説明

熱可塑性ポリウレタンマトリックス中に架橋極性オレフィンポリマーを含む熱可塑性ポリマーブレンド

熱可塑性ポリウレタンマトリックスを含む第1の相と架橋極性オレフィンポリマーを含む第2の相とを含むポリマーブレンドを提供する。第1の相は、連続相であり、第2の相は、第1の相と共連続であってもよく、又は第1の相中に不連続相として分散されていてもよい。第1の相は、金属水酸化物難燃剤及び有機難燃剤をさらに含む。第2の相は、シランカップリング剤を介してオレフィンポリマーに結合している金属水酸化物をさらに含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、連続熱可塑性ポリウレタンマトリックス中に架橋極性オレフィンポリマーを含む不連続又は共連続相を含む熱可塑性ブレンドに関し、さらに前記ブレンドから製造される物品及び前記熱可塑性ブレンドの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性ポリウレタン(TPU)ベースのハロゲンフリー難燃剤(HFFR)製品パッケージが、ハロゲン含有製品に代えて、パーソナル電子機器用の電線絶縁/ケーブル外被に使用されている。TPUベースの製品は、卓越した難燃性能及び機械的性質を提供できる。さらに、TPUベースの難燃ポリマーは、熱変形試験(UL−1581)の要件を満たすことができる。しかし、この製品ファミリーについての重要な欠点として、高コスト、絶縁抵抗(IR)破損、不十分な煤煙濃度及び高い物質密度などがある。
【発明の概要】
【0003】
本発明の一態様は、熱可塑性ポリウレタン、金属水酸化物及び少なくとも1種の有機難燃剤を含む連続相と、連続相に分散されているか又は連続相と共連続である、架橋極性オレフィンポリマー及び金属水酸化物を含む分散相又は共連続相とを含むポリマーブレンドであって、極性オレフィンポリマーが、シランカップリング剤を介して金属水酸化物に結合しているポリマーブレンドを提供する。いくつかの実施形態において、極性オレフィンポリマーは、エチレンビニルアセテートポリマーである。いくつかの実施形態において、連続相は、エポキシ化ノボラック樹脂をさらに含む。いくつかの実施形態において、金属水酸化物は、連続相及び分散相又は共連続相中に均一に分散されている。いくつかの実施形態において、架橋極性オレフィンポリマーは、過酸化物架橋極性オレフィンポリマーである。
【0004】
ブレンドは、例えば、ブレンドのポリマー成分の総重量に基づき、40から80重量パーセントの熱可塑性ポリウレタン、ブレンドのポリマー成分の総重量に基づき、20から60重量パーセントの極性オレフィンポリマー、及びブレンドの総重量に基づき、40から60重量パーセントの金属水酸化物を含むことができる。
【0005】
ブレンドを含む被覆ケーブル及び電線を含む物品も提供する。
【0006】
本発明の別の態様は、熱可塑性ポリウレタンポリマー、金属水酸化物、及び有機難燃剤を混合して第1の樹脂組成物を形成するステップと、極性オレフィンポリマー、前記金属水酸化物、シランカップリング剤及び過酸化物架橋剤を、極性オレフィンポリマーの融点を上回るが過酸化物カップリング剤の分解温度を下回る温度において混合して第2の樹脂組成物を形成するステップと、過酸化物架橋剤が分解して極性オレフィンポリマーを架橋する温度において、第1の樹脂組成物及び第2の樹脂組成物を連続的に混合しながら配合して、熱可塑性ポリウレタン及び金属水酸化物を含む連続相中に、架橋極性オレフィンポリマー及び金属水酸化物を含む分散相又は共連続相を形成するステップとを含む、ポリマーブレンドの製造方法を提供する。
【0007】
本方法のいくつかの実施形態において、極性オレフィンポリマーは、エチレンビニルアセテートポリマーであり、過酸化物架橋剤は、少なくとも140℃の分解温度を有する。いくつかの実施形態において、本方法は、エポキシ化ノボラック樹脂を第1の樹脂組成物に添加するステップをさらに含む。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】実施例12、14及び15の配合プロセスから得られたトルク曲線を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明の一態様は、熱可塑性ポリウレタンマトリックスを含む第1の相及び架橋極性オレフィンポリマーを含む第2の相を含むポリマーブレンドを提供する。第1の相は、連続相であり、第2の相は、第1の相と共連続であってもよいし、又は第1の相中に不連続相として分散されていてもよい。第1の相は、金属水酸化物難燃剤及び有機難燃剤をさらに含む。第2の相は、シランカップリング剤を介してオレフィンポリマーに結合している金属水酸化物をさらに含む。ブレンドは、組成物と称することもでき、「組成物」、「ブレンド」などの用語は、2種以上の成分の混合物又はブレンドを意味する。
【0010】
ポリマーブレンドは、耐熱変形性、難燃性並びに良好な破断点引張強さ及び破断点伸びの1つ又は複数を示す。TPUと比較したポリマーブレンドの他の有利な特徴には、より良い費用対効果、より低い総物質密度、煤煙濃度の減少、改善された絶縁抵抗、及び改善された材料加工性などがある。
【0011】
ポリマーブレンドは、電線絶縁及び外被、ACプラグ及びSRコンバーターコネクター、並びに腕時計バンド、ハンドル、グリップ、ソフトタッチ部品及びボタン、自動車用途、ウェザーストリッピング、グラスランチャンネル、インテリアパネル、ボディシーラント、ガスケット、ウィンドウシーラント及び押出異形材を含む種々の他の物品に用途を見出している。
【0012】
本開示を通して使用される用語「ポリマー」は、同じタイプ又は異なるタイプに関わらず、モノマーを重合することによって調製されるポリマー化合物を意味する。したがって、ポリマーという総称は、1種類のみのモノマーから調製されるポリマーを意味するために通常使用されるホモポリマーという用語、及び共重合体という用語を包含する。それは、同様に、全ての形態の共重合体、例えば、ランダム共重合体、ブロック共重合体、均一共重合体、不均一共重合体などを包含する。
【0013】
連続相
本ブレンドの連続相は、少なくとも1種の熱可塑性ポリウレタン、少なくとも1種の金属水酸化物難燃剤及び少なくとも1種の有機難燃剤を含む。
【0014】
熱可塑性ポリウレタン:
本明細書で使用される「熱可塑性ポリウレタン」(又は「TPU」)は、ジ−イソシアネート、1種又は複数のポリマージオール、及び任意選択で1種又は複数の二官能性連鎖延長剤の反応生成物を意味する。TPUは、プレポリマー、準プレポリマー、又はワンショット法によって調製できる。ジ−イソシアネートは、TPU中にハードセグメントを形成し、芳香族、脂肪族、及び脂環式ジ−イソシアネート並びにこれらの化合物の2種以上の組合せであることができる。ジ−イソシアネート(OCN−R−NCO)から誘導される構造単位の非限定的な例を、以下の式(I):
【0015】
【化1】

(式中、Rは、アルキレン、シクロアルキレン、又はアリレン基である)
で表す。これらのジイソシアネートの代表的な例は、米国特許第4,385,133号,4,522,975号及び5,167,899号に見出すことができる。好適なジイソシアネートの非限定的な例には、4,4’−ジ−イソシアナトジフェニル−メタン、p−フェニレンジ−イソシアネート、1,3−ビス(イソシアナトメチル)−シクロヘキサン、1,4−ジ−イソシアナト−シクロヘキサン、ヘキサメチレンジ−イソシアネート、1,5−ナフタレンジ−イソシアネート、3,3’−ジメチル−4,4’−ビフェニルジ−イソシアネート、4,4’−ジ−イソシアナト−ジシクロヘキシルメタン、及び2,4−トルエンジ−イソシアネートが含まれる。
【0016】
ポリマージオールは、得られるTPU中にソフトセグメントを形成する。ポリマージオールは、例えば、200から10,000g/モルまでの範囲の分子量(数平均)を有することができる。2種以上のポリマージオールを使用することができる。好適なポリマージオールの非限定的な例には、ポリエーテルジオール(「ポリエーテルTPU」を生成する);ポリエステルジオール(「ポリエステルTPU」を生成する);ヒドロキシ末端ポリカーボネート(「ポリカーボネートTPU」を生成する);ヒドロキシ末端ポリブタジエン;ヒドロキシ末端ポリブタジエン−アクリロニトリルコポリマー;ジアルキルシロキサン及びエチレンオキシド、プロピレンオキシドなどのアルキレンオキシドのヒドロキシ末端コポリマー;天然油ジオール、及びそれらの任意の組合せが含まれる。1種又は複数の前記ポリマージオールを、アミン末端ポリエーテル及び/又はアミノ末端ポリブタジエン−アクリロニトリルコポリマーと混合できる。
【0017】
二官能性連鎖延長剤は、鎖中に2から10個までの炭素原子を有する脂肪族直鎖及び分枝鎖ジオールであることができる。このようなジオールの実例となるのは、エチレングリコール、1,3−プロパンジオール、1,4−ブタンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコールなど;1,4−シクロヘキサンジメタノール;ヒドロキノンビス−(ヒドロキシエチル)エーテル;シクロヘキシレンジオール(1,4−、1,3−、及び1,2−異性体)、イソプロピリデンビス(シクロヘキサノール);ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、エタノールアミン、N−メチル−ジエタノールアミンなど;及び上記のいずれかの混合物である。前述のように、場合によっては、二官能性連鎖延長剤の少量部分(約20当量パーセント未満)が、得られるTPUの熱可塑性を損なうことなく三官能性連鎖延長剤で置換されていてよく、このような連鎖延長剤の実例となるのは、グリセロール、トリメチロールプロパンなどである。
【0018】
連鎖延長剤は、特定の反応体成分の選択、目的とするハード及びソフトセグメントの量、並びに弾性率及び引裂強さなどの良好な機械的性質を提供するのに十分な指標によって決定される量で、ポリウレタン中に組み入れる。ポリウレタン組成物は、例えば、2から25重量%まで、好ましくは3から20重量%まで、より好ましくは4から18重量%までの連鎖延長剤成分を含有することができる。
【0019】
任意選択で、「連鎖停止剤」としばしば称される少量のモノヒドロキシル官能性又はモノアミノ官能性化合物を、分子量の制御に使用できる。このような連鎖停止剤の実例となるのは、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、及びヘキサノールである。使用される場合、連鎖停止剤は、一般的に、ポリウレタン組成物をもたらす反応混合物全体の0.1から2重量パーセントの少量で存在する。
【0020】
ポリマージオールの前記連鎖延長剤に対する当量比は、TPU製品の所望の硬さに応じて著しく変化し得る。一般的に言えば、当量比は、約1:1から約1:20まで、好ましくは約1:2から約1:10までのそれぞれの範囲に含まれる。同時に、イソシアネートの当量の活性水素含有物質の当量に対する全体比は、0.90:1から1.10:1まで、好ましくは0.95:1から1.05:1までの範囲に含まれる。
【0021】
好適なTPUの非限定的な例には、Lubrizol Corporationから全て市販されているPELLETHANE(商標)、ESTANE(商標)、TECOFLEX(商標)、TECOPHILIC(商標)、TECOTHANE(商標)、及びTECOPLAST(商標)熱可塑性ポリウレタン;BASFから市販されているELASTOLLAN(商標)熱可塑性ポリウレタン及び他の熱可塑性ポリウレタン;並びにBayer、Huntsman、Merquinsa及び他の供給業者から市販されている追加の熱可塑性ポリウレタン材料が含まれる。
【0022】
本発明の実施において使用する相溶化ブレンドのポリウレタン成分は、上述のように2種以上のTPUの組合せを含有できる。
【0023】
TPUは、一般的に、ブレンド中のTPU及びオレフィンポリマーの重量に基づき、20から95重量%までの範囲の量で使用する。これには、TPUが、ブレンド中のTPU及びオレフィンポリマーの重量に基づき、40から70重量%までの範囲の量で使用する実施形態が含まれる。
【0024】
金属水酸化物:
本組成物中の金属水酸化物は、組成物に難燃性を付与する。好適な例には、それだけには限らないが、三水酸化アルミニウム(ATH又は三水和アルミナとしても知られている)及び水酸化マグネシウム(二水酸化マグネシウムとしても知られている)が含まれる。他の例には、水酸化カルシウム、塩基性炭酸カルシウム、塩基性炭酸マグネシウム、ヒドロタルサイト、ハンタイト、及びヒドロマグネサイトが含まれる。金属水酸化物は、天然であっても又は合成であってもよい。
【0025】
金属水酸化物は、一般的に、ポリマーブレンドの総重量に基づき、少なくとも25重量%の量で使用する。これには、金属水酸化物を、ポリマーブレンドの総重量に基づき、30から70重量%の量で使用する実施形態が含まれ、さらに、金属水酸化物を、ポリマーブレンドの総重量に基づき、40から60重量%の量で使用する実施形態が含まれる。これには、以下に記載される分散相又は共連続相中の任意の金属水酸化物が含まれる。
【0026】
有機難燃剤:
ブレンドの第1の相は、少なくとも1種の有機難燃剤をさらに含む。難燃剤及びその中にそれらが組み入れられるブレンドは、望ましくはハロゲンフリーである。「ハロゲンフリー」などの用語は、ポリマーブレンドが、ハロゲン分を含まない又は実質的に含まない、即ち、イオンクロマトグラフィー(IC)又は類似の分析方法によって測定した場合に2000mg/kg未満のハロゲンしか含有しないことを意味する。この量を下回るハロゲン分は、例えば、電線又はケーブル被覆としてのブレンドの有効性に重要ではないと考えられる。
【0027】
有機難燃剤には、有機リン酸塩が含まれる。有機難燃剤の特定の例には、リン又は窒素ベースの難燃剤が含まれる。有機難燃剤は、膨張性難燃剤であってもよい。「膨張性難燃剤」は、火炎加熱の間に、ポリマー材料の表面に形成される発泡性炭化物を生じる難燃剤である。本発明の実施に使用できるリンベース及び窒素ベース膨張性難燃剤には、それだけには限らないが、有機ホスホン酸、ホスホン酸塩、ホスフィン酸塩、亜ホスホン酸塩、亜ホスフィン酸塩、酸化ホスフィン、ホスフィン、亜リン酸塩又はリン酸塩、リンエステルアミド、リン酸アミド、ホスホン酸アミド、ホスフィン酸アミド、並びにメラミン及びメラミンポリリン酸塩、メラミンピロリン酸塩及びメラミンシアヌール酸塩を含むメラミン誘導体、さらにこれらの物質の2種以上の混合物が含まれる。例には、フェニルビスドデシルホスフェート、フェニルビスネオペンチルホスフェート、リン酸水素フェニルエチレン、フェニル−ビス−3,5,5’−トリメチルヘキシルホスフェート)、エチルジフェニルホスフェート、2−エチルヘキシルジ(p−トリル)ホスフェート、リン酸水素ジフェニル、ビス(2−エチル−ヘキシル)p−トリルホスフェート、トリトリルホスフェート、ビス(2−エチルヘキシル)−フェニルホスフェート、トリ(ノニルフェニル)ホスフェート、リン酸水素フェニルメチル、ジ(ドデシル)p−トリルホスフェート、トリクレシルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリフェニルホスフェート、ジブチルフェニルホスフェート、2−クロロエチルジフェニルホスフェート、p−トリルビス(2,5,5’−トリメチルヘキシル)ホスフェート、2−エチルヘキシルジフェニルホスフェート、及びリン酸水素ジフェニルが含まれる。米国特許第6,404,971号に記載されているタイプのリン酸エステルは、リンベースの難燃剤の例である。ポリリン酸アンモニウムは、別の例である。ポリリン酸アンモニウムは、メラミン誘導体などの難燃剤共添加剤と共にしばしば使用される。ヒドロキシル供給源などの追加の共添加剤も、膨張性難燃剤の炭化物形成メカニズムに役立てるために含むことができる。Budenheim及びAdekaは、Budenheim Budit(商標)3167(ポリリン酸アンモニウム及び共添加剤に基づく)及びAdeka FP−2100J(ポリリン酸ピペラジン及び共添加剤に基づく)などの膨張性材料ブレンドを販売している。
【0028】
レゾルシノールジフォスフェート及びビスフェノールAポリホスフェートは、本ポリマーブレンドにおける使用に好適な有機難燃剤の2つの例である。
【0029】
有機難燃剤は、一般的に、ポリマーブレンドの重量に基づき、5から20重量%までの範囲の量で使用する。これには、有機難燃剤が、ポリマーブレンドの重量に基づき、12から15重量%までの範囲の量で存在する実施形態が含まれる。
【0030】
エポキシ化ノボラック樹脂:
本ブレンドの第1の相は、任意選択で、燃焼中に滴下を防止又は最小化するために1種又は複数の炭化物形成剤を含むことができる。例えば、本組成物のいくつかの実施形態は、炭化物形成剤としてエポキシ化ノボラック樹脂を含む。「エポキシ化ノボラック樹脂」は、有機溶媒中におけるエピクロロヒドリンとフェノールノボラックポリマーとの反応生成物である。好適な有機溶媒の非限定的な例には、アセトン、メチルエチルケトン、メチルアミルケトン、及びキシレンが含まれる。エポキシ化ノボラック樹脂は、液体、半固体、固体、及びそれらの組合せであることができる。
【0031】
エポキシ化ノボラック樹脂は、一般的に、ポリマーブレンドの総重量に基づき、0.1から5重量%までの範囲の量で使用される。これには、エポキシ化ノボラック樹脂が、ポリマーブレンドの総重量に基づき、1から3重量%までの範囲の量で使用される実施形態が含まれ、さらに、エポキシ化ノボラック樹脂が、ポリマーブレンドの総重量に基づき、1.5から2.5重量%までの範囲の量で使用される実施形態が含まれる。
【0032】
分散相又は共連続相
本ポリマーブレンドの分散相又は共連続相は、少なくとも1種の架橋極性オレフィンポリマー及びシランカップリング剤を介して極性オレフィンポリマーに結合している少なくとも1種の金属水酸化物難燃剤を含む。
【0033】
極性オレフィンポリマー:
「オレフィンポリマー(olefin polymer)」、「オレフィンポリマー(olefinic polymer)」、「オレフィン共重合体」、「ポリオレフィン」、「オレフィンベースのポリマー」などの用語は、ポリマーの総重量に基づき、大部分の重量パーセントのオレフィン、例えばエチレン又はプロピレンを、重合された形態で含有するポリマーを意味する。熱可塑性ポリオレフィンには、オレフィンホモポリマー及び共重合体の両方が含まれる。「共重合体」は、少なくとも2種の異なるモノマーの重合によって調製されるポリマーを意味する。共重合体は、ランダム共重合体、ブロック共重合体、均一共重合体、不均一共重合体などであり得る。この総称には、2種の異なるモノマーから調製されるポリマーを意味するために通常使用されるコポリマー、及び3種以上の異なるモノマーから調製されるポリマー、例えば、ターポリマー、テトラポリマーなどが含まれる。
【0034】
「極性オレフィンポリマー」は、1つ又は複数の極性基(しばしば極性官能基と呼ばれる)を含有するオレフィンポリマーである。本明細書で使用される「極性基」は、他の本質的に非極性なオレフィン分子に結合双極子モーメントを付与する任意の基である。例示的な極性基には、カルボニル、カルボン酸基、カルボン酸無水物基、カルボン酸エステル基、エポキシ基、スルホニル基、ニトリル基、アミド基、シラン基などが含まれる。これらの基は、グラフト又は共重合のいずれかによってオレフィンベースのポリマー中に導入することができる。極性オレフィンベースのポリマーの非限定的な例には、エチレン/アクリル酸(EAA)、エチレン/メタクリル酸(EMA)、エチレン/アクリレート又はメタクリレート、エチレン/ビニルアセテート(EVA)、ポリ(エチレン−コ−ビニルトリメトキシシラン)コポリマー、マレイン酸無水物− 又はシラングラフトオレフィンポリマー、ポリ(テトラフルオロエチレン−alt−エチレン)(ETFE)、ポリ(テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロ−プロピレン)(FEP)、ポリ(エチレン−コ−テトラフルオロエチレン−コ−ヘキサフルオロプロピレン(EFEP)、ポリ(ビニリデンフルオリド)(PVDF)、ポリ(ビニルフルオリド)(PVF)などが含まれる。好ましい極性オレフィンポリマーは、DuPont ELVAX(商標)エチレンビニルアセテート(EVA)樹脂、The Dow Chemical CompanyからのAMPLIFY(商標)エチレンエチルアクリレート(EEA)コポリマー、The Dow Chemical CompanyからのPRIMACOR(商標)エチレン/アクリル酸コポリマー、及びThe Dow Chemical CompanyからのSI−LINK(商標)ポリ(エチレン−コ−ビニルトリメトキシシラン)コポリマーが含まれる。
【0035】
EVAは、好ましい極性オレフィンポリマーである。これには、EVAと、C〜Cアルキルアクリレート、C〜Cアルキルメタクリレート、アクリル酸及びメタクリル酸から選択される1種又は複数のコモノマーとのコポリマーが含まれる。EVAポリマーは、例えば、10重量%から90重量%までの範囲の酢酸ビニル含有率を有し得る。これには、EVAポリマーが、20重量%から40重量%までの範囲の酢酸ビニル含有率を有する実施形態が含まれる。
【0036】
極性オレフィンポリマーは、典型的には、ポリマーブレンド中のTPU及びオレフィンポリマーの重量に基づき、5から80重量%までの範囲の量で使用される。これには、オレフィンポリマーを、ポリマーブレンド中のTPU及びオレフィンポリマーの重量に基づき、30から60重量%までの範囲の量で使用する実施形態が含まれる。
【0037】
架橋剤:
第2の相のオレフィンポリマーは、架橋剤によって架橋されている。好適な架橋剤には、遊離基開始剤、好ましくは有機過酸化物が含まれる。好適な過酸化物には、芳香族ジアシル過酸化物;脂肪族ジアシル過酸化物;二塩基酸過酸化物ケトン過酸化物アルキルペルオキシ酸エステルアルキルヒドロペルオキシドが含まれる。有用な有機過酸化物の例には、1,1−ジ−t−ブチルペルオキシ−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、ジクミルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ(t−ブチルペルオキシ)ヘキサン、t−ブチル−クミルペルオキシド、ジ−t−ブチルペルオキシド、2,5−ジメチル−2,5−ジ−(t−ブチルペルオキシ)ヘキシン、ジアセチルペルオキシド、ジベンゾイルペルオキシド、ビス−2,4−ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert−ブチルペルベンゾエート、tert−ブチルクミルペルオキシド、4,4,4’,4’−テトラ−(t−ブチルペルオキシ)−2,2−ジシクロヘキシルプロパン、1,4−ビス−(t−ブチルペルオキシイソプロピル)−ベンゼン;ラウロイルペルオキシド、コハク酸ペルオキシド、シクロヘキサノンペルオキシド、t−ブチルペルアセテート;及びブチルヒドロペルオキシドが含まれる。有機過酸化物架橋剤に関する追加の教示は、the Handbook of Polymer Foams and Technology、198〜204頁において得られる。好適な過酸化物架橋剤は、望ましくは、140℃より高い分解温度を有する。
【0038】
架橋剤は、典型的には、ポリマーブレンドの総重量に基づき、0.01から5重量%までの範囲の量で使用する。これには、架橋剤が、ポリマーブレンドの総重量に基づき、0.05から5重量%までの範囲の量で存在する実施形態が含まれ、架橋剤が、0.25から2重量%までの範囲の量で存在する実施形態がさらに含まれる。
【0039】
ポリマーブレンドは任意選択で、架橋剤用の1種又は複数の架橋触媒(架橋促進剤又は架橋活性剤とも呼ばれる)をさらに含むことができる。過酸化物架橋剤用の架橋触媒の例には、トリアリルイソシアヌレート(TAIC)及びトリアリルシアヌレート(TAC)が含まれる。架橋触媒は、典型的には、ポリマーブレンドの重量に基づき、0.01から4重量%までの範囲の量で使用する。
【0040】
金属水酸化物:
第2の相の金属水酸化物は、第1の相の金属水酸化物と同じであってもよい。いくつかの実施形態において、金属水酸化物は、第1の相及び第2の相中に均一に分散されている。
【0041】
シランカップリング剤:
第2の相の金属水酸化物は、シランカップリング剤によって極性オレフィンポリマーに結合している。シランベースのカップリング剤の例には、ビニルトリメトキシエトキシシラン、オリゴマータイプのビニルトリメトキシシラン、及びビニルトリエトキシシランが含まれる。ポリマーブレンドは、一般的に、ポリマーブレンドの総重量に基づき、0.5から5重量%を含む。これには、ブレンドが、ポリマーブレンドの総重量に基づき、1から3重量%のシランカップリング剤を含む実施形態が含まれる。
【0042】
任意選択の添加剤及び充填剤
本発明のポリマーブレンドは、任意選択で、添加剤及び/又は充填剤を含有することもできる。代表的な添加剤には、それだけには限らないが、酸化防止剤、加工助剤、着色剤、紫外線安定剤(紫外線吸収剤を含む)、帯電防止剤、成核剤、スリップ剤、可塑剤、滑剤、粘度調整剤、粘着付与剤、粘着防止剤、界面活性剤、エクステンダー油、酸掃去剤、及び金属不活性化剤が含まれる。これらの添加剤は、典型的には、常法で、例えば、ポリマーブレンドの総重量に基づき、0.01重量%以下から10重量%以上までの常用量で使用する。
【0043】
代表的な充填剤には、それだけには限らないが、種々の金属酸化物、例えば、二酸化チタン;炭酸マグネシウム及び炭酸カルシウムなどの金属炭酸塩;二硫化モリブデン及び硫酸バリウムなどの金属硫化物及び硫酸塩;ホウ酸バリウム、メタホウ酸バリウム、ホウ酸亜鉛及びメタホウ酸亜鉛などの金属ホウ酸塩;アルミニウム無水物などの金属無水物;珪藻土、カオリン及びモンモリロナイトなどの粘土;ハンタイト;セライト;アスベスト;粉砕鉱物;並びにリトポンが含まれる。これらの充填剤は典型的には、常法で、例えば、ブレンドの重量に基づき、5重量%以下から50重量%以上までの常用量で使用する。
【0044】
好適な紫外線安定剤には、ヒンダードアミン系光安定剤(HALS)及び紫外線吸収剤(UVA)添加剤が含まれる。ブレンドに使用できる代表的なHALSには、それだけには限らないが、TINUVIN XT 850、TINUVIN 622、TINUVIN(登録商標)770、TINUVIN(登録商標)144、SANDUVOR(登録商標)PR−31及びChimassorb 119 FLが含まれる。TINUVIN(登録商標)770は、ビス−(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジニル)セバケートであり、約480グラム/モルの分子量を有し、Ciba,Inc.(現在はBASFの一部)より商業的に入手可能であり、2個の第2級アミン基を有する。TINUVIN(登録商標)144は、ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)−2−n−ブチル−2−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)マロネートであり、約685グラム/モルの分子量を有し、第3級アミンを含有し、同様にCiba,Inc.から入手可能である。SANDUVOR(登録商標)PR−31は、プロパン二酸、[(4−メトキシフェニル)−メチレン]−ビス−(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)エステルであり、約529グラム/モルの分子量を有し、第3級アミンを含有し、Clariant Chemicals (India) Ltdから入手可能である。Chimassorb 119 FL又はChimassorb 119は、4−ヒドロキシ−2,2,6,6、−テトラメチル−1−ピペリジンエタノールを含むジメチルスクシネートポリマー10重量%及びN,N’’’−[1,2−エタンジイルビス[[[4,6−ビス[ブチル(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)アミノ]−1,3,5−トライジン(traizin)−2−イル]イミノ]−3,1−プロパンジイル]]ビス[N’N”−ジブチル−N’N’’−ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジニル)]−1 90重量%であり、Ciba,Inc.から商業的に入手可能である。代表的な紫外線吸収剤(UVA)添加剤には、Ciba,Inc.から商業的に入手可能なTinuvin 326及びTinuvin 328などのベンゾトリアゾールタイプが含まれる。HALS及びUVA添加剤のブレンドも有効である。
【0045】
酸化防止剤の例には、それだけには限らないが、テトラキス[メチレン(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシヒドロ−シンナメート)]メタンなどのヒンダードフェノール;ビス[(ベータ−(3,5−ジtert−ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−メチルカルボキシエチル)]スルフィド、4,4’−チオビス(2−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、4,4’−チオビス(2−tert−ブチル−5−メチルフェノール)、2,2’−チオビス(4−メチル−6−tert−ブチルフェノール)、及びチオジエチレンビス(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシ)ヒドロシンナメート;トリス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)亜ホスフィン酸塩及びジ−tert−ブチルフェニル−亜ホスホン酸塩などの亜ホスフィン酸塩及び亜ホスホン酸塩;ジラウリルチオジプロピオネート、ジミリスチルチオジプロピオネート、及びジステアリルチオジプロピオネートなどのチオ化合物;種々のシロキサン;重合された2,2,4−トリメチル−1,2−ジヒドロキノリン、n,n’−ビス(1,4−ジメチルペンチル−p−フェニレンジアミン)、アルキル化ジフェニルアミン、4,4’−ビス(アルファ、アルファ−ジメチルベンジル)ジフェニルアミン、ジフェニル−p−フェニレンジアミン、混合ジ−アリール−p−フェニレンジアミン、及び他のヒンダードアミン劣化防止剤又は安定剤が含まれる。
【0046】
加工助剤の例には、それだけには限らないが、ステアリン酸亜鉛又はステアリン酸カルシウムなどのカルボン酸の金属塩;ステアリン酸、オレイン酸、又はエルカ酸などの脂肪酸;ステアルアミド、オレアミド、エルカミド、又はN,N’−エチレンビス−ステアルアミドなどの脂肪酸アミド;ポリエチレンワックス;酸化ポリエチレンワックス;酸化エチレンのポリマー;酸化エチレン及び酸化プロピレンのコポリマー;植物ワックス;石油ワックス;非イオン性界面活性剤;シリコーン油及びポリシロキサンが含まれる。
ブレンドの性質:
【0047】
熱変形:
ポリマーブレンドのいくつかの実施形態で被覆された電線は、一般的に、UL 1581−2001による150℃における熱変形率が50%未満である。いくつかの実施形態において、被覆電線は、UL 1581による150℃及び350グラム荷重(3.5±0.2N)における測定で40パーセント以下、40パーセント以下、30パーセント以下、又は20パーセント以下の熱変形を示す。
【0048】
難燃性:
ブレンドのいくつかの実施形態で被覆された電線は、UL VW−1難燃性等級(flame rating)に合格する。「VW−1」は、電線及び絶縁チューブ用の保険業者研究所(Underwriters’ Laboratory)(UL)の難燃性等級である。それは、「垂直電線、クラス1(Vertical Wire、Class 1)」を意味し、これは、UL 1441規格下で電線又は絶縁チューブに与えることができる最高の難燃性等級である。上記試験は、電線又は絶縁チューブを垂直位置に置くことによって実施される。火炎が、その下に一定時間固定され、次いで取り外される。次に、絶縁チューブの特徴を記録する。VW−1燃焼試験は、UL−1581の1080法に従って測定される。
【0049】
破断時の引張強さ及び伸び:
本ポリマーブレンドは、それらの破断点引張強さ(MPaで表される)及び破断点伸び(%)によって特徴付けることができる。
【0050】
引張強さ及び伸びは、ASTM D4703に従って調製された圧縮成形サンプルに対して、ASTM D−638試験手順に従って測定できる。破断点伸び(elongation at break又はelongation to break)は、それが破断する時のサンプルの歪みである。それは、通常、パーセントで表される。
【0051】
本ポリマーブレンドのいくつかの実施形態は、少なくとも8MPaの破断点引張強さを有する。これには、少なくとも10MPaの破断点引張強さを有するポリマーブレンドが含まれ、少なくとも12MPaの破断点引張強さを有するポリマーブレンドがさらに含まれる。
【0052】
本ポリマーブレンドのいくつかの実施形態は、少なくとも150%の破断点伸びを有する。これには、少なくとも160%の破断点伸びを有するポリマーブレンドが含まれ、少なくとも180%の破断点伸びを有するポリマーブレンドがさらに含まれ、少なくとも200%の破断点伸びを有するポリマーブレンドがさらにまた含まれる。
【0053】
配合:
本発明の別の態様は、熱可塑性ポリウレタンマトリックスを含む第1の相と架橋極性オレフィンポリマーを含む第2の相とを含むポリマーブレンドの製造方法を提供する。ポリマーブレンドは、オレフィンポリマーを架橋して熱可塑性ポリウレタンマトリックス中に共連続又は不連続相を形成することによって製造できる。動的加硫の間に、加硫可能な極性オレフィンポリマーを、樹脂状の熱可塑性ポリウレタン中に分散し、ポリマーブレンドを連続的に混合及び剪断しながら架橋剤の存在下でオレフィンポリマーを架橋する。オレフィンポリマーの架橋の間に、オレフィンポリマー相の粘度は増加し、ブレンドの粘度比を増加させる。剪断応力によって、オレフィンポリマー相は、熱可塑性ポリウレタンマトリックス中に分散粒子を形成する。あるいは、オレフィンポリマー相の架橋密度が十分に高くない場合には、オレフィンポリマー相は、熱可塑性ポリウレタン相と共連続であり続けることができる。
【0054】
本方法の一実施形態は、熱可塑性ポリウレタンポリマー、金属水酸化物、有機難燃剤、及び任意選択でエポキシ化ノボラック樹脂を混合して第1の樹脂組成物を形成するステップと、極性オレフィンポリマー、金属水酸化物、シランカップリング剤及び架橋剤を、極性オレフィンポリマーの融点を上回るが過酸化物架橋剤の分解温度を下回る温度で混合して、第2の樹脂組成物を形成するステップとを含む。混合は、段階的に又は1ステップで行うことができ、通常のタンブリング装置中で実施できる。次いで、第1及び第2の樹脂組成物を、過酸化物が分解して極性オレフィンポリマーを架橋する温度において、連続的に混合しながら配合して、熱可塑性ポリウレタン及び金属水酸化物を含む連続相中に、架橋極性オレフィンポリマー及び金属水酸化物を含む分散又は共連続相を形成できる。本方法は、配合前又は配合中に添加剤及び充填剤を第1及び/又は第2の樹脂組成物中に混合するステップをさらに含むことができる。
【0055】
樹脂組成物及びポリマーブレンドの配合は、標準の配合装置によって行うことができる。配合装置の例は、内部バッチミキサー、例えばBanbury(商標)又はBolling(商標)内部ミキサーである。別法として、連続単軸又は二軸スクリューミキサー、例えば、Farrel(商標)連続ミキサー、Werner and Pfleiderer(商標)二軸スクリューミキサー、又はBuss(商標)連続混練押出機を使用できる。使用する混合機のタイプ、及び混合機の操作条件は、粘度、体積抵抗率、及び押出表面の滑らかさなどの組成物の性質に影響を与える。得られるポリマーブレンドは、望ましくは、成形することができ、電線外被、異形材、シート又はさらなる加工用のペレットなどの物品に造形できる。
【0056】
物品
本発明の別の態様は、本発明の1種又は複数のブレンドを含む成形品又は押出品などの物品を提供する。
【0057】
物品には、ケーブル外被及び電線絶縁が含まれる。したがって、いくつかの実施形態において、物品には、低電圧電気通信シグナルの電送が可能な又は広範囲の送電用途用の「絶縁」電線を提供するための金属導体及び金属導体の被覆が含まれる。本明細書で使用する「金属導体」は、電力及び/又は電気シグナルのいずれかを伝送するために使用される少なくとも1つの金属部材である。金属導体が、中実の断面を有することができるように又は所与の全導体直径に増加した柔軟性を与える、より細い撚り線から優先的に構成できるように、電線及びケーブルの柔軟性が多くの場合、望ましい。ケーブルは、多くの場合、内部コア中に形成される多線式絶縁電線などのいくつかの部材から構成され、次いで保護及び表面外観を提供するケーブルシースシステムによって覆われている。ケーブルシースシステムは、箔又は外装などの金属層を組み込むことができ、典型的には表面にポリマー層を有する。保護/表面ケーブルシースに組み込まれた1つ又は複数のポリマー層は、しばしば、ケーブル「外被(jacketing)」と呼ばれる。いくつかのケーブルについて、シースは、ケーブルコアを覆うポリマー外被層だけである。絶縁及び外被の役割の両方を果たす、導体を覆うポリマーの単層を有するケーブルも存在する。本ポリマーブレンドは、電力ケーブル並びに金属及び光ファイバーの両方の通信用途を含むあらゆる種類の電線及びケーブル製品におけるポリマー構成要素として又はそれらに使用できる。使用には、被覆及び金属導体の間の直接接触及び間接接触の両方が含まれる。「直接接触」は、被覆及び金属導体の間に中間層(複数可)及び/又は中間材料(複数可)が存在せず、被覆が、金属導体に直接接触する構造である。「間接接触」は、中間層(複数可)及び/又は中間材料(複数可)が、金属導体及び被覆の間に位置する構造である。被覆(coating)は、金属導体を全体的又は部分的に、包む(cover)又は別の方法で囲む(surround)又は覆う(encase)ことができる。被覆は、金属導体を覆う唯一の構成要素であることができる。別法として、被覆は、金属導体を覆う1層の多層外被又はシースであることができる。
【0058】
好適な被覆金属導体の非限定的な例には、消費者電子機器用配線、電力ケーブル、携帯電話及び/又はコンピュータ用充電器線、コンピュータデータコード、電源コード、機器内配線用電線、及び消費者電子機器アクセサリーコードが含まれる。
【0059】
本発明のポリマーブレンドを含む絶縁層を含むケーブルは、様々なタイプの押出機、例えば、単軸又は二軸スクリュー式押出機で調製できる。これらのブレンドは、熱可塑性ポリマー押出に適するいずれの装置にも押出能力を有する必要がある。電線及びケーブル製品用に最も一般的な加工装置は、単軸スクリュー可塑化押出機である。従来の単軸スクリュー押出機の記述は、米国特許第4,857,600号に見出すことができる。共押出の一例及び押出機は、したがって、米国特許第5,575,965号に見出すことができる。典型的な押出機は、上流末端にホッパーを有し、下流末端にダイを有する。ポリマーブレンドのグラニュールは、ホッパーを通って、螺旋ねじ山を有するスクリューを収容した押出機バレルに送り込まれる。押出機バレル及びスクリューの長さ対径の比は、典型的に約15:1から約30:1までの範囲にある。下流末端において、スクリューの末端及びダイの間に、典型的にはブレーカープレートで支持された、溶融ポリマーからの大きな微粒子汚染物を濾過するために使用されるスクリーンパックが存在する。押出機のスクリュー部分は、典型的には、固体供給セクション、圧縮又は溶融セクション、及び計量又はポンプセクションの3つのセクションに分割される。ポリマーブレンドのグラニュールは、供給ゾーンを通して圧縮ゾーンに搬送され、ここで、スクリュー溝の深さを減少させて材料を圧縮し、熱可塑性ポリマーは、押出機バレルからの入熱、及びスクリューが生じる摩擦剪断発熱の組合せによって溶かされる。殆どの押出機は、上流から下流にかけてバレル軸に沿って多段バレル加熱ゾーン(3つ以上)を有する。各加熱ゾーンは、典型的には、バレルの長さに沿って温度プロフィールを設定するために別々のヒーター及び加熱制御器を有する。クロスヘッド及びダイアセンブルに追加の加熱ゾーンがあり、ここで、押出機スクリューにより発生した圧力によって、溶融物が流され、典型的には押出機バレルに直角に動く電線及びケーブル製品に成形される。成形後、熱可塑性押出ラインは、典型的には、ポリマーを冷却及び固化して最終電線又はケーブル製品とするための水桶を有し、次いで、この製品を巻き取るための巻き取りリールシステムを有する。電線及びケーブル製作プロセスの多くの変法があり、例えば、バリアミキサー(barrier mixer)又は他のタイプなどの代替タイプのスクリューデザイン、並びに吐出し圧を生ずるためのポリマーギアポンプなどの代替加工装置がある。
【0060】
以下の実施例は、本発明の様々な実施形態を例示する。全ての部及び百分率は、特に指示がない限り、重量による。
【0061】
特定の実施形態
以下の実施例は、本発明による熱可塑性ポリマーブレンドを製造する方法の実施形態を例示する。
【0062】
材料
PELLETHANE(商標)2135−90 AEポリテトラメチレングリコールエーテル熱可塑性ポリウレタン(TPU)(Lubrizol Advanced Materialsから得られる)及びELVAX(商標)265エチレン−ビニル−アセテートコポリマー(DuPont de Nemours & Co、酢酸ビニル(VA)含有率28%)を、これらの実施例に使用する。選択した過酸化物は、90%の純度及び0.877g/cmの密度を有する2,5−ビス(tert−ブチルペルオキシ)−2,5−ジメチルヘキサン(Luperox−101、ALDRICHから得られる)である。97%の純度及び0.971g/cmの密度を有するビニルトリメトキシシラン(VTMS、ARグレード、ALDRICHから得られる)を、受け取った状態でそのまま使用する。VTMSは、液体状態で提供され、140℃における極めて緩慢な分解を特徴とする。L−101過酸化物は、190℃の加工温度において28秒の半減期を有する。レゾルシノールビス(ジフェニルホスフェート)(RDP)は、Fyrolflex(登録商標)RDPのグレード名でSuprestaから得られる。エポキシ化ノボラック樹脂は、The Dow Chemical Companyから得られる、176〜181のエポキシド当量重量(EEW)を有するソルベントフリーDEN 438である。0.2〜0.5g/cmの低嵩密度を有するアルミニウム三水和物(ATH)は、日本のSHOWA Chemicalから得られる。
【0063】
方法
成分の混合及びポリマーブレンドの配合の前に、TPUを、真空下で少なくとも6時間90℃で予備乾燥し、EVAを、真空下で少なくとも6時間40℃で予備乾燥(これは、例えば、周囲条件で行うこともできる)し、金属水酸化物を、真空下で少なくとも8時間90℃で予備乾燥する。必要であるか又は望ましい場合には、乾燥したポリマーは、配合前に完全乾燥条件下で貯蔵できる。
【0064】
乾燥したEVAペレットを、ツインローラーを用いて周囲条件下で20分間、指定量の液体シラン及びビニルシラン中に浸漬する。次いで、浸漬したEVAペレットを、過酸化物架橋剤の著しい分解をもたらすことのない温度でATHと配合する。これによって、極性オレフィンポリマー樹脂組成物が得られる。別法として、極性オレフィンポリマー樹脂組成物の調製を、乾燥したEVAをビニルシラン及び過酸化物と、次いでATHを添加して配合することによって、1ステップで行うことができる。他の配合温度を使用できる。一般的に、温度は、EVAの溶融温度から、過酸化物の分解が顕著になる温度である140℃までの範囲に入るべきである。例えば、配合は、100から120℃までの範囲の温度で行うことができる。
【0065】
乾燥したTPUを、ATH、RDP及びエポキシ化ノボラックと配合してTPU樹脂組成物を得る。必要であるか又は望ましい場合は、樹脂組成物の一方又は両方を、ブレンド前に完全乾燥条件下で貯蔵することができる。これらの例において、TPU、ATH、RDP及びエポキシ化ノボラック樹脂の配合は、160℃から220℃まで(例えば、180℃から200℃まで)の範囲の温度で行う。
【0066】
次いで、TPU樹脂組成物を、過酸化物架橋剤の著しい分解をもたらす温度で極性オレフィンポリマー樹脂組成物とブレンドする。ブレンド時間は、望ましくは、ブレンド温度における過酸化物の半減期(half-decomposition period)の4倍を上回る(例えば、30分以下)。例えば、ブレンドは、6から20分間行うことができる。これらの例において、2つの樹脂組成物の配合は、160℃から220℃まで(例えば、180℃から200℃まで)の範囲の温度で、50から150rpmまで(例えば、60から100rpmまで)の範囲の剪断速度で行う。
【0067】
配合の全てを、密閉混合室において実験室規模のHaake Mixer (Thermo Scientific製のHaake Polylab OS RheoDrive 7)中で行う。
特性決定
【0068】
ポリマーブレンドを、180〜185℃の圧縮機温度で厚さ約1.5mmを有するプラークに圧縮し、次いで、以下に記載した試験操作に使用する。
【0069】
熱変形:熱変形試験を、UL 1581−2001に従って実施する。
【0070】
引張試験:破断点引張強さ及び破断点伸びを、ASTM D638に従って測定する。引張試験を、INSTRON 5565 Tensile Testerで実施する。
【0071】
難燃性:ポリマーブレンドの難燃性を、前述のVW−1規格に従って測定した。本実験において、模擬VW−1試験をUL−94チャンバで行う。試験片は、200×2.7×1.9mmの寸法を有する。試験片を、その下端に50g加重を加えることによって、その長手方向軸が垂直になるようクランプから吊す。ペーパーフラッグ(2×0.5cm)を、電線の上端に置く。炎の根元(flame bottom)(バーナーオラクル(burner oracle)の最高点)とフラッグの下部との距離は18cmである。炎を、連続して45秒間加える。燃焼後時間(AFT)、未炭化電線長さ(UCL)及び未炭化フラッグ面積百分率(未炭化フラッグ)を、燃焼中及び燃焼後に記録する。5又は6個の試験片をサンプル毎に試験する。次の現象のいずれも、「不合格」の等級となる。(1)試験片の下の綿が発火する;(2)フラッグが燃え尽きる;又は(3)炎のついた滴下が観察される。
【0072】
実施例1〜4:TPU、ATH、RDP及びエポキシ化ノボラックを含む樹脂Aの調製
4種のサンプルを、表1に記載した処方に従って調製する。これらの実施例において、TPU及びATHは、90℃において真空下で8時間予備乾燥する。60rpmのローター速度及び180℃の設定温度においてHaake Mixerで配合を行う。一般的に、配合は、ミキサーに全成分を供給後6分間継続する。
【0073】
表1 TPU、ATH、RDP及びエポキシ化ノボラックを含む樹脂Aの調製。表中の百分率は、最終ポリマーブレンド中の全成分の総重量に基づく重量パーセントである。
【0074】
【表1】

【0075】
実施例5〜8:EVA、ATH、ビニルシラン及び過酸化物を含む樹脂Bの調製
4種のサンプルを、表2に記載した処方に従って調製する。これらの実施例において、EVAは、40℃において真空下で8時間予備乾燥する。ATHを、90℃において真空下で8時間予備乾燥する。60rpmのローター速度及び110℃の設定温度においてHaake Mixerで配合を行う。一般的に、配合は、ミキサーに全成分を供給後6分間継続する。
【0076】
表2 EVA、ATH、ビニルシラン及び過酸化物を含む樹脂Bの調製。表中の百分率は、最終ポリマーブレンド中の全成分の総重量に基づく重量パーセントである。
【0077】
【表2】

【0078】
実施例9〜16:様々な重量比における樹脂Aの樹脂Bとの配合及び最終材料特性
実施例9〜15においては、実施例1からの樹脂Aを、180℃の設定温度で、全ての作業について60rpmのローター速度でHaake Mixerで実施例5からの樹脂Bと配合する。一般的に、配合は、樹脂Aと樹脂Bの個別の比に応じて6〜15分間継続する。実施例16においては、実施例1からの樹脂Aではなく、実施例4からの樹脂Aを使用する。
【0079】
関連試験規格に準拠した物性を測定するために、150℃における熱変形、引張及び室内模擬VW−1試験を行う。結果を表3に要約する。試験結果によって示されるように、調製サンプルの難燃性能は、20%もの樹脂Bをポリマーブレンド中に組み入れることによって、ロバストパスからマージナルパスまで変化する。実施例16の結果によって示されるように、樹脂Aからエポキシ化ノボラックを除いた場合、ブレンドは模擬VW−1試験に合格しなかった。全てのサンプルは、8.3MPaより高い引張応力及び平均値に対して150%より高い伸びを示す。
【0080】
表3 様々な重量比における樹脂Aの樹脂Bとの配合及び最終物性
【0081】
【表3】

【0082】
表3の第2行中の百分率は、最終ポリマーブレンド中の樹脂A及び樹脂Bの重量比を示している。表3中の熱変形の結果は、各処方について2個のサンプル試験片から得られる試験結果を平均することによって求める。表3中の用語「標準偏差(Std dev)」は、引っ張り応力及び伸びについての試験結果の標準偏差を示している。合格/総数は、(模擬VW−1試験に合格するサンプルの数)対(試験サンプルの総数)を示している。
【0083】
トルク曲線を、実施例12、14及び15の配合プロセスから得る(図1中でそれぞれ曲線1、2及び3として示す)。過酸化物の存在下でのEVAの動的架橋は、トルクの初期増加及び架橋されたEVAのTPUマトリックス中への分散を示すその後のトルクの減少によって示される。
【0084】
実施例17〜23:様々なATH及び過酸化物の添加における樹脂Aの樹脂Bとの配合並びに最終物性
表4のデータは、ポリマーブレンド中の樹脂A及び樹脂Bの両方において過酸化物及びATHの添加量を変える影響を示している。樹脂Aにおける又は樹脂BにおけるATHの添加量を増加することは、サンプルの難燃性能に好都合である。しかし、樹脂A中のATHの添加量を40%から45%に増加することは、表中の実施例18及び21の結果によって示されるように、引っ張り応力及び伸びの両方を低下する傾向がある。対照的に、樹脂BにおけるATH及び過酸化物の添加量を55%又は57%に増加することは、実施例19又は20によって示されるように、引っ張り応力及び伸びの両方の増加に好都合であると考えられる。さらに、実施例22及び23からの結果は、樹脂A中のRDPの添加量を増加することは、調製サンプルのFR性能を改善することを示している。
【0085】
表4 様々なATH及び過酸化物添加量における樹脂Aの樹脂Bとの配合並びに最終ポリマーブレンドの性質
【0086】
【表4】

【0087】
表4中の百分率は、最終ポリマーブレンド中の樹脂A及び樹脂Bの重量比を示している。熱変形結果は、各処方について2個のサンプル試験片から得られる試験結果を平均することによって求める。表4中の用語「標準偏差(Std dev)」は、引っ張り応力及び伸びについての試験結果の標準偏差を示している。合格/総数は、(模擬VW−1試験に合格するサンプルの数)対(試験サンプルの総数)を示している。これらの実施例について、配合ステップに使用するHaake Mixerは、100rpmに固定されたローター速度を有する。
【0088】
比較例1:ベースポリマーとしてTPUを使用する組成物
TPUベースのハロゲンフリー難燃組成物を、比較のために調製する。この比較例の処方を、表5に示す(比較例1)。配合の条件は、実施例の場合と同じである。
【0089】
模擬VW−1試験を実施する際には滴下及び溶融滴下(melt-sag)が一般的に観察され、一方で、自己消火作用がこのサンプルについては明らかである。
【0090】
表5 ベースポリマーとしてTPU及びTPU/非架橋EVAを使用する比較ポリマーブレンド
【0091】
【表5】

【0092】
表5において、百分率は、最終ポリマーブレンドにおける各成分の重量パーセントを、そのポリマーブレンドの総重量に基づいて示している。熱変形の結果は、各処方について2個のサンプル試験片から得られる試験結果を平均することによって求める。表5中の用語「標準偏差(Std dev)」は、引っ張り応力及び伸びについての試験結果の標準偏差を示している。合格/総数は、(模擬VW−1試験に合格するサンプルの数)対(試験サンプルの総数)を示している。
【0093】
比較例2〜3:ベースポリマーとしてTPU/非架橋EVAを使用する組成物
EVAが架橋されていないTPU/EVAをベースとするハロゲンフリー難燃組成物を、比較のために調製する。処方を表5に示す(比較例2及び3)。配合の条件は、実施例の場合と同じである。これらの比較例においては、予備乾燥したEVAペレットをTPUペレットと一緒に添加する。
【0094】
150℃における熱変形試験の結果は、EVAをTPUマトリックス中に添加する場合、変形率は受け入れがたいことを示している。さらに、模擬VW−1試験を実施する際に、滴下及び溶融滴下が2種の比較サンプルについて同様に観察される。
【0095】
上記に示されたように、実施例の大部分は、8.3MPaより大きい引っ張り応力、150%より大きい引張り伸び、50%未満の熱変形率及びVW−1垂直燃焼試験合格の最小限の顧客要件に合格する。
【0096】
元素周期表への全ての参照は、2003年にCRC Press、Inc.によって刊行され、著作権保護されている元素周期表を参照する。同様に、族への任意の参照は、族の番号付けのためのIUPACシステムを使用しているこの元素周期表に示された族への参照でなければならない。反対の記載がある、文脈から黙示的である、又は当業界で慣例的である場合を除き、全ての部及びパーセントは、重量に基づき、全ての試験法は、本開示の出願日現在のものである。米国特許の実施のために、任意の参照した特許、特許出願又は公開の内容は、特に合成技術、製品及び加工設計、ポリマー、触媒、定義(本開示に具体的に提供された任意の定義と矛盾しない程度に)、及び当業界の一般的知見の開示に関して、参照によりそれらの全体が組み込まれている(又はその同等な米国版が参照により同様に組み込まれている)。
【0097】
本開示における数値域は、他に指示がない限り近似である。いずれの下限値及びいずれの上限値の間にも少なくとも2単位の隔たりがあるならば、数値域は、1単位きざみで下限値及び上限値を含めて全ての値を含む。一例として、例えば、引張強さ、破断点伸びなどの組成特性、物理的特性又は他の特性が、100から1000までである場合、全ての個別の値、例えば100、101、102など、及び下位の数値域、例えば100から144まで、155から170まで、197から200までなどは、明らかに列挙されることを意味する。1未満の値を含む又は1より大きい分数(例えば、1.1、1.5など)を含む数値域について、1単位は、必要に応じて0.0001、0.001、0.01又は0.1であると考えられる。10未満の1桁の数を含む数値域(例えば、1から5まで)について、1単位は、一般的に0.1であると考えられる。これらは、具体的に意図されるものの例に過ぎず、列挙された下限値及び上限値の間の数値の全ての可能な組合せは、本開示に明確に記載されているものと考えられる。とりわけ、組成物中のポリオレフィン、TPU、金属水酸化物及び添加剤の量、並びにこれらの成分を定義する種々の特性及び性質についての数値域を、本開示内に示す。
【0098】
化合物に関して使用する場合、特に明確に指示のない限り、単数形は、全ての異性体を含み、逆の場合も同様である(例えば、「ヘキサン」は、個別に又は集合的にヘキサンの全ての異性体を含む)。用語「化合物(compound)」及び「錯体(complex)」は、有機、無機及び有機金属化合物を意味するために互換的に使用する。
【0099】
用語「又は」は、特に指示のない限り、個別に及び任意の組合せで列挙された構成要素を意味する。
【0100】
これまでの明細書、図面及び実施例を通して、本発明をかなり詳細に記載したが、この詳細は例示を目的とする。当業者は、添付の特許請求の範囲に記載された本発明の精神及び範囲から逸脱することなく、多くの変更及び修正を行うことができる。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
(a)熱可塑性ポリウレタン、金属水酸化物及び少なくとも1種の有機難燃剤を含む連続相と、
(b)連続相中に分散されているか又は連続相と共連続である、架橋極性オレフィンポリマー及び金属水酸化物を含む分散相又は共連続相と
を含むポリマーブレンドであって、極性オレフィンポリマーが、シランカップリング剤を介して金属水酸化物に結合しているポリマーブレンド。
【請求項2】
極性オレフィンポリマーが、エチレンビニルアセテートポリマーである、請求項1に記載のブレンド。
【請求項3】
連続相が、エポキシ化ノボラック樹脂をさらに含む、請求項1に記載のブレンド。
【請求項4】
金属水酸化物が、連続相及び分散相又は共連続相全体に均一に分散されている、請求項1に記載のブレンド。
【請求項5】
ブレンドのポリマー成分の総重量に基づき、40から80重量パーセントの熱可塑性ポリウレタン、ブレンドのポリマー成分の総重量に基づき、20から60重量パーセントの極性オレフィンポリマー、及びブレンドの総重量に基づき、40から60重量パーセントの金属水酸化物を含む、請求項1に記載のブレンド。
【請求項6】
架橋極性オレフィンポリマーが、過酸化物架橋極性オレフィンポリマーである、請求項1に記載のブレンド。
【請求項7】
請求項1に記載のブレンドを含む物品。
【請求項8】
(a)熱可塑性ポリウレタンポリマー、金属水酸化物、及び有機難燃剤を混合して第1の樹脂組成物を形成するステップと、
(b)極性オレフィンポリマー、前記金属水酸化物、シランカップリング剤及び過酸化物架橋剤を、極性オレフィンポリマーの融点を上回るが過酸化物カップリング剤の分解温度を下回る温度において混合して、第2の樹脂組成物を形成するステップと、
(c)過酸化物架橋剤が分解して極性オレフィンポリマーを架橋する温度において、第1の樹脂組成物及び第2の樹脂組成物を連続的に混合しながら配合して、熱可塑性ポリウレタン及び金属水酸化物を含む連続相中に、架橋極性オレフィンポリマー及び金属水酸化物を含む分散相又は共連続相を形成するステップと
を含む、ポリマーブレンドの製造方法。
【請求項9】
極性オレフィンポリマーが、エチレンビニルアセテートポリマーであり、過酸化物架橋剤が少なくとも140℃の分解温度を有する、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
エポキシ化ノボラック樹脂を第1の樹脂組成物に添加するステップをさらに含む、請求項8に記載の方法。

【図1】
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【公表番号】特表2013−513668(P2013−513668A)
【公表日】平成25年4月22日(2013.4.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−542332(P2012−542332)
【出願日】平成21年12月11日(2009.12.11)
【国際出願番号】PCT/CN2009/075513
【国際公開番号】WO2011/069301
【国際公開日】平成23年6月16日(2011.6.16)
【出願人】(502141050)ダウ グローバル テクノロジーズ エルエルシー (1,383)
【Fターム(参考)】