説明

熱可塑性エラストマー加硫物および該加硫物を調製するための方法

【課題】2種のそれぞれ熱可塑性および液体シリコーンエラストマー相を含む熱可塑性エラストマー加硫物、ならびにその調製方法を提供する。
【解決手段】少なくとも1種の熱可塑性ポリマーをベースとする第1の相Aとヒドロシリル化により架橋された少なくとも1種の2成分B1およびB2液体シリコーンエラストマーをベースとする第2の相と、これらの相を相溶化するための系とを含み、この系は、少なくとも1種の特定のポリマーC1と、SiH官能基(複数可)を有するポリ有機シロキサンC2と、を含み、特定の射出シーケンスならびに特定のせん断および温度条件に従う、ディスパーション中連続的である少なくとも第2の相との反応押出により、これらの相の均一なディスパーションを得ることにより、このブレンドは改善された機械的特性を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、2種のそれぞれ熱可塑性相および液体シリコーンエラストマー(LSR)相を含む型の熱可塑性エラストマー加硫物(TPV)、ならびに該加硫物を調製するための方法に関する。
【背景技術】
【0002】
TPSiVとしても知られる熱可塑性シリコーンエラストマー加硫物は、熱可塑性相の存在下での、例えば2成分液体型(液体シリコーンゴム用のLSR)のシリコーン相の動的架橋による既知の手法で形成される。例として、反応押出によりそのようなTPSiVを得るための文献US−A−6013715、EP−B1−1440122およびUS−B1−6569958を挙げることができるが、その形態は、常に、TPSiVの熱可塑性相が最終的に得られるブレンド中で連続的であるような形態である。これらのTPSiVのそれぞれのシリコーン相に関して、この相は通常このブレンド中で不連続的であり、この熱可塑性連続相内に分散しているか、または変形例として、上述の文献EP−B1−1440122において述べられているように、後者と共連続的である。
【0003】
現在までに知られているこれらのTPSiVの主な欠点は、その形態が一見して、熱可塑性相が分散した単一の連続的液体シリコーン相から構成されないという点、さらに、一方の相の他方の相における得られるディスパーションの微細度および均一性が満足に足るものではないという点にある。その結果、これらのTPSiVのある特定の機械的特性において残念な点が多い。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6013715号明細書
【特許文献2】欧州特許第1440122号明細書
【特許文献3】米国特許第6569958号明細書
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の1つの目的は、この欠点を克服することであり、この目的は、驚くべきことに、熱可塑性相、液体シリコーン相、特定の相溶化系、および強化充填剤が、特定のシーケンスならびに特定のせん断および温度条件に従い二軸押出機に射出された場合、少なくともシリコーン相が連続的であり、同じ熱可塑性ポリマー(複数可)をベースとする既知のTPSiVと比較して実質的に改善された均一性および微細度をもって熱可塑性相がその中に分散され得る反応押出(reactive extrusion)により、TPVが得られ、これにより、その引張強度、引裂強度および圧縮永久歪を実質的に改善すること、さらには、本発明によるこれらのTPVを、その特性に悪影響を与えることなく再加工および変換するのに好適とすることが可能となることを、出願人が発見したことにより達成される。
【課題を解決するための手段】
【0006】
より具体的には、本発明による熱可塑性エラストマー加硫物は、少なくとも1種の熱可塑性ポリマーをベースとする第1の相と、ヒドロシリル化により架橋された少なくとも1種の液体シリコーンエラストマーをベースとする第2の相と、これらの相を互いに相溶化するための特定の相溶化系とを含み、この相溶化系は、
−グラフトされたポリオレフィン、ポリ(ビニル芳香族/共役ジエン/メチルメタクリレート)ブロックを含有するターポリマー、ポリ(メチルメタクリレート/アルキルアクリレート/メチルメタクリレート)ブロックを含有するターポリマー、エチレン/アルキル(メタ)−アクリレート/アクリル酸ターポリマー、およびエチレン/(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレートターポリマー等の少なくとも1種のグリシジルエステルから得られるポリマーからなる群から選択される、少なくとも1種のポリマーと、
−SiH官能基(複数可)を有するポリ有機シロキサンと
を含み、前記エラストマーは、ディスパーション中連続的である少なくとも第2の相との反応押出により得られる、前記第1および第2の相の均一なディスパーションを形成する。
【0007】
したがって本出願人は、上述の反応押出プロセスに関して使用されるこの相溶化系は、界面張力の低減、および相間の付着性の改善により、シリコーンおよび熱可塑性相の相互の不適合性を十分克服すること、したがって得られるTPVの機械的特性を、いかなる相溶化剤も含まない上述の文献US−A−6013715およびEP−B1−1440122において試験されたTPSiV、ならびにグリシジルエステルコポリマー型の相溶化剤を含有する文献US−B1−6569958において試験されたTPSiVと比較して、実質的に改善することを可能にすることを発見したことに留意されたい。
【0008】
上で示されたように、本発明によるこのTPVは、これらの第1および第2の相の均一なブレンドを有利に形成し、少なくとも第2の相はそのブレンド内で連続的である。換言すると、第1の相は、連続的な第2の相中に分散した小塊で形成された不連続相であってもよく、または、これらの第1および第2の相は、最終的には、ブレンド中で、一方が他方に含有された、およびその逆の小塊の形態で共連続的であってもよく、これらの小塊は、両方の場合において、10μm未満、好ましくは50nmから5μmの間の平均サイズを有する。
【0009】
好ましくは、このTPVは、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、液体シリコーンの2成分の化学量論的割合に対して過剰に存在し、その鎖末端に、またはその鎖に沿って前記一価または多価SiH官能基を有する前記ポリ有機シロキサンとのこの反応押出による反応の生成物を含み、このポリ有機シロキサンは、この反応により、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーにグラフトされる。
【0010】
また好ましくは、相溶化系に含まれる前記ポリマーは、オレフィンのホモポリマーおよびコポリマー、ならびに少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種の非オレフィンコモノマーとのコポリマーからなる群から、さらにより好ましくは、ポリプロピレン等のα−オレフィンのホモポリマー、およびエチレンとアミドとのコポリマーからなる群から選択され得る前記グラフトされたポリオレフィンを含み、好ましくは、このポリオレフィンは、無水マレイン酸によりグラフトされる。
【0011】
変形例として、および上で示されたように、相溶化系に含まれる前記ポリマーは、制限されない例として、例えば、SBMとして知られているもの等のポリスチレン/1,4−ポリブタジエン/ポリメチルメタクリレートブロックを含有するターポリマー、MAMとして知られているもの等のポリメチルメタクリレート/ポリブチルアクリレート/メチルメタクリレートブロックを含有するターポリマー、ATXとして知られているもの等のエチレン/メチルアクリレート/アクリル酸ターポリマー、またはエチレン/メチルアクリレート/グリシジルメタクリレートターポリマーであってもよい。
【0012】
有利には、本発明によるTPVは、1%から30%の範囲の重量分率の前記相溶化系を含んでもよく、前記系は(熱可塑性ポリマー(複数可)および液体シリコーンエラストマー(複数可)の100部当たりの質量部で):
−0.1質量部から10質量部の範囲の量の前記ポリマー(例えば、前記グラフトされたポリオレフィン)と、
−0.1質量部から2質量部の範囲の量のSiH官能基(複数可)を有する前記ポリ有機シロキサンと、必要に応じて、
−例えばパラフィン油、エステルまたはホスフェート型またはスルホンアミド可塑剤等の可塑剤とを含んでもよく、この可塑剤は、前記第1および第2の相と適合するように選択され、0質量部から20質量部の範囲の量で存在する。
【0013】
エステルまたはホスフェート型のこれらの可塑剤は、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーがTPUである場合において特に好適である。
【0014】
また有利には、本発明によるTPVは、20%から80%の範囲の重量分率の前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含んでもよく、この熱可塑性ポリマーは、オレフィンのホモポリマーおよびコポリマー、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミド−イミド(PAI)、熱可塑性エラストマー(TPE)、ならびにこれらのブレンドからなる群から、好ましくは、アイソタクチックポリプロピレン、プロピレンのコポリマー、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、コポリエステル(COPE)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、PA−6ポリアミド、PA−4,6ポリアミド、PA−6,6ポリアミド、PA−11ポリアミド、PA−12ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン(TPU)およびこれらのブレンドからなる群から選択され得る。
【0015】
本発明の別の特徴によれば、本発明によるTPVは、1%から30%の範囲の重量分率で、前記第1の相および/または前記第2の相を強化するための強化充填剤をさらに含んでもよく、この強化充填剤は、任意の既知の適合充填剤であってもよく、好ましくは、疎水性焼成シリカ、二酸化チタンおよびタルク等の無機充填剤、カーボンブラックおよびグラファイト等の有機充填剤、ならびにこれらの混合物からなる群から選択される。
【0016】
有利には、本発明によるTPVは、20%から80%の範囲の重量分率の前記少なくとも1種の液体シリコーンエラストマーを含んでもよく、この液体シリコーンエラストマーは、好ましくは、
−ジオルガノポリシロキサン、強化シリカおよび白金系ヒドロシリル化触媒の混合物を含む第1の成分と、
−ジオルガノポリシロキサン、有機ハイドライドシリコーン化合物、強化シリカおよび阻害剤を含む、第2の成分と
を含む。
【0017】
上で定義されたようなTPVを調製するための本発明による方法は、前記第1および第2の相ならびに前記相溶化系を含む混合物の、二軸押出機への少なくとも1回の通過により行われる反応押出を含む。
【0018】
本発明のこの方法の別の特徴によれば、前記第2の相の前に、前記押出機に、前記第1の相と、好ましくは蠕動ポンプを用いて、前記相溶化系と、第1および/または第2の相を強化するための強化充填剤とが導入される。
【0019】
好ましくは、プレミックスを得、次いでそれを必要に応じて前記系の残りの部分と反応させ、次いで前記第2の相と反応させるために、押出機の供給ゾーンに、
−第1の相と、
−前記相溶化系の全てまたは一部と、
−第1および/または第2の相を強化するための強化充填剤と、
が同時に導入される。
【0020】
本発明のこの方法の別の特徴によれば、第2の相は、押出機のディスパーションゾーンへの、
−この第2の相の前記第1の成分、次いで
−この第2の相の前記第2の成分の射出により、第1の相と混合される。
【0021】
好ましくは、第1および第2の相は、押出機のディスパーションゾーン内で、前記熱可塑性ポリマーの融点、または前記熱可塑性ポリマーの最も高い融点より少なくとも20℃高い温度で、および10−1を超える、好ましくは10−1以上のこのディスパーションゾーン内のブレンドのせん断速度で混合される。
【0022】
本発明の好ましい実施形態によれば、前記押出機の出口で得られた顆粒で形成されるブレンドは、引張強度、引裂強度および圧縮永久歪等の、このブレンドの機械的特性を改善するために、例えば数時間、100℃から150℃の間の温度で熱処理に供される。
【0023】
この押出後の熱処理は任意であるが、これにより最終部品に対する最終的な後硬化ステップが回避され得ることに留意されたい。
【0024】
要約すると、以前に示したように、相溶化系により、および本発明の反応押出プロセスにより得られたこれらの顆粒は、同じ熱可塑性ポリマー(複数可)をベースとし、シリコーンエラストマーがこの(これらの)熱可塑性ポリマー(複数可)中に分散した不連続相を形成するTPSiVの特性と比較した、これらの特性の実質的な改善により特徴付けられる。
【0025】
さらに、このようにして得られた本発明によるTPVは、熱可塑性材料として、およびシリコーンエラストマーの利点をもって有利に加工および変換することができ、またこれらのTPVは、その特性を大きく損うことのないリサイクルに完全に適合する。
【0026】
本発明の上述の特徴、および他の特徴もまた、添付の図面と関連して、例として、および非制限的に示される、以下の本発明のいくつかの例示的実施形態の説明を読めば、より良く理解される。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明によるその調製プロセスを実施する1つの好ましい方法に従いTPVの主成分を射出するためのシーケンスを示す、二軸押出機の側面概略図である。
【図2】本発明に従いTPVの成分を射出するための別の可能なシーケンスを示す、図1の変形例としての同じ押出機の側面概略図である。
【図3】熱可塑性相がポリオレフィン型である、本発明の第1の実施例に従うTPVの形態を示す原子間力顕微鏡画像である。
【図4】熱可塑性相が同じくポリオレフィン型である、第1の「対照」例としての既知のTPSiVの形態を示す原子間力顕微鏡画像である。
【図5】熱可塑性相がポリアミドをベースとする、本発明の第2の実施例に従うTPVの形態を示す原子間力顕微鏡画像である。
【図6】熱可塑性相がそのようなポリアミドをベースとする、第2の「対照」例としての既知のTPSiVの形態を示す原子間力顕微鏡画像である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下の実施例において、本発明によるTPVを調製するために使用される混合条件は、以下の通りであった。
【0029】
相溶化系および強化充填剤の2相の単一通過での反応混合には、CLEXTRAL EVOLUM 32同方向回転二軸押出機を使用した。
【0030】
蠕動ポンプを使用してSiH基を有するポリ有機シロキサン(商品名「H−Siloxane」)を、DOPAGポンプにより(LSR)シリコーンエラストマーの2成分B1およびB2を押出機に導入した。このH−シロキサンは、成分B1およびB2の化学量論的量に対して過剰に導入した。
【0031】
押出機内の全ての化合物の滞留時間は、行った試験の全てに対して、1分から2分の間であった。このディスパーションゾーンにおけるブレンドの、式γ=u/h(式中、uは、スクリューの線形回転速度(m.s−1)であり、hは、これらのスクリュー間の間隔(m)である)で定義されるせん断速度γに関して、γは常に少なくとも10−1に等しく、これは標準的なせん断速度と比較して、非常に激しい配合であることを示している。
【0032】
図1に示される本発明の第1の好ましい実施形態においては、以下を行った。
a)まず、その場でプレミックスを得るために、押出機2の供給ホッパ1に、熱可塑性相A、強化充填剤D、ならびにグラフトされたポリオレフィンC1およびH−シロキサンC2を含む相溶化系Cの一部を同時に導入し、次いで
b)押出機2の運搬ゾーンに、可塑剤C3からなる相溶化系Cの残りを導入し、次いで
c)押出機のディスパーションゾーンに、液体シリコーンエラストマー相Bの第1の成分B1(ジオルガノポリシロキサン、強化シリカおよび白金系ヒドロシリル化触媒からなる)、次いで最後にこの相Bの第2の成分B2(ジオルガノポリシロキサン、有機ハイドライドシリコーン化合物、強化シリカおよび阻害剤からなる)を導入する。
【0033】
図2の実施形態においては、以下を行った。
a)その場でプレミックスを得るために、供給ホッパ1に、熱可塑性相A、強化充填剤D、ならびにグラフトされたポリオレフィンC1、H−シロキサンC2および任意選択の可塑剤C3を含む相溶化系Cの全てを同時に導入し、次いで
b)押出機2のディスパーションゾーンに、エラストマー相Bの成分B1、次いで成分B2を導入する。
【0034】
これらの2つの実施形態において、配合は、熱可塑性ポリマーの融点、または最も高い融点を有する相Aの熱可塑性ポリマーの融点より少なくとも20℃から30℃高い温度で行ったが、押出機のディスパーションゾーンにおけるこの配合温度は、例えば、150℃から220℃の間、好ましくは160℃から200℃の間であった(これらの温度は、本明細書において、ポリプロピレンまたはTPUが相Aの熱可塑性ポリマーとして使用される場合の単なる例として示される)。
【0035】
得られる熱可塑性加硫物を安定化するために、例えばフェノール/芳香族アミン型の酸化防止剤の系を添加して、押出機内の各ブレンドに対して必要に応じて第2の通過を行ってもよい。
【0036】
「対照」熱可塑性加硫物、および得られた本発明による熱可塑性加硫物に対して、以下の機械的特性を測定した。
−ショアA硬度(15s)およびショアD硬度(3s);
−引張強度R/R(MPa);
−破断点伸びA/R(%);
−DELFTにおける引裂強度(N/m);
−25%での圧縮永久歪DRC(100℃で22時間)、%で表される;
−20℃および100℃での弾性率(MPa);および
−ガラス転移温度Tg(℃)。
【実施例1】
【0037】
図1の第1の実施形態に従い導入される、2種のポリマーを含有するポリオレフィン相A、ならびに、この相Aと相Bとの間の相溶化系Cとして3種の上記化合物C1、C2およびC3を使用して、第1の熱可塑性加硫物TPV1を本発明の方法に従い調製した。さらに、押出機の出口で得られた顆粒を、数時間および100℃から150℃の間の温度での熱処理に供した。
【0038】
【表1】

【0039】
このTPV1の上記特性を測定し、以下の表2において、ポリオレフィン系の(すなわちこのTPV1の熱可塑性相と同様の熱可塑性相を含む)Multibase社製「5300」TPSiVの特性と比較した。
【0040】
【表2】

【0041】
実質的に等しい硬度において、本発明によるTPV1の引張強度、DELFT引裂強度および100℃での圧縮永久歪は、同様のポリオレフィン相をベースとする市販のTPSiVに対して測定された同特性よりも極めて大幅に大きいことに留意されたい。
【0042】
実際に、図3および4からの画像において示されるように、このTPV1は、熱可塑性相A(明色)およびシリコーンエラストマー相B(暗色)が共連続的である(すなわち、相AおよびBのそれぞれにおいて、それぞれ小塊BおよびAが分散している)ような形態を有し、図3において、図4における「5300」対照TPSiVの2つの熱可塑性相およびシリコーン相を特徴付けているディスパーションよりも、本発明によるこのディスパーションがさらにより微細であること(小塊の平均サイズが約1μmから2μmの間)が観察される。
【実施例2】
【0043】
図1の第1の実施形態に従い導入される、単一のポリマーを含有するポリアミド相A、ならびに、この相Aと相Bとの間の相溶化系C(変更なし)として3種の上記化合物C1、C2およびC3を使用して、第2の熱可塑性加硫物TPV2を本発明の方法に従い調製した。さらに、押出機の出口で得られた顆粒を、数時間および100℃から150℃の間の温度での熱処理に供した。
【0044】
【表3】

【0045】
このTPV2の上記特性を測定し、以下の表4において、ポリアミド系の(すなわちこのTPV2の熱可塑性相と同様の熱可塑性相を含む)Multibase社製「1180」TPSiVの特性と比較した。
【0046】
【表4】

【0047】
同等の硬度において、本発明によるTPV2の機械的特性は、ガラス転移温度を除いて、同様のポリアミド相をベースとするこの既知のTPSiVに対して測定された機械的特性と同様であることに留意されたい。実際に、このTPV2は、十分に相溶化された均一混合物に特徴的なただ1つのTgを有し、一方このTPSiVは、2つの非常に異なるTg値を有し、これは2相混合物を示しており、したがってTPV2よりも効果的でない相溶化を示している。
【0048】
実際に、図5および6からの画像において示されるように、このTPV2は、熱可塑性相A(明色)およびシリコーンエラストマーB(暗色)が共連続的である(相Aが、1μm未満の平均サイズを有する層Bの小塊を含有する)ような形態を有し、図5において、このディスパーションが、明らかに極めて分離しておりあまり相溶化されていない相AおよびBを有する「1180」対照TPSiVに対して図6において観察されるディスパーションよりもはるかに良好であることが観察され得る。
【符号の説明】
【0049】
1 供給ホッパ
2 押出機
A 熱可塑性相
B1 第1の成分
B2 第2の成分
C1 グラフトされたポリオレフィン
C2 H−シロキサン
C3 可塑剤
D 強化充填剤

【特許請求の範囲】
【請求項1】
−少なくとも1種の熱可塑性ポリマーをベースとする第1の相(A)と、
−ヒドロシリル化により架橋された少なくとも1種の2成分(B1およびB2)液体シリコーンエラストマーをベースとする第2の相(B)と、
−これらの相を互いに相溶化するための系(C)と
を含む、熱可塑性エラストマー加硫物であって、前記系は、
−グラフトされたポリオレフィン、ポリ(ビニル芳香族/共役ジエン/メチルメタクリレート)ブロックを含有するターポリマー、ポリ(メチルメタクリレート/アルキルアクリレート/メチルメタクリレート)ブロックを含有するターポリマー、エチレン/アルキル(メタ)アクリレート/アクリル酸ターポリマー、およびエチレン/(メタ)アクリレート/グリシジル(メタ)アクリレートターポリマー等の少なくとも1種のグリシジルエステルから得られるポリマーからなる群から選択される、少なくとも1種のポリマー(C1)と、
−SiH官能基(複数可)を有するポリ有機シロキサン(C2)と
を含むこと、ならびに、前記エラストマーは、ディスパーション中連続的である少なくとも第2の相との反応押出により得られる、前記第1および第2の相の均一なディスパーションを形成することを特徴とする、熱可塑性エラストマー加硫物。
【請求項2】
前記第1の相(A)が、前記連続的な第2の相(B)中に分散した小塊で形成された不連続相であること、または、第1および第2の相が、前記混合物中で、一方が他方に含有された、およびその逆の小塊の形態で共連続的であり、これらの小塊は、両方の場合において、10μm未満、好ましくは50nmから5μmの間の平均サイズを有することを特徴とする、請求項1に記載の熱可塑性エラストマー加硫物。
【請求項3】
前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーと、前記成分(B1およびB2)の化学量論的割合に対して過剰に存在し、その鎖末端に、またはその鎖に沿って一価または多価SiH官能基を有する前記ポリ有機シロキサン(C2)との反応押出による反応の生成物を含み、このポリ有機シロキサンは、この反応により、前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーにグラフトされることを特徴とする、請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー加硫物。
【請求項4】
前記系に含まれる前記ポリマー(C1)が、オレフィンのホモポリマーおよびコポリマー、ならびに少なくとも1種のオレフィンと少なくとも1種の非オレフィンコモノマーとのコポリマーからなる群から、好ましくは、ポリプロピレン等のα−オレフィンのホモポリマー、およびエチレンとアミドとのコポリマーからなる群から選択される前記グラフトされたポリオレフィンを含むこと、ならびに、好ましくは、前記ポリオレフィンが、無水マレイン酸によりグラフトされることを特徴とする、請求項1から3の一項に記載の熱可塑性エラストマー加硫物。
【請求項5】
1%から30%の範囲の重量分率の前記相溶化系(C)を含み、前記系は(熱可塑性ポリマー(複数可)および液体シリコーンエラストマー(複数可)の100部当たりの質量部で):
−0.1質量部から10質量部の範囲の量の前記ポリマー(C1)と、
−0.1質量部から2質量部の範囲の量のSiH官能基(複数可)を有する前記ポリ有機シロキサン(C2)と、必要に応じて、
−0質量部から20質量部の範囲の量の、例えばパラフィン油、エステル、ホスフェートまたはスルホンアミド型の可塑剤等の可塑剤(C3)と
を含むことを特徴とする、請求項1から4の一項に記載の熱可塑性エラストマー加硫物。
【請求項6】
20%から80%の範囲の重量分率の前記少なくとも1種の熱可塑性ポリマーを含み、この熱可塑性ポリマーは、オレフィンのホモポリマーおよびコポリマー、ポリアミド、ポリイミド(PI)、ポリフタルアミド(PPA)、ポリエーテルイミド(PEI)、ポリアミド−イミド(PAI)、熱可塑性エラストマー(TPE)、ならびにこれらのブレンドからなる群から、好ましくは、アイソタクチックポリプロピレン、プロピレンのコポリマー、高密度ポリエチレン、低密度ポリエチレン、コポリエステル(COPE)、ポリエーテルブロックアミド(PEBA)、PA−6ポリアミド、PA−4,6ポリアミド、PA−6,6ポリアミド、PA−11ポリアミド、PA−12ポリアミド、熱可塑性ポリウレタン(TPU)およびこれらのブレンドからなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から5の一項に記載の熱可塑性エラストマー加硫物。
【請求項7】
1%から30%の範囲の重量分率で、前記第1の相(A)および/または前記第2の相(B)を強化するための強化充填剤(D)をさらに含み、この強化充填剤は、疎水性焼成シリカ、二酸化チタンおよびタルク等の無機充填剤、カーボンブラックおよびグラファイト等の有機充填剤、ならびにこれらの混合物からなる群から選択されることを特徴とする、請求項1から6の一項に記載の熱可塑性エラストマー加硫物。
【請求項8】
20%から80%の範囲の重量分率の前記少なくとも1種の液体シリコーンエラストマー(B)を含み、この液体シリコーンエラストマーは、
−ジオルガノポリシロキサン、強化シリカおよび白金系ヒドロシリル化触媒の混合物を含む第1の成分(B1)と、
−ジオルガノポリシロキサン、有機ハイドライドシリコーン化合物、強化シリカおよび阻害剤を含む、第2の成分(B2)と
を含むことを特徴とする、請求項1から7の一項に記載の熱可塑性エラストマー加硫物。
【請求項9】
同じ熱可塑性ポリマー(複数可)をベースとし、シリコーンエラストマーがこの(これらの)熱可塑性ポリマー(複数可)中に分散した不連続相を形成する熱可塑性シリコーンエラストマー加硫物(TPSiV)の引張強度、引裂強度および圧縮永久歪と比較して、改善された引張強度、引裂強度および圧縮永久歪を有する顆粒で形成されることを特徴とする、請求項2から8の一項に記載の熱可塑性エラストマー加硫物。
【請求項10】
請求項1から9の一項に記載の熱可塑性エラストマー加硫物を調製するための方法であって、前記第1および第2の相(AおよびB)ならびに前記相溶化系(C)を含む混合物の、二軸押出機(2)への少なくとも1回の通過により行われる反応押出を含むことを特徴とする方法。
【請求項11】
前記第2の相(B)の前に、前記押出機に、
−前記第1の相(A)と、
−好ましくは蠕動ポンプを用いて、前記相溶化系(C)と、
−前記第1の相および/または前記第2の相を強化するための強化充填剤(D)と
が導入されることを特徴とする、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
プレミックスを得、次いでそれを必要に応じて前記系の残りの部分(C3)と反応させ、次いで前記第2の相(B)と反応させるために、前記押出機(2)の供給ゾーン(1)に:
−前記第1の相(A)と、
−前記相溶化系(C)の全てまたは一部と、
−前記第1の相および/または前記第2の相を強化するための強化充填剤(D)と
が同時に導入されることを特徴とする、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記第2の相(B)が、前記押出機(2)のディスパーションゾーンへの、
−ジオルガノポリシロキサン、強化シリカおよび白金系ヒドロシリル化触媒の混合物を含む、この第2の相の第1の成分(B1)、次いで
−ジオルガノポリシロキサン、有機ハイドライドシリコーン化合物、強化シリカおよび阻害剤を含む、この第2の相の第2の成分(B2)の射出により、前記第1の相(A)と混合されることを特徴とする、請求項10から12の一項に記載の方法。
【請求項14】
前記第1および第2の相(AおよびB)が、前記押出機(2)のディスパーションゾーン内で、前記熱可塑性ポリマーの融点、または熱可塑性ポリマーの最も高い融点より少なくとも20℃高い温度で、および10−1を超える、好ましくは10−1以上のディスパーションゾーン内のブレンドのせん断速度で混合されることを特徴とする、請求項10から13の一項に記載の方法。
【請求項15】
前記押出機(2)の出口で得られた顆粒で形成されるブレンドが、引張強度、引裂強度および圧縮永久歪等の、このブレンドの機械的特性を改善するために、例えば数時間、100℃から150℃の間の温度で熱処理に供されることを特徴とする、請求項10から14の一項に記載の方法。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate


【公開番号】特開2011−225875(P2011−225875A)
【公開日】平成23年11月10日(2011.11.10)
【国際特許分類】
【外国語出願】
【出願番号】特願2011−91842(P2011−91842)
【出願日】平成23年4月18日(2011.4.18)
【出願人】(591136931)
【氏名又は名称原語表記】HUTCHINSON
【Fターム(参考)】