説明

熱可塑性樹脂組成物およびその成形品

【課題】
安定した表面固有抵抗値を有し、かつ帯電圧減衰半減期が短く、安定性と静電気消散性能及び機械的特性とのバランスに優れた精密な電気・電子部品の搬送用部品類の成形品に好適な熱可塑性樹脂組成物と成形品を提供する。
【解決手段】
スチレン系樹脂(A)40〜80重量%、ポリアミドエラストマー(B)15〜30重量%及び繊維状強化材(C)5〜30重量%を含有してなる熱可塑性樹脂組成物であって、前記のポリアミドエラストマー(B)の配合量(P)と前記の繊維状強化材(C)の配合量(Q)が、下式(1)を満たす熱可塑性樹脂組成物。
P≧14+0.2×Q・・・(1)

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、全体において制電性および静電気消散性に優れ、かつ剛性にも優れた成形品のための熱可塑性樹脂組成物、およびその熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品に関するものである。
【背景技術】
【0002】
熱可塑性樹脂からなる成形品は、優れた機械的性質によって、家庭電気機器、OA機器あるいは自動車などの部品向けに多く使用されている。しかしながら、熱可塑性樹脂からなる成形品の大半は電気絶縁性であるため、最近の精密な電気・電子制御装置を備えた各種機器において、発生する静電気により制御装置の誤作動が起こる問題や、それら電子・半導体部品搬送時に静電気による故障などを惹起するという問題があった。そこで、発生した静電気を除去する必要があり、制電性が付与されたそれら部品類に適した熱可塑性樹脂が望まれていた。
【0003】
従来、一般的に、熱可塑性樹脂に制電性を付与する方法としては、アミン系帯電防止剤を添加した熱可塑性樹脂を使用する方法や、持続的に制電性を付与する方法としてポリエーテルエステルアミドをはじめとするポリアミドエラストマーを配合した熱可塑性樹脂を使用する方法が公知である(特許文献1参照)。
【0004】
しかしながら、これらの方法で熱可塑性樹脂に制電性能を付与すると、成形品の剛性が一般的に低下し使用に制限のある場合があった。熱可塑性樹脂からなる成形品に剛性を付与する方法としては、熱可塑性樹脂にガラス繊維やその他無機フィラーを添加する方法が公知である。
【特許文献1】特開2003−268104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかしながら、熱可塑性樹脂にこれらのガラス繊維や無機フィラーを配合した場合、発現する性能は、理論的には熱可塑性樹脂成分中での制電付与成分の割合により決まるはずであるが、実際には制電性能が低下したり、成形品の部位で制電性能にバラツキが生じたりするという課題があった。
【0006】
そこで本発明の目的は、上記問題を解決するため、剛性と安定した制電性に優れた熱可塑性樹脂組成物およびその成形品を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者等は、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、特定量の制電性成分と特定量の繊維状強化材を使用することにより、上記目的が効率的に達成されることを見出し本発明に到達した。
【0008】
すなわち、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)40〜80重量%、ポリアミドエラストマー(B)15〜30重量%および繊維状強化材(C)5〜30重量%を含有してなる熱可塑性樹脂組成物であって、該ポリアミドエラストマー(B)の配合量(P)と該繊維状強化材(C)の配合量(Q)が、下式(1)を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物である。
P≧14+0.2×Q・・・(1)
本発明の熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記のポリアミドエラストマー(B)は、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、または炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(B−1)と、数平均分子量200〜6000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B−2)および/または数平均分子量が1,000〜3,000である次式(イ)〜(ハ)
【0009】
【化1】

【0010】
【化2】

【0011】
【化3】

【0012】
(ただし式中、R、Rはエチレン基およびプロピレン基の少なくとも1つを示し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CF、またはNHを示し、X〜X12は水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン、−SOHまたはその金属塩(Li、Na、Kなど)を示す。)から選ばれた1種もしくは2種以上のジオール化合物(B−3)を構成成分として含むグラフト共重合体またはブロック共重合体である。
【0013】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の好ましい態様によれば、前記のポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B−2)は、ポリエチレンオキシドグリコールである。
【0014】
本発明の好ましい態様によれば、本発明の熱可塑性樹脂組成物の表面固有抵抗値は5×1010Ω以下である。
【0015】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、それを成形して成形品とすることができ、その成形品は、ディスプレイ関連電子部品等の電気・電子部品の搬送用部品に好適に用いられる。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、優れた剛性を有し、制電性が安定して発現し、かつ帯電圧減衰半減期が短く、安定性と静電気消散性能のバランスに優れた精密な電気・電子制御装置、部品への静電気の影響を低減できる電気・電子部品の搬送用部品の成形に好適な熱可塑性樹脂組成物および成形品が得られる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
.
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、スチレン系樹脂(A)とポリアミドエラストマー(B)と繊維状強化材(C)とで基本的に構成されるものである。
【0018】
本発明で用いられるスチレン系樹脂(A)としては、ゴム質重合体に芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および共重合可能なその他のビニル系単量体から選ばれた1種以上の単量体をグラフト共重合せしめたグラフト共重合体(A−1)と、芳香族ビニル系単量体、シアン化ビニル系単量体および共重合可能なその他のビニル系単量体から選ばれた1種以上の単量体からなるビニル系(共)重合体(A−2)を、それぞれ単独ないしは混合してなるものが挙げられる。
【0019】
前記のゴム質重合体としては、ジエン系ゴム、アクリル系ゴムおよびエチレン系ゴム等が挙げられ、具体的には、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)、ポリイソプレン、ポリ(ブタジエン−アクリル酸ブチル)、ポリ(ブタジエン−メタクリル酸メチル)、ポリ(アクリル酸ブチル−メタクリル酸メチル)、ポリ(ブタジエン−アクリル酸エチル)、エチレン−プロピレンラバー、エチレン−プロピレン−ジエンラバー、ポリ(エチレン−イソプレン)およびポリ(エチレン−アクリル酸メチル)等が挙げられる。これらのゴム質重合体は、1種または2種以上の混合物で使用される。これらのゴム質重合体のうち、ポリブタジエン、ポリ(ブタジエン−スチレン)、ポリ(ブタジエン−アクリロニトリル)およびエチレン−プロピレンラバーが耐衝撃性の点で好ましく用いられる。ゴム質重合体の重量平均粒子径は、0.1〜0.5μmの範囲であることが好ましい。
【0020】
前記のグラフト共重合体(A−1)およびビニル系(共)重合体(A−2)に用いられる芳香族ビニル系単量体としては、スチレン、α−メチルスチレン、オルソメチルスチレン、パラメチルスチレン、パラ−t−ブチルスチレンおよびハロゲン化スチレン等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。なかでもスチレンとα−メチルスチレンが好ましく用いられる。
【0021】
グラフト共重合体(A−1)およびビニル系(共)重合体(A−2)に用いられるシアン化ビニル系単量体としては、アクリロニトリルおよびメタクリロニトリル等が挙げられ、これらの1種または2種以上を用いることができる。なかでもアクリロニトリルが好ましく用いられる。
【0022】
グラフト共重合体(A−1)およびビニル系(共)重合体(A−2)に用いられる共重合可能なその他のビニル系単量体としては、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル等の不飽和カルボン酸アルキルエステル系単量体、N−メチルマレイミド、N−フェニルマレイミド等のマレイミド化合物、マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸、無水マレイン酸等の不飽和ジカルボン酸無水物およびアクリルアミド等の不飽和アミド化合物に代表される共重合可能なビニル化合物等を挙げることができ、これらは単独ないし2種以上を用いることができる。ビニル系(共)重合体(A−2)は、複数種類用いることができる。
【0023】
グラフト共重合体(A−1)に配合された単量体混合物は、そのすべてが、ゴム質重合体と結合してグラフト化している必要はなく、単量体混合物の単量体同士で結合し、グラフト化していない重合体として含まれていても良い。グラフト率は好ましくは、10〜100%であり、特に好ましいのは20〜50%である。
【0024】
本発明におけるビニル系(共)重合体(A−2)の還元粘度(ηsp/c)は、0.1〜0.8dl/gの範囲であることが好ましい。この範囲外の場合、耐衝撃性が低下し、あるいは溶融粘度が上昇して成形性が悪くなりやすい。さらに好ましい還元粘度(ηsp/c)は、0.3〜0.7dl/gである。
【0025】
本発明におけるグラフト共重合体(A−1)およびビニル系(共)重合体(A−2)の製造方法は特に制限はなく、塊状重合、溶液重合、懸濁重合および乳化重合等のいずれでもよい。単量体の仕込み方法も特に制限はなく、初期一括仕込み、単量体の一部または全てを連続仕込み、あるいは単量体の一部または全てを分割仕込みのいずれの方法を用いてもよい。
【0026】
スチレン系樹脂(A)にゴム質重合体を含有させる場合は、ゴム質重合体の含有量は、機械的強度改良効果、流動性の点において、2〜60重量%が好ましく、より好ましくは3〜40重量%である。
【0027】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物において、スチレン系樹脂(A)の含有量は、40〜80重量%であり、好ましくは50〜80重量%である。スチレン系樹脂(A)の含有量が40重量%未満では、耐衝撃性等の機械的強度が十分でなく、好ましくない。一方、スチレン系樹脂(A)の含有量が80重量%を超えると、ポリアミドエラストマーの含有量が少なくなり表面固有抵抗値の安定性が低下するので好ましくない。
【0028】
本発明で用いられるポリアミドエラストマー(B)は、公知のものを使用することができるが、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸またはラクタム、もしくは炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(B−1)と数平均分子量200〜6000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B−2)および/または数平均分子量が1,000〜3,000である次式(イ)〜(ハ)
【0029】
【化4】

【0030】
【化5】

【0031】
【化6】

【0032】
(ただし式中、R、Rはエチレン基およびプロピレン基の少なくとも1つを示し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CF、またはNHを示し、X〜X12は水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン、−SOHまたはその金属塩(Li、Na、Kなど)を示す。)から選ばれた1種もしくは2種以上のジオール化合物(B−3)を構成成分として含むグラフト共重合体またはブロック共重合体を好ましく用いることができる。
【0033】
ポリアミドエラストマー(B)におけるこれら成分の構成量については特に制限はなく、前記の(B−1)と(B−2)からなるもの、(B−1)と(B−3)からなるもの、または(B−1)と(B−2)と(B−3)からなるもの、さらにはこれらを混合したものを適用することができる。これらの中でも、帯電防止性能と機械的特性が優れている点で、前記の(B−1)と(B−2)と(B−3)からなるものが好ましい。
【0034】
前記の(B−1)の構成成分量は、ポリアミドエラストマー(B)に対し、10〜90重量%であることが好ましく、より好ましくは20〜70重量%であり、更に好ましくは30〜50重量%である。ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B−2)の構成成分量は、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B−2)とジオール化合物(B−3)の合計量に対し5〜95重量%であることが好ましい。また、ジオール化合物(B−3)の構成成分量は、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B−2)とジオール化合物(B−3)の合計量に対し、5〜95重量%であることが好ましい。
【0035】
炭素数が6以上のアミノカルボン酸またはラクタム、もしくは炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(B−1)としては、具体的には、ω−アミノカプロン酸、ω−アミノエナント酸、ω−アミノカプリル酸、ω−アミノペルゴン酸、ω−アミノカプリン酸、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸等のアミノカルボン酸、あるいはカプロラクタム、エナントラクタム、カプリルラクタム、ラウロラクタム等のラクタム、ヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩、ヘキサメチレンジアミン−セバシン酸塩およびヘキサメチレンジアミン−イソフタル酸塩等のナイロン塩が挙げられる。これらの中でも、カプロラクタム、11−アミノウンデカン酸、12−アミノドデカン酸およびヘキサメチレンジアミン−アジピン酸塩が好ましく用いられ、より好ましくはカプロラクタムが用いられる。これらは1種もしくは必要に応じて2種以上を用いることができる。
【0036】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B−2)の例としては、ポリエチレンオキシドグリコール、ポリ(1、2−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(1、3−プロピレンオキシド)グリコール、ポリ(テトラメチレンオキシド)グリコール、ポリ(ヘキサメチレンオキシド)グリコール、エチレンオキシドとプロピレンオキシドのブロックまたはランダム共重合体、およびエチレンオキシドとテトラヒドロフランのブロックまたはランダム共重合体等が用いられる。ポリ(アルキレンオキシド)グリコールの数平均分子量は、好ましくは200〜6000であり、特に好ましくは300〜4000である。また、必要に応じて、ポリ(アルキレンオキシド)グリコール成分の両末端をアミノ化またはカルボキシル化しても良い。これらの中でも、ポリエチレングリコールが帯電防止性に優れるため好ましく用いられる。これらは、1種もしくは必要に応じて2種以上用いることができる。
【0037】
ジオール化合物(B−3)としては、次の一般式(イ)〜(ハ)で示されるジオール化合物が挙げられる。
【0038】
【化7】

【0039】
【化8】

【0040】
【化9】

【0041】
(ただし式中、R、Rはエチレン基およびプロピレン基の少なくとも1つを示し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CF、またはNHを示し、X〜X12は水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン、−SOHまたはその金属塩(Li、Na、Kなど)を示す。)
上記一般式(イ)〜(ハ)で示される化合物のうち、RとRは、重合性が良好であるという点で、エチレン基であることが好ましい。また、X〜X12は、それぞれ同一または相違なる水素または炭素数1〜6のアルキル基が好ましく、特に好ましくは水素である。数平均分子量は1,000〜3,000であり、特に1,500〜2,500の範囲が好ましい。また、式中のmとnは、それぞれ−(RO)−と−(RO)−の重合度を意味し、独立した値は求められないが、m+nの平均値は化合物の構造と数平均分子量から計算により求めることができるものである。数平均分子量が上記範囲にある場合に、得られるポリエーテルエステルアミドの帯電防止性の向上および重合時間の短縮を図ることができる。
【0042】
本発明において、数平均分子量は、試料1gを過剰なアセチル化剤、例えば、無水酢酸と加熱してアセチル化を行い、生成したアセチル化物を中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg数)をG、アセチル化前の試料1gを中和するのに必要な水酸化カリウムの量(mg数)をHとしたときに、次式(2)によって計算することができる。
数平均分子量=11200/〔[G/(1−0.00075×G)]−H〕(2)
また、ジオール化合物(B−3)としては、前記の一般式(ロ)で示されるジオール化合物が、重合性の点で優れている。一般式(ロ)のYとしては、共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基およびSOが好ましく、特に好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基である。
【0043】
具体的な例としては、ビスフェノールA、テトラブロモビスフェノールA、ジメチルビスフェノールA、テトラメチルビスフェノールA、2,2−ビス(4,4’−ヒドロキシフェニル−3,3’−スルホン酸ナトリウム)プロパン、ビスフェノールS、ジメチルビスフェノールS、テトラメチルビスフェノールS、4,4’−(ヒドロキシ)ビフェニル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルフィド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)スルホキシド、ビス(4−ヒドロキシフェニル)メタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ジフルオロメタン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)ヘキサフルオロプロパン、ビス(4−ヒドロキシフェニル)エーテル、ビス(4−ヒドロキシフェニル)アミン、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)エタン、1,1−ビス(4−ヒドロキシフェニル)シクロヘキサン、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン、ハイドロキノン、および1,4−ジヒドロキシベンゼンスルホン酸ナトリウム等のエチレンオキシドおよび/またはプロピレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレン、およびそれらのブロック共重合体等が挙げられる。
【0044】
これらの中で好ましいジオール化合物としては、ハイドロキノンのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールAのエチレンオキシド付加物、ビスフェノールSのエチレンオキシド付加物、ジヒドロキシナフタレンのエチレンオキシド付加物およびそれらブロック共重合体であり、重合性と経済性の点で、特にビスフェノールAのエチレンオキシド付加物およびそのブロック共重合体が好ましく用いられる。これらは、1種もしくは必要に応じて2種以上を用いることができる。
【0045】
本発明で用いられる炭素数が6以上のアミノカルボン酸またはラクタム、もしくは炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(B−1)とポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B−2)やジオール化合物(B−3)の結合は、通常エステル結合、アミド結合であるが特にこれらのみに限定されない。また、ジカルボン酸やジアミン等の第三成分を反応成分として用いることも可能であり、この場合のジカルボン酸成分として、炭素数4〜20のジカルボン酸成分が好ましく、その例として、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタレン−2,7−ジカルボン酸、ジフェニル−4,4−ジカルボン酸、ジフェノキシエタンジカルボン酸、3−スルホイソフタル酸ナトリウムのような芳香族ジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸、1,2−シクロヘキサンジカルボン酸、ジシクロヘキシル−4,4−ジカルボン酸のような脂環族ジカルボン酸、コハク酸、シュウ酸、アジピン酸、セバシン酸、1,10−デカンジカルボン酸等が挙げられ、これらは、重合性、色調および物性の点で好ましく用いられる。
【0046】
一方、ジアミン成分としては、芳香族、脂環族および脂肪族のジアミンが用いられ、中でも脂肪族ジアミンのヘキサメチレンジアミンが好ましく用いられる。
【0047】
本発明の熱可塑性樹脂組成物で用いられるポリアミドエラストマー(B)の含有量は15〜30重量%であり、より好ましくは16〜30重量%である。ポリアミドエラストマー(B)の含有量が15重量%未満では、表面固有抵抗値が安定せず、一方、ポリアミドエラストマー(B)の含有量が30重量%を超えると、剛性の低下及び成形加工性が悪化するので好ましくない。
【0048】
ポリアミドエラストマー(B)の製造方法については、特に限定されず、公知の方法を利用することができる。例えば、アミノカルボン酸またはラクタムもしくは炭素数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(B−1)とジカルボン酸を反応させて両末端がカルボン酸基のポリアミドプレポリマーを作り、これにポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B−2)やジオール化合物(B−3)を真空下に反応させる方法、あるいはこれらの化合物を反応槽に仕込み、水の存在下、または不存在下に高温で加熱反応させることによりカルボン酸末端のポリアミドエラストマーを生成させ、その後、常圧または減圧下で重合を進める方法が知られている。また、これらの化合物を同時に反応槽に仕込み、溶融重合した後、高真空下で一挙に重合を進める方法もある。
【0049】
本発明で用いられる繊維状強化材(C)については特に制限はなく、公知の繊維状強化材を使用することができる。具体的には、ガラス繊維や炭素繊維の他、天然、合成、有機、無機を問わず繊維状フィラー等を使用することができ、それらの中でも、特性と経済性の点から、ガラス繊維が好ましく用いられる。
【0050】
本発明の熱可塑性樹脂組成物において、繊維状強化材(C)の配合量は5〜30重量%であり、より好ましくは8〜25重量%であり、更に好ましくは10〜20重量%である。繊維状強化材(C)の配合量が30%を超えると成形性が劣る傾向があり、また表面外観も悪くなる傾向にあり好ましくない。また、繊維状強化材(C)の配合量が5%未満では、剛性向上効果が低い。
【0051】
繊維状強化材(C)の繊維径は、特に制限はないが1μm〜20μmの繊維が通常用いられる。繊維径は、より好ましくは5μm〜15μmである。
【0052】
繊維状強化材(C)の繊維長は、特に制限はなく0.1mm〜10mmの繊維を用いたり、ロービングタイプのものを用いることができる。剛性向上効果や取り扱いのし易さから、1mm〜7mmにカットされた短繊維が好ましく用いられる。
【0053】
繊維状強化材(C)の熱可塑性樹脂成分への混合方法に特に制限はなく、特定の長さにカットしたものであれば、通常はサイドフィード式二軸押出機を用い、繊維状強化材をサイドフィードして熱可塑性樹脂成分と混合し、ペレット化して製造される。ロービングタイプのものを使用する場合は、ロービングの束に熱可塑性樹脂成分を押出被覆し、それを所望の長さに切断して、ペレット化して製造される。
【0054】
本発明において、ポリアミドエラストマー(B)の配合量(P)と繊維状強化材(C)の配合量(Q)は、下式(1)を満たす必要がある。
P≧14+0.2×Q・・・(1)
これは、繊維状強化材(C)の配合量(Q)が増えた場合、ポリアミドエラストマー(B)の配合量も特定の関係において増やす必要があることを意味している。本来、本発明のような混合系の熱可塑性樹脂組成物における電気的特性の発現は、絶縁物である無機フィラーを除いた熱可塑性樹脂成分中における導電材料(本発明では、ポリアミドエラストマーがこれに相当する。)の割合によってコントロールされるものであるが、本発明者らは、実製品において成形毎や部位によるバラツキを検討した結果、理論的考察に加え、この特定の関係を満たすことが必要であることを見出したものである。
【0055】
また、本発明における熱可塑性樹脂組成物の表面固有抵抗値は、5×1010Ω以下であることが好ましく、より好ましくは8×10Ω以下である。表面固有抵抗値の下限値は設定されないが、1×10Ω程度である。
【0056】
また、本発明における熱可塑性樹脂組成物のスタティックオネストメーターにより測定される帯電圧は、800V以下であることが好ましく、より好ましくは700V以下であり、更に好ましくは600V以下である。帯電圧は低ければ低いほどよい。
【0057】
本発明における熱可塑性樹脂組成物の成形方法としては、特に制限はなく、射出成形、押し出し成形、ブロー成形、真空成形、圧縮成形およびガスアシスト成形などの現在熱可塑性樹脂の成形に用いられる公知の方法を用いることができる。
【0058】
本発明の熱可塑性樹脂組成物の製造方法に関しても特に制限はないが、好ましくは、サイドフィード式2軸押出機にてホッパーから熱可塑性樹脂を仕込み、サイドフィードにて繊維状強化材を送りこむ方法である。
【0059】
本発明の熱可塑性樹脂組成物に、スチレン系樹脂(A)とポリアミドエラストマー(B)の相溶化を目的に、分子鎖中にカルボキシル基、エポキシ基、アミノ基およびアミド基の少なくとも1種の官能基を有する変性ビニル系共重合体を配合することができる。また、本発明の目的を損なわない範囲で、本発明の熱可塑性樹脂組成物に、各種の熱可塑性樹脂、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン樹脂、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル樹脂、ナイロン6やナイロン6,6等のポリアミド樹脂、変性PPE樹脂、ポリカーボネート樹脂、ポリアセタール樹脂、あるいはそれらの変性物やエラストマー類を配合することにより、成形用の熱可塑性樹脂組成物として、性能をさらに改良することができる。
【0060】
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物に、必要に応じて、ヒンダードフェノール系、含硫黄化合物系、含リン有機化合物系などの酸化防止剤、フェノール系、アクリレート系などの熱安定剤、ベンゾトリアゾール系、ベンソフェノン系、サクシレート系などの紫外線吸収剤、有機ニッケル系、ヒンダードアミン系などの光安定剤などの各種安定剤、高級脂肪酸の金属塩類や高級脂肪酸アミド類などの滑剤、フタル酸エステル類、リン酸エステル類などの可塑剤、臭素化化合物やリン酸エステル、赤燐等の各種難燃剤、三酸化アンチモン、五酸化アンチモンなどの難燃助剤、アルキルカルボン酸、アルキルスルホン酸やその他カルボン酸、スルホン酸の金属塩(Li、Na、Mg、Al、K、Caなど)、カーボンブラック、顔料および染料などを添加することもでき、また、各種強化剤や充填材を配合することもできる。
【0061】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は成形品とすることができ、電気・電子機器部品、電気・電子部品の搬送用部品、ディスプレイ関連電子部品の搬送用部品として好適に使用することができる。
【0062】
本発明における電気・電子機器部品とは、精密な電気・電子制御装置を備えた各種機器の部品のことをいい、例えば、カーナビゲーションシステムやカーオーディオシステム、また、電気自動車に搭載される燃料電池周辺機器などの自動車用電装部品、ICが搭載された業務又は家庭用電子玩具などIC周辺部品または筐体などの業務または家庭用デジタル電子機器部品、スロットマシンやパチンコまたは電子ゲーム装置などの業務用遊技・娯楽機器部品などが挙げられる。
【0063】
電気・電子部品の搬送用部品とは、例えば、IC搬送トレイやシリコーンウェハ搬送ボックスなどが挙げられる。ディスプレイ関連電子部品の搬送用部品としては、例えば、TABテープリール、COFテープリールおよびプラズマディスプレイ搬送トレイなどが挙げられる。
【実施例】
【0064】
以下、本発明の熱可塑性樹脂組成物について、実施例(および比較例)にて詳細に説明するが、これらの実施例をもって本発明は制限されるものではない。なお、下記の実施例および比較例中、特にことわりのない限り「部」または「%」で表示したものは、すべて重量比率を表わしたものである。熱可塑性樹脂成形品の特性に関する分析方法は下記のとおりである。
【0065】
(1)重量平均ゴム粒子径
「Rubber Age Vol.88 p.484〜490(1960)by E.Schmidt, P.H.Biddison」記載のアルギン酸ナトリウム法によって求める。すなわち、アルギン酸ナトリウムの濃度によりクリーム化するポリブタジエン粒子径が異なることを利用して、クリーム化した重量割合とアルギン酸ナトリウム濃度の累積重量分率から累積重量分率50%の粒子径を求める。
【0066】
(2)グラフト率
グラフト共重合体所定量(m)にアセトンを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離後、不溶分を濾取し、この不溶分を60℃の温度で5時間減圧乾燥し、重量(n)を測定した。グラフト率は、下記式より算出した。
グラフト率(%)={[(n)−(m)×L]/[(m)×L]}×100
(ここで、Lはグラフト共重合体のゴム含有量である。)。
【0067】
(3)還元粘度ηsp/c
サンプル1gにアセトン200mlを加え、3時間還流し、この溶液を8800r/min(10000G)で40分間遠心分離した後、不溶分を濾過する。濾液をロータリーエバポレーターで濃縮し、析出物(アセトン可溶分)を60℃で5時間減圧乾燥後、0.4g/100ml(メチルエチルケトン、30℃)に調整し、ウベローデ粘度計を用いηsp/cを測定した。
【0068】
(4)表面固有抵抗値
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度230℃に設定した東芝(株)製IS50A成形機内に充填し、射出成形により角板成形品(40mm(W)×50mm(L)×3mm(t))を得た。ASTM D257に準拠し、印加電圧500V、1分後の値を読みとった。電極は円形電極(主電極径:25mm、保護電極内径35mm)を使用し測定した。
【0069】
(5)帯電圧及び帯電圧減衰半減期(静電気消散性能)
上記(4)の角板成形品をスタティックオネストメーター(宍戸製)で測定した。成形品と印加電極との距離を15mm、検出電極との距離を10mmとし、8kVの電圧を1分間印加し、そのときの帯電圧を読みとった。帯電圧減衰半減期は、印加を止め、帯電圧が半減するまでの時間を読みとった。帯電圧が低く、かつ帯電圧減衰半減期が短いほど静電気消散性能に優れるといえる。
【0070】
(6)曲げ強度、曲げ弾性率
80℃熱風乾燥機中で3時間乾燥した熱可塑性樹脂組成物のペレットを、シリンダー温度230℃に設定した東芝(株)製IS50A成形機内に充填し、射出成形により試験片を得た。ASTM D790に準拠し(12.7mm(W)×127mm(L)×6.4mm(t)、23℃)、測定した。
【0071】
(7)表面外観
上記(4)の角板成形品を目視にて観察した。繊維状強化材の浮きなどによる表面荒れや、ヒケなどによる凸凹などの有無で評価した。表面荒れ、凸凹の無いものを「○」とし、表面荒れ、凸凹の有るものを「×」とした。
【0072】
(参考例1) グラフト共重合体(A−1)(A1とする)の製造方法
窒素置換した反応器に、純水120部、ブドウ糖0.5部、ピロリン酸ナトリウム0.5部、硫酸第一鉄0.005部およびポリブタジエンラテックス(ゴム粒子径0.3μm、ゲル含有率85%)60部(固形分換算)を仕込み、撹拌しながら反応器内の温度を65℃に昇温した。内温が65℃に達した時点を重合開始として、モノマ(スチレン30部、アクリロニトリル10部)およびt−ドデシルメルカプタン0.3部からなる混合物を5時間かけて連続滴下した。同時に並行して、クメンハイドロパーオキサイド0.25部、オレイン酸カリウム2.5部および純水25部からなる水溶液を7時間かけて連続滴下し、反応を完結させた。得られたスチレン系共重合体ラテックスを硫酸で凝固し、苛性ソ−ダで中和後、洗浄、濾過、乾燥してグラフト共重合体A1を得た。このグラフト共重合体A1のグラフト率は35%であり、樹脂成分のηsp/cは0.35dl/gであった。
【0073】
(参考例2) ビニル系(共)重合体(A−2)(A2とする)A2の製造方法
容量が20Lで、バッフルおよびファウドラ型攪拌翼を備えたステンレス製オートクレーブに、メタクリル酸メチル20重量%、アクリルアミド80重量%からなる共重合体0.05部をイオン交換水165部に溶解した溶液を400rpmで攪拌し、系内を窒素ガスで置換した。次に、アクリロニトリル30部、スチレン5.0部、t−ドデシルメルカプタン0.46部、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)0.39部、および2,2’−アゾビスイソブチルニトリル0.05部の混合溶液を反応系を攪拌しながら添加し、58℃の温度に昇温し重合を開始した。重合開始から15分が経過した後オートクレーブ上部に備え付けた供給ポンプからのスチレン65部を110分かけて添加した。この間、反応温度を65℃まで昇温した。スチレンの反応系への添加終了後、50分かけて100℃の温度まで昇温した。以降は、通常の方法に従って、反応系の冷却、ポリマーの分離、洗浄、乾燥を行ない、ビニル系(共)重合体A2を得た。このビニル系(共)重合体A2のηsp/cは0.53dl/gであった。
【0074】
(参考例3) ポリアミドエラストマー(B)(B1とする)の製造方法
ε−カプロラクタム45部、数平均分子量1,800のビスフェノールAのエチレンオキシド付加物45部、数平均分子量が1,800のポリエチレングリコール5部、テレフタル酸5.2部、および“イルガノックス”(登録商標)1098(酸化防止剤)0.2部を反応容器に仕込み、窒素パージして260℃の温度で60分間加熱攪拌して透明な均質溶液とした後、0.07kPa以下まで減圧した。テトラブチルチタネート0.1部を加えて、圧力は0.07kPa以下、温度は260℃の条件で、2時間反応させた。得られたポリマーをストランド状に吐出させ、カットしてペレット状のポリアミドエラストマーB1を得た。
【0075】
(参考例4) 変性ビニル系共重合体の製造方法
スチレン70部、アクリロニトリル25部およびメタクリル酸5部を懸濁重合して、ビーズ状の変性ビニル系共重合体D1を得た。
【0076】
(参考例5) 繊維状強化材(C)(C1とする)
日本電気硝子(株)製ガラス繊維ECS03T−351(繊維径13μm、繊維長3mm)
[実施例1〜3]
参考例1〜5で得られたグラフト共重合体A1、ビニル系(共)重合体A2、ポリアミドエラストマーB1および変性ビニル系共重合体D1を、表1に示した配合比で混合し、ベント付30mmφ2軸押出機(池貝製PCM−30)を使用して、樹脂温度240℃で溶融混練し、押出しを行うことによって、ペレット状の樹脂組成物を製造した。この樹脂組成物にガラス繊維C1を、表1に示した配合比でサイドからフィードし、熱可塑性樹脂組成物を得た。次いで、得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて、射出成形機により、シリンダー温度230℃、金型温度60℃で試験片を成形し、上記条件で特性を評価した。得られた測定結果を表1に示した。
【0077】
(比較例1〜5)
参考例1〜5で得られたグラフト共重合体A1、ビニル系(共)重合体A2、ポリアミドエラストマーB1および変性ビニル系共重合体D1を、表1に示した配合比で混合し、さらにこれにガラス繊維C1を、表1に示した配合比でサイドからフィードし、熱可塑性樹脂組成物を得た。得られた熱可塑性樹脂組成物を用いて実施例1と同様の方法で試験片を製造し、特性を評価した。測定結果を表1に示した。
【0078】
【表1】

【0079】
表1の結果から次のことが明らかである。本発明の熱可塑性樹脂組成物(実施例1〜3)では、いずれも表面固有抵抗値が5×1010Ω以下であり、静電気消散性能に優れ、かつ機械的特性のバランスも良い。このことから、本発明の熱可塑性樹脂組成物は、電気・電子部品の搬送用部品として好適である。
【0080】
これに対し、繊維状強化材(C)が5重量%未満の比較例1では、剛性が低く好ましくない。ポリアミドエラストマー(B)が15重量%未満の比較例2では、表面固有抵抗値が5×1010Ωを超え好ましくない。ポリアミドエラストマー(B)と繊維状強化材(C)との関係式(1)を満たさない比較例3と4では、熱可塑性樹脂成分中(A+B+D1)でのポリアミドエラストマー(B)の割合が実施例1と同等であるにもかかわらず、表面固有抵抗値が5×1010Ωを超え好ましくない。また、繊維状強化材(C)が30重量%を超える比較例5では、繊維状強化材の浮きによる表面荒れがあり好ましくない。
【産業上の利用可能性】
【0081】
本発明の熱可塑性樹脂組成物は、安定した表面固有抵抗値を有し、かつ帯電圧減衰半減期が短く、安定性と静電気消散性能及び機械的特性とのバランスに優れるという特徴を生かして、精密な電気・電子部品の搬送用部品類等への適用が期待される。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
スチレン系樹脂(A)40〜80重量%、ポリアミドエラストマー(B)15〜30重量%および繊維状強化材(C)5〜30重量%を含有してなる熱可塑性樹脂組成物であって、該ポリアミドエラストマー(B)の配合量(P)と該繊維状強化材(C)の配合量(Q)が、下式(1)を満たすことを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
P≧14+0.2×Q・・・(1)
【請求項2】
ポリアミドエラストマー(B)が、炭素原子数6以上のアミノカルボン酸もしくはラクタム、または炭素原子数6以上のジアミンとジカルボン酸の塩(B−1)と、数平均分子量200〜6000のポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B−2)および/または数平均分子量が1,000〜3,000である次式(イ)〜(ハ)
【化1】

【化2】

【化3】

(ただし式中、R、Rはエチレン基およびプロピレン基の少なくとも1つを示し、Yは共有結合、炭素数1〜6のアルキレン基、炭素数2〜6のアルキリデン基、炭素数7〜17のシクロアルキリデン基、炭素数7〜17のアリールアルキリデン基、O、SO、SO、CO、S、CF、C(CF、またはNHを示し、X〜X12は水素、炭素数1〜6のアルキル基、ハロゲン、−SOHまたはその金属塩を示す。)から選ばれた1種もしくは2種以上のジオール化合物(B−3)を構成成分として含むグラフト共重合体またはブロック共重合体である請求項1記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項3】
表面固有抵抗値が5×1010Ω以下である請求項1または2記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項4】
ポリ(アルキレンオキシド)グリコール(B−2)が、ポリエチレンオキシドグリコールである請求項2または3記載の熱可塑性樹脂組成物。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載の熱可塑性樹脂組成物から得られる成形品。
【請求項6】
成形品が、電気・電子部品の搬送用部品である請求項5記載の成形品。
【請求項7】
電気・電子部品が、ディスプレイ関連電子部品の搬送用部品である請求項6記載成形品。

【公開番号】特開2007−145954(P2007−145954A)
【公開日】平成19年6月14日(2007.6.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−340827(P2005−340827)
【出願日】平成17年11月25日(2005.11.25)
【出願人】(000003159)東レ株式会社 (7,677)
【Fターム(参考)】