説明

熱収縮性ポリオレフィン系フィルム

【課題】有機溶剤での溶剤接着性が良好であり、かつ、自動販売機などで加熱販売する際に加温器内でラベル同士がブロッキングすることのない熱収縮性ポリオレフィン系収縮フィルムを提供すること。
【解決手段】ポリプロピレン系樹脂を主体とした層[A]の表裏に、環状オレフィン系樹脂層[B]を積層し、その少なくとも片面に層[B]より高いガラス転移温度を有する環状オレフィン系樹脂層[C]を積層し95℃での温水中10秒の熱収縮率が50%以上であることを特徴とした熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱収縮性ポリオレフィン系フィルムに関し、さらに詳しくはラベル用途に好適な熱収縮性ポリオレフィン系フィルムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
近年、包装品の、外観向上のための外装、内容物の直接衝撃を避けるための包装、ガラス瓶またはプラスチックボトルの保護と商品の表示を兼ねたラベル包装等を目的として、
シュリンクラベルが広範に使用されている。これらの目的で使用されるプラスチック素材としては、ポリ塩化ビニル、ポリスチレン、ポリエステル、ポリオレフィン等が知られている。
【0003】
しかしながら、ポリ塩化ビニルラベルは、シュリンク特性には優れるものの、燃焼時に塩素ガスを発生する等の環境問題を抱えている。ポリスチレンやポリエステルラベルについては、熱収縮性は良好であるものの、ペット(ポリエチレンテレフタレート)ボトルとの比重差が小さいため浮遊分離が困難であり、ペットボトルのリサイクルを妨げる。
【0004】
一方、ポリプロピレンを主たる構成単位するシュリンクラベルは、ペットボトルとの比重差が大きく、ボトル本体とラベルとの浮遊分離も容易でリサイクル性にも優れている。(例えば、特許文献1など)。ところが、有機溶剤による接着を可能にするため外装側に環状オレフィン系樹脂を用いたフィルム(例えば、特許文献2など)や、スチレン−ブタジエンブロック共重合体を用いたフィルム等ではペットボトルをお茶など加熱して販売される飲料に用いた時に、加温器内でラベル同士がブロッキングを起こすという問題がある。
【0005】
【特許文献1】特開2000−211025号公報
【特許文献2】特開平2−276633号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は上記のような問題点に着目してなされたものであって、その目的は、有機溶剤での溶剤接着性が良好であり、かつ、ラベルを被覆収縮した容器を加熱した時にラベル同士がブロッキングを起こすことのない熱収縮性ポリオレフィン系フィルムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決することのできた本発明に係る熱収縮性ポリオレフィン系フィルムとは、ポリプロピレン系樹脂を主体とした層[A]の表裏に、環状オレフィン系樹脂層[B]を積層し、該[B]層の少なくとも片側の層上の最表面側に[B]層より高いガラス転移温度を有する環状オレフィン系樹脂層[C]を積層した少なくとも4層以上の積層構成からなり、フィルムの試料を、95℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が50%以上であるところに要旨を有している。
【0008】
上記本発明の熱収縮ポリオレフィン系フィルムにおいては、環状オレフィン系樹脂層[C]の厚みが3μm以下であり、且つ、環状オレフィン系樹脂層[B]の厚みより薄いことが好ましく、更に、 環状オレフィン系樹脂層[C]のガラス転移温度が90℃以上であり、環状オレフィン系樹脂層[B]のガラス転移温度が90℃未満であることが好ましい。
【0009】
また、ポリプロピレン系樹脂を主体とした層[A]が、プロピレン−α−オレフィン共重合体を主体とし、石油樹脂及び/又は環状オレフィン系樹脂及び/又はエチレン系樹脂含有することがより好ましい実施形態である。
【0010】
さらに、上記本発明の熱収縮ポリオレフィン系フィルムにおいては、フィルムが有機溶剤で接着可能であることが好ましい。
【発明の効果】
【0011】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、シクロヘキサンやテトラヒドロフランなどの有機溶剤を接着溶剤として用いた際に溶剤接着性が良好であり、通常の溶剤接着法で容易にセンターシールを行なうことができ、しかも、自動販売機などで加熱販売する際の加温器内でのラベル同士のブロッキングを防止できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、上記のように、ポリプロピレン系樹脂を主体とした層[A]の表裏に、環状オレフィン系樹脂層[B]を積層し、該[B]層の少なくとも片側の層上の最表面側に[B]より高いガラス転移温度を有する環状オレフィン系樹脂層[C]を積層した少なくとも4層以上の積層構成からなり、フィルムの試料を、95℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が50%以上であるところに最大の特徴を有している。
【0013】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、95℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の水中に10秒間浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が50%以上である。該熱収縮率が50%未満では、フィルムラベルを容器に被覆収縮させる際にラベルの収縮不足が発生する。該熱収縮率は好ましくは52%以上、より好ましくは55%以上である。前記熱収縮率は、後述の原料処方、フィルム積層構成と延伸条件の組み合わせにより達成することができる。
【0014】
ポリプロピレン系樹脂を主体とした層[A]を構成する上記ポリプロピレン系樹脂としては、例えば、ホモポリマー、プロピレン−α−オレフィンランダム共重合体、プロピレン−エチレンブロック共重合体が挙げられる。ここで、α−オレフィンとしては、炭素数2〜20のα−オレフィンが挙げられ、好ましくは、エチレン、プロピレン、ブテン−1、ヘキセン−1、オクテン−1等が例示され、これらを含む好ましい共重合体としては、プロピレン−エチレンランダム共重合体、プロピレン−ブテンランダム共重合体、プロピレン−エチレン−ブテンランダム共重合体などが上げられる。これらのポリマーの立体構造にも特に制限はなく、イソタクチック構造、アタクチック構造、シンジオタクチック構造あるいはこれらの混在した構造の何れであってもかまわない。
【0015】
ポリプロピレン系樹脂を用いることにより、熱収縮性フィルムの比重が下がり、水を用いたペットボトル本体とラベルとの浮遊分離を効率的に行なうことが可能となる。フィルムの比重は0.97以下が好ましく、0.95以下がより好ましい。
【0016】
次に、上記環状オレフィン系樹脂層[B]、環状オレフィン系樹脂層[C]を構成する環状オレフィン系樹脂とは、一般的な総称であり、具体的には、(a)環状オレフィンの開環(共)重合体、(b)環状オレフィンの開環(共)重合体を必要に応じ水素添加した重合体、(c)環状オレフィンとエチレン、プロピレン等 α−オレフィンとのランダム共重合体である。その他に(d)前記(a)〜(c)を不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体などが例示される。
【0017】
環状オレフィンとしては特に限定するものではなく例えばビシクロヘプト−2−エン(2−ノルボルネン)およびその誘導体、例えばノルボルネン、6−メチルノルボルネン、6−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、6−nーブチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネンなどが挙げられるが、もとよりこれらに限定されるものではない。また、テトラシクロ−3−ドデセンおよびその誘導体として、例えば8−メチルテトラシクロ−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ−3−ドデセン、5,10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセン等も好ましい環状オレフィンとして賞用される。
【0018】
上記のような環状オレフィン系樹脂は、熱収縮性フィルムとして必要な収縮率を高めると共に、フィルムの腰を高め、有機溶剤での接着性を高める効果がある。環状オレフィン系樹脂層[B]のガラス転移温度は50℃以上、90℃未満が好ましく、より好ましくは60℃以上80℃以下である。ガラス転移温度が50℃未満のものを使用すると、自然収縮率が大きくなり、ロールにシワやタルミが発生したり、巻き締まりによるブロッキングが発生することがあり好ましくなく、また、ガラス転移温度が90℃以上のものを使用すると、低温での収縮率が低下し、ラベルをボトルに装着する際の処理温度を高くする必要があり、ペットボトルが熱により変形することがあり好ましくない。
【0019】
一方の環状オレフィン系樹脂[C]のガラス転移温度は90℃以上、140℃以下が好ましく、より好ましくは100℃以上120℃以下である。ガラス転移温度が90℃未満のものを使用すると、自動販売機などで加熱販売する際の加温器内でのラベル同士のブロッキングが発生し易くなり好ましくなく、ガラス転移温度が140℃を越すものを使用すると、製膜時の延伸性が悪化して厚みムラが生じ易くなり、外観も悪化傾向となる。
【0020】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、上記構成成分とするもので、有機溶剤での溶剤接着性が良好であり、かつ、加熱販売する際の加温器内でのラベル同士のブロッキングを防止できるものであるが、ポリプロピレン系樹脂を主体とした層[A]に、石油樹脂、環状オレフィン系樹脂、エチレン系樹脂を併用することにより、本発明の好ましい実施態様として推奨される。
【0021】
ここで、ポリプロピレン系樹脂を主体とした層[A]に併用する石油系樹脂とは、石油精製工業や石油化学工業の工程上得られる特定留分(オレフィン、ジオレフィンなどの重合性化合物を含むもの)中の重合可能な物質を、特に単離精製することなしに、そのまま重合し樹脂化したものをさす。より詳しくは、前述のうち芳香族系炭化水素樹脂や芳香族系石油樹脂を、部分水素添加もしくは完全水素添加することによって得られる脂環族飽和炭化水素樹脂であり、該石油樹脂としては、例えば荒川化学工業株式会社製の商品名「アルコン」又はトーエネックス株式会社製の商品名「エスコレッツ」等の市販品が挙げられる。
【0022】
これらの石油樹脂を併用すると、ポリプロピレン系ポリマーの非結晶化が増進され、熱収縮性フィルムとして必要な収縮率が高められると共に、フィルム製膜時の延伸性も向上するので好ましい。石油樹脂の軟化点は110℃以上であることが好ましく、より好ましい軟化点は125℃以上、更に好ましくは140℃以上である。石油樹脂の軟化温度が高いものほど、より高い熱収縮率を得ることができる為である。石油樹脂の軟化点が110℃未満であると、フィルムにベタツキが生じて印刷等の後加工で障害となったり、経時変化により白濁する恐れもある。
【0023】
次に、ポリプロピレン系樹脂を主体とした層[A]に併用する環状オレフィン系樹脂としては、前掲の環状オレフィン系樹脂層[B]、環状オレフィン系樹脂層[C]を構成する環状オレフィン系樹脂で例示したものと同様に、(a)環状オレフィンの開環(共)重合体、(b)環状オレフィンの開環(共)重合体を必要に応じ水素添加した重合体、(c)環状オレフィンとエチレン、プロピレン等 α−オレフィンとのランダム共重合体である。その他に(d)前記(a)〜(c)を不飽和カルボン酸やその誘導体で変性したグラフト変性体などが例示される。
【0024】
環状オレフィンとしては特に限定するものではなく例えばビシクロヘプト−2−エン(2−ノルボルネン)およびその誘導体、例えばノルボルネン、6−メチルノルボルネン、6−エチルノルボルネン、5−プロピルノルボルネン、6−nーブチルノルボルネン、1−メチルノルボルネン、7−メチルノルボルネン、5,6−ジメチルノルボルネン、5−フェニルノルボルネン、5−ベンジルノルボルネンなどが挙げられが、もとよりこれらに限定されるものではない。また、テトラシクロ−3−ドデセンおよびその誘導体として、例えば8−メチルテトラシクロ−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ−3−ドデセン、5,10−ジメチルテトラシクロ−3−ドデセン等も好ましい環状オレフィンとして賞用される。
【0025】
これらの環状オレフィン系樹脂を併用すると、ポリプロピレン系樹脂を主体とした層[A]の非結晶化が増進され、熱収縮性フィルムとして必要な収縮率が高められると共に、フィルム製膜時の延伸性も向上するので好ましい。また、ポリオレフィン系フィルム全般の欠点である自然収縮を低減させる効果も有している。
【0026】
環状オレフィン系樹脂のガラス転移温度は50℃以上、140℃以下が好ましく、より好ましくはは60℃以上110℃以下である。ガラス転移温度が50℃未満のものを使用すると、自然収縮率が大きくなり好ましくなく、ガラス転移温度が140を越すものを使用すると、製膜時の延伸性が悪化して厚みムラが生じ易くなり、外観も悪化傾向となる。
【0027】
また、ポリプロピレン系樹脂を主体とした層[A]に併用するエチレン系樹脂とは、エチレンを主成分とした重合体であり、例えば、ポリエチレンホモポリマー、エチレン−α−オレフィンランダム共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸との共重合体、エチレンと不飽和カルボン酸の誘導体との共重合体、また、これらを不飽和カルボン酸または、不飽和カルボン酸の誘導体で変性したものなどが上げられる。具体的な、共重合成分としては、ブテン−1、ヘキセン−1、4メチルペンテン−1、オクテン−1、酢酸ビニル、アクリル酸、メタクリル酸、メチルアクリレート、メチルメタアクリレート、アクリル酸金属塩などが、変性成分としてはマレイン酸などが例示される。これらを含む好ましい重合体としては、LLDPE、エチレン−アクリル酸共重合体、エチレン−メチルアクリレート共重合体、エチレン−エチルアクリレート−無水マレイン酸共重合体、エチレンのマレイン酸グラフト変性物などが上げられる。
【0028】
エチレン系樹脂を併用することにより、フィルムの流れ方向の直交方向に一軸延伸した際の流れ方向の伸張時の破断が減少し、印刷やセンターシール加工時に破断し難くなる。また、表裏層との接着強度が向上し、層界面での剥離が起こりにくくなるためセンターシール強度の向上も図れるので好ましい。
【0029】
本発明において、ポリプロピレン系層[A]を構成する石油樹脂の配合割合は、同層を構成する樹脂成分の全量中に占める比率で5重量%以上、40重量%以下が好ましく、より好ましくは、5重量%以上、25重量%以下である。石油樹脂の配合割合が5重量%未満では、満足のいく低温収縮特性が得られにくくなり、逆に石油樹脂の配合割合が40重量%を越えて過度に多くなると、得られるフィルムの比重が大きくなり過ぎて、印刷を施した該フィルムをペットボトルの被覆用ラベルとして用いた場合、リサイクル時に比重分離法で効率よく分離し難くなる恐れが生じてくる。
【0030】
また、ポリプロピレン系樹脂層[A]を構成する環状オレフィン系樹脂の配合割合は、同層を構成する樹脂成分の全量中に占める比率で3重量%以上、30重量%以下が好ましく、より好ましくは、5重量%以上、20重量%以下である。環状オレフィン系樹脂の配合割合が3重量%未満では、低温収縮特性が得られにくく、逆に環状オレフィン系樹脂の配合割合が30重量%を越えて過度に多くなると、得られるフィルムの比重が大きくなり過ぎて、印刷を施した該フィルムをペットボトルの被覆用ラベルとして用いた場合、リサイクル時に比重分離法で効率よく分離し難くなる恐れが生じてくる。
【0031】
次に、ポリプロピレン系樹脂層[A]を構成するエチレン系樹脂の配合割合は、同層を構成する樹脂成分の全量中に占める比率で5重量%以上、40重量%以下が好ましく、より好ましくは、10重量%以上、30重量%以下である。エチレン系樹脂の配合割合が5重量%未満では、流れ方向の直交方向に一軸延伸した際の流れ方向の伸張時の破断が減少しにくくなり、逆にエチレン系樹脂の配合割合が40重量%を越えて過度に多くなると、製膜時の延伸性が劣化したり、或いは厚みの均一性が悪化したりすることがあるので好ましくない。
【0032】
更に、本発明において、環状オレフィン系樹脂層[B]、環状オレフィン系樹脂層[C]には、エチレン系樹脂、スチレン系樹脂等を30重量%を超えない範囲で添加することができる。環状オレフィン系樹脂は耐油性が無く、フィルムについた指紋等の油脂により収縮処理時の熱により白化が生じたり、また、常温では硬く脆い性質があり、印刷等の加工時にフィルムが切断し易いという問題があるが、これらの添加により抑制することができる。
【0033】
本発明に係る熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの厚みは特に限定されないが、ラベルとしての用途を考えると100μm以下が好ましく、より好ましくは30〜80μmである。なお、本発明において、環状オレフィン系樹脂層[C]の厚みは、3μm以下が好ましく、より好ましくは、0.5μm以上2μm以下である。環状オレフィン系樹脂層[C]の厚みが3μmを越えると、低温での収縮率が発現しにくくなり好ましくなく、また、同厚みが0.5μm未満となると自動販売機などで加熱販売する際の加温器内でのラベル同士のブロッキングが発生し易くなり好ましくない。
【0034】
また、環状オレフィン系樹脂層[B]の厚みは、環状オレフィン系樹脂層[C]の厚みとの合計で4μm以上とするのが好ましい。環状オレフィン系樹脂層[B]および、同[C]層の合計厚みを4μm以上にすることにより、シクロヘキサンやテトラヒドロフランなどの有機溶剤を用いた溶剤接着性が良好となり、ペットボトルなどに装着した際にラベルが運搬等で剥れることのない強度を得られるためである。溶剤接着強度は1.5N/15mm巾以上が好ましく、2.0N/15mm巾がより好ましく、2.5N/15mm巾以上がさらに好ましい。なお、本発明において溶剤接着可能であるとは溶剤接着強度が1.5N/15mm巾以上であることをさす。
【0035】
環状オレフィン系樹脂層[B]および、同[C]層の合計厚みの上限は特にないが、全体厚みの比は0.6以下が好ましく、より好ましくは0.5以下である。この厚み比が0.6を越えると得られるフィルムの比重が大きくなり過ぎて、印刷を施した該フィルムをペットボトルの被覆用ラベルとして用いた場合、リサイクル時に比重分離法で効率よく分離し難くなる恐れが生じてくる。
【0036】
本発明のフィルムは、前掲の要件を満たす4層ないし5層構造とするのが最も実用的であるが、場合によっては、ポリプロピレン系樹脂層[A]と環状オレフィン系樹脂層[B]の間に接着層等の層を設けた多層構造とすることも可能である。積層法に格別の制限はないが、多層共押出し法やドライラミネート法等が一般的である。
【0037】
なお本発明に係る熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの構成は前述した通りであるが、それらの基本素材を含むことを前提とし、且つ前述した本発明の目的を損なわない範囲で、必要に応じて、公知の酸化防止剤、熱安定剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤、スリップ剤、造核剤、紫外線吸収剤、着色剤などを適宜含有させることができる。
【0038】
次に本発明に係る熱収縮性ポリオレフィン系フィルムの製膜方法について説明する。
【0039】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、前述したような樹脂原料を220〜250℃で溶融押出しした後、テンター法などによって少なくとも一軸方向に2倍以上、好ましくは4倍以上、より好ましくは6.5倍以上延伸することによって製造する。延伸方向は、一軸方向以上であればよいが、ラベルの流れ方向に対して直交方向のみに一軸延伸することが好ましい。また、十分な収縮率を確保するには、延伸倍率を2倍以上にすることが望ましい。好ましい延伸法としては、延伸に先立って80℃以上、120℃以下で予備加熱し、110℃以下の温度で延伸するのがよい。延伸後の熱固定は70℃〜85℃で行なうのがよく、また、熱固定を行なう際の弛緩処理は0〜10%の範囲が好ましい。
【実施例】
【0040】
次に、実施例を挙げて本発明の構成と作用効果をより具体的に説明するが、本発明はもとより下記実施例によって制限を受けるものではなく、前・後記の要旨を逸脱しない範囲で適当に変更を加えて実施することも可能であり、それらはいずれも本発明の技術的範囲に包含される。なお、本明細書中における各種特性値の測定法は下記のとおりである。
【0041】
(熱収縮率)
フィルムを、一辺がフィルムの流れ方向に対して平行となるように10cm×10cmの正方形に切り出し、これを所定の温度±0.5℃に保持した水槽に10秒間浸漬する。10秒経過後直ちに、別途用意した25℃の水槽に10秒間浸漬した後、フィルムの主収縮方向と、その直交方向の長さを測定し、下記式によって加熱収縮率を求めた。なお、最も収縮した方向を主収縮方向とした。
収縮率(%)=100×(収縮前の長さ−収縮後の長さ)÷(収縮前の長さ)
【0042】
(溶剤接着強度)
テトラヒドロフラン(THF)を用いて、フィルムをチューブ状に接合加工し、温度25℃、相対湿度65%の環境下に24時間放置した後、該チューブを加工時の流れ方向と直交方向に15mm幅に切断してサンプルを取り、接合部分を上記方向について、JIS K 6854に準じ、T型剥離試験を行なう。
試験片数は20とし、試験片長さ60mm、チャック間20mm、試験片幅15mm、温度23℃、引張速度200mm/分の条件で行なった。
【0043】
(収縮仕上り性)
各供試フィルムに、センターシールマシン(東洋紡績株式会社製)を用いて5g/m2のテトラヒドロフランを塗布し溶剤接着することによってチューブとし、これを切断してラベルとする。ついでこのラベルを、用量350mlの角型ペットボトルに装着し、90℃に設定したスチーム式収縮トンネルに通してラベルを収縮させる。ペットボトルの肩部まで収縮し綺麗に仕上がったものを“○”、ペットボトルの肩部の収縮が不足し浮きの発生したものを“×”とした。
【0044】
(ラベルブロッキング)
収縮仕上がり性評価で用いたラベルを装着した角型ペットボトルを横向きに5段積み重ね、70℃に調整されたオーブン内に24時間放置した後、室温に取り出し、ラベル同士のブロッキングの状態を官能評価した。ペットボトルを持ち上げたときに、下側のペットボトルが持ち上がらず、ブロッキング跡も残らないものを“○”、下側のペットボトルが持ち上がったり、ブロッキング跡の残るものを“×”とした。
【0045】
(比重)
JIS K7112に準拠し、密度勾配管法により測定したフィルムの密度と温度23℃における水の密度との比から、フィルムの比重を求めた。
【0046】
(実施例1)
C層には、ガラス転移温度105℃の環状オレフィン樹脂(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR1020R」)、B層には、ガラス転移温度70℃の環状オレフィン樹脂(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR750R」)、A層には、プロピレン−ブテンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「SPX78H3」)50重量部、プロピレン−エチレンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「S131」)15重量部、石油樹脂(荒川化学工業社製の商品名「アルコンP140」)15重量部、環状ポリオレフィン(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR750R」)10重量部、LLDPE(宇部興産製の商品名「SP1540」)10重量部を混合した混合物とをそれぞれ別の押出機に投入し、260℃でTダイより共押出し、20℃に保持した冷却ロールで冷却固化させた後、90℃で25秒予熱後、90℃で横方向に7倍テンター延伸し、次いで同テンター内で7%弛緩させつつ75℃で40秒熱固定してフラット状のC/B/A/B/C構成からなる3種5層の熱収縮性フィルムを得た。このフィルムの厚さはC層が各々1μm、B層が各々7μm、A層が44μmでトータルの厚さは60μmであった。この延伸フィルムについて上記方法にて試験をおこなった結果を表1に示す。
【0047】
(実施例2)
C層には、ガラス転移温度105℃の環状オレフィン樹脂(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR1020R」)、B層には、ガラス転移温度70℃の環状オレフィン樹脂(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR750R」)80重量部、LLDPE(宇部興産製の商品名「SP1540」)20重量部を混合した混合物、A層には、プロピレン−ブテンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「SPX78H3」)40重量部、プロピレン−エチレンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「S131」)25重量部、石油樹脂(荒川化学工業社製の商品名「アルコンP140」)25重量部、環状ポリオレフィン(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR750R」)10重量部、LLDPE(宇部興産製の商品名「SP1540」)10重量部を混合した混合物とをそれぞれ別の押出機に投入し、260℃でTダイより共押出し、20℃に保持した冷却ロールで冷却固化させた後、90℃で25秒予熱後、90℃で横方向に7倍テンター延伸し、次いで同テンター内で7%弛緩させつつ75℃で40秒熱固定してフラット状のC/B/A/B構成からなる3種4層の熱収縮性フィルムを得た。このフィルムの厚さはC層が0.5μm、中間層が各々7μm、最内層が45.5μmでトータルの厚さは60μmであった。この延伸フィルムについて上記方法にて試験をおこなった結果を表1に示す。
(比較例1)
C層は環状オレフィン樹脂(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR−750R」)、A層にはプロピレン−ブテンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「SPX78H3」)40重量部、プロピレン−エチレンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「S131」)40重量部、石油樹脂(荒川化学工業社製の商品名「アルコンP140」)20重量部とし、それぞれ別の押出機に投入し、260℃でTダイより共押出しし、20℃に保持した冷却ロールで冷却固化させた後、90℃で25秒予熱後、85℃で横方向に7倍テンター延伸し、次いで同テンター内で7%弛緩させつつ83℃で40秒熱固定してフラット状のC/A/C構成からなる2種3層の熱収縮性フィルムを得た。このフィルムの厚さはC層が各々8μm、A層が44μmでトータルの厚さは60μmであった。この延伸フィルムについて上記方法にて試験をおこなった結果を表1に示す。
【0048】
(比較例2)
C層は環状オレフィン樹脂(日本ゼオン社製の商品名「ZEONOR1020R」)、A層にはプロピレン−ブテンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「SPX78H3」)40重量部、プロピレン−エチレンランダム共重合体(住友化学工業社製の商品名「S131」)40重量部、石油樹脂(荒川化学工業社製の商品名「アルコンP140」)20重量部とし、それぞれ別の押出機に投入し、260℃でTダイより共押出しし、20℃に保持した冷却ロールで冷却固化させた後、95℃で25秒予熱後、95℃で横方向に7倍テンター延伸し、次いで同テンター内で7%弛緩させつつ83℃で40秒熱固定してフラット状のC/A/C構成からなる2種3層の熱収縮性フィルムを得た。このフィルムの厚さはC層が各々8μm、A層が44μmでトータルの厚さは60μmであった。この延伸フィルムについて上記方法にて試験をおこなった結果を表1に示す。
【0049】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0050】
本発明の熱収縮性ポリオレフィン系フィルムは、有機溶剤での溶剤接着性が良好であり、かつ、加熱時の耐ブロッキング性が改善されているため、ペットボトルやガラス瓶入り飲料などを加熱販売する際の収縮ラベル、収縮包装などの用途に好適に用いることができる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリプロピレン系樹脂を主体とした層[A]の表裏に、環状オレフィン系樹脂層[B]を積層し、該[B]層の少なくとも片側の層上の最表面側に、該[B]層より高いガラス転移温度を有する環状オレフィン系樹脂層[C]を積層した少なくとも4層以上の積層構成からなり、フィルムの試料を、95℃の温水中に10秒浸漬して引き上げ、次いで25℃の温水中に10秒間浸漬して引き上げたときの最大収縮方向の熱収縮率が50%以上である熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。
【請求項2】
環状オレフィン系樹脂層[C]の厚みが0.5μm以上、3μm以下であり、且つ、環状オレフィン系樹脂層[B]の厚みより薄いことを特徴とする請求項1に記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。
【請求項3】
環状オレフィン系樹脂層[C]のガラス転移温度が90℃以上であり、環状オレフィン系樹脂層[B]のガラス転移温度が90℃未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。
【請求項4】
ポリプロピレン系樹脂を主体とした層[A]が、プロピレン−α−オレフィン共重合体を主体とし、石油樹脂及び/又は環状オレフィン系樹脂及び/又はエチレン系樹脂を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。
【請求項5】
フィルムが有機溶剤で接着可能であることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載の熱収縮性ポリオレフィン系フィルム。

【公開番号】特開2006−110827(P2006−110827A)
【公開日】平成18年4月27日(2006.4.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−299814(P2004−299814)
【出願日】平成16年10月14日(2004.10.14)
【出願人】(000003160)東洋紡績株式会社 (3,622)
【Fターム(参考)】