル画像がプリントされる時間は、固定の時間間隔(本明細書中では「プリントヘッドサイクル」と呼ぶ)に分かれている。一般的に、デジタル画像中のピクセルの1つの列(またはその一部)は、1つのプリントヘッドサイクル中にプリントされる。各プリントヘッド要素は、一般的に、デジタル画像の特定の段にあるピクセル(またはサブピクセル)をプリントする役割を担う。各プリントヘッドサイクル中、プリントヘッドサイクルに所望の濃度を有する出力を発生させるようなレベルまでプリントヘッド要素の温度を上昇させるように計算された、ある量のエネルギーが、各プリントヘッドサイクルへ供給される。異なるプリントヘッド要素に対し、プリントヘッド要素によって発生されるべき様々な所望の濃度に基づいて、様々な量のエネルギーが提供され得る。
【0005】
従来の感熱式プリンタに伴う1つの問題点は、そのプリントヘッド要素が、各プリントヘッドサイクルの終了後に熱を保持するという事実から生じるものである。一部の感熱式プリンタにおいては、特定のプリントヘッド要素に対して特定のプリントヘッドサイクルの間に供給されたエネルギーの量は、一般的に、プリントヘッドサイクルの開始時におけるプリントヘッド要素の温度が既知の固定の温度であるという仮定に基づいて計算されるため、この熱の保持は問題となり得る。実際に、プリントヘッドサイクルの開始時におけるプリントヘッド要素の温度は、特に以前のプリントヘッドサイクル中にプリントヘッド要素に対して供給されたエネルギーの量に依存するため、プリントヘッドサイクル中にプリントヘッド要素によって達成される実際の温度は、較正温度とは異なり得、それによって、所望される出力濃度よりも高いまたは低い出力濃度を生じる。特定のプリントヘッド要素の現温度が、それ自体の以前の温度(本明細書中では、「熱履歴」と呼ぶ)によってのみでなく、周囲(室内)温度や、プリントヘッド内の他のプリントヘッド要素の熱履歴によっても影響されるという事実によって、さらなる複雑さが同様に生じる。
【0006】
以上の議論から推論され得るように、従来の一部の感熱式プリンタにおいて、各個別の感熱式プリントヘッド要素の平均温度は、デジタル画像のプリント中に徐々に上昇する傾向にある。これは、プリントヘッド要素による熱の保持、およびこのような熱保持という点からのエネルギーの過剰提供に起因する。この徐々の温度上昇によって、プリントヘッド要素によって発生される出力の濃度において、それに対応する徐々の上昇が生じる。これにより、プリント画像において暗さが増したように感じられる。本明細書中ではこの現象を「濃度の偏り」と呼ぶ。
【0007】
さらに、従来の感熱式プリンタは、一般的に、隣接するピクセル(プリントヘッド中にわたるピクセルおよびプリントの方向にあるピクセルの両方)間にシャープな濃度の階調を正確に再現する困難性を有する。たとえば、プリントヘッド要素が、白のピクセルに続いて黒のピクセルをプリントする場合、2つのピクセル間における理想的なシャープなエッジは、一般的にはプリントされるとぼけてしまう。この問題は、白いピクセルをプリントした後に黒いピクセルをプリントするためにプリントヘッド要素の温度を上昇させるのに必要な時間の長さによって生じる。より一般的には、この従来の感熱式プリンタの特性は、濃度の階調の高い領域を有する画像をプリントする際に、理想的な鮮明度よりも低いシャープさを結果として生じる。
【0008】
「Thermal Response Correction System」と題された、先に参照した米国特許出願第09/934,703号は、プリントヘッド要素へのエネルギーの提供に対する、感熱式プリントヘッド要素の時間が経つにつれての熱応答をモデル化する、感熱式プリントヘッドのモデルを開示している。感熱式プリントヘッドモデルは、各プリントヘッドサイクルの開始時において、(1)温度センサによって測定された、感熱式プリントヘッドの現温度と、(2)プリントヘッドの熱履歴と、(3)プリントヘッドのエネルギー履歴とに基づいて、感熱式プリントヘッド要素のそれぞれの温度の予測を生成する。所望の濃度を有する点を生成するために、プリントヘッドサイクル中にプリントヘッド要素のそれぞれに対して提供されるエネルギーの量は、(1)プリントヘッドサイクル中にプリントヘッド要素によって発生されるべき所望の濃度と、(2)プリントヘッドサイクルの開始時における、プリントヘッド要素の予測温度とに基づいて計算される。
【0009】
このような技術は、熱履歴制御を行う際にプリントヘッドの温度を考慮に入れるが、先に参照した特許出願において開示されている技術は、熱履歴制御を行う際に、時間が経つにつれてのプリンタ周囲温度における変化を特に考慮していない。同様に、先に参照した特許出願において開示されている技術では、湿度の影響が特に考慮されない。
【0010】
したがって、周囲のプリント条件を考慮に入れることによってより正確にデジタル画像を表現するための、改善された技術が必要である。
【発明の概要】
【課題を解決するための手段】
【0011】
感熱式プリントヘッドへのエネルギーの提供に対する感熱式プリントヘッド要素の熱反応を時間に沿ってモデル化する、感熱式プリントヘッドのモデルを提供する。所望の濃度を有する点を生成するためにプリントヘッドサイクル中にプリントヘッド要素のそれぞれに対して提供されるエネルギーの量は、(1)プリントヘッドサイクル中にプリントヘッド要素によって生成されるべき所望の濃度と、(2)プリントヘッドサイクルの開始時におけるプリントヘッド要素の予測温度と、(3)プリントヘッドサイクルの開始時におけるプリンタ周囲温度と、(4)周囲相対湿度とに基づいて計算される。
【0012】
本発明の一局面において、(A)プリンタ内のプリントヘッドの第1のプリントヘッド温度Tを識別するステップと、(B)プリンタ内の現周囲温度Tを識別するステップと、(C)第1のプリントヘッド温度Tと、プリンタ周囲温度Tとに基づいて、修正されたプリントヘッド温度T’を識別するステップと、(D)修正されたプリントヘッド温度T’に基づいて、プリントヘッド内のプリントヘッド要素へと提供される入力エネルギーを識別するステップとを含む、方法が提供される。ステップ(D)は、修正されたプリントヘッド温度T’と現相対湿度とに基づいて、プリントヘッド要素へ提供する入力エネルギーを識別するステップを含み得る。
【0013】
本発明の別の局面において、プリントヘッド要素を含む感熱式プリンタと関連して用いるための方法が提供される。方法は、(A)プリントヘッド要素の現温度と、プリンタ周囲温度と、プリントヘッド要素によってプリントされるべき所望の出力濃度の複数の1変数関数とに基づいて、プリントヘッド要素へと提供される入力エネルギーを計算するステップを含む。
【0014】
本発明の別の局面において、複数のプリントヘッド要素を含んだプリントヘッドを有する感熱式プリンタと共に用いるための方法が提供される。方法は、複数のプリントヘッドサイクルの各サイクルに対し、プリントヘッドサイクル中において複数の出力濃度を発生するために複数のプリントヘッド要素へと提供される複数の入力エネルギーを発生させる。方法は、(A)多重分解能熱伝達モデルを用いて、複数のプリントヘッドサイクルの各サイクルに対して、プリントヘッドサイクルの初めにおける複数のプリントヘッド要素の複数の予測された温度を発生させるステップと、(B)逆媒体モデルを用いて、複数の予測された温度と、プリントヘッドサイクル中において複数のプリントヘッド要素によって出力されるべき複数の濃度と、少なくとも1つのプリンタ周囲温度とに基づいて、複数の入力エネルギーを発生させるステップとを含む。
【0015】
以下の記載および特許請求の範囲から、本発明の多様な局面および実施形態の、その他の特徴および利点が明白となろう。
(項目1)
(A)プリンタ内のプリントヘッドの第1のプリントヘッド温度Tを識別するステップと、
(B)該プリンタ内の現周囲温度Tを識別するステップと、
(C)該第1のプリントヘッド温度Tと、該プリンタ周囲温度Tおよび現相対湿度からなる群から選択された少なくとも1つの特性とに基づいて、修正されたプリントヘッド温度T’を識別するステップと、
(D)該修正されたプリントヘッド温度T’に基づいて、該プリントヘッド内のプリントヘッド要素へと提供される入力エネルギーを識別するステップと
を包含する、方法。
(項目2)
前記ステップ(C)が、
(C)(1)前記方法が較正されたときの温度Trcを識別するステップと、
(C)(2)(a)前記現プリンタ周囲温度Tと該較正プリンタ周囲温度Trcとの差と、(b)前記現相対湿度と該方法が較正されたときの相対湿度との差とからなる群から選択された少なくとも1つの値に基づいて、前記修正されたプリントヘッド温度T’を識別するステップと
を包含する、項目1に記載の方法。
(項目3)
前記ステップ(C)(2)が、
【数1】


からなる群から選択された式を用いてT’を識別するステップを包含し、
は、定数であり、ΔTは、前記現プリンタ周囲温度Tと前記方法が較正されたときのプリンタ周囲温度との差であり、ΔRHは、前記現相対湿度と該方法が較正されたときの相対湿度との差を含み、f()は、該相対湿度差ΔRHを等価温度差に変換する比例定数を含む、項目2に記載の方法。
(項目4)
プリンタ内のプリントヘッドの第1のプリントヘッド温度Tを識別する第1の識別手段と、
該プリンタ内の現周囲温度Tを識別する第2の識別手段と、
該第1のプリントヘッド温度T該プリンタ周囲温度Tおよび現相対湿度からなる群から選択された少なくとも1つの特性とに基づいて、修正されたプリントヘッド温度T’を識別する第3の識別手段と、
該修正されたプリントヘッド温度T’に基づいて、該プリントヘッド内のプリントヘッド要素へと提供される入力エネルギーを識別する第4の識別手段と
を備える、装置。
(項目5)
前記第3の識別手段が、
方法が較正されたときの温度Trcを識別する第5の識別手段と、
(a)前記現プリンタ周囲温度Tと該較正プリンタ周囲温度Trcとの差と、(b)前記現相対湿度と該方法が較正されたときの相対湿度との差とからなる群から選択された少なくとも1つの値に基づいて、前記修正されたプリントヘッド温度T’を識別する第6の識別手段と
を備える、項目4に記載の装置。
(項目6)
前記第6の識別手段が、
【数2】


からなる群から選択された式を用いてT’を識別する手段を備え、
は、定数であり、ΔTは、前記現プリンタ周囲温度Tと前記方法が較正されたときのプリンタ周囲温度との差であり、ΔRHは、前記現相対湿度と該方法が較正されたときの相対湿度との差を含み、f()は、該相対湿度差ΔRHを等価温度差に変換する比例定数を含む、項目5に記載の装置。
(項目7)
プリントヘッド要素を含む感熱式プリンタにおいて、
(A)該プリントヘッド要素の現温度と、該プリントヘッド要素によってプリントされるべき所望の出力濃度の複数の一次元関数と、プリンタ周囲温度および現湿度からなる群から選択された少なくとも1つの特性とに基づいて、該プリントヘッド要素へと提供される入力エネルギーを計算するステップを包含する、方法。
(項目8)
前記プリントヘッド要素が、プリントヘッド内の複数のプリントヘッド要素のうちの1つであり、Tは、該プリントヘッドの現温度であり、ΔTは、前記プリンタ周囲温度と前記方法が較正されたときのプリンタ周囲温度との差であり、
該方法は、
【数3】


からなる群から選択された式に従って、修正された現プリントヘッド温度T’を計算するステップをさらに包含し、
は、定数であり、ΔRHは、前記現湿度と該方法が較正されたときの湿度との差を含み、f()は、該相対湿度差ΔRHを等価温度差に変換し、
前記ステップ(A)が、該修正された現プリントヘッド温度T’に基づいて該プリントヘッドの現温度を識別するステップを包含する、項目7に記載の方法。
(項目9)
(C)ソース画像内の複数のピクセルの一サブセット内の各ピクセルに対して、前記ステップ(A)を実行するステップをさらに包含する、項目8に記載の方法。
(項目10)
前記サブセットが前記ソース画像全体を構成する、項目9に記載の方法。
(項目11)
(D)前記ソース画像内の複数のサブセットの各々に対して、前記ステップ(B)を繰り返すステップをさらに包含する、項目9に記載の方法。
(項目12)
前記ステップ(A)が、出力媒体の温度と、前記プリントヘッド要素の現温度と、前記プリンタ周囲温度と、複数の一次元関数とに基づいて、該プリントヘッド要素へと提供される入力エネルギーを計算するステップを包含する、項目7に記載の方法。
(項目13)
が前記プリンタ周囲温度であり、Tが前記プリントヘッド要素の現温度であり、
前記ステップ(A)が、
(A)(1)前記出力媒体温度TをT=T+A(T−T)として計算するステップであって、Aは定数である、ステップと、
(A)(2)前記入力エネルギーEをE=G’(d)+S’(d)Tとして計算するステップであって、G’(d)およびS’(d)は、前記複数の一次元関数のうちの2つを構成する、ステップと
を包含する、項目12に記載の方法。
(項目14)
G’(d)およびS’(d)は、前記複数の一次元関数のうちの2つを構成し、
前記方法が、
(B)前記ステップ(A)の前において、式G(d,T)=G’(d)+S’(d)(1−A)TおよびS(d)=S’(d)Aを用いて関数G(d、T)およびS(d)に対する値を事前計算するステップであって、dは濃度を表し、Tは前記プリンタ周囲温度を表し、Aは定数である、ステップと、
(C)ソース画像内の複数のピクセルPの各々に対して、該事前計算した関数G(d,T)およびS(d)を用いて該ステップ(A)を実行するステップと
をさらに包含する、項目7に記載の方法。
(項目15)
前記ステップ(C)が、前記ソース画像内の複数のピクセルPの各々に対して、前記入力エネルギーEをE=G(d,T)+S(d)Tとして計算するステップを包含し、Tは前記プリントヘッド要素の温度を含む、項目14に記載の方法。
(項目16)
前記プリントヘッド要素が、プリントヘッド内の複数のプリントヘッド要素のうちの1つであり、Trcは前記方法が較正されたときのプリンタ周囲温度であり、ΔTはTrcと現プリンタ周囲温度との差であり、修正されたプリントヘッド要素温度T’が、
【数4】


からなる群から選択された式に従って計算され、
は、定数であり、ΔRHは、前記現湿度と前記方法が較正されたときの湿度との差を含み、f()は、該相対湿度差ΔRHを等価温度差に変換し、
前記ステップ(A)が、該修正されたプリントヘッド要素温度T’に基づいて前記入力エネルギーを計算するステップを包含する、項目7に記載の方法。
(項目17)
(B)前記プリントヘッド要素に前記入力エネルギーを提供するステップをさらに包含する、項目7に記載の方法。
(項目18)
前記プリントヘッド要素の現温度が、該プリントヘッド要素の予測された現温度を含む、項目7に記載の方法。
(項目19)
前記予測された温度が、プリントヘッド周囲温度と、前記プリントヘッド要素に以前に提供されたエネルギーとに基づいて、予測される、項目18に記載の方法。
(項目20)
前記感熱式プリンタが複数のプリントヘッド要素を含み、前記予測された温度が、プリントヘッド温度と、該プリントヘッド要素に以前に提供されたエネルギーと、そのプリントヘッド要素とは別の該複数のプリントヘッド要素内の少なくとも1つのプリントヘッド要素に以前に提供されたエネルギーとに基づいて、予測される、項目7に記載の方法。
(項目21)
プリントヘッド要素と、
該プリントヘッド要素の現温度と、該プリントヘッド要素によってプリントされるべき所望の出力濃度の複数の一次元関数と、プリンタ周囲温度および現湿度からなる群から選択された少なくとも1つの特性とに基づいて、該プリントヘッド要素へと提供される入力エネルギーを計算する第1の計算手段と
を備える、プリンタ。
(項目22)
前記プリントヘッド要素が、プリントヘッド内の複数のプリントヘッド要素のうちの1つであり、Tは、該プリントヘッドの現温度であり、ΔTは、前記プリンタ周囲温度と方法が較正されたときのプリンタ周囲温度との差であり、前記装置は、
【数5】


からなる群から選択された式に従って、修正された現プリントヘッド温度T’を計算する第2の計算手段をさらに備え、
は、定数であり、ΔRHは、前記現湿度と該方法が較正されたときの湿度との差を含み、f()は、該相対湿度差ΔRHを等価温度差に変換し、
前記第1の計算手段が、該修正された現プリントヘッド温度T’に基づいて該プリントヘッドの現温度を識別する手段を備える、項目21に記載の装置。
(項目23)
ソース画像内の複数のピクセルの一サブセット内の各ピクセルに対して、前記第1の計算手段を適用する手段をさらに備える、項目22に記載の装置。
(項目24)
前記サブセットが前記ソース画像全体を構成する、項目23に記載の装置。
(項目25)
前記ソース画像内の複数のサブセットの各々に対して、前記第2の手段を適用する手段をさらに備える、項目23に記載の装置。
(項目26)
前記第1の計算手段が、出力媒体の温度と、前記プリントヘッド要素の現温度と、前記プリンタ周囲温度と、複数の一次元関数とに基づいて、該プリントヘッド要素へと提供される入力エネルギーを計算する手段を備える、項目21に記載の装置。
(項目27)
が前記プリンタ周囲温度であり、Tが前記プリントヘッド要素の現温度であり、
前記第1の計算手段が、
前記出力媒体温度TをT=T+A(T−T)として計算する手段であって、Aは定数である、手段と、
前記入力エネルギーEをE=G’(d)+S’(d)Tとして計算する手段であって、G’(d)およびS’(d)は、前記複数の一次元関数のうちの2つを構成する、手段と
を備える、項目26に記載の装置。
(項目28)
G’(d)およびS’(d)は、前記複数の一次元関数のうちの2つを構成し、
前記装置が、
前記ステップ(A)の前において、式G(d,T)=G’(d)+S’(d)(1−A)TおよびS(d)=S’(d)Aを用いて関数G(d、T)およびS(d)に対する値を事前計算する手段であって、dは濃度を表し、Tは前記プリンタ周囲温度を表し、Aは定数である、手段と、
ソース画像内の複数のピクセルPの各々に対して、該事前計算した関数G(d,T)およびS(d)を用いて前記第1の手段を適用する手段と
をさらに備える、項目21に記載の装置。
(項目29)
前記事前計算する手段が、前記ソース画像内の複数のピクセルPの各々に対して、前記入力エネルギーEをE=G(d,T)+S(d)Tとして計算するステップを実行する手段を備え、Tは前記プリントヘッド要素の温度を含む、項目28に記載の装置。
(項目30)
前記プリントヘッド要素が、プリントヘッド内の複数のプリントヘッド要素のうちの1つであり、Trcは方法が較正されたときのプリンタ周囲温度であり、ΔTはTrcと現プリンタ周囲温度との差であり、修正されたプリントヘッド要素温度T’が、
【数6】


からなる群から選択された式に従って計算され、
は、定数であり、ΔRHは、前記現湿度と該方法が較正されたときの湿度との差を含み、f()は、該相対湿度差ΔRHを等価温度差に変換し、
前記第1の計算手段が、該修正されたプリントヘッド要素温度T’に基づいて前記入力エネルギーを計算する手段を備える、項目21に記載の装置。
(項目31)
前記プリントヘッド要素へと前記入力エネルギーを提供する手段をさらに備える、項目21に記載の装置。
(項目32)
前記プリントヘッド要素の現温度が、該プリントヘッド要素の予測された現温度を含む、項目21に記載の装置。
(項目33)
前記予測された温度が、プリントヘッド周囲温度と、前記プリントヘッド要素に以前に提供されたエネルギーとに基づいて、予測される、項目32に記載の装置。
(項目34)
前記感熱式プリンタが複数のプリントヘッド要素を含み、前記予測された温度が、プリントヘッド温度と、該プリントヘッド要素に以前に提供されたエネルギーと、そのプリントヘッド要素とは別の該複数のプリントヘッド要素内の少なくとも1つのプリントヘッド要素に以前に提供されたエネルギーとに基づいて、予測される、項目31に記載の装置。
(項目35)
複数のプリントヘッド要素を含んだプリントヘッドを有する感熱式プリンタにおいて、複数の出力濃度を生成するように、複数のプリントヘッドサイクルの各サイクルに対して、該プリントヘッドサイクル中において該複数のプリントヘッド要素へと提供される複数の入力エネルギーを発生させる方法であって、該方法は、
(A)多重分解能熱伝達モデルを用いて、該複数のプリントヘッドサイクルの各サイクルに対して、該プリントヘッドサイクルの初めにおける該複数のプリントヘッド要素の複数の予測された温度を発生させるステップと、
(B)逆媒体モデルを用いて、該複数の予測された温度と、該プリントヘッドサイクル中において該複数のプリントヘッド要素によって出力されるべき複数の濃度と、少なくとも1つのプリンタ周囲温度および少なくとも1つの湿度からなる群から選択された少なくとも1つの特性とに基づいて、該複数の入力エネルギーを発生させるステップと
を包含する、方法。
(項目36)
前記ステップ(A)が、プリントヘッド温度と、少なくとも1つ以前のプリントヘッドサイクル中において前記複数のプリントヘッド要素へと提供された複数の入力エネルギーとに基づいて、前記複数の予測された温度を発生させるステップを包含する、項目35に記載の方法。
(項目37)
前記ステップ(A)が、前記複数のプリントヘッド要素に対する複数の以前に予測された温度に基づいて、前記複数の予測された温度を発生させるステップを包含する、項目35に記載の方法。
(項目38)
前記ステップ(A)が、前記複数のプリントヘッド要素の各々に対して、少なくとも1つ以前のプリントヘッドサイクルの初めにおける、その要素とは別の少なくとも1つのプリントヘッド要素の予測された温度に基づいて、予測された温度を発生させるステップを包含する、項目35に記載の方法。
(項目39)
前記ステップ(A)および(B)が、前記感熱式プリンタの単一のプリントヘッドサイクル中において実行される、項目35に記載の方法。
(項目40)
複数のプリントヘッド要素を含んだプリントヘッドと、
複数の出力濃度を生成するように、複数のプリントヘッドサイクルの各サイクルに対して、該プリントヘッドサイクル中において該複数のプリントヘッド要素へと提供される複数の入力エネルギーを発生させる手段であって、
多重分解能熱伝達モデルを用いて、該複数のプリントヘッドサイクルの各サイクルに対して、該プリントヘッドサイクルの初めにおける該複数のプリントヘッド要素の複数の予測された温度を発生させる熱予測手段と、
逆媒体モデルを用いて、該複数の予測された温度と、該プリントヘッドサイクル中において該複数のプリントヘッド要素によって出力されるべき複数の濃度と、少なくとも1つのプリンタ周囲温度および少なくとも1つの湿度からなる群から選択された少なくとも1つの特性とに基づいて、該複数の入力エネルギーを発生させるエネルギー発生手段と
を備える、発生させる手段と
を備える、感熱式プリンタ。
(項目41)
前記温度予測手段が、プリントヘッド温度と、少なくとも1つ以前のプリントヘッドサイクル中において前記複数のプリントヘッド要素へと提供された複数の入力エネルギーとに基づいて、前記複数の予測された温度を発生させる手段を備える、項目40に記載の装置。
(項目42)
前記温度予測手段が、前記複数のプリントヘッド要素に対する複数の以前に予測された温度に基づいて、前記複数の予測された温度を発生させる手段を備える、項目40に記載の装置。
(項目43)
前記温度予測手段が、前記複数のプリントヘッド要素の各々に対して、少なくとも1つ以前のプリントヘッドサイクルの初めにおける、その要素とは別の少なくとも1つのプリントヘッド要素の予測された温度に基づいて、予測された温度を発生させる手段を備える、項目40に記載の装置。
(項目44)
前記温度予測手段と前記エネルギー予測手段とが、前記感熱式プリンタの単一のプリントヘッドサイクル中において適用される、項目40に記載の装置。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】図1は、本発明の一実施形態に従ってデジタル画像をプリントするために用いられるシステムのデータフロー図である。
【図2】図2は、本発明の一実施形態において用いられる逆プリンタモデルのデータフロー図である。
【図3】図3は、本発明の一実施形態において用いられる感熱式プリンタモデルのデータフロー図である。
【図4】図4は、本発明の一実施形態において用いられる逆媒体濃度モデルのデータフロー図である。
【図5】図5は、本発明の一実施形態に従う、感熱式プリントヘッドを含む感熱式プリンタの一部分の概略側面図である。
【図6】図6は、本発明の一実施形態に従う、レシーバ媒体を介した熱拡散をモデル化する回路の概略図である。
【図7A】図7Aは、本発明の多様な実施形態に従う、熱履歴制御を用いてデジタル画像をプリントするための方法のフローチャートである。
【図7B】図7Bは、本発明の多様な実施形態に従う、熱履歴制御を用いてデジタル画像をプリントするための方法のフローチャートである。
【図7C】図7Cは、本発明の多様な実施形態に従う、熱履歴制御を用いてデジタル画像をプリントするための方法のフローチャートである。
【図7D】図7Dは、本発明の多様な実施形態に従う、熱履歴制御を用いてデジタル画像をプリントするための方法のフローチャートである。
【図7E】図7Eは、本発明の多様な実施形態に従う、熱履歴制御を用いてデジタル画像をプリントするための方法のフローチャートである。
【図7F】図7Fは、本発明の多様な実施形態に従う、熱履歴制御を用いてデジタル画像をプリントするための方法のフローチャートである。
【発明を実施するための形態】
【0017】
感熱式プリントヘッドへのエネルギーの提供に対する感熱式プリントヘッド要素の、熱反応を時間に沿ってモデル化する、感熱式プリントヘッドのモデルを提供する。所望の濃度を有する点を生成するためにプリントヘッドサイクル中にプリントヘッド要素のそれぞれに対して提供されるエネルギーの量は、(1)プリントヘッドサイクル中にプリントヘッド要素によって生成されるべき所望の濃度と、(2)プリントヘッドサイクルの開始時におけるプリントヘッド要素の予測温度と、(3)プリントヘッドサイクルの開始時におけるプリンタ周囲温度と、(4)周囲相対湿度とに基づいて計算される。
【0018】
先に参照した、「Thermal Response Correction System」と題された特許出願は、感熱式プリントヘッドへのエネルギーの提供に対する感熱式プリントヘッド要素の熱反応を時間に沿ってモデル化する、感熱式プリントヘッドのモデルを開示した。感熱式プリントヘッドのプリントヘッド要素の温度の履歴を、本明細書中ではプリントヘッドの「熱履歴」と呼ぶ。時間に沿ったプリントヘッドへのエネルギーの分配を、本明細書中では「エネルギー履歴」と呼ぶ。
【0019】
特に、感熱式プリントヘッドモデルは、(1)感熱式プリントヘッドの現温度と、(2)プリントヘッドの熱履歴と、(3)プリントヘッドのエネルギー履歴とに基づいて、各プリントヘッドサイクルの開始時における、感熱式プリントヘッド要素のそれぞれの温度の予測を生成する。開示された感熱式プリントヘッドモデルの一実施形態において、感熱式プリントヘッドモデルは、(1)感熱式プリントヘッドの現温度と、(2)以前のプリントヘッドサイクルの開始時における、プリントヘッド要素の予測温度、およびプリントヘッド内のプリントヘッド要素のうちの1つ以上の他の要素の予測温度と、(3)以前のプリントヘッドサイクル中に、プリントヘッド要素へ提供されたエネルギーの量、およびプリントヘッド内のプリントヘッド要素のうちの1つ以上の他の要素へ提供されたエネルギーの量とに基づいて、プリントヘッドサイクルの開始時における、特定の感熱式プリントヘッド要素の温度の予測を生成する。
【0020】
先に参照した特許出願において開示された一実施形態において、所望の濃度を有する点を生成するためにプリントヘッドサイクル中にプリントヘッド要素のそれぞれに対して提供されるエネルギーの量は、(1)プリントヘッドサイクル中にプリントヘッド要素によって生成されるべき所望の濃度と、(2)プリントヘッドサイクルの開始時におけるプリントヘッド要素の予測温度とに基づいて計算される。このような技術を利用した個々のプリントヘッド要素に対して提供されるエネルギーの量は、従来の感熱式プリンタによって提供されるエネルギーの量よりも大きくなり得、あるいは小さくなり得る。たとえば、濃度の偏りを補正するためにより少ないエネルギー量が提供され得る。シャープな濃度の階調を生成するためには、より大きなエネルギー量が提供され得る。開示されたモデルは、所望の出力濃度を生成するために適切であるように入力エネルギーを増大または低減させるのに十分フレキシブルである。
【0021】
感熱式プリントヘッドモデルを使用することによって、周囲温度や以前のプリント画像内容に対するプリントエンジンの感度が低減され、このことはプリントヘッド要素の熱履歴にも現れる。
【0022】
たとえば、図1を参照すると、本発明の一実施形態に従い、画像をプリントするためのシステムが図示されている。システムは逆プリンタモデル102を含む。逆プリンタモデル102は、個々のソース画像100をプリントする際に感熱式プリンタ108内の各プリントヘッド要素に対して提供されるべき入力エネルギー106の量を算出するのに用いられる。図2および図3に関連して以下により詳細に記載するが、感熱式プリンタモデル302は、提供された入力エネルギー106に基づいて、感熱式プリンタ108によって生成された出力(たとえばプリント画像110)をモデル化する。感熱式プリンタモデル302はプリントヘッド温度モデルと応答のモデルとの両方を含む。逆プリンタモデル102は、感熱式プリンタモデル302の逆である。より詳細には、逆プリンタモデル102は、ソース画像100(たとえば、二次元のグレースケールまたはカラーデジタル画像であり得る)と、感熱式プリンタのプリントヘッドの現温度104とに基づいて、各プリントヘッドサイクルに対する入力エネルギー106を算出する。感熱式プリンタ108は、入力エネルギー106を利用してソース画像100のプリント画像110をプリントする。入力エネルギー106が時間と共に変化し得、またプリントヘッド要素のそれぞれについて変動し得るという点が理解されるべきである。同様に、プリントヘッド温度104も時間と共に変化し得る。
【0023】
一般的に、逆プリンタモデル102は、感熱式プリンタ108によって通常生成される歪み(上述したような濃度の偏りの結果として生じる歪み、媒体反応の結果として生じる歪み等)をモデル化し、ソース画像100を逆方向へ前もって歪ませる(pre−distort)ことによって、プリント画像110をプリントする際に本来であれば感熱式プリンタ108によって生じるはずの歪みを相殺する。したがって、感熱式プリンタ108に対して入力エネルギー106を提供することによってプリント画像110に所望の濃度が発生する。そのため、プリント画像110は上記の問題(濃度の偏り、シャープさの低下等)を被らない。特に、プリント画像110の濃度分布は、従来の感熱式プリンタによって典型的に生成される濃度分布よりも、ソース画像100の濃度分布とより厳密に合致する。
【0024】
図3に示すように、感熱式プリンタモデル302は、感熱式プリンタ108(図1)の挙動をモデル化するために利用される。図2に関連してより詳細に記載するように、感熱式プリンタモデル302は、逆プリンタモデル102を発生させるために用いられる。逆プリンタモデル102は、感熱式プリンタ108の熱履歴を考慮することによってプリント画像110に所望の出力濃度を発生するように感熱式プリンタ108へ提供する入力エネルギー106を発生させるために使用される。また、感熱式プリンタモデル302は、以下に説明するように、較正目的のために使用される。
【0025】
感熱式プリンタモデル302について詳細に説明する前に、所定の表記法について紹介する。ソース画像100(図1)は、r行、c列を有する二次元の濃度分布dとして見られ得る。本発明の一実施形態において、感熱式プリンタ108は、各プリントヘッドサイクル中にソース画像100の1つの行をプリントする。本明細書中で使用する場合、変数nは離散的な時間間隔(個々のプリントヘッドサイクル等)を指すのに用いられる。したがって、本明細書中では時間間隔nの開始時におけるプリントヘッド温度104をT(n)と称する。同様に、d(n)は、時間間隔n中にプリントされるソース画像100の行の濃度分布を指す。
【0026】
同様に、入力エネルギー106は二次元のエネルギー分布Eとして見られ得るという点が理解されるべきである。今述べた表記法を用いて、E(n)は、時間間隔n中に感熱式プリンタのプリントヘッド要素の直線アレイに対して加えられる一次元のエネルギー分布を指す。プリントヘッド要素の予測温度を本明細書中ではT(先に参照した特許出願においてはTと称されている)と称する。時間間隔nの開始時におけるプリントヘッド要素の直線アレイに対する予測温度を本明細書中ではT(n)と称する。
【0027】
図3に示すように、感熱式プリンタモデル302は、各時間間隔n中に、(1)時間間隔nの開始時における感熱式プリントヘッドの温度T(n)104と、(2)時間間隔n中に感熱式プリントヘッド要素に対して提供される入力エネルギーE(n)106とを入力として取る。感熱式プリンタモデル302は、一度につき1行の予測プリント画像306(d(n))を出力として生じる。感熱式プリンタモデル302は、ヘッド温度モデル202(図2に関連して以下により詳細に説明する)と媒体濃度モデル304とを含む。媒体濃度モデル304は、ヘッド温度モデル202によって生成された予測温度T(n)204と、入力エネルギーE(n)106とを入力として取り、予測プリント画像306を出力として生成する。
【0028】
図2を参照する。逆プリンタモデル102の一実施形態が図示されている。逆プリンタモデル102は、時間間隔n毎に、(1)時間間隔nの開始時におけるプリントヘッド温度104T(n)と、(2)時間間隔n中にプリントされるべきソース画像100の行の濃度d(n)とを入力として受け取る。逆プリンタモデル102は、入力エネルギーE(n)106を出力として生成する。
【0029】
逆プリンタモデル102は、ヘッド温度モデル202と逆媒体濃度モデル206とを含む。一般的に、ヘッド温度モデル202は、プリント画像110がプリントされる間、時間が経つにつれてのプリントヘッド要素の温度を予測する。より具体的には、ヘッド温度モデル202は、(1)プリントヘッドの現温度T(n)104と、(2)時間間隔n−1中にプリントヘッド要素に対して提供される入力エネルギーE(n−1)とに基づいて、特定の時間間隔nの開始時におけるプリントヘッド要素の温度T(n)204の予測を出力する。
【0030】
一般的に、逆媒体濃度モデル206は、(1)時間間隔nの開始時における、プリントヘッド要素のそれぞれの予測温度T(n)204と、(2)時間間隔n中にプリントヘッド要素によって出力されるべき所望の濃度d(n)100とに基づいて、時間間隔n中にプリントヘッド要素のそれぞれに対して提供されるべきエネルギーE(n)106の量を算出する。入力エネルギーE(n)106は、次の時間間隔n+1中に使用されるべく、ヘッド温度モデル202へ提供される。従来の感熱式プリンタによって一般的に用いられている技術とは異なり、逆媒体濃度モデル206は、エネルギーE(n)106を算出する際に、プリントヘッド要素の現(予測)温度T(n)204と、温度に応じた媒体応答との両方を、それによって、熱履歴およびプリンタに由来するその他の欠陥の影響に対する改善された補正を達成する。
【0031】
図2には明示していないが、ヘッド温度モデル202は、予測温度T(n)204のうちの少なくとも一部を内部に保存し得る。したがって、以前の予測温度(T(n−1)等)はまた、T(n)204を算出する際に用いるための、ヘッド温度モデル202への入力とも考えられ得るという点が理解されるべきである。
【0032】
先に参照した特許出願に記載されているように、逆媒体濃度モデル206は、各時間間隔n中に、(1)ソース画像濃度d(n)100と、(2)時間間隔nの開始時における、感熱式プリントヘッド要素の予測温度T(n)204とを入力として受け取る。逆媒体濃度モデル206は、入力エネルギーE(n)106を出力として生成する。換言すれば、逆媒体濃度モデル206によって定義される伝達関数は、2変数関数E=F(d,T)である。一実施形態において、上記関数E=F(d,T)は等式1を用いて表される。
E=G(d)+S(d)T (等式1)
この等式は、所望の濃度を提供する正確なエネルギーを求める、Tに関するテイラー級数展開のうちの初めの2つの項として解釈され得る。このような表現は、様々な理由で好都合であり得る。例えば、2変数関数としたE=F(d,T)のソフトウェアおよび/またはハードウェアによる実行を命令するには、大量の記憶容量またはエネルギーEを算出するためのかなりの数の計算が必要であり得る。対照的に、1変数関数G(d)およびS(d)は、比較的少量のメモリを用いてルックアップテーブルとして保存され得、逆媒体濃度モデル206は、比較的少数の計算を用いて等式1の結果を算出し得る。
【0033】
ここで、ヘッド温度モデル202(図2〜図3)の一実施形態をより詳細に説明する。図5を参照すると、感熱式プリントヘッド500を含む感熱式プリンタ108の一部分530の概略側面図が示されている。プリントヘッド500は、ヒートシンク502aと、セラミック502bと、グレイズ502cとを含むいくつかの層を含んでいる。グレイズ502cの下には、プリントヘッド要素502a〜iの直線アレイがある。図示を簡単にするために、図5には9個の発熱体502a〜iのみを示したが、一般的な感熱式プリントヘッドは、非常に小さな、緊密に配置されたプリントヘッド要素を1インチにつき数百個有するという点が理解されるべきである。プリントヘッド要素502a〜iは、レシーバ媒体522上で出力を生成する。
【0034】
上記のように、プリントヘッド要素502a〜iを加熱するためにそれらに対してエネルギーが提供され得、それによってプリントヘッド要素502a〜iが出力媒体に顔料を転写するようになる。プリントヘッド要素520a〜iによって発生された熱は、層502a〜cとを介して上へ分散される。
【0035】
時間に沿って、個々のプリントヘッド要素520a〜i(たとえばデジタル画像をプリントする間に)の温度を直接測定することは、困難または過度に負担となるものであり得る。したがって、本発明の一実施形態においては、プリントヘッド要素520a〜iの温度を直接測定するのではなく、ヘッド温度モデル202を用いてプリントヘッド要素520a〜iの時間が経つにつれての温度を予測する。特に、ヘッド温度モデル202は、(1)プリントヘッド500の温度と、(2)プリントヘッド要素520a〜iに対して以前に提供されたエネルギーとについての知見を用いて、プリントヘッド要素520a〜iの熱履歴をモデル化することによってプリントヘッド要素520a〜iの温度を予測し得る。プリントヘッド500の温度は、温度センサ512(サーミスタ等)を用いて測定され得る。温度センサ512は、ヒートシンク512上のいくつかの点における温度T(n)を測定する。
【0036】
ヘッド温度モデル202は、多様な方法のうちの任意の方法で、プリントヘッド要素520a〜iの熱履歴をモデル化し得る。たとえば、本発明の一実施形態において、ヘッド温度モデル202は、プリントヘッド要素520a〜iから温度センサ512までの、プリントヘッド500の層を介した熱拡散のモデルと関連して、温度センサ512によって測定した温度T(n)を用いて、プリントヘッド要素520a〜iの現温度を予測する。しかしながら、ヘッド温度モデル202は、プリントヘッド500を介して熱拡散をモデル化する以外の技術を用いてプリントヘッド要素520a〜iの温度を予測し得るという点が理解されるべきである。ヘッド温度モデル202を実施するために用いられ得る技術の例は、先に参照した「Thermal Response Correction System」と題された特許出願において、より詳細に開示されている。
【0037】
以上に述べたように、先に参照した「Thermal Response Correction System」と題された特許出願において開示されている技術は、プリンタ周囲温度または湿度の変化を明示的に計算しない。むしろ、方法は、特定のプリンタ周囲温度および湿度において収集されたデータを用いて較正されていた。モデル予測とデータとの間の平均二乗誤差を最小化するために、感熱式プリンタモデル302および逆媒体モデル206のパラメータが概算されていた。このことによって、周囲条件の基準セットにおける熱履歴影響を記述するための正確なモデルがもたらされる。
【0038】
ここで、周囲条件の変化を明確に計算するように上記の技術を修正するための技術の例を開示する。特に、(1)周囲温度の変動の影響を明確にモデル化し、広範囲の周囲温度において影響の補正を可能にし、(2)湿度変動の影響を補正するための技術を開示する。
【0039】
2変数関数E=F(d,T)は、等式1に示すように1変数関数G(d)とS(d)との一次結合によって概算され得るということを想起されたい。変数Tはプリントサイクル(ラインタイム)の開始時におけるプリントヘッドの絶対温度を、dは所望の濃度を、それぞれ表す。必要とされるエネルギーEは、等式1に示すように、レシーバ媒体の温度に依存し、ヘッド温度には依存しない。しかしながら、媒体温度を用いても、プリントヘッドの下にある媒体の温度がヘッド要素温度の1変数関数である限り、等式1の形は同一のままである。ヘッド要素に直線的に関係する等式1を、媒体温度Tについて書き直すと、等式2になる。
E=G’(d)+S’(d)T (等式2)
等式2において、Tは、媒体の絶対温度を表し、関数G’(・)は等式1におけるG(・)関数に、S’(・)は等式1におけるS(・)に、それぞれ関連する。関数G’(・)およびS’(・)は、たとえば、先に参照した特許出願において開示されている、G(・)およびS(・)を概算するための技術を用いて概算され得る。
【0040】
本発明の多様な実施形態において、媒体温度Tは、プリントヘッドおよびレシーバ媒体において起こる熱拡散をモデル化することによって概算される。本発明の一実施形態において、このような温度概算は、熱拡散問題を同等の電気回路問題に翻訳することによって行われる。
【0041】
図6を参照する。本発明の一実施形態に従って、このような電気回路600の例が示されている。媒体内の熱抵抗、熱容量、熱流量、および温度は、電気回路600内の電気抵抗、静電容量、電流、電圧にそれぞれ翻訳される。このような対応づけ(mapping)は、熱拡散問題の図形表現のみでなく計算をも容易にする。
【0042】
回路600(図6)内のRC回路ネットワーク602は、プリントヘッド500(図5)をモデル化する。特に、RC回路604a〜cは、プリントヘッド500の層502a〜cをそれぞれモデル化する。ノード606における電圧は、予測プリントヘッド要素温度Tをモデル化する。しかしながら、回路604a〜cと層502a〜cとの間には一対一の対応づけは必要でないという点に留意されたい。むしろ、プリントヘッド500内の単一の層を複数の回路によってモデル化してもよく、単一の回路がプリントヘッド500内の複数の層をモデル化してもよい。レシーバ媒体522は、複数のRC回路ネットワーク608a〜fによってモデル化される。ノード606に直接接続された回路ネットワーク608cは、プリントヘッド要素の下にある媒体522の部分を直接モデル化する。回路ネットワーク608a〜fのうち、隣接するものは、連続的なプリントサイクルにおいてプリントヘッド500によって覆われる方向に、レシーバ媒体522の隣接する部分をモデル化する。
【0043】
図6に示す回路600は、レシーバ媒体522上部でのプリントヘッド500の連続的な動作を、ラインタイム(プリントサイクル)中にヘッド500によってとられる不連続なステップとして、矢印612によって示される方向に近づける。再び図5を参照する。プリンタ530は、プリンタ530内部のプリンタ周囲温度Tを感知するための第2の温度センサ532を含み得るという点に留意されたい。ラインの開始点にある媒体522の新たな領域上をヘッド500が移動する場合、新領域の初期温度Tは、温度センサ532によって測定された周囲温度Tに非常に近くなる。回路ネットワーク608a〜fは、媒体522内の側部の熱拡散をモデル化するクロスネットワークの抵抗体(たとえば抵抗体610)を含むが、短いプリントサイクルにおいては媒体522内でプリント方向に生じる熱拡散はほとんどないため、このような抵抗体は、本分析においては考慮に入れない。しかしながら、仮に媒体522内のこの熱拡散の影響を考慮することが所望された場合においては、このような抵抗体が考慮に入れられよう。
【0044】
ヘッド500から媒体522へ熱が流れ始めると、媒体温度Tが上昇し始める。熱流の速度は、ヘッド500と媒体522との間の温度勾配に比例する。最終的な媒体温度Tは、ラインタイムΔtと、Rによって与えられる媒体522の時定数とに依存する。短いラインタイムについては、媒体温度Tは、等式3によって近似される。
【0045】
【数7】

等式3におけるAは、等式4によって与えられる。
【0046】
【数8】

等式3を等式2にあてはめると、等式5が得られる。
E=G’(d)+S’(d)T(1−A)+S’(d)A (等式5)
等式1と等式5とを比較すると、等式6および等式7が得られる。
G(d,T)=G’(d)+S’(d)(1−A)T (等式6)
S(d)=S’(d)A (等式7)
元のG(・)関数は陰にTに依存していたのが、等式6においては陽に依存するようになっている点に留意されたい。
【0047】
たとえば、図4を参照し、ここで逆媒体濃度モデル206(図2)の一実施形態をさらに詳細に説明する。逆媒体濃度モデル206は、時間間隔n毎に、(1)ソース画像濃度d(n)100と、(2)T(n)204、すなわち時間間隔nの開始時における感熱式プリントヘッド要素の予測温度、およびT(n)、すなわち時間間隔nの開始時におけるプリンタ周囲温度とを、入力として受け取る。逆媒体濃度モデル206は、出力として入力エネルギーE(n)106を発生する。換言すれば、図4に示す逆媒体濃度モデル206によって決定される伝達関数は、3変数関数E=F(d,T,T)である。
【0048】
図4から、図4に示す逆媒体濃度モデル206は等式5を実施するということがわかり得る。たとえば、モデル206は、関数G’(・)424と関数S’(・)416とを含む。第1の乗算器430はS’(・)416と、T(n)426と、(1−A)とを掛けることによって、等式5における第2の項を発生する。第2の乗算器432は、S’(・)416と、A426と、T(n)とを掛けることによって、等式5における第3の項を発生する。加算器434は、G’(・)を第1の乗算器430および第2の乗算器432の出力に加えることによって、入力エネルギーE(n)106を発生する。
【0049】
図7を参照すると、本発明の一実施形態における逆プリンタモデル102によって実行される、プリント画像110を発生するために感熱式プリンタ108へ提供する入力エネルギー106を発生するための、方法700のフローチャートが示されている。方法700は、ソース画像100中の各ピクセルPに関するループに入る(ステップ702)。方法700は、プリントヘッド要素、すなわちピクセルPをプリントするための要素の温度Tを識別する(ステップ704)。温度Tは、たとえば、先に参照した特許出願において開示されている技術を用いて、あるいは本明細書中において開示される技術を用いて、予測され得る。
【0050】
方法700は、プリンタ周囲温度Tを識別する(ステップ706)。プリンタ周囲温度Tは、たとえば、温度センサ532を用いた測定によって識別され得る。
【0051】
方法700は、ピクセルPがプリントされるべきプリント媒体522の領域の温度T識別する(ステップ708)。温度Tは、たとえば、等式3を用いて概算され得る。
【0052】
方法700は、ピクセルPの濃度dを識別する。(ステップ710)。方法700は、識別されたプリントヘッド要素温度Tと、プリンタ周囲温度Tと、媒体領域温度Tと、濃度dとに基づいて、ピクセルPをプリントするのに必要とされる入力エネルギーEを識別する(ステップ712)。エネルギーEは、たとえば、等式5を用いて識別され得る。方法700は、エネルギーEを適切なプリントヘッド要素へ提供し、それによってピクセルPがプリントされるようにする(ステップ714)。方法700は、ソース画像100中の残りのピクセルPステップ704〜714を反復し(ステップ716)、それによってソース画像100の残りをプリントする。
【0053】
ステップ708(媒体温度Tの識別)は方法700において個別のステップとして実行される必要はないという点に留意されたい。たとえば、Tが等式3を用いて概算される場合、Tの識別はTおよびTに基づいてステップ712において陰に実行される。
【0054】
図7Aに示す方法700は、多様な方法において実施され得る。たとえば、図7Bを参照すると、本発明の一実施形態において図7Aの方法700を実施するために用いられる方法720のフローチャートが示されている。方法720は、図7Bに示す方法700と同一のステップ702〜706を含む。しかしながら、方法720は、等式3を用いてTの値を算出することによって、各ピクセルPに対する媒体温度Tを識別する(ステップ722)。方法720は、ピクセルPの濃度dsを識別し(ステップ710)、必要とされるエネルギーEを、算出されたTの値を等式2に代入することによって算出する。図7Bに示す方法720の1つの利点は、媒体温度Tを各ピクセルPに対して算出することによって、プリンタ周囲温度Tにおける変化が1ライン毎の基準に基づいて考慮に入れられ得るという点である。
【0055】
しかしながら、プリンタ周囲温度Tは一般的に長い時定数を有するため、プリンタ周囲温度Tにおける変化を1ライン毎の基準に基づいて考慮に入れることが格別な利益を提供しない場合がある。図7Cを参照すると、本発明の一実施形態において、プリントジョブ中にプリンタ周囲温度の変化を考慮に入れる能力を省くことによって、より高い算出効率で図7Aの方法700を実施するために用いられる、別の方法730のフローチャートが示されている。
【0056】
方法730は、個々のピクセルエネルギーを計算する前に、等式6および等式7を用いて関数G(・)およびS(・)を予備計算する(ステップ732)。プリント中に、認識可能なほどプリンタ周囲温度Tが変化することが予期されない場合、ステップ732において実行された予備計算における単一のT値を用いることは、方法730の残りにおいて発生される出力に対して、認識し得るほどの効果を有さない。
【0057】
方法730は、ソース画像100中の各ピクセルPに関するループに入り(ステップ702)、対応するプリントヘッド要素の温度Tを識別する(ステップ704)。方法730は、ピクセルPの濃度dを識別する(ステップ710)。方法730は、ステップ706およびステップ708(図7A)を省略し得る。それは、このようなステップによって生じる効果は、ステップ732において実行された予備計算によって達成されるためである。
【0058】
関数G(・)およびS(・)を予備計算すると、方法730は、等式1を用いて入力エネルギーEを識別する(ステップ734)。この識別には、濃度dおよびプリントヘッド温度Tのみが入力として必要であり、この識別によって、図7Aに示す方法700のステップ712が実施される。2つのルックアップテーブル、1つの加算、および1つの乗算のみを必要とする等式1は、図7Bの方法720における、等式2と等式3との組み合わせよりも効率的に算出され得るということが認識され得る。
【0059】
方法730は、エネルギーEをプリントヘッド要素に提供し(ステップ714)、残りのピクセルPについてステップ704、ステップ710、ステップ734、およびステップ714を反復する(ステップ716)。
【0060】
図7Dを参照すると、図7Aに示す方法700を実施するための、本発明の別の実施形態において用いられる、方法740のフローチャートが示されている。方法740は、周囲温度を考慮に入れる能力を保持しているが、図7Bに示す方法720よりも優れた算出効率を有する。逆媒体濃度モデル206が較正される周囲温度をTrcとする。f=(1−A)/Aとする。等式5、等式6、および等式7を用いて、等式8が得られる。
E=G’(d)+S’(d)(1−A)Trc+S’(d)(1−A)(T−Trc)+S’(d)A=G(d,Trc)+S(d)(T+fΔT) (等式8)
等式8において、ΔT=T−Trcである。換言すれば、等式8は、現プリンタ周囲温度Tと較正温度Trcとの間の差に基づいてプリントヘッド要素温度Tに対して加えられた修正項ΔTを用いることによって、入力エネルギーEを算出する際に、周囲温度変化が考慮されるのを可能にする。修正項ΔTは、等式9によって与えられる。
ΔT=fΔT (等式9)
図7Dを参照すると、本発明の一実施形態において、関数G(・,Trc)およびS(・)に対してルックアップテーブルが予備計算される(ステップ742)。方法740は、ソース画像100中の各ピクセルPに関するループに入り(ステップ702)、プリントヘッド要素の温度Tを識別し(ステップ704)、プリンタ周囲温度Tを識別し(ステップ706)、ピクセルPの濃度dを識別する(ステップ710)。ピクセルPに対する修正項ΔTの値を算出するために、等式9が用いられる。方法740は、算出された修正項ΔTを絶対温度Tに加え、ルックアップテーブルを用いてG(d,Trc)およびS(d)の値を求めることによって、等式8を用いて入力エネルギーEを算出する(ステップ746)。方法740は、プリントヘッド要素に入力エネルギーEを提供し(ステップ714)、ソース画像100中の残りのピクセルについて、ステップ704、ステップ710、ステップ744、ステップ746、ステップ714を反復する(ステップ716)。
【0061】
しかしながら、先に参照した、熱履歴制御アルゴリズムによる絶対温度Tの算出が、最も粗い層において(温度センサ512によって)得られたサーミスタの読みに対してプリントヘッド500の全ての層の相対温度を加えることを含むという点を認識することによって、ステップ746において修正項ΔTをプリントヘッド要素温度Tに加えることは省かれ得る。この点は、「Thermal Response Correction System」と題された特許出願においてより詳細に記載されている。結果的に、修正項ΔTがサーミスタの読みTに加えられる場合、修正項ΔTは、熱履歴制御アルゴリズムによるプリントヘッド要素の絶対温度Tの算出によって、全ピクセルへ効果的に広がる。Tが、サーミスタ512によって記録された温度を表すということを想起されたい。したがって、修正されたサーミスタ温度T’が等式10によって与えられる。
’=T+fΔT (等式10)
修正されたサーミスタ温度T’は、次いで、先に参照した特許出願において開示されている技術を用いて、予測プリントヘッド要素温度Tを算出するために用いられ得、それによって、入力エネルギーEの算出において各ピクセルに対して修正項ΔTを加える必要を省き得る。
【0062】
より具体的には、図7Eを参照すると、本発明の一実施形態において用いられる方法750のフローチャートが示されている。この方法は、図7Dに示す方法740と同一の機能を実行するためのものであるが、ステップ746において実行される加算を伴わない。図7Dに関連して先に説明したように、方法750は、関数G(・,Trc)およびS(・)に対して、ルックアップテーブルを予備計算する(ステップ742)。方法750は、ソース画像100中のピクセルの各ブロックBに関するループに入る(ステップ751)。ピクセルのブロックは、たとえば、ソース画像100のサブセットまたは全体ソース画像100であり得る。
【0063】
方法750は、プリンタ周囲温度Tを識別する(ステップ706)。方法750は、現プリンタ周囲温度Tと較正プリンタ周囲温度Trcとに基づいて、等式10を用いて修正プリントヘッド温度T’を算出する(ステップ752)。
【0064】
図7Aに関連して先に述べたように、方法750は、ブロックB内の各ピクセルPに関するループに入る(ステップ702)。方法750は、ピクセルPをプリントするプリントヘッド要素の温度Tを識別し(ステップ704)、プリンタ周囲温度Tを識別し(ステップ706)、ピクセルPの濃度dを識別する(ステップ710)。ステップ752において媒体温度Tが陰にに考慮されるため、ステップ708(図7A)を実行する必要はない。
【0065】
方法750は、等式11を用いて入力エネルギーを算出する(ステップ754)。ステップ752において、修正プリントヘッド温度T’の算出の際にΔTを考慮したため、等式11は、等式10から修正項ΔTを除去した結果であるという点に留意されたい。
E=G(d,Trc)+S(d)T (等式11)
方法750は、入力エネルギーEをプリントヘッド要素へ提供し(ステップ714)、ソース画像100中の残りのピクセルについて、ステップ704、ステップ710、ステップ754、ステップ714を反復する(ステップ716)。方法750は、ソース画像100中の残りのブロックについて、上記のステップを反復する(ステップ755)。
【0066】
図7Eに示す方法750の1つの利点は、等式11を計算することが、2つのルックアップテーブル、1つの加算、および1つの乗算のみを必要とし、等式1同様、計算上集中的なものでないため、ランタイム算出という点でオーバーヘッドが些少であるという点である。さらに、方法750は、必要であれば、長いプリントジョブ中のプリンタ周囲温度Tにおける変化を考慮に入れる能力を有している。このような変化は、ステップ704において識別されたプリントヘッド要素温度Tに反映される。
【0067】
湿度における変化は、感熱式プリンタ108(図1)によって発生されたプリント画像110における濃度に影響し得る。しかしながら、湿度が複雑な方法で媒体モデル206を変化させ、その結果、等式2により課せられる構造に適応し得ない複雑な方法で媒体モデル206を変化させる場合、プリント濃度ににおける湿度の影響は、表現するのが困難であり得る。上記の議論からわかり得るように、媒体モデル206は、プリンタ周囲温度Tにおける任意の変動を説明するために容易に用いられ得る。本発明の一実施形態において、湿度の影響は、湿度を同等の温度変化に翻訳することによって考慮される。
【0068】
「Thermal Transfer Recording System」と題された米国特許第6,537,410号に記載されている技術を用いると、染料を溶解させるドナー層において熱性の溶媒を溶融させることによりプリントが実現され得る。溶解された染料は、次いで、毛管作用によってレシーバへ導かれる。理想としては、熱性の溶媒は固定された温度で溶融する。しかしながら、媒体中の不純物の存在は、溶融温度に影響し得る。我々は、空気中の水分がドナー層によって吸収され、熱性溶媒の融点を低下させると仮説を立てている。ドナー層によって吸収された水分量は、相対周囲湿度によって導かれる。したがって、本発明の一実施形態において、相対湿度における変化に比例する温度修正が適用される。
【0069】
ΔRHが、現相対湿度と、媒体モデル206が較正された相対湿度との間の差を表すとする。修正プリントヘッド温度測定値T’を計算する等式10は、湿度影響を考慮に入れるために、等式12に示すように修正され得る。
T’=T+fΔT+f(T)ΔRH (等式12)
等式12において、f(・)は、相対湿度変化ΔRHを等価な温度変化に変換する比例定数を表す。我々は、周囲温度が高いほど、湿度は大きな影響を有するということを実験的に観察した。f(・)のTへの依存は、湿度に対する感度におけるこの変化を温度で再現することを意味する。
【0070】
等式12は、プリントヘッド温度Tに対して加えられる特定の修正項の形を示すという点に留意されたい。一般的に、この修正項は、2変数関数f(T,ΔRH)として書かれる。この関数では、TおよびΔRHに対する修正項の関数的従属性は、等式12において示されるものとは異なる形をとる。特定のプリンタ周囲温度および相対湿度におけるこの関数の値は、修正プリントヘッド温度を決定することによって実験的に見出され得る。修正プリントヘッド温度は、結果的に、基準周囲条件下でプリントされた画像に最も近いプリント画像になる。実験手順もまた、fおよびf(・)を決定するために用いられ得る。
【0071】
図7Fを参照すると、方法760のフローチャートが示されている。図7Fに示す方法760が相対湿度における変化をさらに考慮に入れているという点を除けば、方法760は、図7Eに示す方法750と同一の機能を実行するために本発明の一実施形態において用いられる。図7Dに関連して先に述べたように、方法760は、関数G(・,Trc)およびS(・)に対するルックアップテーブルを予備計算する(ステップ742)。方法760は、ソース画像100中のピクセルの各ブロックBに関するループに入る(ステップ751)。方法760は、プリンタ周囲温度Tを識別する(ステップ706)。
【0072】
方法760は、現プリンタ周囲温度Tと、較正プリンタ周囲温度Trcと、相対湿度ΔRHにおける変化とに基づいて、等式12を用いて修正プリントヘッド温度T’を算出する(ステップ762)。ステップ762において発生された修正プリントヘッド温度T’は湿度の影響を反映し、修正プリントヘッド温度T’もまたステップ704において識別されたプリントヘッド要素温度Tに影響するため、図7F中のステップ754において計算される入力エネルギーEが湿度の影響を効果的に考慮しているという点を除けば、方法760の残りは、図7Eに関連して上述したのと同一の方法で、ステップ702、704、710、754、714、716および755を実行する。
【0073】
代替的な仮説は、染料層のガラス転移温度Tが相対湿度の関数として変化するということである。染料がレシーバへ導かれる速度は、粘度の関数であり、粘度の関数は、Tgの関数である。これらの前提に基づいて、温度における同等の変化を計算するための式を発生し得る。温度における変化もまた相対湿度に比例しており、温度における変化においては、比例定数は周囲温度に対して二次の従属性を有する。等式12において与えられたサーミスタ温度に対する湿度修正項の形が、同様にこの仮説に適合するという点に留意されたい。
【0074】
本明細書中において開示されている技術は、多様な利点を有する。上述したように、熱履歴制御アルゴリズムが較正された後に起こる周囲温度変化は、このような変化が考慮に入れられない場合、最適以下の出力をプリンタに発生させ得る。画像をプリントするためにプリンタに対して提供する入力エネルギーを算出する際に、周囲温度変化を明確に考慮に入れることによって、本明細書中に開示されている技術はこのような温度変化を補正し、それによってプリント出力の質を向上させる。
【0075】
同様に、上述したように、熱履歴制御アルゴリズムが較正された後に起こる湿度の変化は、このような変化が考慮に入れられない場合、最適以下の出力をプリンタに発生させる。画像をプリントするためにプリンタに対して提供する入力エネルギーを算出する際に、湿度変化を明確に考慮に入れることによって、本明細書中に開示されている技術はこのような温度変化を補正し、それによってプリント出力の質を向上させる。
【0076】
さらに、本明細書中に開示されている技術は、「Thermal History Control」と題された、先に参照した特許出願において開示されている利点を有する。たとえば、本明細書中に開示されている技術は、プリントヘッド要素に対して提供されるエネルギーを算出する際に、プリントヘッドの現周囲温度と、プリントヘッドの熱履歴およびエネルギー履歴とを考慮に入れることによってプリントヘッド要素の温度を、所望の濃度を生じるのに必要な温度にのみ上昇させ、それによって「濃度の偏り」の問題を低減または除去する。本発明の多様な実施形態のさらなる利点は、それらが、プリントヘッド要素に対して提供される入力エネルギーを、所望の濃度を生じるために必要または望ましいように、増大または低減し得るという点である。
【0077】
本発明の多様な実施形態の別の利点は、プリントヘッド要素に対して提供されるエネルギーを、計算上効率的な方法で算出し得るという点である。たとえば、上述したように、本発明の一実施形態において、入力エネルギーは、2つの1変数関数(G(d)およびS(d))を用いて算出され、それによって、単一の4次関数F(d,T,T,ΔRH)を用いるよりも入力エネルギーがより効率的に算出されることが可能になる。
【0078】
特定の実施形態という点から発明を説明してきたが、前述の実施形態は、単に例示説明として提供されたにすぎず、発明の範囲を限定または定義するものではないということが理解されるべきである。以下を含むその他の多様な実施形態もまた、請求項の範囲内にある(ただし以下のものに限定しない)。たとえば、同様の機能を実行するために、本明細書中に記載された要素およびコンポーネントをさらに追加のコンポーネントに分けるか、あるいはより少ないコンポーネントを形成するように連結させてもよい。
【0079】
一部の実施形態は、感熱式転写プリンタに関連して本明細書中に記載され得るが、これは本発明の限定ではないということが認識されるべきである。むしろ、上述の技術は、感熱式転写プリンタ以外のプリンタ(たとえば直接感熱式プリンタ)に適用され得る。さらに、上述の感熱式プリンタの多様な特徴は、単に例示の目的で記載されたものであり、本発明の限定を構成するものではない。
【0080】
以上に示し、記載した多様な等式の結果は、多様な方法のうちの任意の方法で得られ得るということが認識されるべきである。たとえば、このような等式(等式1等)はソフトウェアにおいてインプリメントされ得、その結果はオンザフライで(on−the−fly)計算され得る。代替的に、このような等式に対する入力およびそれに対応する出力を保存するルックアップテーブルが予め生成され得る。等式に対する近似値も、たとえば、より向上した算出効率を提供するために用いられ得る。さらに、以上に述べた等式をインプリメントするために、これらの技術またはその他の技術の任意の組み合わせが用いられ得る。したがって、以上の説明における、等式の解を「算出する」、「計算する」といった用語の使用は、単にオンザフライの計算のみでなく、同一の結果を生じるために用いられ得る任意の技術を指すものであると理解されるべきである。
【0081】
上記の技術は、たとえば、ハードウェア、ソフトウェア、ファームウェア、またはそれらの任意の組み合わせにおいて実施され得る。上記の技術は、プロセッサと、プロセッサによって読取り可能な記憶媒体と(たとえば、揮発性メモリおよび不揮発性メモリならびに/または記憶装置要素を含む)、少なくとも1つの入力装置と、少なくとも1つの出力装置とを含むプログラム可能なコンピュータ上で実行する、1つ以上のコンピュータプログラムにおいて実施され得る。記載された機能を実行し、出力を生成するために、入力装置を用いて入力された入力に対してプログラムコードが適用され得る。出力は、1つ以上の出力装置へ提供され得る。
【0082】
以下の請求項の範囲内にある各コンピュータプログラムは、アセンブリ言語、機械言語、高レベルな手続型言語のプログラミング言語、またはオブジェクト指向プログラミング言語等の、任意のプログラミング言語においてインプリメントされ得る。プログラミング言語は、たとえば、コンパイル型またはインタープリタ型のプログラミング言語であり得る。
【0083】
このようなそれぞれのコンピュータプログラムは、機械読み取り可能な装置において明確に具体化される、コンピュータプロセッサによって実行するためのコンピュータプログラム製品においてインプリメントされ得る。本発明の方法ステップは、入力を操作し出力を生成することによって発明の機能を実行するための、コンピュータ読み取り可能な媒体上で明確に具体化されるプログラムを実行するコンピュータプロセッサによって実行され得る。適切なプロセッサには、例示として、汎用マイクロプロセッサおよび特定用途向けマイクロプロセッサの両方が含まれる。一般的に、プロセッサは、読み取り専用メモリおよび/またはランダムアクセスメモリから命令とデータとを受け取る。コンピュータプログラム命令を明確に具体化するのに適切な記憶装置として、たとえば、EPROMメモリデバイス、EEPROMメモリデバイス、フラッシュメモリデバイスを含む半導体メモリデバイス、内部ハードディスクやリムーバブルディスク等の磁気ディスク、光磁気ディスク、CD−ROM、といったあらゆる形態の不揮発性メモリが挙げられる。以上のうちの任意のものが、特別設計された(特定用途型の集積回路)ASICまたはFPGA(Field−Programable Gate Arrays)によって補われるか、その中に組み込まれ得る。コンピュータは、一般的に、内部ディスク(図示せず)またはリムーバブルディスク等の記憶媒体からプログラムおよびデータを受け取ることもできる。これらの要素は、従来のデスクトップまたはワークステーションコンピュータにおいても、本明細書中に記載の方法をインプリメントするコンピュータプログラムを実行するのに適切なその他のコンピュータ同様に見られる。これらのコンピュータは、紙、フィルム、ディスプレイスクリーン、またはその他の出力媒体上にカラーピクセルまたはグレースケールピクセルを発生させることが可能な、任意のデジタルプリントエンジンまたはマーキングエンジン、ディスプレイモニタ、またはその他のラスター出力装置と関連して用いられ得る。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
本明細書に記載の方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7A】
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【図7B】
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【図7C】
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【図7D】
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【図7E】
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【図7F】
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【公開番号】特開2009−274458(P2009−274458A)
【公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−193607(P2009−193607)
【出願日】平成21年8月24日(2009.8.24)
【分割の表示】特願2007−509571(P2007−509571)の分割
【原出願日】平成17年4月18日(2005.4.18)
【出願人】(591193347)ポラロイド コーポレイション (27)
【Fターム(参考)】