説明

熱可塑性樹脂フィルムの製造装置及び製造方法

【課題】フィルム製造で発生する屑フィルムを再使用すると、塗膜を要因とした物などフィルム内の異物が増え、品質不備が発生したり、頻繁なポリマーフィルターの交換が必要であった。
【解決手段】溶融押出成形された基材フィルムの少なくとも片面に被膜が設けられたフィルムを走行させながら、該被膜に金属繊維製の毛を有する回転ブラシを接触させ、該被膜を除去するに際し、該金属繊維の線径を被膜の厚さの0.5〜7倍とし、且つ回転ブラシの表面速度を走行フィルム速度の30〜300倍とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、熱可塑性樹脂フィルムの再利用を効率的に再利用して、低コストでフィルムを製造する技術に関する。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂フィルムはその製膜工程で製品にならない耳部が発生する。また、広幅の中間製品から、所定幅の製品を得るためにスリットするのが一般的であり、この段階でも裁落及び広幅の中間製品の巻芯に残る部分が出てくる。これ以外にもスリットで発生する「しわ」、「端面不揃い」、「ゲージバンド」等の巻きの外観不良や、製膜工程で発生する熱可塑性樹脂フィルム表面の「傷」、「汚れ」、「穴開き」などの欠陥や、品種切り替え途中などのもので製品にならない部分が発生する。これらは以下のような方法で再利用されることがある。
【0003】
すなわち、フィルムを細かく粉砕、あるいはその後に圧縮したりして、押出機などで溶融後ストランドを得て、固形化し(リサイクルチップと呼ぶ)、再度同じあるいは同種の熱可塑性樹脂フィルムを製造するときに新しい未使用の熱可塑性樹脂(以下バージン原料またはバージンチップと呼ぶ)と共に投入して、押出機で溶融し、所定の熱可塑性樹脂フィルムを得ている。
【0004】
この再利用を有利に行うためには、例えば特許第3601729号公報にその製造装置と方法が示されている。この文献で、既に添加されているフィラーの影響が残る問題を挙げ、その対策として、製造装置におけるポリマーフィルターについて詳細構造を提案している。
【0005】
しかし再利用における問題点として、昨今は新たな問題が生じている。すなわち、熱可塑性フィルムは顧客での加工に適するように、易接着、易滑、剥離、帯電防止などの被膜を設ける事が多くなっている。この被膜が再利用工程の粉砕や溶融押出を通っても、被膜成分の粉砕や分散が不十分であったり、時には樹脂本来のゲル化を促進したりする。一方低コストでの熱可塑性樹脂フィルム生産のためには、再生原料の比率を上げる。するとその結果として、これらが原因となったゲル状の異物が発生し、品質維持ができなくなってしまう。それは生産の当初は問題ない個数だが経時で増加するため、頻繁にフィルター交換を実施しなえければならなくなってしまう事がある。製膜を止めずに、或は極めて短時間でフィルター交換を行う装置もあるが、何れにせよその期間は製品にならず、ロスになってしまう。
【0006】
頻繁なフィルター交換の原因となっている、フィルムに設けられる被膜の除去については特開2004-169005号公報で溶媒での洗浄が提案されている。溶媒の処理の場合はその後処理が煩雑であり、ランニングコストも上がる問題がある。また特開2002-301720号公報では樹脂基材に適用を広げて、物理的な力で被膜を除去する方法がいくつも提案されている。この中の直径0.1から100mmの研磨剤を用いる提案は、研磨剤の十分な回収が原料へのコンタミネーション防止が重要課題であり、その対策は極めて難しい。処理物を粗粉砕して研磨剤と合わせて攪拌する方法も提案されているが、前述と同様な問題がある。さらに、ブラシの擦過で除去する提案もされているが、被膜の除去に際しては、使用するブラシの素材や、被膜の厚さ等を考慮する必要があるにも関わらず、抽象的な提案に留まっており、そのままでは充分な効果を得るものではない。また特開平10-128746号公報では厚い樹脂板用だが、圧延によりせん断力を発生させて剥離させている。この方法は基材厚みも被膜も薄い樹脂フィルムでは適用できない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【特許文献1】特許第3601729号公報
【特許文献2】特開2004-169005号公報
【特許文献3】特開2002-301720号公報
【特許文献4】特開平10-128746号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明の課題は、熱可塑性樹脂フィルム製造過程で発生する屑フィルムの再利用にあたって、再利用を有利に行う装置及び方法を提供する事にある。特に特定機能を付加した被膜を有する屑フィルムであっても、該被膜を効率的に除去する方法を提供することにより、フィルム製造時にバージンの原料の使用割合を減らすことによって、製造コストを低減できる熱可塑性樹脂フィルムの製造装置及びその製造方法を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記本発明の課題は以下の製造装置及び製造方法によって達成される。すなわち、本発明は、
(1)溶融押出成形された基材フィルムの少なくとも片面に被膜が設けられたフィルムを走行させながら、該被膜に金属繊維製の毛を有する回転ブラシを接触させ、該被膜を除去するに際し、該金属繊維の線径を被膜の厚さの0.5〜7倍とし、且つ回転ブラシの表面速度を走行フィルム速度の30〜300倍とすることを特徴とするフィルム表面被膜の除去方法、
(2)(1)記載の方法により被膜を除去した後のフィルムを回収、再利用することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法、及び、
(3)基材フィルムの少なくとも片面に被膜が設けられたフィルムを走行させるための走行装置と、金属繊維製の毛を有する回転ブラシとを設けてなり、走行フィルム上の被膜に回転ブラシを接触させて、該被膜を除去することを特徴とするフィルム表面被膜の除去装置
である。
【0010】
この際、除去された被膜は粉状なので、ノズルによって吸引除去する。この粉がフィルムに乗って、次工程の粉砕、再生工程に混入する事はできるだけ避けるべきである。また粉はブラシの繊維の隙間にも充満するので、ブラシからも吸引する必要がある。
【0011】
ブラシは樹脂製の毛では被膜の除去性能が不十分であり、金属製とすべきである。中でも充分な靱性があって、防錆であるステンレス製が望ましい。その線径は除去したい被膜の厚さの0.5〜7倍が良い。細過ぎると被膜を厚み方向に充分に除去できない。太過ぎると、部分的に厚み方向に深く食い込み過ぎ、基材を著しく傷つけ、その破断を引き起す。処理中の走行フィルムが破断することは連続処理を阻害し処理能力の低下と再投入数作業をする作業者の負荷増大という問題を起す。
【0012】
ブラシの回転数もまた破断を起さず効率的な処理のためには、ブラシの表面速度を走行フィルム速度の30〜300倍、望ましくは70〜270倍に設定するのが良い。連続運転ではフィルム速度に連動してブラシの回転数を加減速してこの範囲入る様に自動的な調整が望ましい。
【0013】
被膜が除去されたフィルムは、そのまま製品を作る溶融押出機に、バージンチップと混合して投入して再使用する事もある。しかし製品の品質のばらつき低減、溶融押出機の下流に設けられているポリマーフィルターの寿命調整のためには、一度再生専用の溶融押出機でリサイクルチップ化し、それを製品用の押出機にバージンチップと混合して投入した方が良い。
【0014】
対象となる被膜は特に限定するものではないが、通常溶剤では基材も侵してしまう様な材質の場合や、基材厚みに対し薄く、基材へのダメージを抑えたい場合に適している。それらの場合、多くは既に低比率ではリサイクルチップが再利用されている場合が多い。特に易滑性の高いシリコーン系の被膜除去には極めて有効である。また、アクリル系の易接着被膜でも有効である。
基材フィルムも特に限定するものではないが、溶融樹脂中の不純物が核となる等して、ゲルの発生を助長するポリエステルフィルムでは特に有用な方法である。
【発明の効果】
【0015】
この被膜除去装置を使用することでリサイクルチップの重量比を30〜100%としても異物を抑止でき、同種の製品をコスト下げて生産する事が出来る。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の一実施態様に係る熱可塑性樹脂フィルム製造装置のフロー図である。
【図2】本発明の一実施態様を示す説明図である。
【図3】本発明の一実施態様を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下図面を参照して、本発明を詳細に説明する。図1は本発明の熱可塑性樹脂フィルムの製造装置の一実施態様を説明するフロー図である。これは二軸延伸フィルムの例であるが、一軸延伸でも未延伸フィルムでも本発明は効果を生む。
【0018】
熱可塑性樹脂フィルムは一般に数種の樹脂ペレット(チップ)を1の計量工程で計量混合して、2の乾燥工程で必要に応じ結晶化や乾燥を実施し、3の押出機に投入し、4のフィルターで濾過して、5のスリットダイよりシートを押出、6の冷却ドラムを通したのち、7の一軸延伸機で縦延伸する。そして、その後9の2軸延伸機の通す前に、8のコーティング装置で塗膜を作る事がある。あるいは同時に二軸延伸機で延伸する場合には、コーティングはその前に実施する事もある。どちらであろうと、本発明の効果は変わらない。二軸延伸後は10の搬送工程で耳部11を切り落とし、12の巻取機で中間製品であるミルロール13を得る。ミルロールは14のスリット工程で所定の幅にスリットされ、15の梱包・出荷工程を経て顧客に届けられる。スリット工程では所定幅に切り出すために発生した耳部である16裁落と所定長を繰出した後に残るミルロールの巻芯部17が屑フィルムとして発生する。11の耳部エッジフィルムと16の裁落、17の巻芯フィルムは18の粉砕工程で粉砕され、必要に応じ貯蔵、乾燥され再生押出機20でストランドとして押し出され、それをカットしてリサイクルペレット(チップ)を得る。このペレットが再び1の計量工程へと輸送される。7のコーティングは二軸延伸以降で都合が良い様に塗布幅を決められる。しかし未塗布部と塗布部で滑り性が異なると10の搬送工程や12の巻取機、14のスリット工程で、皺等の問題を起す事が多いので、ほぼ中間製品のミルロール幅になる様調整される。したがって、通常は16裁落と17巻芯フィルムは被膜を持ったまま再生工程に投入される。
【0019】
本発明の再生工程では、図2、3で示される実施態様の被膜剥離装置を用いる。再生されるべき被膜付のフィルム70はガイドバー71やガイドロール72で導かれ、バックアップロール73に沿う。ガイドバー71やガイドロール72は通常ステンレス製か表面に硬質クロムメッキが施された物を使用する。バックアップロール73の駆動は必須ではない。ただしフリーの場合はスムーズに回る様な軽量化等の配慮をすべきである。フィルム70を挟んで対面には回転ブラシ74を設ける。処理されるべき被膜は回転ブラシ74側の面に存在する。ブラシ74の有効面長より、バックアップロール73の面長は広くなければならない。フィルム70はブラシ74より幅が狭くなる事があるので、バックアップロール73はブラシ74で容易に摩滅するものでは不適当である。その表面は、最低限硬質クロムメッキは必須である。より硬度の高いファインセラミック等の表面が望ましい。ブラシ74は可能な限り高密度にステンレス線が植えられたものである。高速回転での遠心力や、フィルムに押付けられる事で、毛(ステンレス線)が抜けない様に確実に固定されていれば、その固定方式は特に規定されない。高速回転のためには鉄、ステンレス、アルミ、CFRP等で動バランスのとれたロール芯金に、ステンレス線をチャンネルに埋め込んだ帯やリングを巻き、ブラシを回転させながら外径をカットし毛足を揃えた上で、再度動バランスを取る方法が、本発明に適したブラシを作る一法である。
【0020】
ブラシの毛の材質は鉄製や真鍮製、ステンレス製を用いるが、再生工程のため防錆が求められ、また被膜除去には靭性も求められる事から、ステンレス製がより良い。ステンレス線の線径は除去すべき被膜の厚みの0.5〜7倍とするのが良い。実際にはφ0.003〜0.250mmの線径、より望ましくは0.030〜0.100mmの線径が良い。毛足はステンレス線としては一般的な5〜20mm程度で良いが、目付量は可能な限り上げた方が良い。
【0021】
このブラシは電動機で高速回転される。駆動方法は特に限定しないが、表面速度は処理するフィルム70の速度の30〜300倍が良い。再生工程でのフィルム速度は通常数m/min〜精精100m/min程度だが、ブラシ74の外径は最大φ400程度が現実的なので、2400rpmを超える事になる。そこでプーリー等でモーターを増速して使用する。また最適範囲でブラシを回転させるために、インバーター等で連続的に速度を構成できるようにすべきである。望ましくは、フィルム70の速度に対し設定した倍速で常に自動調整するシステムとする。より望ましい速度比は70〜270である。ブラシ74の回転方向は特に限定するのもではないが、高速回転のため風も発生し、除去された被膜の屑粉が粉砕機に繋がる下流側に送られるのは望ましくないので、フィルムの走行方向とは逆方向77が良い。粉は帯電すると除去しづらくなるのでブラシ74はしっかり接地する事とフィルム70は適宜除電をすべきである。
ブラシは全面をフィルムに接触する必要があるので、幾何学的に接触する位置を0mmとすると0〜3mm、望ましくは0.5〜2mm押し込んだ位置で回転させる。
【0022】
屑粉はまず吸引で除去する。ブラシ周辺で吸引口79から吸引したり、別途ノズル80を設置して吸引する。またブラシ74のステンレス線の間にも粉が詰まって行くので、ノズル81を設けて吸引する。吸引エアはサイクロンやフィルターで粉を分離する事になる。装置の連続運転のためにはフィルターを並列に構えて切り替えるとか、ロール式を用いるとか工夫が有ることは言うまでもない。
【0023】
こうして再生工程で粉砕、溶融押出しされ、リサイクルされたチップはバージンチップと混合され押出機3に投入される。押出機3は2軸でも単軸でも良く、ベント有無も特に限定するものではない。ただ高シェアの方がゲル状を分断する傾向が認められ、結果としてフィルター寿命アップに繋がる場合があるので、2軸押出機の方が望ましい。
4のフィルターはリーフタイプ、キャンドルタイプどちらでも構わない。またそのエレメントの配置も縦、横どちらでも構わないが、一般的に言われる様に縦型の方が好ましい。
【0024】
溶融樹脂用の濾過層の濾過精度は、品質要求に基づき設定する。異物核の大きさの1/5以下が目安であるが、95%捕集効率で0.6〜15μmの範囲である。多くの熱可塑性樹脂フィルムは50μm以上の異物個数の抑止が求められる事が多い。
【0025】
本発明に使用する熱可塑性樹脂としては、機械的特性、熱的特性、電気的特性などにおいて機能性の高い熱可塑性樹脂であるポリエチレンテレフタレート、ポリエチレン2,6−ナフタレート、ポリフェニレンサルファイド、ポリプロピレン、ポリスチレン、ポリアミド、アラミドなどが好適である。特に熱可塑性樹脂をシート状に溶融押出して、さらに縦および横方向に二軸延伸し、熱処理した寸法安定性、機械・熱安定性に優れたフォトレジスト用、磁気材料用、表面保護用、反射防止等光学用途などに利用される熱可塑性樹脂フィルムに好適である。
【実施例】
【0026】
以下、本発明を実施例により更に具体的に説明するが、測定方法は次の方法によった。
(1)濾過精度
試験粉体JIS−Z8901−1974の11種またはダストACFTDを蒸留水中に分散させてHIACで粒度分布を測定し、フィルターを通過させた後の粒度分布と比較してその95%カット値をもって濾過精度とする。
(2)フィルム内の異物数
ポリエステルフィルムを縦210mm×横148mm(面積310.8cm)に切取り、このフィルムの全範囲をクロスニコル法にて目視検査による異物検査を行った。次いで検出されたサンプルフィルムの中の異物を、光学顕微鏡を用いて透過光により観察し、光学的に異常な範囲として観察される部分の最大径を異物の大きさとした。なお、異物核周辺に存在する空洞(ボイド)が光学的に異常な範囲として観察される場合は異物の大きさに含めた。そして、異物粒子の大きさを平均直径で測り、50μm以上90μm未満、90μm以上のランクに分けて個数をカウントした。
(3)固有粘度
固有粘度([η]dl/g)は、25℃のo−クロロフェノール溶液で測定した。
(4)溶融密度
加熱溶融した熱可塑性樹脂のPVT測定を行い、フィルター部の圧力下の値を持って溶融密度とした。
(5)濾過量
ギアポンプの有る設備ではその回転数、無い設備ではその押出機の回転数に対して、スリットダイ出口から放流される樹脂で吐出量を数点実測しておき、時間当たりの回転数−吐出量の関係式から累積してフィルター濾過量とした。
【0027】
[実施例1〜6]
ステンレス製で毛足長さが15mm、外径180mmに仕上げた、ステンレス線の線径φ0.10mmと線径φ0.06mmの回転ブラシを使用し、図3に装置を用いてフィルム速度とブラシ回転数を変えつつ被膜の除去を行った。バックアップロールはハードクロムメッキのフリーロールである。処理幅は約1000mmである。ブラシは接触する位置から約1mmバックアップロール側に押し込んで、ロールに撓みや振れがあっても全幅フィルムに必ず接触する様にした。
【0028】
粉の吸引は図3の如くブラシの前後と、ブラシ表面から1mmの位置に吸引ノズル(80,81)を設置している。
リサイクルチップは被膜除去処理されたフィルムが粉砕機で粉砕され、通常の単軸押出機で濾過精度20μm程度のフィルターを介してスタランド状に押し出され、カットされてペレット化されたものである。
フィルター装置としては、リーフフィルターを重ねてフィルターシャフトを支持体として積層、組み立てられ、フィルターハウジング内に収められている一般的なものを使用した。
【0029】
この得られた熱可塑性樹脂リサイクルチップとバージンチップは混合され、フィルターを通過開始してから濾過装置の入口の圧力が25MPaになるまでを上限として溶融樹脂を通過し、広幅の口金を用い、冷却ドラム上に吐出した。冷却ドラムの表面温度は20℃とした。また、熱可塑性樹脂シートをドラムに密着させるために静電ピニングを用いた。ここでの製膜用のフィルターは濾過精度が約8μmで、外径約12インチの不織布フィルターを使用した。
【0030】
二軸延伸ポリエステルフィルムは、この未延伸フィルムをTg〜(Tg+60)℃で長手方向に1回もしくは2回以上合計の倍率が3倍〜6倍になるよう延伸し、その後Tg〜(Tg+60)℃で幅方向に倍率が3〜5倍になるように延伸し、その両面に成分Aを、または片面に成分Bをロールコーターで均一塗布する。或いは、長手方向と幅方向に同時に延伸をし、必要に応じてさらに180〜230℃で、1〜60秒間熱処理を行い、熱処理温度より10〜20℃低い温度で幅方向に0〜20%収縮させながら再熱処理を行うことにより得る。なお、Tgはガラス転移温度で78℃であった。固有粘度は0.64dl/gであった。
【0031】
ここでは縦方向に延伸した後、その両面に塗膜AとBをロールコーターで均一に塗布した。続いてテンターに供給し、横延伸、熱固定処理後、巻取、スリット工程へと進めた。スリット後の製品からサンプリングしたフィルムにて異物の検査を行った。結果を表1に示す。
被膜除去装置における運転状況の「○」は工程でフィルムが切断する事無く連続的に被膜除去処理が続けられた事を示している。製膜状況における判定は、異物が50〜90μmサイズで50個未満、90μm以上10個未満を良好の「○」とした。
【0032】
<塗膜Aのフィルム>
ポリエチレンテレフタレートチップを170℃で3時間乾燥後、押出機に供給し、溶融温度295℃で溶融し、フィルター装置80で濾過し、3.6倍に延伸し、急冷し、縦延伸フィルムを得た。リサイクルチップの比率は30%とした。
この縦延伸終了後のフィルムの両面に、固形分濃度が8%の水性塗液をロールコーターで塗布した。その構成は、酸成分がテレフタル酸90モル%/イソフタル酸4モル%/5−ナトリウムスルホイソフタル酸6モル%、グリコール成分がエチレングリコール90モル%/ジエチレングリコール10モル%のポリエステル共重合体(Tg=70℃)からなるポリエステル62重量%、構成成分がメチルメタクリレート50モル%/エチルアクリレート40モル%/N−メチロールアクリルアミド5モル%/2−ヒドロキシエチルメタクリレート5モル%のアクリル共重合体(Tg=40℃)からなるアクリルを20重量%、ワックス(カルナバワックス)を3重量%、シリカフィラー(平均直径:0.1μm)を5重量%、濡れ剤(ポリオキシエチレン(n=7)ラウリルエーテル)の10重量%である。
このフィルムを引き続いて95℃で乾燥し、横方向に120℃で3.8倍に延伸し、220℃で幅方向に3%収縮させ熱固定し、厚さ188μmのフィルムを得た。なお、塗膜の厚さは0.1μmであった。異物の個数は経時で増加傾向にあるので、濾過量(m)/濾過面積(m)が40の時点で比較した。
【0033】
<塗膜Bのフィルム>
滑剤として凝集粒子である平均粒径1.7μmの多孔質シリカ粒子をポリマーに対して0.066重量%になるように添加、混合したポリエチレンテレフタレートチップを170℃で3時間乾燥後、押出機に供給し、溶融温度295℃で溶融し、フィルター装置80で濾過し、3.6倍に延伸し、急冷し、縦延伸フィルムを得た。リサイクルチップの比率は40%とした。
この縦延伸終了後のフィルムの片面に、旭化成ワッカーシリコーン(株)製DEHESIVE39005VP(100部)、同DEHESIVE39006VP(100重量部)、日本ユニカー(株)製A−187(2重量部)を含む10%濃度水溶液にして、乾燥横延伸後の膜厚が0.04μmになるようにロールコーターで塗布した。
塗布後はステンターに供給し、120℃にて横方向に3.9倍に延伸した。得られた二軸配向フィルムを205℃の温度で5秒間熱固定し、ロール状に巻き取って、30μm厚みのフィルムを得た。異物の個数は経時で増加傾向にあるので、濾過量(m)/濾過面積(m)が40の時点で比較した。
【0034】
[比較例1〜7]
表1内に、再生工程で何ら被膜除去処理を行っていないものと、ステンレス線の線径φが膜厚に対し細い物、太い物、ブラシの表面速度がフィルムに対し速い物を、遅い物の比較例を示した。リサイクルチップ内に蓄積されるゲル状異物はリサイクルの繰り返しで上昇、飽和する。ほとんど飽和した状態となる、5回以上の循環に相当する濾過量になってから異物量を比較した。被膜除去処理を行っていない場合、或いは被膜厚み/ブラシ線径とブラシ表面速度/フィルム速度が本発明の範囲に無い物は、実施例に比較して異物量が多く、被膜除去装置における運転状況で「×」となった。「×」とは被膜除去中にフィルムが切断し、途中人手の再投入作業が必要と成り連続的な処理ができなかったものである。
【0035】
【表1】

【産業上の利用可能性】
【0036】
本発明によれば、熱可塑性樹脂フィルムの製造にあたって、異物の少ないフィルムを製造できる。また、異物除去するためのポリマーフィルターの寿命アップに貢献する。屑フィルムを再利用を効率的に再利用するフィルム製造工程ではその屑利用の比率を上げることができる。技術に関する。これらによりフィルム製造コストを下げることができる。
【符号の説明】
【0037】
1 計量工程
2 乾燥工程
3 押出機
4 ポリマーフィルター
5 スリットダイ
6 冷却ドラム
7 一軸延伸機
8 コーター
9 二軸延伸機
10 搬送工程
11 耳部(エッジフィルム)
12 巻取機
13 ミルロール
14 スリット工程(スリッター)
15 梱包工程
16 裁落
17 巻芯部(巻芯フィルム)
18 粉砕工程
19 フレーク貯蔵・乾燥
20 再生押出機
21 ペレタイザー
22 チップ(ペレット)
23 溶融樹脂
24 未延伸フィルム
25 一軸延伸フィルム
26 二軸延伸フィルム
27 製品
28 フレーク(フラフ)
29 チップ受入・貯蔵
30 被膜除去設備
70 フィルム
71 ガイドバー
72 ガイドロール
73 バックアップロール
74 回転ブラシ
77 ブラシ回転方向
79 吸引口
80 吸引ノズル
81 吸引ノズル

【特許請求の範囲】
【請求項1】
溶融押出成形された基材フィルムの少なくとも片面に被膜が設けられたフィルムを走行させながら、該被膜に金属繊維製の毛を有する回転ブラシを接触させ、該被膜を除去するに際し、該金属繊維の線径を被膜の厚さの0.5〜7倍とし、且つ回転ブラシの表面速度を走行フィルム速度の30〜300倍とすることを特徴とするフィルム表面被膜の除去方法。
【請求項2】
被膜と回転ブラシとの接触を、バックアップロール上で行う請求項1記載のフィルム表面被膜の除去方法。
【請求項3】
除去した被膜を吸引ノズルによって吸引除去する請求項1又は2記載のフィルム表面被膜の除去方法。
【請求項4】
フィルムとの接触面における回転ブラシの回転方向が、フィルムの走行方向と異なる請求項1、2又は3記載のフィルム表面被膜の除去方法。
【請求項5】
基材フィルムが、ポリエステルフィルムである請求項1〜4のいずれか1項に記載のフィルム表面被膜の除去方法。
【請求項6】
被膜が、シリコーン離型塗膜である請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム表面被膜の除去方法。
【請求項7】
被膜が、アクリル系易接着塗膜である請求項1〜5のいずれか1項に記載のフィルム表面被膜の除去方法。
【請求項8】
請求項1〜7記載の方法により被膜を除去した後のフィルムを回収、再利用することを特徴とする熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項9】
被膜を除去した後のフィルムを再利用した(リサイクル)チップと、重合後の未使用(バージン)チップとを混合して溶融押出する請求項8記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項10】
基材フィルムが、ポリエステルフィルムである請求項8又は9記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項11】
被膜を除去した後のフィルムを再利用した(リサイクル)チップが、フィルム上にシリコーン離型塗膜を形成したフィルムを、粉砕、溶融して再生したチップである請求項8、9又は10記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項12】
被膜を除去した後のフィルムを再利用した(リサイクル)チップが、フィルム上にアクリル系易接着塗膜を形成したフィルムを、粉砕、溶融して再生したチップである請求項8、9又は10記載の熱可塑性樹脂フィルムの製造方法。
【請求項13】
基材フィルムの少なくとも片面に被膜が設けられたフィルムを走行させるための走行装置と、金属繊維製の毛を有する回転ブラシとを設けてなり、走行フィルム上の被膜に回転ブラシを接触させて、該被膜を除去することを特徴とするフィルム表面被膜の除去装置。
【請求項14】
走行フィルムと回転ブラシとの接触面の、走行フィルムとは反対側の面にバックアップロールを設け、被膜と回転ブラシとの接触を、バックアップロール上で行う請求項13記載のフィルム表面被膜の除去装置。
【請求項15】
除去した被膜を吸引ノズルによって吸引除去する請求項13又は14記載のフィルム表面被膜の除去装置。
【請求項16】
フィルムとの接触面における回転ブラシの回転方向が、フィルムの走行方向と異なる請求項13、14又は15記載のフィルム表面被膜の除去装置。
【請求項17】
基材フィルムが、ポリエステルフィルムである請求項13〜16のいずれか1項に記載のフィルム表面被膜の除去装置。
【請求項18】
被膜が、シリコーン離型塗膜である請求項13〜17のいずれか1項に記載のフィルム表面被膜の除去装置。
【請求項19】
被膜が、アクリル系易接着塗膜である請求項13〜17のいずれか1項に記載のフィルム表面被膜の除去装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2012−171276(P2012−171276A)
【公開日】平成24年9月10日(2012.9.10)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−37017(P2011−37017)
【出願日】平成23年2月23日(2011.2.23)
【出願人】(301020226)帝人デュポンフィルム株式会社 (517)
【Fターム(参考)】