熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形用金型、折曲げ成形方法、及び折曲げ成形体
【課題】形状安定性に優れた熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形体を、容易に且つ大幅な設備投資を要することなく製造することができる金型及び該金型を用いた熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形体の製造方法、並びにこれらを用いて成形された熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形体を提供すること。
【解決手段】本発明の金型は、雌金型と雄金型とを有し、熱可塑性樹脂シートを折曲げ成形するための金型であって、前記雄金型は、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部に対応する部分に、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すための凸部を有する。
【解決手段】本発明の金型は、雌金型と雄金型とを有し、熱可塑性樹脂シートを折曲げ成形するための金型であって、前記雄金型は、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部に対応する部分に、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すための凸部を有する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂シートを折曲げ成形するための折曲げ成型用金型と熱可塑性樹脂シートの折曲げ成型方法、及びこれらを用いて成形された熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータなどの表示装置として、省電力で薄型、軽量であることから、液晶表示装置が多く用いられている。
【0003】
液晶表示装置に用いられるバックライト装置としては、液晶表示装置の表示部背面に複数の光源を配置した直下型バックライト装置と、表示部側方に光源を配置したサイドエッジ型バックライト装置とが知られている。サイドエッジ型バックライト装置は、薄型が要求されるノート型パソコン等の液晶表示装置に用いられている。
【0004】
従来のサイドエッジ型のバックライト装置を備えた液晶表示装置の一例を図18に示す。図18は、従来の液晶表示装置を示す分解斜視図である。
液晶表示装置200は、液晶パネル201と液晶パネル201を照射するためのバックライト装置202とを有している。バックライト装置202は、表面に凹凸が形成された透明なアクリル樹脂等からなる導光板204と、導光板の両側面に沿って配設された2つの線状光源205と、線状光源205から出射された光を導光板204の側面に向けて反射させるリフレクタ206と、導光板204から出射された光を拡散させて輝度ムラを少なくするための拡散シート207aと、拡散シート207aにより拡散された光を集光するレンズシート208と、レンズシート208により集光された光を再び拡散させる拡散シート207bと、導光板204から出射した光を前面に反射させる反射板209と、を有している。導光板204、拡散シート207a,207b、レンズシート208、光源205、リフレクタ206および反射板209は、樹脂製フレーム210に組み込まれ、バックライト装置202として、液晶パネル201の背面に配置されている。
【0005】
上記構成の液晶表示装置200においては、線状光源205から導光板204内に導かれた光は、導光板204で拡散、散乱されて、導光板全面から均一に出射される。導光板204からの面状の出射光は、さらに、拡散シート207a、レンズシート208、及び拡散シート207bを透過することによって拡散され、液晶パネル201を照明する。
【0006】
上記リフレクタ206は、線状光源205と略同長のステンレスやアルミニウム等の金属板から構成され、図示のように、一面を開口する断面略コ字状に成形されており、組立て時には、線状光源205を内部に収納し、開口面を導光板204側面に対向配置される。そして、従来のリフレクタの内面には、線状光源からの光を反射して効率よく導光板に入射させるために、銀蒸着シートが貼着され(特許文献1参照)、あるいは金属酸化物、金属窒化物又は金属炭化物等からなる白色塗料が塗布されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−32273号公報(段落0034)
【特許文献2】特開2007−66611号公報(段落0028)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の金属板を用いたリフレクタは、反射率が十分ではなく、液晶表示装置の高輝度化に限界があるという問題があった。又、金属との複合品であることからコストがかかっていた。
【0009】
上記問題を解決するためには、金属板に代えて、光の反射率の高い内部に微細な気泡または気孔を有する熱可塑性樹脂シート、熱可塑性樹脂シートに反射フィルムを貼合した積層シート、又は、熱可塑性樹脂シートに金属粒子を蒸着したシート等を用い、これを、金型を用いて断面略コ字状に加熱成形することが考えられる。
【0010】
しかしながら、これら熱可塑性樹脂シートを主な材料とするリフレクタを、金型を用いて加熱成形する場合、金属板からなるリフレクタにおいては生じなかった、曲げ戻り(スプリングバック現象)が発生するため、形状安定性に劣るという問題がある。一般に、成形後のリフレクタはバックライトメーカーへ送られ、そこでバックライトパネルとして組立てられるが、その際、輸送時の車内温度は最大70℃に達することもある。このような高温環境下におかれた場合、リフレクタが輸送中又は倉庫保管中に開いてしまい、組立てが困難となったり、場合によっては組立不能となったりする。これを抑制するためには、成形時に90度以上に折り曲げておくことによって、高温環境下での形状変化を抑制することが考えられるが、金型を用いた折曲げ成形では90度以上に折り曲げることは困難であるため、金型を用いて一旦90度に折曲げる工程を経た後に、他の手段によって再度90度以上に折曲げる工程を実施するといった2工程を要することになり、工程数の増加や設備投資の増大により、生産性が悪化してしまう。
【0011】
そこで、本発明の目的は、形状安定性に優れた熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形体を、容易に且つ大幅な設備投資を要することなく製造することができる金型及び該金型を用いた熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形体の製造方法、並びにこれらを用いて成形された熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するために、本発明にかかる金型は、雌金型と雄金型とを有し、熱可塑性樹脂シートを折曲げ成形するための金型であって、前記雄金型が、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部に対応する部分に、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すための凸部を有することを特徴とする。
【0013】
前記金型において、前記雌金型が、底面と、前記底面に対して略垂直な内側面とを有し、前記雄金型が、前記雌金型の前記底面に対向する突出面と、前記雌金型の前記内側面に対向する側面とを有し、前記雄金型の前記突出面及び前記側面のうち少なくとも一方の面が、前記樹脂シートを前記雌金型の前記内周面に向けて厚さ方向に押し潰すための押圧面であることが好ましい。
【0014】
また、前記雌金型が前記底面と前記内側面との間に形成された雌側傾斜面をさらに有し、前記雄金型が、前記雌側傾斜面に対向して、前記側面と前記突出面との間に形成された雄側傾斜面をさらに有し、前記雄金型の前記凸部が、前記雄側傾斜面上の、前記雌金型の前記内側面と前記雌側傾斜面との境界に対応する部分および前記雌側傾斜面と前記雌金型の前記底面との境界に対応する部分に設けられていることが好ましい。
【0015】
さらに、前記金型において、前記熱可塑性樹脂シートの厚さをt(mm)、前記雌金型の前記内側面と前記雄金型の前記側面との間のクリアランスをa(mm)、前記雌側傾斜面と前記雄側傾斜面との間のクリアランスをb(mm)、前記雌金型の前記底面と前記雄金型の前記突出面との間のクリアランスをc(mm)としたとき、t≧b>a≧cの関係を満たすことが好ましい。
【0016】
さらに、前記雌金型の前記内側面と前記雌側傾斜面とのなす角をα(度)とし、前記雌金型の前記底面と前記雌側傾斜面とのなす角をβ(度)としたとき、前記雄側傾斜面上の前記雌金型の前記内側面と前記雌側傾斜面との境界に対応する部分に設けられた前記雄金型の前記凸部は、頂角がγ(度)の断面三角形状を有し、前記雄側傾斜面上の前記雌金型の前記底面と前記雌側傾斜面との境界に対応する部分に設けられた前記雄金型の前記凸部は、頂角がδ(度)の断面三角形状を有し、α>γ及びβ>δの関係を満たすことが好ましい。
【0017】
さらにまた、前記雄金型の前記凸部が、頂角が略90度以下の断面三角形状を有することが好ましい。
【0018】
本発明にかかる熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法は、上述のいずれかの金型を用いて、前記熱可塑性樹脂シートを押圧する押圧工程を有することを特徴とする。
【0019】
前記熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法において、前記押圧工程の後に、前記金型を70℃以上200℃以下に加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後に前記金型を40℃以下に冷却する冷却工程とを有することが好ましい。
【0020】
また、前記熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法において、前記冷却工程は、前記金型を前記熱可塑性樹脂シートのガラス転移温度(Tg)まで水冷する水冷工程と、前記水冷工程の後に、前記熱可塑性樹脂シートにエアを噴きつけることにより40℃以下に冷却する空冷工程とを有することが好ましい。
【0021】
また、前記熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法において、前記加熱工程は、前記金型を超音波で振動させることにより加熱してもよい。
【0022】
さらに、前記熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法において、前記押圧工程では、前記熱可塑性樹脂シートを、294MPa以上の圧力で押圧することが好ましい。
【0023】
さらにまた、前記熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法において、前記押圧工程の前に、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部分に折曲げ線を設ける折曲げ線形成工程を有することが好ましい。
【0024】
本発明にかかる熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形体は、底部と、前記底部に対して立設された側壁部と、前記底部と前記側壁部とを接続する接続部とを有し、前記側壁部は、前記側壁部と前記接続部との間の折曲げ部を基点として前記樹脂シートの肉厚が薄い部分を有し、前記底部は、前記底部と前記接続部との間の折曲げ部を基点として前記熱可塑性樹脂シートの肉厚が薄い部分を有し、前記側壁部が前記底部に対して、前記底部側に90度以上折曲がっていることを特徴とする。
【0025】
前記熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形体において、前記側壁部の厚さをA(mm)、前記接続部の厚さをB(mm)、前記底部の厚さをC(mm)とすると、B>A≧Cの関係を満たすことが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の金型及び熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形体の製造方法においては、金型に設けた凸部で、熱可塑性線樹脂シートの折曲げ部をシートの厚さ方向に押し潰し、折曲げ部を介して連結された熱可塑性樹脂シートの2つの面に、互いに引き合う方向の力を生じさせる。これにより、一回の金型成形で、熱可塑性樹脂シートを90度以上に折曲げ成形することができるので、工程数の増加や大幅な設備投資を要することなく、熱可塑性樹脂シート20のスプリングバック現象の発生を抑制し、形状安定性に優れた熱可塑性樹脂シートの成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態にかかる金型を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるリフレクタの製造方法を説明するための図である。
【図3】本発明の金型を用いて成形されたリフレクタを示す斜視図である。
【図4】本発明の金型を用いて成形されたリフレクタを示す側面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の変形例にかかる金型40を示す側面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる金型50を示す側面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかる金型を用いて成形されたリフレクタを示す側面図である。
【図8】本発明に他の実施形態にかかる金型を示す側面図である。
【図9】金型の変形例を示す側面図である。
【図10】金型の他の変形例を示す側面図である。
【図11】シャーシ一体型リフレクタを示す斜視図である。
【図12】フォーミングロールによる熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形を説明するための概略斜視図である。
【図13】熱可塑性樹脂シートの搬送方向に対して垂直なロール回転軸を通る各成形ロールにおける断面図である。
【図14】熱可塑性樹脂シートの成形された状態を説明するための図である。
【図15】比較例の金型を示す側面図である。
【図16】リフレクタの形状安定性の評価方法を説明するための図である。
【図17】実施例7の金型を示す側面図である。
【図18】従来の液晶表示装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる金型10を示す側面図である。本実施形態の金型10は、熱可塑性樹脂シートを主な材料として用いた断面略J字状のリフレクタ(図3、図4参照)を成形するための金型である。金型10は、図示のように、雌金型11と雄金型12とを有している。
【0029】
雌金型11は、底面13と、底面13に対して略垂直な内側面14と、底面13と内側面14との間に形成された雌側傾斜面15とを有している。
【0030】
雄金型12は、雌金型11の底面13に対向する突出面16と、雌金型11の内側面14に対向する側面17と、雌側傾斜面15に対向して、側面17と突出面16との間に形成された雄側傾斜面18とを有している。そして、この雄側傾斜面18には、折曲げ成形対象である熱可塑性樹脂シートの折曲げ部に対応する部分に、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すための凸部19が設けられている。
【0031】
凸部19は、雄側傾斜面18上の、雌金型11の内側面14と雌側傾斜面15との境界に対応する部分、及び、雌側傾斜面15と雌金型の底面13との境界に対応する部分に設けられている。凸部19は、頂角γ及びδが略90度の断面三角形状を有する線状突起であり、熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形時には、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すことが可能となっている。凸部19の頂角γ及びδの角度は特に限定されないが、押し潰し機能をより効果的に発揮させるためには90度程度の角度を有することが好ましい。
【0032】
上述した実施形態では、凸部19の頂角γ(度)及びδ(度)を略90度にしているが、雌金型11の内側面14と雌側傾斜面15のなす角をα(度)とし、雌側傾斜面15と雌金型の底面13のなす角をβ(度)としたとき、雄側傾斜面18上の雌金型11の内側面14と雌側傾斜面15との境界に対応する部分に設けられた凸部19の頂角γ(度)、及び、雄側傾斜面18上の雌側傾斜面15と雌金型の底面13のとの境界に対応する部分に設けられた凸部19の頂角δ(度)は、α>γ及びβ>δの関係を満たすように設定されることが好ましく、さらには、頂角γ及びδの角度は90度以下がより好ましい。
【0033】
また、上述した実施形態では、凸部19は、断面三角形状を有する線状突起であるが、凸部19と雄側傾斜面18との境界部分19a及び19bの断面が滑らかな曲線(R形状)を有する線状突起であってもよい。
【0034】
次に、本発明の成形対象である熱可塑性樹脂シートについて説明する。
本発明において、熱可塑性樹脂シートとは、熱可塑性樹脂シート単体で構成されたもの、熱可塑性樹脂シートに反射フィルムを貼合した積層シート、及び、熱可塑性樹脂シートに金属粒子を蒸着したシート等を含むものである。熱可塑性樹脂シートとしては、熱可塑性樹脂をシート状に加工した一般的なプラスチックシートの他、平均気泡径が50nm以上で50μm以下の微細な気泡または気孔を内部に有する熱可塑性発泡樹脂シートを挙げることができる。このような熱可塑性発泡樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートの押出シートに炭酸ガスを高圧下で含浸させた後、加熱し発泡させたシートで、内部の気泡径が50μm以下である発泡プラスチック製光反射シートがある(例えば古河電気工業製のMCPET(登録商標)等)。また、熱可塑性樹脂シートの他の例として、フィラーを含有する熱可塑性樹脂シートであって、フィラーを核として多数のボイドが成形されているシートを挙げることができる。
【0035】
次に、図1の金型10を用いてリフレクタを製造する方法について、図2を用いて説明する。
まず、図2(a)に示すように、熱可塑性樹脂シート20の目的とする折曲げ部分に折曲げ線21を設ける(折曲げ線形成工程)。折曲げ線21は、例えば、熱可塑性樹脂シート20を押圧して線状の凹み(押し罫線)を設けることにより成形するとよい。また、熱可塑性樹脂シート20の表面(線状光源を覆い光を反射する面)または裏面の表皮部分に、鋭利な刃物を用いて罫線状の切れ目またはミシン目を入れることにより成形してもよい。さらに、折曲げ線21は、表面から裏面に貫通するミシン目によって成形してもよい。折曲げ線形成工程は省略可能であるが、この工程を経ることにより、後に熱可塑性樹脂シート20が金型10に挿入される際に、各面の成形位置がずれることなく成形を行うことができる。
【0036】
次に、図2(b)に示すように、金型10に、熱可塑性樹脂シート20をセットする(シートセット工程)。
【0037】
次に、図2(c)に示すように、雌金型11と雄金型12とにより、熱可塑性樹脂シート20を挟持して押圧する(押圧工程)。押圧時の圧力は、高圧力であることが好ましく、294MPa(3.0t/cm2)以上であることが好ましい。また、加圧時間は、雌金型11及び雄金型12が下記所定の温度に達する時間以上であればよく、長くすることが好ましいが、長くすると製造時間が長くなるため量産性に適さなくなる。
【0038】
次に、図2(d)に示すように、雌金型11及び雄金型12をヒータ等により70℃以上200℃以下に加熱する(金型加熱工程)。金型の温度は、70℃より低いと、成形後、高温環境下(70℃)で曲げ戻り(スプリングバック現象)が起こり形状を維持することができないため、70℃以上200℃以下とすることが好ましいが、高温で加熱すると紫外線防止剤が変色するため、例えば熱可塑性樹脂シート20に紫外線防止剤の塗布層が設けられている場合は、150℃以下とすることが好ましい。
【0039】
金型10の加熱工程は、押圧工程の前に実施してもよい。すなわち、予め金型10を加熱しておいてから熱可塑性樹脂シート20を押圧してもよい。また、熱可塑性樹脂シート20を予め加熱しておいてもよい。
【0040】
次に、図2(e)に示すように、雌金型11及び雄金型12を冷却水により40℃以下に冷却し(冷却工程)、熱可塑性樹脂シート20を金型10から取り出す。
上記の冷却工程において、雌金型11及び雄金型12を冷却水によりガラス転移温度(Tg)まで冷却し(水冷工程)、その後に、成形された熱可塑性樹脂シート20にエアを噴きつけることにより、熱可塑性樹脂シート20を40℃以下に冷却し(空冷工程)、熱可塑性樹脂シート20を金型10から取り出すようにしても良い。
【0041】
なお、本実施の形態においては、金型10をヒータ等により加熱した後冷却水で冷却するようにしたが、これに限定されることはなく、例えば、雄金型12を振動子として超音波振動させるようにするとよい。これにより、雌金型11とで熱可塑性樹脂シート20を挟んで押圧した際、最も圧力のかかる凸部19に振動が集中するため、熱可塑性樹脂シート20の折り曲げ箇所に相当する部分が集中的に加熱・延伸される。その結果、効率よく成形性を向上させることができる。
【0042】
以上の工程により、図3及び図4に示すような、底部31と、底部31に対して立設された側壁部32及び33と、底部31と側壁部32及び33とをそれぞれ接続する接続部34及び35とを有する断面略J字状に成形されたリフレクタ30を得ることができる。
【0043】
このようにして得られたリフレクタ30においては、雄金型12の凸部19によって折曲げ線21の部分が押し潰されることで、図3及び図4に示すように、側壁部32及び33が、それぞれ接続部34及び35との間の折曲げ部21a及び21dを基点として肉厚が薄くなっており、且つ、底部31は、接続部34及び35との間の2つの折曲げ部21b及び21cを基点として肉厚が薄くなっている。これにより、折曲げ部21a、21b、21c及び21dを介して互いに連結された2つの面(すなわち、側壁部32の内側面32aと接続部34の内側面34a、接続部34の内側面34aと底部31の上面31a、底部31の上面31aと接続部35の内側面35a、接続部35の内側面35aと側壁部33の内側面33a)に、互いに引き合う方向の応力が働くため、得られたリフレクタ30は、図3及び図4に示すように、側壁部32及び33が底部31に対して、底部側に90度以上折れ曲がった形状となり、熱可塑性樹脂シート20の曲げ戻り(スプリングバック現象)が抑制される。
【0044】
また、熱可塑性樹脂シート20の折曲げ部だけでなく、シート全体を厚さ方向に押し潰して成形すると成形が容易になり、成形後の形状安定性もよい。
図4に示すように、リフレクタ30の側壁部32及び33の厚さをA、接続部34及び35の厚さをB、底部31の厚さをCとし、熱可塑性樹脂シート20の厚さをtとしたとき、
t≧B>A≧C (式1)
の関係を満たすことが好ましい。例えば、t=0.4〜1mmのとき、Cはtの28%〜72%、さらに好ましくは38%〜56%であり、Aはtの28%〜93%、さらに好ましくは82%〜90%であり、Bはtと略同一であることが好ましい。
【0045】
底部31を押し潰す場合、すなわちt>Cの条件を満たす場合、底部31と連結された2つの接続面34及び35において、底部31側に向かおうとする応力が助長されるため、形状安定性をより高めることができる。
【0046】
接続部34及び35については、押し潰してもよいが(すなわちt>B)、この部分の押し潰し量が大きいと折曲げ部21a、21b、21c及び21dの押し潰し量が減少するため、折曲げ部21a、21b、21c及び21dを介して互いに連結された2つの面に生じる互いに引き合う方向の応力が低下する。したがって、t=Bの条件がより好ましい。
【0047】
側壁部32及び33については、押し潰さなくても底部31よりも曲げ戻りに影響しないが、側面部32及び33の押し潰し量が少ないと、折曲げ部21a、21b、21c及び21dの押し潰し量も減少するため、折曲げ部21a、21b、21c及び21dを介して互いに連結された2つの面に生じる互いに引き合う方向の応力が低下する。したがって、t>Aの条件が好ましい。
【0048】
具体的には、例えばt=0.7mmの場合、C=0.2〜0.5mm、特に0.27〜0.39mmが好ましい。0.5mmより厚いと、特に高温環境下で曲げ戻りが生じやすくなる。一方、0.2mmより薄く押し潰すと、線状光源のリフレクタとしての本来の機能、すなわち反射特性が低下する。また、A=0.2〜0.65mm、特に0.58〜0.63mmが好ましい。
【0049】
上記式(1)で示した各部位の厚さの関係を実現するために、雌金型11と雄金型12の各クリアランスは、以下のように設定されることが好ましい。
すなわち、図1に示すように、雌金型11の内側面14と雄金型12の側面17との間のクリアランスをa(mm)、雌側傾斜面15と雄側傾斜面18との間のクリアランスをb(mm)、雌金型11の底面13と雄金型12の突出面16との間のクリアランスをc(mm)としたとき、
t≧b>a≧c (式2)
の関係を満たすように設定されることが好ましい。このようにクリアランスa及びcを、熱可塑性樹脂シート20の厚さtより小さくなるように設定することで、雄金型12の側面17及び突出面16が、熱可塑性樹脂シート20を雌金型11の内周面に向けて押し潰す、押圧面として機能する。
【0050】
cはtの28%〜43%が好ましく、aはtの28%〜86%、さらに好ましくは72%〜86%であり、bはtと略同一であることが好ましい。具体的には、例えば、t=0.7mmの場合、c=0.2〜0.3mmが好ましく、a=0.2〜0.6mm、特に0.5〜0.6mmが好ましく、b=0.7mmが好ましい。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、一回の金型成形で、熱可塑性樹脂シート20を90度以上に折曲げ成形することができるので、工程数の増加や大幅な設備投資を要することなく、熱可塑性樹脂シート20のスプリングバック現象の発生を抑制し、形状安定性に優れた熱可塑性樹脂シート20の成形体を製造することができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、断面略J字状のリフレクタ30を成形する場合を例に説明したが、両側壁部の長さが同一の断面略U字状のリフレクタを成形することももちろん可能である。
【0053】
また、本実施形態においては、熱可塑性樹脂シート20を用いて、液晶表示装置に使用されるバックライトユニットのリフレクタ30を成形する場合を例に説明したが、本発明の適用対象はこれに限定されない。本発明は、スプリングバック力を有する熱可塑性樹脂シートを用いた折曲げ成形体の成形であればいずれにも適用することができ、形状保持のための工程数の削減及び生産性の向上に寄与することができる。
【0054】
(第1の実施形態の変形例)
図5は、本発明の第1の実施形態の変形例にかかる金型40を示す側面図である。本実施形態の金型40は、熱可塑性樹脂シートを主な材料として用いた断面略J字状のリフレクタ(図3、図4参照)を成形するための金型である。尚、金型40の説明では、図1の第1の実施形態にかかる金型10との相違点を詳細に記載する。
【0055】
図5に示すように、雌金型41は、底面43と、底面43に対して略垂直な内側面44と、底面43と内側面44との間に形成された雌側傾斜面45とを有している。
【0056】
雄金型42は、雌金型41の底面43に対向する突出面46と、雌金型41の内側面44に対向する側面47と、雌側傾斜面45に対向して、側面47と突出面46との間に形成された雄側傾斜面48とを有している。そして、この雄側傾斜面48と側面47との間、及び、この雄側傾斜面48と突出面46との間には、折曲げ成形対象である熱可塑性樹脂シートの折曲げ部に対応する部分に、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すための凸部49が設けられている。
【0057】
また、雄側傾斜面48と側面47との間の凸部49、及び、この雄側傾斜面48と突出面46との間の凸部49は、それぞれ、雌金型41の内側面44と雌側傾斜面45との境界に対応する部分、及び、雌側傾斜面45と雌金型の底面43との境界に対応する部分に設けられている。凸部49は、断面三角形状を有する線状突起であり、熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形時には、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すことが可能となっている。尚、凸部49の頂角の角度は特に限定されないが、押し潰し機能をより効果的に発揮させるためには鋭角であることが好ましい。
【0058】
また、雌金型41と雄金型42の各クリアランスは、以下のように設定されることが好ましい。すなわち、図5に示すように、雌金型41の内側面44と雄金型42の側面47との間のクリアランスをa(mm)、雌側傾斜面45と雄側傾斜面48との間のクリアランスをb(mm)、雌金型41の底面43と雄金型42の突出面46との間のクリアランスをc(mm)としたとき、
a≒b≒c≒t (式3)
の関係を満たすように設定される。
【0059】
また、図2と同様の工程により、図3及び図4に示すような、底部31と、底部31に対して立設された側壁部32及び33と、底部31と側壁部32及び33とをそれぞれ接続する接続部34及び35とを有する断面略J字状に成形されたリフレクタ30を得ることができる。但し、厚さはA≒B≒Cとなる。
【0060】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態にかかる金型50を示す側面図である。本実施形態の金型50は、熱可塑性樹脂シートを主な材料として用いた断面略J字状のリフレクタ(図7参照)を成形するための金型である。金型50は、図示のように、雌金型51と雄金型52とを有している。尚、金型50の説明では、図1の第1の実施形態にかかる金型10との相違点を詳細に説明する。
【0061】
雌金型51は、略平行な2つの内側面54と、この内側面54に対して断面が滑らかな曲線(R形状)を有する底面53とを有している。
【0062】
雄金型52は、雌金型51の内側面54に対向する側面57と、雌金型51の底面53に対向する突出面56とを有している。この突出面56は、底面53に対向させたとき、突出面56と底面53との間隔がこの突出面56上において略同じとなる、断面が滑らかな曲線(R形状)を有している。そして、この突出面56には、折曲げ成形対象である熱可塑性樹脂シートの折曲げ部に対応する部分に、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すための3ヶ所の凸部59が設けられている。
【0063】
凸部59は、突出面56上の、雌金型51の内側面54と雌金型51の底面53との境界に対応する部分、及び、雌金型51の底面53の中央部分に対応する部分に設けられている。凸部59は、頂角が略90度の断面三角形状を有する線状突起であり、熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形時には、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すことが可能となっている。凸部59の頂角の角度は特に限定されないが、押し潰し機能をより効果的に発揮させるためには90度程度の角度を有することが好ましい。
また、図6に示すように、雌金型41の内側面54と雄金型52の側面57との間のクリアランスをd(mm)、雌金型51の底面53と雄金型52の突出面56との間のクリアランスをe(mm)とする。
【0064】
また、図2と同様の工程により、図7に示すような、内側に湾曲した湾曲部64及び湾曲部65と、湾曲部64及び湾曲部65に対して立設された側壁部62及び63とを有する断面略J字状に成形されたリフレクタ60を得ることができる。
【0065】
このようにして得られたリフレクタ60においては、雄金型52の凸部59によって折曲げ線の部分が押し潰されることで、図7に示すように、側壁部62と湾曲部64との間の折曲げ部25aの近傍の肉厚、湾曲部64と湾曲部65との間の折曲げ部25bの近傍の肉厚、及び、湾曲部65と側壁部63との間の折曲げ部25cの近傍の肉厚が、それぞれ折曲げ部25a、25b及び25cを基点として薄くなっている。
【0066】
また、図7に示すように、側壁部62の外側面62bと湾曲部64の外側面64bは、断面が滑らかな曲線(R形状)で連結され、湾曲部65の外側面65bと側壁部63の外側面63bは、断面が滑らかな曲線(R形状)で連結されている。また、湾曲部64の外側面64bと湾曲部65の外側面65bも連結されており、連結された湾曲部64の外側面64bと湾曲部65の外側面65bは、連結部も含め全面において、断面が滑らかな曲線(R形状)を有している。
【0067】
これにより、折曲げ部25a、25b及び25cを介して互いに連結された2つの面(すなわち、側壁部62の内側面62aと湾曲部64の内側面64a、湾曲部64の内側面64aと湾曲部65の内側面65a、湾曲部65の内側面65aと側壁部63の内側面63a)に、互いに引き合う方向の応力が働くため、得られたリフレクタ60は、図7に示すように、側壁部62及び63の上端部が、側壁部62及び63の湾曲部64及び湾曲部65に接続されている下部に比較して、折曲げ部25bを通る平面Pに対してより近接した形状となり、熱可塑性樹脂シートの曲げ戻り(スプリングバック現象)が抑制される。
【0068】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態にかかる金型70を示す側面図である。本実施形態の金型70は、熱可塑性樹脂シートを主な材料として用いた断面略L字状の成形体を成形するための金型である。金型70は、図示のように、雌金型71と雄金型72とを有している。
【0069】
雌金型71は、底面73と、底面73に対して略垂直な内側面74とからなる断面L字形状の金型である。雄金型72は、雌金型71の底面73に対向する下面76と、雌金型1の内側面74に対向する側面77とを有している。そして、雄金型72の角部には、折曲げ成形対象である熱可塑性樹脂シートの折曲げ部に対応する部分に、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すための凸部75が設けられている。
【0070】
凸部75は、略直方体であり、その一長辺が雌金型71の角部に対向するように設けられ、熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形時には、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すことが可能となっている。なお、凸部75の形状は、図8に示す形状に限定されず、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すことができればどのような形状であってもよい。例えば、凸部75に代えて、図9及び図10に示すような、頂角が鋭角の断面三角形状を有する線状突起78及び79を採用することができる。図9に示す金型を用いると、熱可塑性樹脂シートは折り曲げ部、底部の一部及び側部の一部が厚さ方向に押し潰された形状となる。また、図10に示す金型を用いると、熱可塑性樹脂シートは折り曲げ部、底部及び側部の一部が厚さ方向に押し潰された形状となる。
【0071】
このような形状の金型70を用いて、上記第1の実施形態と同様にして、熱可塑性樹脂シートを折曲げ成形することで、断面略L字状の成形体を得ることができる。得られた成形体においては、雄金型72の凸部75によって折曲げ部が押し潰されることで、折曲げ部を介して連結された2つの面に、互いに引き合う方向の応力が働く。このため、一端部が90度以上の角度で折曲げられた熱可塑性樹脂シートの成形体を得ることができる。
【0072】
本実施形態においても、一回の金型成形で、熱可塑性樹脂シートを90度以上に折曲げ成形することができるので、工程数の増加や大幅な設備投資を要することなく、熱可塑性樹脂シートのスプリングバック現象の発生を抑制し、形状安定性に優れた熱可塑性樹脂シートの成形体を製造することができる。
【0073】
また、本発明の第1の実施形態の金型10と、第3の実施形態の金型70を用いることで、例えば、図11に示すような、バックライト装置のシャーシ一体型リフレクタ80を成形することができる。このようなシャーシ一体型リフレクタ80を成形する際には、例えば、組み立てたときに目的の形状となるような展開形状に熱可塑性樹脂シートを打ち抜いておき、金型70を用いてシャーシ(筐体)81の2つの側面部82を折曲げ成形し、最後に金型10を用いて、2つのリフレクタ83を折曲げ成形する。これにより、形状安定性に優れたシャーシ一体型リフレクタ80を得ることができる。
【0074】
上述したリフレクタは金型を使用して成形したが、フォーミングロールを使用して成形することも可能である。図12、図13及び図14を用いて、フォーミングロールを使用してリフレクタを製造する方法を説明する。図12は、フォーミングロールによる熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形を説明するための概略斜視図で、図12(a)は、第1成形ロールにおける概略斜視図であり、図12(b)は、第2成形ロールにおける概略斜視図であり、図12(c)は、第3成形ロールにおける概略斜視図であり、図12(d)は、第4成形ロールにおける概略斜視図である。
【0075】
また、図13は、熱可塑性樹脂シートの搬送方向に対して垂直なロール回転軸を通る各成形ロールにおける断面図で、図13(a)は、第1成形ロールにおける断面図であり、図13(b)は、第2成形ロールにおける断面図であり、図13(c)は、第3成形ロールにおける断面図であり、図13(d)は、第4成形ロールにおける断面図である。
【0076】
また、図14は、熱可塑性樹脂シートの成形された状態を説明するための図であり、図14(a)は、第1段階の成形後の熱可塑性樹脂シートの状態を示す図であり、図14(b)は、第2段階の成形後の熱可塑性樹脂シートの状態を示す図であり、図14(c)は、第3段階の成形後の熱可塑性樹脂シートの状態を示す図であり、図14(d)は、第4段階の成形後の熱可塑性樹脂シートの状態を示す図である。尚、ここでは、4段階の成形からなるフォーミングロールを例として説明する。また、製造されたリフレクタは、図3及び図4に示す断面略J字状のリフレクタの場合を例に挙げて説明する。
【0077】
図12(a)、(b)、(c)及び(d)、並びに、図13(a)、(b)、(c)及び(d)に示すように、熱可塑性樹脂シート20は、4段階の成形を経て、図3及び図4に示すようなリフレクタ30が製造される。これは、各段階において少しずつ、熱可塑性樹脂シート20を成形することにより、無理な変形や、歪を生じさせないためである。第1段階の成形は第1成形ロール91によって、第2段階の成形は第2成形ロール92によって、第3段階の成形は第3成形ロール93によって、第4段階の成形は第4成形ロール94によって、成形される。
【0078】
図12(a)及び図13(a)に示すように、第1成形ロール91は、第1成形下段ロール101及び第1成形上段ロール102からなり、第1成形下段ロール101及び第1成形上段ロール102はそれぞれ、ロール回転軸S1及びS2を中心に回転するロール回転軸S1及びS2を通る断面が同一の回転体である。
【0079】
第1成形下段ロール101は、円柱状の下段中央部101aと、下段中央部101aよりも半径の大きい円柱状の下段端部101cと、下段中央部101aと下段端部101cとの間を接続する断面台形の下段傾斜部101bとを有している。また、第1成形上段ロール102は、円柱状の上段中央部102aと、上段中央部102aよりも半径の小さい円柱状の上段端部102cと、上段中央部102aと上段端部102cとの間を接続する断面台形の上段傾斜部102bとを有している。
【0080】
また、下段中央部101aと上段中央部102aの幅(ロール回転軸S1及びS2方向の長さ)は略同じであり、下段端部101cと上段端部102cの幅は略同じであり、下段傾斜部101bと上段傾斜部102bの幅は略同じである。また、下段傾斜部101bと上段傾斜部102bの断面の台形の傾斜は略平行である。また、第1成形下段ロール101と第1成形上段ロール102との間隔(クリアランス)は熱可塑性樹脂シート20の厚さと略同じである。
【0081】
熱可塑性樹脂シート20は、第1成形下段ロール101と第1成形上段ロール102との間に挟まれながら搬送され、図14(a)に示すような、底部111と、底部111に対して立設された側壁部112及び113とを有する断面略J字状に成形される。なお、底部111と側壁部112及び113とのなす角は約28度となるように、第1成形ロール91が調整されている。
【0082】
図12(b)及び(c)、並びに、図13(b)及び(c)に示すように、第2成形ロール92及び第3成形ロール93も、第1成形ロール91と同様な構成となっている。図12(b)及び図13(b)に示すように、第2成形ロール92は、第2成形下段ロール103及び第2成形上段ロール104からなり、第2成形下段ロール103及び第2成形上段ロール104はそれぞれ、ロール回転軸S3及びS4を中心に回転するロール回転軸S3及びS4を通る断面が同一の回転体である。
【0083】
また、図12(c)及び図13(c)に示すように、第3成形ロール93は、第3成形下段ロール105及び第3成形上段ロール106からなり、第3成形下段ロール105及び第3成形上段ロール106はそれぞれ、ロール回転軸S5及びS6を中心に回転するロール回転軸S5及びS6を通る断面が同一の回転体である。
【0084】
第1成形ロール91により成形された熱可塑性樹脂シート20は、第2成形下段ロール103と第2成形上段ロール104との間に挟まれながら搬送され、図14(b)に示すような、底部111と、底部111に対して立設された側壁部112及び113とを有する断面略J字状に成形される。なお、底部111と側壁部112及び113とのなす角は約52度となるように、第2成形ロール92が調整されている。
【0085】
また、第2成形ロール92により成形された熱可塑性樹脂シート20は、第3成形下段ロール105と第3成形上段ロール106との間に挟まれながら搬送され、図14(c)に示すような、底部111と、底部111に対して立設された側壁部112及び113とを有する断面略J字状に成形される。なお、底部111と側壁部112及び113とのなす角は約72.5度となるように、第3成形ロール93が調整されている。
【0086】
図12(d)及び図13(d)に示すように、第4成形ロール94は、第4成形下段ロール107及び第4成形上段ロール108からなり、第4成形下段ロール107及び第4成形上段ロール108はそれぞれ、ロール回転軸S7及びS8を中心に回転するロール回転軸S7及びS8を通る断面が同一の回転体である。
【0087】
第4成形下段ロール107は、円柱状の下段中央部107aと、下段中央部107aよりも半径の大きい円柱状の下段端部107cと、下段中央部107aと下段端部107cとの間を接続する断面台形の下段傾斜部107bとを有している。更に、下段中央部107aの断面における、下段中央部107a、下段傾斜部107b及び下段端部107cからなる表面形状は、図5に示す雌金型41の断面形状(または、図1に示す雌金型11の断面形状)と同じである。
【0088】
また、第4成形上段ロール108は、図5に示す雄金型42の断面(または、図1に示す雄金型12の断面)と同じ断面の周面からなる回転体の上段中央部108aと円柱状の上段端部108cとを有している。また、第4成形下段ロール107と第4成形上段ロール108との間隔(クリアランス)は、図5の雌金型41と雄金型42の各クリアランス(または、図1の雌金型11と雄金型12の各クリアランス)と同じである。
【0089】
第3成形ロール93により成形された熱可塑性樹脂シート20は、第4成形下段ロール107と第4成形上段ロール108との間に挟まれながら搬送され、図14(d)に示すような、即ち、図3及び図4に示すような底部31、側壁部32及び33及び接続部34及び35からなるリフレクタ30を成形する。ここで、底部111が底部31に成形され、側壁部112が側壁部32及び接続部34に成形され、側壁部113が側壁部33及び接続部35に成形される。
【0090】
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0091】
(実施例1〜3)
熱可塑性樹脂シートとして、厚さ0.7mmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートを用い、所定形状に打ち抜き、折曲げ位置に押し罫線を入れた。次に、図1に示した形状であって、且つ、表1に示すクリアランスを有する金型を用いて熱可塑性樹脂シートを押圧し、金型を表1に示す温度に加熱し、押圧・加熱成形を行った。その後、金型を40℃まで冷却し、リフレクタを取り出した。
【0092】
(実施例4)
熱可塑性樹脂シートとして、厚さ0.7mmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートを用い、所定形状に打ち抜き、折曲げ位置に押し罫線を入れた。次に、図5に示した形状であって、且つ、表1に示すクリアランスを有する金型を用いて熱可塑性樹脂シートを押圧し、金型を120℃に加熱し、押圧・加熱成形を行った。その後、金型を40℃まで冷却し、リフレクタを取り出した。
【0093】
(実施例5)
熱可塑性樹脂シートとして、厚さ0.7mmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートを用い、所定形状に打ち抜き、折曲げ位置に押し罫線を入れた。次に、図6に示した形状であって、且つ、表1に示すクリアランスを有する金型を用いて熱可塑性樹脂シートを押圧し、金型を100℃に加熱し、押圧・加熱成形を行った。その後、金型を40℃まで冷却し、リフレクタを取り出した。
【0094】
(実施例6)
熱可塑性樹脂シートとして、厚さ0.7mmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートを用い、所定形状に打ち抜き、折曲げ位置に押し罫線を入れた。次に、図6に示した形状であって、且つ、表1に示すクリアランスを有する金型を用いて熱可塑性樹脂シートを押圧し、金型を100℃に加熱し、押圧・加熱成形を行った。その後、金型を40℃まで冷却し、リフレクタを取り出した。
【0095】
(比較例1〜5)
熱可塑性樹脂シートとして、厚さ0.7mmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートを用い、所定形状に打ち抜き、折曲げ位置に折曲げ線を入れた。次に、図15に示す形状であって、且つ、表1に示すクリアランスを有する金型を用いて熱可塑性樹脂シートを押圧し、金型を表1に示す温度に加熱し、押圧・加熱成形を行った。その後、金型を40℃まで冷却し、リフレクタを取り出した。
【0096】
<リフレクタの寸法測定>
実施例1〜6及び比較例1〜5で得られたリフレクタについて、それぞれ金型成形前(すなわち熱可塑性樹脂シートの段階)、金型から取り出した直後、及び70℃環境下に1時間放置後に寸法測定を行った。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
<リフレクタの形状安定性評価>
また、各リフレクタについて、70℃、1時間放置の前後にて、図16に示すように、リフレクタの底部と側壁部(短い側)とのなす角θと、リフレクタの開口部側の両側壁部間の幅Wとを測定した。結果を表2に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
表2から明らかなように、実施例1〜6については、金型成形後の角度θの値がマイナスを示し、一回の金型成形によって90度以上に折曲げ成形が可能であることが確認された。また、70℃、1時間放置後においても、90度以上の折曲げ状態を保ち、設計上の寸法公差内に入っており、曲げ戻りは見られなかった。また、70℃、1時間放置後において、さらに折曲げ角度が大きくなる傾向も見られた。
寸法公差規格:6.389+0.05/−0.10(6.289〜6.439)
【0101】
(実施例7)
実施例7では、図1に示した形状の金型10の雌金型11にエア噴出し孔121を備え、雄金型12にエア噴出し孔122を備えた図17に示す金型10Aを利用してリフレクタを製造した。
熱可塑性樹脂シートとして、厚さ0.7mmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートを用い、所定形状に打ち抜き、折曲げ位置に押し罫線を入れた。次に、図17に示した形状の金型10Aを用いて熱可塑性樹脂シートを押圧し、金型10Aを100℃に加熱し、押圧・加熱成形を行った。その後、金型10Aをポリエチレンテレフタレート樹脂シートのガラス転移温度(Tg=80℃)まで水冷による金型冷却を行った。その後、リフレクタを金型10Aから取り出す際に、雌金型11のエア噴出し孔121及び雄金型12のエア噴出し孔122を利用してリフレクタにエアを放出し、リフレクタを40℃まで冷却し、リフレクタを取り出した。
実施例7の結果、水冷により金型を40℃まで冷却する場合に比較して、冷却時間が金型のみの冷却では69秒であったのに対して、エア冷却を併用したときは15秒と約5分の1に短縮された。これにより、リフレクタの製造時間を短縮させることができる。
【符号の説明】
【0102】
10 金型
11 雌金型
12 雄金型
13 底面
14 内側面
15 雌側傾斜面
16 突出面
17 側面
18 雄側傾斜面
19 凸部
20 熱可塑性樹脂シート
21 折曲げ線
30 リフレクタ
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂シートを折曲げ成形するための折曲げ成型用金型と熱可塑性樹脂シートの折曲げ成型方法、及びこれらを用いて成形された熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形体に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、コンピュータなどの表示装置として、省電力で薄型、軽量であることから、液晶表示装置が多く用いられている。
【0003】
液晶表示装置に用いられるバックライト装置としては、液晶表示装置の表示部背面に複数の光源を配置した直下型バックライト装置と、表示部側方に光源を配置したサイドエッジ型バックライト装置とが知られている。サイドエッジ型バックライト装置は、薄型が要求されるノート型パソコン等の液晶表示装置に用いられている。
【0004】
従来のサイドエッジ型のバックライト装置を備えた液晶表示装置の一例を図18に示す。図18は、従来の液晶表示装置を示す分解斜視図である。
液晶表示装置200は、液晶パネル201と液晶パネル201を照射するためのバックライト装置202とを有している。バックライト装置202は、表面に凹凸が形成された透明なアクリル樹脂等からなる導光板204と、導光板の両側面に沿って配設された2つの線状光源205と、線状光源205から出射された光を導光板204の側面に向けて反射させるリフレクタ206と、導光板204から出射された光を拡散させて輝度ムラを少なくするための拡散シート207aと、拡散シート207aにより拡散された光を集光するレンズシート208と、レンズシート208により集光された光を再び拡散させる拡散シート207bと、導光板204から出射した光を前面に反射させる反射板209と、を有している。導光板204、拡散シート207a,207b、レンズシート208、光源205、リフレクタ206および反射板209は、樹脂製フレーム210に組み込まれ、バックライト装置202として、液晶パネル201の背面に配置されている。
【0005】
上記構成の液晶表示装置200においては、線状光源205から導光板204内に導かれた光は、導光板204で拡散、散乱されて、導光板全面から均一に出射される。導光板204からの面状の出射光は、さらに、拡散シート207a、レンズシート208、及び拡散シート207bを透過することによって拡散され、液晶パネル201を照明する。
【0006】
上記リフレクタ206は、線状光源205と略同長のステンレスやアルミニウム等の金属板から構成され、図示のように、一面を開口する断面略コ字状に成形されており、組立て時には、線状光源205を内部に収納し、開口面を導光板204側面に対向配置される。そして、従来のリフレクタの内面には、線状光源からの光を反射して効率よく導光板に入射させるために、銀蒸着シートが貼着され(特許文献1参照)、あるいは金属酸化物、金属窒化物又は金属炭化物等からなる白色塗料が塗布されている(特許文献2参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特開2006−32273号公報(段落0034)
【特許文献2】特開2007−66611号公報(段落0028)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
しかしながら、従来の金属板を用いたリフレクタは、反射率が十分ではなく、液晶表示装置の高輝度化に限界があるという問題があった。又、金属との複合品であることからコストがかかっていた。
【0009】
上記問題を解決するためには、金属板に代えて、光の反射率の高い内部に微細な気泡または気孔を有する熱可塑性樹脂シート、熱可塑性樹脂シートに反射フィルムを貼合した積層シート、又は、熱可塑性樹脂シートに金属粒子を蒸着したシート等を用い、これを、金型を用いて断面略コ字状に加熱成形することが考えられる。
【0010】
しかしながら、これら熱可塑性樹脂シートを主な材料とするリフレクタを、金型を用いて加熱成形する場合、金属板からなるリフレクタにおいては生じなかった、曲げ戻り(スプリングバック現象)が発生するため、形状安定性に劣るという問題がある。一般に、成形後のリフレクタはバックライトメーカーへ送られ、そこでバックライトパネルとして組立てられるが、その際、輸送時の車内温度は最大70℃に達することもある。このような高温環境下におかれた場合、リフレクタが輸送中又は倉庫保管中に開いてしまい、組立てが困難となったり、場合によっては組立不能となったりする。これを抑制するためには、成形時に90度以上に折り曲げておくことによって、高温環境下での形状変化を抑制することが考えられるが、金型を用いた折曲げ成形では90度以上に折り曲げることは困難であるため、金型を用いて一旦90度に折曲げる工程を経た後に、他の手段によって再度90度以上に折曲げる工程を実施するといった2工程を要することになり、工程数の増加や設備投資の増大により、生産性が悪化してしまう。
【0011】
そこで、本発明の目的は、形状安定性に優れた熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形体を、容易に且つ大幅な設備投資を要することなく製造することができる金型及び該金型を用いた熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形体の製造方法、並びにこれらを用いて成形された熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形体を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0012】
上述の目的を達成するために、本発明にかかる金型は、雌金型と雄金型とを有し、熱可塑性樹脂シートを折曲げ成形するための金型であって、前記雄金型が、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部に対応する部分に、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すための凸部を有することを特徴とする。
【0013】
前記金型において、前記雌金型が、底面と、前記底面に対して略垂直な内側面とを有し、前記雄金型が、前記雌金型の前記底面に対向する突出面と、前記雌金型の前記内側面に対向する側面とを有し、前記雄金型の前記突出面及び前記側面のうち少なくとも一方の面が、前記樹脂シートを前記雌金型の前記内周面に向けて厚さ方向に押し潰すための押圧面であることが好ましい。
【0014】
また、前記雌金型が前記底面と前記内側面との間に形成された雌側傾斜面をさらに有し、前記雄金型が、前記雌側傾斜面に対向して、前記側面と前記突出面との間に形成された雄側傾斜面をさらに有し、前記雄金型の前記凸部が、前記雄側傾斜面上の、前記雌金型の前記内側面と前記雌側傾斜面との境界に対応する部分および前記雌側傾斜面と前記雌金型の前記底面との境界に対応する部分に設けられていることが好ましい。
【0015】
さらに、前記金型において、前記熱可塑性樹脂シートの厚さをt(mm)、前記雌金型の前記内側面と前記雄金型の前記側面との間のクリアランスをa(mm)、前記雌側傾斜面と前記雄側傾斜面との間のクリアランスをb(mm)、前記雌金型の前記底面と前記雄金型の前記突出面との間のクリアランスをc(mm)としたとき、t≧b>a≧cの関係を満たすことが好ましい。
【0016】
さらに、前記雌金型の前記内側面と前記雌側傾斜面とのなす角をα(度)とし、前記雌金型の前記底面と前記雌側傾斜面とのなす角をβ(度)としたとき、前記雄側傾斜面上の前記雌金型の前記内側面と前記雌側傾斜面との境界に対応する部分に設けられた前記雄金型の前記凸部は、頂角がγ(度)の断面三角形状を有し、前記雄側傾斜面上の前記雌金型の前記底面と前記雌側傾斜面との境界に対応する部分に設けられた前記雄金型の前記凸部は、頂角がδ(度)の断面三角形状を有し、α>γ及びβ>δの関係を満たすことが好ましい。
【0017】
さらにまた、前記雄金型の前記凸部が、頂角が略90度以下の断面三角形状を有することが好ましい。
【0018】
本発明にかかる熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法は、上述のいずれかの金型を用いて、前記熱可塑性樹脂シートを押圧する押圧工程を有することを特徴とする。
【0019】
前記熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法において、前記押圧工程の後に、前記金型を70℃以上200℃以下に加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後に前記金型を40℃以下に冷却する冷却工程とを有することが好ましい。
【0020】
また、前記熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法において、前記冷却工程は、前記金型を前記熱可塑性樹脂シートのガラス転移温度(Tg)まで水冷する水冷工程と、前記水冷工程の後に、前記熱可塑性樹脂シートにエアを噴きつけることにより40℃以下に冷却する空冷工程とを有することが好ましい。
【0021】
また、前記熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法において、前記加熱工程は、前記金型を超音波で振動させることにより加熱してもよい。
【0022】
さらに、前記熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法において、前記押圧工程では、前記熱可塑性樹脂シートを、294MPa以上の圧力で押圧することが好ましい。
【0023】
さらにまた、前記熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法において、前記押圧工程の前に、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部分に折曲げ線を設ける折曲げ線形成工程を有することが好ましい。
【0024】
本発明にかかる熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形体は、底部と、前記底部に対して立設された側壁部と、前記底部と前記側壁部とを接続する接続部とを有し、前記側壁部は、前記側壁部と前記接続部との間の折曲げ部を基点として前記樹脂シートの肉厚が薄い部分を有し、前記底部は、前記底部と前記接続部との間の折曲げ部を基点として前記熱可塑性樹脂シートの肉厚が薄い部分を有し、前記側壁部が前記底部に対して、前記底部側に90度以上折曲がっていることを特徴とする。
【0025】
前記熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形体において、前記側壁部の厚さをA(mm)、前記接続部の厚さをB(mm)、前記底部の厚さをC(mm)とすると、B>A≧Cの関係を満たすことが好ましい。
【発明の効果】
【0026】
本発明の金型及び熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形体の製造方法においては、金型に設けた凸部で、熱可塑性線樹脂シートの折曲げ部をシートの厚さ方向に押し潰し、折曲げ部を介して連結された熱可塑性樹脂シートの2つの面に、互いに引き合う方向の力を生じさせる。これにより、一回の金型成形で、熱可塑性樹脂シートを90度以上に折曲げ成形することができるので、工程数の増加や大幅な設備投資を要することなく、熱可塑性樹脂シート20のスプリングバック現象の発生を抑制し、形状安定性に優れた熱可塑性樹脂シートの成形体を製造することができる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施形態にかかる金型を示す側面図である。
【図2】本発明の実施形態にかかるリフレクタの製造方法を説明するための図である。
【図3】本発明の金型を用いて成形されたリフレクタを示す斜視図である。
【図4】本発明の金型を用いて成形されたリフレクタを示す側面図である。
【図5】本発明の第1の実施形態の変形例にかかる金型40を示す側面図である。
【図6】本発明の第2の実施形態にかかる金型50を示す側面図である。
【図7】本発明の第2の実施形態にかかる金型を用いて成形されたリフレクタを示す側面図である。
【図8】本発明に他の実施形態にかかる金型を示す側面図である。
【図9】金型の変形例を示す側面図である。
【図10】金型の他の変形例を示す側面図である。
【図11】シャーシ一体型リフレクタを示す斜視図である。
【図12】フォーミングロールによる熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形を説明するための概略斜視図である。
【図13】熱可塑性樹脂シートの搬送方向に対して垂直なロール回転軸を通る各成形ロールにおける断面図である。
【図14】熱可塑性樹脂シートの成形された状態を説明するための図である。
【図15】比較例の金型を示す側面図である。
【図16】リフレクタの形状安定性の評価方法を説明するための図である。
【図17】実施例7の金型を示す側面図である。
【図18】従来の液晶表示装置を示す分解斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0028】
以下に、本発明の実施の形態を図面に基づいて詳細に説明する。
(第1の実施形態)
図1は、本発明の第1の実施形態にかかる金型10を示す側面図である。本実施形態の金型10は、熱可塑性樹脂シートを主な材料として用いた断面略J字状のリフレクタ(図3、図4参照)を成形するための金型である。金型10は、図示のように、雌金型11と雄金型12とを有している。
【0029】
雌金型11は、底面13と、底面13に対して略垂直な内側面14と、底面13と内側面14との間に形成された雌側傾斜面15とを有している。
【0030】
雄金型12は、雌金型11の底面13に対向する突出面16と、雌金型11の内側面14に対向する側面17と、雌側傾斜面15に対向して、側面17と突出面16との間に形成された雄側傾斜面18とを有している。そして、この雄側傾斜面18には、折曲げ成形対象である熱可塑性樹脂シートの折曲げ部に対応する部分に、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すための凸部19が設けられている。
【0031】
凸部19は、雄側傾斜面18上の、雌金型11の内側面14と雌側傾斜面15との境界に対応する部分、及び、雌側傾斜面15と雌金型の底面13との境界に対応する部分に設けられている。凸部19は、頂角γ及びδが略90度の断面三角形状を有する線状突起であり、熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形時には、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すことが可能となっている。凸部19の頂角γ及びδの角度は特に限定されないが、押し潰し機能をより効果的に発揮させるためには90度程度の角度を有することが好ましい。
【0032】
上述した実施形態では、凸部19の頂角γ(度)及びδ(度)を略90度にしているが、雌金型11の内側面14と雌側傾斜面15のなす角をα(度)とし、雌側傾斜面15と雌金型の底面13のなす角をβ(度)としたとき、雄側傾斜面18上の雌金型11の内側面14と雌側傾斜面15との境界に対応する部分に設けられた凸部19の頂角γ(度)、及び、雄側傾斜面18上の雌側傾斜面15と雌金型の底面13のとの境界に対応する部分に設けられた凸部19の頂角δ(度)は、α>γ及びβ>δの関係を満たすように設定されることが好ましく、さらには、頂角γ及びδの角度は90度以下がより好ましい。
【0033】
また、上述した実施形態では、凸部19は、断面三角形状を有する線状突起であるが、凸部19と雄側傾斜面18との境界部分19a及び19bの断面が滑らかな曲線(R形状)を有する線状突起であってもよい。
【0034】
次に、本発明の成形対象である熱可塑性樹脂シートについて説明する。
本発明において、熱可塑性樹脂シートとは、熱可塑性樹脂シート単体で構成されたもの、熱可塑性樹脂シートに反射フィルムを貼合した積層シート、及び、熱可塑性樹脂シートに金属粒子を蒸着したシート等を含むものである。熱可塑性樹脂シートとしては、熱可塑性樹脂をシート状に加工した一般的なプラスチックシートの他、平均気泡径が50nm以上で50μm以下の微細な気泡または気孔を内部に有する熱可塑性発泡樹脂シートを挙げることができる。このような熱可塑性発泡樹脂シートとしては、例えば、ポリエチレンテレフタレートの押出シートに炭酸ガスを高圧下で含浸させた後、加熱し発泡させたシートで、内部の気泡径が50μm以下である発泡プラスチック製光反射シートがある(例えば古河電気工業製のMCPET(登録商標)等)。また、熱可塑性樹脂シートの他の例として、フィラーを含有する熱可塑性樹脂シートであって、フィラーを核として多数のボイドが成形されているシートを挙げることができる。
【0035】
次に、図1の金型10を用いてリフレクタを製造する方法について、図2を用いて説明する。
まず、図2(a)に示すように、熱可塑性樹脂シート20の目的とする折曲げ部分に折曲げ線21を設ける(折曲げ線形成工程)。折曲げ線21は、例えば、熱可塑性樹脂シート20を押圧して線状の凹み(押し罫線)を設けることにより成形するとよい。また、熱可塑性樹脂シート20の表面(線状光源を覆い光を反射する面)または裏面の表皮部分に、鋭利な刃物を用いて罫線状の切れ目またはミシン目を入れることにより成形してもよい。さらに、折曲げ線21は、表面から裏面に貫通するミシン目によって成形してもよい。折曲げ線形成工程は省略可能であるが、この工程を経ることにより、後に熱可塑性樹脂シート20が金型10に挿入される際に、各面の成形位置がずれることなく成形を行うことができる。
【0036】
次に、図2(b)に示すように、金型10に、熱可塑性樹脂シート20をセットする(シートセット工程)。
【0037】
次に、図2(c)に示すように、雌金型11と雄金型12とにより、熱可塑性樹脂シート20を挟持して押圧する(押圧工程)。押圧時の圧力は、高圧力であることが好ましく、294MPa(3.0t/cm2)以上であることが好ましい。また、加圧時間は、雌金型11及び雄金型12が下記所定の温度に達する時間以上であればよく、長くすることが好ましいが、長くすると製造時間が長くなるため量産性に適さなくなる。
【0038】
次に、図2(d)に示すように、雌金型11及び雄金型12をヒータ等により70℃以上200℃以下に加熱する(金型加熱工程)。金型の温度は、70℃より低いと、成形後、高温環境下(70℃)で曲げ戻り(スプリングバック現象)が起こり形状を維持することができないため、70℃以上200℃以下とすることが好ましいが、高温で加熱すると紫外線防止剤が変色するため、例えば熱可塑性樹脂シート20に紫外線防止剤の塗布層が設けられている場合は、150℃以下とすることが好ましい。
【0039】
金型10の加熱工程は、押圧工程の前に実施してもよい。すなわち、予め金型10を加熱しておいてから熱可塑性樹脂シート20を押圧してもよい。また、熱可塑性樹脂シート20を予め加熱しておいてもよい。
【0040】
次に、図2(e)に示すように、雌金型11及び雄金型12を冷却水により40℃以下に冷却し(冷却工程)、熱可塑性樹脂シート20を金型10から取り出す。
上記の冷却工程において、雌金型11及び雄金型12を冷却水によりガラス転移温度(Tg)まで冷却し(水冷工程)、その後に、成形された熱可塑性樹脂シート20にエアを噴きつけることにより、熱可塑性樹脂シート20を40℃以下に冷却し(空冷工程)、熱可塑性樹脂シート20を金型10から取り出すようにしても良い。
【0041】
なお、本実施の形態においては、金型10をヒータ等により加熱した後冷却水で冷却するようにしたが、これに限定されることはなく、例えば、雄金型12を振動子として超音波振動させるようにするとよい。これにより、雌金型11とで熱可塑性樹脂シート20を挟んで押圧した際、最も圧力のかかる凸部19に振動が集中するため、熱可塑性樹脂シート20の折り曲げ箇所に相当する部分が集中的に加熱・延伸される。その結果、効率よく成形性を向上させることができる。
【0042】
以上の工程により、図3及び図4に示すような、底部31と、底部31に対して立設された側壁部32及び33と、底部31と側壁部32及び33とをそれぞれ接続する接続部34及び35とを有する断面略J字状に成形されたリフレクタ30を得ることができる。
【0043】
このようにして得られたリフレクタ30においては、雄金型12の凸部19によって折曲げ線21の部分が押し潰されることで、図3及び図4に示すように、側壁部32及び33が、それぞれ接続部34及び35との間の折曲げ部21a及び21dを基点として肉厚が薄くなっており、且つ、底部31は、接続部34及び35との間の2つの折曲げ部21b及び21cを基点として肉厚が薄くなっている。これにより、折曲げ部21a、21b、21c及び21dを介して互いに連結された2つの面(すなわち、側壁部32の内側面32aと接続部34の内側面34a、接続部34の内側面34aと底部31の上面31a、底部31の上面31aと接続部35の内側面35a、接続部35の内側面35aと側壁部33の内側面33a)に、互いに引き合う方向の応力が働くため、得られたリフレクタ30は、図3及び図4に示すように、側壁部32及び33が底部31に対して、底部側に90度以上折れ曲がった形状となり、熱可塑性樹脂シート20の曲げ戻り(スプリングバック現象)が抑制される。
【0044】
また、熱可塑性樹脂シート20の折曲げ部だけでなく、シート全体を厚さ方向に押し潰して成形すると成形が容易になり、成形後の形状安定性もよい。
図4に示すように、リフレクタ30の側壁部32及び33の厚さをA、接続部34及び35の厚さをB、底部31の厚さをCとし、熱可塑性樹脂シート20の厚さをtとしたとき、
t≧B>A≧C (式1)
の関係を満たすことが好ましい。例えば、t=0.4〜1mmのとき、Cはtの28%〜72%、さらに好ましくは38%〜56%であり、Aはtの28%〜93%、さらに好ましくは82%〜90%であり、Bはtと略同一であることが好ましい。
【0045】
底部31を押し潰す場合、すなわちt>Cの条件を満たす場合、底部31と連結された2つの接続面34及び35において、底部31側に向かおうとする応力が助長されるため、形状安定性をより高めることができる。
【0046】
接続部34及び35については、押し潰してもよいが(すなわちt>B)、この部分の押し潰し量が大きいと折曲げ部21a、21b、21c及び21dの押し潰し量が減少するため、折曲げ部21a、21b、21c及び21dを介して互いに連結された2つの面に生じる互いに引き合う方向の応力が低下する。したがって、t=Bの条件がより好ましい。
【0047】
側壁部32及び33については、押し潰さなくても底部31よりも曲げ戻りに影響しないが、側面部32及び33の押し潰し量が少ないと、折曲げ部21a、21b、21c及び21dの押し潰し量も減少するため、折曲げ部21a、21b、21c及び21dを介して互いに連結された2つの面に生じる互いに引き合う方向の応力が低下する。したがって、t>Aの条件が好ましい。
【0048】
具体的には、例えばt=0.7mmの場合、C=0.2〜0.5mm、特に0.27〜0.39mmが好ましい。0.5mmより厚いと、特に高温環境下で曲げ戻りが生じやすくなる。一方、0.2mmより薄く押し潰すと、線状光源のリフレクタとしての本来の機能、すなわち反射特性が低下する。また、A=0.2〜0.65mm、特に0.58〜0.63mmが好ましい。
【0049】
上記式(1)で示した各部位の厚さの関係を実現するために、雌金型11と雄金型12の各クリアランスは、以下のように設定されることが好ましい。
すなわち、図1に示すように、雌金型11の内側面14と雄金型12の側面17との間のクリアランスをa(mm)、雌側傾斜面15と雄側傾斜面18との間のクリアランスをb(mm)、雌金型11の底面13と雄金型12の突出面16との間のクリアランスをc(mm)としたとき、
t≧b>a≧c (式2)
の関係を満たすように設定されることが好ましい。このようにクリアランスa及びcを、熱可塑性樹脂シート20の厚さtより小さくなるように設定することで、雄金型12の側面17及び突出面16が、熱可塑性樹脂シート20を雌金型11の内周面に向けて押し潰す、押圧面として機能する。
【0050】
cはtの28%〜43%が好ましく、aはtの28%〜86%、さらに好ましくは72%〜86%であり、bはtと略同一であることが好ましい。具体的には、例えば、t=0.7mmの場合、c=0.2〜0.3mmが好ましく、a=0.2〜0.6mm、特に0.5〜0.6mmが好ましく、b=0.7mmが好ましい。
【0051】
以上説明したように、本実施形態によれば、一回の金型成形で、熱可塑性樹脂シート20を90度以上に折曲げ成形することができるので、工程数の増加や大幅な設備投資を要することなく、熱可塑性樹脂シート20のスプリングバック現象の発生を抑制し、形状安定性に優れた熱可塑性樹脂シート20の成形体を製造することができる。
【0052】
なお、本実施形態においては、断面略J字状のリフレクタ30を成形する場合を例に説明したが、両側壁部の長さが同一の断面略U字状のリフレクタを成形することももちろん可能である。
【0053】
また、本実施形態においては、熱可塑性樹脂シート20を用いて、液晶表示装置に使用されるバックライトユニットのリフレクタ30を成形する場合を例に説明したが、本発明の適用対象はこれに限定されない。本発明は、スプリングバック力を有する熱可塑性樹脂シートを用いた折曲げ成形体の成形であればいずれにも適用することができ、形状保持のための工程数の削減及び生産性の向上に寄与することができる。
【0054】
(第1の実施形態の変形例)
図5は、本発明の第1の実施形態の変形例にかかる金型40を示す側面図である。本実施形態の金型40は、熱可塑性樹脂シートを主な材料として用いた断面略J字状のリフレクタ(図3、図4参照)を成形するための金型である。尚、金型40の説明では、図1の第1の実施形態にかかる金型10との相違点を詳細に記載する。
【0055】
図5に示すように、雌金型41は、底面43と、底面43に対して略垂直な内側面44と、底面43と内側面44との間に形成された雌側傾斜面45とを有している。
【0056】
雄金型42は、雌金型41の底面43に対向する突出面46と、雌金型41の内側面44に対向する側面47と、雌側傾斜面45に対向して、側面47と突出面46との間に形成された雄側傾斜面48とを有している。そして、この雄側傾斜面48と側面47との間、及び、この雄側傾斜面48と突出面46との間には、折曲げ成形対象である熱可塑性樹脂シートの折曲げ部に対応する部分に、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すための凸部49が設けられている。
【0057】
また、雄側傾斜面48と側面47との間の凸部49、及び、この雄側傾斜面48と突出面46との間の凸部49は、それぞれ、雌金型41の内側面44と雌側傾斜面45との境界に対応する部分、及び、雌側傾斜面45と雌金型の底面43との境界に対応する部分に設けられている。凸部49は、断面三角形状を有する線状突起であり、熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形時には、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すことが可能となっている。尚、凸部49の頂角の角度は特に限定されないが、押し潰し機能をより効果的に発揮させるためには鋭角であることが好ましい。
【0058】
また、雌金型41と雄金型42の各クリアランスは、以下のように設定されることが好ましい。すなわち、図5に示すように、雌金型41の内側面44と雄金型42の側面47との間のクリアランスをa(mm)、雌側傾斜面45と雄側傾斜面48との間のクリアランスをb(mm)、雌金型41の底面43と雄金型42の突出面46との間のクリアランスをc(mm)としたとき、
a≒b≒c≒t (式3)
の関係を満たすように設定される。
【0059】
また、図2と同様の工程により、図3及び図4に示すような、底部31と、底部31に対して立設された側壁部32及び33と、底部31と側壁部32及び33とをそれぞれ接続する接続部34及び35とを有する断面略J字状に成形されたリフレクタ30を得ることができる。但し、厚さはA≒B≒Cとなる。
【0060】
(第2の実施形態)
図6は、本発明の第2の実施形態にかかる金型50を示す側面図である。本実施形態の金型50は、熱可塑性樹脂シートを主な材料として用いた断面略J字状のリフレクタ(図7参照)を成形するための金型である。金型50は、図示のように、雌金型51と雄金型52とを有している。尚、金型50の説明では、図1の第1の実施形態にかかる金型10との相違点を詳細に説明する。
【0061】
雌金型51は、略平行な2つの内側面54と、この内側面54に対して断面が滑らかな曲線(R形状)を有する底面53とを有している。
【0062】
雄金型52は、雌金型51の内側面54に対向する側面57と、雌金型51の底面53に対向する突出面56とを有している。この突出面56は、底面53に対向させたとき、突出面56と底面53との間隔がこの突出面56上において略同じとなる、断面が滑らかな曲線(R形状)を有している。そして、この突出面56には、折曲げ成形対象である熱可塑性樹脂シートの折曲げ部に対応する部分に、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すための3ヶ所の凸部59が設けられている。
【0063】
凸部59は、突出面56上の、雌金型51の内側面54と雌金型51の底面53との境界に対応する部分、及び、雌金型51の底面53の中央部分に対応する部分に設けられている。凸部59は、頂角が略90度の断面三角形状を有する線状突起であり、熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形時には、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すことが可能となっている。凸部59の頂角の角度は特に限定されないが、押し潰し機能をより効果的に発揮させるためには90度程度の角度を有することが好ましい。
また、図6に示すように、雌金型41の内側面54と雄金型52の側面57との間のクリアランスをd(mm)、雌金型51の底面53と雄金型52の突出面56との間のクリアランスをe(mm)とする。
【0064】
また、図2と同様の工程により、図7に示すような、内側に湾曲した湾曲部64及び湾曲部65と、湾曲部64及び湾曲部65に対して立設された側壁部62及び63とを有する断面略J字状に成形されたリフレクタ60を得ることができる。
【0065】
このようにして得られたリフレクタ60においては、雄金型52の凸部59によって折曲げ線の部分が押し潰されることで、図7に示すように、側壁部62と湾曲部64との間の折曲げ部25aの近傍の肉厚、湾曲部64と湾曲部65との間の折曲げ部25bの近傍の肉厚、及び、湾曲部65と側壁部63との間の折曲げ部25cの近傍の肉厚が、それぞれ折曲げ部25a、25b及び25cを基点として薄くなっている。
【0066】
また、図7に示すように、側壁部62の外側面62bと湾曲部64の外側面64bは、断面が滑らかな曲線(R形状)で連結され、湾曲部65の外側面65bと側壁部63の外側面63bは、断面が滑らかな曲線(R形状)で連結されている。また、湾曲部64の外側面64bと湾曲部65の外側面65bも連結されており、連結された湾曲部64の外側面64bと湾曲部65の外側面65bは、連結部も含め全面において、断面が滑らかな曲線(R形状)を有している。
【0067】
これにより、折曲げ部25a、25b及び25cを介して互いに連結された2つの面(すなわち、側壁部62の内側面62aと湾曲部64の内側面64a、湾曲部64の内側面64aと湾曲部65の内側面65a、湾曲部65の内側面65aと側壁部63の内側面63a)に、互いに引き合う方向の応力が働くため、得られたリフレクタ60は、図7に示すように、側壁部62及び63の上端部が、側壁部62及び63の湾曲部64及び湾曲部65に接続されている下部に比較して、折曲げ部25bを通る平面Pに対してより近接した形状となり、熱可塑性樹脂シートの曲げ戻り(スプリングバック現象)が抑制される。
【0068】
(第3の実施形態)
図8は、本発明の第3の実施形態にかかる金型70を示す側面図である。本実施形態の金型70は、熱可塑性樹脂シートを主な材料として用いた断面略L字状の成形体を成形するための金型である。金型70は、図示のように、雌金型71と雄金型72とを有している。
【0069】
雌金型71は、底面73と、底面73に対して略垂直な内側面74とからなる断面L字形状の金型である。雄金型72は、雌金型71の底面73に対向する下面76と、雌金型1の内側面74に対向する側面77とを有している。そして、雄金型72の角部には、折曲げ成形対象である熱可塑性樹脂シートの折曲げ部に対応する部分に、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すための凸部75が設けられている。
【0070】
凸部75は、略直方体であり、その一長辺が雌金型71の角部に対向するように設けられ、熱可塑性樹脂シートの折曲げ成形時には、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すことが可能となっている。なお、凸部75の形状は、図8に示す形状に限定されず、熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すことができればどのような形状であってもよい。例えば、凸部75に代えて、図9及び図10に示すような、頂角が鋭角の断面三角形状を有する線状突起78及び79を採用することができる。図9に示す金型を用いると、熱可塑性樹脂シートは折り曲げ部、底部の一部及び側部の一部が厚さ方向に押し潰された形状となる。また、図10に示す金型を用いると、熱可塑性樹脂シートは折り曲げ部、底部及び側部の一部が厚さ方向に押し潰された形状となる。
【0071】
このような形状の金型70を用いて、上記第1の実施形態と同様にして、熱可塑性樹脂シートを折曲げ成形することで、断面略L字状の成形体を得ることができる。得られた成形体においては、雄金型72の凸部75によって折曲げ部が押し潰されることで、折曲げ部を介して連結された2つの面に、互いに引き合う方向の応力が働く。このため、一端部が90度以上の角度で折曲げられた熱可塑性樹脂シートの成形体を得ることができる。
【0072】
本実施形態においても、一回の金型成形で、熱可塑性樹脂シートを90度以上に折曲げ成形することができるので、工程数の増加や大幅な設備投資を要することなく、熱可塑性樹脂シートのスプリングバック現象の発生を抑制し、形状安定性に優れた熱可塑性樹脂シートの成形体を製造することができる。
【0073】
また、本発明の第1の実施形態の金型10と、第3の実施形態の金型70を用いることで、例えば、図11に示すような、バックライト装置のシャーシ一体型リフレクタ80を成形することができる。このようなシャーシ一体型リフレクタ80を成形する際には、例えば、組み立てたときに目的の形状となるような展開形状に熱可塑性樹脂シートを打ち抜いておき、金型70を用いてシャーシ(筐体)81の2つの側面部82を折曲げ成形し、最後に金型10を用いて、2つのリフレクタ83を折曲げ成形する。これにより、形状安定性に優れたシャーシ一体型リフレクタ80を得ることができる。
【0074】
上述したリフレクタは金型を使用して成形したが、フォーミングロールを使用して成形することも可能である。図12、図13及び図14を用いて、フォーミングロールを使用してリフレクタを製造する方法を説明する。図12は、フォーミングロールによる熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形を説明するための概略斜視図で、図12(a)は、第1成形ロールにおける概略斜視図であり、図12(b)は、第2成形ロールにおける概略斜視図であり、図12(c)は、第3成形ロールにおける概略斜視図であり、図12(d)は、第4成形ロールにおける概略斜視図である。
【0075】
また、図13は、熱可塑性樹脂シートの搬送方向に対して垂直なロール回転軸を通る各成形ロールにおける断面図で、図13(a)は、第1成形ロールにおける断面図であり、図13(b)は、第2成形ロールにおける断面図であり、図13(c)は、第3成形ロールにおける断面図であり、図13(d)は、第4成形ロールにおける断面図である。
【0076】
また、図14は、熱可塑性樹脂シートの成形された状態を説明するための図であり、図14(a)は、第1段階の成形後の熱可塑性樹脂シートの状態を示す図であり、図14(b)は、第2段階の成形後の熱可塑性樹脂シートの状態を示す図であり、図14(c)は、第3段階の成形後の熱可塑性樹脂シートの状態を示す図であり、図14(d)は、第4段階の成形後の熱可塑性樹脂シートの状態を示す図である。尚、ここでは、4段階の成形からなるフォーミングロールを例として説明する。また、製造されたリフレクタは、図3及び図4に示す断面略J字状のリフレクタの場合を例に挙げて説明する。
【0077】
図12(a)、(b)、(c)及び(d)、並びに、図13(a)、(b)、(c)及び(d)に示すように、熱可塑性樹脂シート20は、4段階の成形を経て、図3及び図4に示すようなリフレクタ30が製造される。これは、各段階において少しずつ、熱可塑性樹脂シート20を成形することにより、無理な変形や、歪を生じさせないためである。第1段階の成形は第1成形ロール91によって、第2段階の成形は第2成形ロール92によって、第3段階の成形は第3成形ロール93によって、第4段階の成形は第4成形ロール94によって、成形される。
【0078】
図12(a)及び図13(a)に示すように、第1成形ロール91は、第1成形下段ロール101及び第1成形上段ロール102からなり、第1成形下段ロール101及び第1成形上段ロール102はそれぞれ、ロール回転軸S1及びS2を中心に回転するロール回転軸S1及びS2を通る断面が同一の回転体である。
【0079】
第1成形下段ロール101は、円柱状の下段中央部101aと、下段中央部101aよりも半径の大きい円柱状の下段端部101cと、下段中央部101aと下段端部101cとの間を接続する断面台形の下段傾斜部101bとを有している。また、第1成形上段ロール102は、円柱状の上段中央部102aと、上段中央部102aよりも半径の小さい円柱状の上段端部102cと、上段中央部102aと上段端部102cとの間を接続する断面台形の上段傾斜部102bとを有している。
【0080】
また、下段中央部101aと上段中央部102aの幅(ロール回転軸S1及びS2方向の長さ)は略同じであり、下段端部101cと上段端部102cの幅は略同じであり、下段傾斜部101bと上段傾斜部102bの幅は略同じである。また、下段傾斜部101bと上段傾斜部102bの断面の台形の傾斜は略平行である。また、第1成形下段ロール101と第1成形上段ロール102との間隔(クリアランス)は熱可塑性樹脂シート20の厚さと略同じである。
【0081】
熱可塑性樹脂シート20は、第1成形下段ロール101と第1成形上段ロール102との間に挟まれながら搬送され、図14(a)に示すような、底部111と、底部111に対して立設された側壁部112及び113とを有する断面略J字状に成形される。なお、底部111と側壁部112及び113とのなす角は約28度となるように、第1成形ロール91が調整されている。
【0082】
図12(b)及び(c)、並びに、図13(b)及び(c)に示すように、第2成形ロール92及び第3成形ロール93も、第1成形ロール91と同様な構成となっている。図12(b)及び図13(b)に示すように、第2成形ロール92は、第2成形下段ロール103及び第2成形上段ロール104からなり、第2成形下段ロール103及び第2成形上段ロール104はそれぞれ、ロール回転軸S3及びS4を中心に回転するロール回転軸S3及びS4を通る断面が同一の回転体である。
【0083】
また、図12(c)及び図13(c)に示すように、第3成形ロール93は、第3成形下段ロール105及び第3成形上段ロール106からなり、第3成形下段ロール105及び第3成形上段ロール106はそれぞれ、ロール回転軸S5及びS6を中心に回転するロール回転軸S5及びS6を通る断面が同一の回転体である。
【0084】
第1成形ロール91により成形された熱可塑性樹脂シート20は、第2成形下段ロール103と第2成形上段ロール104との間に挟まれながら搬送され、図14(b)に示すような、底部111と、底部111に対して立設された側壁部112及び113とを有する断面略J字状に成形される。なお、底部111と側壁部112及び113とのなす角は約52度となるように、第2成形ロール92が調整されている。
【0085】
また、第2成形ロール92により成形された熱可塑性樹脂シート20は、第3成形下段ロール105と第3成形上段ロール106との間に挟まれながら搬送され、図14(c)に示すような、底部111と、底部111に対して立設された側壁部112及び113とを有する断面略J字状に成形される。なお、底部111と側壁部112及び113とのなす角は約72.5度となるように、第3成形ロール93が調整されている。
【0086】
図12(d)及び図13(d)に示すように、第4成形ロール94は、第4成形下段ロール107及び第4成形上段ロール108からなり、第4成形下段ロール107及び第4成形上段ロール108はそれぞれ、ロール回転軸S7及びS8を中心に回転するロール回転軸S7及びS8を通る断面が同一の回転体である。
【0087】
第4成形下段ロール107は、円柱状の下段中央部107aと、下段中央部107aよりも半径の大きい円柱状の下段端部107cと、下段中央部107aと下段端部107cとの間を接続する断面台形の下段傾斜部107bとを有している。更に、下段中央部107aの断面における、下段中央部107a、下段傾斜部107b及び下段端部107cからなる表面形状は、図5に示す雌金型41の断面形状(または、図1に示す雌金型11の断面形状)と同じである。
【0088】
また、第4成形上段ロール108は、図5に示す雄金型42の断面(または、図1に示す雄金型12の断面)と同じ断面の周面からなる回転体の上段中央部108aと円柱状の上段端部108cとを有している。また、第4成形下段ロール107と第4成形上段ロール108との間隔(クリアランス)は、図5の雌金型41と雄金型42の各クリアランス(または、図1の雌金型11と雄金型12の各クリアランス)と同じである。
【0089】
第3成形ロール93により成形された熱可塑性樹脂シート20は、第4成形下段ロール107と第4成形上段ロール108との間に挟まれながら搬送され、図14(d)に示すような、即ち、図3及び図4に示すような底部31、側壁部32及び33及び接続部34及び35からなるリフレクタ30を成形する。ここで、底部111が底部31に成形され、側壁部112が側壁部32及び接続部34に成形され、側壁部113が側壁部33及び接続部35に成形される。
【0090】
以下に、本発明を実施例に基づいてさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0091】
(実施例1〜3)
熱可塑性樹脂シートとして、厚さ0.7mmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートを用い、所定形状に打ち抜き、折曲げ位置に押し罫線を入れた。次に、図1に示した形状であって、且つ、表1に示すクリアランスを有する金型を用いて熱可塑性樹脂シートを押圧し、金型を表1に示す温度に加熱し、押圧・加熱成形を行った。その後、金型を40℃まで冷却し、リフレクタを取り出した。
【0092】
(実施例4)
熱可塑性樹脂シートとして、厚さ0.7mmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートを用い、所定形状に打ち抜き、折曲げ位置に押し罫線を入れた。次に、図5に示した形状であって、且つ、表1に示すクリアランスを有する金型を用いて熱可塑性樹脂シートを押圧し、金型を120℃に加熱し、押圧・加熱成形を行った。その後、金型を40℃まで冷却し、リフレクタを取り出した。
【0093】
(実施例5)
熱可塑性樹脂シートとして、厚さ0.7mmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートを用い、所定形状に打ち抜き、折曲げ位置に押し罫線を入れた。次に、図6に示した形状であって、且つ、表1に示すクリアランスを有する金型を用いて熱可塑性樹脂シートを押圧し、金型を100℃に加熱し、押圧・加熱成形を行った。その後、金型を40℃まで冷却し、リフレクタを取り出した。
【0094】
(実施例6)
熱可塑性樹脂シートとして、厚さ0.7mmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートを用い、所定形状に打ち抜き、折曲げ位置に押し罫線を入れた。次に、図6に示した形状であって、且つ、表1に示すクリアランスを有する金型を用いて熱可塑性樹脂シートを押圧し、金型を100℃に加熱し、押圧・加熱成形を行った。その後、金型を40℃まで冷却し、リフレクタを取り出した。
【0095】
(比較例1〜5)
熱可塑性樹脂シートとして、厚さ0.7mmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートを用い、所定形状に打ち抜き、折曲げ位置に折曲げ線を入れた。次に、図15に示す形状であって、且つ、表1に示すクリアランスを有する金型を用いて熱可塑性樹脂シートを押圧し、金型を表1に示す温度に加熱し、押圧・加熱成形を行った。その後、金型を40℃まで冷却し、リフレクタを取り出した。
【0096】
<リフレクタの寸法測定>
実施例1〜6及び比較例1〜5で得られたリフレクタについて、それぞれ金型成形前(すなわち熱可塑性樹脂シートの段階)、金型から取り出した直後、及び70℃環境下に1時間放置後に寸法測定を行った。結果を表1に示す。
【0097】
【表1】
【0098】
<リフレクタの形状安定性評価>
また、各リフレクタについて、70℃、1時間放置の前後にて、図16に示すように、リフレクタの底部と側壁部(短い側)とのなす角θと、リフレクタの開口部側の両側壁部間の幅Wとを測定した。結果を表2に示す。
【0099】
【表2】
【0100】
表2から明らかなように、実施例1〜6については、金型成形後の角度θの値がマイナスを示し、一回の金型成形によって90度以上に折曲げ成形が可能であることが確認された。また、70℃、1時間放置後においても、90度以上の折曲げ状態を保ち、設計上の寸法公差内に入っており、曲げ戻りは見られなかった。また、70℃、1時間放置後において、さらに折曲げ角度が大きくなる傾向も見られた。
寸法公差規格:6.389+0.05/−0.10(6.289〜6.439)
【0101】
(実施例7)
実施例7では、図1に示した形状の金型10の雌金型11にエア噴出し孔121を備え、雄金型12にエア噴出し孔122を備えた図17に示す金型10Aを利用してリフレクタを製造した。
熱可塑性樹脂シートとして、厚さ0.7mmのポリエチレンテレフタレート樹脂シートを用い、所定形状に打ち抜き、折曲げ位置に押し罫線を入れた。次に、図17に示した形状の金型10Aを用いて熱可塑性樹脂シートを押圧し、金型10Aを100℃に加熱し、押圧・加熱成形を行った。その後、金型10Aをポリエチレンテレフタレート樹脂シートのガラス転移温度(Tg=80℃)まで水冷による金型冷却を行った。その後、リフレクタを金型10Aから取り出す際に、雌金型11のエア噴出し孔121及び雄金型12のエア噴出し孔122を利用してリフレクタにエアを放出し、リフレクタを40℃まで冷却し、リフレクタを取り出した。
実施例7の結果、水冷により金型を40℃まで冷却する場合に比較して、冷却時間が金型のみの冷却では69秒であったのに対して、エア冷却を併用したときは15秒と約5分の1に短縮された。これにより、リフレクタの製造時間を短縮させることができる。
【符号の説明】
【0102】
10 金型
11 雌金型
12 雄金型
13 底面
14 内側面
15 雌側傾斜面
16 突出面
17 側面
18 雄側傾斜面
19 凸部
20 熱可塑性樹脂シート
21 折曲げ線
30 リフレクタ
【特許請求の範囲】
【請求項1】
雌金型と雄金型とを有し、熱可塑性樹脂シートを折曲げ成形するための金型であって、
前記雄金型は、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部に対応する部分に、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すための凸部を有することを特徴とする金型。
【請求項2】
前記雌金型が、底面と、前記底面に対して略垂直な内側面とを有し、
前記雄金型が、前記雌金型の前記底面に対向する突出面と、前記雌金型の前記内側面に対向する側面とを有し、
前記雄金型の前記突出面及び前記側面のうち少なくとも一方の面が、前記樹脂シートを前記雌金型の前記内周面に向けて厚さ方向に押し潰すための押圧面であることを特徴とする請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記雌金型が前記底面と前記内側面との間に形成された雌側傾斜面をさらに有し、
前記雄金型が、前記雌側傾斜面に対向して、前記側面と前記突出面との間に形成された雄側傾斜面をさらに有し、
前記雄金型の前記凸部が、前記雄側傾斜面上の、前記雌金型の前記内側面と前記雌側傾斜面との境界に対応する部分および前記雌側傾斜面と前記雌金型の前記底面との境界に対応する部分に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の金型。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂シートの厚さをt(mm)、前記雌金型の前記内側面と前記雄金型の前記側面との間のクリアランスをa(mm)、前記雌側傾斜面と前記雄側傾斜面との間のクリアランスをb(mm)、前記雌金型の前記底面と前記雄金型の前記突出面との間のクリアランスをc(mm)としたとき、t≧b>a≧cの関係を満たすことを特徴とする請求項3に記載の金型。
【請求項5】
前記雌金型の前記内側面と前記雌側傾斜面とのなす角をα(度)とし、前記雌金型の前記底面と前記雌側傾斜面とのなす角をβ(度)としたとき、
前記雄側傾斜面上の前記雌金型の前記内側面と前記雌側傾斜面との境界に対応する部分に設けられた前記雄金型の前記凸部は、頂角がγ(度)の断面三角形状を有し、
前記雄側傾斜面上の前記雌金型の前記底面と前記雌側傾斜面との境界に対応する部分に設けられた前記雄金型の前記凸部は、頂角がδ(度)の断面三角形状を有し、
α>γ及びβ>δの関係を満たすことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の金型。
【請求項6】
前記雄金型の前記凸部が、頂角が略90度以下の断面三角形状を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の金型。
【請求項7】
熱可塑性樹脂シートを折り曲げ成形する方法であって、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の金型を用いて、前記熱可塑性樹脂シートを押圧する押圧工程を有することを特徴とする熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法。
【請求項8】
前記押圧工程の後に、前記金型を70℃以上200℃以下に加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後に前記金型を40℃以下に冷却する冷却工程とを有することを特徴とする請求項7に記載の熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法。
【請求項9】
前記冷却工程は、前記金型を前記熱可塑性樹脂シートのガラス転移温度(Tg)まで水冷する水冷工程と、前記水冷工程の後に、前記熱可塑性樹脂シートにエアを噴きつけることにより40℃以下に冷却する空冷工程とを有することを特徴とする請求項8に記載の熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法。
【請求項10】
前記加熱工程は、前記金型を超音波で振動させることにより加熱することを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法。
【請求項11】
前記押圧工程では、前記熱可塑性樹脂シートを、294MPa以上の圧力で押圧することを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法。
【請求項12】
前記押圧工程の前に、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部分に折曲げ線を設ける折曲げ線形成工程を有することを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法。
【請求項13】
熱可塑性樹脂シートを折曲げ成形した折曲げ成形体であって、
底部と、前記底部に対して立設された側壁部と、前記底部と前記側壁部とを接続する接続部とを有し、
前記側壁部は、前記側壁部と前記接続部との間の折曲げ部を基点として前記樹脂シートの肉厚が薄くなっており、
前記底部は、前記底部と前記接続部との間の折曲げ部を基点として前記熱可塑性樹脂シートの肉厚が薄くなっており、
前記側壁部が前記底部に対して、前記底部側に90度以上折曲がっていることを特徴とする熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形体。
【請求項14】
前記側壁部の厚さをA(mm)、前記接続部の厚さをB(mm)、前記底部の厚さをC(mm)とすると、B>A≧Cの関係を満たすことを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形体。
【請求項1】
雌金型と雄金型とを有し、熱可塑性樹脂シートを折曲げ成形するための金型であって、
前記雄金型は、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部に対応する部分に、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部を厚さ方向に押し潰すための凸部を有することを特徴とする金型。
【請求項2】
前記雌金型が、底面と、前記底面に対して略垂直な内側面とを有し、
前記雄金型が、前記雌金型の前記底面に対向する突出面と、前記雌金型の前記内側面に対向する側面とを有し、
前記雄金型の前記突出面及び前記側面のうち少なくとも一方の面が、前記樹脂シートを前記雌金型の前記内周面に向けて厚さ方向に押し潰すための押圧面であることを特徴とする請求項1に記載の金型。
【請求項3】
前記雌金型が前記底面と前記内側面との間に形成された雌側傾斜面をさらに有し、
前記雄金型が、前記雌側傾斜面に対向して、前記側面と前記突出面との間に形成された雄側傾斜面をさらに有し、
前記雄金型の前記凸部が、前記雄側傾斜面上の、前記雌金型の前記内側面と前記雌側傾斜面との境界に対応する部分および前記雌側傾斜面と前記雌金型の前記底面との境界に対応する部分に設けられていることを特徴とする請求項2に記載の金型。
【請求項4】
前記熱可塑性樹脂シートの厚さをt(mm)、前記雌金型の前記内側面と前記雄金型の前記側面との間のクリアランスをa(mm)、前記雌側傾斜面と前記雄側傾斜面との間のクリアランスをb(mm)、前記雌金型の前記底面と前記雄金型の前記突出面との間のクリアランスをc(mm)としたとき、t≧b>a≧cの関係を満たすことを特徴とする請求項3に記載の金型。
【請求項5】
前記雌金型の前記内側面と前記雌側傾斜面とのなす角をα(度)とし、前記雌金型の前記底面と前記雌側傾斜面とのなす角をβ(度)としたとき、
前記雄側傾斜面上の前記雌金型の前記内側面と前記雌側傾斜面との境界に対応する部分に設けられた前記雄金型の前記凸部は、頂角がγ(度)の断面三角形状を有し、
前記雄側傾斜面上の前記雌金型の前記底面と前記雌側傾斜面との境界に対応する部分に設けられた前記雄金型の前記凸部は、頂角がδ(度)の断面三角形状を有し、
α>γ及びβ>δの関係を満たすことを特徴とする請求項3または請求項4に記載の金型。
【請求項6】
前記雄金型の前記凸部が、頂角が略90度以下の断面三角形状を有することを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか1項に記載の金型。
【請求項7】
熱可塑性樹脂シートを折り曲げ成形する方法であって、
請求項1から請求項6のいずれか1項に記載の金型を用いて、前記熱可塑性樹脂シートを押圧する押圧工程を有することを特徴とする熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法。
【請求項8】
前記押圧工程の後に、前記金型を70℃以上200℃以下に加熱する加熱工程と、前記加熱工程の後に前記金型を40℃以下に冷却する冷却工程とを有することを特徴とする請求項7に記載の熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法。
【請求項9】
前記冷却工程は、前記金型を前記熱可塑性樹脂シートのガラス転移温度(Tg)まで水冷する水冷工程と、前記水冷工程の後に、前記熱可塑性樹脂シートにエアを噴きつけることにより40℃以下に冷却する空冷工程とを有することを特徴とする請求項8に記載の熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法。
【請求項10】
前記加熱工程は、前記金型を超音波で振動させることにより加熱することを特徴とする請求項7から請求項9のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法。
【請求項11】
前記押圧工程では、前記熱可塑性樹脂シートを、294MPa以上の圧力で押圧することを特徴とする請求項7から請求項10のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法。
【請求項12】
前記押圧工程の前に、前記熱可塑性樹脂シートの折曲げ部分に折曲げ線を設ける折曲げ線形成工程を有することを特徴とする請求項7から請求項11のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形方法。
【請求項13】
熱可塑性樹脂シートを折曲げ成形した折曲げ成形体であって、
底部と、前記底部に対して立設された側壁部と、前記底部と前記側壁部とを接続する接続部とを有し、
前記側壁部は、前記側壁部と前記接続部との間の折曲げ部を基点として前記樹脂シートの肉厚が薄くなっており、
前記底部は、前記底部と前記接続部との間の折曲げ部を基点として前記熱可塑性樹脂シートの肉厚が薄くなっており、
前記側壁部が前記底部に対して、前記底部側に90度以上折曲がっていることを特徴とする熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形体。
【請求項14】
前記側壁部の厚さをA(mm)、前記接続部の厚さをB(mm)、前記底部の厚さをC(mm)とすると、B>A≧Cの関係を満たすことを特徴とする請求項13に記載の熱可塑性樹脂シートの折り曲げ成形体。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図2】
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【図17】
【図18】
【公開番号】特開2010−131961(P2010−131961A)
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−70438(P2009−70438)
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【国際特許分類】
【出願日】平成21年3月23日(2009.3.23)
【出願人】(000005290)古河電気工業株式会社 (4,457)
【Fターム(参考)】
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