説明

熱可塑性樹脂からなる板状成形品

【課題】冬期から夏期にかけての温度差により伸縮し、板状成形品同士の突き上げや目すき等が発生するのを低減した熱可塑性樹脂からなる板状成形品を提供すること。
【解決手段】複数枚を組み合わせて平面を形成可能な熱可塑性樹脂からなる板状成形品であって、該板状成形品が熱可塑性樹脂に充填剤を体積比率で5〜40%混合したものからなり、異型押出成形後の熱線膨張係数(0℃雰囲気下と40℃雰囲気下で寸法を測定する。各々の雰囲気下の寸法差を0℃雰囲気下の寸法で割り、さらに温度差(40)で割ったもの)が2.0×10−5〜8.5×10−5であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明の板状成形品は、床面や壁面等の建築物表面に対して、複数枚の板状成形品を組み合わせて使用するものであり、且つ組み合わせ時に嵌め合い構造により連結組み合わせ可能な熱可塑性樹脂からなる板状成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、戸建て住宅、集合住宅、店舗、ビルディング等に使用される板状成形品において、フローリング等の木質系板状成形品にかわり、樹脂系材料を用いた樹脂系板状成形品が実用化されてきている。木質系板状成形品が湿度による影響(伸縮)を受けるのに対し、樹脂系板状成形品は熱による影響(伸縮)を受けるのが特徴である。そのことにより、樹脂系板状成形品は冬期から夏期にかけての温度差により伸縮し、板状成形品同士の突き上げや目すき等が発生することがある。
【0003】
しかし、熱による伸縮は居室の壁際及び突き付け部において規定の隙間を設けることで対処している場合が多い。しかしながら、壁際の直線精度が悪い場合や、施工者によっては規定の隙間を設けずに施工する場合があり、壁際や突き付け部において隙間が設けられずに施工される場合が多いのが現状である。その結果、冬期〜夏期にかけての温度差による樹脂系板状成形品の伸縮により、突き上げ、目すき等の問題が発生する場合がある。
【特許文献1】特開平10−61150号公報
【特許文献2】特開2003−97011号公報
【特許文献3】特開2003−247327号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明は上記のような問題点を解決するためになされたものであり、その課題とするところは、冬期から夏期にかけての温度差により伸縮し、板状成形品同士の突き上げや目すき等が発生するのを低減した熱可塑性樹脂からなる板状成形品を提供することにある。

【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明はこの課題を解決するものであり、すなわちその請求項1記載の発明は、複数枚を組み合わせて平面を形成可能な熱可塑性樹脂からなる板状成形品であって、該板状成形品が熱可塑性樹脂に充填剤を体積比率で5〜40%混合したものからなり、異型押出成形後の熱線膨張係数(0℃雰囲気下と40℃雰囲気下で寸法を測定する。各々の雰囲気下の寸法差を0℃雰囲気下の寸法で割り、さらに温度差(40)で割ったもの)が2.0×10−5〜8.5×10−5であることを特徴とする熱可塑性樹脂からなる板状成形品である。
【発明の効果】
【0006】
本発明の請求項1記載の発明により、体積比率で充填剤の添加量を限定し、その範囲において、適宜用いる熱可塑性樹脂から成形した板状成形品の線膨張係数を限定することで、これらの板状成形品の雰囲気による変形を抑えることが可能となり、組み合わせて平面を形成した状態で温度変化が発生しても突き上げ等の異常が発生しないものとすることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
本発明の板状成形品に用いる熱可塑性樹脂としては、用いる充填剤とその添加量と併せて本発明で示す線膨張係数を満たすものであればよく、具体的には、例えばポリオレフィン系樹脂であれば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、ポリイソプレン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、エチレン−αオレフィン共重合体、プロピレン−αオレフィン共重合体、エチレン−エチルアクリレート共重合体やそれらの酸変成物(接着性向上の目的で不飽和カルボン酸またはその無水物を共重合させたもの)、アイオノマー(オレフィン−不飽和カルボン酸共重合体の金属水和物)等から適宜選択が可能である。
【0008】
これらの中から選ばれる樹脂に適宜必要に応じて例えば熱安定剤、酸中和剤、紫外線吸収剤、光安定剤、顔料または染料等の着色剤、帯電防止剤、滑剤、造核剤、発泡剤、難燃剤、ブロッキング防止剤、半透明化のための光散乱剤、艶調整剤等の添加剤を添加したものが適用可能である。また、異種の樹脂を組み合わせてもよいが、その場合には、互いによく相溶するかもしくは互いによく接着する樹脂の組み合わせであることが望ましいが、そうでない場合であっても、両者を相溶させるための相溶化剤の添加により混合後の物性が維持できれば使用可能である。
【0009】
本発明の板状成形品の厚みとしては2〜25mm程度が望ましく、大きさとしては短辺長さが45〜90mmで長辺長が600〜1200mmが好適であるが、部屋の大きさによっては長辺が2000mm程度でもあってもかまわない。
【0010】
本発明における充填剤としては、各種無機系充填剤、木粉などが使用可能である。個々の充填剤の大きさとしては、同じ重量の添加剤でも体積が大きいものの方が線膨張係数が低くなることから軽量化を計るために大きいものが好適であるが、混合方法、成形性により上限を設定した上で適宜調整すれば良い。
【0011】
本発明の板状成形品は、従来の板状成形品同様、上面と側面の稜部に、面取加工を施すこともできる。適度な幅の面取り加工を施すと、環境条件の変動による板状成形品同士の隙間の幅の変動を目立ちにくくする効果があるほか、板状成形品同士の段差も目立たなくなり、床材などに用いた際の歩いたときの引っ掛かり感もなくなる等の効果がある。
【0012】
本発明の板状成形品は、それのみからなるものであっても良いが、その表面に化粧仕上げのための化粧シートを積層したり、その裏面に下地の不陸の吸収およびクッション性や防音性のためのクッション層を積層したりしても良い。
【0013】
前記化粧シートとしては、天然木の突板や、木目等を印刷した紙等も使用できるが、表面物性やリサイクル適性を考慮すれば、板状成形品と同系の熱可塑性樹脂のフィルムに絵柄印刷等の装飾加工を施した化粧フィルムを用いることが最も好ましい。なお、化粧シートを板状成形品の嵌合構造部分まで巻き込んで積層する場合には、嵌合部の寸法に化粧シートの厚みを加味した寸法を用いることとなる。
【0014】
前記クッション層としては、例えば発泡ポリエチレンシート、発泡ポリビニルアルコールシート、発泡ウレタンシート等の、発泡倍率5〜20倍程度の発泡樹脂シートや、不織布、フェルト、インシュレーションボード等の繊維質シート等を使用することができる。クッション層の厚みとして2〜4mm程度が好適である。
【0015】
本発明の板状成形品を床下地等の構造材面に固定する方法としては、特に限定されないが、粘着剤又は接着剤を使用して接着固定する方法が一般的に用いられる。特に両面粘着テープを使用する方法は、簡便に施工可能であり、好適である。
【実施例1】
【0016】
熱可塑性樹脂としてポリプロピレン樹脂を用い、これに充填剤として炭酸カルシウムを体積比率5%含有して線膨張係数を0〜40℃間で約8.5×10−5に調製した板状成形品を、5mm厚×150mm巾×1000mm長さの大きさに押出成形にて成形加工して本発明の板状成形品を得た。
【実施例2】
【0017】
体積比率を40%として線膨張係数を0〜40℃間で2.0×10−5に調製した以外は実施例1と同様にして本発明の板状成形品を得た。
【0018】
<評価>
得られた板状成形品の試験体を、0℃雰囲気下で12mm厚×900mm巾×2000mm長さの通常合板上にレンガ状に両面テープ(大日本インキ化学工業製:#815GT)で貼り付けた。およそ12時間後に雰囲気温度を40℃に変更し、更に12時間後に表面の状態を確認した。突き上げ等の異常は確認できなかった。
【0019】
<比較例1>
体積比率を2%として線膨張係数を0〜40℃間で10.5×10−5に調製した以外は実施例1と同様にして板状成形品を得た。
前記同様の評価を行なったところ、突き上げの異常が確認された。
【産業上の利用可能性】
【0020】
本発明の板状成形品は板状成形品、壁材、天井材等の建築内装として用いることが可能である

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数枚を組み合わせて平面を形成可能な熱可塑性樹脂からなる板状成形品であって、該板状成形品が熱可塑性樹脂に充填剤を体積比率で5〜40%混合したものからなり、異型押出成形後の熱線膨張係数(0℃雰囲気下と40℃雰囲気下で寸法を測定する。各々の雰囲気下の寸法差を0℃雰囲気下の寸法で割り、さらに温度差(40)で割ったもの)が2.0×10−5〜8.5×10−5であることを特徴とする熱可塑性樹脂からなる板状成形品。


【公開番号】特開2008−126645(P2008−126645A)
【公開日】平成20年6月5日(2008.6.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317833(P2006−317833)
【出願日】平成18年11月24日(2006.11.24)
【出願人】(593173840)株式会社トッパン・コスモ (243)
【Fターム(参考)】