説明

熱収縮性多層フィルム及び熱収縮性ラベル

【課題】 容器の熱収縮性ラベルとして用いた場合、装着時に層間剥離が発生することがなく、耐熱性、耐油性、ミシン目におけるカット性、外観に優れるとともに、印刷工程後の層間強度の低下を防止することが可能な熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供する。
【解決手段】 ポリスチレン系樹脂を含む中間層に、接着層を介してポリエステル系樹脂を含む外面層が積層された熱収縮性多層フィルムであって、前記接着層は、ポリエステル系エラストマーを含む熱収縮性多層フィルム。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、容器の熱収縮性ラベルとして用いた場合、装着の際に層間剥離が発生することがなく、耐熱性、耐油性、ミシン目におけるカット性、外観に優れるとともに、印刷工程後の層間強度の低下を防止することが可能な熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルに関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ペットボトルや金属罐等の容器の多くには、熱収縮性樹脂フィルムからなるベースフィルムに印刷等を施した熱収縮性ラベルが装着されている。
このような熱収縮性樹脂フィルムとしては、低温収縮性に優れることからポリスチレン系樹脂からなるものが主流である。しかし、ポリスチレン系樹脂フィルムは、耐熱性が不充分であることから、例えば、コンビニエンスストア等にあるホットウォーマー内で加熱時にペットボトルが倒れたときに収縮してラベルが歪んでしまったり破れてしまったりすることがあるという問題があった。また、ポリスチレン系樹脂フィルムは耐溶剤性が不充分であることから、油分を含む品物の包装に用いた場合に、油分が付着することによって収縮したり溶解したりすることがあるという問題もあった。
【0003】
一方、ポリスチレン系樹脂フィルムに代えて、耐熱性や耐溶剤性に優れたポリエステル系フィルムを熱収縮性ラベルとして用いる試みもなされている。しかしながら、ポリエステル系フィルムは、低温収縮性が悪く、急激に収縮するため容器に装着した際に皺が発生しやすいという問題がある。また、熱収縮性ラベルには、容器をリサイクルするために使用後の容器から容易に熱収縮性ラベルを引き剥がせるように引き剥がしのためのミシン目が設けられていることが多いが、ポリエステル系フィルムは、ミシン目におけるカット性が悪く、容易には熱収縮性ラベルを容器から引き剥がすことができないことがあるという問題があった。更に、ポリエステル系フィルムは収縮応力が大きいことから、ホット飲料用ラベルとして使用する場合に、販売時の加熱によってラベルが容器を締めつけることで、内容物の入れ目線が上昇し、容器から漏出等したりするという問題があった。
【0004】
これに対して、特許文献1には、ポリスチレン系樹脂からなる中間層に、オレフィン系樹脂からなる接着層を介してポリエステル系樹脂からなる外面層が積層されてなる硬質多層収縮性フィルムが開示されている。また、特許文献2には、ポリスチレン系樹脂からなる中間層の両側に、特定のモノマーからなるポリエステル系樹脂からなる外面層が積層されたものであって、中間層と外面層とが接着層を介さずに積層されてなるベースフィルムを備えた熱収縮性ラベルが開示されている。更に、特許文献3には、ポリエステル系樹脂からなる表面層、スチレン系樹脂からなる中間層及び接着性樹脂からなる接着層を有する積層フィルムが開示されている。これらの多層フィルムからなる熱収縮性ラベルは、ポリスチレン系樹脂からなる中間層によって低温収縮性とミシン目におけるカット性に優れ、しかも、該中間層がポリエステル系樹脂からなる外面層に覆われているため、耐溶剤性、耐熱性にも優れている。
【0005】
しかしながら、これらの熱収縮性ラベルを実際に容器に装着すると、特許文献1に記載された硬質多層収縮性フィルムでは、装着時に中間層と外面層とが剥離してしまったりすることがあり、特許文献2に記載された熱収縮性ラベルでは、装着後に製品の輸送中にフィルム同士が擦れた場合や、人間の爪や物体で引掻かれた場合に中間層と外面層との間で剥離が生じたりすることがあるという問題があった。
また、飲用のPETボトル等に使用する場合には、他社との差異化や、顧客に対するイメージ向上を目的として、印刷によるラベルの装飾が行われているが、印刷工程において使用される印刷用インキは、一般的に有機溶剤を含有することから、印刷、乾燥後の印刷面には、微量の有機溶剤が残留する。これにより、特許文献3に記載された熱収縮性フィルムを用いた場合には、残留溶剤によって、外面層と中間層との接着性が影響を受け、印刷工程後の外面層と中間層との接着強度が、印刷工程を行う前と比較して著しく低下するという問題が新たに生じていた。
従って、容器の熱収縮性ラベルとして用いた場合に、装着時において外面層と中間層との剥離が生じることなく、耐熱性、耐油性、ミシン目におけるカット性、外観に優れるとともに、印刷工程において使用される有機溶剤による影響が少なく、印刷工程後も充分な接着強度を有する熱収縮性多層フィルムが求められていた。
【特許文献1】特開昭61−41543号公報
【特許文献2】特開2002−351332号公報
【特許文献3】特開2006−15745号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記現状に鑑み、容器の熱収縮性ラベルとして用いた場合、装着の際に層間剥離が発生することがなく、耐熱性、耐油性、ミシン目におけるカット性、外観に優れるとともに、印刷工程後の層間強度の低下を防止することが可能な熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、ポリスチレン系樹脂を含む中間層に、接着層を介してポリエステル系樹脂を含む外面層が積層された熱収縮性多層フィルムであって、前記接着層は、ポリエステル系エラストマーを含む熱収縮性多層フィルムである。
以下に本発明を詳述する。
【0008】
本発明者らは、ポリスチレン系樹脂を含む中間層に、接着層を介してポリエステル系樹脂を含む外面層が積層された熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルにおいて、上記中間層と外面層とを、ポリエステル系エラストマーを含む接着層を介して接着することにより、層間剥離が生じることがなく安定して装着できることを見出した。また、このような構成とした場合、印刷工程後の層間強度の低下を抑制できることについても見出し、本発明を完成するに至った。
【0009】
本発明の熱収縮性多層フィルムは、ポリスチレン系樹脂を含む中間層と、ポリエステル系樹脂を含む外面層とが、ポリエステル系エラストマーを含む接着層を介して積層されたものである。
【0010】
上記ポリエステル系エラストマーとは、ハードセグメントであるポリエステルと、ゴム弾性に富むソフトセグメントとから構成されるものであり、具体的には例えば、ハードセグメントとしてのポリエステルと、ソフトセグメントとしてのポリアルキレンエーテルグリコールとからなるブロック共重合体等が挙げられる。
【0011】
上記ポリエステル系エラストマーとして、ポリエステルとポリアルキレンエーテルグリコールとからなるブロック共重合体を用いる場合、ポリアルキレンエーテルグリコールからなるセグメントの割合は、好ましい下限が30重量%、好ましい上限が80重量%である。30重量%未満であると、中間層との接着性が低下し、80重量%を超えると、外面層に対する接着性が低下する。好ましい下限は50重量%、好ましい上限は75重量%である。
【0012】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールとしては、例えば、ポリエチレングリコール、ポリ(プロピレンエーテル)グリコール、ポリ(テトラメチレンエーテル)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンエーテル)グリコール等が挙げられる。
【0013】
上記ポリアルキレンエーテルグリコールの数平均分子量の好ましい下限は400、好ましい上限は6000である。より好ましい下限は600、より好ましい上限は4000、更に好ましい下限は1000、更に好ましい上限は3000である。上記範囲内の数平均分子量を有するポリアルキレンエーテルグリコールを用いることにより、良好な層間強度を得ることができ好ましい。なお、本明細書において、数平均分子量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)で測定されたもののことをいう。
【0014】
上記ポリエステル系エラストマーを作製する方法としては特に限定されないが、例えば、(i)炭素数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールと、(ii)芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸又はそれらのエステルと、(iii)数平均分子量が400〜6000のポリアルキレンエーテルグリコールとを原料とし、エステル化反応又はエステル交換反応によりオリゴマーを得た後、更に、オリゴマーを重縮合させることにより、作製することができる。
【0015】
上記炭素数2〜12の脂肪族及び/又は脂環式ジオールとしては、例えば、ポリエステルの原料、特に、ポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として常用されているものが使用できる。具体的には例えば、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。これらのなかでは、エチレングリコール、1,4−ブタンジオールが好ましく、1,4−ブタンジオールがより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0016】
上記芳香族ジカルボン酸及び/又は脂環式ジカルボン酸としては、例えば、ポリエステルの原料、特にポリエステル系熱可塑性エラストマーの原料として常用されているものが使用できる。具体的には例えば、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸、シクロヘキサンジカルボン酸等が挙げられる。これらのなかでは、テレフタル酸、2,6−ナフタレンジカルボン酸が好ましく、テレフタル酸がより好ましい。これらは単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0017】
上記ポリエステル系エラストマーのうち市販されているものとしては、例えば、商品名「プリマロイ」(三菱化学社製)、商品名「ペルプレン」(東洋紡績社製)、商品名「ハイトレル」(東レ・デュポン社製)等が挙げられる。
【0018】
上記中間層を構成するポリスチレン系樹脂としては、例えば、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体、又は、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂等が挙げられる。
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体を用いると、低温雰囲気下での伸度低下の少ない熱収縮性多層フィルムとなる。
また、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂を用いると、低温収縮性に優れた熱収縮性多層フィルムとなる。
【0019】
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体としては特に限定されず、例えば、芳香族ビニル炭化水素としてはスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が、共役ジエンとしては1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ブタジエン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。なかでも、特に低温収縮性やミシン目におけるカット性に優れることから、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SBS樹脂)が好適である。また、よりフィッシュアイの少ないフィルムを作製するためには、共役ジエンとして2−メチル−1,3−ブタジエン(イソプレン)を用いたスチレン−イソプレン−スチレン共重合体(SIS樹脂)や、スチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体(SIBS樹脂)等を用いることが好ましい。
【0020】
上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体として、SBS樹脂、SIS樹脂又はSIBS樹脂を用いる場合には、1種の樹脂を単独で用いてもよく、複数の樹脂を組み合わせて用いてもよい。複数で用いる場合にはドライブレンドしてもよく、ある特定の組成にて押出機を用いて練り上げペレタイズしたコンパウンド樹脂を用いてもよい。
このような樹脂を単独又は複数で用いて、スチレン含有量が65〜90重量%、共役ジエン含有量が10〜35重量%の組成とすることが好ましい。このような組成の樹脂は、特に低温収縮性やミシン目におけるカット性に優れる。一方、共役ジエン含有量が10重量%未満であると、フィルムにテンションをかけたときに切れ易くなり、印刷等のコンバーティングやラベルとして使用するときにフィルムが思いもよらず破断することがある。共役ジエン含有量が35重量%を超えると、成形加工時にゲル等の異物が発生しやすくなることがある。
【0021】
上記芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体としては特に限定されず、例えば、芳香族ビニル炭化水素としてはスチレン、o−メチルスチレン、p−メチルスチレン等が、不飽和カルボン酸エステルとしては、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸プロピル、アクリル酸ブチル、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸プロピル、メタクリル酸ブチル等が挙げられる。これらはそれぞれ単独で用いられてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0022】
上記芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体として、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体を用いる場合、スチレン含有量が60〜90重量%、アクリル酸ブチル含有量が10〜40重量%であるものを用いることが好ましい。このような組成の芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体を用いることで、耐低温性やミシン目カット性に優れる熱収縮性ラベルを得ることができる。
【0023】
上記中間層として、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂を用いる場合、混合樹脂中の上記芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体の配合量の好ましい下限は20重量%、好ましい上限は80重量%である。20重量%未満であると低温伸度が低くなり、冷蔵保存時に誤って落下した時に熱収縮性ラベルが破れてしまうことがあり、80重量%を超えると、熱収縮性ラベルの保管時の収縮、いわゆる自然収縮が大きくなることがある。より好ましい下限は30重量%、より好ましい上限は70重量%である。
【0024】
本発明の熱収縮性多層フィルムにおいて、上記中間層は、紫外線吸収剤を含有することが好ましい。このように、紫外線吸収剤を含有することで、紫外線カット性を付与することができ、特に日光や蛍光灯から発せられる紫外線(波長380nm以下)のカット性に優れるため、容器の内容物の劣化を防止して、保管性を高めることができる。
また、ポリスチレン系樹脂を含む中間層のみに紫外線吸収剤を含有させることで、ポリエステル系樹脂に紫外線吸収剤を含有させた場合の熱劣化やロール汚染等の問題を解決することができる。また、紫外線吸収剤の含有量が少ない場合でも、所望の紫外線カット性を達成できることから、コスト面でも有利なものとなる。
【0025】
上記紫外線吸収剤としては特に限定されず、例えば、2,4−ジヒドロキシベンゾフェノン、2,2’,4,4’−テトラヒドロキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン、2−ヒドロキシ−4−メトキシベンゾフェノン−5−スルホン酸、2−ヒドロキシ−4−n−オクトキシベンゾフェノン等のベンゾフェノン系紫外線吸収剤;2−(2’−ヒドロキシ−4’−n−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−n−メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−5’−tert−オクチルフェニル)ベンゾトリアゾール、2−[2’−ヒドロキシ−3’−(3’’,4’’,5’’,6’’−テトラヒドロフタルイミドメチル)−5’−メチルフェニル]ベンゾトリアゾール等のベンゾトリアゾール系紫外線吸収剤;2,4−ジ−tert−ブチルフェニル−3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンゾエート等のベンゾエート系紫外線吸収剤;p−tert−ブチルフェニルサリシレート等のサリシレート系紫外線吸収剤;エチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート、オクチル−2−シアノ−3,3−ジフェニルアクリレート等のシアノアクリレート系紫外線吸収剤等が挙げられる。
なかでも、紫外線吸収性と耐熱性とのバランスに優れることから、2−(2’−ヒドロキシ−5’−n−メトキシフェニル)ベンゾトリアゾール、2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールが好ましい。
【0026】
上記紫外線吸収剤の含有量は、中間層の厚みにもよるが、ベース樹脂やリターン材等中間層を構成する材料100重量部に対して、好ましい下限が1重量部、好ましい上限が10重量部である。1重量部未満であると、紫外線カット性が不充分となり、容器のシュリンクラベルとして使用した場合に、内容物の劣化を防止できないことがあり、10重量部を超えると、熱収縮性多層フィルムの機械的強度が低下し、印刷等のコンバーティングやシュリンクラベルとして使用する場合に、破断等が発生することがある。上記紫外線吸収剤の含有量のより好ましい下限は2重量部、より好ましい上限は8重量部である。
【0027】
上記外面層を構成するポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸とジオールとを縮重合させることにより得ることができるものである。
上記ジカルボン酸としては特に限定されず、例えば、o−フタル酸、テレフタル酸、イソフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、オクチルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、ナフタレンジカルボン酸、フマル酸、マレイン酸、イタコン酸、デカメチレンカルボン酸、これらの無水物及び低級アルキルエステル等が挙げられる。
上記ジオールとしては特に限定されず、例えば、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、ジエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、1,2−プロパンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール(2,2−ジメチルプロパン−1,3−ジオール)、1,2−ヘキサンジオール、2,5−ヘキサンジオール、2−メチル−2,4−ペンタンジオール、3−メチル−1,3−ペンタンジオール、2−エチル−1,3−ヘキサンジオール等の脂肪族ジオール類;2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパン、2,2−ビス(4−ヒドロキシシクロヘキシル)プロパンのアルキレンオキサイド付加物、1,4−シクロヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール等の脂環式ジオール類等が挙げられる。
【0028】
上記ポリエステル系樹脂としては、なかでも、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含み、かつ、ジオール成分としてエチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含むものが好適である。このようなポリエステル系樹脂を用いることにより、得られる本発明の熱収縮性多層フィルムに特に高い耐熱性と耐溶剤性を付与することができる。
また、特に高い耐熱性と耐溶剤性を付与する場合には、エチレングリコールに由来する成分の含有量が60〜80モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分の含有量が10〜40モル%であるものを用いることが好ましい。このようなポリエステル系樹脂は、更に、ジエチレングリコールに由来する成分を0〜20モル%含有していてもよい。
上記外面層を構成するポリエステル系樹脂としては、上述した組成を有するポリエステル系樹脂を単独で用いてもよく、上述した組成を有する2種以上のポリエステル系樹脂を併用してもよい。
【0029】
上記ポリエステル系樹脂としては、結晶融解温度が240℃以下のものを用いることが好ましい。熱収縮性ラベルの製造においては、延伸耳のトリミング片やリサイクルフィルムをリターン材として再度使用することが一般的に行われている。通常、このようなリターン材は中間層の原料としてポリスチレン系樹脂と混合されるが、ポリスチレン系樹脂とポリエステル系樹脂とは、融点等の性質が異なるため、ポリスチレン系樹脂の成形に適した温度でフィルム成形を行った場合、ポリエステル系樹脂が未溶融の状態で押し出されることがあった。ところが、結晶融解温度の比較的低い又は結晶融解温度を持たないポリエステル系樹脂を用いることで、成形後のフィルムにポリエステル系樹脂の未溶融物が異物となって生じることを防止することができる。これに対して、結晶融解温度が240℃を超えると、リターン材として成形する場合、フィルムにポリエステル系樹脂の未溶解物が異物となって残存し、外観不良が発生したり、印刷時にインクが飛んで印刷不良が生じたりする等の不具合が発生することがある。より好ましくは220℃以下である。
【0030】
本発明の熱収縮性多層フィルムには、必要に応じて、酸化防止剤、熱安定剤、滑剤、帯電防止剤、アンチブロッキング剤等の添加剤を添加してもよい。特に、熱安定剤や酸化防止剤を添加することでゲルの発生を抑制することができる。
【0031】
フィルム全体の厚さが45μmである場合、上記中間層の厚さの好ましい下限は22μm、好ましい上限は37μmである。22μm未満であると、充分なミシン目におけるカット性が得られないことがあり、37μmを超えると、充分な耐熱性が得られないことがある。より好ましい下限は26μm、より好ましい上限は36μmである。
上記外面層の厚さの好ましい下限は3μm、好ましい上限は10μmである。3μm未満であると、充分な耐油性や耐熱性が得られないことがあり、10μmを超えると、充分なミシン目におけるカット性が得られないことがある。より好ましい下限は4μm、より好ましい上限は8μmである。
上記接着層の厚さの好ましい下限は0.7μm、好ましい上限は1.5μmである。0.7μm未満であると、充分な接着強度が得られないことがあり、1.5μmを超えると、熱収縮特性が悪化することがある。より好ましい下限は0.8μm、より好ましい上限は1.3μmである。
【0032】
本発明の熱収縮性多層フィルム全体の厚さの好ましい下限は30μm、好ましい上限は60μmである。熱収縮性多層フィルム全体の厚さを上記範囲内とすることで、経済性に優れるとともに、取り扱いやすいものとなる。各層の厚さは、外面層の厚さを3〜10μmとして、中間層及び接着層の厚さを増減させることにより、フィルム全体の厚さを30〜60μmとすることが好ましい。
【0033】
本発明の熱収縮性多層フィルムの熱収縮特性については、主収縮方向(たて又はよこ方向のうち、より大きく収縮する方向)の70℃の温水中での10秒間の熱収縮率が10〜50%であり、80℃の温水中での10秒間の熱収縮率が25〜80%であることが好ましい。なお、上記熱収縮率とは、熱収縮性多層フィルムをたて100mm×よこ100mmの大きさに切り取り、70℃又は80℃の温水槽に10秒間浸漬した後、収縮前の原寸に対する収縮量の比率を%で表した値のことである。また、たて方向とはフィルムの流れ方向、よこ方向とは幅方向を表す。
【0034】
本発明の熱収縮性多層フィルムを製造する方法としては特に限定されないが、共押出法により各層を同時に成形する方法が好適である。例えば、Tダイによる共押出では、積層の方法として、フィードブロック方式、マルチマニホールド方式、又は、これらを併用した方法のいずれであってもよい。具体的には例えば、外面層を構成する樹脂としてポリエステル系樹脂、中間層を構成する樹脂としてポリスチレン系樹脂、接着層を構成する樹脂としてポリエステル系エラストマーをそれぞれ押出機に投入し、多層ダイスにより、シート状に押し出し、引き取りロールにて冷却固化した後、1軸又は2軸に延伸する方法を用いることができる。延伸温度はフィルムを構成している樹脂の軟化温度や熱収縮性多層フィルムに要求される収縮特性によって変更する必要があるが、延伸温度の好ましい下限は75℃、好ましい上限は120℃、より好ましい下限は80℃、より好ましい上限は115℃である。
【0035】
本発明の熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとして使用することにより、熱収縮性ラベルを得ることができる。このような熱収縮性ラベルもまた本発明の1つである。
本発明の熱収縮性ラベルは、上記熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとして、必要に応じて、印刷層等の他の層を積層してもよい。
【0036】
容器に熱収縮性ラベルを装着する方法としては、通常、溶剤を用いて熱収縮性フィルムの端部間を接着してチューブ状に加工(センターシール加工)し熱収縮性ラベルとした後、容器を覆った状態で加熱して収縮させる方法が採用されている。
【0037】
図1に、本発明の熱収縮性ラベルを用いた場合の、一連の装着工程におけるセンターシール部付近の状態を示す模式図を、図2に、従来の多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを用いた場合の、一連の装着工程におけるセンターシール部付近の状態を示す模式図を示した。
本発明者らが、従来の多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを用いた場合の装着不良の状況を詳細に調査したところ、特許文献2に記載された熱収縮性ラベルでは、図2(a)に示したように、センターシール後、熱収縮させた後に、熱収縮後に製品の輸送中にフィルム同士が擦れた場合や、人間の爪や物体で引掻かれた場合に中間層1と外面層2との間で剥離が生じることが判った(なお、比較のために図2(a)においては、フィルムの端部において剥離した図となっているが、実際にはフィルムの端部のみならず、中央部分等においても剥離は生じ得る)。また、特許文献1に記載された熱収縮性フィルムからなる熱収縮性ラベルでは、図2(b)に示したように、センターシール後、熱収縮させたときに、センターシール側の外面層2と接着層3’との間で剥離が生じることが判った。
【0038】
特許文献2に記載された熱収縮性ラベルでは、中間層1と外面層2とは接着層を介さずに直接積層されている。特許文献2においては、特定のモノマーからなるポリエステル系樹脂を含む外面層を用いることにより、中間層1と外面層2との親和性を高めて接着強度を高めたとしているが、実際には、層間の接着強度は高くはなく、中間層1と外面層2との層間で剥離してしまったものと考えられる。
一方、特許文献1に記載された熱収縮性フィルムでは、中間層1と外面層2とをオレフィン系樹脂からなる接着層3’を介して積層していることから、層間の接着強度は高いはずである。センターシール方式では、溶剤を用いて熱収縮性フィルムの端部間を接着する。このとき、溶剤としては外面層に用いたポリエステル系樹脂を溶解させるものを用い、外面層の一部を溶解して貼り合わせる。特許文献1において接着層として用いたオレフィン系樹脂は、ポリエステル系樹脂を溶解させる溶剤に対しては極めて耐溶剤性が高く、ほとんど溶解したり膨潤したりすることがない。そのため、センターシール時に外面層の一部が溶解しても、溶剤は熱収縮性ラベルの内部にまでは浸透することがなく、溶解した外面層とその内側の接着層との接着力が低下し、熱収縮時に応力がかかったときには、外面層1と接着層3’との間で剥離してしまったものと考えられる。
【0039】
これに対して、本発明の熱収縮性ラベルでは、図1に示したように、センターシール後、熱収縮させたときでも層間剥離は生じなかった。
本発明の熱収縮性ラベルでは、中間層1と外面層2とをポリエステル系エラストマーを含む接着層3を介して積層していることから、層間の接着強度は極めて高い。また、この接着層3を構成する樹脂は、ポリエステル系樹脂を溶解させる溶剤に対して溶解又は膨潤するものであることから、センターシール時には、溶剤が熱収縮性ラベルの内部にまで浸透し、全体として接着がなされる。このため、各層間の接着力はセンターシール部においてより向上することから、層間剥離が起こらないものと考えられる。
【発明の効果】
【0040】
本発明によれば、容器の熱収縮性ラベルとして用いた場合、装着時に層間剥離が発生することがなく、耐熱性、耐油性、ミシン目におけるカット性、外観に優れるとともに、印刷工程後の層間強度の低下を防止することが可能な熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0042】
(実施例1)
外面層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエンブロック共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:ビカット軟化点72℃、MFR5.6g/10分)を用いた。
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系エラストマー(三菱化学社製、プリマロイ A1600N、融点160℃、MFR5.0g/10分)を用いた。
これらの樹脂をバレル温度が160〜250℃の押出機に投入し、250℃の多層ダイスからシート状に押出し、25℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、予熱ゾーン110℃、延伸ゾーン90℃、固定ゾーン80℃のテンター延伸機内で延伸倍率6倍にて延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、熱収縮性多層フィルムを得た。
得られた熱収縮性多層フィルムは、総厚みが45μmであり、外面層(6μm)/接着層(1μm)/中間層(31μm)/接着層(1μm)/外面層(6μm)の5層構成からなるものであった。
【0043】
(実施例2)
実施例1で得られた熱収縮性多層フィルムを用い、溶剤が水100重量部、エチルアルコール200重量部、n−メチルピロリドン2重量部の混合溶剤からなり、ビヒクルが水溶性アクリル樹脂からなる白と藍の2色の印刷インキを用いて、グラビア印刷機で、熱収縮性多層フィルムの片面に2色印刷を施した。印刷図柄は、熱収縮性多層フィルムの流れ方向に非印刷部が4mmの幅で間欠的にある格子図柄を使用した。
次いで、印刷面が内面になるように設定し、熱収縮性多層フィルムの両端を重ね合わせながら、1,3−ジオキソラン100重量部に対して、シクロヘキサン50重量部の混合溶剤を用いて、折り径107mmのチューブ状にセンターシールし、扁平に折り畳み、筒状の熱収縮性ラベルを得た。
【0044】
(比較例1)
接着層を構成する樹脂として、ポリブチレンテレフタレート(ウィンテックポリマー社製、ジュラネックス500FP)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
【0045】
(比較例2)
ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂を用いて、単層の熱収縮性フィルムとする以外は、実施例1と同様にして厚みが45μmの熱収縮性フィルムを得た。
【0046】
(比較例3)
スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:ビカット軟化点72℃、MFR5.6g/10分)を用いて、単層の熱収縮性フィルムとする以外は、実施例1と同様にして厚みが45μmの熱収縮性フィルムを得た。
【0047】
(比較例4)
外面層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂を用いた。
中間層を構成する樹脂としてスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(スチレン78重量%:ブタジエン22重量%:ビカット軟化点72℃、MFR5.6g/10分)を用いた。
接着層を構成する樹脂として無水マレイン酸変性直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)を用いた。
これらの樹脂を用いて実施例1と同様にして、外面層(6μm)/接着層(1μm)/中間層(31μm)/接着層(1μm)/外面層(6μm)の5層構成からなる熱収縮性多層フィルムを得た。
【0048】
(比較例5)
外面層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂を用いた。
中間層を構成する樹脂としてスチレン−ブタジエン−スチレン共重合体(スチレン78重量%:ブタジエン22重量%:ビカット軟化点72℃、MFR5.6g/10分)を用いた。
これらの樹脂を用いて実施例1と同様にして、外面層(6μm)/中間層(33μm)/外面層(6μm)の3層構成からなる熱収縮性多層フィルムを得た。
【0049】
(比較例6)
接着層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体50重量%とジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂50重量%との混合樹脂を用いる以外は、実施例1と同様にして厚みが45μmの熱収縮性多層フィルムを得た。
【0050】
(実験例1)
接着層を構成する樹脂として、無水マレイン酸変性スチレン−ブタジエンブロック共重合体水素添加物(スチレン含量30重量%、無水マレイン酸付加量0.5重量%、MFR4.0g/10分、比重0.91)を用いた以外は、実施例1と同様にして熱収縮性多層フィルムを得た。
【0051】
(評価)
実施例2で得られた熱収縮性ラベル、並びに、比較例及び実験例で得られた熱収縮性フィルムを用いて実施例2と同様の方法で得られた熱収縮ラベルについて、以下の方法で装着性・外観、耐熱性、ミシン目におけるカット性及び耐油性を評価した。また、実施例1、比較例1、4〜6及び実験例1で得られた熱収縮性フィルムについて、以下の方法で印刷加工前後の層間強度を評価した。
結果を表1に示した。
【0052】
(1)装着性・外観
得られた熱収縮性ラベルを、直径約65mmの丸(多角)型の500mlのPETボトルに被せ、フジアステック社製「SH−5000」のスチームトンネルを用い、設定温度80−85−95℃、トンネル通過時間8秒で収縮させ、装着させた。なお、各熱収縮性ラベルには、予めミシン目を入れた。
各々100個についてペットボトルへの装着を行った後、更に、爪を用いて引掻いた後、センターシール部を中心に熱収縮性ラベル全体の装着状態を目視にて観察し、以下の基準により装着性・外観を評価した。
〇:層間剥離や、皺が全く認められなかった。
×:1個でも、層間剥離や、皺が認められた。
【0053】
(2)耐熱性
得られた熱収縮性ラベルを装着したペットボトル(層間剥離や皺がなく装着できたもの)30個を130℃に保温したホットプレート上に15分間静置した後、目視にて熱収縮性ラベルの状態を観察して、以下の基準により耐熱性を評価した。
〇:熱収縮性ラベルに皺や破れは全く認められなかった。
×:1個でも、熱収縮性ラベルに皺や破れが認められた。
【0054】
(3)ミシン目におけるカット性
得られた熱収縮性ラベルを装着したペットボトル(層間剥離や皺がなく装着できたもの)30個について、手にてミシン目から破いて熱収縮性ラベルを取り外した。このときの状態を観察して、以下の基準により耐熱性を評価した。
〇:容易のミシン目が破れて熱収縮性ラベルを取り外すことができた。
×:手ではかたくて取り外しにくいものがあった。
【0055】
(4)耐油性
得られた熱収縮性ラベルを装着したペットボトル(層間剥離や皺がなく装着できたもの)30個の熱収縮性ラベル上に食用油を塗布した後、目視にて熱収縮性ラベルの状態を観察して、以下の基準により耐油性を評価した。
〇:熱収縮性ラベルに皺や破れは全く認められなかった。
×:1個でも、熱収縮性ラベルに皺や破れが認められた。
【0056】
(5)印刷前後の層間強度
下記の条件で、得られた熱収縮性多層フィルム(フィルム幅:500mm)にグラビア印刷法によるエンドレス印刷を行った。
使用インキ:NEW LPスーパー 白(東洋インキ社製)
インキ粘度:ザーンカップ#3で17秒(ザーンカップ法)
印刷版:版深度30μm、線数175線のダイレクトレーザー製版により作製した版
印刷回数:3回
印刷速度:150m/min
【0057】
グラビア印刷を行った後、得られた印刷フィルムの白色印刷部分の任意の10点の箇所から、適当な大きさのサンプルを切り出した。次いで、外面層を含む層を剥離層とし、中間層を含む層を被剥離層として、図3に示すようにフィルム端部の一部分を層間剥離した後、たて10mm×よこ100mmの測定用サンプルを切り出した。なお、上記サンプルの「たて」はフィルムの流れ方向、「よこ」は幅方向を表す。
そして、得られたサンプルを引張速度200mm/minで、図4に示すように180度方向に剥離させたときの強度を剥離試験機(Peeling TESTER HEIDON−17、新東科学社製)を用いて測定した。なお、図3、図4では接着層を省略した。
【0058】
【表1】

【0059】
(実施例3)
外面層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:ビカット軟化点72℃、MFR5.6g/10分)100重量部に対して、紫外線吸収剤として2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを2.5重量部添加したものを用いた。
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系エラストマー(三菱化学社製、プリマロイA1600N、融点160℃、MFR5.0g/10分)を用いた。
これらの樹脂をバレル温度が160〜250℃の押出機に投入し、250℃の多層ダイスから5層構造のシート状に押出し、30℃の引き取りロールにて冷却固化した。次いで、予熱ゾーン110℃、延伸ゾーン90℃、熱固定ゾーン80℃のテンター延伸機内で延伸倍率6倍にて延伸した後、巻き取り機で巻き取ることにより、熱収縮性多層フィルムを得た。得られた熱収縮性多層フィルムは総厚みが45μmであり、外面層(6μm)/接着層(1μm)/中間層(31μm)/接着層(1μm)/外面層(6μm)の5層構成からなる熱収縮性多層フィルムであった。
【0060】
(実施例4)
外面層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を70モル%、ネオペンチルグリコールに由来する成分を30モル%含有するポリエステル系樹脂を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体(スチレン82重量%、アクリル酸ブチル18重量%:ビカット軟化点62℃、MFR5.5g/10分)50重量部と、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン77重量%、ブタジエン23重量%:ビカット軟化点82℃、MFR6.0g/10分)50重量部との混合樹脂に、紫外線吸収剤として2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを3.0重量部添加したものを用いた。
接着層を構成する樹脂として、ポリエステル系エラストマー(三菱化学社製、プリマロイA1600N、融点160℃、MFR5.0g/10分)を用いた。
これらの樹脂を用いて実施例3と同様にして、外面層(6μm)/接着層(1μm)/中間層(31μm)/接着層(1μm)/外面層(6μm)の5層構成からなる熱収縮性多層フィルムとした。
【0061】
(比較例7)
外面層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:ビカット軟化点72℃、MFR5.6g/10分)からなるポリスチレン系樹脂を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:ビカット軟化点72℃、MFR5.6g/10分)100重量部に対して、紫外線吸収剤として2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを2.5重量部添加したものを用いた。
これらの樹脂を用いて実施例3と同様にして、外面層(7μm)/中間層(31μm)/外面層(7μm)の3層構成からなる熱収縮性多層フィルムとした。
【0062】
(比較例8)
外面層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:ビカット軟化点72℃、MFR5.6g/10分)からなるポリスチレン系樹脂を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:ビカット軟化点72℃、MFR5.6g/10分)100重量部に対して、紫外線吸収剤として2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを7.5重量部添加したものを用いた。
これらの樹脂を用いて実施例3と同様にして、外面層(7μm)/中間層(31μm)/外面層(7μm)の3層構成からなる熱収縮性多層フィルムとした。
【0063】
(比較例9)
外面層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂を用いた。
中間層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂100重量部に対して、紫外線吸収剤として2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを2.5重量部添加したものを用いた。
これらの樹脂を用いて実施例3と同様にして、外面層(7μm)/中間層(31μm)/外面層(7μm)の3層構成からなる熱収縮性多層フィルムとした。
【0064】
(実験例2)
外面層を構成する樹脂として、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸を用い、ジオール成分としてエチレングリコールに由来する成分を67モル%、1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を33モル%含有するポリエステル系樹脂を用いた。
中間層を構成する樹脂として、スチレン−ブタジエン共重合体(スチレン78重量%、ブタジエン22重量%:ビカット軟化点72℃、MFR5.6g/10分)100重量部に対して、紫外線吸収剤として2−(2’−ヒドロキシ−3’−tert−ブチル−5’−メチルフェニル)−5−クロロベンゾトリアゾールを2.5重量部添加したものを用いた。
これらの樹脂を用いて実施例3と同様にして、外面層(7μm)/中間層(31μm)/外面層(7μm)の3層構成からなる熱収縮性多層フィルムとした。
【0065】
(評価)
実施例3〜4、比較例7〜9及び実験例2で製造した熱収縮性多層フィルムについて、以下の方法により評価を行った。結果を表2に示した。
【0066】
(1)紫外線透過率
得られた熱収縮性多層フィルムについて、分光光度計(U−3410、日立製作所社製)を用い、紫外線(波長:200〜380nm)の透過率を測定した。スキャンスピードは120nm/minとした。なお、紫外線透過率が200〜380nmの全ての領域で1%未満であれば、充分な紫外線カット性を有するものと考えられる。また、表2には、200〜380nmにおける紫外線透過率の最大値を記載した。
【0067】
(2)ブリードアウトの有無
得られた熱収縮性多層フィルムについて、温度23℃、湿度55%の雰囲気下で製膜直後から1週間保管した後、フィルム表面を指で拭くことにより、ブリードアウトの有無を以下の基準により評価した。
〇:指に付着する物質はなかった。
×:粉末状の物質が指に付着した。
【0068】
(3)ロールの汚染
共押出終了後、引き取り機の冷却ロールの汚れを目視で観察し、紫外線吸収剤のブリードに由来する曇りが見られるかどうかを観察した。
〇:曇りは全く認められなかった。
×:曇りが認められた。
【0069】
(4)ミシン目におけるカット性
熱収縮性多層フィルムを223mm幅にスリットし、その両端を重ね合わせながら、1,3―ジオキソラン100重量部に対し、シクロヘキサン50重量部の混合溶剤を用いて、折径107mmのチューブ状にセンターシールし、扁平に折り畳み、筒状のシュリンクラベルを得た。
次いでシュリンクラベルを蒸気トンネルを用いて装着させたペットボトル(層間剥離や皺がなく装着できたもの)30個について、手にてミシン目から破いてシュリンクラベルを取り外した。このときの状態を観察して、以下の基準により耐熱性を評価した。
〇:容易にミシン目が破れてシュリンクラベルを取り外すことができた。
×:手ではかたくて取り外しにくいものがあった。
【0070】
(5)耐油性
(4)と同様にしてシュリンクラベルを装着した容器30個のシュリンクラベル上に食用油を塗布した後、目視にてシュリンクラベルの状態を観察して、以下の基準により耐油性を評価した。
○:シュリンクラベルに皺や破れは全く見られなかった。
×:シュリンクラベルに皺や破れが見られた。
【0071】
(6)層間強度(密着性)
熱収縮性多層フィルムを長さ100mm×幅10mmのサイズにカットし、引張速度200mm/minで、図4に示すように180度方向に剥離させたときの強度を剥離試験機(Peeling TESTER HEIDON−17、新東科学社製)を用いて測定した。以下の基準により中間層と外面層との密着性を評価した。なお、図4では接着層を省略した。
○:層間強度が0.5N/10mm以上
×:層間強度が0.5N/10mm未満
【0072】
【表2】

【産業上の利用可能性】
【0073】
本発明によれば、容器の熱収縮性ラベルとして用いた場合、装着時に層間剥離が発生することがなく、耐熱性、耐油性、ミシン目におけるカット性、外観に優れるとともに、印刷工程後の層間強度の低下を防止することが可能な熱収縮性多層フィルム及び該熱収縮性多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0074】
【図1】本発明の熱収縮性ラベルを用いた場合の、一連の装着工程におけるセンターシール部付近の状態を示す模式図である。
【図2】従来の多層フィルムをベースフィルムとする熱収縮性ラベルを用いた場合の、一連の装着工程におけるセンターシール部付近の状態を示す模式図である。
【図3】印刷前後の層間強度評価におけるフィルムの剥離状態を示す模式図である。
【図4】印刷前後の層間強度評価、層間強度(密着性)評価におけるフィルムの剥離状態を示す模式図である。
【符号の説明】
【0075】
1 中間層
2 外面層
3、3’ 接着層


【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリスチレン系樹脂を含む中間層に、接着層を介してポリエステル系樹脂を含む外面層が積層された熱収縮性多層フィルムであって、前記接着層は、ポリエステル系エラストマーを含むことを特徴とする熱収縮性多層フィルム。
【請求項2】
接着層を構成するポリエステル系エラストマーは、ポリエステルとポリアルキレンエーテルグリコールとからなるブロック共重合体であることを特徴とする請求項1記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項3】
中間層を構成するポリスチレン系樹脂は、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項4】
中間層を構成するポリスチレン系樹脂は、芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体と芳香族ビニル炭化水素−脂肪族不飽和カルボン酸エステル共重合体との混合樹脂であることを特徴とする請求項1又は2記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項5】
芳香族ビニル炭化水素−共役ジエン共重合体は、スチレン−ブタジエン−スチレン共重合体及び/又はスチレン−イソプレン−ブタジエン−スチレン共重合体であることを特徴とする請求項3又は4記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項6】
外面層を構成するポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸成分としてテレフタル酸に由来する成分を含み、かつ、ジオール成分としてエチレングリコール及び1,4−シクロヘキサンジメタノールに由来する成分を含むことを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の熱収縮性多層フィルム。
【請求項7】
請求項1、2、3、4、5又は6記載の熱収縮性多層フィルムを用いてなることを特徴とする熱収縮性ラベル。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2008−37093(P2008−37093A)
【公開日】平成20年2月21日(2008.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−124328(P2007−124328)
【出願日】平成19年5月9日(2007.5.9)
【出願人】(000001339)グンゼ株式会社 (919)
【Fターム(参考)】