説明

熱可塑性エラストマー組成物の製造方法

【課題】ポリアミド樹脂中にハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムを分散充填した熱可塑性エラストマー組成物において、前記ゴムの微細分散および高充填率を保ちつつポリアミド樹脂の流動性を保つことを課題とする。
【解決手段】連続相がポリアミド樹脂(A)からなり、分散相がハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)からなる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、ポリアミド樹脂(A)100質量部とポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)0.01質量部超、3質量部未満を、ポリアミド樹脂(A)の融点以上で反応混練して、ポリアミド樹脂を変性し、次いで変性したポリアミド樹脂とゴム(B)を反応混練するとともに、ゴム(B)を動的架橋させることを特徴とする。得られた熱可塑性エラストマー組成物は空気入りタイヤのインナーライナーに好適に用いられる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリアミド樹脂とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムとからなる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関する。特に、本発明は、ポリアミド樹脂の低温耐久性(繰り返し疲労性)を改善するために、ポリアミド樹脂連続相中にハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムを分散させた熱可塑性エラストマー組成物の製造方法に関する。本発明は、また、その製造方法により得られる熱可塑性エラストマー組成物をインナーライナーに用いた空気入りタイヤに関する。
【背景技術】
【0002】
特定の熱可塑性樹脂連続相中に特定のゴムエラストマー成分を不連続相として分散させてなる、耐空気透過性と柔軟性とのバランスに優れた熱可塑性エラストマー組成物は知られている(特許文献1)。
【0003】
また、熱可塑性エラストマー組成物における熱可塑性樹脂成分の溶融粘度(η)とゴムエラストマー成分の溶融粘度(η)およびゴムエラストマー成分と熱可塑性樹脂成分の溶解性パラメーターの差(ΔSP)を特定の関係式を満たすようにすることで高エラストマー成分比率を達成し、それによって一層柔軟性に富み、耐気体透過性に優れた熱可塑性エラストマー組成物が得られること、そしてそれを気体透過防止層に使用した空気入りタイヤも知られている(特許文献2)。
【0004】
さらに、熱可塑性樹脂を連続相としゴム組成物を分散相とする熱可塑性エラストマー中に、偏平状に分散してなる相構造を有するバリア樹脂組成物を存在させることで、耐ガス透過性が大巾に向上して、しかも柔軟性、耐油性、耐寒性および耐熱性を有するような熱可塑性エラストマー組成物も知られている(特許文献3)。
【0005】
さらに、層状粘土鉱物で変性したポリアミド樹脂中に動的に架橋されたハロゲン化イソオレフィン/パラアルキルスチレン共重合体が分散した熱可塑性エラストマー組成物も知られている(特許文献4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開平8−259741号公報
【特許文献2】特開平10−25375号公報
【特許文献3】特開平10−114840号公報
【特許文献4】特開2000−160024号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
ポリアミド樹脂とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムの動的架橋熱可塑性エラストマー組成物において、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムが微細分散するほど、また高体積率充填するほど、耐久性が向上することが分かっている。しかし、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムとポリアミド樹脂は直接反応するため、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムが微細分散するほど、高体積率充填するほど、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムとポリアミド樹脂の反応が増加し、ポリアミド樹脂の溶融時の流動性を損ない、フィルム製膜性が大幅に悪化する問題があった。これを両立する手法として、ポリアミド樹脂用可塑剤の配合があるが、可塑剤はポリアミド樹脂のバリア性を悪化させる欠点があった。
本発明は、ポリアミド樹脂連続相中にハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムを分散充填した熱可塑性エラストマー組成物の製造方法において、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムの微細分散、高充填率を保ちつつポリアミド樹脂の流動性を保ち、少ない可塑剤量でハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合体を多量配合することが可能となる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、連続相がポリアミド樹脂(A)からなり、分散相がハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)からなる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、ポリアミド樹脂(A)100質量部とポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)0.01質量部超、3質量部未満を、ポリアミド樹脂(A)の融点以上で溶融混練して、ポリアミド樹脂を変性し、次いで変性した変性ポリアミド樹脂とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)を反応混練するとともに、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)を動的架橋させることを特徴とする。
【0009】
本発明において、ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)は、好ましくは、単官能エポキシ化合物である。
また、本発明において、ポリアミド樹脂(A)は、好ましくは、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン6/12、ナイロン6/10、ナイロン4/6、ナイロン6/66/12、および芳香族ナイロンからなる群から選択される少なくとも1種である。
【0010】
また、本発明において、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)は、好ましくは、臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムである。
また、本発明において、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)の量は、好ましくは、ポリアミド樹脂(A)とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)の合計量100質量部に対して55〜70質量部である。
【0011】
本発明の製造方法は、好ましくは、さらに可塑剤(D)を配合することを含み、可塑剤(D)の量がポリアミド樹脂(A)と可塑剤(D)の合計量100質量部に対して5〜15質量部である。
また、本発明において、可塑剤(D)は、好ましくは、ブチルベンゼンスルホンアミドである。
【0012】
本発明は、また、前記製造方法により得られる熱可塑性エラストマー組成物をインナーライナーに用いた空気入りタイヤである。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、ポリアミド樹脂(A)とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)の動的架橋熱可塑性エラストマー組成物の製造方法において、ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)をポリアミド樹脂(A)に溶融混練することにより、ポリアミド樹脂を変性し、ポリアミド樹脂とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムの反応を抑制し、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムの微細分散、高充填率を保ちつつポリアミド樹脂の流動性を保ち、ポリアミド樹脂用可塑剤を減量しながらハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムを多量配合することができる。
また、本発明の製造方法により得られる熱可塑性エラストマー組成物をインナーライナーに用いた空気入りタイヤは、低温疲労耐久性に優れる。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、次の2つの工程を含む。
(1)ポリアミド樹脂(A)100質量部とポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)0.01質量部超、3質量部未満を、ポリアミド樹脂(A)の融点以上で溶融混練して、ポリアミド樹脂を変性する工程。
(2)変性したポリアミド樹脂とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合体(B)を反応混練するとともに、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)を動的架橋させる工程。
第二の工程は第一の工程の後に行なう。
【0015】
第一の工程は、ポリアミド樹脂(A)100質量部とポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)0.01質量部超、3質量部未満を、ポリアミド樹脂(A)の融点以上で溶融混練する工程である。この工程において、ポリアミド樹脂(A)は変性される。ここで、変性とは、ポリアミド樹脂の末端アミノ基が減少または消滅することをいう。
【0016】
第一の工程に用いられるポリアミド樹脂(A)は、限定するものではないが、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン6/12、ナイロン6/10、ナイロン4/6、ナイロン6/66/12、または芳香族ナイロンが単独でまたは混合物として使用できる。なかでも、ナイロン6およびナイロン6/66が耐疲労性とガスバリア性の両立という点で好ましい。
【0017】
ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)としては、単官能エポキシ化合物、イソシアネート基含有化合物、酸無水物基含有化合物、ハロゲン化アルキル基含有化合物などが挙げられるが、ポリアミド樹脂の末端アミノ基との反応性という観点で、好ましくは、単官能エポキシ化合物である。
【0018】
単官能エポキシ化合物としては、エチレンオキシド、エポキシプロパン、1,2−エポキシブタン、2,3−エポキシブタン、3−メチル−1,2−エポキシブタン、1,2−エポキシペンタン、4−メチル−1,2−エポキシペンタン、2,3−エポキシペンタン、3−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−1,2−エポキシペンタン、4−メチル−2,3−エポキシペンタン、3−エチル−1,2−エポキシペンタン、1,2−エポキシヘキサン、2,3−エポキシヘキサン、3,4−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、3−エチル−1,2−エポキシヘキサン、3−プロピル−1,2−エポキシヘキサン、4−エチル−1,2−エポキシヘキサン、5−メチル−1,2−エポキシヘキサン、4−メチル−2,3−エポキシヘキサン、4−エチル−2,3−エポキシヘキサン、2−メチル−3,4−エポキシヘキサン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘキサン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘキサン、3−メチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−1,2−エポキシヘプタン、5−メチル−1,2−エポキシへプタン、6−メチル−1,2−エポキシヘプタン、3−エチル−1,2−エポキシヘプタン、3−プロピル−1,2−エポキシヘプタン、3−ブチル−1,2−エポキシヘプタン、4−プロピル−2,3−エポキシヘプタン、5−エチル−1,2−エポキシへプタン、4−メチル−2,3−エポキシヘプタン、4−エチル−2,3−エポキシへプタン、4−プロピル−2,3−エポキシヘプタン、2−メチル−3,4−エポキシヘプタン、5−メチル−3,4−エポキシヘプタン、6−エチル−3,4−エポキシヘプタン、2,5−ジメチル−3,4−エポキシヘプタン、2−メチル−5−エチル−3,4−エポキシへプタン、1,2−エポキシヘプタン、2,3−エポキシヘプタン、3,4−エポキシへプタン、1,2−エポキシオクタン、2,3−エポキシオクタン、3,4−エポキシオクタン、4,5−エポキシオクタン、1,2−エポキシノナン、2,3−エポキシノナン、3,4−エポキシノナン、4,5−エポキシノナン、1,2−エポキシデカン、2,3−エポキシデカン、3,4−エポキシデカン、4,5−エポキシデカン、5,6−エポキシデカン、1,2−エポキシウンデカン、2,3−エポキシウンデカン、3,4−エポキシウンデカン、5,6−エポキシウンデカン、1,2−エポキシドデカン、2,3−エポキシドデカン、3,4−エポキシドデカン、4,5−エポキシドデカン、5,6−エポキシドデカン、6,7−エポキシドデカン、エポキシエチルベンゼン、1−フェニル−1,2−エポキシプロパン、3−フェニル−1,2−エポキシプロパン、1−フェニル−1,2−エポキシブタン、3−フェニル−1,2−エポキシブタン、4−フェニル−1,2−エポキシブタン、3−フェニル−1,2−エポキシペンタン、4−フェニル−1,2−エポキシペンタン、5−フェニル−1,2−エポキシペンタン、1−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、3−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、4−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、5−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、6−フェニル−1,2−エポキシヘキサン、グリシドール、3,4−エポキシ−1−ブタノール、4,5−エポキシ−1−ペンタノール、5,6−エポキシ−1−ヘキサノール、6,7−エポキシ−1−ヘプタノール、7,8−エポキシ−1−オクタノール、8,9−エポキシ−1−ノナノール、9,10−エポキシ−1−デカノール、10,11−エポキシ−1−ウンデカノール、3,4−エポキシ−2−ブタノール、2,3−エポキシ−1−ブタノール、3,4−エポキシ−2−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ペンタノール、1,2−エポキシ−3−ペンタノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ペンタノール、2,3−エポキシ−1−ヘキサノール、3,4−エポキシ−2−ヘキサノール、4,5−エポキシ−3−ヘキサノール、1,2−エポキシ−3−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−エチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジメチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4,4−ジエチル−1−ヘキサノール、2,3−エポキシ−4−メチル−1−ヘキサノ−ル、3,4−エポキシ−5−メチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−5,5−ジメチル−2−ヘキサノール、3,4−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−へプタノール、4,5−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−4−ヘプタノール、1,2−エポキシ−3−ヘプタノール、2,3−エポキシ−1−オクタノール、3,4−エポキシ−3−オクタノール、4,5−エポキシ−3−オクタノール、5,6−エポキシ−4−オクタノール、2,3−エポキシ−4−オクタノール、1,2−エポキシ−3−オクタノール、2,3−エポキシ−1−ノナノール、3,4−エポキシ−2−ノナノール、4,5−エポキシ−3−ノナノール、5,6−エポキシ−5−ノナノ−ル、3,4−エポキシ−5−ノナノール、2,3−エポキシ−4−ノナノール、1,2−エポキシ−3−ノナノール、2,3−エポキシ−1−デカノール、3,4−エポキシ−2−デカノール、4,5−エポキシ−3−デカノール、5,6−エポキシ−4−デカノール、6,7−エポキシ−5−デカノール、3,4−エポキシ−5−デカノール、2,3−エポキシ−4−デカノール、1,2−エポキシ−3−デカノール、1,2−エポキシシクロペンタン、1,2−エポキシシクロヘキサン、1,2−エポキシシクロヘプタン、1,2−エポキシシクロオクタン、1,2−エポキシシクロノナン、1,2−エポキシシクロデカン、1,2−エポキシシクロドデカン、3,4−エポキシシクロペンテン、3,4−エポキシシクロヘキセン、3,4−エポキシシクロヘプテン、3,4−エポキシシクロオクテン、3,4−エポキシシクロノネン、1,2−エポキシシクロデセン、1,2−エポキシシクロウンデカン、1,2−エポキシシクロドデセン、1−ブトキシ−2,3−エポキシプロパン、1−アリルオキシ−2,3−エポキシプロパン、ポリエチレングリコールブチルグリシジルエーテル、2−エチルへキシルグリシジルエーテル、フェニルグリシジルエーテル、p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル等が挙げられ、ポリアミド樹脂の相溶性の観点から、炭素数が3〜20、好ましくは3〜13であり、エーテルおよび/または水酸基を有するエポキシ化合物が特に好ましい。
【0019】
ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)を溶融混練する方法は、特に限定されないが、たとえば、ポリアミド樹脂(A)とポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)を二軸混練機に投入し、ポリアミド樹脂(A)の融点以上、好ましくは融点より20℃以上高い温度で、たとえば180〜300℃で溶融混練する。溶融混練する時間は、たとえば、1〜10分、好ましくは1〜5分である。
【0020】
ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)として単官能エポキシ化合物を溶融混練した場合は、ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基に次式(1)で表される単官能エポキシ化合物
【0021】
【化1】

【0022】
が結合し、たとえば末端アミノ基は次式(2)のように変化する。
【0023】
【化2】

【0024】
この反応により、ポリアミド樹脂(A)の末端アミノ基は減少または消滅するので、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)を高充填しても流動性を維持し、フィルム製膜が可能になる。
【0025】
ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)の量は、ポリアミド樹脂(A)100質量部に対して0.01質量部超、3質量部未満であり、好ましくは0.05質量部以上、2質量部以下であり、より好ましくは0.1質量部以上、1質量部以下である。ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)の量が少なすぎると、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)を高充填した際の流動性改善効果が小さいため好ましくない。逆に、多すぎると、ポリアミド樹脂の低温耐久性(繰り返し疲労性)を悪化させるので好ましくない。
【0026】
第二の工程は、変性したポリアミド樹脂とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)を反応混練するとともに、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)を動的架橋させる工程である。反応混練は、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)がポリアミド樹脂(A)中に分散するまで行なう。この工程において、連続相がポリアミド樹脂(A)からなり、分散相がハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合体(B)からなる組成物が得られる。
【0027】
第二の工程に用いられるハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)は、イソオレフィンとパラアルキルスチレンの共重合体をハロゲン化することにより製造することができ、ハロゲン化イソオレフィンとパラアルキルスチレンの混合比、重合率、平均分子量、重合形態(ブロック共重合体、ランダム共重合体等)、粘度、ハロゲン原子等は、特に限定されず、熱可塑性エラストマー組成物に要求される物性等に応じて任意に選択することができる。ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)を構成するイソオレフィンとしては、イソブチレン、イソペンテン、イソヘキセン等が例示できるが、好ましくはイソブチレンである。ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)を構成するパラアルキルスチレンはパラメチルスチレン、パラエチルスチレン、パラプロピルスチレン、パラブチルスチレン等が例示できるが、好ましくはパラメチルスチレンである。ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)を構成するハロゲンとしては、フッ素、塩素、臭素、ヨウ素が例示できるが、好ましくは臭素である。特に好ましいハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムはパラメチルスチレンポリイソブチレン共重合ゴムである。
臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムは、式(3)で表される繰り返し単位
【0028】
【化3】

【0029】
を有するイソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムを臭素化したものであり、典型的には式(4)で表される繰り返し単位
【0030】
【化4】

【0031】
を有するものである。臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムは、エクソンモービル・ケミカル社(ExxonMobil Chemical Company)から、Exxpro(登録商標)の商品名で入手することができる。
【0032】
第二の工程において、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)を動的架橋させる。動的架橋させるためには、第二の工程の直前にまたは第二の工程中に架橋剤を加える。好ましくは、架橋剤は、ポリアミド樹脂(A)中にハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)が分散したところで加える。動的架橋することにより、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)の分散状態を固定することができる。動的架橋をしないと、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)の再凝集が起こりやすくなり、微分散を維持できなくなって、熱可塑性エラストマー組成物の耐久性が低下する。
【0033】
第二の工程は、たとえば、二軸混練機を用いて行なうことができる。二軸混練機の設定温度は、ポリアミド樹脂の融点以上の温度、好ましくはポリアミド樹脂の融点より20℃高い温度、たとえば180〜300℃である。反応混練の時間は、通常、1〜10分、好ましくは1〜5分である。
【0034】
第二の工程に用いられる架橋剤としては、亜鉛華、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、酸化マグネシウム、m−フェニレンビスマレイミド、アルキルフェノール樹脂およびそのハロゲン化物、第二級アミンなどが挙げられる。架橋剤として使われる第二級アミンとしては、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン、重合した2,2,4-トリメチル−1,2−ジヒドロキノリンなどが挙げられる。なかでも亜鉛華、ステアリン酸、ステアリン酸亜鉛、N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミンが、架橋剤として好ましく使用できる。
【0035】
架橋剤の量は、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)100質量部に対して4〜12質量部が好ましく、より好ましくは6〜9質量部である。架橋剤の量が少なすぎると、動的架橋が不足し、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)の微分散を維持できず、熱可塑性エラストマー組成物の耐久性が低下する。逆に、架橋剤の量が多すぎると、混練、加工中にスコーチしたり、フィルム成形で異物を生じる原因となる。
【0036】
本発明の製造方法により得られる熱可塑性エラストマー組成物は、ポリアミド樹脂(A)が連続相を形成し、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)が分散相を形成している。このような相構造は、ポリアミド樹脂(A)とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)の配合比率および粘度を適宜選択することにより得ることができる。理論上は、ポリアミド樹脂(A)の配合比率が多いほど、ポリアミド樹脂(A)の粘度が小さいほど、ポリアミド樹脂(A)が連続相を形成しやすい。
【0037】
熱可塑性エラストマー組成物中のハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)の量は、ポリアミド樹脂(A)とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)の合計量100質量部に対して55〜70質量部であることが好ましく、より好ましくは57〜68質量部である。ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)の比率が少なすぎると、低温耐久性に劣り、逆に多すぎると、溶融時の流動性が極端に低下し、フィルム製膜性が大幅に悪化する。
【0038】
本発明の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法は、さらに、可塑剤(D)を配合することを含むことが好ましい。可塑剤は、ゴムおよび樹脂に可塑性を与えて、その他の配合剤の混入・分散を助け、さらに押し出しなどの成形作業を容易にし、かつ未加硫ゴムの粘着性を増して成形をしやすくする。可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジオクチルフタレート、ジオクチルアジペート、ジブチルグリコールアジペート、ジブチルカルビトールアジペート、ジオクチルセバケート、トリクレジルホスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシジエチルホスフェート、ブチルベンゼンスルホンアミドなどが使用できるが、なかでもブチルベンゼンスルホンアミドが好ましい。可塑剤(D)の量は、ポリアミド樹脂(A)と可塑剤(D)の合計量100質量部に対して5〜15質量部であることが好ましく、より好ましくは5〜10質量部である。可塑剤の量が少なすぎると可塑剤添加の効果が得られず、一方、多すぎると、ナイロンのバリア性を低下させる上、粘度を低下させてゴム分散が粗大化し、耐久性が低下する。
【0039】
可塑剤(D)の添加の時期は、特に限定されないが、好ましくは、第一の工程に先立ってポリアミド樹脂(A)にあらかじめ可塑剤(D)を添加し混練しておくか、または第一の工程において可塑剤(D)を添加することが好ましい。可塑剤(D)の配合は、たとえば、二軸混練機を用いて、変性ポリアミド樹脂(A)の融点以上の温度で溶融混練することによって行なうことができる。溶融混練の温度は、変性ポリアミド樹脂の融点以上の温度であるが、好ましくは変性ポリアミド樹脂の融点より20℃高い温度、たとえば180〜300℃である。溶融混練の時間は、通常、1〜10分、好ましくは1〜5分である。
【0040】
本発明の製造方法は、第一の工程および第二の工程を必須の工程として含むが、それ以外の工程を含んでもよい。第一の工程の前に、第一の工程と第二の工程の間に、または第二の工程の後に、他の工程を含んでもよい。たとえば、第一の工程の前に、可塑剤(D)とポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)を混合する工程を含んでもよいし、第二の工程の後に、老化防止剤を添加し混練する工程を含んでもよい。
【0041】
本発明の製造方法のさらに具体的な例としては、たとえば、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)をゴムペレタイザーにてペレット状に加工し、一方、可塑剤(D)とポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)を混ぜ合わせ、ポリアミド樹脂(A)と二軸混練機で設定温度220〜250℃で1〜10分間混練して、ポリアミド樹脂(A)を変性する。次に、変性したポリアミド樹脂とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)のペレットを設定温度220〜250℃の二軸混練機に投入し、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)が分散したところで架橋剤を投入してハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合体(B)を動的架橋し、最後に老化防止剤を加える。
【0042】
本発明の方法により製造する熱可塑性エラストマー組成物には、前記した成分に加えて、カーボンブラックやシリカなどのその他の補強剤(フィラー)、加硫または架橋剤、加硫又は架橋促進剤、可塑剤、各種オイル、老化防止剤などの樹脂およびゴム組成物用に一般的に配合されている各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0043】
本発明の製造方法により得られた熱可塑性エラストマー組成物は、T型ダイス付きの押出機や、インフレーション成形機などでフィルムとすることができる。そのフィルムは、ガスバリア性、耐熱性、疲労耐久性に優れるため、空気入りタイヤのインナーライナーとして好適に使用することができる。
【0044】
また、本発明の製造方法により得られる熱可塑性エラストマー組成物のフィルムは、ジエン成分を含むゴム組成物シートと積層して、積層体とすることができる。本発明の製造方法により得られた熱可塑性エラストマー組成物のフィルムとジエン成分を含むゴム組成物のシートとの積層体に用いられるジエン成分を含むゴム組成物を構成するゴムとしては、天然ゴム、乳化重合スチレンブタジエンゴム、溶液重合スチレンブタジエンゴム、高シス−ブタジエンゴム、低シス−ブタジエンゴム、イソプレンゴム、アクリロニトリル・ブタジエンゴム、水素化ニトリルゴム、ブチルゴム、ハロゲン化ブチルゴム、クロロプレンゴムが挙げられるが、なかでもハロゲン化ブチルゴムが、本発明の製造方法により得られた熱可塑性エラストマー組成物のフィルムと、熱をかけることにより直接接着するという点で、好ましい。好ましくは、ゴム組成物中のポリマー成分のうち、ハロゲン化ブチルゴムが30〜100質量%である。ハロゲン化ブチルゴムの含有量が少ないと、本発明の製造方法により得られた熱可塑性エラストマー組成物のフィルムと、熱により直接に接着できず、接着剤等を介して接着する必要があるため好ましくない。
また、ジエン成分を含むゴム組成物には、前記した成分に加えて、カーボンブラックやシリ力などのその他の補強剤(フィラー)、加硫または架橋剤、加硫又は架橋促進剤、可塑剤、各種オイル、老化防止剤などの樹脂およびゴム組成物用に一般に配合されている各種添加剤を配合することができる。これらの添加剤の配合量は本発明の目的に反しない限り、従来の一般的な配合量とすることができる。
【0045】
本発明の空気入りタイヤは、前記製造方法により得られる熱可塑性エラストマー組成物をインナーライナーに用いた空気入りタイヤである。より具体的には、前記熱可塑性エラストマー組成物のフィルムまたは前記積層体をインナーライナーに用いた空気入りタイヤである。タイヤを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。たとえば、前記熱可塑性エラストマー組成物を所定の幅と厚さのフィルム状に押し出し、それをインナーライナーとしてタイヤ成形用ドラム上に円筒に貼りつける。その上に未加硫ゴムからなるカーカス層、ベルト層、トレッド層等の通常のタイヤ製造に用いられる部材を順次貼り重ね、ドラムから抜き取ってグリーンタイヤとする。次いで、このグリーンタイヤを常法に従って加熱加硫することにより、所望の空気入りタイヤを製造することができる。
【0046】
本発明の製造方法により得られた熱可塑性エラストマー組成物は、ホースを製造するためにも用いることができる。本発明の製造方法により得られた熱可塑性エラストマー組成物を用いてホースを製造する方法としては、慣用の方法を用いることができる。たとえば、次のようにしてホースを製造することができる。まず、本発明の製造方法により得られた熱可塑性エラストマー組成物のペレットを使用し、マンドレル上に、樹脂押出機によりクロスヘッド押出方式で、熱可塑性エラストマー組成物を押し出し、内管を形成する。さらに内管上に他の本発明の製造方法により得られた熱可塑性エラストマー組成物または一般の熱可塑性ゴム組成物を押し出し内管外層を形成してもよい。次に、内管上に必要に応じ、接着剤を塗布、スプレー等により施す。さらに、内管上に、編組機を使用して、補強糸または補強鋼線を編組する。必要に応じ補強層上に、外管との接着のために接着剤を塗布した後、本発明の製造方法により得られた熱可塑性エラストマー組成物または他の一般的な熱可塑性ゴム組成物と同様にクロスヘッドの樹脂用押出機により押し出し、外管を形成する。最後にマンドレルを引き抜くと、ホースが得られる。内管上、または補強層上に塗布する接着剤としては、イソシアネート系、ウレタン系、フェノール樹脂系、レゾルシン系、塩化ゴム系、HRH系等が挙げられるが、イソシアネート系、ウレタン系が特に好ましい。
【実施例】
【0047】
以下の実施例において用いた原料は、次のとおりである。
【0048】
ポリアミド樹脂(A)として、次の3種類を用いた。
ナイロン6/66: 宇部興産株式会社製「UBEナイロン」5033B
ナイロン6: 宇部興産株式会社製「UBEナイロン」1030B
ナイロン11: ARKEMA社製リルサンBESNOTL
【0049】
ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)として、エクソンモービル・ケミカル社(ExxonMobil Chemical Company)製臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムExxpro(登録商標)MDX89−4(以下「Br−IPMS」と略す。)を用いた。
【0050】
ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)として、次の3種類を用いた。
グリシドール: 日油株式会社製エピオール(登録商標)OH
p−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル: 日油株式会社製エピオール(登録商標)SB(以下「BPGE」と略す。)
2−エチルヘキシルグリシジルエーテル: 日油株式会社製エピオール(登録商標)EH(以下「EHGE」と略す。)
【0051】
可塑剤(D)として次のものを用いた。
n−ブチルベンゼンスルホンアミド: 大八化学工業株式会社製BM−4(以下「BBSA」と略す。)
【0052】
架橋剤として、次の3種類を用いた。
亜鉛華: 正同化学工業株式会社製酸化亜鉛3種
ステアリン酸: 日油株式会社製ビーズステアリン酸
ステアリン酸亜鉛:正同化学工業株式会社製
【0053】
老化防止剤として、次のものを用いた。
N−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン: フレキシス社(Flexsys)製サントフレックス(SANTOFLEX)6PPD(以下「6PPD」と略す。)を用いた。なお、6PPDは、架橋剤としても機能するので、老化防止剤兼架橋剤である。
【0054】
実施例1
ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムをゴムペレタイザー(森山製作所製)にてペレット状に加工した。n−ブチルベンゼンスルホンアミド15質量部とグリシドール0.06質量部を混ぜ合わせ、ナイロン6/66 55質量部と二軸混練機(日本製鋼所製)で設定温度230℃で約3分間混練して、変性したポリアミド樹脂と可塑剤の混合物を作製した。次にハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムのペレット100質量部と前記混合物を設定温度230℃の二軸混練機(日本製鋼所製)に投入し、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムが分散したところで、亜鉛華5質量部、ステアリン酸0.6質量部およびステアリン酸亜鉛0.3質量部を投入し、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムを動的架橋し、最後にN−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン1.5質量部を加えて熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。作製した熱可塑性エラストマー組成物のペレットはT−ダイ成形機にて厚さ1mmおよび0.1mmのシート状に成形し、物性測定に用いた。
【0055】
実施例2
実施例1において、ナイロン6/66 55質量部を、ナイロン6/66 24質量部とナイロン6 18質量部とナイロン11 18質量部の混合物に変更し、グリシドール0.06質量部をp−sec−ブチルフェニルグリシジルエーテル0.3質量部に変更し、n−ブチルベンゼンスルホンアミドの配合量を10質量部に変更した以外は、実施例1と同様に熱可塑性エラストマー組成物を作製し、シート状に成形し、物性測定に用いた。
【0056】
実施例3
実施例1において、ナイロン6/66の配合量を60質量部に変更し、グリシドール0.06質量部を2−エチルヘキシルグリシジルエーテル0.6質量部に変更し、n−ブチルベンゼンスルホンアミドの配合量を7質量部に変更した以外は、実施例1と同様に熱可塑性エラストマー組成物を作製し、シート状に成形し、物性測定に用いた。
【0057】
比較例1
ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムをゴムペレタイザー(森山製作所製)にてペレット状に加工した。ナイロン6/66 60質量部とn−ブチルベンゼンスルホンアミド7質量部を二軸混練機(日本製鋼所製)で設定温度230℃で約3分間混練してポリアミド樹脂と可塑剤の混合物を作製した。次にハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムのペレット100質量部と前記混合物を設定温度230℃の二軸混練機(日本製鋼所製)に投入し、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムが分散したところで、亜鉛華5質量部、ステアリン酸0.6質量部およびステアリン酸亜鉛0.3質量部を投入し、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムを動的架橋した。最後にN−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン1.5質量部を加えて熱可塑性エラストマー組成物のペレットを得た。
ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)を加えなかったため、ポリアミド樹脂とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムの反応が進行し続け、ポリアミド樹脂の流動性が低下したことから相反転し、物性測定用に加工することができなかった。
【0058】
比較例2
ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムをゴムペレタイザー(森山製作所製)にてペレット状に加工した。ナイロン6/66 55質量部とn−ブチルベンゼンスルホンアミド6質量部を二軸混練機(日本製鋼所製)で設定温度230℃で約3分間混練してポリアミド樹脂と可塑剤の混合物を作製した。次に、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムのペレット100質量部、前記混合物、およびグリシドール1質量部を設定温度230℃の二軸混練機(日本製鋼所製)に投入し、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴムが分散したところで、亜鉛華5質量部、ステアリン酸0.6質量部、ステアリン酸亜鉛0.3質量部およびN−(1,3−ジメチルブチル)−N′−フェニル−p−フェニレンジアミン1.5質量部を投入して動的架橋を行った。
混練物は相構造が安定していないためペレット状に加工できなかった。
【0059】
得られた熱可塑性エラストマー組成物について、スコーチタイム、疲労耐久性および通気度を、次の方法により測定した。
【0060】
[スコーチタイム]
キャピラリーレオメーター(東洋精機製)内にサンプルを詰めて230℃で一定時間保持し、その後剪断速度300sec−1で押出した時の外観を観察し、肌が平滑でなくなる時間をスコーチタイムとした。保持時間は5分刻みで30分まで測定した。スコーチタイムは熱安定性の指標であり、長いほど好ましい。
【0061】
[疲労耐久性]
シート状に加工したサンプルからJIS#3ダンベルを打抜き、定ひずみ疲労試験機(上島製作所製)で−25℃、ひずみ率40%で100万回まで繰返し疲労を与えた。測定はn=12で行い、破断回数をワイブルプロットして破断確率63%の点を疲労耐久性とした。破断回数が大きいほど、疲労耐久性が優れる。
【0062】
[通気度]
JIS K7126「プラスチックフィルムおよびシートの気体透過度試験方法(A法)」に準じた。試験気体は空気(窒素:酸素が80:20)で、30℃で測定を実施した。通気度は小さいほど好ましい。
【0063】
測定結果を表1に示す。
【0064】
【表1】

【0065】
本発明の製造方法(実施例1〜3)により得られた熱可塑性エラストマー組成物は、スコーチタイムが充分に長く、疲労耐久性および通気度に優れていた。一方、ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)を添加しなかった比較例1は、ポリアミド樹脂の流動性が低下したことから相反転し、物性測定用に加工することができなかった。ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)をポリアミド樹脂に反応させず、ゴムと同時に混練した比較例2は、混練物の相構造が安定していないためペレット状に加工できなかった。
【産業上の利用可能性】
【0066】
本発明の製造方法により得られる熱可塑性エラストマー組成物は、空気入りタイヤのインナーライナーとして好適に用いることができる。また、本発明の製造方法により得られる熱可塑性エラストマー組成物は、空気入りタイヤのほか、ホース、防舷材、ゴム袋、燃料タンク等、気体バリア性を必要とするゴム積層体のバリア材として有用である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
連続相がポリアミド樹脂(A)からなり、分散相がハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)からなる熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、ポリアミド樹脂(A)100質量部とポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)0.01質量部超、3質量部未満を、ポリアミド樹脂(A)の融点以上で溶融混練して、ポリアミド樹脂を変性し、次いで変性したポリアミド樹脂とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)を反応混練するとともに、ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)を動的架橋させることを特徴とする熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項2】
ポリアミド樹脂の末端アミノ基と結合し得る化合物(C)が単官能エポキシ化合物であることを特徴とする請求項1に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項3】
ポリアミド樹脂(A)が、ナイロン11、ナイロン12、ナイロン6、ナイロン66、ナイロン6/66、ナイロン6/12、ナイロン6/10、ナイロン4/6、ナイロン6/66/12、および芳香族ナイロンからなる群から選択される少なくとも1種であることを特徴とする請求項1または2に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項4】
ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)が臭素化イソブチレンパラメチルスチレン共重合ゴムであることを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項5】
ハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)の量がポリアミド樹脂(A)とハロゲン化イソオレフィンパラアルキルスチレン共重合ゴム(B)の合計量100質量部に対して55〜70質量部であることを特徴とする請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項6】
さらに可塑剤(D)を配合することを含む請求項1〜5のいずれか1項に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法であって、可塑剤(D)の量がポリアミド樹脂(A)と可塑剤(D)の合計量100質量部に対して5〜15質量部であることを特徴とする方法。
【請求項7】
可塑剤(D)がブチルベンゼンスルホンアミドであることを特徴とする請求項6に記載の熱可塑性エラストマー組成物の製造方法。
【請求項8】
請求項1〜7のいずれか1項に記載の製造方法により得られる熱可塑性エラストマー組成物をインナーライナーに用いた空気入りタイヤ。

【公開番号】特開2010−215724(P2010−215724A)
【公開日】平成22年9月30日(2010.9.30)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−61836(P2009−61836)
【出願日】平成21年3月13日(2009.3.13)
【出願人】(000006714)横浜ゴム株式会社 (4,905)
【Fターム(参考)】